JP3449283B2 - プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents

プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板とその製造方法

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JP3449283B2 JP06513599A JP6513599A JP3449283B2 JP 3449283 B2 JP3449283 B2 JP 3449283B2 JP 06513599 A JP06513599 A JP 06513599A JP 6513599 A JP6513599 A JP 6513599A JP 3449283 B2 JP3449283 B2 JP 3449283B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、亜鉛系めっき鋼板
を表面処理して得られる、プレス成形性、化成処理性、
溶接性、接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板とその製造方
法とに関する。
【0002】
【従来の技術】亜鉛系めっき鋼板 (亜鉛めっき鋼板と亜
鉛合金めっき鋼板を含む) は、その優れた耐食性から、
自動車、家電、建材等に広く使用されており、今後もそ
の需要はますます増大傾向にある。
【0003】例えば、自動車用の亜鉛系めっき鋼板で
は、プレス成形、スポット溶接による組立、化成処理
(一般にはリン酸亜鉛処理) 、塗装の工程を経て製品が
製造されるため、亜鉛系めっき鋼板には、プレス成形
性、スポット溶接性、化成処理性などの性能が良好であ
ることが要求される。また、組立ラインの接合工程で
は、溶接接合の替わりに接着剤を用いて接合する接着接
合が適用されることがあり、接着性能が良好であること
も望ましい。
【0004】亜鉛系めっき鋼板は、スポット溶接性、化
成処理性、接着性は良好であるが、プレス成形性が冷延
鋼板に比べて劣ることが従来から知られている。そのた
め、亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を向上させる目的
で、種々の無機系酸化物皮膜を形成する表面処理方法が
提案されている。
【0005】例えば、特開平3−183797号公報および特
開平3−249182号公報には、亜鉛系めっき鋼板の表面を
マンガン酸化物またはリン酸を混合したマンガン酸化物
の皮膜で被覆した鋼板が提案されており、いずれもプレ
ス成形性が改善されるとしている。また、特開平8−29
6017号公報には、亜鉛系めっき鋼板の表面をリン酸を混
合したマンガン酸化物の皮膜で被覆する際に、この皮膜
のP/Mn比を限定することで、接着剤適合性が向上する
ことが記載されている。
【0006】このマンガン酸化物またはリン酸を混合し
たマンガン酸化物皮膜は、比較的高価な過マンガン酸イ
オンを含む処理液を用いて形成されるため、処理液のコ
スト高により製造コストが増大するという問題点があ
る。また、この方法は、pH5以下の強酸性の処理液と接
触させて、酸により亜鉛系めっき表層を溶解させること
で、マンガン酸化物またはリン酸を混合したマンガン酸
化物の皮膜を形成するという、反応型の処理に基づいて
いる。そのため、連続処理時には、溶解しためっき皮膜
成分(主に亜鉛)で処理液が汚染されスマッジ(沈殿)
が生成することに加え、常に処理液を一定の状態に保つ
ことが困難であるという問題点もある。
【0007】特開平1−172578号公報には、ホウ素酸化
物、リン酸化物等のアルカリ金属塩を亜鉛系めっき鋼板
に塗布する方法が提案されており、100 ℃以上で乾燥さ
せることで、プレス成形性が改善されるとしている。し
かし、この提案では接着性や溶接性は考慮されておら
ず、亜鉛系めっき鋼板に要求される全ての性能を満たし
ているとはいえない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、優れたプレ
ス成形性を有し、溶接性、接着性、化成処理性といった
他の要求される性能も良好な亜鉛系めっき鋼板を安価か
つ簡便に提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、亜鉛系め
っき鋼板にプレス成形性を付与する無機皮膜として、マ
ンガン等の金属成分を用いずに、安価かつ簡単に皮膜を
形成できる、リン酸水溶液の塗布型処理により形成され
る皮膜に着目した。
【0010】リン酸 (正リン酸や縮合リン酸であるポリ
リン酸) の水溶液を亜鉛系めっき鋼板に接触させ、水洗
せずにそのまま乾燥・焼付けすると、リン酸系の無機皮
膜がめっき鋼板の表面に形成される。このようなリン酸
水溶液による塗布型処理では、前述した反応型処理とは
異なり、処理液中へのめっき皮膜成分の過剰な溶出が起
こらず、処理液汚染による処理液中でのスマッジ生成と
いった問題が生じないという利点がある。
【0011】本発明者は、このリン酸を用いた塗布型処
理による無機皮膜について検討を重ねた結果、リン酸水
溶液に過酸化水素(H2O2)を添加し、さらにpH調整剤によ
りpHを1〜7に調整した処理液を用いると、P−O−P
結合による網目構造を持つポリマー化したリン酸化物か
らなり、かつ結晶水を含まないリン酸化物系の無機皮膜
が得られ、この無機皮膜により、亜鉛系めっき鋼板の溶
接性、接着性、化成処理性を阻害せずにプレス成形性が
著しく改善されることを見いだした。
【0012】ここに、本発明は、1側面において、P−
O−P結合からなる目構造を持ち、結晶水を実質的に
含んでいないリン酸化物系無機皮膜を表面に有すること
を特徴とする、プレス成形性、化成処理性、溶接性、接
着性に優れた亜鉛系めっき鋼板である。
【0013】別の側面からは、本発明は、亜鉛系めっき
鋼板の表面に、リン酸と過酸化水素とを含有するpH1〜
7の水溶液を塗布し、水洗せずに50〜300 ℃の温度で焼
付乾燥してポリマー化したリン酸化物系無機皮膜を形成
することを特徴とする、プレス成形性、化成処理性、溶
接性、接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法であ
る。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明を適用する亜鉛系めっき鋼
板は、亜鉛を含有するめっき皮膜(純亜鉛めっき皮膜と
亜鉛合金めっき皮膜の両方を含む)を有する鋼板であれ
ば特に制限されず、めっき法は溶融めっきと電気めっき
のいずれでもよい。亜鉛系めっき鋼板としては、溶融亜
鉛めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼
板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、
Zn−X (X=Fe、Ni、Co) 合金電気めっき鋼板等が挙げ
られる。
【0015】本発明によれば、この亜鉛系めっき鋼板の
表面に、リン酸と過酸化水素とを含有するpH1〜7の処
理液による塗布型の表面処理によって、P−O−P結合
からなる目構造を持つ、ポリマー化したリン酸化物系
無機皮膜を形成する。この皮膜により、めっき鋼板に優
れたプレス加工性、溶接性、接着性、化成処理性が付与
される。その理由は、断定はできないが、次のように推
測される。
【0016】一般的に、リン酸化物系無機皮膜は、比較
的硬質で、表面全体を均一にカバーするため、プレス成
形時のカジリを小さくすることが可能であり、パウダリ
ングも起こりにくくするので、連続プレス成形性には有
利に作用する。また、この種の皮膜はアルカリ中に容易
に溶解するので、化成処理前に実施されるアルカリ洗浄
の工程で容易に除去される。従って、化成処理への悪影
響は全くなく、化成処理は問題なく実施できる。
【0017】しかし、単にリン酸水溶液を塗布して焼付
乾燥しただけの従来のリン酸系無機皮膜では、ポリマー
化はほとんど進行しておらず、リン酸分子が独立して皮
膜中に存在する傾向が高い。本発明者らは、リン酸化物
系皮膜をポリマー化すると、皮膜の延性が変化し、この
延性の変化が溶接性に好結果をもたらすことを見出し
た。
【0018】即ち、従来のほとんどポリマー化していな
いリン酸系皮膜は、結晶質で、延性が大きいので、スポ
ット溶接時に鋼板を電極で抑えつける際に、機械的衝撃
による皮膜の破壊が生じにくい。その結果、表層に絶縁
性の高いリン酸系の連続皮膜が残るため、溶接時に電流
が流れにくくなり、ナゲットが形成しにくくなったり、
連続的に溶接する連続打点時において、電極−鋼板間の
発熱が過多になり、電極損耗が大きくなる結果、連続打
点性が著しく劣化するという問題が生じ、スポット溶接
性に悪影響を及ぼす。
【0019】一方、ポリマー化したリン酸化物系無機皮
膜は、より硬質で、延性の低い皮膜構造を呈する。その
ため、スポット溶接時には、鋼板を電極で抑えつける際
の機械的衝撃により、皮膜の破壊が容易に生ずる。その
結果、皮膜の破壊部を通って溶接時に電流が流れやすく
なるため、安定的なナゲットの形成が可能となり、電極
−鋼板間の過剰の発熱も抑制されるため、連続打点性も
向上し、スポット溶接性が改善される。
【0020】また、ポリマー化していないリン酸系無機
皮膜は、結晶水を多く取り込んでいて水和物の状態とな
っている。接着剤による接着接合では、この結晶水の存
在により、接着性が低下する。一方、ポリマー化したリ
ン酸化物系無機皮膜では、この結晶水の含有量が著しく
低減する結果、結晶水による接着性の低下が抑制され、
接着性も良好に保持される。
【0021】即ち、ポリマー化したリン酸化物系無機皮
膜は、リン酸系皮膜がもつ優れたプレス成形性と化成処
理性に加えて、ポリマー化したことによってスポット溶
接性と接着性も良好に保持されるのである。
【0022】このようなP−O−P結合からなる目構
造を持つポリマー化したリン酸化物系無機皮膜は、リン
酸と過酸化水素とを含有するpH1〜7の水溶液を処理液
として用いて、亜鉛系めっき鋼板を塗布型処理すること
により形成される。
【0023】リン酸は、リン酸化物系皮膜を形成するた
めの必須成分である。用いるリン酸は、正リン酸[H3P
O4] と、これを脱水縮合したポリリン酸[Hn+2PnO3n+1]
から選んだ1種もしくは2種以上を使用することが好ま
しい。但し、ポリリン酸の場合、分子量が高いとポリマ
ー化時の脱水縮合が起こりにくくなるので、本発明で用
いるポリリン酸としては、ピロリン酸[H4P2O7]およびト
リポリリン酸[H5P3O10]が望ましい。
【0024】H2O2(過酸化水素)は、リン酸化物系皮膜
をポリマー化させるために処理液に添加する。H2O2の存
在下でリン酸化物系皮膜を形成すると、正リン酸やポリ
リン酸の脱水縮合によるP−O−P結合の生成が促進さ
れる。この反応でメタリン酸[(HPO3)n] の単位構造がで
き、それがP−O−P結合を介して網目状に結合するこ
とで、ポリマー化が行われ、P−O−P結合からなる網
目構造を持ち、結晶水を実質的に含まないリン酸化物系
無機皮膜が形成される。脱水縮合反応は下記反応式 (正
リン酸の場合) により起こる。この反応式に示すよう
に、H2O2はメタリン酸の単位構造を生成する反応におい
て消費され、水と酸素に分解される。
【0025】nH3PO4+2nH2O2→(HPO3)n+3nH2O+nO2 また、H2O2の存在下でリン酸化物系皮膜を形成すると、
メタリン酸の単位構造が緻密に形成される結果、局部的
な結晶質皮膜化が妨げられ、均一な皮膜の形成が助長さ
れる。
【0026】H2O2は、リン酸/H2O2の重量比が 0.1〜10
の範囲となるような割合で処理液中に存在させることが
好ましい。この重量比が0.1 未満であると、H2O2の添加
量が過剰で、その効果が飽和するばかりか、めっき鋼板
の表層が過酸化状態になり、化成処理性が不芳となり、
接着性も低下する。また、コスト高という欠点もある。
この重量比が10を超えると、H2O2の添加量が少なく、そ
の効果が十分に発揮できず、形成されたリン酸化物系皮
膜のポリマー化が不十分となる。リン酸/H2O2の重量比
は、より好ましくは 0.1〜5の範囲である。
【0027】リン酸とH2O2を含有する処理液のpHは1〜
7の範囲とする。処理液のpHが7より高いアルカリ性領
域と、pHが1未満の強酸性領域のいずれでも、リン酸化
物系皮膜のポリマー化が起こりにくくなるためである。
また、pHが1より低いと、処理中の亜鉛の溶出による処
理液の汚染も目立つようになる。pHが1〜7の範囲で
は、ポリマー化したリン酸化物系皮膜を確実に形成する
ことができる。但し、pH1近傍では、ポリマー化させた
リン酸化物系皮膜は形成できるものの、若干量のめっき
皮膜が酸により侵されるので、pH3〜7の範囲にするこ
とが好ましい。
【0028】処理液のpHは、適当なpH調整剤を添加して
上記範囲に調整する。pH調整剤は、水溶液に溶解してア
ルカリ性を示すものであればよく、特に限定されるもの
ではない。適当なpH調整剤の例は、アンモニア水、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸
カリウム等の無機アルカリ、ならびにアルカノールアミ
ン等の有機塩基である。
【0029】処理液は、好ましくは正リン酸およびポリ
リン酸から選んだ1種もしくは2種以上の適当なリン酸
と過酸化水素を水に添加して混合し、得られた水溶液の
pHを上記のようにpH調整剤によって所望の値に調整する
ことにより調製できる。処理液中のリン酸濃度は、後述
するように皮膜の付着量を左右する。好ましいリン酸濃
度は5〜30wt%の範囲である。
【0030】上記処理液を亜鉛系めっき鋼板に塗布し、
水洗しないで、50〜300 ℃に加熱して皮膜の焼付乾燥を
行う。この焼付乾燥中に、皮膜中のリン酸が上述したよ
うな脱水縮合反応によってポリマー化し、P−O−P結
合からなる網目構造を持つポリマー化した緻密なリン酸
化物系皮膜が亜鉛系めっき鋼板の表面に生成する。焼付
乾燥により、ポリマー化したリン酸化物系皮膜に残存す
る結晶水は実質的に完全に除去され、また未反応のリン
酸の残存も阻止できるため、皮膜の接着性は格段に向上
する。加熱温度が50℃より低いと、ポリマー化したリン
酸化物皮膜の形成に現実的ではない長時間を要するよう
になる。加熱温度が300 ℃を超えても、ポリマー化の効
率は向上せず、逆に表面が過酸化状態となり、化成処理
性の不芳や接着性の低下を招く。好ましい加熱温度は80
〜200 ℃である。
【0031】なお、例えば、pH調整剤がアルカリ水酸化
物の場合には、焼付乾燥後もpH調整剤のアルカリ分がリ
ン酸化物系皮膜中に残留する。しかし、この皮膜は最終
的に化成処理の前工程であるアルカリ洗浄時に除去され
るため、アルカリ分の残留は問題ない。pH調整剤がアン
モニア水のように揮発性である場合には、焼付乾燥中に
皮膜から除去されるので、実質的に重合したリン酸化物
のみからなる皮膜が形成される。
【0032】このように、本発明によれば、水洗しない
塗布型処理を採用する。これに対し、従来のリン酸塩系
処理に一般的であるのは、処理液中にめっき皮膜を溶解
させ、その反応により皮膜を形成させ、処理後に未反応
物を水洗で除去する反応型処理である。本発明では、塗
布型処理を用いることで、水洗工程を省略できるという
利点に加え、反応による処理液の汚染を考慮せずにすむ
という利点もある。
【0033】処理液の塗布方法は、処理液を均一にめっ
き鋼板に塗布できれば任意の方法でよい。例えば、浸
漬、スプレー等の方法で塗布することができる。処理液
温度は、特に限定されるものではないが、蒸発による液
濃度変動を考慮すると、50℃以下にするのが好ましい。
なお、浸漬塗布の場合には、処理中にリン酸と過酸化水
素が消費されるので、必要であればこれらの成分を処理
液に随時補充する。また、亜鉛系めっき鋼板が両面めっ
きの場合には、両面ともに処理液を塗布することが好ま
しいが、片面のみを処理することも可能である。
【0034】こうして形成されるポリマー化したリン酸
化物型無機皮膜の付着量 (片面当たり) は、P量に換算
して10〜500 mg/m2 の範囲とすることが好ましい。この
付着量が10 mg/m2未満では、優れたプレス成形性が得ら
れず、500 mg/m2 を超えても、大幅なプレス成形性向上
効果が期待できないばかりか、化成処理性の低下を招く
ことがある。また、焼付け条件によってはポリマー化が
起こりにくくなり、リン酸化物系皮膜が脆くなって、接
着性の低下を生じる。より好ましい付着量は、P量換算
で50〜300 mg/m2 の範囲である。付着量は、処理液のリ
ン酸濃度と塗布量を変化させることで容易に制御するこ
とができる。
【0035】本発明の方法により製造された、リン酸化
物系無機皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛系めっ
き鋼板の良好な溶接性、接着性、化成処理性を保持した
まま、著しく改善されたプレス成形性を有し、カジリや
パウダリングを発生させずに苛酷なプレス成形を行うこ
とができる。そのため、プレス成形が多用される自動車
用に特に適しているが、家電や建材等にももちろん使用
できる。
【0036】なお、リン酸化物系無機皮膜は、プレス成
形後、最終製品になる前の適当な段階で製品から除去す
ることが好ましい。特に、例えば、塗装前処理として化
成処理を行う場合には、この皮膜が残っていると化成処
理が困難となるので、予め除去しておく。前述したよう
に、このリン酸化物系無機皮膜は、化成処理前に通常行
われているアルカリ洗浄 (アルカリ脱脂) により完全に
除去できるので、この皮膜を除去するための特別の処理
を行う必要はない。
【0037】
【実施例】以下、実施例により、本発明の効果をさらに
詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものでは
ない。
【0038】(亜鉛系めっき鋼板)表1に示す化学成分値
を有する冷延鋼板 (板厚:0.8 mm) に、目付量 (片面当
たり、以下同じ) 45 g/m2 でFe含有量 (合金化度) 10%
とした合金化溶融亜鉛めっきを両面に施した鋼板 (以
下、GAとする) および目付量60 g/m2 で電気亜鉛めっき
を両面に施した鋼板 (以下、EGとする) を供試めっき鋼
板として用いた。
【0039】
【表1】
【0040】(皮膜形成方法)正リン酸、ピロリン酸また
はトリポリリン酸の水溶液に、リン酸/H2O2の重量比が
所定値となるようにH2O2を添加し、さらにpH調整剤とし
てアンモニア水を所定pHになるように添加した後、最終
的にリン酸含有量が所定値になるように水で希釈して処
理液を調製した。この処理液 (室温) を、供試めっき鋼
板の両面に浸漬もしくはスプレー法で塗布し、直ちに所
定温度で焼付けて皮膜を乾燥させ、リン酸化物系皮膜を
形成した。焼付け時間は、温度によっても異なるが、1
〜60秒間の範囲内であった。
【0041】形成されたリン酸化物系皮膜のポリマー化
の有無およびP量換算付着量を下記のようにして決定し
た。また、処理後の亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性、
溶接性、接着性および化成処理性を下記に記載するよう
にして評価した。
【0042】(リン酸化物系皮膜のポリマー化の有無)リ
ン酸化物系皮膜のポリマー化の有無は、FT−IRによるリ
ン酸塩の吸収スペクトルから判断した。具体的には、P
−O−P結合に起因する 960〜970 cm-1の吸収スペクト
ルが確認できるものを、ポリマー化したリン酸化物系皮
膜とした。なお、ポリマー化したリン酸化物系皮膜は結
晶水を実質的に含有していなかった。
【0043】(リン酸化物系皮膜の付着量)めっき皮膜表
面に形成されたリン酸化物系皮膜の付着量は、蛍光X線
の検量線法によりP量 (mg/m2)として求めた。
【0044】(プレス成形性)プレス成形性は、円筒絞り
(ブランク径=90 mm 、ポンチ径=50 mm)での最大の絞
り荷重 (成形限界荷重) により評価した。潤滑油には一
般防錆油を用い、成形前のブランク (直径90 mm の円
板) に一定量を塗布した。評価基準は以下の評点で行
い、◎および○であれば良好とした。
【0045】 ◎:100 KN以上、 ○:80〜100 KN、 △:40〜80 KN 、 ×:40 KN 未満。
【0046】(溶接性)加圧力:200 kgf 、通電時間:8
サイクル、溶接電流:9.8 KA、チップ先端径:50 mm 、
電極材質:Cu−Crの条件で、連続スポット溶接を行い、
ナゲットが確保できる打点数を求めた。評価基準は以下
の評点で行い、◎および○であれば良好とした。
【0047】 ◎:>5000打点、 ○:3000〜5000打点、 ×:<3000打点。
【0048】(接着性)25 mm ×200 mmの短冊状試験片を
2枚用意し、その一端から140 mmの長さだけ、焼付硬化
型の防錆接着剤 (ヘンケルジャパン社製、PV5306) を15
0 μm厚に塗布した後、160 ℃で10分間焼付け硬化させ
て、放冷することにより接着した (接着面積25×140 m
m) 。接着は、接着する試料表面に一定量の防錆油が存
在している、油面接着方法で行い、プレス成形性試験に
用いたのと同じ一般防錆油を接着面に予め塗布した。
【0049】接着試験片の他端側の未接着部をそれぞれ
長さ50 mm ずつ90°に曲げて、T型試験片を作製した。
接着性の評価は、T剥離強度を測定するとともに、接着
面を観察して破壊形態を調査することにより行った。評
価基準は以下の評点で行い、◎および○であれば良好と
した。
【0050】 ◎:T剥離強度100 N/25 mm 以上、接着面全面が凝集破
壊、 ○:T剥離強度100 N/25 mm 以上、接着面の70%以上が
凝集破壊、 △:T剥離強度50〜100 N/25 mm 、接着面全面が界面破
壊、 ×:T剥離強度50 N/25 mm未満、接着面全面が界面破
壊。
【0051】(化成処理性)試験片をアルカリ脱脂液 (日
本パーカライジング社製、FC-4420)を用いて標準条件で
洗浄した後、リン酸亜鉛化成処理液 (日本パーカライジ
ング社製、PB-L3020) を標準条件で適用して化成処理を
行い、形成された化成処理皮膜の結晶の大きさ (L) お
よびスケの有無をSEM 観察により判定した。
【0052】 ◎:L<3μm、スケ無し、 ○: 3μm≦L<10μm、スケ無し、 △:10μm≦L<30μm、スケ無し、 ×:30μm≦L、スケ有り。
【0053】以上の評価結果を、亜鉛系めっき鋼板の種
類、処理液組成およびpH、ならびに処理方法および条件
と共に表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】表2に示すように、亜鉛系めっき鋼板のま
まで、リン酸化物系皮膜を形成しなかった試験No. 17で
は、化成処理性、溶接性および接着性は良好であるが、
プレス成形性は非常に劣る。また、リン酸塗布後に水洗
してリン酸が粗い流されると、同様にプレス成形性は劣
ったままである。
【0056】これに対し、本発明に従ってリン酸化物系
皮膜を形成した試験No. 1〜16では、化成処理性、溶接
性および接着性を良好に保持したまま、プレス成形性が
著しく向上する。その結果、プレス成形性、溶接性、接
着性、化成処理性の全ての性能を満たす亜鉛系めっき鋼
板を得ることが可能となる。めっき種、使用するリン酸
化合物、または塗布方法が異なっていても、いずれの場
合も満足すべき性能が得られる。
【0057】しかし、リン酸化物系皮膜を形成しても、
皮膜がポリマー化していないと、プレス成形性、溶接
性、接着性、化成処理性の全ての性能が良好な亜鉛系め
っき鋼板は得られず、特に皮膜が脆くなり、接着性が低
下する。焼付温度が高いと、ポリマー化は起こるもの
の、表面が過酸化状態になるため化成処理性が不芳とな
り、接着性も低下する。
【0058】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、プレス成型性、溶接性、接着性、化成処理性の全て
の性能に優れた亜鉛系めっき鋼板を製造することが可能
である。また、本発明に係る方法は、塗布型処理を利用
するので、連続塗布の場合も処理液の汚染が少なく、処
理液を一定に保持したまま安定して操業することができ
る。さらに、リン酸と過酸化水素という安価な材料だけ
で処理できるので、製造コスト面でも有利である。従っ
て、本発明は、特に自動車用亜鉛系めっき鋼板のよう
に、プレス成形後に化成処理を経て塗装が施される用途
に対する亜鉛系めっき鋼板の工業的製造に非常に有用で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−170084(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/07 - 22/23 C23C 26/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 P−O−P結合からなる目構造を持
    ち、結晶水を実質的に含んでいないリン酸化物系無機皮
    膜を表面に有することを特徴とする、プレス成形性、化
    成処理性、溶接性、接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 前記リン酸化物系無機皮膜の付着量が、
    P量に換算して10〜500 mg/m2 である請求項1記載の亜
    鉛系めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 亜鉛系めっき鋼板の表面に、リン酸と過
    酸化水素とを含有するpH1〜7の水溶液を塗布し、水洗
    せずに50〜300 ℃の温度で焼付乾燥してリン酸化物系無
    機皮膜を形成することを特徴とする、プレス成形性、化
    成処理性、溶接性、接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 前記リン酸が、正リン酸、ピロリン酸お
    よびトリポリリン酸から選ばれた1種または2種以上で
    ある請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記水溶液中のリン酸/H2O2重量比が
    0.1〜10である、請求項3または4記載の方法。
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