JP4153230B2 - トロポロン化合物の製造方法 - Google Patents

トロポロン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トロポロン化合物の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、抗菌・抗カビ作用をはじめ防虫作用などにも優れる有用な物質であるトロポロン化合物の製造において、製品純度および白色度を効率的に高めることができる安価且つ簡便で有用な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トロポロン化合物の合成法は種々知られている。その中で、シクロペンタジエン化合物にジクロロケテンを反応させ(以下ジクロロケテン付加反応と略す)、得られた7、7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物(以下ジクロロケテン付加体と略す)を塩基の存在下に分解(以下加溶媒分解と略す)してトロポロン化合物へと導く方法は、シクロペンタジエンなどの原料が入手しやすく工程数も少ないので、工業的に実施する上で有利な方法である。しかしながらこの方法では、ジクロロケテン付加反応および加溶媒分解反応においてトロポロン化合物と分離困難な雑多な不純物が副生するという問題があった。こうした不純物を除き、高純度のトロポロン化合物を得るために、従来種々の方法が採用されている。例えば特公昭51−33901号公報には、上記の合成法で得られた粗4−イソプロピルトロポロン(β−ツヤプリシン、別名ヒノキチオール)に10%水酸化ナトリウムを加えて酸性成分を抽出除去した後、希塩酸を加えて4−イソプロピルトロポロンを析出させてエーテル抽出し、該エーテル層から85%リン酸で4−イソプロピルトロポロンを抽出した後リン酸層を水で希釈して4−イソプロピルトロポロンを析出させるという極めて煩雑な精製を施した後さらにカラムクロマトグラフィーとリグロインによる晶析を実施するという精製法が記されている。このような精製法は、実験室規模では辛うじて実施可能であるが、工程数が多く且つ煩雑な操作を要するので精製コストが極めて高く、工業的規模では到底実施できるものではない。特開平08−040971号公報には、上記の合成法で得られた粗4−イソプロピルトロポロンを減圧下蒸留した後リグロインで晶析するという方法が記されている。この方法は比較的簡便ではあるが、本発明者らの実験の結果この方法による精製効果は十分なものではなく、白色度の低い結晶しか得られず、近年特に精製度の要求水準が高度化している化粧品用途などへの応用は困難であった。特開2001−97915号公報では、上記の合成法で得られたジクロロケテン付加体を減圧下蒸留精製し、その後塩基存在下に分解して得られた粗4−イソプロピルトロポロンを蒸留および晶析により精製するという方法が記されている。この方法では加溶媒分解反応で黒色タール状物が生成するのを抑えるためにジクロロケテン付加体を予め減圧下蒸留しておく必要があり、工程数が増えるという問題があった。
【0003】
以上のように従来技術では、前記の合成法により製造された粗トロポロン化合物を、簡便且つ効果的に精製し、純度および白色度の高いトロポロン化合物を製造することは困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記の合成法により製造された粗トロポロン化合物を、簡便且つ効果的に精製し、純度および白色度の高いトロポロン化合物を製造する方法を提供することを目的とし、特に工業的規模での実施に好適な方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、前記の合成法により製造された粗トロポロン化合物に含有される分離困難な雑多な不純物が、特定の温度条件で加熱処理を行うことにより効率的に分解、除去できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は以下のとおりである。
【0006】
1.シクロペンタジエンまたはアルキルシクロペンタジエンとジクロロケテンとを反応させてジクロロケテン付加体を得、該ジクロロケテン付加体を塩基と水との存在下に分解することによって得られた粗トロポロン化合物を加熱処理した後に蒸留を行うことを特徴とする、トロポロン化合物の製造方法。
2.粗トロポロン化合物を加熱処理する温度が、90℃から250℃であることを特徴とする、1.に記載のトロポロン化合物の製造方法。
3.粗トロポロン化合物を蒸留した後に、アルコールに溶解することを特徴とする1.または2.に記載のトロポロン化合物の製造方法。
4.アルコールがメタノールまたはエタノールであることを特徴とする、3.に記載のトロポロン化合物の製造方法。
5.トロポロン化合物が4−イソプロピルトロポロンであることを特徴とする、1.、2.、3.、または4.に記載のトロポロン化合物の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき具体的に説明する。
本発明でいうトロポロン化合物、シクロペンタジエン化合物およびジクロロケテン付加体とは、それぞれ下記式(1)、(2)および(3)で表される。
【0008】
【化1】
Figure 0004153230
【0009】
【化2】
Figure 0004153230
【0010】
【化3】
Figure 0004153230
【0011】
ただし、R1からR3は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素、または直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基を表し、直鎖状または分岐状を問わない。また不飽和結合が含まれていてもかまわない。また酸素、ケイ素、ハロゲンなどのヘテロ原子が含まれていてもかまわない。
【0012】
アルキル基としては例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。
【0013】
アルケニル基としては一般式−CH=CR45で表され、アルキニル基としては一般式−CH≡C−R4で表される。 R4、R5は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素または炭化水素基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。
【0014】
シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペンテン−1−イル、2−シクロペンテン−1−イル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、1,3−シクロヘキサジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、シクロヘプチル、1−シクロヘプテン−1−イル、2−シクロヘプテン−1−イル、3−シクロヘプテン−1−イル、4−シクロヘプテン−1−イル、シクロオクチル、1−シクロオクテン−1−イル、2−シクロオクテン−1−イル、シクロノニル、シクロデシルなどが挙げられる。
【0015】
また酸素が含まれるものとしては、今まで述べた基に一般式−OR6や一般式−COOR7で表される置換基が有するものが挙げられる。R6やR7は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素または炭化水素基であり例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。また今まで述べた基にケイ素やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲンが含まれていてもかまわない。
【0016】
前記式(1)で表されるトロポロン化合物の中で、4位にイソプロピル基を有する4−イソプロピルトロポロン(β−ツヤプリシン、別名ヒノキチオール)、4−位にイソプロペニル基を有するβ−ドラブリン、3位にイソプロピル基を有するα−ツヤプリシン、5位にイソプロピル基を有するγ−ツヤプリシンは、青森ヒバや台湾ヒノキの精油中に含まれる天然物であり、その安全性の高さから有用性が高く広く用いられている物質である。中でも、4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)は、上記精油中に最も多く含まれる成分のひとつであり、天然抽出品を端緒として用途が広がり、近年では化学合成品が主流となって様々な分野で利用されている。この化学合成品のほとんどが前記の化学合成法によるものであり、ジクロロケテン付加反応や加溶媒分解反応による雑多な不純物を如何に効率よく除去するかが課題となるが、本発明者らの実験の結果、ヒノキチオールの場合には特にこうした不純物の除去が困難であり、本発明の有用性が顕著に示される。
【0017】
ジクロロケテン付加体を得る反応は、シクロペンタジエン化合物とジクロロ酢酸クロライドとを溶媒に溶解し、トリエチルアミンを滴下することにより実施される。あるいはシクロペンタジエン化合物を溶媒に溶解し、ジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンとを同時に滴下することにより実施される。この反応の溶媒はn−ヘキサン、トルエン、石油エーテルなどの炭化水素溶媒が好適に用いられる。反応を行う温度は、−10℃から40℃の範囲が好ましい。この反応ではジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンとの反応によって発生したジクロロケテンがシクロペンタジエン化合物と反応するのであるが、同時にジクロロケテンの重合反応も起こっており、この重合反応の影響によるジクロロケテン付加体の収率低下を抑止する観点から−10℃以上が好ましい。また、シクロペンタジエン化合物自体が二量化してジクロロケテン付加体の収率が低下したり、シクロペンタジエン化合物がアルキルシクロペンタジエンの場合には熱による異性化が進行して置換基の位置が変わるために所望のジクロロケテン付加体が得られなかったりするのを抑止する観点から40℃以下が好ましい。
【0018】
このようにして得られたジクロロケテン付加体を含む反応液には使用したトリエチルアミンが塩酸塩として析出しているので、この塩を水洗またはろ過によって除去し、その後に溶媒を留去してジクロロケテン付加体を主成分とする濃縮液を得ることができる。この濃縮液はそのまま次の工程に使用しても良いし、精製を行ってから使用しても良いが、そのまま使用する方が工程が簡略になり好ましい。すなわち、この濃縮液には前述のジクロロケテンの重合物をはじめ種々の不純物が含まれているために、純度および白色度の高いトロポロン化合物を得るには従来は煩雑な精製操作が必要であったが、本発明の方法によればこの濃縮液を精製することなく加溶媒分解に供することができる。
【0019】
ジクロロケテン付加体を加溶媒分解することによってトロポロン化合物を得る反応は、塩基と水を含む混合溶媒中で該ジクロロケテン付加体を加熱することによって実施される。この反応において、酢酸−酢酸カリウム−水系、酢酸−酢酸ナトリウム−水系、酢酸−トリエチルアミン−アセトン−水系などの公知の混合溶媒が使用できるが、トリエチルアミンを用いる系が反応速度が速く好ましい。また本発明者らが鋭意検討した結果、酢酸−トリエチルアミン−アセトン−水系の代わりに酢酸−トリエチルアミン−ターシャリーブタノール−水系、または酢酸−トリエチルアミン−トルエン−水系を用い、しかもトリエチルアミンを予め全量仕込むのでなく後から滴下する方法が好ましいことがわかった。
【0020】
この加溶媒分解反応で得られたトロポロン化合物を含む反応液に以下の(a)〜(d)に示した操作を順次行うことによって、トロポロン化合物を主成分とする液が得られる。
(a)該反応液に水、塩酸を加える。
(b)アセトン、ターシャリーブタノールなどの水溶性溶媒を用いた場合は、この水溶性溶媒を留去し、水に不溶性の有機溶媒を加える。
(c)トロポロン化合物を含む有機溶媒相と水相とを相分離させ、水相を除去する。
(d)トロポロン化合物を含む液から溶媒を留去する。
【0021】
このような操作によって、残存したトリエチルアミンを塩酸塩に変換し、酢酸およびトリエチルアミン塩酸塩を水溶液として除去することができ、一方、トロポロン化合物は有機溶媒中に溶解しており、この有機溶媒を留去することによりトロポロン化合物を主成分とする濃縮液が得られるのである。このトロポロン化合物を主成分とする濃縮液を粗トロポロン化合物と称する。
粗トロポロン化合物には、加溶媒分解反応の副生物としてジクロロケテン付加体が変性、重合したものをはじめ雑多な不純物が含まれている。さらには、前述のジクロロケテン付加体を得る際のジクロロケテンの重合物やその他の不純物、およびそれらが加溶媒分解反応で変性したものも含まれ、これらの不純物が渾然一体となって粘稠な黒色タール状物を成しているのである。
【0022】
このような不純物を含むために、従来の方法では純度および白色度の不十分なトロポロン化合物しか得られない、あるいは高い純度および白色度のトロポロン化合物を得るためには煩雑な精製操作を必要とする、という問題があったが、本発明の加熱処理および蒸留を行う方法によれば十分な純度と白色度を持ったトロポロン化合物が得られる。
【0023】
加熱処理なしに蒸留を行うと、粗トロポロン化合物に含まれる黒色タール状の不純物のごく一部がトロポロン化合物に同伴して純度を下げるとともに着色の原因ともなるのである。さらに、このような着色した蒸留留分からは晶析によっても、着色不純物を除くのが困難である。このときの蒸留操作として、例えば蒸発釜と凝縮器からなる簡単な単蒸留装置を用いて減圧蒸留を行った場合でも、充填塔付きの装置を用いて減圧蒸留を行った場合でも同様の結果となり、トロポロン化合物と同伴して留出してくる着色不純物の一部は蒸留操作中に釜内で分解発生したものであることが示唆され、除去するのが極めて困難であることがわかった。
【0024】
本発明の効果について鋭意検討した結果、粗トロポロン中に含まれる不純物の性質や挙動について次のように分類できることがわかっている。
(イ)着色のある、熱に対して難分解性の成分。
(ロ)着色のある、熱に対して易分解性の成分。
(ハ)着色はないが、時間の経過あるいは熱により変性して着色する成分。
すなわち、不純物は(イ)、(ロ)の着色成分と、(ハ)の着色前駆体とに分類される。ここでいう着色とは430nmにおける透過率で規定したものである。
【0025】
粗トロポロン中に含まれるタール状不純物のうち大部分は(イ)であり、そのほとんどが蒸留では留出しないので分離が可能である。また(ハ)については晶析で除去できることがわかっている。
従来、蒸留および晶析で除去が困難であったのは(イ)、(ロ)のうちでトロポロン化合物と沸点の近いもの、および(ロ)の分解生成物である。本発明の方法によればこれらの成分を効率よく除去することができる。すなわち、加熱処理によって(ロ)の易分解性の成分を予め分解除去し、また(イ)をさらに高沸点物へと重合あるいは変性させることによって、蒸留での着色成分の分離除去を可能にする。
【0026】
本発明の加熱処理の温度としては、90℃から250℃が好ましい。90℃未満では、不純物が全く分解されないか、あるいは分解される場合でも非常に長時間を要し、工業的実施において支障を来す。250℃を超える場合は、トロポロン化合物自体が分解して収率が下がったり、変性して着色したりする問題が発生する。精製後のトロポロン化合物の白色度を考慮すると、さらに好ましくは140℃から200℃である。
【0027】
加熱処理を行う際の圧力に特に制限はないが、減圧で行うことでより精製効果を高めることができる。すなわち、減圧蒸留装置を用い減圧下で加熱処理を行うと、不純物が分解されると同時に、発生した分解物を減圧留去できるからである。圧力としては該トロポロン化合物が沸騰しない範囲で低い程精製効果を高めることができる。
また、同様の効果を得るために、加熱処理の温度で沸騰する化学的に不活性な溶媒を加えておき該溶媒の留出に同伴させて分解物を留去することもできる。ヘプタン、オクタン、イソオクタン、n−デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどの炭化水素溶媒が好適に用いられる。
【0028】
また、加熱処理を行う装置の形状によっては、分解物が装置内の壁面に付着し、後に蒸留を行った際に留出してくるトロポロン化合物に混入することがあるので、そのような場合には装置を洗浄した後に蒸留を行うか、別の装置で蒸留を行うのが好ましい。
加熱処理の後に引き続いて蒸留を行う。蒸留では、主に難分解性の不純物が沸点によって分離除去される。加熱処理において易分解性の不純物は十分分解されているはずであるが、蒸留の際に加熱処理よりも高い温度にさらされると僅かに残存した易分解性の不純物や、難分解性の不純物までもが分解されて、留出したトロポロン化合物に混入することになる。したがって、蒸留の際の温度は加熱処理の温度よりも低い方が好ましい。
【0029】
蒸留を行う際の圧力に特に制限はないが、上記の理由で沸点をできるだけ低くするように減圧で行うのが好ましい。
蒸留後のトロポロン化合物を長時間、例えば1日以上保存しておくとトロポロン化合物中の着色前駆体が着色物へと変性して晶析では完全には除去できなくなる場合がある。しかしながら蒸留後のトロポロン化合物を直ちにアルコールに溶解しておくと、より効果的に着色前駆体の変性を抑えることができ、例えば数日間保存した後でも晶析によって該着色前駆体を除去することが可能になる。その理由について本発明者らが鋭意検討した結果、着色前駆体にはアルデヒド基を持つ物質が含まれており、着色前駆体の変性とはこの物質が重合することであるということがわかった。したがってこの着色前駆体を含むトロポロン化合物にアルコールを加えることにより、着色前駆体はアルデヒドとヘミアセタール、さらにアセタールとの平衡混合物となり、アルデヒド基による重合が抑制されるのである。
【0030】
トロポロン化合物とアルコールの比率はトロポロン化合物:アルコール=1:1から1:4(重量比)の範囲が好ましい。アルコールとしては例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、エチレングリコールなどが挙げられるが、引き続き晶析を行う場合にはメタノールおよびエタノールがそのまま晶析溶媒として使用できるので特に好ましい。
【0031】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
なお、実施例等における各種測定は以下の方法にしたがった。
1.トロポロン化合物のガスクロマトグラフ分析
装置:島津製作所GC−14A、島津製作所クロマトパックCR−4A
カラム:J&Wサイエンティフィック社キャピラリーカラムDB−1、30m×ID0.25mm×0.25μm
温度条件:カラム100℃×2分→250℃(10℃/分)、注入口300℃、検出器250℃(FID)
2.トロポロン化合物白色度測定
分光光度計(430nmにおける透過率をもって白色度の指標とした。)
装置:日立製作所 U−2000
溶媒:エタノール
試料濃度:10.0wt%
光路長:10mm
【0032】
【実施例1】
1−イソプロピルシクロペンタジエン114.5kg(1.058kmol)を含むトルエン溶液1475kgをグラスライニングを施したジャケット式反応器に仕込み、溶液温度を0℃に冷却した。該溶液を撹拌しつつ、該溶液に対しジクロロアセチルクロライド174.1kg(純度97.7%、1.154kmol)およびトリエチルアミン 123.8kg(純度94.3%、1.154kmol)を同時に4時間かけて滴下し、ジクロロケテン付加反応を実施した。その間、溶液温度が0から5℃の範囲に維持されるよう、ジャケットに冷媒を流通させて反応熱を除去した。ジクロロアセチルクロライドとトリエチルアミンの滴下終了後、反応液に水200kgと濃塩酸7.0kgを添加し、15分間撹拌した。その後30分間静置して有機層と水層を分離させた後、反応器底端から水層を抜き出した。
【0033】
該有機層からトルエンを減圧留去し、粗ジクロロケテン付加体287.8kg(純度73%、0.963kmol)を得た(収率91.0%)。
得られた粗ジクロロケテン付加体および、ターシャリーブタノール1676.7kg(純度87%)、水186.6kg、酢酸396.4kg(6.601kmol)を、グラスライニングを施した還流冷却器付反応器に仕込み還流温度まで昇温した。該溶液を撹拌しつつ、還流状態でトリエチルアミン778.8kg(7.696kmol)を2時間かけて滴下し、加溶媒分解反応を実施した。滴下終了後さらに3時間加熱還流した後、室温まで冷却した。水2202kgと濃塩酸171.7kg加えた後、ターシャリーブタノールを減圧留去した後トルエン2412kgを加えて45℃で15分間撹拌した。撹拌を停止した後30分間静置して有機層と水層を分離させた。得られた有機層に純水1467kgを加え15分間攪拌した。撹拌を停止した後30分間静置して有機層と水層を分離させた。
【0034】
さらに、得られた有機層に純水1467kgを加え15分間攪拌し、撹拌を停止した後30分間静置して有機層と水層を分離させる、という操作を3回繰り返した。得られた有機層からトルエンを減圧留去し、粗ヒノキチオール172.3kgを得た(純度77.5%、0.814kmol)(収率84.5%)。
得られた粗ヒノキチオール3.0kgをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ常圧で160℃で1時間加熱した。
ついで減圧下に単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を60.0g、第2留分を2325g(純度95.0%、13.452mol、収率94.9%)を得た。
【0035】
単蒸留終了後直ちに、ガラス製晶析槽中に、単蒸留により得られた第2留分100.0gと混合溶媒400.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)200.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶76.0gを得た(収率80.0%)。
【0036】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒300.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)150.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶61.8gを得た(収率81.3%)。
得られた結晶は、精製度の良好なヒノキチオール結晶であり、ガスクロマトグラフ純度99.9%、白色度(430nm透過率)95.3%であった。
【0037】
【実施例2】
実施例1と同様の方法で製造した粗ヒノキチオール175.0gをグラスライニングを施した単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ25mmHg、140℃で4時間加熱した。
ついで減圧下に単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を3.1g、第2留分を134.0g(純度93.2%、0.782mol、収率92.1%)を得た。
【0038】
単蒸留終了後直ちに、ガラス製晶析槽中に、単蒸留により得られた第2留分63.2gと混合溶媒253.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)126.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶42.7gを得た(収率72.5%)。
【0039】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒166.2g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)84.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶35.5gを得た(収率83.1%)。
得られた結晶は、精製度の良好なヒノキチオール結晶であり、ガスクロマトグラフ純度99.9%、白色度(430nm透過率)97.1%であった。
【0040】
【実施例3】
実施例1と同様の方法で製造した粗ヒノキチオール202.9gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ25mmHg、160℃で4時間加熱した。
ついで減圧下に単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を4.1g、第2留分を150.3g(純度95.3%、0.872mol、収率91.1%)を得た。
【0041】
単蒸留終了後直ちに、ガラス製晶析槽中に、単蒸留により得られた第2留分65.0gと混合溶媒260.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)130.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶46.5gを得た(収率75.1%)。
【0042】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒186.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)92.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶39.0gを得た(収率83.9%)。
得られた結晶は、精製度の良好なヒノキチオール結晶であり、ガスクロマトグラフ純度99.9%、白色度(430nm透過率)99.1%であった。
【0043】
【実施例4】
実施例1と同様の方法で製造した粗ヒノキチオール175.0gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ50mmHg、180℃で4時間加熱した。
ついで減圧下に単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を3.5g、第2留分を129.0g(純度94.5%、0.742mol、収率89.9%)を得た。
【0044】
単蒸留終了後直ちに、ガラス製晶析槽中に、単蒸留により得られた第2留分65.0gと混合溶媒260.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)130.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶45.5gを得た(収率74.1%)。
【0045】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒182.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)92.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶38.8gを得た(収率85.3%)。
得られた結晶は、精製度の良好なヒノキチオール結晶であり、ガスクロマトグラフ純度99.9%、白色度(430nm透過率)98.0%であった。
【0046】
【実施例5】
実施例1と同様の方法で製造した粗ヒノキチオール175.0gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ105mmHg、200℃で1時間加熱した。
ついで減圧下に単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を3.8g、第2留分を128.5g(純度95.0%、0.743mol、収率90.0%)を得た。
【0047】
単蒸留終了後直ちに、ガラス製晶析槽中に、単蒸留により得られた第2留分65.0gと混合溶媒260.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)130.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶47.1gを得た(収率76.3%)。
【0048】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒188.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)94.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶39.0gを得た(収率82.8%)。
得られた結晶は、精製度の良好なヒノキチオール結晶であり、ガスクロマトグラフ純度99.9%、白色度(430nm透過率)95.9%であった。
【0049】
【実施例6】
実施例1と同様の方法で製造した粗ヒノキチオール200.0gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ25mmHg、160℃で4時間加熱した。
ついで減圧下に単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を4.4g、第2留分を140.4g(純度96.0%、0.821mol、収率87.0%)を得た。
【0050】
単蒸留で得られた第2留分の白色度(430nm透過率)は78%であった。この留分のうち65.0gを室温で遮光し、5日間保存したところ、白色度は65%まで低下していた。
この留分に混合溶媒260.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、ガラス製晶析槽中にて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)130.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶45.3gを得た(収率72.6%)。
【0051】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒181.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)90.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶38.1gを得た(収率84.1%)。
【0052】
得られた結晶は、ガスクロマトグラフ純度99.9%、白色度(430nm透過率)95.2%であった。
本実施例では、精製度の良好なヒノキチオール結晶が得られているが、単蒸留後の留分を5日間保存したことで例えば実施例3と比較して晶析後の結晶の白色度が低下している。
【0053】
【実施例7】
実施例6の単蒸留で得られた第2留分のうち65.0gに対して、蒸留後すぐに、エタノール130.0gを加えて均一溶液とした後に、室温で遮光し、10日間保存した後でも、白色度は76%であり、白色度の低下はごくわずかであった。
このエタノール溶液に水130.0gを加え、ガラス製晶析槽中にて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)130.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶45.8gを得た(収率73.4%)。
【0054】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒183.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)90.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶38.5gを得た(収率84.1%)。
【0055】
得られた結晶は、精製度の良好なヒノキチオール結晶であり、ガスクロマトグラフ純度99.9%、白色度(430nm透過率)98.8%であった。
単蒸留後の留分をエタノールで希釈することにより、10日間保存しても晶析後の結晶の白色度は低下しなかった。
【0056】
【実施例8】
実施例1と同様の方法で製造した粗ヒノキチオール100.0gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ10mmHg、80℃で4時間加熱した。
ついで減圧下に単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を3.9g、第2留分を72.1g(純度96.3%、0.423mol、収率89.6%)を得た。
【0057】
単蒸留終了後直ちに、ガラス製晶析槽中に、単蒸留により得られた第2留分65.0gと混合溶媒260.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)130.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶47.1gを得た(収率75.2%)。
【0058】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒188.4g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)94.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶39.1gを得た(収率83.0%)。
得られた結晶は、精製度の良好なヒノキチオール結晶であり、ガスクロマトグラフ純度99.8%、白色度(430nm透過率)92.9%であった。
【0059】
【実施例9】
実施例1と同様の方法で製造した粗ヒノキチオール100.0gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ200mmHg、250℃で1時間加熱した。
ついで減圧下に単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を4.0g、第2留分を70.5g(純度95.5%、0.410mol、収率86.9%)を得た。
【0060】
単蒸留終了後直ちに、ガラス製晶析槽中に、単蒸留により得られた第2留分65.0gと混合溶媒260.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)130.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶46.2gを得た(収率74.4%)。
【0061】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒184.8g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)94.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶38.5gを得た(収率83.3%)。
得られた結晶は、精製度の良好なヒノキチオール結晶であり、ガスクロマトグラフ純度99.8%、白色度(430nm透過率)92.0%であった。
【0062】
【比較例1】
実施例1と同様の方法で製造した粗ヒノキチオール100.0gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、減圧下にて単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を4.5g、第2留分を75.1g(純度94.8%、0.434mol、収率91.9%)を得た。
単蒸留終了後直ちに、ガラス製晶析槽中に、単蒸留により得られた第2留分65.0gと混合溶媒260.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)130.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶45.5gを得た(収率73.8%)。
【0063】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶および混合溶媒182.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)92.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶40.0gを得た(収率87.9%)。
【0064】
得られた結晶は、ガスクロマトグラフ純度99.7%、白色度(430nm透過率)87.7%で、精製度が低く黄ばんでいた。
本実施例では、加熱処理工程を省略したので、精製度の不十分なヒノキチオール結晶しか得られなかった。
【0065】
【比較例2】
実施例1と同様の方法で製造した粗ヒノキチオール100.0gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、減圧下にて単蒸留し(140℃/10mmHg)、第1留分を5.1g、第2留分を74.3g(純度95.1%、0.430mol、収率91.2%)を得た。
単蒸留終了後直ちに、ガラス製晶析槽中に、単蒸留により得られた第2留分65.0gとn−ヘキサン260.0gを加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却したn−ヘキサン130.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶46.8gを得た(収率75.7%)。
【0066】
得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製晶析槽中に、該結晶およびn−ヘキサン187.2gを加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却したn−ヘキサン94.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶38.6gを得た(収率82.5%)。
【0067】
得られた結晶は、ガスクロマトグラフ純度99.3%、白色度(430nm透過率)68.5%で、精製度が低く黄ばんでいた。
本実施例では、加熱処理工程を省略したので、精製度の不十分なヒノキチオール結晶しか得られなかった。
【0068】
【発明の効果】
本発明により、抗菌・抗カビ作用はじめ防虫作用などにも優れる有用なトロポロン化合物の製造において、製品純度および白色度を効率的に高めることができる安価且つ簡便で有用な方法を提供できる。

Claims (5)

  1. シクロペンタジエンまたはアルキルシクロペンタジエンとジクロロ酢酸クロライドをトリエチルアミンの存在下に反応させ、ジクロロケテン付加体を得、該ジクロロケテン付加体を塩基と水との存在下に分解し、粗トロポロン化合物を得、該粗トロポロン化合物を加熱処理した後に蒸留を行うことを特徴とする、トロポロン化合物の製造方法。
  2. 粗トロポロン化合物を加熱処理する温度が、90℃から250℃であることを特徴とする、請求項1に記載のトロポロン化合物の製造方法。
  3. 粗トロポロン化合物を蒸留した後に、アルコールに溶解することを特徴とする請求項1または2に記載のトロポロン化合物の製造方法。
  4. アルコールがメタノールまたはエタノールであることを特徴とする、請求項3に記載のトロポロン化合物の製造方法。
  5. トロポロン化合物が4−イソプロピルトロポロンであることを特徴とする、請求項1、2、3、または4に記載のトロポロン化合物の製造方法。
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