JP4161592B2 - ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物 - Google Patents
ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4161592B2 JP4161592B2 JP2002054740A JP2002054740A JP4161592B2 JP 4161592 B2 JP4161592 B2 JP 4161592B2 JP 2002054740 A JP2002054740 A JP 2002054740A JP 2002054740 A JP2002054740 A JP 2002054740A JP 4161592 B2 JP4161592 B2 JP 4161592B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- weight
- polyarylene sulfide
- sulfide resin
- resin composition
- glass flakes
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた靭性、接着強度、寸法精度および成形加工性を合わせ有するポリアリーレンサルファイド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンサルファイド樹脂は、耐熱性、耐薬品性、成形性等に優れた特性を示す樹脂であり、その優れた特性を生かし、電気・電子機器部材、自動車機器部材およびOA機器部材等に幅広く使用されている。ポリアリーレンサルファイド樹脂は、ガラス繊維等の繊維状無機充填材や他の無機充填材を配合することにより、機械的強度、耐熱性、剛性等のエンジニアリングプラスチックスとして要求される性能を大きく向上させることができる。しかしながら、ポリアリーレンサルファイド樹脂に限らずプラスチックスをガラス繊維のような繊維状無機充填材で強化した場合には、成形収縮率の異方性が大きく、成形品に変形、すなわち「そり」が生じるという問題がある。かかる問題を改善する方法として、ガラスビーズなどの粒状物を用いたり、タルク、マイカ(雲母)、ガラスフレークなどの板状無機充填材を用いるなどの方法が数多く提案されてきている。また、繊維状無機充填材と板状無機充填材を併用して、強度と変形の両特性を合わせ満足させることが提案されている。
【0003】
しかしながら、ポリアリーレンサルファイド樹脂は、これらの方法でそりの改良はできるものの、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート等の各種エンジニアリングプラスチックスと比較し、靭性が乏しく、またエポキシ接着剤による接着強度が低いといった欠点を改善することはできないため、多くの用途への適用が制限されている。
【0004】
例えば、特開平4−72356号公報には、ポリアリーレンサルファイド樹脂に白マイカを配合し、そり、ウエルド強度の改良されたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物が開示されている。しかしながら、効果は見られるものの、引張伸び、ウエルド強度に代表される靭性の改良効果は満足できるものではない。また、各種機器部材での使用において重要な材料特性となる接着強度の改良効果については明確にされていない。
【0005】
さらに、特開平6−122824号公報に開示された、ポリアリーレンサルファイド樹脂に対し、平均繊維径9μm以上のガラス繊維とフレーク径0.5mm以上のものが50重量%以上含まれ、かつアスペクト比が10〜500であるガラスフレークを配合してなる組成物では、耐摩耗性は改善されるものの、引張伸び、ウエルド強度に代表される靭性、接着強度、そりの改良効果については明確にされていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた靭性、接着強度、寸法精度および成形加工性を合わせ有するポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)(a)溶融粘度が100〜5,000ポイズであるポリアリーレンサルファイド樹脂60〜98重量%、(b)無水マレイン酸含有オレフィン共重合体1〜40重量%、(c)多官能性イソシアネート0.1〜5重量%からなる樹脂混合物100重量部に対し、
(2)ガラスフレークを20〜150重量部
配合してなり、該ガラスフレークが、(i)重量平均フレーク径が100〜300μm、アスペクト比が20〜80であるガラスフレーク20〜80重量%と(ii)重量平均フレーク径が400〜800μm、アスペクト比が100〜200であるガラスフレーク80〜20重量%からなるものであることを特徴とするポリアリーレンサルファイド樹脂組成物に関するものである。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明に使用されるポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は、測定温度315℃、荷重10kgの条件下、直径1mm、長さ2mmのダイスを用いて高化式フローテスターで測定したものであり、100〜5,000ポイズ、好ましくは200〜3,000ポイズである。溶融粘度が100ポイズ未満では靭性およびウエルド強度の改良効果が乏しく、溶融粘度が5,000ポイズを越えると成形加工がし難く、好ましくない。
【0011】
本発明に使用されるポリアリーレンサルファイド樹脂は、その構成単位としてp−フェニレンサルファイド単位
【0012】
【化1】
【0013】
を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましい。
【0014】
また、構成単位が30モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、下記に示されるm−フェニレンサルファイド単位、
【0015】
【化2】
【0016】
o−フェニレンサルファイド単位、
【0017】
【化3】
【0018】
フェニレンサルファイドスルホン単位、
【0019】
【化4】
【0020】
フェニレンサルファイドケトン単位、
【0021】
【化5】
【0022】
フェニレンサルファイドエーテル単位、
【0023】
【化6】
【0024】
ジフェニレンサルファイド単位、
【0025】
【化7】
【0026】
置換基含有フェニレンサルファイド単位、
【0027】
【化8】
【0028】
分岐構造含有フェニレンサルファイド単位、
【0029】
【化9】
【0030】
などの共重合単位を含有していても差し支えない。
【0031】
ポリアリーレンサルファイド樹脂の合成に使用されるアルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびそれらの混合物が挙げられ、これらは水和物の形で使用しても差し支えない。これらアルカリ金属硫化物は、水硫化アルカリ金属とアルカリ金属塩基とを反応させることによって得られるが、ジハロベンゼンの重合系内への添加に先立ってその場で調整されても、また系外で調整されたものを用いても差し支えない。
【0032】
ジハロベンゼンとしては、p−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジヨードベンゼン、1−クロロ−4−ブロモベンゼンなどが挙げられる。
【0033】
重合溶媒としては、極性溶媒が好ましく、特に非プロトン性で高温でアルカリに対して安定な有機アミドが好ましい溶媒である。極性溶媒の若干の例としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素などおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
また、アルカリ金属硫化物およびジハロベンゼンの仕込量は、モル比で(アルカリ金属硫化物):(ジハロベンゼン)=1.00:0.90〜1.10の範囲とすることが好ましい。
【0035】
また、溶媒として使用される極性溶媒の量は、重合によって生成するポリマーに対し150〜3500重量%、好ましくは250〜1500重量%となる範囲である。重合は200〜300℃、好ましくは220〜280℃にて0.5〜30時間、好ましくは1〜15時間攪拌下にて行われる。
【0036】
さらに、本発明に使用されるポリアリーレンサルファイド樹脂は、直鎖状のものであっても、酸素存在下高温で処理し、架橋したものであっても、トリハロ以上のポリハロ化合物を少量添加して若干の架橋または分岐構造を導入したものであっても、窒素などの非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。また、上記のポリアリーレンサルファイド樹脂は、脱イオン処理(酸洗浄や熱水洗浄など)、あるいはアセトン、メチルアルコールなどの有機溶媒による洗浄処理を行うことによってイオン、オリゴマーなどの不純物を低減させたものでもよい。接着性の面から、酸素存在下での高温処理を行っていない実質的に直鎖状のポリアリーレンサルファイド樹脂、あるいはアミノ基、水酸基、カルボキシル基を置換基として有するポリアリーレンサルファイド樹脂が好ましい。
【0037】
本発明に使用されるポリアリーレンサルファイド樹脂の配合量は、60〜98重量%、好ましくは75〜95重量%である。配合量が98重量%を越えると本発明の改良効果が少なく、60重量%未満の場合は耐熱性、強度の低下が顕著となり、また加工性も悪化するため好ましくない。75〜95重量%では本発明の改良効果が著しいため好ましい。
【0038】
本発明に使用される無水マレイン酸含有オレフィン共重合体は、市販のものが使用できる。本発明に使用される無水マレイン酸含有オレフィン共重合体の種類は特に限定されないが、曲げ剛性率[測定方法はASTM D747(1995年)準拠]が80MPa以下、かつ引張破壊伸び[測定方法はJIS K6730(1995年)準拠]が400%以上であり、ガラス転移温度が−20℃以下のものが、本発明の改良効果が特に著しいため好ましい。
【0039】
本発明に使用される無水マレイン酸含有オレフィン共重合体の配合量は、1〜40重量%、好ましくは3〜20重量%である。配合量が3〜20重量%では改良効果が著しく、ガスの発生が抑えられるため好ましい。
【0040】
本発明に使用される多官能性イソシアネートは、市販のブロック型、非ブロック型のものが使用できる。
【0041】
本発明に使用される多官能性ブロック型イソシアネートは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、そのイソシアネート基を揮発性の活性水素化合物と反応させて常温では不活性としたものである。多官能性ブロック型イソシアネートの種類は特に限定されないが、一般的には、アルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類などのブロック剤によりイソシアネート基がマスクされた構造を有する。これらのブロック型イソシアネートは、一般的に常温では反応しないため保存安定性に優れるが、通常140〜200℃の加熱によりイソシアネート基が再生され、優れた反応性を示すものである。
【0042】
また、本発明に使用される多官能性非ブロック型イソシアネートは、具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン、トリイソシアネートベンゼンなどが例示される。
【0043】
特に、効果、毒性および保存安定性などの取り扱い面から、多官能性ブロック型イソシアネートが好ましい。
【0044】
本発明に使用される多官能性イソシアネートの配合量は、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%である。配合量が0.1重量%未満では本発明の改良効果が少なく、また、5重量%を越えると成形時の分解ガスの発生および金型汚染が著しいため好ましくない。配合量が0.2〜2重量%では、改良効果が著しく、かつ、ガスの発生および金型汚染が抑えられるため好ましい。
【0045】
本発明で使用されるガラスフレークは、そり、加工性、成形品外観に対する要求を満足させるために、(i)重量平均フレーク径が100〜300μm、アスペクト比が20〜80であるガラスフレーク20〜80重量%と(ii)重量平均フレーク径が400〜800μm、アスペクト比が100〜200であるガラスフレーク80〜20重量%を併用するものである。
【0046】
本発明で使用されるガラスフレークは、樹脂との界面接着強度を向上させるため、必要によりシラン系,チタン系カップリング剤で表面処理をして使用することができる。また、取り扱い性を改良するため、そのフレークに適当なバインダーを用いて顆粒化して使用することもできる。バインダーとしてはウレタン系、エポキシ系またはウレタン−エポキシ系などが挙げられるが、特にエポキシ系およびウレタン−エポキシ系が樹脂との密着性、耐熱性に優れるため好ましい。ガラスフレークの組成は特に限定されるものではないが、Eガラスが入手しやすく、物性のバランスがよい。
【0047】
本発明で使用されるガラスフレークの配合量は、ポリアリーレンサルファイド樹脂混合物100重量部に対して20〜150重量部であり、好ましくは40〜100重量部である。20重量部未満では反りの改良効果が不十分であり、150重量部を越えると靭性、強度の低下が著しく、また成形性も悪化する。
【0049】
本発明では、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物にガラス繊維およびウィスカーから選ばれる繊維状強化材を配合することにより機械的強度が向上する。本発明ではガラス繊維およびウィスカーから選ばれる繊維状強化材を単独、あるいは2種以上組み合わせて使用してもよい。本発明に使用されるガラス繊維は、平均繊維径が3〜20μmのものであり、これらのガラス繊維としてはロービング、チョップドストランド、ミルドファイバーなどが使用される。また、ガラス繊維は公知のカップリング剤、バインダーで処理が施される。バインダーとしてはウレタン系、エポキシ系またはウレタン−エポキシ系などが挙げられるが、特にエポキシ系およびウレタン−エポキシ系が樹脂との密着性、耐熱性に優れるため好ましい。ウィスカーとしてはチタン酸カリウムウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ウォラストナイト等が挙げられる。本発明で用いられるウィスカーのアスペクト比は5〜40である。アスペクト比が5未満では強度の改良効果が不十分であり、40を越えると成形品の異方性が増大し、反りが悪化する。
【0050】
繊維状強化材の配合量は、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物100重量部に対して5〜100重量部であり、好ましくは10〜60重量部である。5重量部以下では強度の改良効果が不十分であり、100重量部を越えると成形品の異方性が増大し、反りが悪化する。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、タルク、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、ワラステナイト、ゼオライト、ガラスビーズ、ガラスパウダー、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどの粒状充填材を配合することができる。これらの充填材は2種以上を併用することができ、必要によりシラン系,チタネート系カップリング剤で表面処理をして使用することができる。
【0052】
さらに、本発明のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のポリアルキレンオキサイドオリゴマー系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物などの結晶核剤、離型剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。また、本発明のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物には本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンサルファイドスルホン、ポリアリーレンサルファイドケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアルキレンオキサイド等の1種以上を混合して使用することができる。
【0053】
本発明のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物の製造方法としては、従来公知の加熱溶融混練方法を用いることができる。例えば、単軸または二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダーなどによる加熱溶融混練方法が挙げられるが、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではないが、通常280〜400℃の中から任意に選ぶことができる。さらに、得られた組成物は、射出成形機、押出成形機、トランスファー成形機、圧縮成形機などを用いて任意の形状に成形することができる。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
参考例1(ポリアリーレンサルファイド樹脂の合成)
15lオートクレーブに、N−メチル−2−ピロリドンを5l仕込み、120℃に昇温した後、Na2S・2.8H2O 1866gを仕込み、攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、水を407g留出させた。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン 2080gを添加した。225℃に昇温し、2時間重合させた後、250℃に昇温し、さらに250℃にて1.3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却したスラリーを大量の水中に投入してポリマーを析出させ、濾別、純水による洗浄を繰り返し行った後、一晩加熱真空乾燥を行うことによりポリマーを単離した。得られたポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は220ポイズであった。この様にして得られたポリアリーレンサルファイド樹脂をPPS−Iとする。
【0056】
参考例2(ポリアリーレンサルファイド樹脂の合成)
参考例1で得られたポリアリーレンサルファイド樹脂(PPS−I)を、さらに空気雰囲気下235℃で加熱硬化処理し、溶融粘度2000ポイズとした。この様にして得られたポリアリーレンサルファイド樹脂をPPS−IIとする。
【0057】
参考例3(ポリアリーレンサルファイド樹脂の合成)
参考例2で得られたポリアリーレンサルファイド樹脂(PPS−II)を、さらに空気雰囲気下235℃で加熱硬化処理し、溶融粘度6000ポイズとした。この様にして得られたポリアリーレンサルファイド樹脂をPPS−IIIとする。
【0058】
参考例4(ポリアリーレンサルファイド樹脂の合成)
参考例1と同様にして重合を行った後、得られたポリアリーレンサルファイド樹脂を窒素雰囲気下235℃で加熱処理し、溶融粘度340ポイズとした。この様にして得られた実質的に熱酸化架橋されていないポリアリーレンサルファイド樹脂をPPS−IVとする。
【0059】
参考例5(ポリアリーレンサルファイド樹脂の合成)
15lオートクレーブに、N−メチル−2−ピロリドンを5l仕込み、120℃に昇温した後、Na2S・2.8H2O 1866gを仕込み、攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、水を407g留出させた。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン 2080gを添加した。225℃に昇温し、3時間重合させた後、250℃に昇温し、さらに250℃にて1.5時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却したスラリーを大量の水中に投入してポリマーを析出させ、濾別、純水およびアセトンによる洗浄を繰り返し行った。その後、さらに酸洗浄、中和を行った後、一晩加熱真空乾燥を行うことによりポリマーを単離した。得られたポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は480ポイズであった。この様にして得られたポリアリーレンサルファイド樹脂をPPS−Vとする。
【0060】
参考例6(アミノ基含有ポリアリーレンサルファイド樹脂の合成)
15lオートクレーブに、N−メチル−2−ピロリドンを5l仕込み、120℃に昇温した後、Na2S・2.8H2O 1866gを仕込み、約2時間かけて攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、水を407g留出させた。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン 2080gおよび3,5−ジクロロアニリン 22.9g(p−ジクロロベンゼンに対して約1モル%)を添加し、225℃に昇温し、3時間重合させた後、250℃に昇温し、さらに250℃にて2時間重合した。重合終了後、室温まで冷却したスラリーを一部サンプリングし、濾液を採取して、濾液中に残存する未反応の3,5−ジクロロアニリンをガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC−12A)で測定したところ、3,5−ジクロロアニリンの転化率は68%であった。残りのスラリーは、大量の水中に投入してポリマーを析出させ、濾別し、アセトン、純水による洗浄を行った後、一晩加熱真空乾燥を行うことによりポリマーを単離した。得られたアミノ基含有ポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は160ポイズであった。この様にして得られたポリマーを、さらに空気雰囲気下235℃で加熱硬化処理し、溶融粘度500ポイズとした。この様にして得られたアミノ基含有ポリアリーレンサルファイド樹脂をPPS−VIとする。
【0061】
例1
参考例1で得られたPPS−I、多官能性ブロック型イソシアネート(武田薬品工業(株)製、タケネート PW−2400)、無水マレイン酸含有オレフィン共重合体(エルフ・アトケム社製、ボンダイン AX−8390[曲げ剛性率<10MPa、引張破断伸び900%]、ガラスフレーク(重量平均フレーク径160μm、アスペクト比30)、およびガラス繊維を表1に示す割合で配合した後、二軸押出機を用いて330℃で溶融混練し、ペレット化した。
【0062】
ついで、成形品の反り変形量、引張強度、引張伸び、接着強度を評価するため、射出成形機によって試験片を作成し、以下の方法により測定を行った。結果を表2に示す。
【0063】
(a)反り変形量
70×70×2mmの平板を成形し、これを定盤上に乗せ、最も定盤から浮き上がり量の大きい角部の間隙を隙間ゲージを用いて測定し、反り変形量とした。
【0064】
(b)引張強度、引張伸び
引張強度、引張伸びの測定は、ASTM D638に準拠した。測定結果を表2に示す。
【0065】
(c)接着強度
接着剤として2液性エポキシ接着剤(アラルダイトXN5002/XNH5002)を使用し、接着面積1.27×1.0cm2、厚み80μmとなるように試験片に塗布し、100℃×1時間予備硬化、さらに150℃×3時間本硬化を行った。接着強度は、ASTM D−638に準拠して引張剪断接着強度の測定を行った。
【0066】
実施例1
参考例2で得られたPPS−IIを使用し、ガラスフレークとしてフレーク径の異なる2種を併用し(GFL−1;重量平均フレーク径160μm、アスペクト比30、GFL−2;重量平均フレーク径600μm、アスペクト比120)、その他の各成分を表1に示す割合で配合し、例1と同様の操作および評価を行った。配合組成を表1に、結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は反り変形量が極めて少なく、靭性、接着性および成形加工に優れたものであった。
【0067】
実施例2,3
ガラスフレークとしてフレーク径の異なる2種を併用し、その他の各成分を表1に示す割合で配合し、例1と同様の操作および評価を行った。配合組成を表1に、結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は反り変形量が極めて少なく、靭性、接着性および成形加工性に優れたものであった。
【0068】
例2〜7
各成分を表1に示す割合で配合し、例1と同様の操作および評価を行った。配合組成を表1に、結果を表2に示す。
【0069】
比較例1
参考例2で得られたPPS−IIを用い、各成分を表1に示す割合で配合し、実施例1と同様の操作および評価を行った。結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は成形加工性に優れるものであったが、反り変形量が大きく、靭性、接着性はいずれも劣るものであった。
【0070】
比較例2
参考例2で得られたPPS−IIを用い、各成分を表1に示す割合で配合し、実施例1と同様の操作および評価を行った。結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は成形加工性、靭性に優れるものであったが、反り変形量が極めて大きく、接着性に劣るものであった。
【0071】
比較例3
参考例2で得られたPPS−IIを用い、各成分を表1に示す割合で配合し、実施例1と同様の操作および評価を行った。結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は成形加工性に優れるものであったが、反り変形量が大きく、靭性、接着性はいずれも劣るものであった。
【0072】
比較例4
参考例3で得られたPPS−IIIを用い、各成分を表1に示す割合で配合し、実施例1と同様の操作および評価を行った。結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は極めて成形加工性が悪く、成形ができなかった。
【0073】
比較例5
参考例1で得られたPPS−Iを用い、各成分を表1に示す割合で配合し、実施例1と同様の操作および評価を行った。結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は成形加工性、接着性に優れるものであったが、反り変形量が極めて大きく、引張強度に劣るものであった。
【0074】
比較例6
参考例2で得られたPPS−IIを用い、各成分を表1に示す割合で配合し、実施例1と同様の操作および評価を行った。結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は成形加工性、靭性に優れるものであったが、反り変形量が極めて大きく、接着性に劣るものであった。
【0075】
【表1】
【表2】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、特定のポリアリーレンサルファイド樹脂と、配合量を特定した多官能性イソシアネート、無水マレイン酸含有オレフィン共重合体からなる樹脂混合物と、特定のガラスフレークを配合することにより得られる、優れた靭性、接着強度、寸法精度および成形加工性を合わせ有するポリアリーレンサルファイド樹脂組成物に関するものであり、その工業的価値は高い。
Claims (3)
- (1)(a)溶融粘度が100〜5,000ポイズであるポリアリーレンサルファイド樹脂60〜98重量%、(b)無水マレイン酸含有オレフィン共重合体1〜40重量%、(c)多官能性イソシアネート0.1〜5重量%からなる樹脂混合物100重量部に対し、
(2)ガラスフレークを20〜150重量部
配合してなり、該ガラスフレークが、(i)重量平均フレーク径が100〜300μm、アスペクト比が20〜80であるガラスフレーク20〜80重量%と(ii)重量平均フレーク径が400〜800μm、アスペクト比が100〜200であるガラスフレーク80〜20重量%からなるものであることを特徴とするポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。 - (1)前記樹脂混合物100重量部に対し、
(2)ガラスフレークを20〜150重量部であり、該ガラスフレークが、(i)重量平均フレーク径が100〜300μm、アスペクト比が20〜80であるガラスフレーク20〜80重量%と(ii)重量平均フレーク径が400〜800μm、アスペクト比が100〜200であるガラスフレーク80〜20重量%からなるものである、
(3)ガラス繊維およびウィスカーから選ばれる繊維状強化材を5〜100重量部
配合してなることを特徴とするポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。 - 前記樹脂混合物を構成する(a)の溶融粘度が100〜5,000ポイズであるポリアリーレンサルファイド樹脂が、実質的に熱酸化架橋されていないポリアリーレンサルファイド樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002054740A JP4161592B2 (ja) | 2002-02-28 | 2002-02-28 | ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002054740A JP4161592B2 (ja) | 2002-02-28 | 2002-02-28 | ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003253119A JP2003253119A (ja) | 2003-09-10 |
JP4161592B2 true JP4161592B2 (ja) | 2008-10-08 |
Family
ID=28665811
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002054740A Expired - Fee Related JP4161592B2 (ja) | 2002-02-28 | 2002-02-28 | ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4161592B2 (ja) |
Families Citing this family (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005306926A (ja) * | 2004-04-19 | 2005-11-04 | Toray Ind Inc | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形体 |
JP4961921B2 (ja) * | 2006-09-14 | 2012-06-27 | 東ソー株式会社 | ポリアリーレンスルフィド組成物 |
JP5029310B2 (ja) * | 2007-11-20 | 2012-09-19 | 東ソー株式会社 | ポリアリーレンスルフィド組成物 |
JP2010013515A (ja) * | 2008-07-02 | 2010-01-21 | Tosoh Corp | ポリアリーレンスルフィド組成物 |
KR101236117B1 (ko) | 2008-09-03 | 2013-02-21 | 주식회사 엘지화학 | 글래스 플레이크 복합물 및 이의 제조방법 |
US9725596B2 (en) * | 2012-03-23 | 2017-08-08 | Dic Corporation | Polyarylene sulfide resin composition and molded body |
US20220106486A1 (en) * | 2019-02-22 | 2022-04-07 | Dic Corporation | Polyarylene sulfide resin composition, molded body of same, method for producing polyarylene sulfide resin composition, and method for producing molded body |
-
2002
- 2002-02-28 JP JP2002054740A patent/JP4161592B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003253119A (ja) | 2003-09-10 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5158350B2 (ja) | ポリアリーレンスルフィド組成物 | |
JPH08269200A (ja) | 接着性に優れたポリアリーレンスルフィド | |
JP4161592B2 (ja) | ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物 | |
JP2010013515A (ja) | ポリアリーレンスルフィド組成物 | |
JP2505454B2 (ja) | ポリアリ−レンチオエ−テル組成物 | |
KR102502509B1 (ko) | 유동성이 우수한 폴리아릴렌 설파이드 수지 조성물 | |
JP3968839B2 (ja) | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 | |
JP3968840B2 (ja) | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 | |
JP5879896B2 (ja) | ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物 | |
JP2757339B2 (ja) | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 | |
JP7234666B2 (ja) | ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 | |
JPH10273593A (ja) | ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、電子部品素材 収納用容器及び電子部品 | |
JPH04159364A (ja) | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 | |
JP6926729B2 (ja) | ポリアリーレンスルフィド組成物 | |
JP3556996B2 (ja) | 接着性に優れたポリアリーレンスルフィド | |
JP2002167510A (ja) | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 | |
JP3216248B2 (ja) | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 | |
US20020062003A1 (en) | Polyarylene sulfide resin composition | |
JP2020079355A (ja) | ポリアリーレンスルフィド組成物及びそれからなる耐水圧部品 | |
JP5321440B2 (ja) | ポリアリーレンスルフィド組成物 | |
JP4873117B2 (ja) | ポリアリーレンスルフィド組成物及びそれよりなるケース | |
JP3815799B2 (ja) | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および光反射用成形品 | |
JP2023034488A (ja) | ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 | |
JP3216241B2 (ja) | ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 | |
JPH04258622A (ja) | ポリフェニレンスルフィド樹脂反応組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050105 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060915 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20061003 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061201 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070710 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070822 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080422 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080604 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080701 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080714 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110801 Year of fee payment: 3 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 4161592 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110801 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110801 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120801 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120801 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130801 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |