JPH10116587A - 光触媒付き蛍光ランプとその製造方法 - Google Patents

光触媒付き蛍光ランプとその製造方法

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JPH10116587A
JPH10116587A JP9225990A JP22599097A JPH10116587A JP H10116587 A JPH10116587 A JP H10116587A JP 9225990 A JP9225990 A JP 9225990A JP 22599097 A JP22599097 A JP 22599097A JP H10116587 A JPH10116587 A JP H10116587A
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JP
Japan
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photocatalyst
fluorescent lamp
light
film
titanium dioxide
Prior art date
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Application number
JP9225990A
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English (en)
Inventor
Shinichi Ichikawa
伸一 市川
Yoshinori Furukawa
義徳 古川
Shigeru Azuhata
茂 小豆畑
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
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  • Disinfection, Sterilisation Or Deodorisation Of Air (AREA)
  • Exhaust Gas Treatment By Means Of Catalyst (AREA)
  • Catalysts (AREA)
  • Formation Of Various Coating Films On Cathode Ray Tubes And Lamps (AREA)
  • Vessels And Coating Films For Discharge Lamps (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】大気中に存在する臭気,菌類,汚れなどを室温
で化学変換し、脱臭,抗菌および表面の防汚を行う光触
媒付き蛍光ランプを提供する。また、蛍光ランプから放
射される紫外線も防止する。 【解決手段】蛍光ランプのガラス管の外表面にアナター
ゼ型の酸化チタンからなり、光透過性で透明な光触媒膜
を形成する。 【効果】薄膜光触媒に光を照射し、その外表面で化学反
応的に臭気成分,菌類,汚れ成分などを分解して脱臭,
抗菌,防汚を行う。また薄膜光触媒で紫外線を吸収す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、居住建物内や乗り
物などにおいて照明器具として使用される蛍光ランプに
係り、特に空気を浄化したり、紫外線を遮断する効果を
有する光触媒膜をガラス管の外表面に被覆した光触媒付
き蛍光ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に外気との流通が乏しい密閉空間で
は多くの臭気成分,菌類,汚れ成分が空気中に蓄積蔓延
する現象が起きる。これらの濃度はppm からppb レベル
のものまで、菌類であればそれより遥かに小さいものま
で存在する。しかし人体への影響は大きく、有害臭気を
持つ分子は不快感をもたらし、各種菌類はアレルギー症
状や様々な病気を引き起こし感染もする。また空気中の
微量の油脂成分は物体の表面に吸着し、その上にほこり
が付着し易くなり汚れが蓄積される。このような有害物
質を分解処理して無害化し、脱臭,殺菌,防汚を可能に
する生活環境浄化技術の進歩がますます要求される。
【0003】脱臭,殺菌,防汚の三つの項目の内、従
来、脱臭を目的とした技術が多く提案されている。
【0004】最も簡単な技術としては多孔質の活性炭の
ような吸着剤を利用するものだが、これは物理的手段で
あるため、吸着剤が吸着物で飽和すれば廃棄して交換す
る必要があり、回収処理や再生の問題も出てくる。同様
の方法に消臭剤や消臭作用を持つ繊維などがある。また
吸着剤を空気浄化器やエアコン内に設置する方法もある
が問題は同じである。
【0005】空気の殺菌処理では、例えばオゾンを発生
させて菌類を酸化分解する方法や強い紫外線ランプによ
る殺菌もあるが、いずれも安全性や管理などの問題があ
り、実用性に難しい。
【0006】また、空気中の有害成分を化学反応的に処
理する手段として触媒を用いる従来からの方法がある。
これは主として脱臭を目的とし、触媒を200℃以上に
加熱して使用するため熱エネルギーを必要とする。また
反応器の設置も必要となる。いずれにせよ空気浄化につ
いては、省エネルギー型のシステムより簡便な新しい方
法が望まれる。
【0007】空気浄化とは別に室内での照明器具から発
生する紫外線による人体への悪影響の問題については対
策が遅れている。更に照明器具に関しては、室内外を問
わず空気中の汚れ成分が照明器具の外壁に蓄積すること
により照度が低下する問題についてもこれまで解決策は
出ていない。これらに対応した新技術が待たれる。
【0008】照明器具におけるこれらの課題を解決する
ものとして、電灯の管球のガラス表面に酸化チタン膜を
被覆した消臭灯があり、特開平6−304237 号公報に記載
されている。該公報には、内部からの光によって生ずる
酸化チタン膜の酸化還元作用により、空気中の悪臭成分
を効果的に分解除去し、メンテナンスフリーでその効果
を持続させることができると記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】脱臭,殺菌,防汚を同
時に行うシステム、更に上記のような各々の技術がかか
えている問題を低減するシステムが求められる。本発明
は一つの材料システムで紫外線防止,脱臭,抗菌,防汚
の四つの機能を持ち、また多種類の光源を利用でき、メ
ンテナンスフリーでセルフクリーニングの特性を持つ高
効率の薄膜光触媒を使用する蛍光ランプとその製造方法
を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、ガラス管の外
表面にアナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン或
いはアルファ型の結晶構造を有する酸化第二鉄からな
り、光透過性で透明な光触媒膜を有することを特徴とす
る光触媒付き蛍光ランプにある。
【0011】また、ガラス管の外表面にアナターゼ型の
結晶構造を有する二酸化チタン或いはアルファ型の結晶
構造を有する酸化第二鉄によって形成された光触媒膜を
有し、該光触媒膜が光透過性であり且つ膜の内部で発生
した電子とホールが表面に移動することを特徴とする光
触媒付き蛍光ランプにある。
【0012】本発明における光触媒膜は、実質的に二酸
化チタン或いは酸化第二鉄のみによって構成される。ま
た、望ましくはゾル・ゲル法によって形成される。
【0013】光触媒膜の厚さは、二酸化チタンによって
形成された光触媒膜の場合には0.02〜2μmが好ま
しく、酸化第二鉄によって形成された光触媒膜の場合に
は0.01〜0.1μmが好ましい。
【0014】本発明における光触媒膜は、二酸化チタン
或いは酸化第二鉄の結晶子が凝集して一枚の連続的結晶
になっている。
【0015】本発明において、光触媒膜は290nmか
ら1200nmまでの波長領域の光を透過し、290n
mから750nmまでの波長領域の光を90%以上透過
するものであることが望ましい。
【0016】本発明は、ガラス管の外表面に二酸化チタ
ン或いは酸化第二鉄の原料を含むゾル液を接触させ、焼
成してアナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン或
いはアルファ型の結晶構造を有する酸化第二鉄よりなる
光触媒膜を形成することを特徴とする光触媒付き蛍光ラ
ンプの製造方法にある。
【0017】また、ガラス管の外表面にチタンのアルコ
キシドと酸及びアルコールの混合物からなるゾル液を接
触させ、450〜600℃の温度で焼成してアナターゼ
型の結晶構造を有する二酸化チタンよりなる光触媒膜を
形成することを特徴とする光触媒付き蛍光ランプの製造
方法にある。
【0018】また、ガラス管の外表面に鉄の化合物とグ
リコールと酸の混合物からなるゾル液を接触させ、56
0〜770℃の温度で焼成してアルファ型の結晶構造を
有する酸化第二鉄よりなる光触媒膜を形成することを特
徴とする光触媒付き蛍光ランプの製造方法にある。
【0019】光触媒システムでは光触媒と光源の両方が
必要である。その場合、光源と光触媒との間が近距離に
位置するほど、光触媒は単位面積当たりより高い光エネ
ルギー強度の光照射を受けられるため、活性が高くなる
という優位性がある。また、光が光触媒の反応面と同じ
側から照射される場合と、反対側から照射される場合と
が考えられる。反対側の場合は光触媒は光透過性である
ことが必要条件となる。本発明では、光源である蛍光体
膜を内面に有するガラス管の外表面に薄膜形状の光透過
性で透明な光触媒を形成することにより、光源と光触媒
との距離を短くし、微弱な光エネルギーを最大限に生か
すと同時に、反応面とは反対側から光が照射されて機能
できるようにしている。
【0020】本発明の蛍光ランプでは必要な光が光触媒
付き蛍光ランプ自身から得られるのみならず他の蛍光ラ
ンプからも得られるので相乗効果が可能である。
【0021】ここで言う光透過性とは自然光の290n
mから1200nmまでの波長領域の光を透過できるこ
とを意味する。従って薄膜光触媒の片面に入射する光が
反対側の面まで到達し抜け出ることが必要である。ガラ
ス管自体も光透過性であることはいうまでもない。透明
とは、薄膜光触媒が存在する面側から人間の肉眼で見て
反対側の物体が見えることを言う。透明の物体は、29
0nmから750nmまでの波長範囲で光が直線透過す
ることを必要とする。この波長範囲は人間の裸眼で観察
して透明と判断できる領域である。一般に蛍光ランプか
ら照射される光はこの波長範囲を持つ。この波長領域
(290nm−750nm)の光の透過率が90%以上
であることが望ましい。
【0022】光触媒は光エネルギーを利用して室温で化
学反応を引き起こす特殊な触媒である。光触媒に光を照
射すると電子がバンドギャップを越えて価電子帯から伝
導帯へと励起され電子(e- )とホール(h+ )のペア
を造りだす。この時バンドギャップのエネルギーよりも
大きいエネルギーを持つ光子(フォトン)、即ちそのエ
ネルギーに相当する波長よりも短い波長の光が光触媒に
当たると上記の励起が生じる。この臨界波長はアナター
ゼ型酸化チタン(TiO2 )であれば約400nm,α
型酸化第二鉄(Fe23)であれば約540nmであ
る。フォトンの単位光照射面積及び単位時間当たりの発
生速度は励起できる波長範囲の光エネルギーに比例す
る。
【0023】この電子とホールとが引き金となり種々の
活性種が光触媒表面に発生する。例えば、空気中の酸素
と電子が反応して活性酸素を造る。また空気中の水分と
ホールの反応で水が分解してプロトンと酸素を発生す
る。更にこの二つの反応が連携してオゾン,水酸基,水
酸基ラジカルなども造りだす。従って活性種の単位光照
射面積及び単位時間当たりの発生速度は電子やホールの
発生速度、即ちフォトンの発生速度に比例するので、空
気中から光触媒表面に吸着する有害分子の分解速度もこ
れらに比例することになる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面を用いて説明
する。
【0025】図1および図2は、光触媒付き蛍光ランプ
の一例を示している。直管形の蛍光ランプは、一般に直
管形のガラス管1の内壁面に蛍光体膜3を有し、ガラス
管1の両端部に口金4とピン5とを有する。ピン5は端
子の役目をする。ガラス管1の内部には、バッファーガ
スとして水銀と不活性ガス例えばアルゴン,ネオン,ク
リプトン,キセノンなどの希ガスが封入されている。光
触媒膜2は、ガラス管の外表面に被覆されている。
【0026】蛍光ランプでは、放電により水銀が紫外線
を発生し、この紫外線により蛍光体が発光し、蛍光体か
ら可視光が照射される。光触媒膜2は、蛍光ランプで発
生した紫外光を吸収して、臭い成分,菌類或いはガラス
管の表面に付着した油を水と炭酸ガスなどに分解する。
【0027】光触媒層2の厚さは、あまり厚すぎても意
味が無く、薄すぎると効果が乏しい。二酸化チタンより
なる光触媒膜の場合には0.02〜2μm がよく、酸化
第二鉄よりなる光触媒膜の場合には0.01〜0.1μm
がよい。
【0028】本発明では図1および図2に示すように光
透過性で透明な薄膜状の光触媒膜2を蛍光ランプのガラ
ス管1の外表面に形成している。これによって光源であ
る蛍光体膜3と光触媒膜2とをガラス管1を挟んで隣接
させることができ、蛍光体膜3から照射される光のエネ
ルギーを有効に利用できる。つまり光源と光触媒との間
の距離が短いほどより高い光エネルギーが光触媒に照射
され、単位面積当たりより多くの活性種を発生できるの
で、蛍光ランプのように微弱な光を放射する場合に、光
エネルギーを最大限に利用できることになる。図1,図
2で示すように、薄膜光触媒の裏側から光を照射して表
側で光面反応を行っている。つまり光が表側から更に外
部へと放射できる。このことを活用して図3に示すよう
に、例えば蛍光ランプを二本隣接させておけば、片方の
蛍光ランプから放射される光によってもう片方が励起さ
れるため自らの光励起とともに二重の効果をもたらすこ
とになる。図3は二本の場合であるが、図4のように複
数で相乗効果を増大させることもできる。
【0029】本発明の蛍光ランプは、光触媒膜が光透過
性を有する。光触媒膜としては、一般に粒状の光触媒粒
子を集合して無機系或いは有機系の結着剤により結合し
て膜にしたものが知られているが、粒子が重なり合い、
また粒子が積層した形になるために、粒子間の粒界や隔
たりが生じる。また、結着剤を含むので純度の高い膜で
はなく、しかも光触媒粒子の粒子間距離をさらに大きく
する。これらの結果、膜の表面に光が照射されても光が
膜の表面より内部へ侵入しにくいため、最外表面に位置
する粒子のみが光励起してそれより内部に位置する粒子
はあまり励起されない。この問題は、膜の厚みが増して
外表面からの距離が大きくなるほど深刻化する。
【0030】一方、本発明の光触媒膜では、結晶子が密
接に凝集して一枚の連続的結晶となり、光透過性を有す
るので、光が外表面から内部まで自由に透過でき、薄膜
全体が有効利用されて効率が高くなる。
【0031】図5に光透過性を有する光触媒膜の優位性
を示す。まず、膜の外表面側だけでなく内表面側からも
光励起できる。そして、光が薄膜を透過する時に、薄膜
内部で発生する電子とホールのペアが外表面に移動する
ものと、外表面にて発生するペアもあり、薄膜内部でペ
アを発生でき、尚且つ最終的に外表面で各種活性種を発
生して有害物質との反応を行うことができる。
【0032】結晶子が密接に凝集して一枚の連続的結晶
になっている光透過性を有する光触媒膜はゾル・ゲル法
によって作ることができる。
【0033】粒状の光触媒では、単位体積当たりの表面
積をできるだけ大きくするために、粒子の径を小さくす
ることが重要になるが、ある程度の粒子径以下になる
と、量子サイズ効果(quantum size effect)によって光
触媒のバンドギャップが大きくなり、従ってより波長の
短い紫外領域の光でないと励起できなくなる。このため
紫外領域の光エネルギーが小さい蛍光ランプのような光
源や太陽光によって光励起する場合は、この微粒子化効
果が逆効果として現われ、不利になる。この臨界粒子径
は例えば酸化チタンの場合、10nmから20nmであ
る。10〜20nm以下の粒径になれば大粒径に比べて
膜の透明性をやや増すことができるが、上記の量子サイ
ズ効果の問題で好ましくない。従って本発明の薄膜光触
媒はこれらの点においても有利である。
【0034】実施例1 薄膜酸化チタンの製造方法と物性評価。
【0035】チタンテトライソプロポキシドとアルコー
ルを混合した溶液に酸とアルコールを混合した溶液を加
えてチタンテトライソプロポキシドの加水分解を行い、
チタンの水酸化物を調製し、ゾル液とした。このゾル液
を蛍光ランプ用ガラス管と同じガラス基板の表面にコー
ティングして、100℃での乾燥から始め、500℃の
焼成でゾル・ゲル法を完了した。このゾル・ゲル法によ
ってチタンの水酸化物の水酸基とガラスの表面に現れて
いる水酸基との間で縮重合反応が進み、酸素を介してチ
タンの酸化物とガラスの主成分である酸化ケイ素との化
学結合が得られ、ガラス基板の表面に光透過性で透明な
薄膜状の酸化チタンが得られた。
【0036】表面結晶構造同定の例として、蛍光ランプ
用ガラス管と同じガラスの表面に上記のゾル・ゲル法で
形成した厚さ530nm(二次電子顕微鏡による断面S
EM像にて確認)の酸化チタン薄膜の表面結晶構造が1
00%アナターゼであることがレーザーラマン分光分析
により判定された。図6にラマンスペクトルを示すが、
ラマンシフトの各主要ピーク位置(640,518,3
96,197cm-1)はI. R. Beattie, T. R. Gilson,P
roc. Roy. Soc. (London) A, vol.307, p.407(1968)に
て報告されている単結晶のアナターゼ型酸化チタンから
得られるピーク位置(640,515,400,197
cm-1)と一致する。また同じ試料のバルク結晶構造が1
00%アナターゼであることが図7に示すエックス線回
折パターンより判定された。強度対2θのスペクトルに
おいて、アナターゼに特徴的な四つのピーク、即ち、2
θの値が25.3,37.9,48.1,54.1でのピー
クが見られた。またこの試料の結晶子サイズは同じエッ
クス線回折より得られ、34.6nm であった。
【0037】光透過性の確認は、290nm〜1200
nmの波長範囲の光を発生できる太陽光に近い光スペク
トルを持つキセノンランプを光源とした光測定装置を利
用して上記試料の片面に光を照射し、反対側の面から透
過する光を検知することによって行った。物性評価に使
用している上記試料であるが、これはガラス基板の両外
表面に薄膜酸化チタンが形成されているものである。従
って厚さ530nmの薄膜酸化チタンが二枚,ガラス基
板を挟んで存在しているものである。ここで290nm
〜750nmの波長範囲の光を発生する蛍光ランプを光
源として使用し、光エネルギー測定装置により測定した
ところ、98.8%〜99.9%の光が透過し、薄膜酸化
チタンによる照明度の低下は殆どなかった。この値は上
記の試料(ガラス基板の両外表面に薄膜酸化チタンが形
成されたもの)の透過光とガラス基板のみによる透過光
のエネルギーを各々測定して両外表面の透過光エネルギ
ーを出し、更に薄膜酸化チタン片面分(530nm)の
光透過率を計算することによって求めた。また照射する
光エネルギーに殆ど影響されずに高い透過率を示した。
即ち、99.9% の値は光源である蛍光ランプ外表面位
置での光エネルギー(22.7mW/cm2)による光透過
率であり蛍光ランプの外表面に薄膜酸化チタンを形成し
た場合と同様である。98.8% は蛍光ランプ表面から
距離的に離れた位置での光エネルギー(0.69mW/c
m2)によるものである。いずれの場合も透過率は高い。
従って少なくともこの範囲での光エネルギーによる薄膜
の光透過率はかなり高いことが示された。図8にこれら
の光透過率と光エネルギーの関連を示した。この図には
薄膜酸化チタンの膜厚の影響も表わしている。膜厚が5
30nmから740nmに大きくなると光透過率が落ち
るが、膜厚740nmで照射光エネルギーが0.69m
W/cm2であっても光透過率は96.3% と高い。
【0038】一方、薄膜酸化チタンはそのバンドギャッ
プに相当する400nm以下の紫外領域の光を吸収し、
紫外線カットを行うと同時に自らが光励起される二重効
果を示す。上記と同じ試料を用いて、蛍光ランプ外表面
位置での光エネルギーに含まれる各波長の光カット率を
測定した結果を図9に示す。バンドギャップ以上のエネ
ルギーを持つ365nmの光は確かに吸収されている
〔図9(a)〕。一方、400nmより長い波長で紫外
領域から外れる405nmおよび436nmになると、
光が吸収されてないことも示されている〔図9(b),
(c)〕。これらの結果は酸化チタンの特性である。3
65nm波長の光カット率(紫外光カット率)の膜厚の影
響については、0.53μで11%,0.74μで25%
となり、膜厚増加に伴い紫外線カット効果が向上する。
また、図9に示す値はガラス基板の両面に形成された薄
膜酸化チタン効果を二分したもので、従って両面を含め
れば0.74μ で50%の紫外線カット率となる。
【0039】実施例2 薄膜酸化チタンによる防汚,脱臭,抗菌試験。
【0040】ガラス基板薄膜酸化チタン(膜厚0.53
μ)の表面にサラダ油を塗布した後、初期重量を測定
し、蛍光ランプ光照射下でのサラダ油の重量減少を測定
した。大気中での測定結果を図10に示す。反応開始後
2時間で表面のサラダ油は酸化分解して消滅した。ま
た、これによってセルフクリーニング効果が確認され
た。即ち、サラダ油の分解後、薄膜酸化チタン表面上に
分解生成物が残らず、もとの清浄表面になっていた。長
鎖の炭化水素からなるサラダ油は逐次炭素結合が切れて
酸化され、最終的に炭酸ガスと水に変換されると推察さ
れる。このように本試料は油を分解して表面の防汚を行
うことができることが示された。一般に表面のほこりの
蓄積は、まず空気中の油成分が表面に吸着し、そこにほ
こりが付着し易いためと考えられる。従って油成分の分
解は汚れの防止に役立つことになる。
【0041】上記と同じ試料による脱臭効果を測定し
た。この測定は閉鎖循環系の実験システムで行った。本
システムでは反応容器として微量成分が内壁に吸着しな
い不活性材料を使い、また油を使わないベローズ循環ポ
ンプによる気相の撹拌を行った。試料を固定するサンプ
ルホルダーを中心部に設置し、光は反応器の外から光透
過性の特殊な窓を通して試料に照射した。反応器に直結
しているサンプリングバルブを介して大気圧マス(大気
圧にある気相のサンプルをガスクロ質量分析系に送り込
む装置)に連結し、気相内の有害成分の時間的濃度変化
を追跡した。図11に蛍光ランプ照射下でのアンモニア
ガスの分解反応の結果を示す。この時の試料表面位置で
の全光エネルギーは1.5mW/cm2で、365nmの波
長の光エネルギーは20μW/cm2 であった。これによ
って約5時間でアンモニア分解が終了したことを確認し
た。アンモニアの分解反応はアンモニアが最終的に窒素
と水に変換されると考えられる。更に、同じ試料を用い
て、試料をpH9のアンモニア水溶液を含む容器に上向
きに水面近傍に浸し、上から蛍光ランプの光を照射する
ことにより、pHが中性の7によることを観察した。こ
れはアンモニア水が分解したことを示している。
【0042】更に、同じ試料を用いて、抗菌実験を行っ
た。菌は室内の空中総生菌である。測定に使われたシス
テムは上記と同じものである。光源も同様の蛍光ランプ
であり、従って全光エネルギーおよび365nmの光エ
ネルギーは上記と同値である。測定は、室内の空気を反
応システム内に封じ込み、一定時間光触媒反応を行った
後に一定時間菌を採取するという方法を取った。菌の採
取はその都度新しいサンプラーを循環系内に設置して、
バイパス方式で行った。次にサンプラーに培養液を加え
て30℃に設定されたインキュベーター内で48時間培
養した後、菌のコロニーを数えた。図12に結果を示
す。初期9個のコロニーが4時間後に死滅している。こ
の実験結果から、蛍光ランプ照射下で薄膜酸化チタンが
抗菌反応を起すことが確認された。更に、同じ試料をカ
ビ菌を含む水溶液に上向きに水面近傍に浸し、蛍光ラン
プの光を照射した後にカビ菌の減少を観察し減少してい
ることを確実した。
【0043】なお、薄膜製造時の焼成温度が450℃よ
りも低い場合には、酸化チタンの結晶構造は無定形にな
り、600℃よりも高い場合にはルチル型になる。これ
らの結晶構造ではアナターゼ型に見られるような効果は
得られない。
【0044】実施例3 薄膜酸化鉄の製造方法と物性評価。
【0045】硝酸鉄とエチレングリコールに硝酸を加え
た溶液をゾル液とした。このゾル液を蛍光ランプ用ガラ
ス管と同じガラス基板の表面にコーティングして、10
0℃での乾燥から始め、600℃の焼成でゾル・ゲル法
を完了した。これによって有色透明な薄膜の酸化鉄が得
られた。
【0046】ガラス基板の外表面にゾル・ゲル法で形成
した厚さ50nm(二次電子顕微鏡による断面SEM像
にて確認)で光透過性の酸化鉄がアルファ型酸化第二鉄
(α−Fe23)であることがエックス線回折パターン
で確認された。図13に示す強度対2θのスペクトルに
おいて、アルファ型酸化鉄に特徴的な四つのピーク、即
ち2θの値が51.9,38.1,34.0,33.4での
ピークが見られた。この薄膜は上記の酸化チタンと同様
に290nm〜1200nmの波長範囲の光を透過す
る。更に、290nm〜750nmの波長範囲の光を発
生する蛍光ランプを光源として使用し、光エネルギー測
定装置により測定したところ、図14に示すように膜厚
50nmのα−Fe23は照射光エネルギーにあまり影
響されず75%以上の光透過率を有していた。蛍光ラン
プの外表面位置での照射光エネルギーは20.8mW/c
m2で、この時の光透過率は75.8mW/cm2であった。
照射エネルギー20.8mW/cm2で、膜厚が90nm,
260nmと増加すると光透過率は各々64.8%,3
8.9%と低下する。
【0047】一方、薄膜アルファ型酸化第二鉄はそのバ
ンドギャップに相当する540nm以下の光波長領域の
光を吸収する特性を持つ。図15に示すように、365
nmの紫外光のみならず、可視領域に入る405nmお
よび436nmの光も吸収して光励起する。この点が上
記の酸化チタンと異なる。365nmの光カット率は膜
厚が50nm,90nm,260nmと増加するに従
い、各膜厚に対応して66.7%,83.8%,100%
と向上する。405nmの場合の各膜厚に対応した光カ
ット率は69.267%,88.5%,100%であっ
た。更に、436nmの場合の各膜厚に対応した光カッ
ト率は69.2%であった。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば光触媒に接触する居住空
間や乗物内の悪臭,菌類,汚れ成分などが、光触媒表面
に光照射によって発生する種々の活性種により分解し、
化学反応的に脱臭,抗菌,防汚を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】光触媒付き蛍光ランプの横断面図。
【図2】光触媒付き蛍光ランプの縦断面図。
【図3】二つの光触媒付き蛍光ランプによる相乗効果を
示す図。
【図4】複数の隣接および遠隔の場に位置する光触媒付
き蛍光ランプによる相乗効果を示す図。
【図5】薄膜光触媒の活性化を説明するための図。
【図6】ガラス基板上の薄膜酸化チタンの表面結晶構造
(レーザーラマンスペクトル)を示す図。
【図7】ガラス基板上の薄膜酸化チタンのバルク結晶構
造(エックス線解析スペクトル)を示す図。
【図8】ガラス基板上の薄膜酸化チタンの光透過率を示
す線図。
【図9】ガラス基板上の薄膜酸化チタンの紫外線カット
率を示す線図。
【図10】ガラス基板上の薄膜酸化チタンによる防汚
(サラダ油の分解)効果を示す線図。
【図11】ガラス基板上の薄膜酸化チタンによる脱臭
(アンモニアの分解)効果を示す線図。
【図12】ガラス基板上の薄膜酸化チタンによる抗菌
(空中総生菌の殺菌)効果を示す線図。
【図13】ガラス基板上の薄膜酸化鉄のバルク結晶構造
(エックス線解析スペクトル)を示す線図。
【図14】ガラス基板上の薄膜酸化鉄の光透過率を示す
線図。
【図15】ガラス基板上の薄膜酸化鉄の紫外線および可
視光カット率を示す線図。
【符号の説明】
1…ガラス管、2…光触媒膜、3…蛍光体膜、4…口
金、5…ピン。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B01J 23/745 B01D 53/36 J 35/02 ZABH H01J 9/20 B01J 23/74 301M

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス管の外表面にアナターゼ型の結晶構
    造を有する二酸化チタン或いはアルファ型の結晶構造を
    有する酸化第二鉄からなり、光透過性で透明な光触媒膜
    を有することを特徴とする光触媒付き蛍光ランプ。
  2. 【請求項2】ガラス管の外表面にアナターゼ型の結晶構
    造を有する二酸化チタン或いはアルファ型の結晶構造を
    有する酸化第二鉄によって形成された光触媒膜を有し、
    該光触媒膜が光透過性であり且つ光照射によって膜の内
    部で発生した電子とホールが表面に移動することを特徴
    とする光触媒付き蛍光ランプ。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の蛍光ランプにお
    いて、前記光触媒膜が二酸化チタン或いは酸化第二鉄の
    みによって形成されていることを特徴とする光触媒付き
    蛍光ランプ。
  4. 【請求項4】請求項1または2に記載の蛍光ランプにお
    いて、前記光触媒膜がゾル・ゲル法によって形成された
    膜からなることを特徴とする光触媒付き蛍光ランプ。
  5. 【請求項5】請求項1または2に記載の蛍光ランプにお
    いて、前記光触媒膜の厚さが二酸化チタンよりなる光触
    媒膜の場合に0.02〜2μm であり、酸化第二鉄より
    なる光触媒膜の場合に0.01〜0.1μmであることを
    特徴とする光触媒付き蛍光ランプ。
  6. 【請求項6】請求項1または2に記載の蛍光ランプにお
    いて、前記光触媒膜は二酸化チタン或いは酸化第二鉄の
    結晶子が凝集して一枚の連続的結晶になっていることを
    特徴とする光触媒付き蛍光ランプ。
  7. 【請求項7】請求項1または2に記載の蛍光ランプにお
    いて、前記光触媒膜は290nmから1200nmまで
    の波長領域の光を透過し、290nmから750nmま
    での波長領域の光を90%以上透過することを特徴とす
    る光触媒付き蛍光ランプ。
  8. 【請求項8】ガラス管の外表面に二酸化チタン或いは酸
    化第二鉄の原料を含むゾル液を接触させ、焼成してアナ
    ターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン或いはアルフ
    ァ型の結晶構造を有する酸化第二鉄よりなる光触媒膜を
    形成することを特徴とする光触媒付き蛍光ランプの製造
    方法。
  9. 【請求項9】ガラス管の外表面にチタンのアルコキシド
    と酸及びアルコールの混合物からなるゾル液を接触さ
    せ、450〜600℃の温度で焼成してアナターゼ型の
    結晶構造を有する二酸化チタンよりなる光触媒膜を形成
    することを特徴とする光触媒付き蛍光ランプの製造方
    法。
  10. 【請求項10】ガラス管の外表面に鉄の化合物とグリコ
    ールと酸の混合物からなるゾル液を接触させ、560〜
    770℃の温度で焼成してアルファ型の結晶構造を有す
    る酸化第二鉄よりなる光触媒膜を形成することを特徴と
    する光触媒付き蛍光ランプの製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20000017686A (ko) * 1999-04-30 2000-04-06 최수현 튜브의중앙부에램프가삽입된광화학반응기의제작방법
JP2000262606A (ja) * 1999-03-19 2000-09-26 Takamasa Iwasaru 空気浄化装置
KR20030032612A (ko) * 2001-10-19 2003-04-26 엘지건설 주식회사 휘발성 유기화합물의 광촉매 산화방법 및 비활성화된광촉매의 재생방법
JP2020019683A (ja) * 2018-08-01 2020-02-06 公益財団法人電磁材料研究所 pn接合素子用の複合鉄酸化物薄膜および光触媒活性物質用の複合鉄酸化物薄膜

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