JP4156764B2 - シート防水構造物の給排口周辺構造及び給排口部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ビル屋上の陸屋根や、ベランダ、バルコニーの他、貯水槽、蓄熱槽等のシート防水構造物において、ドレン部等の給排口周辺に好適に採用されるシート防水構造物の給排口周辺構造及び給排口部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビルの屋上の陸屋根等におけるシート防水構造物においては、防水シートの所要部分のみを躯体に固定し、残り多くの部分を躯体から遊離させたままの状態で放置するようにした絶縁工法が周知である。この絶縁工法によるドレン部等の排水口周辺構造は、一般に、筒状部の一端につば部が形成された合成樹脂成形品等からなる排水口部材を、その筒状部の他端側を排水口に挿入して、排水口内部の排水管に接合一体化するとともに、つば部を躯体表面における排水口周辺に配置し、そのつば部と防水シートの排水口周縁部とを接合一体化するようにしている。
【0003】
このようなシート防水構造物において、防水シート、排水口部材及び排水管としては、従来より、ポリ塩化ビニル樹脂製のものが多く採用されており、排水口部材及び防水シート間の接合と、排水口部材及び排水管間の接合とは、溶剤溶着や熱風融着等を用いて行うのが通例である。
【0004】
ところで、防水シートは経年劣化や破損により張り替える場合があるが、この改修時には、コストや作業性等を考慮して、躯体内部の排水管等はそのままで、防水シート及び排水口部材のみを取り替えるのが一般的である。
【0005】
一方、上記防水シート等のポリ塩化ビニル樹脂製品は、廃棄時の焼却処理に課題を抱えていることから、近年においては、ポリ塩化ビニル樹脂製品に代わる代替製品の使用、いわゆる脱塩ビ化の要請が高まっており、上記のようなシート防水構造においても、防水シートとして、ポリ塩化ビニル樹脂製のものに代えて、ポリオレフィン系樹脂製のものを採用することが多くなっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、防水シート、排水口部材及び排水管として、ポリ塩化ビニル樹脂製のものを用いて施工されたシート防水構造に対し、シート張り替え等の改修施工を行う場合、例えば防水シートとしてポリオレフィン系樹脂製のものを使用し、排水口部材としてポリ塩化ビニル樹脂製のものを使用すると、防水シートと排水口部材との間の接合が、異種材料間での接合となり、十分な接着強度を得ることができず、良好な水密性を得ることが困難であるという問題が発生する。
【0007】
たとえ、排水口部材として、防水シートと同じ材質のポリオレフィン系樹脂製のものを用いたとしても、排水口内部に配置された既存の排水管は、以前としてポリ塩化ビニル樹脂製のものであるため、排水口部材と排水管との間の接合が、異種材料間の接合となり、十分な接着強度を得ることが困難になり、上記と同様、良好な水密性を得ることができないという問題が発生する。
【0008】
以上は、シート張り替え時の改修施工を行う場合について説明したが、防水シートを新規に敷設施工する場合であっても、排水口内部の排水管として、ポリ塩化ビニル樹脂製のものを用い、防水シートとしてポリオレフィン系樹脂製のものを用いるような場合等、防水シートと排水管とが異種材料の場合には、上記と同様な問題が発生する。
【0009】
この発明は、上記従来技術の問題を解消し、防水シートと排水管等の給排管とが異なる材質の場合であっても、防水シートから給排管にかけての給排口周辺の部材を互いに十分な強度で確実に接合できて、良好な水密性を得ることができるシート防水構造物の給排口周辺構造及び給排口部材を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本第1の発明は、給排口を有する躯体の表面に、前記給排口を除いて、防水シートが敷設されるようにしたシート防水構造物の給排口周辺構造であって、筒状取付代の一端外周につば状のシート接合片が一体に形成され、かつ前記防水シートと同じ材質からなるフランジ部材と、前記フランジ部材と異なる材質からなる接続管と、前記接続管の一端部に嵌合された前記フランジ部材の筒状取付代を、前記接続管に固定するための締付けバンドとを有する給排口部材を備え、前記給排口部材が、その接続管が前記給排口に挿入されて給排口内部の給排管に接続されるとともに、前記シート接合片が躯体表面上の給排口周辺に配置されて前記防水シートの給排口周縁部に接合されてなるものを要旨としている。
【0011】
この第1の発明のシート防水構造物の給排口周辺構造においては、給排口部材における接続管の材質等を、給排管の材質等に合わせて適宜選択することにより、給排口部材の接続管と給排管とを確実に接続できるとともに、給排口部材のフランジ部材と防水シートとを同種材料間の接合により確実に接合できるので、防水シートから給排管にかけての給排口周辺部材を互いに十分な接着強度で確実に接合することができる。
【0012】
本第1の発明においては、前記給排口部材のフランジ部材と、前記防水シートとをポリオレフィン系樹脂により構成するのが好ましい。すなわちこの場合には、防水シートの脱塩ビ化を図りつつ、給排口部材と防水シートとを、より確実に接合することができる。
【0013】
更に本第1の発明においては、前記給排口部材の接続管と、前記給排管とをポリ塩化ビニル樹脂により構成するのが望ましい。すなわちこの場合には、従来より汎用されるポリ塩化ビニル樹脂製の給排管に、給排口部材を十分な接着強度で、より一層確実に接続することができる。
【0014】
一方、本第2の発明は、上記第1の発明の給排口周辺構造の主要部を特定するものである。
【0015】
すなわち本第2の発明は、給排口を有する躯体の表面に、前記給排口を除いて、防水シートが敷設されたシート防水構造物における前記給排口に装着される給排口部材であって、筒状取付代の一端外周につば状のシート接合片が一体に形成され、かつ前記防水シートと同じ材質からなるフランジ部材と、前記フランジ部材と異なる材質からなる接続管と、前記接続管の一端部に嵌合された前記フランジ部材の筒状取付代を、前記接続管に固定するための締付けバンドとを備え、前記接続管が前記給排口に挿入されて給排口内部の給排管に接続されるとともに、前記シート接合片が躯体表面上の給排口周辺に配置されて前記防水シートの給排口周縁部に接合されるよう構成されてなるものを要旨としている。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1及び図2はこの発明の実施形態が適用されたビル屋上の排水口周辺構造を示す断面図、図3及び図4はその構造に適用された排水口部材(10)を示す図である。これらの図に示すように、本実施形態が適用されるシート防水構造物としてのビル屋上は、平場を構成する躯体(1)に、給排口としての排水口(2)が設けられており、この排水口(2)の内部には、給排管としてのポリ塩化ビニル樹脂製の排水管(3)が埋設されている。
【0017】
また躯体(1)の表面における排水口(2)を除く領域には、ポリオレフィン系樹脂からなる防水シート(5)が、既述した絶縁工法により施工されている。
【0018】
本実施形態において、給排口部材としての排水口部材(10)は、接続管(20)と、フランジ部材(30)と、これらを互いに固定するための締付けバンド(40)とを有している。
【0019】
接続管(20)は、排水管(3)と同じ材質のポリ塩化ビニル樹脂からなり、上記排水口(2)及び排水管(3)の内部に挿入可能な大きさに形成されている。
【0020】
フランジ部材(30)は、筒状取付代(31)と、その取付代(31)の一端外周に外方突出状に一体形成されたつば状のシート接合片(32)とを有するポリオレフィン系樹脂の成形品をもって構成されている。筒状取付代(31)は、その内径寸法が上記接続管(20)の外径寸法に対応して形成されており、接続管(20)に外嵌可能に構成されている。
【0021】
このフランジ部材(30)の筒状取付代(31)が、接続管(20)の一端外周にシリコン等のシーリング剤(50)を介して外嵌され、その状態で筒状取付代(31)の外側から締付けバンド(40)(40)が巻回されて、そのバンド(40)(40)により、筒状取付代(31)が接続管(20)の一端外周に締付け固定され、これにより排水口部材(10)が形成される。
【0022】
なお、本発明においては、締付けバンド(40)としては、帯状のバンド本体に、尾錠等の止め金具が設けられるものの他に、伸縮性を利用して締付ける輪ゴムタイプのもの、塑性変形を利用して締付け固定する針金タイプのもの、結び付けて固定するひもタイプのもの、粘着剤を利用する粘着テープタイプのもの等を好適に用いることができるが、もちろんこれだけに限られることはない。
【0023】
そして、本実施形態においては、上記構成の排水口部材(10)を用いて、以下に説明するように、躯体(1)における排水口周辺の防水施工を行う。
【0024】
まず、躯体(1)における排水口(2)の周辺に、必要に応じて、凹部(1a)を形成する。そして、排水口部材(10)を、そのシート接合片(32)を排水口周辺の凹部(1a)に収容するようにして、接続管(20)を排水口(2)内に挿入して排水口内の排水管(3)の端部に嵌め込む。更にその接続管(20)を排水管(3)に、溶剤溶着や熱風融着により接合固定する。ここで、排水口部材(10)の接続管(20)と排水管(3)とは共にポリ塩化ビニル樹脂製のものであるため、両者を十分な接着強度で簡単かつ確実に接合一体化することができる。なお、排水口部材(10)のシート接合片(32)は、排水口周辺の凹部(1a)内に収容配置されることにより、シート接合片(32)の上面を躯体表面に対し同じ高さ位置、若しくは低い位置に調整される。
【0025】
また排水口部材(10)におけるフランジ部材(30)のシート接合片(32)の上面に、防水シート(5)における排水口周縁部を配置して、シート接合片(32)と防水シート(5)とを熱風融着等により接合固定する。ここで、排水口部材(10)のシート接合片(32)と防水シート(5)とは共にポリオレフィン系樹脂製のものであるため、両者を十分な接着強度で簡単かつ確実に接合一体化することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態の排水口周辺構造によれば、ポリ塩化ビニル樹脂製の接続管(20)の外周に、ポリオレフィン系樹脂製のフランジ部材(30)を締付けバンド(40)により締付けて固定し排水口部材(10)を形成し、その排水口部材(10)の接続管(20)を排水口内部のポリ塩化ビニル樹脂製排水管(3)に接合固定するとともに、フランジ部材(30)をポリオレフィン系樹脂製防水シート(5)に接合固定するものであるため、排水管(3)、防水シート(5)、排水口部材(10)等の排水口周辺部材を互いに十分な接着強度で簡単かつ確実に接合一体化することができるので、良好な水密性を得ることができる。
【0027】
なお、上記実施形態においては、フランジ部材(30)の筒状取付代(31)を、接続管(20)の外部に外嵌して締付けバンド(40)により固定して排水口部材(10)を形成しているが、本発明はそれだけに限られず、図5に示すように、フランジ部材(30)の筒状取付代(31)を、接続管(20)の内部に内嵌して、接続管(20)の外側から締付けバンド(40)を締め付けるようにして排水口部材(10)を形成するようにしても良い。もっとも、本発明においては、フランジ部材(30)として、接続管(20)よりも軟質のものが通常用いられるので、図5に示すようにフランジ部材(30)の筒状取付代(31)を接続管(20)の内部に内嵌する構造よりも、上記図1ないし図4に示す実施形態のように筒状取付代(31)を接続管(20)の外部に外嵌する構造を採用する方が、バンド(40)による締付け固定を容易に行うことができる。
【0028】
また上記実施形態においては、本発明をビル屋上の平場に適用する場合について説明したが、本発明は、それだけに限られず、例えば図6に示すように、排水口部材(10)として、フランジ部材(30)のシート接合片(32)が側面視L字状のものを用いることにより、ビル屋上の平場とパラペットとの間の入隅部にも適用することができる。
【0029】
また上記実施形態等においては、フランジ部材(30)におけるシート接合片(32)の上面側に防水シート(5)を接合するようにしているが、本発明はそれだけに限られず、シート接合片の下面側に防水シート(5)を接合するようにしても良い。
【0030】
更に図7に示すように、フランジ部材(30)のシート接合片(32)を軟質に仕上げることにより、シート接合片(32)を略円弧断面の排水溝内面や、略半球形状の排水凹部内面等の湾曲面(6)上に敷設された防水シート(5)に隙間なく沿わせることができる。このように本発明は、躯体表面が平坦でない形状の場合にも、良好な仕上がり具合を得ることができる。
【0031】
また上記実施形態においては、本発明をビル屋上等のシート防水構造物に適用した場合について説明したが、本発明は、それだけに限られず、ベランダやバルコニーの他、貯水槽や蓄熱槽の内壁部にも適用することができる。更に本発明は、排水口周辺(ドレン部)だけに限られず、給水口周辺や、吸気口周辺、排気口周辺にも適用することができるとともに、底壁、周側壁、天井壁、入隅部等の壁面のどの位置にも適用することができる。
【0032】
また上記実施形態においては、給排口部材として、接続管がポリ塩化ビニル樹脂製のもの、フランジ部材がポリオレフィン系樹脂製のものを用いているが、本発明においては、フランジ部材が防水シートと同じ材質のものであれば良く、例えば防水シートがポリ塩化ビニル樹脂製の場合には、フランジ部材としてもポリ塩化ビニル樹脂製のものを用いれば良い。
【0033】
また給排口部材の接続管の材質等は、排水管等の給排管の材質等に合わせて適宜選択すれば良く、例えば上記のポリ塩化ビニル樹脂製のもの以外に、ポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂製のもの、鋼管等の金属製のもの等を用いることができる。もっとも本発明においては、接続管と給排管との間に十分な接続強度を確保するために、接続管は、給排管と同じ材質のものを用いるのが好ましい。
【0034】
また本発明は、既設の防水シートを張り替えるような改修作業時に適用できることは言うまでもなく、新規に防水シートを敷設するような新設作業時にも適用することができる。更に本発明を改修作業時に適用する際には、改修前の給排口部材を残存させておき、その給排口部材に、新規の給排口部材のフランジ部材や接続管を接合するようにしても良い。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本第1の発明のシート防水構造物の給排口周辺構造によれば、接続管の一端に、防水シートと同じ材質のフランジ部材を締付けバンドにより固定して給排口部材を形成し、その給排口部材の接続管を給排口内部の給排管に接続するとともに、フランジ部材を防水シートに接合するものであるため、給排口部材における接続管の材質等を給排管の材質等に合わせて適宜選択することにより、給排口部材の接続管と給排管とを確実に接続できるとともに、給排口部材のフランジ部材と防水シートとを同種材料間の接合により確実に接合できるので、防水シートから給排管にかけての給排口周辺の部材を互いに十分な強度で確実に接合でき、良好な水密性を得ることができるという効果がある。
【0036】
本第1の発明において、フランジ部材と防水シートとを共にポリオレフィン系樹脂により構成する場合には、防水シートの脱塩ビ化を図りつつ、防水シートと給排口部材とを、より確実に接合することができるという利点がある。
【0037】
本第1の発明において、接続管と給排管とを共にポリ塩化ビニル樹脂により構成する場合には、従来より汎用されるポリ塩化ビニル樹脂製の給排管に、給排口部材を十分な接着強度で、より一層確実に接続できるので、例えばポリ塩化ビニル樹脂製の給排管が埋設されたシート防水構造物の改修に好適に採用することができるという利点がある。
【0038】
本第2の発明のシート防水構造物の給排口部材は、上記第1発明の給排口周辺構造の主要部を特定するものであるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態が適用されたビル屋上の排水口周辺構造を示す断面図である。
【図2】実施形態の排水口周辺構造を分解して示す断面図である。
【図3】実施形態の排水口周辺構造に適用された排水口部材を示す斜視図である。
【図4】実施形態の排水口部材を分解して示す斜視図である。
【図5】この発明の第1の変形例である排水口周辺構造に適用可能な排水口部材を示す断面図である。
【図6】この発明の第2の変形例である排水口周辺構造に適用可能な排水口部材を示す斜視図である。
【図7】この発明の第3の変形例である排水口周辺構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1…躯体
2…排水口(給排口)
3…排水管(給排管)
5…防水シート
10…排水口部材(給排口部材)
20…接続管
30…フランジ部材
31…筒状取付代
32…シート接合片
40…締付けバンド
Claims (4)
- 給排口を有する躯体の表面に、前記給排口を除いて、防水シートが敷設されるようにしたシート防水構造物の給排口周辺構造であって、
筒状取付代の一端外周につば状のシート接合片が一体に形成され、かつ前記防水シートと同じ材質からなるフランジ部材と、前記フランジ部材と異なる材質からなる接続管と、前記接続管の一端部に嵌合された前記フランジ部材の筒状取付代を、前記接続管に固定するための締付けバンドとを有する給排口部材を備え、前記給排口部材が、その接続管が前記給排口に挿入されて給排口内部の給排管に接続されるとともに、前記シート接合片が躯体表面上の給排口周辺に配置されて前記防水シートの給排口周縁部に接合されてなることを特徴とするシート防水構造物の給排口周辺構造。 - 前記給排口部材のフランジ部材と、前記防水シートとがポリオレフィン系樹脂により構成されてなる請求項1記載のシート防水構造物の給排口周辺構造。
- 前記給排口部材の接続管と、前記給排管とがポリ塩化ビニル樹脂により構成されてなる請求項1又は2記載のシート防水構造物の給排口周辺構造。
- 給排口を有する躯体の表面に、前記給排口を除いて、防水シートが敷設されたシート防水構造物における前記給排口に装着される給排口部材であって、
筒状取付代の一端外周につば状のシート接合片が一体に形成され、かつ前記防水シートと同じ材質からなるフランジ部材と、
前記フランジ部材と異なる材質からなる接続管と、
前記接続管の一端部に嵌合された前記フランジ部材の筒状取付代を、前記接続管に固定するための締付けバンドとを備え、
前記接続管が前記給排口に挿入されて給排口内部の給排管に接続されるとともに、前記シート接合片が躯体表面上の給排口周辺に配置されて前記防水シートの給排口周縁部に接合されるよう構成されてなることを特徴とするシート防水構造物の給排口部材。
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