JP4165774B2 - 容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。更に詳しくは成形性、耐衝撃性、味特性に優れ、成形加工によって製造される容器、特に金属缶に好適な容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属缶の缶内面及び外面は腐食防止を目的として、エポキシ系、フェノ−ル系等の各種熱硬化性樹脂を溶剤に溶解または分散させたものを塗布し、金属表面を被覆することが広く行われてきた。しかしながら、このような熱硬化性樹脂の被覆方法は塗料の乾燥に長時間を要し、生産性が低下したり、多量の有機溶剤による環境汚染など好ましくない問題がある。
【0003】
これらの問題を解決する方法として、金属缶の材料である鋼板、アルミニウム板あるいは該金属板にめっき等各種の表面処理を施した金属板にフィルムをラミネ−トする方法がある。そして、フィルムのラミネ−ト金属板を絞り成形やしごき成形加工して金属缶を製造する場合、フィルムには次のような特性が要求される。
【0004】
(1)金属板との密着性に優れていること。
【0005】
(2)成形性に優れ、成形後にピンホールなどの欠陥を生じないこと。
【0006】
(3)金属缶に対する衝撃によって、ポリエステルフィルムが剥離したり、クラック、ピンホールが発生したりしないこと。
(4)缶の内容物の香り成分がフィルムに吸着したり、フィルムからの溶出物によって内容物の風味がそこなわれないこと(以下味特性と記載する)。
【0007】
これらの要求を解決するために多くの提案がなされており、例えば特開昭64−22530号公報には特定の密度、面配向係数を有するポリエステルフィルム、特開平2−57339号公報には特定の結晶性を有する共重合ポリエステルフィルム、特開平6−218895号公報、特開平6−107815号公報等には特定の粒子を含有するポリエステルフィルム、特開平7−156356号公報には共重合ポリエステルフィルムに融点の異なるポリエステルをブレンドした層を積層してなるフィルム等が開示されている。しかしながら、これらの提案は上述のような多岐にわたる要求特性を総合的に満足できるものではなく、特に高度な成形性、耐衝撃性だけでなく、レトルト処理後の優れた味特性の両者が要求される用途では十分に満足できるレベルにあるとは言えなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解消することにあり、成形性、耐熱性、味特性に優れ、特に成形加工によって製造される味特性に優れた金属缶に好適な容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、(I)層が金属板側となる、(II)層/(I)層構成を有する容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルムであって、(I)層がエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする融点が246℃以上のポリエステルAと融点が245℃以下のポリエステルBが、重量比で99:1〜70:30の割合で混合されてなり、(II)層が構成単位の95重量%以上がエチレンテレフタレートであり、かつポリエステルAより融点が3〜8℃低いポリエステルである容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルムにより達成される。
【0010】
本発明は、鋭意検討の結果、特定の構造、融点を有するポリエステルに低融点のポリエステルをブレンドすることにより、成形性、耐衝撃性に優れるだけでなく、特にレトルト後でも味特性良好なフィルムが得られることを見出したものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明では、レトルト後の味特性を良好とする点、製缶工程での成形性を良好とする点で、エチレンテレフタレートおよび/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルAを使用することが必要である。ポリエステルAの融点は246℃以上であることが味特性、耐衝撃性の点から必要であり、好ましくは、融点が248〜280℃、さらに好ましくは250〜275℃である。また、耐衝撃性、味特性の点からエチレンテレフタレート:エチレンナフタレート比は重量で、50:50〜100:0であることが好ましい。
【0012】
ポリエステルBの融点は245℃以下であることが成形性の点から必要であり、好ましくは200℃〜245℃、さらに好ましくは200℃〜243℃である。 融点245℃以下のポリエステルBとしては、特に限定されるものではない。例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンー1,2ービス(2ークロロフェノキシ)エタンー4,4’ージカルボキシレートなどを主たる構成成分とすることが好ましく、具体的には、ポリエステルBの構成成分の70重量%以上が上記成分であることが成形性の点で好ましい。中でも、耐衝撃性、味特性の点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが好ましい。さらに耐衝撃性の点で、ポリエステルBのガラス転移温度が50℃以下であることが好ましく、特に40℃以下であることが好ましい。また、グリコール成分としてブタンジオールを含有しないことが味特性を良好にする点で好ましい。
【0013】
ポリエステルBには、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、4,4ージフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマ−酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。一方、グリコ−ル成分としては例えばプロパンジオ−ル、ペンタンジオ−ル、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、レゾルシン等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオキシ化合物、p−(βーオキシエトキシ)安息香酸などのオキシカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などを共重合することができる。中でも、成形性、耐衝撃性の点からは、ダイマー酸が好ましい。
【0014】
ポリエステルBが非晶質の場合、融点はビカット軟化温度(ASTM D1525)で求めてもよい。
【0015】
さらに、ポリエステルBの結晶融解熱量が20J/g以下であると、鋼板との密着性に優れるだけでなく、成形性を良好とするので好ましい。さらに好ましくは0〜10J/g、特に好ましくは0〜5J/gである。そのための方法としては10モル%以上共重合する方法、金属成分をできるだけ低減する方法が用いられる。
【0016】
本発明では耐衝撃性と味特性を両立するためにポリエステルAとポリエステルBの混合率が重量比で99:1〜70:30であることが必要である。さらに、好ましくは、94:6〜70:30である。
【0017】
また、味特性、鋼板との密着性の点からフィルム中のカルボン酸末端基量を32〜48当量/トンにすることが好ましく、さらには32〜46当量/トン、特に35〜44当量/トンであることが好ましい。好ましくは、溶融重合時の温度、時間をコントロールしたり、押出時の滞留時間を少なくする方法が用いられる。
【0018】
ブレンド方法としては具体的には、味特性の点から、混練温度をポリエステルAの融点+30℃以下、さらには融点+25℃以下とすることが好ましく、特には高真空状態で混練することが熱分解を抑制する点から好ましい。また、混練時間としては、熱分解を抑制する点から、20分以内とすることが好ましい。混練装置としては、二軸、単軸のどちらでも構わないが、ポリマーの均一性の点から二軸混練機を用いることが好ましい。
【0019】
また、長期安定性の点では、フィルムの100μm換算での酸素透過率が17ml・mm/(m2・d・MPa)以下であることが好ましい。さらに好ましくは酸素透過率が15ml・mm/(m2・d・MPa)以下である。このように酸素透過率が小さいと耐食性が向上するだけでなく、飲料の味の長期安定性も向上するので好ましい。
【0020】
このようなポリエステルAとポリエステルBからなるフィルムの厚み方向の屈折率としては、成形性、ラミネート性の点から、1.5〜1.6であることが好ましく、さらには1.51〜1.6、特に1.52〜1.6であることが好ましい。方法としては延伸倍率を低下させたり、延伸温度を高くする方法、または熱処理温度を低下させるなどの方法が採用される。
【0021】
フィルム全体の結晶融解熱量が25J/g以上であると、耐熱性が良好となり、経時後の耐食性が特に良好となるので好ましい。さらに、30J/g以下であると特に好ましい。好ましくは、ポリエステルAとポリエステルBのエステル交換反応を抑制する手段をとることが好ましく、溶融押出時間の短縮化、カルボン酸末端基の低下などが採用される。
【0022】
また、熱特性としては、成形性、ラミネート性の点からフィルムの熱処理温度に由来するDSCサブピークの一つが220℃以下にあることが好ましく、さらには、200℃以下であることが好ましい。
【0023】
本発明における滑剤粒子とは、組成的には有機、無機を問わず特に制限されるものではないが、フィルムに成形したときの突起形状、耐摩耗性、加工性、味特性等の点から体積平均粒子径0.01〜5.0μmであることが好ましく、特に0.05〜3.0μmであることが好ましい。また、フィルムに成形したときの突起形状、耐摩耗性等の点から、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2であることが好ましく、特に1.0〜1.15であることが好ましい。
【0024】
また、これらの効果を十分に発現させるには、該粒子を0.01〜40重量%含有することが好ましく、さらには0.05〜30重量%であることが好ましい。
【0025】
具体的には、無機粒子としては、湿式および乾式シリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレ−等が挙げられるが、中でも、成形性、巻き特性、ポリエステルとの親和性などの点から湿式シリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン等が好ましい。
【0026】
また、有機粒子としては、様々な有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の粒子であればいかなる組成の粒子でもかまわない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などの種々のものを使用することができるが、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
【0027】
本発明のポリエステルを製造する際には、従来公知の反応触媒、着色防止剤を使用することができ、反応触媒としては例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等、着色防止剤としては例えばリン化合物等挙げることができる。好ましくは、通常ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレ−ト、ゲルマニウムβ−ナフトレ−ト等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を挙げることができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。アンチモン化合物としては、特に限定されないが例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどが挙げられる。チタン化合物としては、特に限定されないがテトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物などが好ましく使用される。
【0028】
例えばポリエチレンテレフタレ−トを製造する際に、ゲルマニウム化合物として二酸化ゲルマニウムを添加する場合で説明する。テレフタル酸成分とエチレングリコ−ルをエステル交換またはエステル化反応せしめ、次いで二酸化ゲルマニウム、リン化合物を添加し、引き続き高温、減圧下で一定のジエチレングリコール含有量になるまで重縮合反応せしめ、ゲルマニウム元素含有重合体を得る。さらに、好ましくは得られた重合体をその融点以下の温度において減圧下または不活性ガス雰囲気下で固相重合反応せしめ、アセトアデルヒドの含有量を減少させ、所定の固有粘度、カルボキシル末端基を得る方法等を挙げることができる。
【0029】
本発明におけるポリエステルは、好ましくはジエチレングリコール成分量が0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.01〜2重量%であることが製缶工程での熱処理、製缶後のレトルト処理などの多くの熱履歴を受けても良好な耐衝撃性を維持する上で望ましい。このことは、200℃以上での耐酸化分解性が向上するものと考えられ、さらに公知の酸化防止剤を0.0001〜1重量%添加してもよい。また、特性を損ねない範囲でジエチレングリコールをポリマ製造時に添加しても良い。
【0030】
本発明における二軸延伸フィルムは単層、積層いずれも使用できる。ポリエステルAとポリエステルBを含有する層(以下(I)層)に他層(以下(II)層)を積層する場合、(I)層/(II)層/金属板では、(II)層のポリエステルとしては、特に限定されないがポリエステルAおよび/またはポリエステルBを含有してもよく、融点が200〜260℃であることが好ましい。
【0031】
特に味特性、成形性が厳しい用途ではポリエステルAより融点が低く、融点が245℃を超えることが好ましい。さらに好ましくは246℃以上、特に好ましくは248℃以上である。
【0032】
成形性の点から、融点がポリエステルAの融点より1〜40℃低いことが特に好ましい。
【0033】
また、(II)層/(I)層/金属板では、(II)層はエチレンテレフタレートおよび/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが好ましく、95重量%以上がエチレンテレフタレートおよび/またはエチレンナフタレート単位であることが好ましい。(I)層/(II)層の積層比としては1/30〜30/1であることが好ましく、特に好ましくは1/20〜20/1である。また、(I)層/(II)層/(I)層、(II)層/(I)層/(II)層のように3層を積層してもよい。このうち、(II)層を最外層の少なくとも一方に積層した場合、成形性、味特性の点から(II)層をポリエチレンテレフタレートにすることが好ましく、また、味特性、耐衝撃性の点ではポリエチレンナフタレートにすることが好ましい。
【0034】
本発明の二軸延伸フイルムの厚さは、金属にラミネートした後の成形性、金属に対する被覆性、耐衝撃性、味特性の点で、3〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは8〜30μmである。
【0035】
本発明における二軸延伸フィルムの製造方法としては、特に限定されないが例えばポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸シートを得る。該未延伸シートをフイルムの長手方向及び幅方向に延伸、熱処理し、目的とする厚さ方向屈折率を有するフィルムを得る。好ましくはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。延伸倍率としてはそれぞれの方向に1.5〜4.0倍、好ましくは1.8〜3.5倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+80℃以下であれば任意の温度とすることができるが、ガラス転移温度+20℃〜60℃が好ましい。更に二軸延伸の後にフイルムの熱処理を行うが、この熱処理はオ−ブン中、加熱されたロ−ル上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は120℃以上250℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは150〜240℃である。また熱処理時間は任意とすることができるが、0.1〜60秒間が好ましく、さらに好ましくは1〜20秒間である。熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつおこなってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行っても良い。
【0036】
さらに、缶内面に使用される場合、缶内側となるポリエステルフィルムの表面の中心線平均粗さRaは好ましくは0.003〜0.05μm、さらに好ましくは0.005〜0.03μmである。さらに、最大粗さRtとの比Rt/Raが4〜50、好ましくは6〜40であると高速製缶性が向上する。
【0037】
また、フィルムにコロナ放電処理などの表面処理を施すことにより接着性を向上させることはさらに特性を向上させる上で好ましい。
【0038】
本発明の金属板とは特に限定されないが、成形性の点で鉄やアルミニウムなどを素材とする金属板が好ましい。さらに、鉄を素材とする金属板の場合、その表面に接着性や耐腐食性を改良する無機酸化物被膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被覆層を設けてもよい。特に金属クロム換算値でクロムとして6.5〜150mg/m2 のクロム水和酸化物が好ましく、さらに、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどを設けてもよい。スズメッキの場合0.5〜15mg/m2 、ニッケルまたはアルミニウムの場合1.8〜20g/m2 のメッキ量を有するものが好ましい。
【0039】
本発明の容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルムは、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶の内面被覆用に好適に使用することができる。また、缶の蓋部分の被覆用としても良好な金属接着性、成形性を有するため好ましく使用することができる。
【0040】
【実施例】
以下実施例によって本発明を詳細に説明する。なお特性は以下の方法により測定、評価した。
【0041】
(1)ポリエステルの融点、結晶融解熱量
ポリエステルまたはフィルムを乾燥、溶融後急冷し、示差走査熱量計(パ−キン・エルマ −社製DSC−2型)により、16℃/minの昇温速度で測定した。
【0042】
ポリエステルBが非晶質の場合、融点はビカット軟化温度(ASTM D1525)で求めてもよい。
【0043】
(2)フィルムの厚さ方向屈折率
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて測定した。
【0044】
(3)粒径比、体積平均粒子径、一次粒子径、長径/短径比の測定および計算
粒子をポリエステルに配合し0.2μmの厚みの超薄片にカッティング後、透過型電子顕微鏡で、少なくとも500個の粒子について観察し測定を行った。
【0045】
(4)ポリエステルのカルボキシル末端基量
ポリエステルをo−クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)に90〜100℃20分の条件で溶解し、アルカリで電位差滴定を行ない求めた。
【0046】
(5)酸素透過率
酸素透過率計で25℃、0%RHの条件で酸素透過率を測定し、厚み100μm当たりに換算した。
【0047】
(6)成形性
60m/分で融点−20℃〜融点+50℃に加熱されたTFS鋼板(厚さ0.20mm)にフィルムをラミネート後、60℃の温水にて冷却した後、絞り成形機で2段成形(最終成形比(最大厚み/最小厚み)=1.4、80〜130℃において成形可能温度領域で成形)した。その後、缶を200〜250℃の最適な温度で30秒間熱処理し、常法に従いネックイン加工を施した。得られた缶についてレトルト処理(120℃、30分加圧水蒸気で処理)を行い、ネック部(図1を参照)を観察し、下記のように判定した。
【0048】
A級:ほとんど変化がない。
B級:小さく白化した部分が見られるが問題ない。
C級:白化するが問題はない。
D級:小さく黒ずんだ部分が見られる。
E級:フィルムが破断してしまった。
【0049】
(7)耐衝撃性
実際に製缶した缶を、水を350g充填し蓋を巻きしめた。その後5℃、48時間放置し、缶を底面が落下した際にコンクリートの地面に対して45゜となるようにして40cmの高さから落下させて衝撃を与えた後、内容物を除き缶側内面をろうでマスキングしてカップ内に1%食塩水を入れて、1日放置後食塩水中の電極と金属缶に6Vの電圧をかけて3秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
【0050】
A級:0.1mA未満
B級:0.1mA以上0.3mA未満
C級:0.3mA以上0.5mA以下
D級:0.5mA以上
【0051】
(8)味特性
缶(直径6cm、高さ12cm)に水を充填し、125℃×30分の加圧蒸気処理を行い、20℃まで冷却し、24時間放置後に液の濁度の変化を目視で以下の基準で評価した。
【0052】
A級 液が全く濁らない。
B級 液がほとんど濁らない。
C級 液が少し濁っている。
D級 液が濁っている。
【0053】
比較例5
体積平均粒子径0.2μmのケイ酸アルミニウム粒子を10重量部、エチレングリコール90重量部を混合して常温下2時間ヂィゾルバーで撹拌処理し、ケイ酸アルミニウム粒子のエチレングリコールスラリーを得た。
【0054】
ジメチルテレフタレート、エチレングリコールに触媒として酢酸マグネシウム、酢酸リチウムを加えてエステル交換反応を行った後、反応生成物に先に調整したスラリー、重合触媒の二酸化ゲルマニウム、および耐熱安定剤としてリン酸を加え重縮合反応を行い、ポリエステルAを得た。
【0055】
ポリエステルAと同様にしてエステル交換反応を行い、ダイマー酸を添加後、重合反応を行い、ポリエステルBを得た(融点228℃、結晶融解熱量32J/g)。
【0056】
ポリエステルA75重量%、ポリエステルB25重量%を十分に乾燥した後、二軸混練機にて混練押出しし、(I)層用ポリエステル組成物を得た。
【0057】
上記したようにして得られた(I)層用ポリエステル組成物を150℃、4時間真空乾燥して、単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度110℃にて長手方向に2.8倍延伸、40℃に冷却後、温度110℃で幅方向に2.8倍延伸した後、205℃にてリラックス3%、5秒間熱処理した。
【0058】
得られたフィルムは37J/gの結晶融解熱を有していた。
【0059】
得られたフィルムの酸素透過率は、19ml・mm/(m2・d・MPa)であった。
【0060】
比較例6
比較例5と同様にして、ポリエステルAを得た。
【0061】
ポリエステルBとして、イソフタル酸、テレフタル酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、レゾルシン(モル比39.4:4.8:6.3:48.4:1.1、軟化温度63℃、結晶融解熱量0J/g)を使用した。
【0062】
(I)層用のポリエステルの混合率をポリエステルAを70重量%、ポリエステルBを30重量%とする以外は、比較例5と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0063】
得られたフィルムは36J/gの結晶融解熱を有していた。
【0064】
得られたフィルムの酸素透過率は、16ml・mm/(m2・d・MPa)であった。
【0065】
特に成形性が良好となり、ネック部の耐食性が向上した。
【0066】
実施例1
表に示す(I)層用ポリエステル組成物を得た。
【0067】
他方、比較例5のポリエステルAと同様にして(II)層用ポリエチレンテレフタレートを得た。
【0068】
該(II)層用ポリエチレンテレフタレートに(I)層用ポリエステル組成物を積層した以外は比較例5と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0069】
このとき、(I)層を金属ラミネート面とした。ポリエステルBの結晶融解熱量が8J/gであり、特に成形性がA級の中でも優れていた。
【0070】
実施例2
積層比を変更した以外は同様にして実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0071】
このとき、(I)層を金属ラミネート面とした。
【0072】
比較例8
ポリエステルBのダイマー酸添加量、粒子種を変更する以外は実施例1と同様にして、二軸延伸フィルムを得た。
【0073】
このとき、(I)層を金属ラミネート面とした。
【0074】
比較例7
(I)層のポリエステル混合率、(II)層のポリエステル種を変更する以外は比較例8とほぼ同様にして(I)層用ポリエステル組成物を得た。
【0075】
比較例8と同様にしてポリエステルBを得た。これを(II)層用ポリエステル組成物とした。
【0076】
積層比、延伸温度を長手方向、幅方向ともに105℃に変更する以外は比較例8と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0077】
このとき、(II)層を金属ラミネート面とした。
【0078】
比較例9
ポリエステルA、ポリエステルBをナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレートに変更する以外は比較例5と同様にして(I)層用ポリエステルCを得た。
【0079】
ポリエチレンテレフタレートを(II)層用ポリエステル組成物として用い、延伸温度を長手方向、幅方向ともに115℃とする以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0080】
このとき、(I)層を金属ラミネート面とした。
【0081】
比較例1
ポリエステルAとポリエステルBの混合率を変更し、(II)層用ポリエステル組成物としてイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを用いる以外は比較例7と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0082】
このとき、(II)層を金属ラミネート面とした。
【0083】
比較例2
ポリエステルA、ポリエステルB、(II)層用ポリエステル組成物をイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートに変更し、ポリエステルAとポリエステルBの混合率を変更し、延伸温度倍率を長手方向、幅方向ともに90℃、3.5倍とする以外は比較例7と同様にして、二軸延伸フィルムを得た。
【0084】
このとき、(I)層を金属ラミネート面とした。
【0085】
フィルムの結晶融解熱量は11J/gであり、経時後の味特性、成形性が悪化した。
【0086】
比較例3
ポリエステル組成物Aのみを用い、延伸温度を95℃、延伸倍率を長手方向、幅方向ともに3.4倍とする以外は比較例5と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0087】
このとき、(I)層を金属ラミネート面とした。
【0088】
比較例4
比較例2においてポリエステルBをイソフタル酸共重合PBTとしたところ、特に味特性が低下した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【0099】
【表11】
【0100】
尚、表中の記号は次の通りである。
PET :ポリエチレンテレフタレート
NDCM:ナフタレンジカルボン酸ジメチル
DMI :イソフタル酸ジメチル
PBT :ポリブチレンテレフタレート
DA :ダイマー酸
【0101】
【発明の効果】
本発明の容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルムは缶などに成形する際の成形性に優れているだけでなく、味特性、特にレトルト後の味特性に優れた特性を有し、成形加工によって製造される金属缶に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属缶の縦方向の断面図である。
【符号の説明】
1:薄肉缶壁
2:ネック
Claims (6)
- (I)層が金属板側となる、(II)層/(I)層構成を有する容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルムであって、(I)層がエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする融点が246℃以上のポリエステルAと融点が245℃以下のポリエステルBが、重量比で99:1〜70:30の割合で混合されてなり、(II)層が構成単位の95重量%以上がエチレンテレフタレートであり、かつポリエステルAより融点が3〜8℃低いポリエステルであることを特徴とする容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- ポリエステルBがブタンジオール以外のグリコール成分からなることを特徴とする請求項1に記載の容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- ポリエステルBの結晶融解熱量が0〜10J/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 該フィルムのカルボン酸末端基が32〜48当量/トンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- フィルムの厚み方向の屈折率が1.5〜1.6であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 金属板に熱ラミネート後に成形して使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
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