JP4153080B2 - 窒化硼素含有複合セラミックス焼結体の製造方法及び同焼結体 - Google Patents

窒化硼素含有複合セラミックス焼結体の製造方法及び同焼結体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は主として乱層構造窒化硼素、特に結晶性乱層構造窒化硼素微粉末、を原料に使用する複合セラミックス焼結体の新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化硼素(BN)は硼素と窒素からなる化合物であるが、炭素とほぼ同じ結晶構造を有する多形が存在する。すなわち、窒化硼素には無定形窒化硼素(以下、a−BNという)、六角形の網目層が二層周期で積層した構造を持つ六方晶系窒化硼素(以下、h−BNという)、六角形の網目が三層周期で積層した構造を持つ菱面体晶系窒化硼素(以下、r−BNという)、六角形の網目層がランダムに積層した構造を持つ乱層構造窒化硼素(以下、t−BNという)、高圧下の安定相であるジンクブレンド型窒化硼素(以下、c−BNという)及びウルツアイト型窒化硼素(以下、w−BNという)が知られている。
【0003】
上記の窒化硼素の多形の内、従来材料として実用性が認められているのはh−BNとc−BNのみである。h−BNは黒鉛より耐酸化性に優れている安定相であり、合成された結晶性h−BN粉末の粒子は通常六角板状の自形を有しており、黒鉛と同様に良好な耐熱性、機械加工性(切削加工性)及び固体潤滑性を有しているが、黒鉛と異なり白色で優れた絶縁性を有する。他方a−BNは不安定で吸湿性があるため、a−BNの状態では使用できない。典型的なh−BNとa−BNのCuKα線による粉末X線回折図を図1と図2に示す。
【0004】
図1から分かるように、h−BNの粉末X線回折図では[002][100][101][102]及び[004]の回折線が顕著である。これに対して図2のa−BNの粉末X線回折図ではh−BNの粉末X線回折図の[100]回折線と[101]回折線の位置にある[100]と[101]回折線が合体したブロードな(半価幅の大きい)回折線と、h−BNの粉末X線回折図の[002]回折線の位置にあるブロードな回折線とがあるのみで、他の回折線は見当らないか、存在したとしてもブロードで存在が不明瞭な弱い回折線しか存在しない。a−BNの構造では硼素と窒素からなる六角網目層が発達しておらず、発達していない微小な六角網目層の積層構造にも規則性がないものである。
【0005】
h−BNの結晶では硼素と窒素からなる発達した六角網目層が・・aa'aa'aa'aa'a・・のパターンで積層した結晶構造を有しており、六角網目層が3層周期で積層したものがr−BNである。他方、六角網目層は発達しているが六角網目層の積層構造に規則性のないものをt−BNという。t−BNの粉末X線回折図の一例を図3に示す。図3から分かるように、この粉末X線回折図ではh−BNの粉末X線回折図の[002]及び[004]回折線に対応する回折線がシャープな回折線となっているが、[100]回折線に対応する回折線が高角度側に裾を引いて広がった形をしていて[101]に対応する回折線が弱く目立たず、[102]に対応する回折線は存在しないか、存在しても非常に弱い。この[102]に対応する回折線は六角網目層が規則的に積層していることによって始めて現れる回折線である。
【0006】
広義に解釈するとa−BNも乱層構造の窒化硼素であると考えられるので、たとえば資源・素材学会誌Vol.105(1989)No.2,P201〜204では粉末X線回折図がブロードな回折線しか示さない窒化硼素をt−BNと記載しているが、このような窒化硼素はt−BNと区別してa−BNであるとするのが妥当である。
【0007】
従来の窒化硼素を含む複合セラミックス焼結体の例としては次のようなものが知られている。特開昭60−195059号、特開昭60−195060及び特開平2−252662号にはh−BN粉末を窒化アルミニウムと複合したマシナブル(機械加工性又は切削加工性)で熱伝導率の大きい複合セラミックス焼結体が開示されている。また、特公平5−65467号及び特開平1−305861号にはa−BN粉末を原料に用いて窒化硼素を窒化アルミニウム、窒化珪素又は炭化珪素と複合した、h−BNを含む高強度で機械加工性が良好な複合セラミックス焼結体が開示されている。また、特開平7−330421号には酸化物、窒化物、炭化物等からなる多孔質のセラミックスに硼酸水溶液を含浸して乾燥し、これをアンモニア雰囲気中で加熱して還元かつ窒化し、多孔質焼結体中に窒化硼素(加熱温度からこの段階ではa−BNになっていると推定される)を生成させる。次いでこれを母材の焼結温度で焼結し、焼結と同時にa−BNがh−BNに相転移したh−BN粒子を含む強度が大きい各種の複合セラミックス焼結体を得ている。この方法の場合、比較的多量の窒化硼素を複合させた複合セラミックス焼結体を得るには、含浸、乾燥及び窒化の工程を繰り返し行なう必要があるので煩雑である。
【0008】
上述した各種窒化硼素から高圧下で安定な結晶相であるc−BNとw−BNを除いた窒化硼素の内、結晶性のt−BNやr−BNについては実験室でごく少量合成された報告が過去にあるのみで(たとえばJournal of Solid State Chemistry Vol.109,No.2,p384−390(1994)参照)、本発明者らの関知する限りにおいて、結晶性t−BN微粉末を原料に使用した複合焼結体、あるいは結晶性t−BNを含有する複合焼結体は未だ知られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は新規な結晶性BNを用いた新規なセラミック複合焼結体の製造方法を提供せんとするものである。本発明者らは、先に出願した特願平9−21052号に生産性に優れた結晶性t−BN微粉末の製造方法を提案した。本発明は、特願平9−21052号に記載した結晶性t−BN微粉末の有する特徴である、湿気に対して不活性であり、結晶粒子径(一次粒子径と同じ)が細かく、一次粒子の粒径が揃っていて、焼結性が良好な結晶性t−BN微粉末を利用した、安価で有用な複合セラミックス焼結体の製造方法を提案するものである。本発明はさらに新規な結晶性BN微粉末を用いた高性能複合セラミックス焼結体をも提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1視点における複合セラミックス焼結体の製造方法は、有効量、特に5重量%以上の結晶性t−BN微粉末をこれ以外のセラミック原料に混合したセラミック混合物を成形して焼結することを特徴とする。結晶性t−BNの有効量は、所要目的に応じて定められるが、およそ0.1重量%以上から、0.5、1、2、3、4の各重量%以上等に設定できる。また焼結は結晶性t−BNが実質的(例えば10%以上)に或いは所定量以上(70%、50%、30%、20%以上等これらの中間を含む任意の量)相転移を生じない条件下において行うことができる。これにより、結晶性t−BN含有複合セラミックス結晶体が得られる。本発明はまた、結晶性t−BNが相転移(特にh−BNへ)する条件下に焼結して、高性能の複合セラミックス焼結体を、得ることができる。その場合、相転移は50%以下ないしそれ以上に制御でき、また実質的に全て相転移させることもできる。
【0011】
結晶性t−BN微粉末を製造する好ましい方法は、前述の特願平9−21052号に記載された結晶性t−BN微粉末の製造方法、すなわち有効量の溶融硼酸アルカリを共存させて窒素等の非酸化性雰囲気中でa−BN粉末を加熱し、a−BNをt−BNに結晶化させる方法である。複合セラミックス焼結体は多くの場合多孔質の焼結体であるが、結晶性t−BN微粉末はサブミクロンの微細な一次粒子からなっているのでh−BN粉末より焼結しやすく、成形するとa−BNを混合した粉末より緻密な成形体になり、焼結すれば緻密な複合焼結体となる。この複合焼結体は気孔率が相当あっても強度が比較的大きい。微細な結晶性t−BN微粒子が焼結時にh−BNに転移しないで焼結体中に残存している場合には微細な結晶性t−BN微粒子の存在によって微細な気孔が形成され、焼結体中の気孔はサブミクロンサイズの微細な平均気孔径を有するものとなる。
【0012】
特願平9−21052号に記載されている結晶性t−BN微粉末の合成方法は、たとえば次の通りである。出発原料に尿素と硼酸及び少量の硼酸アルカリからなる硼素より窒素成分が過剰な混合物を出発原料に用い、硼酸ナトリウムの共存下で加熱して950℃以下で反応させ、a−BNを主体とし硼酸やナトリウムイオンを含むカルメ焼き状の中間生成物を得る。次いでこの中間生成物を1mm以下に粉砕して窒素雰囲気中で約1300℃に加熱し、結晶化させると結晶性t−BNが生成する。この結晶化した反応物を水、特に温純水で洗浄(必要に応じてアルカリ成分の中和洗浄のために酸を用いる)して精製すると、純度が高く、円板状又は球状の形状を有する微細な一次粒子からなる結晶性t−BN微粉末が得られる。結晶性t−BN微粉末の微細な一次粒子は集合してミクロンサイズの二次粒子となっているが、アトリションミルなどで湿式粉砕すれば、微細な一次粒子にまで容易に微粉砕することができる。結晶性t−BN微粉末の一次粒子は、微細な円板状又は球状であることによって微粉砕された混合粉末を成形するときに六角板状のh−BN粒子のように配向しないので、複合焼結体としても熱膨張率の成形時の方向による差異が殆どない焼結体が得られるという利点がある。
【0013】
本発明の製造方法では、CuKα線による粉末X線回折図におけるh−BNの[004]回折線に対応する回折線の2θの半価幅が0.6°以下と小さくシャープな回折線を示す結晶性の窒化硼素であって、h−BNのCuKα線による粉末X線回折図における[100]、[101]及び[102]回折線に対応する各回折線の占める面積(回折線の強度を意味する)S100、S101及びS102の間にS102/(S100+S101)≦0.02の関係を充たす窒化硼素を結晶性t−BNという。本発明の複合セラミックス焼結体の製造方法に用いる結晶性t−BN微粉末としては、h−BNの[004]回折線に対応する回折線の2θの半価幅が0.5°以下の結晶性t−BN微粉末を使用するのが好ましい。
【0014】
結晶性t−BN微粉末は前述の製造方法によって高純度のものを製造できる。したがって、セラミックス混合粉末中に含まれる結晶性t−BNの含有量は、結晶性t−BNの含有量が既知のセラミックスの混合粉末を別途調製して複数の標準試料とし、標準試料の粉末X線回折図中の結晶性t−BNの回折線の強度を、粉砕した複合セラミックス焼結体の粉末X線回折図中の結晶性t−BNの回折線の強度と比較すれば求めることができる。
【0015】
結晶性t−BN微粉末を複合セラミックス焼結体の原料に用いる利点は、前述の方法によって従来市販されているh−BN粉末と比べて安価に製造でき、結晶性t−BN微粉末の一次粒子が微細であることによってセラミックス混合粉末の成形体が焼結しやすく、多孔質な複合焼結体の場合も強度が大きく、窒化硼素が結晶性t−BNの状態で焼結体中に残留している場合には微細で揃った大きさの気孔を有する複合セラミックス焼結体が得られる点である。また、原料にa−BN粉末を使用方法と比較すると、結晶性t−BN微粉末はa−BN粉末と比べて湿気などの水分に対して安定であるので焼結体の原料として使いやすく、a−BN粉末を混合したセラミックス混合粉末と比べて密度の大きい成形体が得られ、密度の大きい複合セラミックス焼結体が得られる点である。従来のh−BN粉末を含む複合セラミックス焼結体の場合と同じく、本発明の製造方法による窒化硼素含有複合セラミックス焼結体は、h−BN及び/又はt−BNを焼結体の内部に含有していることによってヤング率が小さく熱伝導率が大きいので耐熱衝撃性に優れており、固体潤滑性があり、溶融金属に対して優れた耐食性を有し、電気絶縁性に優れている等の好ましい特徴がある。
【0016】
本発明の第1視点における好ましい形態によれば、焼結を結晶性乱層構造窒化硼素が実質的に相転移を受けられない条件下で行い結晶性乱層構造窒化硼素を含有する焼結体とする。
【0017】
本発明の第1視点における好ましい形態によれば、焼結を結晶性t−BNが50%以下の部分的相転移を受ける条件下において行う。
【0018】
本発明の第2視点における複合セラミックス焼結体の製造方法は、有効量の結晶性t−BN微粉末を窒化硼素以外のセラミック原料と混合したセラミック混合物を成形し、結晶性t−BNが実質的にh−BNへ相転移する条件下に焼結する複合セラミックス焼結体の製造方法であって、結晶性乱層構造窒化硼素微粉末が、そのCuKα線による粉末X線回折図における六方晶系窒化硼素の[004]の回折線に対応する回折線の2θの半価幅が0.6°以下であり、結晶性乱層構造窒化硼素微粉末が、六方晶窒化硼素のCuKα線による粉末X線回折図における[100][101]及び[102]回折線に対応する各回折線の占める面積S100、S101及びS102の間にS102/(S100+S101)≦0.02の関係が充たされているものである。
【0019】
本発明の第1視点及び第2視点における好ましい形態によれば、結晶性t−BN粉末を5重量%以上含む。
【0020】
本発明の第1視点及び第2視点における好ましい形態によれば、セラミックス混合物が5〜40重量%の結晶性t−BN微粉末と60〜95重量%の窒化硼素以外のセラミック 原料を含むものである。
【0021】
本発明の第1視点及び第2視点における好ましい形態によれば、窒化硼素以外のセラミック原料が窒化アルミニウム及び窒化珪素の一種以上を含む。
【0022】
本発明の第1視点及び第2視点における好ましい形態によれば、窒化硼素以外のセラミック原料がアルミナ及び部分安定化ジルコニアの一種以上を含む。
【0023】
本発明の第1視点及び第2視点における好ましい形態によれば、結晶性t−BN微粉末を10〜35重量%混合したセラミック混合物を使用して機械加工性を有する複合セラミックス焼結体を得る。
【0024】
本発明の第1視点及び第2視点における好ましい形態によれば、セラミックス混合粉末に混合された結晶性t−BN微粉末の一次粒子の粒径が1μm以下であり、一次粒子の平均粒径が0.4μm以下である。
【0025】
本発明の第1視点及び第2視点における好ましい形態によれば、結晶性t−BN微粉末が純度90%以上で残部主としてB から成る。
【0026】
本発明の第1視点及び第2視点における好ましい形態によれば、上記のいずれかの製造方法によって製造された複合セラミックス焼結体が5kg/mm 2 以上の曲げ強度を有する。
【0027】
本発明の第3視点における複合セラミックス焼結体は、有効量の結晶性t−BN微粉末を窒化硼素以外のセラミック原料と混合したセラミックス混合物を成形し、結晶性t−BNが実質的にh−BNへ相転移する条件下に焼結して成り、結晶性t−BN微粉末が、そのCuKα線による粉末X線回折図における六方晶系窒化硼素の[004]の回折線に対応する回折線の2θの半価幅が0.6°以下であり、六方晶窒化硼素のCuKα線による粉末X線回折図における[100][101]及び[102]回折線に対応する各回折線の占める面積S100、S101及びS102の間にS102/(S100+S101)≦0.02の関係が充たされているものである。
【0028】
本発明の第3視点における好ましい形態によれば、窒化硼素以外のセラミック原料として1450℃以上で焼結されるセラミック原料を主成分として用いる。
【0029】
本発明の第3視点における好ましい形態によれば、窒化硼素以外のセラミック原料として、酸化物、ホウ化物、窒化物、炭化物、けい化物、これらの複合化合物もしくはこれらと酸化物との複合化合物の一種以上を用いる。
【0030】
本発明の第3視点における好ましい形態によれば、窒化硼素以外のセラミック原料として、窒化アルミニウム、窒化けい素の一種以上を用いる。
【0031】
【発明の実施の形態】
結晶性t−BN微粉末の微粉砕や他のセラミックス粉末との混合、あるいは粉砕を兼ねる混合は分散性のよいアルコールなどを媒体とする湿式のボールミルやアトリションミルによって行なうのが好ましい。複合セラミックス焼結体の原料とするセラミックス混合粉末に混合する窒化硼素粉末は微細である方が成形体の焼結性がよく、前述の製造方法によって得られる結晶性t−BN微粉末の一次粒子は平均粒径が0.4μm以下と微細であるのでこの結晶性t−BN微粉末を混合したセラミックス混合粉末の成形体は焼結性に優れていて好ましい。複合セラミックス焼結体の製造方法としては、無加圧焼結又は加圧焼結のいずれを採用してもよいが、無加圧焼結を採用すれば、製造できる複合焼結体の形状に自由度があり、各種の形状と寸法の複合セラミックス焼結体を安価に製造できる点で好ましい。
【0032】
原料に用いる結晶性t−BN微粉末は通常1450℃以上において所定時間以上に加熱すると高温で安定なh−BN結晶に相転移し、t−BNとh−BNが混在する複合セラミックス焼結体、あるいはt−BNを含まず、h−BNと他のセラミックスとの複合セラミックス焼結体になる。焼結温度が1400℃以下のセラミックス粉末を組み合わせたセラミックス混合粉末を原料とすると、出発原料のセラミックス混合粉末中に配合したのとほぼ同量の結晶性t−BNを含む複合セラミックス焼結体が得られる。成形体の焼成温度を約1450℃、或いはこれ以上(特に1500℃未満の範囲では)とすると焼結時間とともに結晶性t−BNがh−BNに相転移するので、焼結時間によって結晶性t−BNの含有量が変化することになる。さらに焼結温度を高くする(約1500℃以上では特に)と焼結が速やかに進行するが、同時に結晶性t−BNは速やかにh−BNに相転移し、同時に焼結体中に結晶成長したh−BNの結晶粒子が生成する。いずれにしても、最終焼結体におけるBNの所望焼結状態(乱層t−BNのみが実質的に乱層でもt−BNとするか、所定比以下の乱層t−BNとするか)に従って、最高焼結温度は、時間との関係で定めることができる。
【0033】
複合する窒化硼素以外のセラミック原料の配合量としては、強度の大きい複合セラミックス焼結体が得られるように、窒化硼素以外のセラミックス粉末を60〜95重量%(さらには、」70〜90重量%、80重量%以上等)混合したセラミックス混合粉末を原料に用いるのが好ましい。この場合、残部(5〜40重量%等)が結晶性t−BN微粉末である。結晶性t−BN微粉末と混合する窒化硼素以外のセラミック原料としては、一般に1450℃程度以下(ないし1430℃、1400℃程度以下)の温度で焼結可能なセラミック原料を用いることができ、粉末に限らず沈澱法、ゾルゲル法、或いはこれらの混合形式、天然又は合成物質いずれも任意に選択して用いることができる。さらにこれらのセラミック原料としては、1450℃以上で焼結されるものを用いることもできる。これらのセラミック原料としては、酸化物、ホウ化物、窒化物、炭化物、けい化物、これらの複合化合物もしくはこれらと酸化物との複合化合物などの一種以上を用いることができる。これらのセラミック原料を例示すると、コージライト、ムライト、ジルコン、ジルコニア、アルミナ、スピネル、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、硼化ジルコニウム、硼化チタン、サイアロン等を使用できる。これらの内、特に強度の大きい焼結体が得られ、多くの用途を期待できるアルミナ、ジルコニア、窒化けい素又は窒化アルミニウムを組み合わせたセラミック混合原料を用いて複合セラミックス焼結体を得るのが好ましい。難焼結性の非酸化物系セラミックスとの複合セラミックス焼結体を製造する場合は、焼結温度を低くして緻密に焼結できるように所定の(好ましくは非酸化物系セラミックス用の)焼結助剤(各セラミック材料で公知のものを選択できる)を添加して焼結するのが好ましい。
【0034】
アルミナやジルコニア等の1450℃以下で焼結可能なものを窒化硼素以外のセラミック原料に使用すれば、結晶性t−BN微粉末を相転移させないで複合セラミックス焼結体を得ることができる。また、機械加工性(マシナブル又は切削加工性に同じ)を備えた複合セラミックス焼結体を得たい場合には、超硬チップ等による切削加工が容易となるように、結晶性t−BN微粉末を10重量%以上混合したセラミックス混合粉末を原料に用いて複合セラミックス焼結体を製造するのが好ましい。他方、目的とする複合焼結体の密度にもよるが、結晶性t−BN微粉末を35重量%より多く混合したセラミックス混合粉末は緻密に焼結するのが難しく、得られる複合焼結体の強度が小さくなるので、結晶性t−BN微粉末のセラミックス混合粉末への混合量は35重量%以下とするのが好ましい。
【0035】
なお、密度について言うと、本発明の焼結性t−BNを用いる場合、約10重量%以下の配合では、実質的に極めて高密度(低気孔率)の焼結体を製造できることが判った。実際に対理論密度比で95%以上、98%以上から99%以上のものも焼結できる。焼結体の気孔率が同じであれば、多孔質の複合セラミックス焼結体の気孔径の小さい方が大きい強度の焼結体となる。また、複合セラミックス焼結体を強度を必要とする構造用部材に使用したり、複合セラミックス焼結体に良好な機械加工性を付与して精度のよい加工をしたい場合には、強度が5kg/mm以上ある複合セラミックス焼結体とするのが好ましい。焼結体の表面 を鏡面に研摩するには、複合セラミックス焼結体を開気孔のない緻密なものとするのが好ましい。なお、気孔率は例えば水銀ポロシメータで測定できる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の一実施例であって本発明を限定するものではない。
【0037】
[結晶性t−BNの合成]結晶性t−BN微粉末を次のようにして合成した。無水硼酸(B)3.5kg、尿素((NHCO)5.3kg、硼砂(Na・10H2O)0.63kgからなる混合物を出発原料とし、この混合物を直径530mmの蓋付きステンレス鋼製容器に入れ、この反応容器を炉内に入れて250〜500℃、500〜600℃、600〜700℃、700〜800℃、800〜900℃の各段階にそれぞれ10分かけて昇温し、最後は900±1℃に10分間保持して反応させた(合計1時間)。この間100℃を超えたところで水蒸気が噴出し始め、200℃で成分が溶融し始め、ぶくぶくと泡が出てガスの放出を伴って反応が進んだ。350〜400℃まで主に水蒸気を放出し、900℃に10分間保持したところガス(水蒸気及び炭酸ガス)の放出が減少した。
【0038】
この後放冷して反応容器の蓋を開けたところ、反応容器中の混合物はBが反応を完了してカルメ焼き状の反応物となっていた。このカルメ焼き状の反応物を反応容器中で解砕し、真空吸引して反応容器中から取り出し、粉砕して1mm目の篩を通した。この粉砕した反応物をアルミナ製の蓋付き匣鉢に入れて蓋を閉じ、窒素雰囲気とした電気炉中で1300℃まで10時間かけて昇温し、この温度に2時間保持し、その後放冷した。匣鉢から取り出した粉末を80〜85℃に温めたイオン交換水で洗浄してアルカリ成分と硼酸成分を除き、次いで希塩酸で中和し、さらに温めたイオン交換水で洗浄して乾燥し、純度の高い結晶性t−BN微粉末を得た。この一連の工程による結晶性t−BN微粉末の収量は出発原料10kgに対して約2.8kgであり、出発原料中の仕込み硼素量に基く製造歩留は70%以上であった。t−BNの純度は水洗の程度により90−97%以上に亘る。
【0039】
得られた結晶性t−BN微粉末をエタノールを媒体として直径1.2mmのジルコニアビーズを用いるアトリションミル(芦沢鉄工所社製パールミル)によって2時間微粉砕した。微粉砕後の結晶性t−BN微粉末について粒度分布を調べた(堀場製粒度分布アナライザLA−700使用)結果、約95%が1μm以下の微粒子となっており、平均粒径は約0.30μmであった。また、窒素吸着法で測定した粉末の比表面積は12m/gであった。 この結晶性t−BN微粉末のCuKα線による粉末X線回折図を図3に、13300倍に拡大した結晶性t−BN微粉末の顕微鏡写真を図4に、同結晶性t−BN微粉末をアトリションミルで微粉砕後の粒度分布グラフを図5にそれぞれ示す。図3の粉末X線回折図から、h−BNの[004]回折線に対応する回折線は2θの55°にあり、その2θの半価幅は0.47°であり、S102/(S100+S101)の値はほぼゼロであった。また、図4の拡大電子 顕微鏡写真から分かるように、この結晶性t−BN微粉末の一次粒子の平均結晶粒径は約0.27μmであり、結晶性t−BN微粉末の一次粒子は円板状又は球状の粒子からなっている。
【0040】
結晶性t−BN微粉の純度は、洗浄の程度により自由にコントロールでき、90%以上〜97%以上さらに98%、99%以上の高純度のものまで得られる。残留分としては、上記の方法で得られる結晶性t−BN微粉はBを主体とする。従って、所定量の残留Bを含有する結晶性t−BN微粉を用いれば、残留Bが焼結助剤の役割も果たすので、焼結性の一層の増進に資する。
【0041】
[焼結の実施例]
[例1〜5]結晶性t−BN微粉末(純度90〜97%、残部は主としてB)と混合するセラミックス粉末にアルミナ粉末(純度92%、他にSiO、MgOなど8重量%を含む平均粒径3.5μmのマルスゆう薬製)を選び複合セラミックス燒結体を試作した。すなわち、このアルミナ粉末に水分重量25%とポリアクリル酸アンモニューム塩の解こう剤を固形分0.3重量%添加してボールミルで12時間分散混合して調製した。また上記結晶性t−BN微粉末に水分重量45%重量%とポリカルボン酸アンモニューム塩の解こう剤を固形分2重量%添加してボールミルで12時間分散混合して調製した。その後、両者のスラリーを混合して結晶性t−BN微粉末の配合量がゼロ重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%の混合スラリーとし、各混合スラリーに成形助剤としてワックスバインダー及びポリビニールアルコール樹脂バインダーを固形分3重量%添加して、その後スプレードライヤーを用いて造粒粉を作製した。この造粒粉を金型プレス成形機で、1000kg/cm2の成形圧力で加圧して成形体を得た。この成形体を還元雰囲気中で1480℃で2時間燒結して寸法が大凡15cm×15cm×2cmの複合セラミックス燒結体を得た。得られた各複合燒結体について測定した特性を表1に示した。各燒結体を粉砕して粉末X線回折で調べた結果、複合した窒化ホウ素粉末はすべて元の結晶性t−BNの状態で燒結体中に残存していた。なお、表1に示した燒結体のかさ密度、気孔率、吸水率はアルキメデス法で測定し、曲げ強度はJIS1601に規定する方法で測定した。また、硬度はビッカース硬度計を用いて測定した。
【0042】
[例6、7]比較のため、同じアルミナ粉末に前記結晶性t−BN微粉末を窒素雰囲気中で、4時間1750℃で加熱して得たh−BN粉末(平均粒径4.8μm、平均一次粒子径1.5μm、比表面積12m/gの六角板状の結晶粒子からなる粉末)及びh−BN粉末(平均粒径0.5μm、比表面積25m/gの六角板状の結晶粒子からなる粉末)をそれぞれ15重量%混合した混合スラリーを例1と同様にして複合セラミックス焼結体を作り、その特性を表1に併せて示した。なお、超硬バイトで切削加工を試みたところ、例2〜7のいずれの複合セラミックス焼結体についても良好な機械加工性があることを認められた。
【0043】
【表1】
Figure 0004153080
【0044】
[例8〜12]結晶性t−BN微粉末と組み合わせて複合するセラミックス粉末にアルミナ粉末(純度99.99%、平均粒径0.4μmの大明化学製)を選び複合セラミックス焼結体を試作した。すなわち、このアルミナ粉末に水分重量25%とポリカルボン酸アンモニューム塩の解こう剤を固形分0.6重量%添加してボールミルで12時間分散混合して調製した。また、上記結晶性t−BN微粉末に水分重量45重量%とポリカルボン酸アンモニューム塩の解こう剤を固形分2重量%添加してボールミルで12時間分散混合して調製した。その後、両者のスラリーを混合して結晶性t−BN微粉末の配合量がゼロ重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%混合スラリーとし、各混合スラリーに成形助剤としてワックスバインダー及びポリビニールアルコール樹脂バインダーを固形分3重量%添加して、その後スプレードライヤーを用いて造粒粉を作製した。この造粒粉末を金型プレス成形機で、1000kg/cmの成形圧力で加圧して成形体を得た。この成形体を還元雰囲気中で1350℃で2時間燒結して寸法が大凡15cm×15cm×2cmの複合セラミックス燒結体を得た。得られた各複合燒結体について測定した特性を表2にまとめて示した。各燒結体を粉砕して粉末X線回折で調べた結果、複合した窒化ホウ素粉末はすべて元の結晶性t−BNの状態で燒結体中に残存していた。
【0045】
[例13、14]比較のため、同じアルミナ粉末に前記結晶性t−BN微粉末を窒素雰囲気中で、4時間1750℃で加熱して得たh−BN粉末(平均粒径4.8μm、平均一次粒子径1.5μm、比表面積12m/gの六角板状の結晶粒子からなる粉末)及びh−BN粉末(平均粒径約0.5μm、比表面積25m/gの六角板状の結晶粒子からなる粉末)をそれぞれ15重量%配合した混合スラリーを例1と同様にして複合セラミックス燒結体を作り、その特性を表2に併せて示した。なお、超硬バイトで切削加工を試みたところ、例9〜14のいずれの複合セラミックス焼結体についても良好な機械加工性があることを認められた。
【0046】
【表2】
Figure 0004153080
【0047】
[例15〜19]結晶性t−BN微粉末と組み合わせて複合するセラミックス粉末にα窒化けい素粉末(平均粒径0.6μm、比表面積22m/gのYを6重量%とAlを4重量%を含む秩父小野田製の窒化けい素粉末)を選び複合セラミックス焼結体を試作した。すなわち、この窒化けい素粉末に水分重量25%とポリカルボン酸アンモニューム塩の解こう剤を固形分0.5重量%添加してボールミルで12時間分散混合して調製した。また、上記結晶性t−BN微粉末に水分重量45重量%とポリカルボン酸アンモニューム塩の解こう剤を固形分2重量%添加してボールミルで12時間分散混合して調製した。その後、両者のスラリーを混合して結晶性t−BN微粉末の配合量がゼロ重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%の混合スラリーとし、各混合スラリーに成形助剤としてワックスバインダー及びポリビニールアルコール樹脂バインダーを固形分3重量%添加して、その後スプレードライヤーを用いて造粒粉を作製した。この造粒粉を金型プレス成形機で、1000kg/cmの成形圧力で加圧して成形体を得た。この成形体を窒素雰囲気中で1800℃で5時間燒結して寸法が大凡15cm×15cm×2cmの複合セラミックス燒結体を得た。得られた各複合燒結体について測定した特性を表3に併せて示した。また例16〜19の各燒結体を粉砕して粉末X線回折で調べた結果、複合した窒化ホウ素粉末はすべてh−BN結晶に相転移していることが分かった。
【0048】
[例20、21]比較のため、同じ窒化けい素粉末に前記結晶性t−BN微粉末を窒素雰囲気中で、4時間1750℃で加熱して得たh−BN粉末(平均粒径約4.8μm、平均一次粒子径約1.5μm、比表面積12m/gの六角板状の結晶粒子からなる粉末)及びh−BN粉末(平均粒径約0.5μm、比表面積25m/gの六角板状の結晶粒子からなる粉末)をそれぞれ15重量%配合した混合スラリーを例1と同様にして複合セラミックス焼結体を作り、その特性を表3に併せて示した。なお、超硬バイトで切削加工を試みたところ、例16〜21のいずれの複合セラミックス焼結体についても良好な機械加工性があることを認められた。
【0049】
【表3】
Figure 0004153080
【0050】
[例22〜26]結晶性t−BN微粉末と組み合わせて複合するセラミックス粉末に窒化アルミニウム粉末(平均粒径1.4μm、比表面積2.7m/gのYを5重量%含むダウケミカル製のアルミニウム粉末)を選び、複合セラミックス焼結体を試作した。すなわち、この窒化アルミニウム粉末にエチルアルコール重量45%添加してボールミルで12時間分散混合して調製した。また、上記結晶性t−BN微粉末にエチルアルコール重量45重量%添加してボールミルで12時間分散混合して調製した。その後、両者のスラリーを混合して結晶性t−BN微粉末の配合量がゼロ重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%の混合スラリーとし、各混合スラリーに成形助剤としてポリビニールブチラール樹脂バインダーを固形分3重量%添加して、その後スプレードライヤーを用いて造粒粉を作製した。この造粒粉末を金型プレス成形機で、1000kg/cmの成形圧力で加圧して成形体を得た。この成形体を窒素雰囲気中で1800℃で5時間燒結して寸法が大凡15cm×15cm×2cmの複合セラミックス燒結体を得た。得られた各複合燒結体について測定した特性を表4に示した。また例23〜26の各燒結体を粉砕して粉末X線回折で調べた結果、複合した窒化ホウ素粉末はすべてh−BN結晶に相転移していることが分かった。
【0051】
[例27、28]比較のため、同じ窒化アルミニウム粉末に前記結晶性t−BN微粉末を窒素雰囲気中で、4時間1750℃で加熱して得たh−BN粉末(平均粒径4.8μm、平均一次粒子径1.5μm、比表面積12m2/gの六角板状の結晶粒子からなる粉末)及びh−BN粉末(平均粒径0.5μm、比表面積25m2/gの六角板状の結晶粒子からなる粉末)をそれぞれ15重量%配合した混合スラリーを例1と同様にして複合セラミックス焼結体を作り、その特性を表4に併せて示した。なお、超硬バイトで切削加工を試みたところ、例23〜28のいずれの複合セラミックス焼結体についても良好な機械加工性があることを認めた。
【0052】
【表4】
Figure 0004153080
【0053】
上記の例1〜28の内、例2〜5、例8〜12、例15〜19及び例22〜26は本発明の実施例であり、例1、例6、例7、例13、例14、例20、例21、例27及び例28は本発明の比較例である。上記の結果から、本発明による結晶性t−BN微粉末を混合して焼結した複合セラミックス焼結体は、h−BN粉末を混合して焼結した複合セラミックス焼結体と比較して焼結性がよく、曲げ強度が大きいことが分かる。また、表に示していないが、窒化硼素を20重量%複合した焼結体について熱膨張率を測定したところ、結晶性t−BN微粉末を混合して焼結した複合セラミックス焼結体の厚さ方向と厚さに直角な方向の熱膨張率の比はほぼ1であり、成形時の加圧方向による方向性がの差異が殆どないことが分かった。
【0054】
なお、結晶性t−BN微粉末は非常に細かい結晶であり、一般に凝集していることが多い。したがって、成形の原料調製過程で、いかに凝集紛体を分散してマトリクスとなる原料と均一に混合するかが最終的な焼結体特性に大きく影響してくる。本発明の製造工程において、混合する粉体を個々に均一分散する処理をすることにより特性が大きく変わることを留意しておく必要がある。このようにして従来のh−BNを用いた場合よりも、所定強度を達するために、より多量のBN成分を焼結体に含有させることができる。一方、同じ気孔率であっても組織の緻密化と高強度化を達成することができる。
【0055】
【発明の効果】
上記の結果から分かるように、本発明の結晶性t−BN微粉末を原料粉末に用いたセラミック混合物を成形、焼結した複合セラミックス焼結体は、結晶性t−BN微粉末の一次粒子が微細な結晶粒子であることによってh−BN粉末を原料粉末に用いたセラミックス混合粉末を成形、焼結した複合セラミックス焼結体より焼結性がよく、強度が大きい他、熱膨張率についても方向性のないものを得られることが分かる。さらに、焼結体中に結晶性t−BNが相転移しないでとどまっている限りにおいて結晶性t−BNは微細な結晶粒子の状態を保持しており、これによって焼結体中の気孔も微細になる。また、焼結体の組織が微細であることによって強度が大きい焼結体になる。これは、結晶性t−BNが焼結過程でh−BNに変化する場合にもほぼ妥当する。
【0056】
さらに、本発明のt−BN微粉末を原料に用いた複合セラミックス焼結体は従来のh−BN粉末を原料に用いた複合セラミックス焼結体にも勝る優れた機械加工性(切削加工性)、熱伝導性、電気絶縁性、耐熱衝撃性等の他、溶融金属に対する濡れにくさと耐食性等の好ましい特性を兼備している。
【0057】
このような好ましい特性を有する本発明の複合セラミックス焼結体は、無加圧焼結によって製造できる。前述した結晶性t−BN微粉末の製造技術が確立されたことによって従来より格段に安価に高純度の結晶性t−BN微粉末を調達できるようになった。したがって、本発明によれば各種の形状を有する高強度の複合セラミックス焼結体を安価に提供でき、さらに機械加工性が良好なものも製造できることによって複雑な形状の高精度の焼結部材を安く提供できる。したがって、大きい強度を必要とする構造用材料、耐久性のある通気性多孔質溶融金属用鋳型材、溶融金属と接触する保護管などの耐熱衝撃性を必要とする部材、熱を逃がすためのヒートシンク、高温でも使用できる電気絶縁部材、精度の高い加工を必要とする治具類など多くの用途に適用できる。また結晶性t−BN(或いは結晶性t−BNに由来する微細分散h−BN)の含有により複合セラミック焼結体に高い滑り特性を与えることができ、この特性を任意の所望値に制御、調節することもできる。かくて、本発明の製造方法による複合セラミックス焼結体は産業上の利用価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の典型的なh−BN粉末の粉末X線回折図。
【図2】従来のa−BN粉末の粉末X線回折図。
【図3】本発明の製造方法による例1の複合セラミックス焼結体の原料に使用された結晶性t−BN微粉末の一例の粉末X線回折図。
【図4】図3の結晶性t−BN微粉末の13300倍の電子顕微鏡写真。
【図5】本発明の製造方法による例1の複合セラミックス焼結体の原料に使用された、アトリションミルによる粉砕後の結晶性t−BN微粉末の粒度分布を示すグラフ。

Claims (16)

  1. 有効量の結晶性乱層構造窒化硼素微粉末を窒化硼素以外のセラミック原料と混合したセラミック混合物を成形し、焼結する複合セラミックス焼結体の製造方法であって、
    前記結晶性乱層構造窒化硼素微粉末が、そのCuKα線による粉末X線回折図における六方晶系窒化硼素の[004]の回折線に対応する回折線の2θの半価幅が0.6°以下であり、結晶性乱層構造窒化硼素微粉末が、六方晶窒化硼素のCuKα線による粉末X線回折図における[100][101]及び[102]回折線に対応する各回折線の占める面積S100、S101及びS102の間にS102/(S100+S101)≦0.02の関係が充たされているものであることを特徴とする複合セラミックス焼結体の製造方法。
  2. 焼結を結晶性乱層構造窒化硼素が実質的に相転移を受けられない条件下で行い結晶性乱層構造窒化硼素を含有する焼結体とすることを特徴とする請求項記載の複合セラミックス焼結体の製造方法。
  3. 焼結を結晶性乱層構造窒化硼素が50%以下の部分的相転移を受ける条件下において行う請求項に記載の複合セラミックス焼結体の製造方法。
  4. 有効量の結晶性乱層構造窒化硼素微粉末を窒化硼素以外のセラミック原料と混合したセラミック混合物を成形し、結晶性乱層構造窒化硼素が実質的にh−BNへ相転移する条件下に焼結する複合セラミックス焼結体の製造方法であって、
    前記結晶性乱層構造窒化硼素微粉末が、そのCuKα線による粉末X線回折図における六方晶系窒化硼素の[004]の回折線に対応する回折線の2θの半価幅が0.6°以下であり、結晶性乱層構造窒化硼素微粉末が、六方晶窒化硼素のCuKα線による粉末X線回折図における[100][101]及び[102]回折線に対応する各回折線の占める面積S100、S101及びS102の間にS102/(S100+S101)≦0.02の関係が充たされているものであることを特徴とする複合セラミックス焼結体の製造方法。
  5. 結晶性乱層構造窒化硼素粉末を5重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜の一に記載の複合セラミックス焼結体の製造方法。
  6. セラミックス混合物が5〜40重量%の結晶性乱層構造窒化硼素微粉末と60〜95重量%の窒化硼素以外のセラミック原料を含むものである請求項1〜の一に記載の複合セラミックス焼結体の製造方法。
  7. 窒化硼素以外のセラミック原料が窒化アルミニウム及び窒化珪素の一種以上を含む請求項1〜の一に記載の複合セラミックス焼結体の製造方法。
  8. 窒化硼素以外のセラミック原料がアルミナ及び部分安定化ジルコニアの一種以上を含む請求項1〜の一に記載の複合セラミックス焼結体の製造方法。
  9. 結晶性乱層構造窒化硼素微粉末を10〜35重量%混合したセラミック混合物を使用して機械加工性を有する複合セラミックス焼結体を得る請求項1〜のいずれかに記載の複合セラミックス焼結体の製造方法。
  10. セラミックス混合粉末に混合された結晶性乱層構造窒化硼素微粉末の一次粒子の粒径が1μm以下であり、一次粒子の平均粒径が0.4μm以下である請求項1〜のいずれかに記載の複合セラミックス焼結体の製造方法。
  11. 結晶性乱層構造窒化硼素微粉末が純度90%以上で残部主としてBから成ることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の複合セラミックス焼結体の製造方法
  12. 複合セラミックス焼結体が5kg/mm2以上の曲げ強度を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法によって製造された複合セラミックス焼結体。
  13. 有効量の結晶性乱層構造窒化硼素微粉末を窒化硼素以外のセラミック原料と混合したセラミックス混合物を成形し、結晶性乱層構造窒化硼素が実質的にh−BNへ相転移する条件下に焼結して成る複合セラミックス焼結体であって、
    前記結晶性乱層構造窒化硼素微粉末が、そのCuKα線による粉末X線回折図における六方晶系窒化硼素の[004]の回折線に対応する回折線の2θの半価幅が0.6°以下であり、六方晶窒化硼素のCuKα線による粉末X線回折図における[100][101]及び[102]回折線に対応する各回折線の占める面積S100、S101及びS102の間にS102/(S100+S101)≦0.02の関係が充たされているものである複合セラミックス焼結体。
  14. 前記窒化硼素以外のセラミック原料として1450℃以上で焼結されるセラミック原料を主成分として用いたことを特徴とする請求項13に記載の複合セラミックス焼結体。
  15. 前記窒化硼素以外のセラミック原料として、酸化物、ホウ化物、窒化物、炭化物、けい化物、これらの複合化合物もしくはこれらと酸化物との複合化合物の一種以上を用いることを特徴とする請求項13又は14記載の複合セラミックス焼結体。
  16. 前記窒化硼素以外のセラミック原料として、窒化アルミニウム、窒化けい素の一種以上を用いたことを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の複合セラミックス焼結体。
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