JP2004054258A - トナー用バインダー樹脂および該樹脂を用いたトナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】静電荷現像用電子写真トナーにおいて、結着樹脂の主成分が多価カルボン酸および多価アルコールより合成されたポリエステルをポリイソシアネートでウレタン伸長した、ウレタン変性ポリエステル樹脂からなり、該結着樹脂のウレタン反応時に低分子量ワックスを添加することを特徴とする静電荷現像用電子写真トナー用バインダー樹脂。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トナー用バインダー樹脂およびそれを用いたトナーに関する。
より詳しくは、電子写真、静電印刷等において静電荷像を現像するために用いられるトナー用バインダー樹脂およびそれを用いたトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
オフィスオートメーションの発展に伴い、電子写真法を利用した複写機やプリンターの需要は急激に増加しており、それらの性能に対する要求も高度化している。一般に、複写機やプリンターに於ける電子写真法は、光感光体上に静電気的潜像を形成し、ついで潜像を、トナーを用いて現像し、紙などの被定着シート上にトナー画像を転写した後、熱ロールで加熱圧着する方法(熱ロール定着方式)が行われている。この熱ロール定着方式においては、消費電力等の経済性の向上、複写速度の上昇、用紙等のカール防止等のため、より低温で定着可能な定着性の良好なトナーが要求されている。一方で、熱ロール定着方式においては、熱ロール表面とトナーが溶融状態で接触するため、トナーが熱ロール表面に付着転移し、次の被着シートにこれが再転移して汚す、所謂オフセット現象という問題が生じる。このオフセット現象を発生させないことも、重要なトナー性能への要求の一つである。さらには、複写機、プリンターの高速化に伴い、帯電部位の高性能化の要求も高まってきている。すなわちトナーに対し、より高度な耐久性が必要とされてきており、長期耐刷安定性が必要になりつつある。
【0003】
また、近年、人口の増加に伴いエネルギーの使用が拡大し資源の枯渇化に伴って、省資源・省エネルギー・資源のリサイクル等の必要性が重要視され始めている。PET(ポチエチレンテレフタレート)ボトルについても、各自治体がリサイクルを行ない始めて、各種衣料や容器に利用され始めており、リサイクルPETの再利用を可能とする新規用途開発の要望も高い。
【0004】
このような要求に対して、従来技術では、トナー用バインダー樹脂の分子量や分子量分布を改良したもの等の提案がなされている。具体的には、トナー用バインダー樹脂を低分子量化し、定着温度を低くしようとする試みがなされた。しかしながら、低分子量化することにより融点は低下するが、同時に樹脂の凝集力も低下するため、定着ロールへのオフセット現象が発生する。この問題を防ぐため、高分子量の樹脂と低分子量の樹脂を混合使用して分子量分布を広くしたものを該バインダー樹脂として用いる方法や、あるいは、さらにバインダー樹脂の高分子量部分を架橋させたりすることなどが行われている。しかしながらこの方法においては、樹脂の粘度が上昇してしまい、逆に、定着性を満足させることが困難となる。
【0005】
上記手法を用いたトナー用バインダー樹脂としては、一般に、スチレン−アクリル系樹脂(例えば、特公昭55−6895号公報(特許文献1)、特公昭63−32180号公報(特許文献2)、米国特許第5,084,368号明細書(特許文献3)等)やポリエステル樹脂(例えば、特開昭61−284771号公報(特許文献4)、特開昭62−291668号公報(特許文献5)、特公平7−101318号公報(特許文献6)、米国特許第4,833,057号明細書(特許文献7)等)やポリオール樹脂等(例えば、特開平11−189647号公報(特許文献8)等)が主として用いていられている。
【0006】
しかしながら、これらの方法では、熱定着ロールからの熱量が十分に伝わり難い高速複写機や小型複写機では十分な効果が得られていない。すなわち、オフセット現象を防止する目的で、重量平均分子量の高いものや、架橋を施したものを使用すると樹脂の粘度が高くなり、定着性が悪化する。
【0007】
このような要求を達成するためにトナー中にパラフィンワックス、低分子量ポリオレフィン等を離型剤として添加する方法がある。スチレン系の樹脂を使用する場合には特開昭49−65232号公報(特許文献9)、特開昭50−28840号公報(特許文献10)、特開昭50−81342号公報(特許文献11)等の技術が開示されている。しかしながら、オフセット現象を改善する反面耐ブロッキング性を悪化させたり、現像性が悪化したりしていた。さらに、ポリエステル樹脂の場合には、同上の離型剤を適用しても効果は少なく、使用量を多くすると現像剤の劣化が早いことも確認されている。
【0008】
このように、充分な定着性、オフセット性を持ち、なおかつ、高画質の複写画像を提供することが可能な現像剤を提供するためには、上述の現像剤に十分な電子写真特性を付与する必要があり、現在までに、複写画像の高画質,高精細化を図るために、種々の手法が試みられてはいるものの、特に上述した欠点を全て改善することができる手段は現在までのところ得られていなかった。
【0009】
【特許文献1】特公昭55−6895号公報
【特許文献2】特公昭63−32180号公報
【特許文献3】米国特許第5,084,368号明細書
【特許文献4】特開昭61−284771号公報
【特許文献5】特開昭62−291668号公報
【特許文献6】特公平7−101318号公報
【特許文献7】米国特許第4,833,057号明細書
【特許文献8】特開平11−189647号公報
【特許文献9】特開昭49−65232号公報
【特許文献10】特開昭50−28840号公報
【特許文献11】特開昭50−81342号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来からトナーに要望されている上記諸特性を満たす静電荷現像用電子写真トナーを提供すべくなされたものである。
【0011】
即ち、本発明の目的は、熱ロール定着方式においてオフセット防止液を塗布することなくオフセットが防止され、かつより低い定着温度で定着できるトナー用バインダー樹脂およびトナーを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、帯電性、粉砕性に優れたトナー用バインダー樹脂およびトナーを提供することである。
本発明の他の目的は、高温高湿あるいは低温低湿時においても、常に安定した高濃度の現像画像を得ることができるトナー用バインダー樹脂およびトナーを提供することである。
本発明の他の目的は、長期間安定した現像画像を形成することができるトナー用バインダー樹脂およびトナーを提供することである。
本発明の他の目的は、優れた耐久性により5μm以下の微粉発生量を少量に抑えつつ、重量平均粒径を10μm以下にできるトナー用バインダー樹脂およびトナーを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、これらの課題を解決するために鋭意検討した結果、従来の技術では到達できなかった優れたトナー用バインダー樹脂を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、
(1) ポリエステル樹脂を用いたトナー用バインダー樹脂であって、
多価カルボン酸および多価アルコールより合成されたポリエステルを、
低分子量ワックスの存在下に
ポリイソシアネートと反応させてウレタン伸長して得られるウレタン変性ポリエステル樹脂からなることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(2) ポリエステル樹脂がPET(ポリエチレンレテレフタレート)および/またはPBT(ポリブチレンテレフタレート)と
多価カルボン酸と
多価アルコール
とから合成されたポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載のトナー用バインダー樹脂であり、
(3) PETがリサイクルPETであることを特徴とする請求項2に記載のトナー用バインダー樹脂であり、
(4) 上記のトナー用バインダー樹脂を用いたトナー
である。
【0015】
以下本発明を更に詳細に説明する。
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂のTg(ガラス転移温度)は、耐ブロッキング性(トナー粒子の耐凝集性)や定着性の観点から、40〜70℃であることが好ましい。
【0016】
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で評価したときのMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は、耐オフセット性や定着性の観点から、4〜100であることが好ましく、6〜60であることがより好ましい。
【0017】
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂は、GPCで評価したときのピーク分子量が、通常、1000〜30000、好ましくは1000〜20000、更に好ましくは2000〜15000である。本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂に含まれるTHF不溶分が、樹脂組成物中、0〜40質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明に用いられているトナー用バインダー樹脂の密度は、1.20〜1.27(g/cm3)であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いられている原料の1つであるPET(ポリエチレンテレフタレート)およびPBT(ポリブチレンテレフタレート)はリサイクル品をフレーク状に加工したものであり、重量平均分子量(Mw)で30000〜90000程度のものであるが、PETおよびPBTの分子量分布、組成、製造方法、使用する際の形態等に制限されることはない。また、リサイクル品に制限されることはなく、オフスペックの繊維クズやペレットを用いても良い。
【0020】
本発明において、ポリエステル樹脂の製造方法、ついでポリイソシアネートでウレタン化反応を行いウレタン変性ポリエステル樹脂を得る方法について述べるが、必ずしもこの方法に限ることはなく、他の方法、たとえばジイソシアネート存在下で重縮合する方法等を用いても良い。
【0021】
本発明のポリエステル樹脂は、ジオール、3価以上の多価アルコール成分と、2価のカルボン酸、その酸無水物またはその低級アルキルエステルから選ばれる酸成分との重縮合によって得られた樹脂である。また、分子量を調整する目的でモノカルボン酸および3価以上のポリカルボン酸を用いることもできる。
【0022】
本発明のPETより合成されたポリエステル樹脂は、PET中のエチレングリコール成分を含む全アルコール成分に対してPET中のエチレングリコール成分が5〜90モル%と少なくとも1種のジオール成分とからなるアルコール成分と少なくとも1種以上の酸成分を重縮合して製造する。このとき、反応温度は200〜270℃であることが好ましく、更には220〜260℃であることが好ましい。
【0023】
ここで言う酸成分としては、例えばテレフタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのアルキルジカルボン酸類、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類、これらジカルボン酸の無水物或いは低級アルキルエステルなどを挙げることができる。また、分子量を調整する目的でモノカルボン酸および三価以上のポリカルボン酸を用いることもできる。モノカルボン酸で好ましいものとしては、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられ、分岐していても、不飽和基を有していてもよく、また、これら脂肪族モノカルボン酸は、ガラス転移点を下げる性質があるため、ガラス転移点調節に好適に用いられる。これらの他、安息香酸やナフタレンカルボン酸などの芳香族モノカルボン酸を用いてもよい。ポリカルボン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの酸無水物などが挙げられる。
【0024】
また、アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどのアルキルジオールや、水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール、ビスフェノールF、ビスフェノールS誘導体、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどとビスフェノールF、ビスフェノールSとの反応物であるアルキレンオキサイドや、ビスヒドロキシエチルテレフタル酸やビスヒドロキシプロピルテレフタル酸、ビスヒドロキシブチルテレフタル酸などのジカルボン酸低級アルキルエステルである芳香族ジオールなどが挙げられる。また、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノールAアルキレンオキサイドなどのビスフェノールA誘導体が挙げられる。また、分子量を調整する目的でモノアルコールおよび三価以上のポリオールを用いることもできる。モノオールで好ましいものとしては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族モノアルコールなどが挙げられる。この他、分岐構造を有するものや、不飽和基を有するものであってもよい。三価以上のポリオールとしては、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビット、ソルビタンなどが挙げられる。ポリイソシアネートで鎖伸長する際に十分に高分子化させるために、少なくとも1種類以上の三価以上のポリオールを含有することが好ましい。この三価以上のポリオール成分は、通常全アルコール成分を基準にして0.5モル%未満である場合にはポリイソシアネートで鎖伸長した際に高分子化し難く、耐オフセット性や耐久性が不十分なものとなることがあり、また逆に20モル%を越えるとゲル化しやすくなり重縮合反応が進行し難くなるため、0.5〜20モル%の量で用いることが好ましい。さらには2〜20モル%がより好ましい。
【0025】
前記ポリエステル樹脂を得る際の重縮合反応は、窒素ガス等の不活性ガス中での、例えば無溶剤下高温重縮合、溶液重縮合等の公知の方法により行うことができる。反応に際してのカルボン酸とアルコールの使用割合は、前者のカルボキシル基に対する後者の水酸基の割合で0.7〜1.4であることが一般的である。
【0026】
本発明のトナー用バインダー樹脂は、ポリエステル樹脂を後述する低分子量ワックスの存在下にポリイソシアネートで鎖伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂を含んでいる。上記のポリイソシアネートは、ポリエステル樹脂の水酸基価1モル当量に対してイソシアネート基として0.2〜2モル当量の量を反応させることが好ましい。さらに好ましくは0.5モル当量〜1.5モル当量である。0.2モル当量未満であると耐オフセット性が不足することがあり、2モル当量を超えると製造される樹脂中にポリイソシアネートが、モノマーのまま存在する可能性があり、安全性の面で好ましくない。
【0027】
前記樹脂において使用されるポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどのジイソシアネートなどが挙げられる。また、その他三価以上のポリイソシアネートを用いることも可能である。
【0028】
なお、本発明において、酸価は、樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数を言い、また、水酸基価は、樹脂1g中の水酸基をエステル化するのに必要な酸無水物を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数をいう。
【0029】
本発明に用いられる低分子量ワックスとは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やセラミックワックス、ライスワックス、シュガーワックス、ウルシロウ、密鑞、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス等の天然ワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックスおよびそれらの変性物が上げられる。上記ポリオレフィンワックスに相当するものの具体的商品名としては、三井化学社製ハイワックス800P、400P、200P、100P、720P、420P、320P、405MP、320MP、4051E、2203A、1140H、NL800、NP055、NP105、NP505、NP805等を例示することができる。上記ワックスは、トナー用バインダー樹脂中に0〜20質量%の範囲になるように用いられることが好ましい。
【0030】
前記ウレタン変成ポリエステル樹脂と共に、他の樹脂を用いることもできる。詳しくは、従来静電荷像現像用トナーのバインダー樹脂として公知のものであればいずれでもよく、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニール、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、上記樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、架橋されたスチレン系共重合体などの樹脂が挙げられる。但し、本発明のトナー用バインダー樹脂の性能を発現させる範囲内での使用量であることは言うまでもない。
【0031】
また、荷電制御剤としては、公知の荷電制御剤を単独でまたは併用して用いることができる。荷電制御剤は、トナーを所望する荷電量とするに必要な量であればよく、例えば樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部程度とするのが好ましい。正荷電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、第4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などが挙げられる。また、負荷電制御剤としては、Cr、Co、Al、Feなどの金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物などが挙げられる。
【0032】
本発明の静電荷像現像用トナーにおいて用いることができる着色剤としては、従来トナーの製造において用いられることが知られた着色剤がいずれも使用可能であり、これら着色剤の例としては、脂肪酸金属塩、種々のカーボンブラック、フタロシアニン系、ローダミン系、キナクリドン系、トリアリルメタン系、アントラキノン系、アゾ系、ジアゾ系などの染顔料があげられる。着色剤は、単独で或いは2種以上を同時に使用することができる。
【0033】
また、本発明の静電荷像現像用トナーにおいて用いることができる磁性体としては、従来磁性トナーの製造において使用されている強磁性の元素を含む合金、化合物等何れのものであってもよい。これら磁性体の例としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄または二価金属と酸化鉄との化合物、鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金、およびこれらの混合物があげられる。これらの磁性体は、平均粒径が0.1〜2μm、更には0.1〜0.5μm程度のものが好ましい。
【0034】
また、磁性体のトナー中の含有量は、トナー用バインダー材樹脂100質量部に対して、通常約20〜200質量部、好ましくは40〜150質量部である。また、トナーの飽和磁化としては、15〜35emu/g(測定磁場 1キロエルステッド)が好ましい。
【0035】
本発明のトナーは、さらに必要に応じて滑剤、流動性改良剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等のトナーの製造に当たり使用されている公知の添加剤を内添、あるいは外添することができる。これら添加剤の例としては、滑剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ステアリン酸亜鉛などが、流動性改良剤としては、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタンなどが、研磨剤としては酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、タングステンカーバイド、炭酸カルシウムなどが、導電性付与剤としてはカーボンブラック、酸化スズなどが挙げられる。また、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素含有重合体の微粉末は、流動性、研磨性、帯電安定性などの点から好ましいものである。
【0036】
本発明にかかるトナーは、従来から公知の方法を用いて製造することができる。一般的には、前述したようなトナー構成材料を、ボールミル、ヘンシェルミキサーなどの混合機により充分混合した後、熱ロールニーダー、一軸あるいは二軸のエクストルーダーなどの熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後、ハンマーミルなどの粉砕機などを用いて機械的に粗粉砕し、次いでジェットミルなどにより微粉砕した後、分級する方法により製造するのが好ましい。しかし、トナーの製造法はこの方法に限られるものではなく、バインダー樹脂溶液中に他のトナー構成材料を分散した後、噴霧乾燥する方法、所謂マイクロカプセル法によりトナーを製造する方法など他の方法も任意に採用することができる。
【0037】
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分または一.五成分現像剤としても用いることができるし、トナー中に磁性粉を含有させた磁性一成分現像剤、もしくはキャリアや磁性粉を使用しない非磁性一成分現像剤、あるいはマイクロトーニング現像剤として用いることができる。本発明のトナーが二成分または一.五成分現像剤として用いられる場合、キャリアとしては、従来公知のキャリアがいずれも使用できる。使用することができるキャリアとしては、例えば鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉のような磁性粉体やガラスビーズ等、あるいはこれらの表面を樹脂などで処理したものが挙げられる。キャリア表面を被覆する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、フッ素含有樹脂、シリコン含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂など、あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらの中では、スペントトナーの形成が少ないため、フッ素含有樹脂、シリコン含有樹脂が特に好ましい。
【0038】
本発明のトナーの重量平均粒子径は、10μm以下であるが、3〜10μmであることが現像特性の面で好ましく、さらには5〜10μmであることが現像特性の面で好ましい。トナーの重量平均粒子径は、10μmを越える場合、微細な画像を発現させることが難しくなる等、現像特性の面で好ましくない。なお、トナーの粒度分布測定は、例えばコールターカウンターを用いて測定することができる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以降、「部」は特に断わらない限り質量%を表す。
【0040】
本発明におけるトナー用バインダー樹脂の分子量および分子量分布の測定は、GPCを用いて求めたものである。測定は、市販の単分散標準ポリスチレンを標準とし、以下の条件で行った。
【0041】
なお、測定の信憑性は上記の測定条件で行ったNBS706ポリスチレン試料(Mw=288,000,Mn=137,000,Mw/Mn=2.11)のMw/Mnが、2.11±0.10となることにより確認し得る。
【0042】
本発明におけるガラス転移点(Tg)は、示差走査型熱量測定法(DSC)に従い、DSC−20(セイコー電子工業社製)によって測定した。試料約10mgを−20℃から100℃まで10℃/分で昇温し、得られたカーブのベースラインと吸熱ピークの傾線の交点よりTgを求める。この昇温測定の前に、一旦樹脂を200℃程度まで昇温し、5分間保持した後、即座に常温(25℃)まで降温する操作を行い、樹脂の熱履歴を統一することが望ましい。
【0043】
本発明におけるTHF不溶分は、次の測定法によって求めた。5質量%THF溶液を作成し、十分攪拌して樹脂可溶分を溶媒に完全に溶かした後、静置する。不溶分と上澄み液が完全に分離していることを確認した後、上澄み液を分析し可溶分を算出することによって不溶分を求めた。
【0044】
また、本発明における酸価は、樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数をいう。また、OH価は、樹脂1g中のOH基をエステル化するのに必要な酸無水物を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数を指す。
【0045】
また、以下に本発明で行ったトナーの評価方法を記載する。
▲1▼ 定着性
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した後、この未定着画像を市販の複写機の定着部を改造した熱ローラー定着装置を用いて定着させた。熱ロールの定着速度は300mm/secとし、熱ローラーの温度を5℃ずつ変化させてトナーの定着を行った。得られた定着画像を砂消しゴム(トンボ鉛筆社製)により、0.5kgの荷重をかけ、10回摩擦させ、この摩擦試験前後の画像濃度をマクベス式反射濃度計により測定した。各温度での画像濃度の変化率が70%以上となった最低の定着温度をもって最低定着温度とした。なお、ここに用いた熱ローラ定着装置はシリコーンオイル供給機構を有しないものである。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃,相対湿度55%)とした。
【0046】
▲2▼ 耐オフセット性
耐オフセット性の評価は、上記最低定着温度の測定に準ずるが、上記複写機にて未定着画像を作成した後、トナー像を転写して上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行い、次いで白紙の転写紙を同様の条件下で当該熱ローラ定着装置に送って転写紙上にトナー汚れが生ずるか否かを目視観察する操作を、前記熱ローラー定着装置の熱ローラーの設定温度を順次上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じた最低の設定温度をもってオフセット発生温度とした。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃,相対湿度55%)とした。
○ ; オフセット発生温度 ≧ 240℃
△ ; 240℃ > オフセット発生温度 ≧ 220℃
× ; 220℃ > オフセット発生温度
▲3▼ 現像耐久性
市販の複写機(東芝製、プレシオ5560)により連続して100,000枚にわたる実写テストを行った後、画像濃度、画質が劣化し始める枚数により評価した。
○ : 7万枚以上でも劣化しない
△ : 5万枚以上、7万枚未満で劣化
× : 5万枚未満で劣化
▲4▼ 定着ローラーの耐久性
市販の複写機(東芝製、プレシオ5560)により連続して100,000枚にわたる実写テストを行った後、定着ローラーの表面を観察した。プリントアウト後の定着フィルム表面の傷や削れの発生の様子を目視で評価した。
○ ; 良好
△ ; 普通
× ; 悪い
本発明のポリエステル樹脂およびウレタン変性ポリエステル樹脂の製造は以下の方法で行った。ポリエステル樹脂A−1について具体的に例示する。A−2からA−4およびB−1からB−3は、樹脂ユニットおよびモノマー組成、樹脂分析結果を、A−1と併せて表1、表2に示す。A−3およびB−3の製造に際し、PETにはリサイクルPETを使用した。
【0047】
ポリエステル樹脂(A−1)の製造例
5リットルの四つ口フラスコに還流冷却器、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計および撹拌装置を取り付け、フレーク状のリサイクルPET(重量平均分子量:75000)をPET中のエチレングリコールユニット単位で50mol%、アクトコールKB300(三井武田ケミカル社製:ビスフェノールA誘導体のジアルコール化合物)22mol%、トリエチレングリコール21mol%、トリメチロールプロパン7mol%、テレフタル酸36mol%、ジブチル錫オキサイド0.5質量%を仕込み、フラスコ内に窒素を導入しながら240℃で解重合および/または脱水重縮合を行った。反応生成物の酸価が所定値に達したところでフラスコより抜き出し冷却、粉砕して樹脂A−1を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
以下に実施態様について実施例1を代表例として具体的に記述する。樹脂2〜11について、即ち実施例2〜10および比較例1〜5についても実施例1と同様な操作を行って樹脂およびトナーを得て評価を行った。これらについて、樹脂および低分子量ワックスの配合比やトリレンジイソシアネート添加比、樹脂分析結果、トナー特性評価を実施例1と併せて表3〜表4に示す。
本実施例に使用した低分子量ワックスとして、ポリプロピレンワックスには、ハイワックスNP105(三井化学製)、カルナバワックスには、カルナバ1号粉末(日本ワックス製)を使用した。
実施例1
樹脂(A)として樹脂A−1を30質量部、樹脂(B)として樹脂B−1を70質量部、低分子量ワックスとしてポリプロピレンワックス(ハイワックスNP105;三井化学製)3.0質量部およびトリレンジイソシアネート2質量部とを二軸押出機で混練反応し樹脂1を得た。得られた樹脂のTgは58.1℃であり、GPCのMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は21.4、ピーク分子量は6000であった。また、THF不溶分は7質量%であった。
樹脂1を100質量部に対してカーボンブラック(MA−100・三菱化学社製)6質量部、帯電調整剤(BONTRON E−84;オリエント化学工業社製)1.5質量部ヘンシェルミキサーにて分散混合した後、二軸押出機・PCM−30(池貝鉄工社製)にて120℃で溶融混練して塊状のトナー組成物を得た。このトナー組成物をハンマーミルにて粗粉砕した。さらに、ジェット粉砕機(日本ニューマチック社製IDS2型)にて微粉砕し、ついで気流分級して平均粒径10μm(5μm以下3質量%、20μm以上2質量%)のトナー微粉末を得た。次いで、上記トナ−100質量部に対して、疎水性シリカ(R−972、アエロジル社製)を0.5質量部となる割合で外部から添加して、これをヘンシェルミキサーにより混合してトナ−を得た。このトナー粒子を用いて、定着性、耐オフセット性、現像耐久性、粉砕生産性を調べた。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【発明の効果】
この発明のトナー用バインダー樹脂およびトナーは、上述のように構成されており、定着性、耐オフセット性、現像耐久性に優れている。したがって、この発明のトナー用バインダー樹脂およびトナーによれば、複写機およびプリンターの高速化、低温定着化など、近年高まっている要求に充分に対応することができる。
Claims (4)
- ポリエステル樹脂を用いたトナー用バインダー樹脂であって、多価カルボン酸および多価アルコールより合成されたポリエステルを、
低分子量ワックスの存在下に
ポリイソシアネートと反応させてウレタン伸長して得られるウレタン変性ポリエステル樹脂からなることを特徴とするトナー用バインダー樹脂。 - ポリエステル樹脂がPET(ポリエチレンレテレフタレート)および/またはPBT(ポリブチレンテレフタレート)と
多価カルボン酸と
多価アルコール
とから合成されたポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載のトナー用バインダー樹脂。 - PETがリサイクルPETであることを特徴とする請求項2に記載のトナー用バインダー樹脂。
- 請求項1〜3記載のトナー用バインダー樹脂を用いたトナー。
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