JP4052977B2 - トナー用バインダー樹脂およびトナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トナー用バインダー樹脂およびトナーに関する。より詳しくは、特定のポリエステル樹脂を含有するトナー用バインダー樹脂およびトナーに関する。また電子写真用のトナー用バインダー樹脂およびトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
オフィスオートメーションの発展に伴い、電子写真法を利用した複写機やプリンターの需要は急激に増加しており、それらの性能に対する要求も高度化している。一般に、電子写真法では、光感光体上に静電気的潜像を形成し、ついで潜像を、トナーを用いて現像し、紙などの被定着シート上にトナー画像を転写した後、熱ロールで加熱圧着する方法(熱ロール定着方式)が行われている。この熱ロール定着方式においては、消費電力等の経済性の向上、複写速度の上昇、用紙等のカール防止等のため、より低温で定着可能な定着性の良好なトナーが要求されている。
【0003】
このような要求に対して、従来技術では、スチレン-アクリル系樹脂を代表例とするバインダー樹脂の分子量や分子量分布を改良したもの等の提案がなされている。具体的には、バインダー樹脂を低分子量化し、定着温度を低くしようとする試みがなされた。
【0004】
しかしながら、低分子量化することにより融点は低下したが、同時に樹脂の凝集力も低下したため、定着ロールへのオフセット現象が発生する問題が生じた。
【0005】
このような問題を防ぐため、高分子量の樹脂と低分子量の樹脂を混合使用して分子量分布を広くしたものを該バインダー樹脂として用いる方法や、あるいは、さらにバインダー樹脂の高分子量部分を架橋させたりすることなどが行われていた。しかしながらこの方法においては、樹脂の粘度が上昇してしまい、逆に、定着性を満足させることが困難となる。
【0006】
一方、複写機、プリンターの高速化に伴い、帯電部位の高性能化の要求も高まってきている。すなわちトナーに対し、より高度な耐久性が必要とされてきており、長期耐刷安定性が必要になりつつある。
【0007】
そういった中で、従来主に用いられてきたスチレン−アクリル系樹脂に代えて、バインダー樹脂としてより高密度なポリエステル樹脂を用いたトナーが種々提案されている。(例えば、特開昭61−284771号公報(特許文献1)、特開昭62−291668号公報(特許文献2)、特公平7−101318号公報(特許文献3)、特公平8−3663号公報(特許文献4)、米国特許第4,833,057号明細書(特許文献5)等) 多くの場合、主成分がビスフェノールA誘導体とテレフタル酸である。また、樹脂骨格にテレフタル酸とエチレングリコールもしくは1、4−ブタンジオールを数多く有するポリエステル樹脂を用いたトナー(特公平8−5947号公報(特許文献6))も提案されているが、これらから得られたトナーは上記問題点を未だ満足に解決するに至っていない。
【0008】
オフセット現象を改善させる方法としては、トナー中にパラフィンワックス、低分子量ポリオレフィン等を離型剤として添加する方法もある。スチレン-アクリル系樹脂を用いたバインダー樹脂を使用する場合には特開昭49-65232号公報(特許文献7)、特開昭50-28840号公報(特許文献8)、特開昭50-81342号公報(特許文献9)等の技術が開示されている。しかしながら、オフセット現象を改善する反面、現像性やトナー粒子の耐ブロッキング性が悪化する事があった。さらに、ポリエステル樹脂の場合には、上記の離型剤を適用しても効果が少なく、使用量を多くすると現像剤の劣化が早いことも確認されている。
【0009】
また、ポリエステル樹脂をトナー用バインダー樹脂として用いた場合には、これらの他にも
・高密度故に粉砕し難い
・ポリエステルは吸湿性があり、湿度による性能変化が起こりやすい
・経時的に微粉が発生しやすい
・耐久性が十分でない
と言う問題があった。
【0010】
このように、低温定着性と耐オフセット性の両者の性能を十分満足させ、その他の性能も高いレベルにあるトナーを提供することは難しいのが現状である。更に高画質の複写画像を提供することが可能なトナーを提供するためには、上述のトナーに十分な電子写真特性を付与する必要がある。現在までに、複写画像の高画質,高精細化を図るために、種々の手法が試みられてはいるものの、上述の問題点を全て改善することができる手段は現在までのところ得られていなかった。
【0011】
一方で、近年、人口の増加に伴いエネルギーの使用が拡大し資源の枯渇化に伴って、省資源・省エネルギー・資源のリサイクル等が叫ばれてきている。ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルについても、各自治体がリサイクルを行ない始めて、各種衣料や容器に利用され始めているが、リサイクルPETの再利用が可能な新しい用途開発が求められている。ポリエステル樹脂を用いたトナーはその有力な候補とされている。
【0012】
【特許文献1】
特開昭61−284771号公報
【特許文献2】
特開昭62−291668号公報
【特許文献3】
特公平7−101318号公報
【特許文献4】
特公平8−3663号公報
【特許文献5】
米国特許第4,833,057号明細書
【特許文献6】
特公平8−5947号公報
【特許文献7】
特開昭49-65232号公報
【特許文献8】
特開昭50-28840号公報
【特許文献9】
特開昭50-81342号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来のトナーの有する問題を解決するもので、その目的とするところは、低温定着性、耐オフセット性、さらに長期にわたって複写する場合でも、現像耐久性に優れたトナー用バインダー樹脂およびトナーを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の諸問題点を解決すべく鋭意検討した結果、以下に記述する発明に至った。 即ち本発明は、
(1) ポリエステル樹脂を含むトナー用バインダー樹脂であって、
ポリエステル樹脂が、
テトラヒドロフラン不溶成分(A−1)0.1〜40質量%
テトラヒドロフラン可溶成分(A−2)99.9〜60質量%
とからなり
テトラヒドロフラン不溶成分(A−1)が、
(イ)化学式(0)で表される原子団と
(ロ)(A−1)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
(ロ-1-1) 化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団 39.9〜75モル%
(ロ-1-2) 化学式(3)で表される多価アルコール由来の原子団 0.1〜20モル%
(ロ-2) 化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団 15〜60モル%
の組成の多価アルコール由来の原子団と
(ハ)(A−1)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
化学式(6)で表される原子団 0.1〜30モル%
とからなるポリエステル構造を有し、
テトラヒドロフラン可溶成分(A−2)が、
(イ)化学式(0)で表される原子団と
(ニ)(A−2)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
(ニ-1)化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団 40〜85モル%
(ニ-2)化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団 15〜60モル%
の組成の多価アルコール由来の原子団と、
(ホ)(A−2)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
化学式(7)で表される多官能基が 2〜20モル%
(ヘ)(A−2)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
化学式(6)で表される原子団 0〜10モル%
とからなるポリエステル構造を有するポリエステル樹脂(A)
であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(化学式(2)において、
R1は、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(3)において、
R2は、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数3〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
R3およびR4は、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
mおよびnは、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、1〜10の整数である。
化学式(6)および(7)において、
R6および R7は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、
CおよびH以外の原子として、N、O、Sを包含してもよい、
炭素原子数1〜20個の原子団を示す。)。
【0015】
【化8】
【0016】
(2) ポリエステル樹脂(A)の
(ロ-1-1)および(ニ-1)の原子団が、化学式(2’)で表される原子団であり、
(ロ-1-2)および(ホ)の原子団が、化学式(3’)で表される原子団であり、
(ロ-2)および(ニ-2)の原子団が、化学式(4’)、化学式(4’’)で表される原子団であり、
(ハ)および、(ヘ) の原子団が、化学式(5’)で表される原子団である事を特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
【0017】
【化9】
【0018】
(3) トナー用バインダー樹脂が、少なくとも、架橋芳香族ポリエステル樹脂成分(成分[(a−1)]と、非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]とを含有してなり、
前記架橋芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−1)]は、
化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、
前記化学式(1)中の多価アルコール由来原子団Qが、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、39.9〜75モル%、
化学式(3)で表される多価アルコール由来原子団が、0.1〜20モル%、
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%であって、
化学式(6)で表される架橋基が、上記、多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、0.1〜30モル%であって、
化学式(1)で表される繰り返し単位が、
化学式(6)で表される架橋基によって架橋されるものである架橋芳香族ポリエステル樹脂であり、
前記非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]は、
化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、
前記化学式(1)中の多価アルコール由来原子団Qが、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、40〜85モル%、
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%であって、
化学式(7)で表される多官能基が、上記、多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、0.1〜20モル%である非線状芳香族ポリエステル樹脂であり、
成分(a−1)と成分(a−2)の組成比が、
両者の合計質量を基準として、
成分(a−1)が5〜80質量%、
成分(a−2)が20〜95質量%
であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(化学式(1)において、
Qは、多価アルコール由来原子団であり、
化学式(2)において、
R1は、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(3)において、
R2は、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数3〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
R3およびR4は、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
mおよびnは、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、1〜10の整数である。
化学式(6)および(7)において、
R6および R7は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、
CおよびH以外の原子として、N、O、Sを包含してもよい、
炭素原子数1〜20個の原子団を示す。)。
【0019】
【化10】
【0020】
(4) 少なくとも、架橋芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−1)]と、非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]とを含んでなり、
前記架橋芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−1)]は、
化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、
前記化学式(1)中の多価アルコール由来原子団Qが、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、39.9〜75モル%、
化学式(3)で表される多価アルコール由来原子団が、0.1〜20モル%、
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%であって、
化学式(5)で表される架橋基が、上記、多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、0.1〜30モル%であって、
化学式(1)で表される繰り返し単位が、
化学式(5)で表される架橋基によって架橋されるものである架橋芳香族ポリエステル樹脂であり、
前記非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]は、
化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、
前記化学式(1)中の多価アルコール由来原子団Qが、分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、40〜85モル%、
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%であって、
化学式(7)で表される多官能基が、上記、多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、0.1〜20モル%である非線状芳香族ポリエステル樹脂であり、
成分(a−1)と成分(a−2)の組成比が、
両者の合計質量を基準として、
成分(a−1)が5〜80質量%、
成分(a−2)が20〜95質量%
であるトナー用バインダー樹脂であり、
(化学式(1)において、
Qは、多価アルコール由来原子団であり、
化学式(2)において、
R1は、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(3)において、
R2は、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数3〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
R3およびR4は、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
mおよびnは、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、1〜10の整数である。
化学式(5)において、
R5は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、フェニレン基を包含する、炭素原子数6〜20個の原子団を示す。)。
【0021】
【化11】
【0022】
(5) 化学式(2)で表される原子団が、化学式(2’)で表される原子団であり、
化学式(3)で表される原子団が、化学式(3’)で表される原子団であり、
化学式(4)で表される原子団が、化学式(4’)および/または化学式(4’’)で表される原子団であり、
化学式(5)で表される原子団が、化学式(5’)で表される原子団であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
【0023】
【化12】
【0024】
(6) 化学式(7)で表される原子団が、化学式(3)で表される原子団であるトナー用バインダー樹脂であり、
(7) テトラヒドロフラン(THF)可溶分についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で評価したときに、
Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が6〜100であるトナー用バインダー樹脂であり、
(8) テトラヒドロフラン(THF)可溶分についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で評価したときに、ピーク分子量が3000〜18000であるトナー用バインダー樹脂であり、
(9) テトラヒドロフラン(THF)不溶分が、
トナー用バインダー樹脂中、0.1〜40質量%であるトナー用バインダー樹脂であり、
(10) 第1工程として、
化学式(II)で表される繰り返し単位を有する芳香族ポリエステルに、少なくとも化学式(VI)で表される2価アルコールと化学式(VII)で表される3価アルコールを含んでなる多価アルコールと化学式(II)を構成する酸とを加え、解重合反応および縮重合反応を行なうことにより得られる、化学式(II)で表される繰り返し単位、化学式(III)で表される繰り返し単位、化学式(IV)で表される繰り返し単位を有する、架橋芳香族前駆体ポリエステルであって、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(II)で表される繰り返し単位が、39.9〜75モル%、
化学式(III)で表される繰り返し単位が、0.1〜20モル%、
化学式(IV)で表される繰り返し単位が、15〜60モル%
である架橋芳香族前駆体ポリエステル樹脂〔成分(a0-1)〕 を製造する工程、
第2工程として、
化学式(II)で表される繰り返し単位を有する芳香族ポリエステルに、少なくとも化学式(IV)で表される2価アルコールおよび化学式(IX)で表される多官能構造を有する単量体および、化学式(II)を構成する酸とを加え、解重合反応および縮重合反応を行なうことにより得られる、化学式(II)で表される繰り返し単位、化学式(IV)で表される繰り返し単位、化学式(IX)で表される繰り返し単位を有する、非線状ポリエステルであって、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(II)で表される繰り返し単位が、40〜85モル%、
化学式(IV)で表される繰り返し単位が、15〜60モル%、
化学式(IX)で表される繰り返し単位が、0.1〜20モル%、
である非線状芳香族ポリエステル樹脂(成分(a−2))を製造する工程、
第3工程として、
第1工程で製造した成分(a0−1)を、第2工程で製造した成分(a−2)の存在下または非存在下で
化学式(VII)で表される架橋剤を添加して、
成分(a0−1)の架橋反応を行うことにより、
化学式(II)で表される繰り返し単位、化学式(III)で表される繰り返し単位、化学式(IV)で表される繰り返し単位、化学式(V)で表される架橋基を有する架橋芳香族ポリエステルであって、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(II)で表される繰り返し単位が、39.9〜75モル%、
化学式(IIIで表される繰り返し単位が、0.1〜20モル%、
化学式(IV)で表される繰り返し単位が、15〜60モル%、
化学式(V)で表される架橋基が、0.1〜30モル%であって、
化学式(II)、(III)、(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選択された少なくとも1つの繰り返し単位が、化学式(V)で表される架橋基によって架橋されたものである架橋芳香族ポリエステル樹脂(成分(a−1))を製造する工程とを含んで構成されるトナー用バインダー樹脂の製造方法であり、
(化学式(II)において、
R1は、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(III)および化学式(VII)において、
R2は、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数3〜10個の原子団を示す。
化学式(IV)および化学式(VI)において、
R3およびR4は、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(IV)および化学式(VI)において、
mおよびnは、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、1〜10の整数である。
化学式(V)および化学式(VIII)において、
R5は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、フェニレン基を包含する、炭素原子数6〜20個の原子団を示す。
化学式(IX)において、
R6は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、
CおよびH以外の原子として、N、O、Sを包含してもよい、
炭素原子数1〜20個の原子団を示す。)。
【0025】
【化13】
【0026】
(11) 化学式(II)が、化学式(II')であり、
化学式(III)が、化学式(III')および/または化学式(III'')であり、
化学式(IV)が、化学式(IV')および/または化学式(IV'')であり、
化学式(V)が、化学式(V')であり、
化学式(VI)が、化学式(VI')および/または化学式(VI'')であり、
化学式(VII)が、化学式(VII')であるトナー用バインダー樹脂の製造方法であり、
【0027】
【化14】
【0028】
(12) 化学式(II)で表される繰り返し単位を有する芳香族ポリエステルが、リサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)および/またはリサイクルPBT(ポリブチレンテレフタレート)であるトナー用バインダー樹脂の製造方法であり、
(13) 上記のトナー用バインダー樹脂を含むトナーであり、
(14) 上記の製造方法により得られたトナー用バインダー樹脂を含むトナーであり、
(15) トナーの粘弾性測定における、温度を横軸に、G’(貯蔵弾性率)の対数を縦軸にプロットして得られる曲線において、温度範囲100〜180℃において極大値および/またはショルダーを示さないトナーである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるトナー用バインダー樹脂はポリエステル樹脂(A)を含んでいる。ポリエステル樹脂(A)は、テトラヒドロフランに不溶な成分(A−1)が0.1〜40質量%とテトラヒドロフランに可溶な成分(A−2)が99.9〜60質量%とからなる。好ましくはテトラヒドロフラン不溶成分(A−1)が0.5〜25質量%であり、テトラヒドロフラン可溶成分(A−2)が99.5〜75質量%である。テトラヒドロフラン不溶成分(A−1)が0.1質量%未満では耐オフセット性が十分でない場合があり、40質量%を越えると定着性が悪化することがある。
【0030】
まず、本発明におけるポリエステル樹脂(A)のテトラヒドロフラン不溶部(A−1)について詳述する。本発明におけるポリエステル樹脂(A)のテトラヒドロフラン不溶部(A−1)は化学式(0)で表される原子団(イ)と、特定の多価アルコール由来の原子団(ロ)と、C,H,N,O,Sから選ばれる原子団(ハ)とからなる。テトラヒドロフラン不溶部(A−1)は架橋構造を有しているため、テトラヒドロフランのような良溶媒にも不溶になると考えられる。
【0031】
化学式(0)で表される原子団(イ)は、いわゆるテレフタル酸、置換テレフタル酸由来の原子団である。特に好ましくは、テレフタル酸由来の原子団である。
【0032】
多価アルコール由来の原子団(ロ)は、(A−1)成分中の多価アルコール由来原子団の合計モル数を基準として、
(ロ-1-1) 化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団 39.9〜75モル%
(ロ-1-2) 化学式(3)で表される多価アルコール由来の原子団 0.1〜20モル%
(ロ-2) 化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団 15〜60モル%
からなる。
【0033】
化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団(ロ-1-1)としては、エチレングリコールや1,2−ブタンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等のジアルコール由来の原子団を例示することが出来る。好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール由来の原子団である。特に好ましくは化学式(2’)で表されるエチレングリコール由来の原子団である。また、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール由来の原子団は、エチレングリコール由来の原子団に比べて、ガラス転移温度(Tg)を低く出来るので、Tgを調節する目的で好ましく用いられる。化学式(3)で表される多価アルコール由来の原子団(ロ-1-2)としては、トリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、トリメチロールエタン等のトリアルコール由来の原子団を例示できる。特に好ましくは、化学式(3’)で表されるトリメチロールプロパン由来の原子団である。
【0034】
化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団(ロ-1-1)は、好ましくは、45〜75モル%、より好ましくは、45〜71モル%の割合である。化学式(2)で表される原子団(ロ-1-1)が、39.9モル%未満であると密度が低くなり、機械的耐久性が悪化する事がある。一方、75モル%より多くなると密度が高くなり、粉砕性の悪化や生産性の低下が起こることがある。
【0035】
化学式(3)で表される多価アルコール由来の原子団(ロ-1-2)は、好ましくは2〜18モル%、より好ましくは3〜14モル%の割合である。化学式(3)で表される原子団(ロ-1-2)が、0.1モル%未満であると後述する架橋が困難となり、高分子量体成分が少なくなる為、耐オフセット性や機械的耐久性が悪化する事がある。一方、20モル%より多くなると、過剰な架橋が起こり分子量が高くなり過ぎて粉砕性が低下したり、後述するポリエステル重縮合等高分子化させる際に急激なゲル化反応によって反応制御が難しくなることがある。
【0036】
化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団(ロ-2)としては、ビスフェノールA−2プロピレンオキサイド付加物やビスフェノールA−3プロピレンオキサイド付加物の他に、ビスフェノールA−ポリプロピレンオキサイド付加物やビスフェノールA−ポリエチレンオキサイド付加物等のビスフェノールA誘導体由来の構成単位が好ましい例として挙げられる。この場合のアルキレンオキサイド付加物はアルキレン中の炭素数が2〜10であり、付加数が2〜20であることが好ましい。特に好ましくは、化学式(4’)や化学式(4’’)で表される原子団が挙げられる。
【0037】
化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団(ロ-2)は、好ましくは15〜45モル%、より好ましくは15〜30モル%の割合である。化学式(4)で表される原子団(ロ-2)が、15モル%未満であると密度が高くなり過ぎ、粉砕性が悪化し生産性が低下することがある。また、機械的耐久性も悪化する事がある。一方、60モル%より多くなると密度が低くなり過ぎ、機械的耐久性が悪化する事がある。
【0038】
化学式(6)で表される多価アルコール由来の原子団(ハ)は、(A−1)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を基準として、0.1〜30モル%の割合である。
【0039】
化学式(6)で表される原子団(ハ)は、主として化学式(0)で表される原子団(イ)と多価アルコール由来の原子団(ロ)とからなる樹脂を架橋、高分子量化する原子団である。上記原子団(ハ)として具体的には、化学式(5)で表される構造を有するものであり、トリレンジイソシアネートの他に、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートや、3価以上の多価イソシアネート等のイソシアネート由来の原子団が例示できる。特に好ましくは化学式(5’)で表されるトリレンジイソシアネート由来の原子団である。イソシアネート化合物由来の原子団は高い分子間結合力を有しているので、良好な機械的耐久性を得ることができると言う効果があるので好ましく用いられる。
【0040】
上記原子団(ハ)は、好ましくは1〜15モル%、より好ましくは1〜10モル%の割合である。上記原子団(ハ)が0.1モル%未満であると、架橋部が少ないすなわち高分子量体成分が少なくなり、耐オフセット性や機械的耐久性が悪化する事がある。30モル%より多くなると、粉砕性が低下したり、後述する架橋反応時の反応制御が難しくなることがある。
【0041】
テトラヒドロフラン不溶部(A−1)の構造分析は、例えば該樹脂を加水分解反応で徹底的に分解し、得られるカルボン酸、アルコール等を液体クロマトグラフィー、IR、NMRなどを用いて分析することにより求めることができる。
【0042】
次に、テトラヒドロフラン可溶成分(A−2)について詳述する。テトラヒドロフラン可溶成分(A−2)は、化学式(0)で表される原子団(イ)と、多価アルコール由来の原子団(ニ)および(ホ)と、炭素数1〜20の2官能以上の原子団(ヘ)とからなる。
【0043】
多価アルコール由来の原子団(ニ)は、(A−2)成分中の分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を基準として、
(ニ-1) 化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団 40〜85モル%
(ニ-2) 化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団 15〜60モル%
からなる。
【0044】
化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団(ニ-1)の具体例としては、前述の原子団(ロ-1-1)と同様のものを例示できる。特に好ましくは化学式(2’)で表されるエチレングリコール由来の原子団である。また、化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団(ニ-2)として具体的には、前述の原子団(ロ-2)と同様のビスフェノールA誘導体由来の原子団を好ましい例として挙げられる。
【0045】
化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団(ニ-1)は、好ましくは45〜80モル%、より好ましくは50〜75モル%の割合である。化学式(2)で表される原子団(ニ-1)が、40モル%未満であると密度が低くなり、機械的耐久性が悪化する事がある。一方、85モル%より多くなると密度が高くなり、粉砕性の悪化や生産性の低下が起こることがある。
【0046】
化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団(ニ-2)は、好ましくは15〜45モル%、より好ましくは15〜35モル%の割合である。ビスフェノール系化合物由来の原子団(ニ-2)が、15モル%未満であると密度が高くなり、粉砕性の悪化や生産性の低下が起こることがある。また機械的耐久性が悪化する事もある。一方、60モル%より多くなると密度が低くなり、機械的耐久性が悪化する事がある。
【0047】
化学式(7)で表される多官能基(ホ)は、(A−2)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を基準として、2〜20モル%含まれる。上記化学式(7)で表される多官能基(ホ)の導入によって、テトラヒドロフラン可溶部(A−2)は分岐構造を有するので、配向や結晶化が抑制される。上記3官能以上の原子団構造(ホ)として具体的には、前述の原子団(ロ-1-2)と同様の原子団を例示できる。特に好ましくは化学式(3’)で表されるトリメチロールプロパン由来の原子団である。また、トリメリット酸やピロメリット酸などの多価カルボン酸由来の原子団なども例示できる。
【0048】
上記化学式(7)で表される多官能基(ホ)は、好ましくは2〜15モル%、より好ましくは2〜10モル%の割合である。上記多官能基(ホ)が、2モル%未満であると、溶融時に分子鎖の配向や結晶化が発現してしまい、定着性が低下する場合がある。一方、20モル%より多くなると、後述するポリエステル重縮合等、高分子化させる際に急激なゲル化反応によって反応制御が難しくなることがある。
【0049】
化学式(6)で表される原子団(ヘ)は、(A−2)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として、0〜10モル%である。上記原子団(ヘ)は、主として低分子量のポリエステル樹脂を架橋して耐オフセット性の低下をもたらす低分子量成分の低減させる効果を有する。上記の原子団 (ヘ)として具体的には、化学式(5)で表されるイソシアネート化合物、具体的にはトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネートなどの化合物由来の原子団が挙げられる。特に好ましくは化学式(5’)で表されるトリレンジイソシアネート由来の原子団である。
【0050】
上記原子団(ヘ)は、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは1〜10モル%の含有率である。原子団(ヘ)が10モル%を越えると、高分子量成分が増加し過ぎるために定着性が低下することがある。
【0051】
本発明におけるテトラヒドロフラン可溶部(A−2)は、GPCで評価したときのMw/Mn値が、6〜100であることが好ましく、より好ましくは6〜60である。Mw/Mnが小さいと耐オフセット性が不足する事がある。また大きいと、定着性が悪化する事がある。
【0052】
テトラヒドロフラン可溶部(A−2)の構造分析は、テトラヒドロフラン不溶部(A−1)と同様の方法の他、テトラヒドロフラン可溶部(A−2)自身をIR、NMRなどを用いて分析することにより求めることもできる。
【0053】
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂は、GPCで評価したときのピーク分子量は3000〜18000であることが好ましい。ピーク分子量が3000より小さいと耐オフセット性や機械的耐久性が悪化する事があり、18000より大きいと定着性が悪化することがある。
【0054】
本発明における上記化合物由来の原子団とは、ポリエステル樹脂(A)に上記の原子団が含まれていれば、その製造方法に特に限定はない。すなわち必ずしも対応する化合物を原料として製造する必要はなく、上記の対応する化合物とは異なる化合物を用いて製造しても、ポリエステル樹脂(A)が最終的に得られれば問題なく使用することが出来る。
【0055】
次いで、本発明の架橋芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−1)]について詳述する。
本発明に用いられるトナー用バインダー樹脂に含有される、架橋芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−1)]の多価アルコール由来原子団は、分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を基準として、化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、39.9〜75モル%、化学式(3)で表される多価アルコール由来原子団が、0.1〜20モル%、化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%、化学式(6)で表される架橋基が、0.1〜30モル%である。
【0056】
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、39.9モル%未満であると密度が低くなり、機械的耐久性が悪化することがある。75モル%より多くなると密度が高くなり、粉砕性が悪化し生産性が低下することがある。
【0057】
化学式(3)で表される多価アルコール由来原子団が、0.1モル%未満であると化学式(6)で表される架橋基による架橋が困難となり、高分子量体成分が少なくなり、耐オフセット性や機械的耐久性が悪化する事がある。30モル%より多くなると、ポリエステル重縮合等高分子化させる際に急激なゲル化反応によって反応制御が難しくなることがある。
【0058】
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15モル%未満であると密度が高くなり、粉砕性が悪化し生産性が低下することがある。また機械的耐久性が悪化する事がある。60モル%より多くなると密度が低くなるため、機械的耐久性が悪化する事がある。
【0059】
化学式(6)で表される架橋基が、0.1モル%未満であると架橋反応がしづらく、高分子量体成分が少なくなり、耐オフセット性や機械的耐久性が悪化する事がある。30モル%より多くなると、架橋反応時の反応制御が難しくなることがある。
【0060】
次に、本発明の構成要件である、非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]について詳述する。
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂に含有される非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]の多価アルコール由来原子団は、分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を基準として、化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、40〜85モル%、化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%、化学式(7)で表される多官能基が、0.1〜20モル%ある必要がある。
【0061】
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、40モル%未満であると密度が低くなり、機械的耐久性が悪化する事がある。85モル%より多くなると密度が高くなり、粉砕性が悪化し生産性が低下することがある。
【0062】
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15モル%未満であると密度が高くなり、粉砕性が悪化し生産性が低下することがある。また機械的耐久性が悪化する事がある。60モル%より多くなると密度が低くなり、機械的耐久性が悪化する事がある。
【0063】
化学式(7)で表される多官能基が、0.1モル%未満であると、溶融時に分子鎖の配向や結晶化が発現してしまい、定着性の面で好ましくない場合がある。一方、20モル%より多くなると、ポリエステル重縮合等、高分子化させる際に急激なゲル化反応によって反応制御が難しくなることがある。
【0064】
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂に含有される架橋芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−1)]と非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]の比率は、成分(a−1)が5〜80質量%、成分(a−2)が20〜95質量%であり、成分(a−1)が10〜70質量%、成分(a−2)が30〜90質量%であることが好ましく、成分(a−1)が20〜60質量%、成分(a−2)が40〜80質量%であることが更に好ましい。成分(a−1)が5質量%未満であると高分子量体成分が不足して、耐オフセット性が悪化する事がある。成分(a−2)が20質量%未満であると、低分子量体成分が不足し、定着性が悪化する事がある。
【0065】
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂のTgは40〜70℃であることが好ましい。Tgが低すぎると、トナーがブロッキングと呼ばれるとトナー粒子の凝集を起こすことがあり、高すぎると定着性が悪化する事がある。
【0066】
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂は、GPCで評価したときのMw/Mnが、6〜100であることが好ましく、6〜60であることがより好ましい。Mw/Mnが小さいと耐オフセット性が不足する事がある。また大きいと、定着性が悪化する事がある。
【0067】
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂は、GPCで評価したときのピーク分子量は3000〜18000であることが好ましい。小さいと耐オフセット性や機械的耐久性が悪化することがあり、大きいと定着性が悪化することがある。
【0068】
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂の密度は、1.20〜1.27(g/cm3)であることが好ましい。小さいと、機械的耐久性が悪化る事があり、大きいと粉砕性が悪化し生産性が低下することがある。
【0069】
本発明に用いられている原料の1つであるPET及びPBTはリサイクル品をフレーク状に加工したものであり、重量平均分子量で30000〜90000程度のものであるが、PET及びPBTの分子量分布、組成、製造方法、使用する際の形態等に制限されることはない。また、リサイクル品に制限されることはない。
【0070】
本発明における架橋芳香族ポリエステル樹脂[成分(a−1)]の架橋反応前のポリエステル樹脂である、架橋前駆体芳香族ポリエステル樹脂(成分(a0−1)及び非線状芳香族ポリエステル樹脂[成分(a−2)]は、200℃〜270℃で解重合および重縮合して製造することや、重縮合して製造することが好ましい。更には好ましい反応温度は220℃〜260℃である。反応温度が低い場合、解重合する際のPETやPBT等の芳香族ポリエステルの溶解性が悪化し反応時間が延びるし、テレフタル酸等酸成分の多価アルコールに対する溶解性が悪化することがある。一方、反応温度が高いと、原料の分解が起こることがある。
【0071】
本発明において、トナー用バインダー樹脂である架橋ポリエステル樹脂の架橋反応は、まず、非線状芳香族ポリエステルと架橋前駆体芳香族ポリエステルとを作り、両者を混合後、多価イソシアネートでウレタン化反応を行う方法や、架橋前駆体芳香族ポリエステルと多価イソシアネートの反応を非線状低分子芳香族ポリエステルとの混合前に行う事もできる。本発明における架橋芳香族ポリエステル樹脂及び非線状芳香族ポリエステル樹脂に使用される酸成分としては、化学式(0)や化学式(1)で表される原子団を構成するテレフタル酸を必ず含んでおり、この他には、従来ポリエステル樹脂を製造する際に用いられているものをいずれも用いることができる。
【0072】
テレフタル酸以外で好ましいものとしては、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのアルキルジカルボン酸類、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類、これらジカルボン酸の無水物或いは低級アルキルエステルなどを挙げることができる。また、分子量を調整する目的で1価のカルボン酸及び多価カルボン酸を用いることもできる。1価のカルボン酸で好ましいものとしては、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、分岐していても、不飽和基を有していてもよく。また、これら脂肪族1価カルボン酸は、ガラス転移点を下げる性質があるため、ガラス転移点調節のために好ましく用いられる。勿論、安息香酸やナフタレンカルボン酸などの芳香族カルボン酸を用いてもよい。多価カルボン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物などが挙げられる。
【0073】
本発明における架橋芳香族ポリエステル樹脂及び非線状芳香族ポリエステル樹脂に使用されるアルコール成分は、化学式(2)で示されている原子団を構成し得るモノマーとしては、上記の原子団(ロ-1-1)等で例示したものと同様のものが挙げられる。特に好ましくは化学式(2’)を構成するエチレングリコールである。
【0074】
化学式(3)で示されている原子団を構成し得るモノマーとしては、原子団(ロ-1-2)等で例示したものが挙げられる。特には化学式(3‘)で示されている原子団を構成し得るモノマーであるトリメチロールプロパンが例示できる。
【0075】
化学式(4)で示されている原子団を構成し得るモノマーとしては、原子団(ロ-2)で例示したものを挙げることが出来る。特に好ましくは化学式(4‘)や(4“)で示されている原子団を構成し得るモノマーであるビスフェノールA−2プロピレンオキサイド付加物やビスフェノールA−3プロピレンオキサイド付加物を挙げることが出来る。この場合のアルキレンオキサイド付加物はアルキレン中の炭素数が2〜10であり、付加数が2〜20であることが好ましい。
【0076】
これらアルキレンジオール、トリオール、エーテル化ビフェノール以外には、シクロヘキサンジメタノールや水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオールや、ビスフェノールF、ビスフェノールS誘導体、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのビスフェノールF、ビスフェノールSのアルキレンオキサイドや、ビスヒドロキシエチルテレフタル酸、ビスヒドロキシプロピルテレフタル酸、ビスヒドロキシブチルテレフタル酸などのジカルボン酸低級アルキルエステルである芳香族ジオール、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン等の4価以上の多価アルコール等、従来ポリエステル樹脂を製造する際に用いられている3価以上アルコールをいずれも用いることができる。また、分子量を調整する目的でモノアルコールを用いることもできる。モノオールで好ましいものとしては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族モノアルコールなどが挙げられ、分岐や不飽和基を有していてもよい。
【0077】
また、化学式(5)で示されている原子団を構成し得るモノマーとしては、原子団(ハ)で例示したものと同様のものが挙げられる。特には、化学式(5‘)で示されている原子団を構成し得るモノマーであるトリレンジイソシアネートである。また、その他三価以上の多価イソシアネートを用いることも可能である。
【0078】
また、化学式(7)で示されている原子団を構成し得るモノマーとしては、酸成分であってもアルコール成分であってもよい。酸成分の具体例としては、トリメリット酸やその酸無水物などが挙げられる。アルコール成分の具体例としては、例えば、化学式(3)で表される原子団として例示したトリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、トリメチロールエタン等が挙げられる。特に好ましくは、化学式(3’)で表されるトリメチロールプロパンである。
【0079】
本発明における架橋芳香族ポリエステル樹脂[成分(a−1)]及び非線状芳香族ポリエステル樹脂[成分[(a−2)]を得る際の解重合反応や重縮合反応は、窒素ガス等の不活性ガス中での、例えば無溶剤下高温重縮合、溶液重縮合等の公知の方法により行うことができる。反応に際しての酸モノマーとアルコールモノマーの使用割合は、前者のカルボキシル基に対する後者の水酸基の割合で0.7〜1.4であることが一般的である。また、上記ポリエステル樹脂を得る際の重縮合反応において、触媒を添加すると反応の進行が速やかになり、好ましい。上記触媒として、錫系触媒、具体的にはジブチル錫オキサイドが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、その際の添加量としては0.01質量%〜1.00質量%であることが好ましい。
【0080】
本発明のトナー用バインダー樹脂には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックスを含有しても良く、その添加量は、トナー用バインダー樹脂中に0〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0081】
上記ポリオレフィンワックスに相当するものの具体的商品名としては、三井化学社製ハイワックス800P、400P、200P、100P、720P、420P、320P、405MP、320MP、4051E、2203A、1140H、NL800、NP055、NP105、NP505、NP805等を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0082】
さらに、本発明のトナー用バインダー樹脂には、セラミックワックス、ライスワックス、シュガーワックス、ウルシロウ、密鑞、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス等の天然ワックスを含有しても良く、その添加量は、トナー用バインダー樹脂中に0〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0083】
また、本発明のトナー用バインダー樹脂中には、上記ポリエステル樹脂の他に、スチレン系共重合体、ポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂を添加してもよい。
【0084】
以下、本発明のトナーについて詳述する。
本発明のトナーは、少なくとも先の本発明のトナー用バインダー樹脂、帯電調整剤(CCA)、着色剤、表面処理剤を含むものである。本発明のトナ−用バインダー樹脂の量は、トナー中に50〜95質量%であることが好ましい。
【0085】
本発明に用いられているトナーの粘弾性は、温度を横軸に、G’(貯蔵弾性率)の対数を縦軸にプロットして得られた曲線において、温度範囲100〜180℃において、極大値および/またはショルダーを示さないことが必要である。該曲線において、極大値および/またはショルダーを示した場合、定着性が悪化することがある。
【0086】
以下、本発明のトナーにおけるトナー用バインダー樹脂以外の成分について詳述する。
【0087】
まず、着色剤について記すと、従来知られている染料及び顔料を使用することができ、具体的には例えばカーボンブラック、マグネタイト、フタロシアニンブルー、ピーコックブルー、パーマネントレッド、レーキレッド、ローダミンレーキ、ハンザイエロー、パーマネントイエロー、ベンジジンイエロー、ニグロシン染料(C.I.No. 50415),アニリンブルー(C.I.No. 50405),チャコールブルー(C.I.No.azoec Blue 3),クロームイエロー(C.I.No. 14090),ウルトラマリンブルー(C.I.No. 77103),デユポンオイルレツド(C.I.No. 26105),オリエントオイルレツド#330(C.I.No. 60505),キノリンイエロー(C.I.No. 47005),メチレンブルークロライド(C.I.No. 52015),マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No. 42000),ランブブラツク(C.I.No. 77266),ローズベンガル(C.I.No. 45435),オイルブラツク,アゾオイルブラツク等を使用することができる。その添加量としては、トナー用バインダー樹脂100質量部に対して3〜15質量部であることが好しい。
【0088】
帯電調整剤としては、ニグロシン、4級アンモニウム塩や含金属アゾ染料をはじめとする公知の帯電調整剤を適宜選択して使用することができ、その使用量はトナー用バインダー樹脂100質量部に対して、通常用いられる0.1〜10質量部である。
【0089】
次に表面処理剤については、トナーに対して該表面処理剤を添加することによって、トナーとキャリア、あるいはトナー相互の間に該表面処理剤が存在することになり、現像剤の粉体流動性が向上され、更には現像剤の寿命をも向上させることが出来る。具体的な例示としては、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化チタン、ポリテトラフロロエチレン、ポリビニリデンクロライド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン超微粒子、シリコーンといった微粉末を挙げることが出来、商品名としては、AEROSIL 130、200、200V、200CF、200FAD、300、300CF、380、R972、R972V、R972CF、R974、R976、RX200、R200、R202、R805、R812、R812S、TT600、MOX80、MOX170、COK84、酸化チタンT805、酸化チタンP25(以上、日本アエロジル社、およびテグザ社製)、CAB−O−SIL L90、LM130、LM150、M5、PTG、MS55、H5、HS5、LM150D、M7D、MS75D、TS720、TS610、TS530(以上、CABOT社製)などであり、特に該表面処理剤の表面積としては、BET法による窒素吸着によった比表面積が30m2/g以上、特に50〜400m2/gの範囲のものが良い。かかる該表面処理剤の添加量は、トナー用バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部で使用することが好適である。
【0090】
本発明のトナーは、ポリオレフィンワックスを含んでも良く、その量はトナー用バインダー樹脂100質量部に対して0〜10質量部である。具体例としては、前述のポリオレフィンワックスが挙げられる。
【0091】
これらの材料を含む本発明のトナーの製造方法としては、本発明のトナー用バインダー樹脂、着色剤、必要であればその他の添加剤を粉体混合機により充分に混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーといった混練機を用いて溶融、混練して各構成成分を充分に混合する。これを冷却後、粉砕、分級を行なって、通常8〜20μmの範囲の粒子を集め、粉体混合法により表面処理剤をまぶしてトナーを得る。
【0092】
本発明により得られるトナーは種々の現像プロセス、例えばカスケード現像法、磁気ブラシ法、パウダー・クラウド法、タツチダウン現像法、キヤリアとして粉砕法によつて製造された磁性トナーを用いる所謂マイクロトーニング法、磁性トナー同士の摩擦帯電によつて必要なトナー電荷を得る所謂バイポーラー・マグネチックトナー法などに用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0093】
また,本発明により得られるトナーは、オイルレス定着法以外の種々の定着方法にも用いることができる。具体的には、オイル塗布ヒートロール法、フラッシュ法、オーブン法、圧力定着法などに用いることができる。更に、本発明のトナーは,種々のクリーニング方法、例えば、所謂フアーブラシ法、ブレード法などに用いることができる。
(実施例)
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以降「部」は、特に断わらない限り質量%を表す。
【0094】
本発明におけるトナー用バインダー樹脂の分子量および分子量分布の測定は、GPCを用いて求めたものである。測定は、市販の単分散標準ポリスチレンを標準とし、以下の条件で行った。
検出器; SHODEX RI-71S
溶剤; テトラヒドロフラン
カラム; KF-G + KF-807L x 3 + KF800D
流速; 1.0 ml/分
試料; 0.25 %THF溶液
なお、測定の信憑性は上記の測定条件で行ったNBS706ポリスチレン試料(Mw=288,000, Mn=137,000, Mw/Mn=2.11)のMw/Mnが、2.11±0.10となることにより確認し得る。
【0095】
本発明におけるガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量測定法(DSC)に従い、DSC−20(セイコー電子工業社製)によって測定した。試料約10mgを−20℃から100℃まで10℃/分で昇温し、得られたカーブのベースラインと吸熱ピークの傾線の交点よりTgを求める。この昇温測定の前に、一旦樹脂を200℃程度まで昇温し、5分間保持した後、即座に常温(25℃)まで降温する操作を行い、樹脂の熱履歴を統一することが望ましい。
【0096】
本発明において、THF不溶成分量とTHF可溶成分量は、以下のようにして求められる。約2.5gの樹脂と約47.5gのTHFを用いて約5質量%の溶液を調製する。(以下、上記溶液の濃度を以下”RC”と示す。) すなわち上記の混合物を25±3℃で12時間攪拌し、可溶成分を完全に溶解させる。次いで得られた溶液を16時間静置する。不溶部と上澄みとが分離した後、上澄み液を濃度分析のために分析する。(以下、上澄み液の濃度を”SC”と示す。この値は上澄み液5gを採取し、150℃で1時間乾燥してテトラヒドロフランを除去し、残った樹脂の質量の測定値から計算される。)
THF不溶成分とTHF可溶成分の値は、RC値とSC値とから下記の式によって求められる。
THF可溶成分比率 = (SC/RC) × 100 (%)
THF不溶成分比率 = [(RC−SC)/RC]× 100 (%)
【0097】
次に、該溶液から上澄み液をデカンテーションによって除き、残査をTHFで数回洗浄する。その残査を減圧下、40℃で乾燥してTHF不溶成分が得られる。
【0098】
また、本発明における酸価は、樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数をいう。また、OH価は、樹脂1g中のOH基をエステル化するのに必要な酸無水物を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数を指す。
【0099】
トナーの粘弾性測定には、ストレステック回転式レオメータ(レオロジカ社)を用いた。パラレルプレートを用い、ギャップは1mm、角周波数は1Hz、応力歪みは1%、50℃より200℃まで2℃/分で昇温測定を行った。この測定結果から、横軸に温度、縦軸にG’(貯蔵弾性率)の対数をプロットし、温度範囲100〜180℃における、極大値および/またはショルダーの有無を確認した。
【0100】
また、以下に本発明で行ったトナーの評価方法を記載する。
▲1▼ 定着性
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した後、この未定着画像を市販の複写機の定着部を改造した熱ローラー定着装置を用いて定着させた。熱ロールの定着速度は300 mm/secとし、熱ローラーの温度を5℃ずつ変化させてトナーの定着を行った。得られた定着画像を砂消しゴム(トンボ鉛筆社製)により、0.5 Kgの荷重をかけ、10回摩擦させ、この摩擦試験前後の画像濃度をマクベス式反射濃度計により測定した。各温度での画像濃度の変化率が70%以上となった最低の定着温度をもって最低定着温度とした。なお、ここに用いた熱ローラ定着装置はシリコーンオイル供給機構を有しないものである。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃,相対湿度55%)とした。
【0101】
○ ; 最低定着温度 ≦ 170℃
△ ;190℃ ≧ 最低定着温度 > 170℃
× ; 最低定着温度 > 190℃
▲2▼ 耐オフセット性
耐オフセット性の評価は、上記最低定着温度の測定に準じた方法で行う。すなわち、上記複写機にて未定着画像を作成した後、トナー像を転写して上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行い、次いで白紙の転写紙を同様の条件下で当該熱ローラ定着装置に送って転写紙上にトナー汚れが生ずるか否かを目視観察する。この操作を、前記熱ローラー定着装置の熱ローラーの設定温度を順次上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じた最低の設定温度をもってオフセット発生温度とした。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃,相対湿度55%)とした。
○ ; オフセット発生温度 ≧ 240℃
△ ; 240℃ > オフセット発生温度 ≧ 220℃
× ; 220℃ > オフセット発生温度
▲3▼ 現像耐久性
市販の複写機(東芝製、プレシオ5560)により連続して100,000枚にわたる実写テストを行った後、画像濃度、画質が劣化し始める枚数により評価した。
○ : 7万枚以上で劣化、もしくは劣化しない。
△ : 5万枚以上、7万枚未満で劣化
× : 5万枚未満で劣化
【0102】
(ポリエステル樹脂の製造)
ポリエステル樹脂(a0-1)に対応する樹脂α−1〜樹脂α−6およびポリエステル樹脂(a-2)に対応する樹脂β−1〜樹脂β−9の製造を行った。樹脂α−1について具体的に例示する。樹脂α−2〜樹脂α−8及び樹脂β−1〜樹脂β−11は、樹脂ユニット及びモノマー組成を表1,表2に示した条件に変更した以外は樹脂α−1と同様の方法で行った。樹脂分析結果も、樹脂α−1と併せて表1、表2に示した。
5リットルの四つ口フラスコに還流冷却器、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び撹拌装置を取り付け、フレーク状のリサイクルPET(重量平均分子量:75000)をPET中のエチレングリコールユニット単位で50mol%、アクトコールKB300(三井武田ケミカル社製:ビスフェノールA誘導体)22mol%、トリエチレングリコール20mol%、トリメチロールプロパン8mol%、テレフタル酸36mol%、ジブチル錫オキサイド0.5質量%を仕込み、フラスコ内に窒素を導入しながら240℃で解重合及び脱水重縮合を行った。反応生成物の酸価が所定値に達したところでフラスコより抜き出し冷却、粉砕して樹脂α−1を得た。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
実施例1〜7および比較例1〜5
実施例1を代表例として具体的に記述する。樹脂2〜12について、即ち実施例2〜7及び比較例1〜5についても樹脂a0-1(樹脂α−1〜樹脂α−6)と樹脂a-2(樹脂β−1〜樹脂β−9)の配合比やトリレンジイソシアネート添加比を表3に示した条件に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行って樹脂及びトナーを得て、評価を行った。樹脂分析結果、トナー特性評価も実施例1と併せて表3に示した。但し、樹脂10については樹脂a0-1を含んでいないためトリレンジイソシアネートは添加していないし、樹脂11については樹脂a-2)を含んでいない。
【0106】
樹脂α−1を30質量部、樹脂β−1を70質量部及びトリレンジイソシアネートを樹脂α−1の多価アルコール由来原子団の合計モル数を基準として16.1モル%とを、180℃において二軸押出機で混練反応し樹脂1を得た。得られた樹脂のTgは58.4℃であり、GPCのMw/Mnは17.7、ピーク分子量は6000であった。また、THF不溶分は9質量%であった。
【0107】
樹脂1を100質量部に対してカーボンブラック(MA−100・三菱化学社製)6質量部、帯電調整剤(BONTRON E-84;オリエント化学工業社製)1.5部、ポリプロピレンワックス(ハイワックスNP105;三井化学製)2.0部をヘンシェルミキサーにて分散混合した後、二軸押出機・PCM−30(池貝鉄工社製)にて120℃で溶融混練して塊状のトナー組成物を得た。このトナー組成物をハンマーミルにて粗粉砕した。さらに、ジェット粉砕機(日本ニューマチック社製IDS2型)にて微粉砕し、ついで気流分級して平均粒径10μm(5μm以下3質量%、20μm以上2質量%)のトナー微粉末を得た。次いで、上記トナ−100質量部に対して、疎水性シリカ(R−972、アエロジル社製)を0.5質量部となる割合で外部から添加して、これをヘンシェルミキサーにより混合してトナ−を得た。このトナー粒子を用いて、定着性、耐オフセット性、現像耐久性を調べた。
【0108】
【表3】
【0109】
したがって、この発明のトナー用バインダー樹脂およびトナーによれば、複写機およびプリンターの高速化、低温定着化など、近年高まっている要求に充分に対応することができる。
Claims (15)
- ポリエステル樹脂を含むトナー用バインダー樹脂であって、
ポリエステル樹脂が、
テトラヒドロフラン不溶成分(A−1)0.1〜40質量%
テトラヒドロフラン可溶成分(A−2)99.9〜60質量%
とからなり
テトラヒドロフラン不溶成分(A−1)が、
(イ)化学式(0)で表される原子団と
(ロ)(A−1)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
(ロ-1-1) 化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団 39.9〜75モル%
(ロ-1-2) 化学式(3)で表される多価アルコール由来の原子団 0.1〜20モル%
(ロ-2) 化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団 15〜60モル%
の組成の多価アルコール由来の原子団と
(ハ)(A−1)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
化学式(6)で表される原子団 0.1〜30モル%
とからなるポリエステル構造を有し、
テトラヒドロフラン可溶成分(A−2)が、
(イ)化学式(0)で表される原子団と
(ニ)(A−2)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
(ニ-1)化学式(2)で表される多価アルコール由来の原子団 40〜85モル%
(ニ-2)化学式(4)で表される多価アルコール由来の原子団 15〜60モル%
の組成の多価アルコール由来の原子団と、
(ホ)(A−2)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
化学式(7)で表される多官能基が 2〜20モル%
(ヘ)(A−2)成分中の多価アルコール由来の原子団の合計モル数を100モル%として
化学式(6)で表される原子団 0〜10モル%
とからなるポリエステル構造を有するポリエステル樹脂(A)
であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂。
(化学式(2)において、
R1は、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(3)において、
R2は、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数3〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
R3およびR4は、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
mおよびnは、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、1〜10の整数である。
化学式(6)および(7)において、
R6および R7は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、
CおよびH以外の原子として、N、O、Sを包含してもよい、
炭素原子数1〜20個の原子団を示す。)。
- トナー用バインダー樹脂が、少なくとも、架橋芳香族ポリエステル樹脂成分(成分[(a−1)]と、非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]とを含有してなり、
前記架橋芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−1)]は、
化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、
前記化学式(1)中の多価アルコール由来原子団Qが、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、39.9〜75モル%、
化学式(3)で表される多価アルコール由来原子団が、0.1〜20モル%、
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%であって、
化学式(6)で表される架橋基が、上記、多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、0.1〜30モル%であって、
化学式(1)で表される繰り返し単位が、
化学式(6)で表される架橋基によって架橋されるものである架橋芳香族ポリエステル樹脂であり、
前記非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]は、
化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、
前記化学式(1)中の多価アルコール由来原子団Qが、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、40〜85モル%、
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%であって、
化学式(7)で表される多官能基が、上記、多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、0.1〜20モル%である非線状芳香族ポリエステル樹脂であり、
成分(a−1)と成分(a−2)の組成比が、
両者の合計質量を基準として、
成分(a−1)が5〜80質量%、
成分(a−2)が20〜95質量%
であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂。
(化学式(1)において、
Qは、多価アルコール由来原子団であり、
化学式(2)において、
R1は、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(3)において、
R2は、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数3〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
R3およびR4は、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
mおよびnは、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、1〜10の整数である。
化学式(6)および(7)において、
R6および R7は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、
CおよびH以外の原子として、N、O、Sを包含してもよい、
炭素原子数1〜20個の原子団を示す。)。
- 少なくとも、架橋芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−1)]と、非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]とを含んでなり、
前記架橋芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−1)]は、
化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、
前記化学式(1)中の多価アルコール由来原子団Qが、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、39.9〜75モル%、
化学式(3)で表される多価アルコール由来原子団が、0.1〜20モル%、
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%であって、
化学式(5)で表される架橋基が、上記、多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、0.1〜30モル%であって、
化学式(1)で表される繰り返し単位が、
化学式(5)で表される架橋基によって架橋されるものである架橋芳香族ポリエステル樹脂であり、
前記非線状芳香族ポリエステル樹脂成分[成分(a−2)]は、
化学式(1)で表される繰り返し単位を有し、
前記化学式(1)中の多価アルコール由来原子団Qが、分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(2)で表される多価アルコール由来原子団が、40〜85モル%、
化学式(4)で表される多価アルコール由来原子団が、15〜60モル%であって、
化学式(7)で表される多官能基が、上記、多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、0.1〜20モル%である非線状芳香族ポリエステル樹脂であり、
成分(a−1)と成分(a−2)の組成比が、
両者の合計質量を基準として、
成分(a−1)が5〜80質量%、
成分(a−2)が20〜95質量%
である請求項3記載のトナー用バインダー樹脂。
(化学式(1)において、
Qは、多価アルコール由来原子団であり、
化学式(2)において、
R1は、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(3)において、
R2は、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数3〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
R3およびR4は、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(4)において、
mおよびnは、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、1〜10の整数である。
化学式(5)において、
R5は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、フェニレン基を包含する、炭素原子数6〜20個の原子団を示す。)。
- 化学式(7)で表される原子団が、化学式(3)で表される原子団である請求項3乃至5記載のトナー用バインダー樹脂。
- テトラヒドロフラン(THF)可溶分についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で評価したときに、
Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が6〜100である請求項1乃至6記載のトナー用バインダー樹脂。 - テトラヒドロフラン(THF)可溶分についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で評価したときに、ピーク分子量が3000〜18000である請求項1乃至7記載のトナー用バインダー樹脂。
- テトラヒドロフラン(THF)不溶分が、
トナー用バインダー樹脂中、0.1〜40質量%である請求項3乃至8記載のトナー用バインダー樹脂。 - 第1工程として、
化学式(II)で表される繰り返し単位を有する芳香族ポリエステルに、少なくとも化学式(VI)で表される2価アルコールと化学式(VII)で表される3価アルコールを含んでなる多価アルコールと化学式(II)を構成する酸とを加え、解重合反応および縮重合反応を行なうことにより得られる、化学式(II)で表される繰り返し単位、化学式(III)で表される繰り返し単位、化学式(IV)で表される繰り返し単位を有する、架橋芳香族前駆体ポリエステルであって、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(II)で表される繰り返し単位が、39.9〜75モル%、
化学式(III)で表される繰り返し単位が、0.1〜20モル%、
化学式(IV)で表される繰り返し単位が、15〜60モル%
である架橋芳香族前駆体ポリエステル樹脂〔成分(a0-1)〕 を製造する工程、
第2工程として、
化学式(II)で表される繰り返し単位を有する芳香族ポリエステルに、少なくとも化学式(IV)で表される2価アルコールおよび化学式(IX)で表される多官能構造を有する単量体および、化学式(II)を構成する酸とを加え、解重合反応および縮重合反応を行なうことにより得られる、化学式(II)で表される繰り返し単位、化学式(IV)で表される繰り返し単位、化学式(IX)で表される繰り返し単位を有する、非線状ポリエステルであって、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(II)で表される繰り返し単位が、40〜85モル%、
化学式(IV)で表される繰り返し単位が、15〜60モル%、
化学式(IX)で表される繰り返し単位が、0.1〜20モル%、
である非線状芳香族ポリエステル樹脂(成分(a−2))を製造する工程、
第3工程として、
第1工程で製造した成分(a0−1)を、第2工程で製造した成分(a−2)の存在下または非存在下で
化学式(VII)で表される架橋剤を添加して、
成分(a0−1)の架橋反応を行うことにより、
化学式(II)で表される繰り返し単位、化学式(III)で表される繰り返し単位、化学式(IV)で表される繰り返し単位、化学式(V)で表される架橋基を有する架橋芳香族ポリエステルであって、
分子内に存在する多価アルコール由来原子団の合計モル数を100モル%として、
化学式(II)で表される繰り返し単位が、39.9〜75モル%、
化学式(IIIで表される繰り返し単位が、0.1〜20モル%、
化学式(IV)で表される繰り返し単位が、15〜60モル%、
化学式(V)で表される架橋基が、0.1〜30モル%であって、
化学式(II)、(III)、(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選択された少なくとも1つの繰り返し単位が、化学式(V)で表される架橋基によって架橋されたものである架橋芳香族ポリエステル樹脂(成分(a−1))を製造する工程とを含んで構成される請求項1乃至8記載のトナー用バインダー樹脂樹脂の製造方法。
(化学式(II)において、
R1は、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(III)および化学式(VII)において、
R2は、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数3〜10個の原子団を示す。
化学式(IV)および化学式(VI)において、
R3およびR4は、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、ブチレン基を包含する、炭素原子数2〜10個の原子団を示す。
化学式(IV)および化学式(VI)において、
mおよびnは、それぞれ、独立して、同一であっても別個であってもよく、1〜10の整数である。
化学式(V)および化学式(VIII)において、
R5は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、フェニレン基を包含する、炭素原子数6〜20個の原子団を示す。
化学式(IX)において、
R6は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、
CおよびH以外の原子として、N、O、Sを包含してもよい、
炭素原子数1〜20個の原子団を示す。)。
- 化学式(II)で表される繰り返し単位を有する芳香族ポリエステルが、リサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)および/またはリサイクルPBT(ポリブチレンテレフタレート)である請求項8乃至9記載のトナー用バインダー樹脂の製造方法。
- 請求項1乃至12記載のトナー用バインダー樹脂を含むトナー。
- 請求項10乃至12記載の製造方法により得られたトナー用バインダー樹脂を含むトナー。
- トナーの粘弾性測定における、温度を横軸に、G’(貯蔵弾性率)の対数を縦軸にプロットして得られる曲線において、温度範囲100〜180℃において極大値および/またはショルダーを示さない請求項13乃至14記載のトナー。
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