JP3921792B2 - 金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルム - Google Patents
金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルム Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器用として好適な二軸延伸フィルムからなる金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムに関するものである。更に詳しくは、金属板へのラミネート性、成形時の耐摩耗性、レトルト後の接着性、成形缶上部の長期安定性に優れ、成形加工などにより製造される金属缶等の容器の、特にレトルト後にも優れた接着性を発揮できる金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属缶の缶内面及び外面は腐食防止を目的として、エポキシ系、フェノール系等の各種熱硬化性樹脂を溶剤に溶解または分散させたものを塗布し、金属表面を被覆することが広く行われてきた。しかしながら、このような熱硬化性樹脂の被覆方法では、塗料の乾燥に長時間を要し、生産性が低下したり、多量の有機溶剤による環境汚染など好ましくない問題がある。
【0003】
これらの問題を解消する方法として、金属缶の材料である鋼板、アルミニウム板あるいは該金属板にめっき等各種の表面処理を施した金属板にフィルムをラミネートする方法がある。そして、フィルムのラミネート金属板を絞り成形やしごき成形加工して金属缶を製造する場合、フィルムには次のような特性が要求される。
(1)金属板へのラミネート性に優れていること。
(2)金属板との密着性に優れていること。
(3)成形性に優れ、成形後にピンホールなどの欠陥を生じないこと。
(4)金属缶に対する衝撃によって、ポリエステルフィルムが剥離したり、クラック、ピンホールが発生したりしないこと。
(5)缶の内容物の香り成分がフィルムに吸着したり、フィルムからの溶出物によって内容物の風味がそこなわれないこと(以下味特性と記載する)。
【0004】
これらの要求を満たすために多くの提案がなされており、例えば特開平2−57339号公報には特定の結晶性を有する共重合ポリエステルフィルム等が開示されている。しかしながら、近年、製缶速度の向上に伴い、ラミネート金属板からの製缶成形比が増大しており、より一層のラミネート性、成形性、フィルムと金属板との密着性の向上が望まれている。また、成形比が増加することにより、特に缶成形後のレトルト後のフィルムと金属板との密着性がより重要になってきており、レトルト後の長期安定性もより厳しく要求されている。上記の提案はこれらの要求特性を総合的に満足できるものではなくなってきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、上記した従来技術の問題を解消するとともに最近のより厳しい要求特性を満たすために、優れた耐摩耗性や味特性とともに、金属板とのラミネート特性、および、特にレトルト後にも優れた接着性を発現できる、金属缶に用いて好適な金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムは、2層以上の二軸延伸積層ポリエステルフィルムであって、金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppmよりも多く、非金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppm以下であることを特徴とするものからなる。
【0007】
すなわち、本発明においては、非金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルを、低く抑えることにより、フィルム層からの缶内等への溶出物の量を低く抑えて良好な味特性を確保するとともに、該層の成形加工性、耐摩耗性を良好に保ち、かつ、金属板側層のフィルムについては、この層のフィルム原料を後述のような方法で重合して、該フィルム層中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルを、非金属板側層に比べ多めにすることで、優れた金属板とのラミネート特性、優れたレトルト後の接着性を発現させるようにしている。また、このような金属板側層のフィルムでは、粒子との親和性を高く維持できるので、適切な粒子を含有させることにより、さらに金属板とのラミネート特性、レトルト後の接着性を向上することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルとは、エステル結合により構成される高分子量体の総称であり、ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を用いることができる。一方、グリコール成分としては例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール等を用いることができる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
【0009】
また、本発明のポリエステルは、とくに耐熱性をもたせる点から、主構成成分となるポリエステルとして、エチレンテレフタレートまたはエチレンナフタレート単位が80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。とくに、非金属板側層を構成するポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたは2,6−ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0010】
本発明では、上記ポリマを2種以上ブレンドして使用してもかまわない。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、共重合ポリエステルにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
【0011】
本発明においては、耐熱性、熱寸法安定性の点から、ポリエステルを二軸延伸フィルムにすることが必要である。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよい。
【0012】
そして、本発明に係るフィルムは、非金属板側層と金属板側層とを有する2層以上の二軸延伸積層ポリエステルフィルムである必要がある。本発明は、このような2層以上の二軸延伸積層ポリエステルフィルムとした上で、非金属板側層と金属板側層とにそれぞれ最適な特性を持たせようとしたものである。
【0013】
本発明に係る二軸延伸積層ポリエステルフィルムでは、まず、金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppmよりも多くなるようにしている。ジカルボン酸モノメチルエステルをかかる量以上含有させる方法としては特に限定されないが、たとえばポリエステルを製造する際にジカルボン酸成分としてジカルボン酸エステルを使用しグリコール成分とのエステル交換反応によりポリエステルを得る方法を挙げることができる。
【0014】
金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppmよりも多くことにより、金属板とのラミネート特性とともに、とくにレトルト後の金属板との接着性を向上することができる。また、上記のような製法で作られたこのような金属板側層のフィルム層は、粒子に対して高い親和性を持つことが可能であり、少量の粒子含有量でもって、高い耐摩耗性を発揮させることが可能になるとともに、金属板とのラミネート特性、レトルト後の接着性を一層向上することが可能になる。
【0015】
非金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルは2ppm以下とされる。2ppm以下とすることで、金属缶として飲料を充填した時に低溶出性とすることができ、優れた味特性が得られる。ジカルボン酸モノメチルエステル量をかかる量以下とする方法としては、特に限定されるものではないが、たとえばポリエステルを製造する際にジカルボン酸成分とグリコール成分とのエステル化反応によりポリエステルを得る方法を挙げることができる。
【0016】
このように、金属板側層、非金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの量を、それぞれ特定の範囲に制御することにより、金属板側層には優れた金属板とのラミネート特性、レトルト後の接着性、さらには耐摩耗性を持たせることが可能になるとともに、非金属板側層には、とくに優れた味特性を付与でき、各層それぞれに、要求に応じた望ましい特性を持たせることができる。
【0017】
また、フィルム表面にコロナ放電処理などの表面処理を施すことにより、接着性をさらに向上させることは特性を向上させる上で好ましい。その際、E値としては5〜50、好ましくは10〜45である。ここで、E値とはコロナ放電処理強度であり、印可電圧(Vp)、印可電流(Ip)、処理速度(S)、処理幅(Wt)の関数であり、E=Vp×Ip/S×Wtで表される。
【0018】
本発明に係る二軸延伸積層ポリエステルフィルムにおいては、非金属板側層、金属板側層ともに粒子を含有することが好ましい。とくに、非金属板側層のポリエステルが下記式(1)で定義されるフィルム中での形状度(粒子の最小長さdに対する最大長さDの比)1.1以上の粒子を含有しており、かつ、金属板側層のポリエステルの粒子含有量/非金属板側層のポリエステルの粒子含有量が1未満であることが好ましい。
形状度=D/d (1)
【0019】
非金属板側のフィルム層には、製缶時等の絞り加工時等に、特に表面に応力がかかるため耐摩耗性、耐削れ性が要求されるが、形状度の比較的大きい粒子をこの層に含有させることにより、表面に良好な滑り性を持たせつつ耐摩耗性、耐削れ性を向上させることができる。良好な滑り性を持たせることにより、フィルム自身の製造工程中におけるトラブルの発生も抑制でき、製造が容易化される。
【0020】
なお、本発明における粒子の形状度は、(1)式で定義されたようにフィルム中で観察される粒子の最小長さに対する最大長さの比で表され、後に定義した方法で求められる。ここで粒子の最大長さとは、個々の粒子あるいは一次粒子径より小さい間隔で形成される凝集体を一つの粒子と見なし、その輪郭に接する最長間隔の平行線間の距離であり、最小長さとはその輪郭に接する最短間隔の平行線間の距離である。
【0021】
また、より一層成形時の耐摩耗性を向上させる点から、非金属板側層のポリエステルに含有される粒子の凝集度が5〜100であることが好ましく、より好ましくは8〜80である。
【0022】
一方、金属板側層においても、良好な滑り性を持たせつつ耐摩耗性、耐削れ性を向上させ、かつ、金属板との良好な接着性を持たせるために、粒子を含有することが好ましいが、金属板側層にはとくに、金属板とのラミネート特性、レトルト後の接着性が要求されるので、これらの特性を損なわないように、粒子含有量は低く抑えておくことが好ましく、金属板側層のポリエステルの粒子含有量/非金属板側層のポリエステルの粒子含有量が1未満であることが好ましく、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下である。
【0023】
本発明の二軸延伸積層フィルムの厚さは、金属にラミネートした後の成形性、金属に対する被覆性、耐衝撃性、味特性の点で、3〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜35μmであり、特に好ましくは10〜30μmである。
【0024】
本発明においては、フィルムと金属板の接着性を向上させる点から、金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量が35当量/トン以上、中でも35〜50当量/トンであることが好ましく、特に好ましくは37〜47当量/トンである。また、フィルムからの溶出物の量を低く抑え味特性を向上させる点から、非金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量が35当量/トン未満であることが好ましく、特に好ましくは30当量/トン未満である。つまり、金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量が非金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量よりも多いことが好ましい。
【0025】
本発明におけるポリエステルの融解ピーク温度は、耐熱性、成形性の点から215〜265℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは220〜260℃であり、さらに好ましくは246〜260℃である。とくに、フィルムの主たる融解ピーク温度(融解ピーク温度測定において、first RUN として現れる融解ピーク温度)が246℃以上であることが好ましい。またエチレンテレフタレート単位が87モル%以上が好ましく、更に好ましくは90モル%以上である。ポリエステルの融解ピーク温度が215℃未満であると、耐熱性が低下し、缶成形後のレトルトや内容物を充填し高温で保存する時にフィルム内容物の流出やフィルム自体の軟化、熱劣化が生じるなどの問題が起こり好ましくない。また融解ピークが265℃を越えると成形性が低下し好ましくない。
【0026】
また、本発明においては、積層フィルムにおける各ポリエステルについては、よりラミネート性、レトルト後の金属板とフィルムの接着性を向上させる点から、非金属板側層を構成するポリエステルの融解ピーク温度(TmB)と金属板側層を構成するポリエステルの融解ピーク温度(TmA)の差(TmB−TmA)が0.5〜35℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.5〜10℃、さらに好ましくは0.5〜5℃である。
【0027】
また、積層フィルムの各層についても、非金属板側層については、とくに耐熱性、加工性を向上させる点から、該層を構成するポリエステルの融解ピーク温度が246〜260℃であることが好ましく、金属板側層については、とくに耐摩耗性、レトルト後の金属板との接着性を向上させる点から、該層を構成するポリエステルの融解ピーク温度が246〜260℃であることが好ましい。
【0028】
また、本発明における二軸延伸フィルムは、主にラミネート性、成形性の点から面配向係数が0.095〜0.130であることが好ましく、より好ましくは0.100〜0.120である。
【0029】
本発明においてはフィルムと金属板の接着性を向上させる点で、特にレトルト時のフィルムの収縮応力による剥離の影響を低減するために、125℃でのフィルム長手方向の熱収縮応力が0.1〜1.5MPaであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0MPaである。
【0030】
本発明において、主にフィルムと金属板の接着性向上の点から、125℃でのフィルム長手方向の線熱膨張係数を−140×10-6〜−5×10-6K-1にすることが好ましく、更に好ましくは−130×10-6〜−5×10-6K-1である。線熱膨張係数がこの範囲外であるとラミネート時に金属板との熱膨張挙動の違いから残留応力が発生し、そのため、その後の成形やレトルト時にフィルムにクラックや金属板との剥離が発生する場合がある。
【0031】
本発明においては、フィルムと金属板の接着性を向上させる点で、特にフィルムと金属板の接着界面におけるポリマー部分の接着面積及び厚みを増加させるために、少なくとも片面の表面から1μmでの粒子濃度R1と表面から0.1μmでの粒子濃度R2の比R1/R2が2〜200であることが好ましく、更に好ま
しくは3〜150である。
【0032】
本発明では、接着性、味特性をより一層向上させるためにポリエステルの固有粘度が0.6dl/g以上好ましく、さらに好ましくは0.62dl/g以上、特に好ましくは0.65以上である。固有粘度が0.6dl/g未満ではオリゴマの溶出などにより味特性が悪化するため好ましくない。
【0033】
本発明のポリエステルを製造する際には、従来公知の反応触媒、着色防止剤を使用することができ、反応触媒としては例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等、着色防止剤としては例えばリン化合物等挙げることができる。好ましくは、通常ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコール成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレート、ゲルマニウムβ−ナフトレート等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を挙げることができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。アンチモン化合物としては、特に限定されないが例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどが挙げられる。チタン化合物としては、特に限定されないがテトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物などが好ましく使用される。
【0034】
例えばポリエチレンテレフタレートを製造する際に、ゲルマニウム化合物として二酸化ゲルマニウムを添加する場合で説明する。テレフタル酸成分とエチレングリコールをエステル交換またはエステル化反応せしめ、次いで二酸化ゲルマニウム、リン化合物を添加し、引き続き高温、減圧下で一定のジエチレングリコール含有量になるまで重縮合反応せしめ、ゲルマニウム元素含有重合体を得る。さらに、好ましくは得られた重合体をその融点以下の温度において減圧下または不活性ガス雰囲気下で固相重合反応せしめ、アセトアデルヒドの含有量を減少させ、所定の固有粘度、カルボキシル末端基を得る方法等を挙げることができる。
【0035】
本発明におけるポリエステルは、好ましくはジエチレングリコール成分量が0.01〜3.5重量%、さらに好ましくは0.01〜2.5重量%、特に好ましくは0.01〜2.0重量%であることが製缶工程での熱処理、製缶後のレトルト処理などの多くの熱履歴を受けても優れた味特性を維持する上で望ましい。このことは、200℃以上での耐酸化分解性が向上するものと考えられ、さらに公知の酸化防止剤を0.0001〜1重量%添加してもよい。また、特性を損ねない範囲でジエチレングリコールをポリマ製造時に添加してもよい。
【0036】
また、味特性を良好にする上で、フィルム中のアセトアルデヒドの含有量を好ましくは25ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下とすることが望ましい。アセトアルデヒドの含有量が25ppmを越えると味特性に劣る。フィルム中のアセトアルデヒドの含有量を25pm以下とする方法は特に限定されるものではないが、例えばポリエステルを重縮反応等で製造する際の熱分解によって生じるアセトアルデヒドを除去するため、ポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において、ポリエステルの融点以下の温度で熱処理する方法、好ましくはポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において155℃以上、融点以下の温度で固相重合する方法、ベント式押出機を使用して溶融押出する方法、ポリマを溶融押出する際に押出温度を高融点ポリマ側の融点+30℃以内、好ましくは融点+25℃以内で、短時間、好ましくは平均滞留時間1時間以内で押出す方法等を挙げることができる。
【0037】
本発明における二軸延伸積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが例えば各ポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の各溶融押出機に供給し、たとえばポリマーの段階で所定の積層を行い、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸シートを得る方法が挙げられる。延伸方式としては、同時二軸、逐次二軸延伸いずれでもよいが、該未延伸シートをフイルムの長手方向及び幅方向に延伸、熱処理し、目的とする面配向度のフィルムを得る。延伸倍率としてはそれぞれの方向に1.6〜4.2倍、好ましくは1.7〜4.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+100℃以下であれば任意の温度とすることができるが、通常は80〜170℃が好ましい。更に二軸延伸の後にフイルムの熱処理を行うが、この熱処理はオ−ブン中、加熱されたロ−ル上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は120℃以上245℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは120〜240℃である。また熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行うのが好ましい。熱処理はフイルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行ってもよい。
【0038】
本発明における添加粒子としては平均粒子径0.01〜10μmの公知の内部粒子、無機粒子および/または有機粒子などの外部粒子の中から任意に選定される粒子を含有させることができる。特に平均粒子径0.1〜5μmの粒子が前述の如く特定量含有されていることが缶内面に使用されるフィルムとして好ましい。10μmを越える平均粒子径を有する粒子を使用するとフィルムの欠陥が生じ易くなるので好ましくない。粒子としては例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー等の無機粒子およびスチレン、シリコ−ン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができる。なかでも湿式および乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができる。これらの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子は二種以上を特性を損ねない範囲で併用してもよい。
【0039】
さらに、缶内面に使用される場合、中心線平均粗さRaは好ましくは0.005〜0.07μm、さらに好ましくは0.008〜0.05μmである。さらに、最大粗さRtとの比Rt/Raが4〜50、好ましくは6〜40であると高速製缶性が向上する。また、特に飲料面側の中心線平均粗さRaは好ましくは0.002〜0.04μm、さらに好ましくは0.003〜0.03μmであると味特性が向上するので好ましい。
【0040】
また本発明のフィルム上には各種コーティングを施してもよく、その塗布化合物、方法、厚みは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されない。
【0041】
本発明における金属板とは特に限定されないが、成形性の点で鉄やアルミニウムなどを素材とする金属板が好ましい。さらに、鉄を素材とする金属板の場合、その表面に接着性や耐腐食性を改良する無機酸化物被膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被覆層を設けてもよい。特に金属クロム換算値でクロムとして6.5〜150mg/m2 のクロム水和酸化物が好ましく、さらに、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどを設けてもよい。スズメッキの場合0.5〜15mg/m2 、ニッケルまたはアルミニウムの場合1.8〜20g/m2 のメッキ量を有するものが好ましい。
【0042】
本発明の容器用二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、金属板等にラミネートした後、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶の内面被覆用に好適に使用することができる。また、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底の被覆用としても良好な金属接着性、成形性を有するため好ましく使用することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、各特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し、25℃において測定した。
【0044】
(2)ポリエステルの融解ピーク温度
ポリエステルを結晶化させ、示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC2型)により、10℃/分の昇温速度で測定し融解のピーク温度を融点とした。
【0045】
(3)面配向係数(fn)
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて長手方向,幅方向,厚み方向の屈折率(それぞれNx,Ny,Nz)から得られる面配向係数fn=(Nx+Ny)/2−Nzを計算して求めた。
【0046】
(4)粒子の形状度
フィルム長手方向の断面を透過型電子顕微鏡にて観察し、個々の粒子あるいあは一次粒子径より小さい間隔で凝集体(集合体)を形成したものを一つの粒子をみなし、フィルム中に存在する各粒子の最大長さを最小長さを求め、その比を算出した。さらに少なくとも100個以上の粒子について値を求めその相加平均を形状度とした。
【0047】
そして、本発明における粒子の形状度は、前述の(1)式で定義されたようにフィルム中で観察される粒子の最小長さに対する最大長さの比で表されれる。ここで粒子の最大長さとは、個々の粒子あるいは一次粒子径より小さい間隔で形成される凝集体を一つの粒子と見なし、その輪郭に接する最長間隔の平行線間の距離であり、最小長さとはその輪郭に接する最短間隔の平行線間の距離である。
【0048】
(5)平均粒子径
フィルムの表面から熱可塑性樹脂をプラズマ低温灰化処理法で除去し粒子を露出させる。処理条件は熱可塑性樹脂は灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子の画像をイメージアナライザーで処理する。観察箇所を変えて粒子数5,000個以上で次の数値処理を行いそれによって求めた数平均径Dを平均粒径とする。
D=ΣDi/N
ここで、Diは粒子の円相当径、Nは粒子数である。
なお、内部粒子ではフィルムの切片断面を透過型顕微鏡観察により行ってもよい。
【0049】
(6)ジカルボン酸モノメチルエステル(MMT)含有量
フィルムから500mgを削り取り、これをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させる。これにメタノールを加え濾過した濾液を液体クロマトグラフにかけフィルム中のジカルボン酸モノメチルエステル量を定量した。
【0050】
(7)ラミネート性
板厚0.2mmのティンフリースチール金属板を加熱(フィルムの融点〜融点+30℃の範囲の温度で、非金属板側の面の面配向係数fnの平均値が0.02〜0.03となる条件)しておいて50m/分でフィルムを貼り合わせた後急冷し、金属板にラミネートさせた後のフィルムの面配向係数を測定する。これを10個のサンプルについて行い、その中の面配向係数の最大値と最小値の差により以下の基準でラミネート性を評価した。
特A級:0.005未満
A級:0.005以上0.01未満
B級:0.01以上0.02未満
C級:0.02以上
【0051】
(8)接着性(レトルト後の接着力)
40m/分でフィルムと加熱(フィルムの融点〜融点+30℃の範囲の温度で、非金属板側の面の面配向係数fnの平均値が0.02〜0.03となる条件)したTFS鋼板(厚さ0.2mm)にラミネート後、70℃の水槽で急冷した。該ラミネート鋼板を幅30mmに切り取り、一部をフィルムを残して鋼板のみをカットし、カットした部分に100gの錘を吊し125℃、25分間のレトルト処理を行った。レトルト後の鋼板からのフィルムの剥離長さで評価を行った。
特A級:5mm未満
A級:10mm未満5mm以上
B級:15mm未満10mm以上
C級:15mm以上
【0052】
(9)耐摩耗性
上記ラミネート鋼板をしごき成形機、絞り成形機でコイル5000m成形(成形比(最大厚み/最小厚み)=1.70,成形可能温度領域で成形)し、缶(直径6cm,高さ12cm)を得た。この時のツールに付着したフィルムの削れ量を測定し、耐摩耗性を評価した。
A級:1mg未満
B級:1〜3mg
C級:3mgを越えるもの
【0053】
(10)味特性
上記缶に125℃×25分のレトルト処理を行った後、水を充填し、40℃密封後1ヶ月放置し、その後開封して液の濁りにより、以下の基準で評価した。
特A級:全く濁りがみられない。
A級:濁りがほとんど見られない。
B級:やや濁りが見られる。
C級:全面に濁りが見られる。
D級:全面にかなり濁っている。
【0054】
(11)耐熱性
上記缶を200℃、30秒間熱処理した後に耐衝撃性を測定し、その優劣で耐熱性を評価した。耐衝撃性は成形缶内に1%の食塩水を入れて、60℃で1日放置後食塩水中の電極と金属缶に6vの電圧をかけて10秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
A級:0.1mA未満
B級:0.1mA以上0.2mA未満
C級:0.2mA以上0.4mA以下
D級:0.4mA以上
【0055】
実施例1
金属板側層を構成するポリエステルAとして平均粒子径1.6μmの単分散型球状シリカを0.1重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点224℃,カルボキシル末端量39当量/トン)と、非金属板側層を構成するポリエステルBとして2次粒子径0.4μm(一次粒子径40nm、平均粒径0.4μm)の凝集乾式シリカ粒子を0.05重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量24当量/トン)を各々180℃3時間真空乾燥後、別々の押出機に供給し、ピノールにてA/B=1:4に積層し、口金から吐出後、静電印加(6.7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度100℃にて長手方向(縦方向)に3.05倍し、予熱温度95℃(3秒)、延伸温度110℃で幅方向(横方向)に3.05倍延伸した後、180℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、厚さ20μm、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は非金属板側層で12であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量(MMT量)は6ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量(MMT量)は0.6ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、優れた特性を得ることができた。
【0056】
実施例2
実施例1における非金属板側層を構成するポリエステルBとして2,6ーナフタレンジカルボン酸共重合PET(固有粘度0.72dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量20当量/トン)とし、縦延伸温度を110℃、横延伸温度を120℃とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は金属板側層で11であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は10ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.3ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、優れた特性を得ることができた。
【0057】
実施例3
実施例1における金属板側層を構成するポリエステルAとしてPET(固有粘度0.68dl/g,融点255℃,カルボキシル末端量37当量/トン)、非金属板側層を構成するポリエステルBとしてPET(固有粘度0.68dl/g,融点255℃,カルボキシル末端量28当量/トン)とし、縦延伸温度を110℃、横延伸温度を120℃とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は非金属板側層で12であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は12ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、優れた特性を得ることができた。
【0058】
実施例4
実施例1における金属板側層を構成するポリエステルAのイソフタル酸共重合PETを固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量39当量/トンとし、この層の粒子含有量を0.09重量%とするとともに、非金属板側層を構成するポリエステルBを平均粒子径1.2μmの単分散型球状シリカを0.12重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量24当量/トン)とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中におけるコロイダルシリカ粒子の形状度は非金属板側層で1であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は13ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、良好な特性を得ることができた。
【0059】
実施例5
実施例1における金属板側層を構成するポリエステルAのイソフタル酸共重合PETを固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量25当量/トンとし、この層に2次粒子径0.3μmの凝集乾式シリカ粒子を0.05重量%含有させるとともに、非金属板側層を構成するポリエステルBを2次粒子径0.4μmの凝集乾式シリカ粒子を0.06重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量38当量/トン)とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は非金属板側層で12であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は13ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、良好な特性を得ることができた。
【0060】
実施例6
金属板側層を構成するポリエステルAとして2次粒子径0.4μmの凝集乾式シリカ粒子を0.08重量%と粒子径1.6μmの単分散型球状シリカを0.05重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量36当量/トン)と非鋼板側層B層を構成するポリエステルBとして2次粒子径0.4μmの凝集乾式シリカ粒子を0.02重量%と粒子径1.6μmの単分散型球状シリカを0.10重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量24当量/トン)を各々180℃3時間真空乾燥後、別々の押出機に供給し、ピノールにてA/B=1:1に積層し、口金から吐出後、静電印加(6.7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度100℃にて長手方向に3.05倍し、予熱温度95℃(3秒)、延伸温度110℃で幅方向に3.05倍延伸した後、180℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における全粒子の平均で形状を出す粒子の形状度は金属板側層で8、非金属板側層で7であった。また、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は8ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、良好な特性を得ることができた。
【0061】
実施例7
実施例1における金属板側層を構成するポリエステルAの粒子含有量を0.07重量%とするとともに、非金属板側層を構成するポリエステルBのイソフタル酸共重合PETを固有粘度0.69dl/g、融点247℃、カルボキシル末端基30当量/トンとし、この層の粒子含有量を0.10重量%とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は非金属板側層で12であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は13ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、優れた特性を得ることができた。
【0062】
比較例1
金属板側層を構成するポリエステルAとして粒子径0.6μmの凝集乾式シリカ粒子を0.5重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点220℃,カルボキシル末端量30当量/トン)と、非金属板側層を構成するポリエステルBとして粒子径1.2μmの単分散型球状シリカを0.3重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点220℃,カルボキシル末端量20当量/トン)を各々180℃3時間真空乾燥後、別々の押出機に供給し、ピノールにてA/B=1:4に積層し、口金から吐出後、静電印加(6.7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度95℃にて長手方向に3.05倍し、予熱温度95℃(3秒)、延伸温度110℃で幅方向に3.05倍延伸した後、180℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における単分散型球状シリカの形状度は非金属板側層で1であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.3ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は8ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、劣るものであった。
【0063】
比較例2
粒子径0.3μmの球状炭酸カルシウム粒子を0.22重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65dl/g,融点210℃,カルボキシル末端量18当量/トン)を180℃3時間真空乾燥後、単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加(6.9kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度92℃にて長手方向に3.4倍し、予熱温度105℃(5秒)、延伸温度110℃で幅方向に3.3倍延伸した後、172℃にて弛緩5%、10秒間熱処理して厚さ20μmの二軸延伸フィルムを得た。フィルム中における粒子の形状度は1であり、フィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は7ppmであった。得られたフィルムの各特性は表1に示す通り大きく低下したものであった。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、二軸延伸積層ポリエステルフィルムからなる金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムの各層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの量を特定するすることにより、優れたラミネート性、缶成形時の耐摩耗性、レトルト後のフィルムと金属板板の接着性を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器用として好適な二軸延伸フィルムからなる金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムに関するものである。更に詳しくは、金属板へのラミネート性、成形時の耐摩耗性、レトルト後の接着性、成形缶上部の長期安定性に優れ、成形加工などにより製造される金属缶等の容器の、特にレトルト後にも優れた接着性を発揮できる金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属缶の缶内面及び外面は腐食防止を目的として、エポキシ系、フェノール系等の各種熱硬化性樹脂を溶剤に溶解または分散させたものを塗布し、金属表面を被覆することが広く行われてきた。しかしながら、このような熱硬化性樹脂の被覆方法では、塗料の乾燥に長時間を要し、生産性が低下したり、多量の有機溶剤による環境汚染など好ましくない問題がある。
【0003】
これらの問題を解消する方法として、金属缶の材料である鋼板、アルミニウム板あるいは該金属板にめっき等各種の表面処理を施した金属板にフィルムをラミネートする方法がある。そして、フィルムのラミネート金属板を絞り成形やしごき成形加工して金属缶を製造する場合、フィルムには次のような特性が要求される。
(1)金属板へのラミネート性に優れていること。
(2)金属板との密着性に優れていること。
(3)成形性に優れ、成形後にピンホールなどの欠陥を生じないこと。
(4)金属缶に対する衝撃によって、ポリエステルフィルムが剥離したり、クラック、ピンホールが発生したりしないこと。
(5)缶の内容物の香り成分がフィルムに吸着したり、フィルムからの溶出物によって内容物の風味がそこなわれないこと(以下味特性と記載する)。
【0004】
これらの要求を満たすために多くの提案がなされており、例えば特開平2−57339号公報には特定の結晶性を有する共重合ポリエステルフィルム等が開示されている。しかしながら、近年、製缶速度の向上に伴い、ラミネート金属板からの製缶成形比が増大しており、より一層のラミネート性、成形性、フィルムと金属板との密着性の向上が望まれている。また、成形比が増加することにより、特に缶成形後のレトルト後のフィルムと金属板との密着性がより重要になってきており、レトルト後の長期安定性もより厳しく要求されている。上記の提案はこれらの要求特性を総合的に満足できるものではなくなってきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、上記した従来技術の問題を解消するとともに最近のより厳しい要求特性を満たすために、優れた耐摩耗性や味特性とともに、金属板とのラミネート特性、および、特にレトルト後にも優れた接着性を発現できる、金属缶に用いて好適な金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムは、2層以上の二軸延伸積層ポリエステルフィルムであって、金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppmよりも多く、非金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppm以下であることを特徴とするものからなる。
【0007】
すなわち、本発明においては、非金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルを、低く抑えることにより、フィルム層からの缶内等への溶出物の量を低く抑えて良好な味特性を確保するとともに、該層の成形加工性、耐摩耗性を良好に保ち、かつ、金属板側層のフィルムについては、この層のフィルム原料を後述のような方法で重合して、該フィルム層中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルを、非金属板側層に比べ多めにすることで、優れた金属板とのラミネート特性、優れたレトルト後の接着性を発現させるようにしている。また、このような金属板側層のフィルムでは、粒子との親和性を高く維持できるので、適切な粒子を含有させることにより、さらに金属板とのラミネート特性、レトルト後の接着性を向上することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルとは、エステル結合により構成される高分子量体の総称であり、ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を用いることができる。一方、グリコール成分としては例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール等を用いることができる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
【0009】
また、本発明のポリエステルは、とくに耐熱性をもたせる点から、主構成成分となるポリエステルとして、エチレンテレフタレートまたはエチレンナフタレート単位が80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。とくに、非金属板側層を構成するポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたは2,6−ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0010】
本発明では、上記ポリマを2種以上ブレンドして使用してもかまわない。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、共重合ポリエステルにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
【0011】
本発明においては、耐熱性、熱寸法安定性の点から、ポリエステルを二軸延伸フィルムにすることが必要である。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよい。
【0012】
そして、本発明に係るフィルムは、非金属板側層と金属板側層とを有する2層以上の二軸延伸積層ポリエステルフィルムである必要がある。本発明は、このような2層以上の二軸延伸積層ポリエステルフィルムとした上で、非金属板側層と金属板側層とにそれぞれ最適な特性を持たせようとしたものである。
【0013】
本発明に係る二軸延伸積層ポリエステルフィルムでは、まず、金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppmよりも多くなるようにしている。ジカルボン酸モノメチルエステルをかかる量以上含有させる方法としては特に限定されないが、たとえばポリエステルを製造する際にジカルボン酸成分としてジカルボン酸エステルを使用しグリコール成分とのエステル交換反応によりポリエステルを得る方法を挙げることができる。
【0014】
金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppmよりも多くことにより、金属板とのラミネート特性とともに、とくにレトルト後の金属板との接着性を向上することができる。また、上記のような製法で作られたこのような金属板側層のフィルム層は、粒子に対して高い親和性を持つことが可能であり、少量の粒子含有量でもって、高い耐摩耗性を発揮させることが可能になるとともに、金属板とのラミネート特性、レトルト後の接着性を一層向上することが可能になる。
【0015】
非金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルは2ppm以下とされる。2ppm以下とすることで、金属缶として飲料を充填した時に低溶出性とすることができ、優れた味特性が得られる。ジカルボン酸モノメチルエステル量をかかる量以下とする方法としては、特に限定されるものではないが、たとえばポリエステルを製造する際にジカルボン酸成分とグリコール成分とのエステル化反応によりポリエステルを得る方法を挙げることができる。
【0016】
このように、金属板側層、非金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの量を、それぞれ特定の範囲に制御することにより、金属板側層には優れた金属板とのラミネート特性、レトルト後の接着性、さらには耐摩耗性を持たせることが可能になるとともに、非金属板側層には、とくに優れた味特性を付与でき、各層それぞれに、要求に応じた望ましい特性を持たせることができる。
【0017】
また、フィルム表面にコロナ放電処理などの表面処理を施すことにより、接着性をさらに向上させることは特性を向上させる上で好ましい。その際、E値としては5〜50、好ましくは10〜45である。ここで、E値とはコロナ放電処理強度であり、印可電圧(Vp)、印可電流(Ip)、処理速度(S)、処理幅(Wt)の関数であり、E=Vp×Ip/S×Wtで表される。
【0018】
本発明に係る二軸延伸積層ポリエステルフィルムにおいては、非金属板側層、金属板側層ともに粒子を含有することが好ましい。とくに、非金属板側層のポリエステルが下記式(1)で定義されるフィルム中での形状度(粒子の最小長さdに対する最大長さDの比)1.1以上の粒子を含有しており、かつ、金属板側層のポリエステルの粒子含有量/非金属板側層のポリエステルの粒子含有量が1未満であることが好ましい。
形状度=D/d (1)
【0019】
非金属板側のフィルム層には、製缶時等の絞り加工時等に、特に表面に応力がかかるため耐摩耗性、耐削れ性が要求されるが、形状度の比較的大きい粒子をこの層に含有させることにより、表面に良好な滑り性を持たせつつ耐摩耗性、耐削れ性を向上させることができる。良好な滑り性を持たせることにより、フィルム自身の製造工程中におけるトラブルの発生も抑制でき、製造が容易化される。
【0020】
なお、本発明における粒子の形状度は、(1)式で定義されたようにフィルム中で観察される粒子の最小長さに対する最大長さの比で表され、後に定義した方法で求められる。ここで粒子の最大長さとは、個々の粒子あるいは一次粒子径より小さい間隔で形成される凝集体を一つの粒子と見なし、その輪郭に接する最長間隔の平行線間の距離であり、最小長さとはその輪郭に接する最短間隔の平行線間の距離である。
【0021】
また、より一層成形時の耐摩耗性を向上させる点から、非金属板側層のポリエステルに含有される粒子の凝集度が5〜100であることが好ましく、より好ましくは8〜80である。
【0022】
一方、金属板側層においても、良好な滑り性を持たせつつ耐摩耗性、耐削れ性を向上させ、かつ、金属板との良好な接着性を持たせるために、粒子を含有することが好ましいが、金属板側層にはとくに、金属板とのラミネート特性、レトルト後の接着性が要求されるので、これらの特性を損なわないように、粒子含有量は低く抑えておくことが好ましく、金属板側層のポリエステルの粒子含有量/非金属板側層のポリエステルの粒子含有量が1未満であることが好ましく、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下である。
【0023】
本発明の二軸延伸積層フィルムの厚さは、金属にラミネートした後の成形性、金属に対する被覆性、耐衝撃性、味特性の点で、3〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜35μmであり、特に好ましくは10〜30μmである。
【0024】
本発明においては、フィルムと金属板の接着性を向上させる点から、金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量が35当量/トン以上、中でも35〜50当量/トンであることが好ましく、特に好ましくは37〜47当量/トンである。また、フィルムからの溶出物の量を低く抑え味特性を向上させる点から、非金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量が35当量/トン未満であることが好ましく、特に好ましくは30当量/トン未満である。つまり、金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量が非金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量よりも多いことが好ましい。
【0025】
本発明におけるポリエステルの融解ピーク温度は、耐熱性、成形性の点から215〜265℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは220〜260℃であり、さらに好ましくは246〜260℃である。とくに、フィルムの主たる融解ピーク温度(融解ピーク温度測定において、first RUN として現れる融解ピーク温度)が246℃以上であることが好ましい。またエチレンテレフタレート単位が87モル%以上が好ましく、更に好ましくは90モル%以上である。ポリエステルの融解ピーク温度が215℃未満であると、耐熱性が低下し、缶成形後のレトルトや内容物を充填し高温で保存する時にフィルム内容物の流出やフィルム自体の軟化、熱劣化が生じるなどの問題が起こり好ましくない。また融解ピークが265℃を越えると成形性が低下し好ましくない。
【0026】
また、本発明においては、積層フィルムにおける各ポリエステルについては、よりラミネート性、レトルト後の金属板とフィルムの接着性を向上させる点から、非金属板側層を構成するポリエステルの融解ピーク温度(TmB)と金属板側層を構成するポリエステルの融解ピーク温度(TmA)の差(TmB−TmA)が0.5〜35℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.5〜10℃、さらに好ましくは0.5〜5℃である。
【0027】
また、積層フィルムの各層についても、非金属板側層については、とくに耐熱性、加工性を向上させる点から、該層を構成するポリエステルの融解ピーク温度が246〜260℃であることが好ましく、金属板側層については、とくに耐摩耗性、レトルト後の金属板との接着性を向上させる点から、該層を構成するポリエステルの融解ピーク温度が246〜260℃であることが好ましい。
【0028】
また、本発明における二軸延伸フィルムは、主にラミネート性、成形性の点から面配向係数が0.095〜0.130であることが好ましく、より好ましくは0.100〜0.120である。
【0029】
本発明においてはフィルムと金属板の接着性を向上させる点で、特にレトルト時のフィルムの収縮応力による剥離の影響を低減するために、125℃でのフィルム長手方向の熱収縮応力が0.1〜1.5MPaであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0MPaである。
【0030】
本発明において、主にフィルムと金属板の接着性向上の点から、125℃でのフィルム長手方向の線熱膨張係数を−140×10-6〜−5×10-6K-1にすることが好ましく、更に好ましくは−130×10-6〜−5×10-6K-1である。線熱膨張係数がこの範囲外であるとラミネート時に金属板との熱膨張挙動の違いから残留応力が発生し、そのため、その後の成形やレトルト時にフィルムにクラックや金属板との剥離が発生する場合がある。
【0031】
本発明においては、フィルムと金属板の接着性を向上させる点で、特にフィルムと金属板の接着界面におけるポリマー部分の接着面積及び厚みを増加させるために、少なくとも片面の表面から1μmでの粒子濃度R1と表面から0.1μmでの粒子濃度R2の比R1/R2が2〜200であることが好ましく、更に好ま
しくは3〜150である。
【0032】
本発明では、接着性、味特性をより一層向上させるためにポリエステルの固有粘度が0.6dl/g以上好ましく、さらに好ましくは0.62dl/g以上、特に好ましくは0.65以上である。固有粘度が0.6dl/g未満ではオリゴマの溶出などにより味特性が悪化するため好ましくない。
【0033】
本発明のポリエステルを製造する際には、従来公知の反応触媒、着色防止剤を使用することができ、反応触媒としては例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等、着色防止剤としては例えばリン化合物等挙げることができる。好ましくは、通常ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコール成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレート、ゲルマニウムβ−ナフトレート等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を挙げることができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。アンチモン化合物としては、特に限定されないが例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどが挙げられる。チタン化合物としては、特に限定されないがテトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物などが好ましく使用される。
【0034】
例えばポリエチレンテレフタレートを製造する際に、ゲルマニウム化合物として二酸化ゲルマニウムを添加する場合で説明する。テレフタル酸成分とエチレングリコールをエステル交換またはエステル化反応せしめ、次いで二酸化ゲルマニウム、リン化合物を添加し、引き続き高温、減圧下で一定のジエチレングリコール含有量になるまで重縮合反応せしめ、ゲルマニウム元素含有重合体を得る。さらに、好ましくは得られた重合体をその融点以下の温度において減圧下または不活性ガス雰囲気下で固相重合反応せしめ、アセトアデルヒドの含有量を減少させ、所定の固有粘度、カルボキシル末端基を得る方法等を挙げることができる。
【0035】
本発明におけるポリエステルは、好ましくはジエチレングリコール成分量が0.01〜3.5重量%、さらに好ましくは0.01〜2.5重量%、特に好ましくは0.01〜2.0重量%であることが製缶工程での熱処理、製缶後のレトルト処理などの多くの熱履歴を受けても優れた味特性を維持する上で望ましい。このことは、200℃以上での耐酸化分解性が向上するものと考えられ、さらに公知の酸化防止剤を0.0001〜1重量%添加してもよい。また、特性を損ねない範囲でジエチレングリコールをポリマ製造時に添加してもよい。
【0036】
また、味特性を良好にする上で、フィルム中のアセトアルデヒドの含有量を好ましくは25ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下とすることが望ましい。アセトアルデヒドの含有量が25ppmを越えると味特性に劣る。フィルム中のアセトアルデヒドの含有量を25pm以下とする方法は特に限定されるものではないが、例えばポリエステルを重縮反応等で製造する際の熱分解によって生じるアセトアルデヒドを除去するため、ポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において、ポリエステルの融点以下の温度で熱処理する方法、好ましくはポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において155℃以上、融点以下の温度で固相重合する方法、ベント式押出機を使用して溶融押出する方法、ポリマを溶融押出する際に押出温度を高融点ポリマ側の融点+30℃以内、好ましくは融点+25℃以内で、短時間、好ましくは平均滞留時間1時間以内で押出す方法等を挙げることができる。
【0037】
本発明における二軸延伸積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが例えば各ポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の各溶融押出機に供給し、たとえばポリマーの段階で所定の積層を行い、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸シートを得る方法が挙げられる。延伸方式としては、同時二軸、逐次二軸延伸いずれでもよいが、該未延伸シートをフイルムの長手方向及び幅方向に延伸、熱処理し、目的とする面配向度のフィルムを得る。延伸倍率としてはそれぞれの方向に1.6〜4.2倍、好ましくは1.7〜4.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+100℃以下であれば任意の温度とすることができるが、通常は80〜170℃が好ましい。更に二軸延伸の後にフイルムの熱処理を行うが、この熱処理はオ−ブン中、加熱されたロ−ル上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は120℃以上245℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは120〜240℃である。また熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行うのが好ましい。熱処理はフイルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行ってもよい。
【0038】
本発明における添加粒子としては平均粒子径0.01〜10μmの公知の内部粒子、無機粒子および/または有機粒子などの外部粒子の中から任意に選定される粒子を含有させることができる。特に平均粒子径0.1〜5μmの粒子が前述の如く特定量含有されていることが缶内面に使用されるフィルムとして好ましい。10μmを越える平均粒子径を有する粒子を使用するとフィルムの欠陥が生じ易くなるので好ましくない。粒子としては例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー等の無機粒子およびスチレン、シリコ−ン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができる。なかでも湿式および乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができる。これらの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子は二種以上を特性を損ねない範囲で併用してもよい。
【0039】
さらに、缶内面に使用される場合、中心線平均粗さRaは好ましくは0.005〜0.07μm、さらに好ましくは0.008〜0.05μmである。さらに、最大粗さRtとの比Rt/Raが4〜50、好ましくは6〜40であると高速製缶性が向上する。また、特に飲料面側の中心線平均粗さRaは好ましくは0.002〜0.04μm、さらに好ましくは0.003〜0.03μmであると味特性が向上するので好ましい。
【0040】
また本発明のフィルム上には各種コーティングを施してもよく、その塗布化合物、方法、厚みは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されない。
【0041】
本発明における金属板とは特に限定されないが、成形性の点で鉄やアルミニウムなどを素材とする金属板が好ましい。さらに、鉄を素材とする金属板の場合、その表面に接着性や耐腐食性を改良する無機酸化物被膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被覆層を設けてもよい。特に金属クロム換算値でクロムとして6.5〜150mg/m2 のクロム水和酸化物が好ましく、さらに、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどを設けてもよい。スズメッキの場合0.5〜15mg/m2 、ニッケルまたはアルミニウムの場合1.8〜20g/m2 のメッキ量を有するものが好ましい。
【0042】
本発明の容器用二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、金属板等にラミネートした後、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶の内面被覆用に好適に使用することができる。また、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底の被覆用としても良好な金属接着性、成形性を有するため好ましく使用することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、各特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し、25℃において測定した。
【0044】
(2)ポリエステルの融解ピーク温度
ポリエステルを結晶化させ、示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC2型)により、10℃/分の昇温速度で測定し融解のピーク温度を融点とした。
【0045】
(3)面配向係数(fn)
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて長手方向,幅方向,厚み方向の屈折率(それぞれNx,Ny,Nz)から得られる面配向係数fn=(Nx+Ny)/2−Nzを計算して求めた。
【0046】
(4)粒子の形状度
フィルム長手方向の断面を透過型電子顕微鏡にて観察し、個々の粒子あるいあは一次粒子径より小さい間隔で凝集体(集合体)を形成したものを一つの粒子をみなし、フィルム中に存在する各粒子の最大長さを最小長さを求め、その比を算出した。さらに少なくとも100個以上の粒子について値を求めその相加平均を形状度とした。
【0047】
そして、本発明における粒子の形状度は、前述の(1)式で定義されたようにフィルム中で観察される粒子の最小長さに対する最大長さの比で表されれる。ここで粒子の最大長さとは、個々の粒子あるいは一次粒子径より小さい間隔で形成される凝集体を一つの粒子と見なし、その輪郭に接する最長間隔の平行線間の距離であり、最小長さとはその輪郭に接する最短間隔の平行線間の距離である。
【0048】
(5)平均粒子径
フィルムの表面から熱可塑性樹脂をプラズマ低温灰化処理法で除去し粒子を露出させる。処理条件は熱可塑性樹脂は灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子の画像をイメージアナライザーで処理する。観察箇所を変えて粒子数5,000個以上で次の数値処理を行いそれによって求めた数平均径Dを平均粒径とする。
D=ΣDi/N
ここで、Diは粒子の円相当径、Nは粒子数である。
なお、内部粒子ではフィルムの切片断面を透過型顕微鏡観察により行ってもよい。
【0049】
(6)ジカルボン酸モノメチルエステル(MMT)含有量
フィルムから500mgを削り取り、これをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させる。これにメタノールを加え濾過した濾液を液体クロマトグラフにかけフィルム中のジカルボン酸モノメチルエステル量を定量した。
【0050】
(7)ラミネート性
板厚0.2mmのティンフリースチール金属板を加熱(フィルムの融点〜融点+30℃の範囲の温度で、非金属板側の面の面配向係数fnの平均値が0.02〜0.03となる条件)しておいて50m/分でフィルムを貼り合わせた後急冷し、金属板にラミネートさせた後のフィルムの面配向係数を測定する。これを10個のサンプルについて行い、その中の面配向係数の最大値と最小値の差により以下の基準でラミネート性を評価した。
特A級:0.005未満
A級:0.005以上0.01未満
B級:0.01以上0.02未満
C級:0.02以上
【0051】
(8)接着性(レトルト後の接着力)
40m/分でフィルムと加熱(フィルムの融点〜融点+30℃の範囲の温度で、非金属板側の面の面配向係数fnの平均値が0.02〜0.03となる条件)したTFS鋼板(厚さ0.2mm)にラミネート後、70℃の水槽で急冷した。該ラミネート鋼板を幅30mmに切り取り、一部をフィルムを残して鋼板のみをカットし、カットした部分に100gの錘を吊し125℃、25分間のレトルト処理を行った。レトルト後の鋼板からのフィルムの剥離長さで評価を行った。
特A級:5mm未満
A級:10mm未満5mm以上
B級:15mm未満10mm以上
C級:15mm以上
【0052】
(9)耐摩耗性
上記ラミネート鋼板をしごき成形機、絞り成形機でコイル5000m成形(成形比(最大厚み/最小厚み)=1.70,成形可能温度領域で成形)し、缶(直径6cm,高さ12cm)を得た。この時のツールに付着したフィルムの削れ量を測定し、耐摩耗性を評価した。
A級:1mg未満
B級:1〜3mg
C級:3mgを越えるもの
【0053】
(10)味特性
上記缶に125℃×25分のレトルト処理を行った後、水を充填し、40℃密封後1ヶ月放置し、その後開封して液の濁りにより、以下の基準で評価した。
特A級:全く濁りがみられない。
A級:濁りがほとんど見られない。
B級:やや濁りが見られる。
C級:全面に濁りが見られる。
D級:全面にかなり濁っている。
【0054】
(11)耐熱性
上記缶を200℃、30秒間熱処理した後に耐衝撃性を測定し、その優劣で耐熱性を評価した。耐衝撃性は成形缶内に1%の食塩水を入れて、60℃で1日放置後食塩水中の電極と金属缶に6vの電圧をかけて10秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
A級:0.1mA未満
B級:0.1mA以上0.2mA未満
C級:0.2mA以上0.4mA以下
D級:0.4mA以上
【0055】
実施例1
金属板側層を構成するポリエステルAとして平均粒子径1.6μmの単分散型球状シリカを0.1重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点224℃,カルボキシル末端量39当量/トン)と、非金属板側層を構成するポリエステルBとして2次粒子径0.4μm(一次粒子径40nm、平均粒径0.4μm)の凝集乾式シリカ粒子を0.05重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量24当量/トン)を各々180℃3時間真空乾燥後、別々の押出機に供給し、ピノールにてA/B=1:4に積層し、口金から吐出後、静電印加(6.7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度100℃にて長手方向(縦方向)に3.05倍し、予熱温度95℃(3秒)、延伸温度110℃で幅方向(横方向)に3.05倍延伸した後、180℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、厚さ20μm、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は非金属板側層で12であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量(MMT量)は6ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量(MMT量)は0.6ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、優れた特性を得ることができた。
【0056】
実施例2
実施例1における非金属板側層を構成するポリエステルBとして2,6ーナフタレンジカルボン酸共重合PET(固有粘度0.72dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量20当量/トン)とし、縦延伸温度を110℃、横延伸温度を120℃とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は金属板側層で11であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は10ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.3ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、優れた特性を得ることができた。
【0057】
実施例3
実施例1における金属板側層を構成するポリエステルAとしてPET(固有粘度0.68dl/g,融点255℃,カルボキシル末端量37当量/トン)、非金属板側層を構成するポリエステルBとしてPET(固有粘度0.68dl/g,融点255℃,カルボキシル末端量28当量/トン)とし、縦延伸温度を110℃、横延伸温度を120℃とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は非金属板側層で12であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は12ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、優れた特性を得ることができた。
【0058】
実施例4
実施例1における金属板側層を構成するポリエステルAのイソフタル酸共重合PETを固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量39当量/トンとし、この層の粒子含有量を0.09重量%とするとともに、非金属板側層を構成するポリエステルBを平均粒子径1.2μmの単分散型球状シリカを0.12重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量24当量/トン)とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中におけるコロイダルシリカ粒子の形状度は非金属板側層で1であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は13ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、良好な特性を得ることができた。
【0059】
実施例5
実施例1における金属板側層を構成するポリエステルAのイソフタル酸共重合PETを固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量25当量/トンとし、この層に2次粒子径0.3μmの凝集乾式シリカ粒子を0.05重量%含有させるとともに、非金属板側層を構成するポリエステルBを2次粒子径0.4μmの凝集乾式シリカ粒子を0.06重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量38当量/トン)とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は非金属板側層で12であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は13ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、良好な特性を得ることができた。
【0060】
実施例6
金属板側層を構成するポリエステルAとして2次粒子径0.4μmの凝集乾式シリカ粒子を0.08重量%と粒子径1.6μmの単分散型球状シリカを0.05重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量36当量/トン)と非鋼板側層B層を構成するポリエステルBとして2次粒子径0.4μmの凝集乾式シリカ粒子を0.02重量%と粒子径1.6μmの単分散型球状シリカを0.10重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点226℃,カルボキシル末端量24当量/トン)を各々180℃3時間真空乾燥後、別々の押出機に供給し、ピノールにてA/B=1:1に積層し、口金から吐出後、静電印加(6.7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度100℃にて長手方向に3.05倍し、予熱温度95℃(3秒)、延伸温度110℃で幅方向に3.05倍延伸した後、180℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における全粒子の平均で形状を出す粒子の形状度は金属板側層で8、非金属板側層で7であった。また、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は8ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、良好な特性を得ることができた。
【0061】
実施例7
実施例1における金属板側層を構成するポリエステルAの粒子含有量を0.07重量%とするとともに、非金属板側層を構成するポリエステルBのイソフタル酸共重合PETを固有粘度0.69dl/g、融点247℃、カルボキシル末端基30当量/トンとし、この層の粒子含有量を0.10重量%とする以外は実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における凝集乾式シリカ粒子の形状度は非金属板側層で12であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は13ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.4ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、優れた特性を得ることができた。
【0062】
比較例1
金属板側層を構成するポリエステルAとして粒子径0.6μmの凝集乾式シリカ粒子を0.5重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点220℃,カルボキシル末端量30当量/トン)と、非金属板側層を構成するポリエステルBとして粒子径1.2μmの単分散型球状シリカを0.3重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69dl/g,融点220℃,カルボキシル末端量20当量/トン)を各々180℃3時間真空乾燥後、別々の押出機に供給し、ピノールにてA/B=1:4に積層し、口金から吐出後、静電印加(6.7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度95℃にて長手方向に3.05倍し、予熱温度95℃(3秒)、延伸温度110℃で幅方向に3.05倍延伸した後、180℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、厚さ20μmの二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中における単分散型球状シリカの形状度は非金属板側層で1であり、金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は0.3ppm、非金属板側層のフィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は8ppmであった。フィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、劣るものであった。
【0063】
比較例2
粒子径0.3μmの球状炭酸カルシウム粒子を0.22重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65dl/g,融点210℃,カルボキシル末端量18当量/トン)を180℃3時間真空乾燥後、単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加(6.9kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度92℃にて長手方向に3.4倍し、予熱温度105℃(5秒)、延伸温度110℃で幅方向に3.3倍延伸した後、172℃にて弛緩5%、10秒間熱処理して厚さ20μmの二軸延伸フィルムを得た。フィルム中における粒子の形状度は1であり、フィルム中の遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの含有量は7ppmであった。得られたフィルムの各特性は表1に示す通り大きく低下したものであった。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、二軸延伸積層ポリエステルフィルムからなる金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルムの各層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルの量を特定するすることにより、優れたラミネート性、缶成形時の耐摩耗性、レトルト後のフィルムと金属板板の接着性を得ることができる。
Claims (4)
- 2層以上の二軸延伸積層ポリエステルフィルムであって、金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppmよりも多く、非金属板側層のフィルム中に含有される遊離の芳香族ジカルボン酸モノメチルエステルが2ppm以下であることを特徴とする金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルム。
- 非金属板側層のポリエステルが下記式(1)で定義されるフィルム中での形状度(粒子の最小長さdに対する最大長さDの比)1.1以上の粒子を含有しており、かつ、金属板側層のポリエステルの粒子含有量/非金属板側層のポリエステルの粒子含有量が1未満である請求項1に記載の金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルム。
形状度=D/d (1) - 金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量が35当量/トン以上であり、該金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量が非金属板側層を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量よりも多い請求項1または2に記載の金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルム。
- フィルムの主たる融解ピーク温度が246℃以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の金属板貼合わせ成形加工用ポリエステルフィルム。
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