JP4649577B2 - 酸化亜鉛微細結晶体の光触媒ユニットとその製造方法 - Google Patents

酸化亜鉛微細結晶体の光触媒ユニットとその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、微細結晶体酸化亜鉛により構成される光触媒を用いた光触媒ユニットとその製造方法に関する。
従来から光触媒としてアナターゼ構造の酸化チタン原料が多く用いられている。この原料を用いた空気清浄機も多く市販されている。酸化チタン原料は、粉体形状で供給されるため、空気中に舞い上がる問題や有害ガスとの接触面積を低減させるために、多孔質セラミック上に貼り付けたり含浸したりして使用することが多い。また、この原料が紫外線にしか光触媒反応を示さず、光源としてブラックライト等の紫外光源を用いている。
図1は、従来の光触媒ユニットの形状を示すものである。光触媒ユニットは、入射光が効率的に光触媒表面に照射され、さらに有害ガスが光触媒中を障害無しに通過することが求められる。図1は、多孔質セラミックスに含浸された光触媒ユニットの構成図である。図1(a)は紫外線通過板を経由して光触媒表面に光を入射させる形状で紫外線が均一に当たりにくく光触媒表面にしか光は到達しない。図1(b)も同様で有害ガスが多孔質セラミックス内部を通過するが、ブラックライトの光は2枚の光触媒の内面にしか照射されず、ほとんどの光触媒領域では光照射のないまま有害ガスが通過してしまう。
図2は、これらの光触媒ユニットに使用されている光触媒を示す。図2(a)は粉体構造であり、図2(b)は多孔質薄膜構造である。このような粉体構造や多孔質薄膜構造は、有害ガスが通過しにくく、さらに光の照射されない領域が多く存在し、光触媒としての機能を低下させる。従来の光触媒はナノサイズの微粉体であり、光触媒ユニットにこれらの微粉体を固着させるためには強固な接着剤あるいは多孔質セラミックスへの含浸しか手法がなかった。
また、一部の製品には繊維状基板にナノサイズの酸化チタン結晶体を成長させるものもあるが、これも構造的には、図1(a),(b)の組み合わせに過ぎない。また、垂直型光触媒ユニット内に設置した後、光触媒が砕けてユニットの下部に溜まってしまうこともあった。
従来から光触媒として利用されている酸化チタンは以下の問題を有していた。
(1)粉体形状で形成されるため空気中で舞いやすく、多孔質セラミック上に貼り付けたり含浸させたりして使用することが一般的であった。しかし、貼り付ける手段は有機物の接着剤を使用しなければならず、光触媒が有機物を分解してしまうことから、経時変化で酸化チタンの微粉が空気中に散乱し人体に有害なものとなる可能性が指摘されていた。また、多孔質セラミック中に含浸させた場合、光触媒分解反応に必須である光が多孔質により阻害されてしまう問題があった。
(2)酸化チタンは、光学的バンドギャップが3.1eVと大きく、蛍光灯等の可視光に対しほとんど光触媒反応が無かった。これは室内光を利用する光触媒としても非常に不利であり、工業用途で使用する場合に多くのブラックライトを光触媒に照射しなければならず、人体に有害なオゾンの発生も懸念されていた。また、ブラックライトは特殊利用であることから非常に高価であることも光触媒を用いた空気清浄機の汎用化を阻害していた。
(3)酸化チタンの原料であるチタンはレアメタルとして登録されており、長期にわたる大量利用により枯渇が懸念されている。このような材料を大量利用用途である光触媒原料として利用することは好ましいことではなく、さらなる枯渇が進めば、現状のインジュウムやガリウムのような価格の高騰化は免れない。
これらの問題を払拭するために酸化亜鉛の光触媒への利用が検討されてきた。
近年、酸化亜鉛の光触媒としての報告がなされている(非特許文献1,2参照)。これらの報告では酸化亜鉛の形態が薄膜あるいは粉体形状であった。しかしながら、薄膜は有害ガスとの接触面積が小さく、粉体も酸化チタンに勝る優位性は無く、光触媒ユニットとしての利用法は見いだしにくかった。
また、形態が異なる報告としてウイスカー(非特許文献3参照)やナノベルト(非特許文献4参照)が報告されている。しかし、これらの報告は、形状が異なるもののナノサイズであり光触媒としての利用には向かなかった。
本出願の発明者は、光触媒に適したマイクロサイズの酸化亜鉛微細結晶体の作成方法の検討に着手し、再現性のある作成方法に成功した。この作成方法は、特許出願をしている(特許文献1)。また、この作成方法で得られた微細結晶体は、可視領域と紫外領域で光触媒特性があることも確認されている(非特許文献5参照)。しかしながら、この微細結晶体は光触媒としての機能は満たしたものの、製造工程で得られた光触媒は長さ10mm、直径0.2mmと非常に細かく、ハンドリングがとても困難であった。さらに、移動中に握りつぶすなど光触媒ユニット中に設置するには問題も多かった。
Chung-Hsin Wu et. al "Photocatalytic degradation of azo dye acid red 1 4 in water on ZnO as an altemative catalyst to Ti02," Journal of Hazardous Materials B114 (2004) 191197 Sampa Chakrabarti et. al "Photocatalytic degradation of model textile dyes in wastewater using ZnO as semiconductor catalyst," Journal of Hazardous Materials B112 (2004) 269-278 岡田、大塩他,「ZnOエピタキシャルウィスカーのパターン形成」第48回応用物理学会講演予稿集 30-p-k-1 (2000.9) Z.W. Pan et.al, "Nanobelts of Semiconducting Oxides," Science,291(2001)1947 羽賀他:第50回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,27p-K-14,p.255 (2003.3) 特開2003−238119号公報
本発明は、従来の光触媒ユニットの欠点を払拭したものであり、酸化亜鉛微細結晶体の光触媒特性に応じた光触媒ユニットの提供及び光触媒の微細結晶体を光触媒ユニットの中に形成、設置する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、光を入射することができる入射面を少なくとも2面以上有する容器と、該容器の内部に光触媒としてマイクロワイヤ形状の酸化亜鉛微細結晶体とを備え、金属メッシュを前記容器内部に挿入してあり、該金属メッシュに前記酸化亜鉛微細結晶体が堆積されており、前記容器外部からの光で触媒を活性化することを特徴とする光触媒ユニットである。
前記酸化亜鉛微細結晶体は、触媒機能の分光感度が紫外領域と可視領域の双方を有しており、前記入射面の少なくとも1面は、可視光を入射させることが望ましい。
前記容器の形状を同軸円筒形とし、前記入射面を外側の円周面と内側円周面とすることや、前記容器の形状を平面形とし、前記入射面を平面形の表面と裏面とすることもできる。
上述の光触媒ユニットの製造方法は、該光触媒ユニット内部で反応させて、前記酸化亜鉛微細結晶体を作成することで光触媒ユニットとするとよい。
酸化亜鉛微細結晶体の形状や光触媒特性に応じた光触媒ユニット構成を用いているので、効率よく光触媒として使用することができる。光源をユニット外部に設けることができるので、光触媒により化学反応している空間から離すことができる。光触媒ユニット内で酸化亜鉛微細結晶体を形成することで、光触媒ユニットを簡単に製造することができる。
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための実施形態を説明する。
<酸化亜鉛微細結晶体>
まず、本発明の光触媒ユニットに使用する酸化亜鉛の光触媒の微細結晶体について、図3を用いて説明する。使用する酸化亜鉛の光触媒の微細結晶体は、本発明の発明者が発明した製法(特許文献1参照)により生成されたマイクロワイヤ状のものであり、図3(a)に示すように円柱状や多角形、直方体等の形状のものが交差して形成される。図3(b)は微細結晶体拡大写真である。図3(b)の写真からも分かるように、酸化亜鉛微細結晶体は、長さが10mm以上もあるワイヤ状のものが互いに交差しており、密閉空間を埋めるのに適している。交差した形状は有害ガスを通過させやすく、大きな表面積も稼げる。光も奥まで届く。この光触媒は多孔質であることも特徴の一つに上げられ、これは光触媒の接ガス面の増加あるいはガスの吸着、光触媒分解、排出を行うのに最も適している。光触媒が多孔質となるのは作成工程に起因している。以下にこの光触媒の作成工程を提示する。
<光触媒(酸化亜鉛微細結晶体)の作成工程>
微細結晶体の作成方法としては、
(1)一種類以上の昇華性のある有機金属材料、例えばアセチルアセトン亜鉛(Zn(acac))を、酸素ガスまたは酸素元素を含む雰囲気ガス中で加熱昇華させた後、同雰囲気を冷却(その有機金属の昇華点以下の温度に冷却)して、細線状析出物を得る工程
(2)その細線状析出物を、水蒸気を含む上述の雰囲気ガス中で酸化処理をする工程
(3)酸化した細線状析出物を酸素ガスまたは酸素元素を含むガスのうち少なくとも一種類以上が含まれた雰囲気ガス中で再加熱処理をする工程
の三つの順次工程を含んだ処理によって結晶構造を有する細線状金属酸化物(酸化亜鉛)を形成する。酸化亜鉛微細結晶体の原料は、亜鉛イオンにAcac(アセチルアセトン基)、DPM(ジピバロイルメタネート基)、HFA(ヘキサフルオロ基)、i−PrCp(イソプロピルシクロペンタ基)をその価数(2)の数だけ配位結合したものを一種類以上用いる。なお、詳しくは、上述の特許文献1を参照されたい。
この方法による再加熱により細線状の析出物の結晶化が可能である。図4は再加熱温度とX線回折装置で結晶化状態を測定した結果を比較したものである。Taが再加熱温度(アニール温度)であるが、Taの上昇に従い結晶性の指標であるZnO(1011)面のピーク強度が上昇していく。最も強い強度を示すのがTa=800℃の時であった。
<酸化亜鉛微細結晶体の特性>
用いている光触媒の他の特徴として、可視領域に感度を有する点がある。通常酸化亜鉛は、3.2eVの禁制帯幅を有しており波長に変換すると380nmの近紫外領域となる。上述の作製方法で得られた酸化亜鉛微細結晶体は、380nmの近紫外領域に禁制帯幅を持つが、禁制帯中にいくつかの欠陥準位を有するようになる。この欠陥準位は、亜鉛の酸素欠陥あるいは結晶中に単独で存在する亜鉛分子に起因している。この欠陥準位の存在により、入射された光に対する光触媒効果が近紫外領域ばかりではなく、420−490nmの可視領域にも存在することとなる。禁制帯中の欠陥準位の存在を示す結果が、図5に示すフォトルミネッセンスの測定から明らかとなる。この測定は、420nmの紫外光を光触媒に導入し、そこから発生する発光を確認するものである.図5の5つのグラフは、再加熱工程の温度Taを200−1000℃まで変化させた試料の結果である。この結果から、380nmの紫外発光に加え、400−500nmの広い領域に可視の発光がみられる。
この結晶構造を有する細線状酸化亜鉛(酸化亜鉛微細結晶体)を光触媒として用いて、NOxの減少割合を、再加熱処理した温度(Ta)を400℃と800℃とした場合と、従来の酸化チタンを用いた場合を図6に示す。この図6のグラフから、従来の酸化チタンとは異なり、酸化亜鉛微細結晶体は、図6(a)に示すように、近紫外光(ブラックライトの光)では酸化チタンと同様に、NOxを減少することができ、図6(b)に示すように、可視光(蛍光灯の光)では、再加熱処理を800℃で行った酸化亜鉛微細結晶体を用いると、十分にNOxを減少することができることがわかる。したがって、この酸化亜鉛微細結晶体を用いることにより、可視光(自然光)を用いても光触媒を活性化することができる。
酸化亜鉛微細結晶体は、弱酸、弱アルカリにはほとんど溶融しないが強酸、強アルカリには容易に溶融することが知られている。また、溶液中に存在するとほんの僅かではあるが亜鉛が溶液中に溶け出すことがある。このような欠点を払拭するために本発明では酸化亜鉛を用いた微細結晶体表面に耐食性の高い酸化チタンをコーティングすることも可能である。酸化チタンのコーティングにはゾルゲル法、スパッタリング法、MO−CVD法が用いられる。
<光触媒ユニット>
上述した結晶構造を有する細線状金属酸化物である酸化亜鉛の光触媒を光触媒ユニットに形成するに当たり、その光触媒ユニットの容器の形状は少なくとも2面以上の面を有しており、その2面以上の面から光を入射させることが特徴である。基本的な構成の一例を図7に示す。図7(a)に示す構成では、同軸円筒型ユニット200の円筒中に、上述の酸化亜鉛微細結晶体220を詰めている。この微細結晶体は図3(a)(b)に示すように、円柱状や多角形、直方体等の形状のものが交差して形成されている。このため、容器内に堆積されたときに、すきまが多く、互いの重なりが少なく、多方向からの入射光が奥まで届くことができる。したがって、2面以上の面から入射する光を効率よく利用することができる。
この酸化亜鉛微細結晶体220は、可視光でも光触媒として働くことができる。この場合、光を容器内に入射させる入射面は外側の円周面と内側円周面である。そして、同軸円筒型ユニット200の内部に紫外光あるいは蛍光灯210を設置し、外部からは自然光あるいは蛍光灯を照射させて、光触媒を効率的に活性化することができる。
このユニット200を用いることにより、光源のある空間と光触媒効果を示す接ガス空間とが切り離されており、この構造によって、光触媒反応により光源の表面が腐食することや、光源の表面に反応した生成物が付着することがない。
図7(a)の光触媒ユニットは同軸円筒型光触媒の例を示したが、図7(b)に示すように、平面状のガラスを利用した平面形状ユニット200’も可能である。この場合、入射面は平面の表側面と裏側面である。図7(b)に示したユニット200’は平べったい立方体の平面状のものであるが、この形状は頂点が4以上の多面体で2面以上が光透過面であるものを用いてもよい。この図7(b)の場合も、平面状のユニット200’の裏表に設けた2つの透過性面から、自然光や蛍光灯を照射することができる構成であり、光源のある空間とユニット内の光触媒効果を示す接ガス空間とが切り離されている。
このような構造の光触媒ユニットを用いることにより、可視光(自然光)をも用いて、蛍光灯やブラックライトからの光と自然光とを別々の面から取り入れることも可能となる。
上述の光触媒ユニット200は、取り外しが容易である構造(カセット)とすることができる。これは、2つの利点を持つ。光触媒ユニットは有害なガスの分解に用いられるのが一般的だが、厨房等で使用した場合は、多くの油を含んだ有害ガスが流れてくる。光触媒の分解機能は、光触媒表面の活性な領域で行われることから、油等の有機物が表面にこびりつくと大幅に光触媒能力が低下する。従来の光触媒ユニットでは多孔質材料に粉体状の光触媒を含浸させるために、ユニット交換には多くの手間が必要とされていたが、本発明の光触媒ユニットは、取り出し容易なカセット構造とすることが可能である。
さらに、酸化チタンと異なり、酸化亜鉛は強酸、強アルカリに溶融することから、ユニットごと洗浄すれば光触媒を液化でき、さらに、ユニットの再利用が容易となる。液化した光触媒は塩酸溶液ではZnClとなり、水酸化ナトリウム等の溶液中ではZn(OH)となることから亜鉛として抽出することがとても容易となり、リサイクルが簡単な材料になる。
<光触媒ユニットの作製>
さて、ユニット200内に光触媒を挿入するには、酸化亜鉛微細結晶体220を挿入する必要があるが、そのときに、微細結晶体を破損しないように挿入することは、大変困難である。そのために、上述した微細結晶体の製造過程をユニット200内で行うようにすれば、酸化亜鉛微細結晶体が生成されるとともに、光触媒ユニット200が完成することになる。このような製法で作成される光触媒は、例えば図7(a)に示した同軸円筒型では、内面と外面の両方から結晶成長し、反対の壁面で成長が停止する。ただ、設置させるだけでは微細結晶体がガラス管壁に接着されていないため、僅かな衝撃で光触媒ユニットの内壁から外れ、ガス排出口のみに高密度で密集してしまうことがある。
これを防ぐために、図8(a),(b),(c)に示すように網状基板を光触媒ユニット200に設置して、光触媒をユニット内で形成する必要がある。
図8(a)に示すように、上下に設置した金属メッシュ262は、微細結晶体が外部に漏れ出ないようにするものである。図8(b)は、ユニットの長手方向に金属メッシュ264が設置されており、このメッシュ264に密着した微細結晶体とメッシュ264の隙間に成長した微細結晶体が絡み合って固着される構造となる。図8(c)はユニット内に、長手方向のメッシュ264に対して、ある間隔で十字形にメッシュ266が形成されたもので、さらに結晶体の固定が強固になる。金属メッシュの設置はこの形状に限らないが、入射光を妨げるような構造であってはいけない。光触媒ユニットを製造工程に内包することができるためには、ここに示されるように、原料がガス体でメッシュの隙間を通過するようなものであり、さらにメッシュ内の指定位置に微細結晶体が成長するような製法でなければいけない。ここで用いている酸化亜鉛微細結晶体は、原料は固体であるが、昇華した原料はガス体であり、冷却した希望の位置に自在に結晶体が成長するという特徴を有していることから、このような作製方法に内包した光触媒ユニットの製法が実現する。また、このユニット200内の流速は非常に大きく、微細結晶体が飛ばされる可能性も否めない。その対策として上述のメッシュにより、微細結晶体を支えることも可能となる。
光触媒ユニット200の構造体は、光が透過するものが最も好ましい。その場合は、ガラスや透明性セラミックが上げられる。ガラス材料は、安価なパイレックスガラス(登録商標)であれば、500℃程度が実用化温度の限界点である。勿論、石英ガラスであれば1300℃でも使用できるが高価となる。
従って、光触媒ユニット内で、光触媒をより低温で結晶化を促進させることがコストダウンの鍵となる。低温で酸化、結晶化を促進させる方法として、オゾン酸化、プラズマ酸化、RTA(高速熱酸化)、光酸化等がある。これらの手法を試みたところ比較的高い効果が確認され、オゾン酸化を例に取れば300℃で有効であった。なお、上述の製法として、酸化ガスとして酸素を用いている例を示したが、活性酸素を用いればさらに酸化の効率が向上する。
<光触媒ユニットの具体例>
(実施例1)
実施例として空気浄化機の内部に設置する、取り外し容易であるカセット形状とした光触媒ユニット例を図9に示す。図9(a)は光触媒カセット300の全体を示す斜視図であり、図9(b)は光触媒カセット300下部のフランジ316部分の断面図である。この光触媒カセット300は内部に光源として蛍光灯を設置した、同軸円筒構成のものである。
光触媒カセット300は、フランジ316,排気用ファン318,吸気フィルタ314,外部ガラス管322,内部ガラス管324,金属メッシュ328,微細結晶体酸化亜鉛光触媒326,蛍光灯330等で構成されている。排気用ファン318と吸気フィルタ314の部分のカップリング312で、空気浄化機と接続している。必要とされている有害ガスの分解量に応じて、このカセット300の数を増加させることができる。また、内部に設置する光源330は有害ガスの高効率分解を目指した場合は、蛍光灯とブラックライトの併用あるいは近紫外のLEDを設置する場合もある。また、外部ガラス管322の外部から入射する光として、太陽光あるいは人工光の少なくとも1つが入射する。人工光としては、可視光、近紫外光が使用される。カセット内部に設置される光触媒326は、インクや油等の粘性の高い有機物が付着すると光触媒効果が低下するので、その場合は取り外し、酸あるいはアルカリ等で洗浄後、新規に光触媒を導入してリサイクルする。
光源として蛍光灯を使用し、直径がφ50のガラス管322を使用した光触媒カセットに1%のNOxを導入したところ、100LUXの光量で濃度が5分の1に減少した。さらにこのカセットを5段に設置したところ、20分の1まで濃度が減少したことが確認できた。
(実施例2)
図9に示した光触媒カセット300は、ガス置換効率と排気風量が大きいが多くのスペースを消費する。他の実施例である図10に示したものは、薄型光触媒ユニット400の例である。図10(a)は全体の斜視図、図10(b)は断面図である。このユニット400は大きなスペースを取れない乗用車のダッシュボード等に設置して、内部のエアコン臭や悪臭を除去するのに適している。
図10において、ユニット400は、ガラス板422で微細結晶体を挟んだ構造となっている。2枚のガラス板422の間にはスペーサーが設置され、このスペーサーのほぼ中間位置に光触媒を固定するステンレスのメッシュ板を設置している。上部には排気に用いる超小型のシロッコファン412を駆動するためのモータユニット414が設置されている。背後はバックライト光源430となっており、光源としては、LED、冷陰極放電管、超小型の蛍光灯等を用いることができる。蛍光灯や冷陰極管を用いる場合は、面光源を得ることが難しいため、多数本並べることが好ましいが、1本の光源とくさび形の光導波部品を組み合わせて面光源とすることも可能である。後部に排気口、前部に吸気口を設けている。このユニットの特徴は、2面から光を入射することが可能であり、この実施例の場合は片面が光源で他の片面は太陽光を利用した。また、このユニットを多数個積層することもできる。
このような構造の場合、製造工程で外部から光触媒を挿入することは非常に困難で、光触媒製造工程に光触媒ユニットを内包した製法で作成した。
このユニットに外部から悪臭源としてニンニクエキスを導入し、排気口からその臭気を確認したところ、ニンニク臭は完全に除去され、多大な消臭効果が確認された。
この装置は自然光源や人工光源が存在するところに設置して利用できることから、一般家庭の窓際やガラス窓の代替え、各種調度品の背面光源、蛍光灯を用いた照明の背面等に設置することも可能であり、乗用車ばかりでなく一般家庭用の消臭機、空気浄化機として利用できる。
<応用>
上述した光触媒ユニットは可視光源が使用できる利点があり、室内光などの光源が利用できる。そのため透過性の高い写真等の背面に光源と光触媒ユニットを設置し、観賞と空気の浄化を兼用したインテリアに応用できる。また、熱帯魚の水槽の背面に設置し、熱帯魚の蛍光灯を利用した浄化システムなど多くの応用が考えられる。さらに、太陽光と蛍光灯を併用した光源、LEDの間欠点灯による光源の低電力化も期待できる。この場合の間欠点灯のサイクルは、光触媒反応速度より遅い速度であることが望ましい。
光触媒ユニットをVOC(大気汚染化学物質)の除去を目的としてガソリンスタンド等に設置した場合は、図11に示すように広告塔と兼用するシステム500が構築できる。広告塔の内部に、光触媒ユニット200を設置している。昼間は、広告塔の照明は不要で光触媒は太陽光のみで空気浄化を促進させる。また、VOCガスを発生させる工場や会社においては、蛍光灯による管照明の下部照射を照明に用い、上部照射を光分解に用いるということも可能となる。ガソリンスタンドに限らず、これらの会社でも広告塔を用いることは多く、光触媒と広告塔を兼用した光触媒ユニットは非常に有効な製品となる。
上述では、透明な光触媒ユニット材料を用いた例を示したが、LEDや冷陰極管等の微細な光源を内部に用いる場合はその限りではない。金属等の不透明な容器で光触媒ユニットを製造した後に、LEDを縦に並べた線状光源や直径の細い冷陰極放電管を内部に設置しても良い。この場合は光源表面にダメージを受けないようにガラス素材等の透明な被膜を表面にコーティングすることが必要となる。
光触媒は多くの有害物質を分解し、無害なものに変換する。しかし物質によっては、分解の後に有害な物質や臭気性のある物質が排出されることもある。アルコールやホルムアルデヒド等の物質を光触媒分解すると蟻酸や酢酸が排出される。また、イオウの分解物質は二酸化硫黄となりかなり強い臭気を伴う。これらの生成物は非常に低濃度であるが臭気性が高く、不快感が伴う。光触媒のような酸化分解ではこのような現象は必ず起こり、光触媒ユニットはこのような低濃度高臭気の物質の分解を行わなくてはならない。有害ガスと異なりこのような物質は低濃度であることから、処理も比較的容易である。処理法としては、紫外線による光分解処理、大気あるいは減圧での放電による放電処理、酸化ジルコニア等の還元物質による還元処理、多孔質物質による吸着処理、中和物質による中和処理等がある。このような低濃度臭気ガスの処理部を光触媒ユニットの後に設けることができる。
従来の光触媒ユニットの構成を示す図である。 従来の光触媒である酸化チタンの構造を示す図である。 本発明の光触媒である酸化亜鉛微細結晶体の構造を示す図である。 酸化亜鉛微細結晶体作成時の再加熱温度とX線回析装置で結晶化状態を測定した結果を示すグラフである。 酸化亜鉛微細結晶体のフォトルミネッセンスの測定結果を示すグラフである。 NOxの有害ガスの酸化亜鉛微細結晶体による、紫外と可視光に当てたときの減少を示すグラフである。 本発明の酸化亜鉛微細結晶体の光触媒ユニットの例を示す図である。 酸化亜鉛微細結晶体光触媒ユニット内部に挿入する金属メッシュの例を示す図である。 同軸円筒型のカセット形状光触媒ユニットの構成例を示す図である。 薄型光触媒ユニットの構成例を示す図である。 光触媒ユニットを広告塔に応用した構成例を示す図である。

Claims (5)

  1. 光を入射することができる入射面を少なくとも2面以上有する容器と、
    該容器の内部に光触媒としてマイクロワイヤ形状の酸化亜鉛微細結晶体とを備え、
    金属メッシュを前記容器内部に挿入してあり、該金属メッシュに前記酸化亜鉛微細結晶体が堆積されており、
    前記容器外部からの光で触媒を活性化することを特徴とする光触媒ユニット。
  2. 請求項1記載の光触媒ユニットにおいて、
    前記酸化亜鉛微細結晶体は、触媒機能の分光感度が紫外領域と可視領域の双方を有しており、前記入射面の少なくとも1面は、可視光を入射させることを特徴とする光触媒ユニット。
  3. 請求項1又は2に記載の光触媒ユニットにおいて、
    前記容器の形状は、同軸円筒形をしており、前記入射面は外側の円周面と内側円周面であることを特徴とする光触媒ユニット。
  4. 請求項1又は2に記載の光触媒ユニットにおいて、
    前記容器の形状は、平面形をしており、前記入射面は平面形の表面と裏面であることを特徴とする光触媒ユニット。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の光触媒ユニットの製造方法において、該光触媒ユニット内部で反応させて、前記酸化亜鉛微細結晶体を作成することで光触媒ユニットとすることを特徴とする光触媒ユニットの製造方法。
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