JP4158879B2 - 接着性、加工性、化成処理性および溶接性に優れたプレス加工用亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス加工用亜鉛めっき鋼板および亜鉛合金めっき鋼板(以下、これらを総称して「亜鉛系めっき鋼板」という)の潤滑処理に関し、より詳しくは、過酷な加工性を要求される状況においても優れたプレス加工性を確保でき、接着性と化成処理性とが両立し、さらにスポット溶接性が低下しない潤滑皮膜を設けたプレス加工用亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
特に接着性に関しては、この潤滑皮膜は、接着強度の弱い接着剤(例えば、鋼板補強用シート接着剤、高防錆スポットシーラ用接着剤、高発泡性充填シール剤等のマスチック型接着剤)に対しても安定した接着性が確保でき、極めて接着剤適合性に優れるとともに、接着性と両立させ難い化成処理性も確保できる点に特徴がある。
【0003】
【従来の技術】
溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金電気めっき鋼板等で代表される亜鉛系めっき鋼板は、その優れた耐食性から、自動車、家電、建材等に広く使用されており、今後もその需要はますます増大する傾向にある。
【0004】
亜鉛系めっき鋼板は、需要の増大に伴い、耐食性以外の様々な性能が求められるようになってきている。例えば、自動車車体用途では、プレス成形性に加えて、スポット溶接性または接着等の接合性、塗装性確保のために化成処理性が必要となる。
【0005】
しかし、亜鉛系めっき鋼板は、反応性に富み、かつ比較的柔らかい亜鉛の存在により、めっき剥離や金型焼付き等のためにプレス加工性が低下するという問題があり、成形性が要求される用途には、そのままでは使用できない。そのため、通常は潤滑油を塗油して加工性劣化を補う方法が採られるが、潤滑油では加工性が厳しい条件下において金型と鋼板とが接触する際に油膜切れを起こすことから、充分な成形性を確保できなかった。
【0006】
亜鉛系めっき鋼板に潤滑性を付与する従来技術として、例えば、特開平3−183797号および同3−249180号各公報には、Mn酸化物、または、リン酸を含有させたMn酸化物からなる無機潤滑皮膜を形成して、めっき皮膜と金型との金属接触を防止することが提案されている。
【0007】
特許第2819427 号公報には、アモルファス状のリン酸化物からなる無機潤滑皮膜が提案されている。また、特許第2691797 号および特許第2826902 号各公報には、下層に擬着防止機能皮膜として金属酸化皮膜を形成し、その上層にコロガリ潤滑機能皮膜としてリン酸化物、ホウ酸化物等の酸素酸化物塩、または、Si、Al、Ti等のコロイダル剤を主体とする皮膜を形成することが提案されている。
【0008】
さらに、特開2000−64054 号公報には、非晶質成分と結晶質成分のホパイトとを含有した塗布型のリン酸塩処理鋼板およびその製造方法が開示されている。
これらの従来技術における無機潤滑皮膜はいずれも、亜鉛系めっき鋼板の加工性 (プレス成形性) の向上と化成処理性の確保とを目的としたものであり、無機潤滑皮膜の接着剤との接着性については全く検討されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術が目指すように、自動車車体を想定した際の亜鉛系めっき鋼板の加工性の向上と化成処理性の確保とは非常に重要ではある。さらに、自動車車体の組立においては多種多様な接着剤が使われるようになってきたことから、亜鉛系めっき鋼板には、通常の鋼板と同様に、多様な接着剤で接着可能という広い接着適合性も求められている。
【0010】
自動車車体用に使用される接着剤には、大きく分けて2種類の接着剤がある。すなわち、構造用接着剤のような比較的接着強度の高い車体用接着剤と、パネルの補強や溶接部の防錆性の向上を目的とした比較的接着強度の弱いマスチック型接着剤とである。
【0011】
一般に、前述したような従来の無機潤滑皮膜は、接着剤との適合性が悪く、このような無機潤滑処理を施した亜鉛系めっき鋼板を自動車車体用鋼板として適用する際には、接着性の確保が大きな問題となる。
【0012】
かかる接着性の改善を目的として、例えば、特開平8−296058号公報には、無機潤滑処理の前に、その前処理としてアルカリ脱脂等でめっき表面を活性化し、無機潤滑皮膜とめっき層との密着性を向上させて、接着剤適合性を確保することが提案されている。しかし、この活性化処理は、接着強度の高い車体用接着剤に対しては接着性の改善効果が期待できるものの、接着強度の弱い接着剤、特に合成ゴムや発砲ウレタン樹脂を主成分としたマスチック型接着剤の場合には、充分な接着強度を確保できず、接着剤適合性を充分に改善できたとは言えない。
【0013】
自動車車体の組立における接着剤の適用方法として、接着剤の適用直後に比較的低い温度で、接着剤が充分に硬化しておらずに接着強度が弱い状態に仮焼付けを行った後 (プレキュア状態) 、塗装後の塗膜の焼付け時に、接着剤も同時に完全に硬化させて接着強度を確保する (フルキュア状態) という、2段焼付けも採用されている。従来の無機潤滑処理鋼板では、この仮焼付けの状態で、充分な接着強度を確保できないという問題もある。
【0014】
また、接着強度は、一般的に行われるせん断引張りのような、接着剤に局部的な応力集中が起こり難い評価方法では、充分に高い接着強度が確保できても、T字型に接着するため接着剤に局部的応力集中が生じやすいTピール剥離試験では、接着強度が極端に低下することがある。すなわち、せん断引張りのような試験だけでは、複雑な形状を有する車体パネルの接着性を考える際には、車体構造用途に充分な接着強度を有するか否かを確実に評価することはできない。
【0015】
本発明は、以上に述べた亜鉛系めっき鋼板の従来の無機潤滑処理技術の課題が解消され、マスチック型接着剤を含む多様な接着剤で接着した場合に高い接着強度を確保でき、プレキュア状態でも十分な接着強度を示し、かつT型の剥離試験でも高い接着強度を示すと同時に、化成処理性も確保され、かつ加工性や溶接性も十分な、無機潤滑処理を施したプレス加工用亜鉛系めっき鋼板を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、亜鉛系めっき鋼板の無機潤滑処理について、リン酸塩系の無機潤滑皮膜が有する極めて優れた加工性を損なうことなく、その課題であった接着性の改善を目指して検討した。接着性の改善については、マスチック型接着剤の使用、プレキュア状態さらにはT字型接着といった、接着強度が低くなる厳しい接着条件下においても、無処理の車体用鋼板と同等の接着強度を確保できることを目標とした。
【0017】
その結果、リン酸塩系の無機潤滑皮膜と接着剤との剥離が、その界面近傍で生じていることから、リン酸塩系皮膜の組成、特に皮膜最表面の組成を、リン酸の脱水縮合が進んだ高分子状態に制御することにより、上記目標を達成できる極めて優れた接着性が確保できることを見い出した。
【0018】
しかしながら、この接着適合性に極めて優れたリン酸塩系の無機潤滑皮膜は、極めて緻密であるため、例えば、自動車車体用鋼板に対して、塗装密着性や塗装後耐食性の向上を目的として恒常的に実施される化成処理(リン酸亜鉛処理)時に、全く皮膜が溶解せず、リン酸亜鉛結晶が析出しない、という化成不良が生じ易くなり、塗装密着性や塗装後耐食性の点で問題を生ずることが判明した。
【0019】
そこで、本発明者らは、接着性と化成処理性との両立を目指してさらに検討を重ねた結果、接着性に好適な化成処理工程で溶解し難い皮膜組成(以下、不溶性リン酸塩)と、通常の化成処理であるアルカリ脱脂およびリン酸亜鉛処理中に容易に溶解する皮膜組成(以下、可溶性リン酸塩)とが混在した皮膜を形成することにより、接着性と化成処理性とを高次元で両立させることができることを見出した。より具体的には、接着性に関しては、無機潤滑皮膜の表層状態が大きく影響を及ぼすため、不溶性リン酸塩を表面に濃化させ、逆に内部には可溶性のリン酸塩を濃化させることで、接着性と化成処理性との両立が可能となる。
【0020】
ここに、本発明は、亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板表面に、リン酸塩を主体とする無機潤滑皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板であって、この無機潤滑皮膜が、全体としてメタリン酸塩および/またはポリリン酸塩である不溶性リン酸亜鉛と、オルトリン酸塩である可溶性リン酸亜鉛との混在状態であり、かつ、無機潤滑皮膜の表層に不溶性リン酸亜鉛が存在するとともに表層より内部には可溶性リン酸亜鉛が存在し、無機潤滑皮膜中の不溶性リン酸亜鉛の量、可溶性リン酸亜鉛の量、および不溶性と可溶性のリン酸亜鉛合計量を、それぞれ、P量(mg/m2)として、P1、P2、および(P1+P2)としたとき、これらの量が下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする、プレス加工用亜鉛系めっき鋼板である。
0.10≦P1/(P1+P2)≦0.95 ・・・・(1)
5(mg/m2)≦(P1+P2)≦500(mg/m2) ・・・・(2)
【0021】
本発明のプレス加工用亜鉛系めっき鋼板の好適態様では、無機潤滑皮膜の最表面のZn、P、Oの元素組成が、Zn/PおよびO/Pの原子比で、下記(3)式および(4)式を満たすことが望ましい。
【0022】
(Zn/P)+1.0≦(O/P)≦3×(Zn/P)+1.5 ・・・・(3)
0.6≦(Zn/P)≦1.6 ・・・・(4)
これらの本発明にかかるプレス加工用亜鉛系めっき鋼板では、メタリン酸塩がメタリン酸亜鉛であるとともにポリリン酸塩がポリリン酸亜鉛であることが、例示される。
【0023】
別の観点からは、本発明は、亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板の表面に、オルトリン酸:10〜100g/Lと、ZnおよびP:重量比でZn/Pが0.1〜0.9と、リン酸縮合助剤とを含有し、さらに、pH1〜4および液温20〜80℃であって下記(5)式を満たす処理液を接触させることを特徴とする、上述した本発明に係るプレス加工用亜鉛系めっき鋼板の製造方法である。
【0024】
55≦(液温)+10×(液pH)≦100 ・・・・(5)
これらの本発明にかかるプレス加工用亜鉛系めっき鋼板の製造方法では、溶液に接触させる前に、亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板にアルカリ浸漬または酸浸漬、もしくは、アルカリ浸漬と酸浸漬とを組み合わせた前処理を行い、その後に水洗することが望ましい。
【0025】
皮膜全体のP量 (P1+P2) は、適当な定量分析法 (例、蛍光X線でのPの特性X線強度の分析、または1%重クロム酸水溶液でリン酸塩皮膜のみ溶解させる重量法または化学分析法)により求めることができる。一方、不溶性または可溶性リン酸塩の量 (P1またはP2) は、X線の回折強度から定量することができる。例えば、可溶性リン酸塩は通常はオルトリン酸亜鉛のホパイト結晶だけであるので、ホパイトの量をX線回折強度で定量してP2とし、この量を、上述のようにして求めた皮膜全体の合計P量から差し引くことにより、不溶性リン酸塩の量 (P1) を求めることができる。
【0026】
皮膜の表層における元素組成は、XPS(X線光電子分光法)により求めることができる。本発明において皮膜の表層とは、XPSで分析可能な表面領域を意味する。
【0027】
本発明による無機潤滑皮膜では、皮膜の表層に不溶性リン酸塩が濃化し、不溶性リン酸塩の比率は、皮膜の表層が皮膜の内部よりも高くなっている。皮膜の表層に不溶性リン酸塩が濃化していることは、表層の元素組成のZn/P比およびO/P比が、オルトリン酸塩の量(本発明でのXPS での測定条件によると、Zn/P比=1.7 〜1.9 、および、O/P=4.0 〜5.0)より小さいことにより、示される。
【0028】
本発明のプレス加工用亜鉛系めっき鋼板における無機潤滑皮膜が、加工性のみならず、接着性、化成処理性さらには溶接性にも優れる理由は、次のように考えられる。
リン酸は、オリトリン酸[H3PO4]から、脱水縮合を受けると、直鎖状に高分子化(巨大分子化)したピロリン酸(二リン酸)、トリポリリン酸(三リン酸)等のポリリン酸[Hn+4Pn+2O3n+7]になり、さらに脱水縮合が進むと、三次元的に架橋して高分子化したメタリン酸[HnPnO3n]を構成単位とするウルトラリン酸塩にまで、結合状態が大きく変化するという性質を有する。
【0029】
本発明者らは、脱水縮合の程度が異なる各種のリン酸水溶液で各種の亜鉛系めっき鋼板を処理し、接着性について調査した。その結果、処理に使用するリン酸の脱水縮合の程度によって形成される無機潤滑皮膜の接着性が大きく変化し、オルトリン酸処理では接着性が不十分であるが、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸の順で接着性が向上し、特にメタリン酸による処理で形成された皮膜が極めて接着性に優れていた。
【0030】
メタリン酸処理により形成された無機潤滑皮膜が極めて優れた接着性を有する理由は、完全に解明されたわけではないが、以下の機構によるものではないかと推測される。
【0031】
亜鉛系めっき鋼板をオルトリン酸の水溶液で処理すると、リン酸によるエッチング作用によってめっき皮膜の亜鉛が溶解し (Zn→Zn2++2e- ) 、生成した亜鉛イオンがリン酸イオンと反応して不溶性のオルトリン酸亜鉛が析出することで、リン酸塩皮膜が形成される (3Zn2++2PO4 3- → Zn3(PO4)2) 。オルトリン酸亜鉛は、100 ℃以下の温度では、4水塩のホパイト結晶[Zn3(PO4)2・4H2O] として析出する。このホパイト結晶は針状結晶であるので、ホパイトからなる無機潤滑皮膜が生成すると、皮膜の表面が荒れており、加工時の摺動性が低下して、加工性を劣化させる。また、ホパイト付着量が多いと、これが絶縁物であるため、スポット溶接等の抵抗溶接性も劣化する。
【0032】
さらに、結晶水を含むホパイトの皮膜がアルカリ性の接着剤と接触すると、アルカリ領域で溶解し易いホパイト結晶の溶解を生じて、接着剤との界面のホパイト結晶が脆弱になり、この部分から接着剤との剥離を生じることになる。
【0033】
また、リン酸、特にpHが非常に低いオルトリン酸で亜鉛系めっき鋼板を処理すると、前述しためっき層のエッチングにより溶解した亜鉛 (Zn2+) が過剰になり、ホパイト生成で消費される以上に亜鉛溶解量が多くなり、消費し切れずに残った溶解亜鉛イオンが皮膜乾燥時に酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛酸化物として析出するため、無機潤滑皮膜 (ホパイト皮膜) の上にこの亜鉛酸化物の脆弱な層が形成されることも、接着性の劣化要因になる。
【0034】
一方、脱水縮合反応を経て高分子化されたポリリン酸やメタリン酸が、そのめっきエッチング作用により生成した亜鉛イオンと反応して生成する、ポリリン酸亜鉛やメタリン酸亜鉛からなる無機潤滑皮膜は、耐アルカリ性に優れる上、エッチングにより一旦溶解した過剰の溶解亜鉛も、脱水縮合中に効果的に皮膜中に取り込まれる結果、無機潤滑皮膜と接着剤との界面に亜鉛の酸化物または水酸化物の脆弱な層が形成されることがない。そのため、非常に優れた接着性が発現されるものと推測される。
【0035】
また、高分子化されたメタリン酸亜鉛およびポリリン酸亜鉛(以下、「縮合リン酸亜鉛」と総称する)を主体とする皮膜とすることにより、従来のホパイトを主体としたリン酸亜鉛皮膜と比較し、より少ないP付着量でも加工性が向上する。本発明において、縮合リン酸亜鉛主体の皮膜とは、添加剤等による意識的な脱水縮合反応を利用した処理を施した皮膜で、縮合リン酸亜鉛を原子当量として10体積%以上含有している皮膜のことを言う。
【0036】
縮合リン酸亜鉛主体の皮膜が加工性に優れる理由は、前述のように、リン酸塩の高分子化が進行するに従って、従来のホパイトを主体としたリン酸亜鉛皮膜と比較し、より緻密で強固な固い皮膜に改質され、プレス成形時の金型とめっき層との金属接触による焼き付きが防止されるためであると考えられる。
【0037】
このように、リン酸亜鉛系の無機潤滑皮膜では、リン酸の高分子化の進行状態に応じて皮膜性能は大きく変化し、高分子化された不溶性の縮合リン酸亜鉛の皮膜を形成することが、接着性および加工性の向上に有効である。
【0038】
しかし、縮合リン酸亜鉛の皮膜は、化成処理 (リン酸亜鉛処理) 工程において、前処理に用いるアルカリ脱脂液や酸性であるリン酸亜鉛処理液に極めて溶解し難いために、化成処理を行ってもリン酸亜鉛結晶が析出し難く、化成不良となって塗装密着性や塗装後耐食性が低下する。
【0039】
一方、ホパイト結晶[Zn3(PO4)2・4H2O] は、アルカリ性や酸性の溶液中に溶解し易いので、化成処理性を確保するには、無機潤滑皮膜中に適正量のホパイト結晶を含有させることが望ましい。自動車車体製造工程で通常使用されるようなリン酸亜鉛系の化成処理液には、ホパイト結晶の耐アルカリ性改質のため、Mn、Ni等が添加されているが、このような改質用の添加元素を含有しないリン酸亜鉛系の無機潤滑皮膜の場合には、ホパイト結晶は可溶性であって、アルカリ脱脂液や酸性のリン酸亜鉛処理液中に溶解し易い。
【0040】
そこで、接着性と化成処理性とが両立した無機潤滑皮膜とするため、本発明では、不溶性リン酸塩である縮合リン酸亜鉛を皮膜表層に多く存在させ、表層より内部の皮膜には、化成処理で溶解し易い可溶性のリン酸塩であるホパイト結晶を多く存在させる。
【0041】
前述したように、リン酸亜鉛系無機潤滑皮膜の接着試験では、接着剤と無機潤滑皮膜との界面近傍を起点として破壊が始まることから、接着性に主に影響するのは皮膜の表層の構造であって、皮膜の内部の構造は接着性に大きく影響しない。そのため、本発明では、接着性に有利な、高分子化した不溶性の縮合リン酸亜鉛を無機潤滑皮膜の表層に濃化させ、接着性を高める。この縮合リン酸亜鉛主体の表層は固く緻密であることから、加工性や溶接性にも有利に作用する。
【0042】
一方、皮膜の内部に可溶性のホパイトがある程度残存していれば、この無機潤滑皮膜は、加工後の塗装前に行われるリン酸亜鉛処理工程において、アルカリ脱脂液やリン酸亜鉛処理液に、皮膜ごと溶解する。すなわち、皮膜表層が不溶性であっても、その内側が可溶性であれば、不溶性の表層も含めて、無機潤滑皮膜の全体が化成処理工程で完全に溶解して消失する。その結果、亜鉛系めっき鋼板をそのまま化成処理する場合と同様に、化成処理により通常のリン酸亜鉛結晶が析出し、化成処理性が確保される。
【0043】
このように、本発明では、皮膜の表層を化成処理性は悪いが接着性が改善される構造とするとともに、皮膜の内部を接着性は悪いものの化成処理性が優れた構造とすることによって、接着性と化成処理性とを高次元で両立させることができ、併せて加工性や溶接性も確保できる。このため、本発明によれば、接着性、加工性、化成処理性さらには溶接性がいずれも良好な、自動車車体用鋼板として極めて効果的な無機潤滑皮膜を、亜鉛系めっき鋼板の表面に形成できる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるプレス加工用亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の説明では、メタリン酸塩がメタリン酸亜鉛であるとともにポリリン酸塩がポリリン酸亜鉛である場合を例にとるが、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、これら以外のメタリン酸塩、ポリリン酸塩についても本願を適用することができる。このようなメタリン酸塩、ポリリン酸塩としては、例えばポリリン酸塩としてはZnnP2n+4O6n+14、メタリン酸塩としてはZnnP2nO6nを例示することができる。
【0045】
本発明で対象とする亜鉛系めっき鋼板とは、溶融亜鉛めっき法、電気亜鉛めっき法、蒸着めっき法、溶射法等を含む各種方法によって表面に亜鉛含有めっき層を形成された鋼板を意味する。めっきは、片面めっきと両面めっきのいずれであってもよい。めっき目付量は特に制限されないが、通常は片面当たり10g/m2以上100g/m2 以下の範囲である。
【0046】
めっき組成も、亜鉛を含有していれば特に制限されず、純Znめっき、ZnとFe、Al、Ni、Co等を含む1種もしくは2種以上の元素とZn合金めっき、さらにはこれらのめっきにSiO2、炭素等の微粒子を共析させた分散めっきの合金めっきなどを含む。55%Al−Zn溶融めっき鋼板のように、Znが少量元素であるめっきであってもよい。また、めっき層は1層には限られない。2層以上の多層のめっき皮膜を有したり、厚み方向に組成が連続的に変化するめっき皮膜とすることも可能であり、その場合にはめっき表層が亜鉛を含有するめっきになっていればよい。
【0047】
代表的な亜鉛系めっき鋼板としては、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気Zn−Ni合金めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板さらには溶融Zn−Al合金めっき鋼板等が挙げられる。このうち、自動車車体用としてよく使用されているのは、電気亜鉛めっき鋼板、電気Zn−Ni合金めっき鋼板さらには合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。
【0048】
本発明によれば、メタリン酸亜鉛および/またはポリリン酸亜鉛を含む不溶性リン酸塩と、オルトリン酸亜鉛 (ホパイト) からなる可溶性リン酸塩とが混在し、表層 (皮膜の表面) に不溶性リン酸塩が濃化するとともに内部には可溶性リン酸塩が存在している、リン酸亜鉛系無機潤滑皮膜を、亜鉛系めっき鋼板の表面に形成する。
【0049】
このような無機潤滑皮膜の形成方法として、最初に可溶性のホパイト結晶からなる層を所定の付着量で形成した後に、この層の上に不溶性リン酸亜鉛の層を形成するという、二段処理法が可能である。
【0050】
その場合、最初のホパイト結晶の析出は、通常のリン酸亜鉛化成処理と同様に、リン酸亜鉛処理液で亜鉛系めっき鋼板を処理することにより、実現される。使用する処理液は、オルトリン酸の水溶液であり、亜鉛イオンは下地層である亜鉛系めっきから供給される。ホパイト結晶析出を速めるために、亜鉛イオンを添加してもよい。さらには、エッチング効果を高めるために、フッ酸およびその塩であるエッチング剤を含有することが好ましい。ホパイト結晶を改質させるためのMnやNi等の添加剤を含有しない処理液が、アルカリ脱脂での溶解性の高いリン酸亜鉛皮膜を形成できることから、好ましい。この処理は、亜鉛系めっき鋼板をリン酸亜鉛処理液に、所定量のホパイトの析出に充分な時間接触させた後、水洗するという、いわゆる反応型処理により行うことが好ましい。
【0051】
このホパイト結晶からなる可溶性のリン酸亜鉛の層の上に形成する、高分子化された不溶性のリン酸亜鉛の層は、処理液を塗布した後に水洗せずに乾燥するという、いわゆる塗布型処理により行うことが好ましい。使用する処理液は、最初からメタリン酸および/またはポリリン酸イオンを含有する溶液であってもよい。あるいは、オルトリン酸イオンを含有する溶液を用いて、皮膜形成段階でオルトリン酸亜鉛の脱水縮合を進行させることにより、表層だけを高分子化された不溶性のリン酸亜鉛皮膜とすることもできる。また、この両者を併用することもできる。この処理液にホパイトが溶解するので、亜鉛イオンはホパイトから供給されるが、処理液中に亜鉛イオンの供給源やエッチング剤を含有させてもよい。
【0052】
最初からメタリン酸および/またはポリリン酸イオンを含有する処理液は、このイオンと亜鉛イオンとの反応で不溶性のリン酸亜鉛皮膜が直接形成されるため、効率よく皮膜形成を行うことができるのではあるが、溶液の安定性が低く、使用寿命が短くなる場合もある。
【0053】
オルトリン酸イオンを含有する処理液を使用する場合には、不溶性のリン酸亜鉛皮膜を形成するため、皮膜形成時に脱水縮合反応を促進させる必要がある。そのための手段としては、▲1▼処理液中に酸化剤を添加する、▲2▼液pHを高める、▲3▼焼付け温度を上げる、さらには▲4▼以上の操作▲1▼〜▲3▼を適宜組合わせる等が可能である。この手段は、次の一段処理に述べるのと基本的に同じであるが、二段処理における表層の不溶性リン酸亜鉛皮膜の形成の場合には、ホパイトを残す必要がないので、脱水縮合がより高度あるいは完全に進行するように条件を設定すればよい。例えば、酸化剤の添加量を増大させたり、焼付け温度を高めればよい。
【0054】
二段処理に替わる別の方法として、一段処理によって、本発明の無機潤滑皮膜を形成することもできる。すなわち、不溶性リン酸塩も可溶性リン酸塩も基本的にリン酸塩であり、その結合状態が異なるものであることから、処理液を塗布した後に直ちに乾燥する塗布型処理により、可溶性のホパイト結晶を析出させるとともに、高分子化された不溶性のリン酸塩処理を同時に形成する方法も考えられる。具体的には、不溶性リン酸亜鉛は可溶性リン酸亜鉛が脱水縮合したものであるから、上記二段処理の第二段階に相当する処理だけを行い、皮膜形成時のオルトリン酸亜鉛の脱水縮合による高分子化を、ホパイトが残存するように不完全に行うことによって、可溶性のホパイト結晶と不溶性の高分子化したリン酸亜鉛結晶とが一緒に混在した皮膜を生成することができる。この場合、めっき皮膜の溶解に伴う多量のZnの供給により、めっき表面から可溶性のホパイト結晶が成長していくため、可溶性のホパイト結晶が皮膜内部側に多くなり、不溶性の高分子化したリン酸亜鉛は皮膜表層に濃化するので、一段処理でも本発明の無機潤滑皮膜を形成することができる。
【0055】
この一段処理に使用する処理液には、オルトリン酸イオンの他に、皮膜形成中に脱水縮合を進行させてポリリン酸および/またはメタリン酸化する手段として酸化剤を含有させることが好ましい。好ましくは、さらに亜鉛イオンとエッチング剤も含有させる。例えば、オルトリン酸と第一リン酸亜鉛[Zn(H2PO4)2]を含有する水溶液に、フッ酸等のエッチング剤と硝酸亜鉛液等の促進剤と一緒に酸化剤を添加した酸性水溶液を使用できる。
【0056】
その際の処理液としては、オルトリン酸濃度を10〜100g/l含有した溶液をベースとしてZnを1〜10g/l 含有した溶液に、リン酸を脱水縮合反応させ、高分子化させるために、酸化剤を添加し、液pHを1〜3.5 に適正化させ、液温を20〜90℃にしたものが、好適である。さらに、ホパイト結晶析出促進のため、フッ酸およびその塩等のエッチング剤および硝酸亜鉛溶液の促進剤を添加することが好ましい。
【0057】
まず、主成分としてリン酸を含有するが、その際のリン酸としてオルトリン酸を含有することが望ましい。オルトリン酸溶液の濃度は、10g/l 以上100g/l以下が好適である。10g/l 未満では、本発明における無機潤滑皮膜が形成され難く、良好な加工性を確保し難い。一方、100g/l超では、無機潤滑皮膜が厚くなり過ぎて加工性の改善効果が飽和するばかりでなく、潤滑皮膜内で凝集破壊を生じ、接着性を劣化させ、さらに絶縁抵抗も高く溶接性も劣化させる。さらに、良好な加工性、接着性、化成処理性および溶接性を確保するためには、20g/l 以上80g/l 以下がより望ましい。
【0058】
処理液中に含まれる亜鉛の濃度は、1g/l 以上10g/l 以下が望ましい。1g/l 未満であれば、本発明における可溶性のオルトリン酸亜鉛の形成が不充分となり、良好な化成処理性が得られない。10g/l 超であれば、溶液中の亜鉛イオンが過剰になり、オルトリン酸亜鉛結晶の形成、もしくは、不溶性の縮合リン酸生成により消費される以上に皮膜形成時の亜鉛量が過剰になり、前述したように過剰の亜鉛イオンが皮膜乾燥時に酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛酸化物として析出し、接着性の劣化要因となる。さらに良好な性能を維持するためには、3〜8g/l がより好適である。亜鉛の供給方法としては、処理液中に他の陰イオンを添加することは好ましくないため、第1リン酸亜鉛 (Zn(H2PO4)2) を添加する方法、あるいは、酸化亜鉛や炭酸亜鉛等を添加する方法がある。
【0059】
さらに、リン酸の脱水縮合反応を効果的に促進させるためには、リン酸縮合助剤として、酸化剤を添加する必要がある。その際の添加量としては、オルトリン酸のモル比 (酸化剤モル比/オルトリン酸モル比) として、0.01〜1.50が好ましい。添加量が、モル比で0.01未満の場合、本発明の骨子とする不溶性の縮合リン酸亜鉛が充分に生成せず、接着性を確保することができない。一方、1.50を超えると、脱水縮合反応が過剰となり、化成処理性の確保に必要な可溶性のオルトリン酸亜鉛結晶が生成しない。また、その際のより好適な酸化剤の添加量としては、0.05以上1.20以下である。
【0060】
この際に添加される酸化剤としては、無機過酸化物や過酸化水素、硝酸が適している。無機系酸化物としては、ペルオキソ酸もしくはその塩が使用できる。ペルオキソ酸の例は、ペルオキソ硫酸、ペルオキソ硼酸、ペルオキソ炭酸、ペルオキソリン酸などである。無機潤滑皮膜中に不純物として他の元素が入ることは、性能上好ましくないと考えられるので、分解しても皮膜中に無機潤滑皮膜の構成元素としてそのまま取り込まれるペルオキソリン酸や、酸化還元反応で水と酸素に分解される過酸化水素、さらには二酸化炭素に分解するペルオキソ炭酸や二酸化窒素に分解する硝酸、亜硝酸およびその塩等の、ガス化して無機潤滑皮膜に残らない酸化剤が好ましい。また、可溶性のオルトリン酸亜鉛結晶の析出を促進させるために、例えば、フッ酸およびその塩等のエッチング剤を添加するのが好ましい。
【0061】
液pHは、1.0 〜3.5 が望ましい。処理液pHにより、可溶性リン酸亜鉛と不溶性リン酸亜鉛の析出状態が変化するためである。液pHが1.0 未満の場合には、エッチング力が強過ぎて皮膜形成時に過剰の亜鉛イオンが存在することにより、亜鉛酸化物が潤滑皮膜中に形成されるために接着性が劣化する。また、処理液pHが低いと、可溶性のオルトリン酸亜鉛の結晶が析出し難くなり、化成処理性が低下する。一方、液pHが3.5 超の場合には、オルトリン酸亜鉛の析出が促進されるが、不溶性のポリリン酸亜鉛の生成が不充分になり、接着性が低下する。また、このpH域では、処理液中にスラッジが発生し、水洗無しで塗布乾燥する塗布型処理においては、スラッジが鋼板表面に付着し、表面疵となって外観不良となるため、本発明でのリン酸塩化合物の形成に支障をきたす。本発明におけるリン酸塩を形成させるには、酸性領域での処理液が必須であるが、より好ましくは、液pHを1.5 以上3.0 以下とすることが好適である。なお、処理液pHの調整方法としては、水酸化ソーダのようなアルカリ溶液を添加することで充分であるが、陽イオンが残らないアンモニア水等の添加がより好ましい。
【0062】
また、可溶性のオルトリン酸亜鉛結晶を短時間で効果的に析出させ、かつ、不溶性の縮合リン酸塩の脱水縮合反応を効果的に起すためには、処理液温度を20℃以上にすることが有効であり、好ましくは、40℃以上である。処理液温度が20℃未満の場合、オルトリン酸亜鉛の析出が不充分であり、充分な化成処理性を確保することができない。ただし、液の著しい蒸発による液濃度変化、および、処理液中の酸化剤の分解等が生じるために、液温は90℃以下に抑制することが有効であり、好ましくは70℃以下である。90℃超の場合には、処理液組成が不安定になるだけでなく、めっき皮膜からの亜鉛の溶出が過剰になり、潤滑皮膜上に亜鉛酸化物が形成され、接着性を劣化させる。
【0063】
なお、本発明において、無機潤滑皮膜中に不溶性のポリリン酸亜鉛と可溶性のオルトリン酸亜鉛とを一度に生成させるためには、液pHと液温とは重要な因子であるが、下記の関係式を満足することが望ましい。
【0064】
55≦ (液温) +10× (液pH) ≦100 ‥‥ (5)
(5) 式の値が、55未満の場合には、可溶性のオルトリン酸亜鉛結晶の析出が起こらず、付着量の確保が困難になるとともに、不溶性の縮合リン酸亜鉛が生成し易くなり、良好な化成処理性が確保できない。一方、(5) 式の値が100 超になると、エッチング力が強くなり、可溶性のオルトリン酸亜鉛の析出が過剰に進行し、付着量が大きくなり過ぎるとともに、皮膜形成時に過剰の亜鉛イオンが溶解し、亜鉛酸化物の形成を招き接着性を劣化させる。より良好な性能を得るため、好ましくは、下記の関係を満足することが好ましい。
【0065】
60≦ (液温) +10× (液pH) ≦95
この際の処理時間としては、1秒以上15秒以下が望ましい。処理時間が1秒未満であれば、めっき鋼板表面のエッチングに伴い、亜鉛イオンが供給され、処理液との反応で形成されるリン酸亜鉛皮膜が析出するまでの時間が不足し、強固な皮膜が形成されにくく、接着性を確保できないとともに、加工性も低下する。一方、処理時間が15秒超であると、めっき皮膜のエッチング量が過剰になり、皮膜が生成するまでに過剰の亜鉛イオンが供給されることになるので、表層に亜鉛酸化物層が厚く形成され、接着性が低下する。より好ましくは3秒以上10秒以下である。
【0066】
処理液を塗布した後は、皮膜を形成させるのに加熱乾燥させるが、その際、乾燥温度は最高到達板温で60〜200 ℃が有効である。最高到達板温が60℃未満の場合、乾燥が不充分であるばかりでなく、脱水縮合反応が進行せず、本発明でのリン酸化合物の形成に支障をきたし、良好な接着性が確保できない。200 ℃超の場合、脱水縮合反応が過剰に進み過ぎて皮膜が強固になり過ぎてしまい、化成処理性が劣化する。さらに、可溶性のオルトリン酸亜鉛結晶の析出と同時に不溶性の縮合リン酸塩の脱水縮合反応を効果的に促進させるためには、乾燥温度を70〜150 ℃にすることが好ましい。その際の焼き付け方法は、皮膜が乾燥すれば特に制限はなく、熱風乾燥ブロワー、蓄熱式オーブン等でもよく、さらには高周波誘導加熱でもよい。
【0067】
また、処理液塗布前にはアルカリ浸漬あるいは酸浸漬、もしくは、アルカリ浸漬と酸浸漬とを組み合わせた前処理を行うと、縮合リン酸亜鉛の析出が促進され、より好適な処理方法となる。アルカリ溶液または酸溶液に浸漬することで、めっき表面の汚れを除去するとともに、めっき表面がエッチングされ、可溶性のオルトリン酸亜鉛結晶の析出を促進する。また、めっき表層の酸化物が除去され、表面の活性化に伴い、リン酸の脱水縮合反応が促進されるため、縮合リン酸亜鉛の生成も進行し、表層に亜鉛酸化物が残り難くなり、前処理を行わなかった場合よりも接着性の向上が期待できる。また、前処理に使用するアルカリ、または、酸液の種類、溶液濃度、浸漬時間等は、表層がエッチングできればよく、特に問わない。ただし、処理液塗布前には、エッチングされた後の汚れ、スラッジ、液残り等を除去するために水洗を行うことが有効である。水洗を行わないと、前処理液残りにより、めっき皮膜表面に酸化物層が厚く形成され、潤滑皮膜形成反応を逆に阻害するために好ましくない。また、水洗方法、水洗時間、水温は、エッチング時のアルカリ、酸液残りが除去できればよく、特に問わない。
【0068】
また、前処理後、無機潤滑処理液の塗布前に、ホパイト結晶促進のためにリン酸亜鉛処理等で恒常的に行われるチタンコロイド等を含んだ表面調整液にめっき鋼板を浸漬してもよい。
【0069】
皮膜形成方法は、表層に不溶性の縮合リン酸亜鉛が濃化し、かつ可溶性のホパイト結晶も残存したリン酸亜鉛皮膜が形成できれば、特に制限はないが、溶液の廃液処理の問題、設備の制約さらには処理コスト等の面から、塗布型処理が有利である。
【0070】
その場合の処理液の塗布方法は、処理液を均一に亜鉛系めっき鋼板に塗布できればよく、浸漬、スプレー、ロールコーター等の方法で塗布することができる。また、亜鉛系めっき鋼板が両面めっきの場合は両面ともに処理液を塗布することが好ましいが、片面のみを処理することも可能である。
【0071】
本発明による無機潤滑皮膜は、表層にメタリン酸亜鉛および/またはポリリン酸亜鉛からなる不溶性のリン酸塩が濃化しており、それにより高度の接着性に加え、加工性や溶接性も確保される。表層に不溶性のリン酸塩が濃化しているとは、不溶性リン酸塩の濃度が内部より皮膜表層で高くなっていることを意味する。皮膜表層は、不溶性リン酸塩のみからなるものでも、可溶性リン酸塩が混在するものでもよい。
【0072】
表層に濃化した不溶性リン酸塩は、メタリン酸亜鉛のみからなるか、またはメタリン酸塩とポリリン酸塩との混在状態であることが好ましい。最も好適には、皮膜の表層が実質的にメタリン亜鉛からなるか、またはメタリン酸亜鉛とポリリン酸塩の混合物からなる。
【0073】
無機潤滑皮膜の内部は、可溶性のオルトリン酸亜鉛、すなわち、ホパイトの析出比率が表層より高くなっている。それにより、アルカリ脱脂液や酸性の化成処理液で処理した時に皮膜が容易に溶解するので、無機潤滑皮膜が化成処理性を損なわなず、潤滑皮膜を形成していない亜鉛系めっき鋼板と同様の良好な化成処理性が付与される。溶解性を高めるため、NiやMn等を極力含有しないホパイト結晶がより効果的である。
【0074】
上記作用を充分に得るには、本発明による無機潤滑皮膜中の不溶性リン酸塩の量、可溶性リン酸塩の量、および不溶性と可溶性のリン酸塩合計量を、それぞれP量 (mg/m2)として、P1、P2、および(P1+P2)としたとき、これらの量が下記(1) 式および(2) 式を満たすことが好ましい。
【0075】
0.10≦P1/(P1+P2) ≦0.95 ‥‥ (1)
5 (mg/m2)≦(P1+P2)≦ 500 (mg/m2) ‥‥ (2)
すなわち、無機潤滑皮膜の付着量は、上記(2) 式で示すように、P量として、5mg/m2 以上500 mg/m2 以下の範囲とすることが好ましい。このP量は、皮膜中の不溶性と可溶性の両方のリン酸亜鉛を合計したP量 (すなわち、P1+P2) である。合計P量が5mg/m2 未満では、潤滑効果の発現に不十分であり、加工性が劣化する。一方、合計P量が500 mg/m2 を超えると、潤滑皮膜が厚過ぎるため、接着性試験において潤滑皮膜内で凝集破壊が生じ易くなり、接着性が低下する上、加工性を劣化させるホパイト結晶の析出量が多いため、加工性の改善効果も低下する。また、絶縁性のリン酸亜鉛が多過ぎると、溶接性にも悪影響がある。さらに良好な加工性、接着性、化成処理性さらには溶接性を確保するには、合計P量は20mg/m2 以上300 mg/m2 以下の範囲が好適である。
【0076】
皮膜全体としての、合計P量に対する不溶性リン酸塩のP量の比、すなわち、{P1/(P1+P2)}の値は、(1) 式で示すように、0.10以上0.95以下の範囲内とすることが好ましい。この比が0.10より少ないと、表層での不溶性リン酸塩が不足し、接着性の確保が難しくなる。また、ホパイト結晶の析出量が多くなり、表面が荒れ、加工性も低下する。一方、{P1/(P1+P2)}の値が0.95より大きいと、可溶性のリン酸塩が少ないため、化成処理において皮膜が溶解せず、化成結晶が析出し難くなる。{P1/(P1+P2)}のより好ましい範囲は0.20以上0.90以下である。
【0077】
本発明による無機潤滑皮膜において良好な接着性を確保するには、処理液のエッチング作用によって溶解したZnがリン酸と反応して鋼板の表面上に析出する過程で、皮膜に含まれるZn、P、Oの元素組成比(原子比)が下記(3) 式および(4) 式を満たすようにすることも好ましい。
【0078】
(Zn/P)+1.0 ≦(O/P)≦3×(Zn/P)+1.5 ‥‥ (3)
0.6 ≦(Zn/P)≦ 1.6 ‥‥ (4)
この関係式を満たす皮膜は、化学量論的に、メタリン酸亜鉛および/またはポリリン酸亜鉛に近い形態になっている。メタリン酸亜鉛は、O/P=3.0 、Zn/P=0.5 、ポリリン酸亜鉛の一つであるピロリン酸亜鉛は、O/P=3.3 、Zn/P=1.0 であり、オルトリン酸亜鉛は、O/P=4.0 、Zn/P=1.5 である。また、メタリン酸およびオルトリン酸亜鉛を、後述するXPS での表層分析結果では、それぞれ、Zn/P=0.7 〜0.9 、O/P=2.5 〜3.5 、Zn/P=1.7 〜1.9 、O/P=4.0 〜5.0 であった。したがって、化学量論的数値と、実測値との間にはわずかなずれが認められるものの、XPS により、表層のリン酸亜鉛組成状態を判別することは可能である。すなわち、オルトリン酸亜鉛に近い程、O/P比、Zn/P比が大きくなる。したがって、表層に縮合リン酸亜鉛が濃化した状態にするには、オルトリン酸亜鉛に比較して表層のO/P、Zn/P比を小さくする必要がある。
【0079】
(O/P)<(Zn/P)+1.0 では、相対的にリン酸塩量が多くなり、針状で脆いリン酸結晶が析出して、接着性が劣化する。また、(O/P)>3×(Zn/P)+1.5 では、相対的にZn量が多く、過剰のエッチングにより水酸化亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛酸化物が表層に生成するため、接着性が劣化する。また、このような皮膜は皮膜自体の強度も低下しており、加工性も劣化する。
【0080】
Zn/Pの値が0.6 未満では、相対的に、リン酸と亜鉛との析出反応が正常に行われておらず、リン酸結晶がそのまま析出したような形態になり、正常な皮膜が形成されず、皮膜量が非常に少なくなる。このような場合は、無機潤滑皮膜として強固な皮膜が形成されていると言えず、接着性および加工性の面で問題を生じる。一方、Zn/Pの値が1.6 超では、接着性に対して非常に優れた適合性を有する縮合リン酸亜鉛を主体とした皮膜形成ができておらず、接着性に劣るホパイト結晶の析出量が多くなる。ホパイト析出量が多いと、皮膜強度も低下し、加工性が劣化する傾向が認められる。
【0081】
前述したように、本発明による無機潤滑皮膜の表層は、実質的にメタリン酸亜鉛のみ、またはメタリン酸亜鉛とポリリン酸亜鉛との混合物からなることが好ましいので、皮膜表層の原子比は、Zn/P= 0.8〜1.3 、O/P=2.5 〜3.5 の領域が特に好適である。
【0082】
本発明で無機潤滑皮膜として利用するリン酸亜鉛系皮膜は、さらなる加工性の改善のために、潤滑性の金属塩 (例、金属石鹸) 、コロイド粒子 (例、コロイダルシリカ) その他の添加剤を皮膜中に取り込むこともできる。ただし、その量は合計でリン酸亜鉛より多くならないようにする。他の金属塩は、不溶性のものが好ましい。水またはリン酸水溶液に可溶性であると、皮膜形成中にリン酸イオンと反応し、Zn/Pの値が縮合リン酸塩化の程度を正確に反映しなくなる。
【0083】
本発明の方法により製造された、リン酸塩皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛系めっき鋼板の良好な溶接性、接着性さらには化成処理性を保持したまま、著しく改善されたプレス成形性を有し、カジリやパウダリングを発生させずに苛酷なプレス成形を行うことができる。そのため、プレス成形が多用される自動車用に特に適しているが、家電や建材にももちろん使用できる。
【0084】
【実施例】
(実施例1)
本実施例は、二段処理法により本発明に従った無機潤滑皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板を例示する。
【0085】
板厚0.80 mm の極低炭素IF鋼を素材にした合金化溶融亜鉛めっき鋼板(片面当たり目付量60 g/m2)を亜鉛系めっき鋼板として使用した。このめっき鋼板を、まず、下記のリン酸亜鉛処理液に5秒間浸漬した後、水洗、乾燥させる反応型処理によって、P付着量として40mg/m2 の可溶性のホパイト結晶からなる皮膜を両面に形成した。
【0086】
ホパイト皮膜の形成に用いたリン酸亜鉛処理液
オルトリン酸: 16.0 g/l
第一リン酸亜鉛: 8.0 g/l
硝酸亜鉛: 4.0 g/l
フッ酸: 0.5 g/l
液pH: 3.7 (NaOHで調整)
液温: 60 ℃
別に、Zn/P原子比が1になるようにZnイオン供給源を添加した、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸の各溶液、およびそれらを各種割合で混合した混合溶液を準備した。これらの各溶液を用いて、上記のホパイト皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板を溶液に浸漬した後、水洗せずに直ちに乾燥する塗布型処理によって、合計P付着量が85 mg/m2(不溶性リン酸塩のP付着量として45 mg/m2)の無機潤滑皮膜を形成し、試験用の潤滑処理鋼板を得た。乾燥温度は、最初の反応型処理と次の塗布型処理のいずれも70〜90℃の範囲であった。
【0087】
こうして形成された無機潤滑皮膜中のホパイト結晶の量を、X線回折にてホパイトの(040) 面 (格子定数=4.57Å) の回折強度からP付着量(=P2)に換算して求めた。また、皮膜全体のリン酸塩量は、蛍光X線でのPの特性X線強度からP付着量(=P1+P2)に換算して求めた。不溶性のリン酸塩量は、合計P付着量 (P1+P2) からホパイト結晶のP付着量 (P2) を差し引いて算出した。
【0088】
この無機潤滑皮膜の表層の元素組成についてはXPS法により調べた。XPSでは固体表層に存在する各元素の結合エネルギーにおけるXPS強度を測定し、その強度から各元素の元素存在比率を求めることができる。XPS分析は下記条件で実施した。
【0089】
XPS測定条件
X線源:Mg−Kα (8 kA−30 mA)
スパッタリング:
Ar高速イオンエッチング(50 kV −0.6 A)
スパッタ速度=12〜13Å/秒。
【0090】
上記条件で5秒間(深さ方向で約60Å) のスパッタリング後に、各元素の結合エネルギーにおけるXPSの強度ピークのピーク面積から、理論計算をもとに、表層の各元素の存在元素比を求め、Zn/P比とO/P比を算出した。XPS測定前に、5秒間のスパッタリングで表面から約60Åの厚さの極表層を除去するのは、極表層は汚れ等のため正確な定量が困難であるためである。
【0091】
さらに、車体用接着剤より接着剤の接着強度が小さく、接着性に対して厳しいマスチック型接着剤を用いて、各潤滑処理めっき鋼板の接着性を調査した。接着性の評価は、図1に示す剪断引張試験により行った。油面接着性を評価するため、接着剤を塗布する前に、一般防錆油である出光製オイルコートSKを2g/m2を試験片2枚の両方の接着面に塗油し、湿潤雰囲気 (50℃×95%RH) 下で7日間スタックして保管した後、1枚の試験片の所定領域に接着剤を塗布し、スペーサーを用いて厚さ1.0mm の接着剤厚みとなるように2枚の試験片を重ね合わせ、所定の焼付け条件で焼付けを行って接着剤を硬化させ、接着強度を調査した。その際の接着強度は、剪断引張時の最高強度から接着性面積 (25×25mm) で割った値で評価した。試験条件と判断基準は次の通りである。
【0092】
マスチック型接着剤による剪断引張試験
試験片: 100×25 mm 2枚
(一般防錆油を2.0 g/m2塗油)
接着面積:25×25 mm
スペーサー: 1.0 mm
接着剤:合成ゴム系高防錆スポットシーラー
(イイダ産業製)
焼付け条件: 180℃×30分
剪断引張速度: 50 mm/min
(判断基準)
◎:剪断強度≧0.20 MPa、
○:剪断強度=0.14〜0.20 MPa、
×:剪断強度<0.14MPa 。
【0093】
上記の判断基準は、潤滑処理していない合金化溶融亜鉛めっき鋼板(一般防錆油を2.0 g/m2塗油)での接着強度が=0.20 Mpaであったことに基づき、これと同等以上を◎、これから30%減の強度 (=0.14 Mpa) 以上であれば、実用上の問題はないので○、それより接着強度が低い場合を×と判断したものである。
【0094】
こうして求めた接着強度の評価と無機潤滑皮膜の表層の元素組成比との関係を図2に示す。図2より、潤滑皮膜の表層のZn/P比とO/P比が前述した(3) 式および(4) 式を満たすと、良好な接着性を確保することができることがわかる。特に、Zn/P= 0.8〜1.3 、O/P= 2.5〜3.5 の範囲で優れた接着性が得られる。
【0095】
(実施例2)
本実施例も、二段処理法により本発明に従った無機潤滑皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板を例示する。
【0096】
板厚0.80 mm の極低炭素IF鋼を素材にした合金化溶融亜鉛めっき鋼板(片面当たり目付量60 g/m2)を、下記のリン酸亜鉛処理液に浸漬した後、水洗、乾燥させる反応型処理によって、95 mg/m2までの各種P付着量の可溶性のホパイト結晶からなる皮膜を両面に形成した。可溶性ホパイトの析出量は、処理液への浸漬時間と処理液pHを変えることにより調整した。
【0097】
ホパイト皮膜の形成に用いたリン酸亜鉛処理液
オルトリン酸: 16.0 g/l
第一リン酸亜鉛: 8.0 g/l
硝酸亜鉛: 4.0 g/l
フッ酸: 0.5 g/l
液pH: 3.5〜4.5 (NaOH で調整)
液温: 60 ℃
浸漬時間: 1〜120 秒
上で得た、ホパイト皮膜を有するめっき鋼板を、実施例1と同様にZnイオン供給源を添加したピロリン酸水溶液に浸漬した後、水洗せずに直ちに乾燥する塗布型処理によって、合計P付着量が100 mg/m2 (不溶性リン酸塩のP付着量として5〜100 mg/m2)の無機潤滑皮膜を形成し、試験用の潤滑処理鋼板を得た。乾燥温度は実施例1と同じであった。
【0098】
こうして得た各潤滑処理鋼板について、実施例1と同様の方法で、無機潤滑皮膜の不溶性リン酸塩量と可溶性リン酸塩量 (ホパイト析出量) ならびに皮膜表層の元素組成比 (Zn/P比とO/P比) 、ならびにマスチック型接着剤を使用した剪断引張試験による接着性を調査した。
【0099】
本例ではさらに、各潤滑処理鋼板の化成処理性についても調査した。化成処理は、市販のリン酸亜鉛処理液PB-L3020(日本パーカライジング社製)を用いて、標準条件で実施した。化成処理性の評価は、表面SEM観察(×500 倍)により化成処理後に化成結晶の成長していない部分(スケ)の面積を求め、その面積率により下記基準で評価した。化成結晶のスケの面積率が5%を超えると塗装後の耐食性が劣化してくることから、スケ発生面積率が5%以下であれば問題ない。
【0100】
化成処理性の評価基準 (A=スケ発生面積率)
◎:A=0% (全面化成結晶成長)
○:0%<A≦5% (微小結晶スケ発生)
△:5%<A≦10% (やや結晶スケ発生)
×:10%<A≦60% (結晶スケ顕著)
××:A>60% (ほぼ全面結晶スケ)
合計P付着量に対する不溶性リン酸塩のP付着量の割合[P1/(P1+P2)]と化成処理性および接着性との関係を図3(a) および(b) にそれぞれ示す。図3(a) より、化成処理性を確保するには、P1/(P1+P2)の値が0.95(P2=5mg/m2)以下が望ましく、さらに良好な化成処理性を得るには、0.90(P2=10 mg/m2) 以下が好適であることが判る。また、図3(b) から、接着性については、P1/(P1+P2)の値が0.10(P1=10 mg/m2) 以上が望ましく、さらに良好な接着性を得るには、0.20(P1=20 mg/m2)以上が好適であることが判る。
【0101】
(実施例3)
本実施例は、一段処理法により本発明に従った無機潤滑皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板を例示する。
【0102】
板厚0.80 mm の極低炭素IF鋼を被めっき素材とする、下記の両面亜鉛系めっき鋼板 (目付量は片面当たり) を処理に用いた。
使用した亜鉛系めっき鋼板
記号 めっき種 目付量
EG 電気Znめっき鋼板 40 g/m2
SZ 電気Zn−13%Ni合金めっき鋼板 30 g/m2
GA 合金化溶融亜鉛めっき鋼板(Fe:10%) 55 g/m2
これらの亜鉛系めっき鋼板に、オルトリン酸水溶液をベースにした下記の無機潤滑処理液を浸漬塗布した。この浸漬塗布は、めっき鋼板を処理液に5秒間浸漬した後、ロール絞りにより所定の付着量に調整することにより行った。その後、水洗を実施せずに、直ちに、熱風乾燥炉に入れて、最高到達板温90℃で7秒の焼付乾燥を行って、めっき表面にリン酸亜鉛系の無機潤滑皮膜を形成した。
【0103】
無機潤滑処理液には、脱水縮合による高分子化を促進させるため、必要に応じてpH調整剤としてアンモニア水を、および/または酸化剤としてH2O2 (過酸化水素) または硝酸を添加して、不溶性のリン酸塩が析出するようにした。リン酸塩皮膜の付着量 (P付着量) は、処理液のオルトリン酸濃度を変化させることにより調整した。
【0104】
一段処理に用いた無機潤滑処理液
オルトリン酸: 5〜150 g/l
亜鉛 : 0〜20 g/l
酸化剤/オルトリン酸モル比:0〜2.00
フッ酸/オルトリン酸モル比:0.03
液pH: 0.8〜4.5
液温: 50 ℃
こうして得た各潤滑処理鋼板について、実施例1と同様の方法で、無機潤滑皮膜の不溶性リン酸塩量と可溶性リン酸塩量 (ホパイト析出量) ならびに皮膜表層の元素組成比 (Zn/P比とO/P比) を調査した。また、実施例2と同様の方法で化成処理性について評価した。さらに、各潤滑処理鋼板の加工性、接着性、および溶接性を次に説明するようにして調査した。
【0105】
加工性
加工性は、円筒絞りプレス成形において、ブランクホルダー荷重を5kNピッチずつ増大させていった時の、成形可能な限界荷重を測定することにより評価した。加工条件と判断基準 (○までが合格) は次の通りである。
【0106】
(加工条件)
ブランク径: 90 mm
ポンチ径 : 50 mm
成形速度 : 200 mm/min
潤滑 :一般防錆油 (塗油量=2g/m2)
(判断基準)
◎:限界荷重>70 kN 、
○:限界荷重=50〜70 kN、
×:限界荷重<50 kN 。
【0107】
亜鉛系めっき鋼板の加工では、加工性確保のために、高潤滑性の防錆油を使用することが一般的である。参考のために、EG、SZおよびGAの各亜鉛系めっき鋼板に高潤滑性防錆油である出光製オイルコートSP2を2g/m2塗油して、同じ試験を行ったところ、成形限界荷重が50〜70 kN であった。この結果から、加工性の目標レベルを50 kN 以上、好ましくは70 kN 超に設定した。なお、本試験では、一般防錆油である出光製オイルコートSKを2g/m2塗油してから、加工性試験に供した。
【0108】
接着性
接着性は、マスチック型接着剤として実施例1で実施したイイダ産業製の高防錆スポットシーラーと、車体構造用接着剤として、ヘンケル白水製のアドヒーシブシーラー用エポキシ系接着剤を使用した。高防錆スポットシーラー用については、実施例1と同様に、剪断引張試験を行い、アドヒーシブシーラー用については、より厳しい接着性評価であるT 字剥離試験を、▲1▼170 ℃×30分焼き付けのフルキュア条件) 、▲2▼160 ℃×10分焼き付けのプレキュア条件にて調査した。
【0109】
油面接着性を評価するため、接着剤を塗布する前に、一般防錆油である出光製オイルコートSKを2g/m2を試験片2枚の両方の接着面に塗油し、湿潤雰囲気 (50℃×95%RH) 下で7日間スタックして保管した後、1枚の試験片の所定領域に接着剤を塗布し、スペーサーを用いて厚さ0.15 mm の接着剤厚みとなるように2枚の試験片を重ね合わせ、所定の焼付け条件で焼付けを行って接着剤を硬化させ、接着強度を調査した。T 字剥離の接着強度評価方法は、引張試験時の引張荷重の平均値を板幅(25mm)で割った値を接着強度とした。
【0110】
また、T 字剥離の判断基準は、潤滑処理を施していない電気亜鉛めっき鋼板 (一般防錆油を2.0g/m2 塗油) での接着強度が140N/25mm であったことに基づき、これと同等以上を◎、これから30%減の強度 (=98N/25mm) 以上であれば実用上の問題はないので○、それよりも接着強度が低い場合を×として判断したものである。
【0111】
各接着試験の試験条件と評価基準 (○までが合格) は次の通りである。
(剪断引張試験条件)(図1参照)
試験片: 100×25 mm 2枚
( 一般防錆油を2.0 g/m2塗油)
接着面積:25×25 mm
スペーサー: 0.15 mm
接着剤:車体構造用アドヒーシブシーラー
(エポキシ系、ヘンケル白水製)
焼付け条件: 170℃×30分
剪断引張速度: 50 mm/min
(判断基準)
◎:剪断強度≧12 MPa、
○:剪断強度=8〜12 MPa、
×:剪断強度<8MPa 。
【0112】
(T字剥離引張試験条件)(図4参照)
試験片: 200×25 mm 2枚
( 一般防錆油を2.0 g/m2塗油)
接着面積:25×140 mm
スペーサー: 0.15 mm
接着剤:車体構造用アドヒーシブシーラー
(エポキシ系、ヘンケル白水製)
焼付け条件: 170℃×30分 (フルキュア条件)
160℃×10分 (プレキュア条件)
T字引張速度: 50 mm/min
(判断基準)
◎:剥離強度≧140 (N/25mm)
○:剥離強度=98〜140 (N/25mm)
×:剥離強度<98 (N/25mm)
溶接性
溶接性は、下記に示す条件で連続打点スポット溶接試験を実施し、100 打点毎に溶接部のボタン径をチェックし、ナゲットが形成できなくなる (ナゲット径が得られなくなる) までの連続打点限界数を求めることにより評価した。比較対照となる、EG、SZおよびGAの各亜鉛系めっき鋼板に高潤滑性防錆油である出光製オイルコートSP2を2g/m2塗油して同じ条件でスポット溶接性を試験した時の連続打点限界数が2500〜5000打点であることから、2500打点以上、好ましくは、4000打点以上を目標レベルとした。本試験でも、一般防錆油である出光製オイルコートSKを2g/m2塗油してから試験に供した。
【0113】
(溶接条件)
電極材質:Cu−1%Cr
電極形状:CF型 (先端径=5mm)
加圧力:200 kgf
スクイズ時間:15サイクル
(鋼板を押さえてから通電するまでの時間)
通電時間:10サイクル
保持時間:20サイクル
(通電完了してから、電極開放までの時間)
設定電流:10.5 kA
打点速度:2秒/点
(評価基準)(○までが合格)
◎:>4000打点、
○:2500〜4000打点、
×:<2500打点 。
【0114】
以上の試験結果を、亜鉛系めっき鋼板の種別、処理液の組成や処理条件と共に、表1、2にまとめて示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
表1、表2から、本発明の好適態様に従って、不溶性リン酸塩と可溶性リン酸塩の付着量とバランスを適正化するとともに、潤滑皮膜の最表層の元素組成比を適正化すると、加工性、接着性、化成処理性、溶接性の全てを充分に確保し、かつ接着性についてはマスチック型接着剤の使用、T字型ピール、プレキュア条件といった、接着性確保に厳しい条件でも良好な接着性を得ることができることが判る。
【0118】
その際の処理液の条件として、オルトリン酸濃度としては、例えば、表1の試料No.1、12から下限値が10g/l 以上、表2の試料No.20 、23より上限値が100g/l以下であることがわかる。Zn濃度は、表1の試料No.3、7 から、下限値が1g/l 以上、表1の試料No.24 、25から上限値が10g/l であることがわかる。酸化剤の添加量としては、表1の試料No.11 、12からオルトリン酸とモル比で0.01以上で接着性が確保でき、表1の試料No.17 、18および表2の試料No.17 から、1.50以下で化成処理性が確保できることがわかる。液pHについては、表1の試料No.7、8 から下限pHが1.0 、表1の試料No.28 、29から上限pHが3.5 であることがわかる。
【0119】
以上のように、リン酸塩皮膜は、その処理中のZn濃度、酸化剤濃度、液pHで不溶性のリン酸亜鉛と可溶性のリン酸の存在量が変化するとともに、それに伴い潤滑皮膜表層の元素組成も変化するが、本発明の処理液条件では、本発明の骨子である不溶性のリン酸塩と可溶性のリン酸塩の付着量バランスを適正化するとともに、潤滑皮膜最表層の元素組成も適正化できることから、接着性と化成処理性の両立を図ることが可能である。
【0120】
(実施例4)
本実施例では、一段処理による潤滑皮膜形成時の処理時間と乾燥温度との影響について例示する。
【0121】
板厚:0.80mmの極低炭素IF鋼を素材とした合金化溶融亜鉛めっき鋼板 (片面当たりの目付け量55g/m2 を、下記に記載のアルカリまたは酸浸漬どちらか一方もしくは両方に6秒間浸漬後、直ちに水洗する前処理を行い、下記に記載のリン酸処理液をスプレーで所定時間塗布した後、ロール絞りを行い、水洗を実施することなく直ちに熱風乾燥炉で表面が完全に乾燥するまで焼き付けた。
【0122】
(アルカリ処理内容)
種類 :水酸化ソーダ
液温度 :100g/l
液温 :60℃
浸漬時間:6秒
(処理内容)
種類 :硫酸
液濃度 :10wt%
液温 :60℃
浸漬時間:6秒
(1段処理に用いた無機潤滑処理条件)
オルトリン酸:50g/l
亜鉛 :6g/l
酸化剤/オルトリン酸モル比:0.20 (酸化剤は硝酸を使用)
フッ酸 :0.3g/l
液pH :0.8 〜4.5(pH調整は水酸化ソーダと使用)
こうして得られた各潤滑処理鋼板について、実施例1と同様の方法で無機潤滑皮膜中の不溶性リン酸塩と可溶性リン酸塩量 (ホパイト析出量) を調査するとともに、実施例3と同様の方法で、加工性、接着性、化成処理性について調査した。
【0123】
処理条件と、その調査結果を表3および表4にまとめて示す。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
表3より、処理液の温度を上げるに従い、潤滑皮膜量が増大し、試料No.22 、23、24より、加工性が確保できる下限の液温は20℃以上である。また、潤滑皮膜量が多過ぎると、接着性が劣化し、試料No.5、6 から上限は90℃である。また、潤滑皮膜量が液温とともに、液pHでも変動し、液温+10×液pH (以下、(5) 式という) が小さいと、充分な潤滑皮膜量を確保することができず、大きいと潤滑皮膜量が過多になることがわかる。その際の上限値は、試料No.19 、20、21より、100 である。
【0127】
処理時間も潤滑皮膜量に大きな影響を及ぼし、処理時間の増大により、潤滑皮膜量が増加する。適正な潤滑皮膜量を得るための処理時間としては、試料No.27 、28より1秒間以上、試料No.33 、34より15秒間以下である。
【0128】
乾燥温度は、不溶性の縮合リン酸亜鉛の生成量に影響を及ぼし、乾燥温度を高めることで、不溶性の縮合リン酸亜鉛の生成が促進され、接着性が改善される。試料No.1、2 より、その際の下限値としては60℃以上である。ただし、試料No.10 、11より、乾燥温度が高くなり過ぎると、可溶性のリオルトン酸塩の析出量が低下し、化成処理性が確保できなくなるので、その上限値としては200 ℃である。
【0129】
前処理の影響としては、例えば、試料No.12 と試料No.13 、14、15の比較により、液pH、液温が、好適範囲から外れていても、潤滑皮膜量の増大、可溶性のオルトリン酸亜鉛の析出促進により、好適な性能を確保することができる。同様に、試料No.20 と試料No.21 、22、23の比較により、前処理を行わないと潤滑皮膜量の確保が困難な処理条件であっても、前処理を行うことで、目標性能を確保することができることから、より広い条件で、潤滑皮膜性能を確保することが可能になることがわかる。
【0130】
【発明の効果】
本発明によれば、亜鉛系めっき鋼板に不溶性リン酸塩と可溶性リン酸塩の比率を適正化し、かつ皮膜表層に不溶性リン酸塩を濃化したリン酸亜鉛系無機潤滑皮膜を形成することにより、亜鉛系めっき鋼板が持つ良好な化成処理性、接着性、および溶接性を阻害せずに、加工性を著しく改善することができる。
【0131】
特に、この無機潤滑皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板は接着剤適合性に優れており、自動車車体用として使用される各種接着剤(車体用接着剤だけでなく、強度の弱いマスチック型接着剤も含む)、焼付け条件の甘い仮止め状態(プレキュア条件)での接着強度、各種形状での接着強度等、従来の潤滑皮膜がない状態と同じように接着剤を使用できることが可能となり、その後の化成処理工程でも良好な化成処理性を維持できる。潤滑皮膜により亜鉛系めっき鋼板の加工性が著しく改善され、従来と同様に溶接も可能であることから、本発明の無機潤滑処理めっき鋼板は、特に自動車車体用鋼板等の素材として好適な性質を備えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】接着性評価に用いた剪断引張試験方法を示す説明図である。
【図2】リン酸亜鉛系無機潤滑皮膜の表層における元素存在比とマスチック型接着剤での接着強度との関係を示す図である。
【図3】図3(a) はリン酸亜鉛系無機潤滑皮膜中の不溶性リン酸塩の比率と化成処理性との関係を示す図であり、図3(b) は不溶性リン酸塩の比率と接着性との関係を示す図である。
【図4】接着性評価に用いたT字型剥離 (ピール) 試験方法を示す説明図である。
Claims (5)
- 亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板表面に、リン酸塩を主体とする無機潤滑皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板であって、該無機潤滑皮膜は、全体としてメタリン酸塩および/またはポリリン酸塩である不溶性リン酸亜鉛と、オルトリン酸塩である可溶性リン酸亜鉛との混在状態であり、かつ、前記無機潤滑皮膜の表層に不溶性リン酸亜鉛が存在するとともに前記表層より内部には可溶性リン酸亜鉛が存在し、さらに、前記無機潤滑皮膜中の不溶性リン酸亜鉛の量、可溶性リン酸亜鉛の量、および不溶性と可溶性のリン酸亜鉛合計量を、それぞれP量(mg/m2)として、P1、P2、および(P1+P2)としたとき、これらの量が下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする、プレス加工用亜鉛系めっき鋼板。
0.10≦P1/(P1+P2)≦0.95 ・・・・(1)
5(mg/m2)≦(P1+P2)≦500(mg/m2) ・・・・(2) - 前記無機潤滑皮膜の最表面のZn、P、Oの元素組成が、Zn/PおよびO/Pの原子比で、下記(3)式および(4)式を満たす、請求項1記載のプレス加工用亜鉛系めっき鋼板。
(Zn/P)+1.0≦(O/P)≦3×(Zn/P)+1.5 ・・・・(3)
0.6≦(Zn/P)≦1.6 ・・・・(4) - オルトリン酸を10〜100g/L、および亜鉛を1〜10g/L含有するとともにリン酸縮合助剤として酸化剤をオルトリン酸のモル濃度比で0.01〜1.50含有する溶液を、液pH:1.0〜3.5、および液温:20〜90℃に調整し、亜鉛または亜鉛系合金めっき鋼板の表面を、調整した該溶液に1〜15秒間接触させた後、水洗することなく、最高到達温度60〜200℃で焼付乾燥することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレス加工用亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
- 調整した前記溶液の液pHと液温とが下記(5)式の関係を満足する請求項3に記載されたプレス加工用亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
55≦(液温)+10×(液pH)≦100 ・・・・(5) - 前記溶液に接触させる前に、前記亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板にアルカリ浸漬または酸浸漬、もしくは、アルカリ浸漬と酸浸漬とを組み合わせた前処理を行い、その後に水洗する請求項3または請求項4に記載されたプレス加工用亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
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