JP4152640B2 - 酸化亜鉛マイクロワイヤの製造方法 - Google Patents

酸化亜鉛マイクロワイヤの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化亜鉛マイクロワイヤを製造する酸化亜鉛マイクロワイヤの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、種々のデバイスに応用されるものとして半導体薄膜がある。このような半導体薄膜の多くは、何らかの基板上に堆積されて実用化されている。半導体薄膜が基板上に堆積された形態として実用化されている理由は、基板の結晶性を引き継ぐエピタキシャル成長によって初めて物理的特性が引き出されるからである。
【0003】
このような基板上に堆積されて実用化される半導体薄膜として、近年、金属酸化物によって構成された半導体薄膜が注目を集めている。例えば、MBE法やMO−CVD法(有機金属化学気相成長法)を用いて作成された酸化亜鉛(ZnO)薄膜は、優れた電気・光学特性を示すことから、その応用を含めた研究が盛んに行われている。
【0004】
ここで、MO−CVD法については、例えば、特開2000−137342、特開2000−276943、特開2001−168035等に紹介されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来手法により製造される半導体薄膜の産業上の利用を推進するためには、基板が安価に安定供給される状況が不可欠である。しかしながら、前述したような半導体薄膜を金属酸化物によって構成する場合、基板自体も半導体薄膜と同様な組成の金属酸化物によって構成するとすると、シリコン基板やGaAs基板と比較した場合、加工性が悪く製造コストも高くなってしまうという問題がある。このような加工性、製造コストの問題は、金属酸化物の半導体薄膜を実用化する上で大きな阻害要因となっている。
【0006】
これに対して、前述したような半導体薄膜を種々のデバイスに応用する場合、実際に利用されるのは金属酸化物である半導体薄膜の一部であることが多い。このようなことから、本出願の発明者は、金属酸化物のうち必要となる部分だけを細線状の結晶材料として得ることを着想し、その実施化に向けて鋭意研究を重ねている。
【0007】
なお、このような本出願の発明者の着想とは異なるが、近年、薄膜とは成長形態が異なるウイスカー(岡田、大塩、斉藤:第48回応物学会講演予稿集 30P−K−1)やナノベル(Z.W.Pan,Z.R.Dai,Z.L.Wang:Science,291(2001)1947)の研究が報告され始め、これらの材料を用いた新規デバイスへの応用が期待されている。
【0008】
本発明の目的は、金属酸化物のうち必要となる部分だけを細線状の結晶材料として得ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の酸化亜鉛マイクロワイヤの製造方法の発明は、機金属材料であるアセチルアセトン亜鉛(Zn ( acac ) 酸素ガス又は酸素元素を含む雰囲気ガス中で加熱昇華させた後、前記有機金属材料がその昇華点以下の温度となるまで前記雰囲気を冷却して細線状の析出物を得る工程と、水蒸気を含む酸素ガス又は水蒸気を含む酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス中で前記析出物を酸化処理する工程と、酸素ガス又は酸素元素を含むガスのうち少なくとも一種類以上のガスが含まれた雰囲気ガス中で前記析出物を再加熱処理する工程と、を具備する。
【0010】
したがって、上述した有機金属材料を上述した雰囲気ガス中で加熱昇華させた後に雰囲気を冷却することで細線状の析出物が得られ、この析出物を酸化処理した後に再加熱処理することで析出物が結晶構造となる。これにより、結晶構造を有する細線状の金属酸化物(酸化亜鉛)が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態を図1及び図2に基づいて説明する。
【0013】
本実施の形態は、金属酸化物マイクロワイヤの製造方法に関する実施の一形態であり、その製造方法は、概略的には、細線状の析出物を得る工程と、析出物を酸化処理する工程と、析出物を再加熱処理する工程とから構成されている。このような各工程を実施する装置として、本実施の形態では、図1及び図2にそれぞれ示す二種類の装置を用意している。
【0014】
[金属酸化物マイクロワイヤの製造方法を実施するための装置]
図1は、細線状の析出物を得る工程と析出物を酸化処理する工程とを実施するための第1の装置101を示す模式図、図2は、析出物を再加熱処理する工程を実施するための第2の装置201を示す模式図である。以下、各装置101、201について説明する。
【0015】
(1)第1の装置101について
図1に示す第1の装置101は、最終的に生成される図示しない金属酸化物マイクロワイヤの材料102を収納し、この材料102に後述する処理を加えるためのシリンダー103を備える。このシリンダー103は、一例として石英により形成された基部103aとこの基部103aを開閉するための蓋部103bとによって構成され、基部103aと蓋部103bとの連結部にはシリンダー103の内部を真空状態とするためのOリング103cが設けられている。これにより、シリンダー103は、耐熱容器104に載置された材料102を真空状態で収納保持することができる。
【0016】
ここで、シリンダー103の周囲には、加熱用のヒータ105と冷却用のファン106とが配置されており、これらのヒータ105及びファン106は温度制御部107によって動作制御される。
【0017】
また、シリンダー103には、酸素ガス又は酸素ガスと窒素ガスとを含むガス(酸素元素を含むガス)をシリンダー103の内部に供給するためのガス供給構造108が接続されている。このガス供給構造108は、酸素ガスボンベ109及び窒素ガスボンベ110を配管111でシリンダー103に接続し、その配管111の途中に純水112を収容するバブラー113を選択的に介在させることができるような構造を基本構造として備えている。
【0018】
ガス供給構造108をより詳細に説明すると、配管111には複数個のバルブ114が設けられている。これらのバルブ114としては、酸素ガスボンベ109の下流位置近傍に配置された酸素バルブ114a、窒素ガスボンベ110の下流位置近傍に配置された窒素バルブ114b、これらの酸素バルブ114a及び窒素バルブ114bの下流位置であってシリンダー103の上流位置近傍に配置されたガスバルブ114c、酸素バルブ114a及び窒素バルブ114bとガスバルブ114cとの間に接続されて配管111の経路中にバブラー113を介在させる経路を構築するための一対の蒸気バルブ114dの四種類が設けられている。
【0019】
また、ガス供給構造108は、酸素バルブ114a及び窒素バルブ114bとガスバルブ114c及び蒸気バルブ114dとの間に、酸素、窒素混合ガス用マスフローコントローラとして機能する流量計115を備える。
【0020】
そこで、酸素バルブ114a又は酸素バルブ114aと窒素バルブ114bとの両方を開き、ガスバルブ114cも開くことにより、酸素ガス又は酸化ガスと窒素ガスとの混合ガス(酸素元素を含むガス)をシリンダー103に導入するための経路が配管111中に生成される。この配管111中に生成された経路は、前述した細線状の析出物を得る工程で使用する経路である。
【0021】
また、酸素バルブ114a又は酸素バルブ114aと窒素バルブ114bとの両方を開き、蒸気バルブ114dも開くことにより、純水112を通した飽和蒸気圧の酸素ガス又は酸化ガスと窒素ガスとの混合ガス(酸素元素を含むガス)をシリンダー103に導入するための経路が配管111中に生成される。この配管111中に生成された経路は、前述した析出物を酸化処理する工程で使用する経路である。
【0022】
さらに、第1の装置101は、シリンダー103に接続させて、シリンダー103内部に真空の雰囲気を生成するための真空ポンプ116を備える。
【0023】
(2)第2の装置201について
図2に示す第2の装置201は、第1の装置101での処理を経た最終的に生成される図示しない金属酸化物マイクロワイヤの材料102を収納し、この材料102に後述する処理を加えるためのシリンダー202を備える。このシリンダー202は、一例として石英により形成された基部202aとこの基部202aを開閉するための蓋部202bとによって構成され、基部202aと蓋部202bとの連結部にはシリンダー202の内部を真空状態とするためのOリング202cが設けられている。これにより、シリンダー202は、耐熱容器104に載置された材料102を真空状態で収納保持することができる。
【0024】
ここで、シリンダー202の周囲には、加熱用のヒータ203と冷却用のファン204とが配置されており、これらのヒータ203及びファン204は温度制御部205によって動作制御される。このようなヒータ203と冷却用のファン204とが温度制御部205によって動作制御されることにより、第2の装置201では、シリンダー202の内部温度を室温である例えば20℃から900℃程度まで制御することが可能である。
【0025】
また、シリンダー202には、酸素ガス及び窒素ガスの混合ガスをシリンダー202の内部に供給するためのガス供給構造206が接続されている。このガス供給構造206は、酸素ガスボンベ207及び窒素ガスボンベ208を配管209でシリンダー202に接続し、その配管209の途中に酸素、窒素混合ガス用マスフローコントローラとして機能する流量計210が介在接続され、この流量計210の上下流の二箇所にバルブ211を備えた構造を有している。
【0026】
さらに、シリンダー202は、外部排気が可能な構造となっている。
【0027】
[金属酸化物マイクロワイヤの製造方法]
本実施の形態における金属酸化物マイクロワイヤの製造方法は、前述したような第1の装置101及び第2の装置201を用いて、細線状の析出物を得る工程と、析出物を酸化処理する工程と、析出物を再加熱処理する工程とを実行し、これにより、金属酸化物マイクロワイヤを製造する。以下、各工程を説明する。
【0028】
(1)細線状の析出物を得る工程
この工程は、第1の装置101によって実行され、少なくとも一種類以上の昇華性を有する有機金属材料を酸化ガス又は酸素元素を含む雰囲気ガス中で加熱昇華させた後、有機金属材料がその昇華点以下の温度となるまで雰囲気を冷却して細線状の析出物を得る工程である。
【0029】
まず、材料102として、少なくとも一種類以上の昇華性を有する有機金属材料、例えば、金属イオンにAcac(アセチルアセトン基)、DPM(ジピバロイルメタネート基)、HFA(ヘキサフルオロ基)、i−PrCp(イソプロピルシクロペンタ基)がその価数の数だけ配位結合した材料を用い、この材料102を耐熱容器104に載せてシリンダー103の内部に収容する。本実施の形態では、そのような材料102の一例として、アセチルアセナート亜鉛(Zn−Acac2)を用いる。
【0030】
この際、シリンダー103の内部に材料102を入れるために蓋部103bを開く必要が生じ、これによってシリンダー103の内部に大気が入り込む。そこで、真空ポンプ116を動作させてシリンダー103の内部に入り込んだ大気を吸引し、シリンダー103内部に真空の雰囲気を生成する。
【0031】
この状態で、酸素バルブ114a又は酸素バルブ114aと窒素バルブ114bとの両方を開き、ガスバルブ114cも開くことにより、酸素ガス又は酸化ガスと窒素ガスとの混合ガス(酸素元素を含むガス)をシリンダー103の内部に導入する。これにより、シリンダー103の内部に酸化ガス又は酸素元素を含む雰囲気ガスが充填される。
【0032】
そして、ヒータ105を温度制御部107によって動作制御し、シリンダー103の内部の雰囲気を加熱する。これにより、材料102が加熱昇華される。
【0033】
その後、温度制御部107によってヒータ105とファン204とを動作制御し、材料102を含むシリンダー103の内部の雰囲気を冷却する。この際、シリンダー103の内部の雰囲気の冷却は、材料102がその昇華点以下の温度となるまで実行される。
【0034】
これにより、材料102中に、細線状の析出物が得られる。
【0035】
(2)析出物を酸化処理する工程
この工程は、第1の装置101によって実行され、水蒸気を含む雰囲気ガス中で材料102中に生成された細線状の析出物を酸化処理する工程である。
【0036】
つまり、酸素バルブ114a又は酸素バルブ114aと窒素バルブ114bとの両方を開き、蒸気バルブ114dも開くことにより、純水112を通した飽和蒸気圧の酸素ガス又は酸化ガスと窒素ガスとの混合ガス(酸素元素を含むガス)をシリンダー103に導入する。これにより、水蒸気を含む雰囲気ガス中で材料102中に生成された細線状の析出物が酸化処理される。
【0037】
(3)析出物を再加熱処理する工程
この工程は、第2の装置201によって実行され、酸素ガス又は酸素元素を含むガスのうち少なくとも一種類以上のガスが含まれた雰囲気ガス中で材料102中に生成された細線状の析出物を再加熱処理する工程である。
【0038】
この工程を実行するためには、前述した二つの工程を経た材料102を耐熱容器104と共に第1の装置101のシリンダー103から取り出し、取り出した材料102を耐熱容器104と共に第2の装置201におけるシリンダー202の内部に収容する。この際、シリンダー202の内部に材料102を入れるために蓋部202bを開く必要が生じ、これによってシリンダー202の内部に大気が入り込む。そこで、シリンダー202が備える外部排気のための構造によってシリンダー202の内部に入り込んだ大気を排気し、大気の影響を低減する。
【0039】
この状態で、シリンダー202の内部の雰囲気を調整するために、二箇所に配置されたバルブ211を開け、シリンダー202の内部に酸素ガス及び窒素ガスの混合ガスを導入する。
【0040】
そして、この状態で、温度制御部205によって加熱用のヒータ203と冷却用のファン204とを動作させる。これにより、シリンダー202の内部の雰囲気が加熱され、材料102中に生成された細線状の析出物が再加熱される。この際、冷却用のファン204は、動作することによってOリング202cが加熱によって破損することを防止する。
【0041】
こうして、材料102中に生成された細線状の析出物が再加熱されると、室温である例えば20℃〜900℃の範囲内で、その析出物が結晶化する。これにより、材料102中に生成された細線状の析出物が結晶化し、金属酸化物マイクロワイヤが製造される。
【0042】
【実施例】
本出願の発明者は、上述したような金属酸化物マイクロワイヤの製造方法が有効であることを実験によって検証した。この実験では、ZnOマイクロワイヤの作成を試みた。そこで、このような実験について以下に述べる。
【0043】
[実験方法]
ZnOマイクロワイヤの作成には、亜鉛の原料として固体有機金属原料であるアセチルアセトン亜鉛(Zn(acac) )、酸素原料として純度99.99%のO ガスを用いたMO−CVD法を適用した。作成手順は、シリンダー内で昇華したZn(acac) を酸素ガスと反応させ、シリンダー内の冷却部分で細線状の結晶体を成長させる。次に、この結晶体を、200sccmの酸素ガスを流した酸化炉において、500℃で1時間の熱処理を行い、ZnOマイクロワイヤを形成した。また、ZnOマイクロワイヤの結晶性の評価にはX線回折装置を用いた。
【0044】
[実験結果]
熱処理前のマイクロワイヤの光学顕微鏡写真を図3に示す。幅30μm程度の角柱状の結晶が成長していることがわかる。
【0045】
図4は、ZnOマイクロワイヤの熱処理前後のX線回折スペクトルである。X線回折スペクトルを比較したところ、14.6°、16.4°、25.5°の回折ピーク位置が一致し、熱処理前のマイクロワイヤでは、Zn(acac) が回折角16.4°の方位に優位的に結晶化していることが確認できた。熱処理後のX線スペクトルは31.8°、34.4°、36.3°、56.6°に回折ピークを有し、回折ピーク位置は図4に示すZnOの面方位に同定された。
【0046】
以上の結果から、ZnOウルツ鉱構造の結晶体が得られていることが明らかとなった。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、機金属材料であるアセチルアセトン亜鉛(Zn ( acac ) 酸素ガス又は酸素元素を含む雰囲気ガス中で加熱昇華させた後、前記有機金属材料がその昇華点以下の温度となるまで前記雰囲気を冷却して細線状の析出物を得る工程と、水蒸気を含む酸素ガス又は水蒸気を含む酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス中で前記析出物を酸化処理する工程と、酸素ガス又は酸素元素を含むガスのうち少なくとも一種類以上のガスが含まれた雰囲気ガス中で前記析出物を再加熱処理する工程と、によって金属酸化物マイクロワイヤを製造するようにしたので、基板に依存することなく独立して成り立つ結晶構造を有する細線状の金属酸化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】細線状の析出物を得る工程と析出物を酸化処理する工程とを実施するための第1の装置を示す模式図である。
【図2】析出物を再加熱処理する工程を実施するための第2の装置を示す模式図である。
【図3】熱処理前のマイクロワイヤの光学顕微鏡写真を示す模式図である。
【図4】ZnOマイクロワイヤの熱処理前後のX線回折スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
102 有機金属材料(材料)

Claims (1)

  1. 機金属材料であるアセチルアセトン亜鉛(Zn ( acac ) 酸素ガス又は酸素元素を含む雰囲気ガス中で加熱昇華させた後、前記有機金属材料がその昇華点以下の温度となるまで前記雰囲気を冷却して細線状の析出物を得る工程と、
    水蒸気を含む酸素ガス又は水蒸気を含む酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス中で前記析出物を酸化処理する工程と、
    酸素ガス又は酸素元素を含むガスのうち少なくとも一種類以上のガスが含まれた雰囲気ガス中で前記析出物を再加熱処理する工程と、
    を具備することを特徴とする酸化亜鉛マイクロワイヤの製造方法。
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