JP2001270799A - 酸化亜鉛薄膜およびその製造方法 - Google Patents

酸化亜鉛薄膜およびその製造方法

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高遠 中村
Naoyuki Takahashi
直行 高橋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡便な方法により得られる、室温において励
起子発光を示す酸化亜鉛エピタキシャル薄膜およびその
製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明の酸化亜鉛エピタキシャル薄膜の
製造方法は、大気圧下において、亜鉛源としてヨウ化亜
鉛を気化し基材上に導入する工程と、導入されたヨウ化
亜鉛を酸素と反応させて基板上に酸化亜鉛を堆積させる
工程とを含むことを特徴とする。得られた酸化亜鉛エピ
タキシャル薄膜は、25℃において15mWのHe−C
dレーザー(325nm)で励起したとき、紫外部(3
81nm)に励起子発光を示すものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面弾性波トラン
スジューサ、レゾネータ、光−音響デバイス、発光ダイ
オード、レーザダイオードなどに有用な酸化亜鉛薄膜お
よびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化亜鉛は六方晶系の構造を有し、室温
でのバンドギャップが3.37eVの直接遷移型の半導
体である。従来から、酸化亜鉛は、表面弾性波トランス
ジューサ、レゾネータ、光−音響デバイスに用いられ、
これらの作製法としては、スパッタ法によりc軸配向多
結晶の酸化亜鉛が用いられている。
【0003】最近、単結晶酸化亜鉛薄膜において室温で
の励起子発光が観察され、酸化亜鉛(ZnO)は窒化ガ
リウム(GaN)とならび、紫外−青色発光素子材料と
して大きな注目を集め(例えば、応用物理学会会誌、6
7巻、11号、1295頁(1998年))、酸化亜鉛
薄膜のエピタキシャル成長に多くの研究がなされてい
る。
【0004】これらの研究において、酸化亜鉛単結晶薄
膜はレーザーMBE(分子線エピタキシー)やプラズマ
MBE、あるいはパルスレーザーデポジッション(PL
D)などの方法により作製されている。これらの作製法
では、大がかりな装置を必要とするものであって、例え
ば、レーザーMBE法は、高真空下に置かれた焼結体タ
ーゲットに紫外線レーザパルス光を照射してプラズマ状
に蒸発させ、基板結晶上に薄膜をエピタキシャル成長さ
せるものであって、高減圧が可能な真空装置とエキシマ
レーザーとが必要である。また、基板上に形成される酸
化亜鉛の薄膜の成長速度も0.2μm/h程度と、かな
り小さなものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】レーザMBE法は、真
空装置など高価な装置と、ターゲットとして高純度の酸
化亜鉛などの高価な原料とを必要とし、また、結晶成長
速度が遅いなどの問題点があり、デバイスの工業的な生
産に不向きである。
【0006】これに対して、発明者らは、真空装置を用
いない大気圧下で、塩化亜鉛を酸素と反応させてエピタ
キシャル成長させる、気相エピタキシー成長法(VP
E)を見出した(Jpn. J. Appl. Phy
s.、38巻、454−456頁、1999年)。この
方法によれば、原料は安価であり、かつ大きな成長速度
を達成でき、容易に酸化亜鉛薄膜を形成することができ
るのであるが、得られた酸化亜鉛薄膜が低温では励起子
発光を示すものの室温では励起子発光を示さないという
問題点があった。
【0007】本発明は、安価な原料から簡便な方法で得
られ、室温での励起子発光を示し、発光ダイオードやレ
ーザーダイオードなどに用いることができる有用な酸化
亜鉛薄膜を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、大気圧下
で、安価なヨウ化亜鉛を用いてエピタキシャル成長させ
ることにより、室温でも励起子発光がある酸化亜鉛薄膜
が得られることを見出した。ここでいう励起子とは、半
導体や絶縁体の中で電子と正孔の対が結合して、1個の
中性粒子を形成しているものをいい、励起子発光とはこ
れらの励起子が再結合したときに観察される発光をい
う。この励起子発光は酸化亜鉛(ZnO)の場合4Kで
は369nm付近に、また室温では381nmに付近に
観察される。
【0009】本発明は、亜鉛源としてヨウ化亜鉛を用い
て大気圧下で基板上にエピタキシャル成長させてなる酸
化亜鉛エピタキシャル薄膜であり、この酸化亜鉛エピタ
キシャル薄膜は、25℃において15mWのHe−Cd
レーザー(325nm)で励起したとき、紫外部に励起
子発光を示すものであり、この紫外部の励起子発光の波
長が381nmである薄膜である。
【0010】また、本発明の上記の酸化亜鉛エピタキシ
ャル薄膜の製造方法は、大気圧下において、亜鉛源とし
てヨウ化亜鉛を気化し基材上に導入する工程と、導入さ
れたヨウ化亜鉛を酸素と反応させて基板上に酸化亜鉛を
堆積させる工程とを含むことを特徴とする。さらに、本
発明の製造方法は、上記工程において、酸化亜鉛エピタ
キシャル薄膜を形成する前に、さらに、基材上にバッフ
ァー層を設ける工程を行い、ついでこのバッファー層の
上に酸化亜鉛エピタキシャル薄膜を成長させることを特
徴とするものである。
【0011】上記の方法において、ヨウ化亜鉛と反応し
酸化亜鉛を生成するための酸素は、種々の酸素源からの
ものが使用でき、これらの酸素源としては、酸素ガス
(O )のほかO、NO、HOなどが挙げられ
る。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の大気圧下でのエピタキシ
ャル成長は、亜鉛原料としてヨウ化亜鉛(ZnI)を
用い、これを加熱により蒸発させ、窒素などのキャリア
ガスで基材上へ輸送し、基材上で酸素ガスと反応させる
ことにより酸化亜鉛薄膜としたものである。ヨウ化亜鉛
の加熱源としては、高周波誘導加熱ヒーターや抵抗加熱
ヒーターなどのヒーターを用いることができる。
【0013】本発明では、原料であるヨウ化亜鉛を加熱
することにより、その一部を気相として成長部に供給す
るが、供給量は加熱温度とキャリヤガス流量により調節
することができる。一般に、加熱温度は、ヨウ化亜鉛の
蒸気圧を考慮し、300〜450℃程度である。
【0014】また、原料の一部を成長部に供給するため
のキャリアガスとしては、不活性なガスであればよく、
窒素、アルゴン、ヘリウムなどを用いることができる
が、窒素が安価という点で好ましいものである。
【0015】亜鉛原料としては、レーザMBE法のター
ゲットとして用いるような高純度(例えば、3Nや5
N)である必要はなく、99.5%程度の純度があれば
充分であるが、純度が高ければ高いほど結晶性や結晶品
位を向上させることができる。
【0016】一方、ヨウ化亜鉛と反応し酸化亜鉛を形成
するための酸素は、ガスとしてキャリヤガスとともに成
長部に供給する。供給する酸素の量が多いと、得られる
酸化亜鉛の膜は成長速度が速く、結晶性も向上する傾向
を示し、逆に酸素の量が少ない場合にはその逆となる傾
向を示す。これは、酸化亜鉛(ZnO)がOがぬけやす
く、Zn過剰になりやすい性質に起因すると考えられ
る。従って、供給する酸素の量はヨウ化亜鉛に対して、
過剰に供給することが好ましく、この量を酸素分圧とし
て表せば、蒸発させるヨウ化亜鉛の量により異なるが、
一般に、0.1〜0.3atm程度の量となる。
【0017】本発明で使用される基材としては、サファ
イア、シリコンなどが挙げられる。これらの基材は加熱
され、一定の成長温度に保たれる。また、原料ガスの流
れに対する基材の向きは、原料ガスの流れに平行であっ
ても、垂直であってもよく、さらにある角度をもって配
置されていてもよい。
【0018】また、基材上への酸化亜鉛のエピタキシャ
ル成長は、基板に直接成長させてもよいが、基板上にバ
ッファー層を設け、この上にさらに酸化亜鉛エピタキシ
ャル層を成長させることにより、エピタキシャル層の結
晶性が良くなり、励起子発光強度がさらに大きくなり、
好ましい結果が得られる。
【0019】このようなバッファー層は、例えば、比較
的低温で基材上に酸化亜鉛を成長させたアモルファス酸
化亜鉛をアニールして得ることができるし、あるいは、
他の物質、例えば、GaNなどを前もってサファイア基
材上に形成することによっても得ることができる。バッ
ファー層は、格子不整合差の緩和に寄与するもので、サ
ファイア、GaNおよびZnOは同じ六方晶であり、こ
の場合格子定数は「サファイア>GaN>ZnO」とな
る。
【0020】実際、サファイア基材上に、500℃で酸
化亜鉛を堆積させアニールして得た50nmのアモルフ
ァス酸化亜鉛のバッファー層を設けた場合に、エピタキ
シャル層の結晶性の程度を示すX線回折ピークから求め
られる半値幅(FWHM)が、4.0分となり、バッフ
ァー層を設けない場合の同条件で成長させたもののFW
HMが約23分であったことから、両者を比較すること
によりバッファー層を設けた場合に酸化亜鉛エピタキシ
ャル層の結晶性が向上していることがわかる。なお、F
WHMはこの値が小さいほどシャープなピークであり、
結晶性が良いことを示すものである。
【0021】このようにバッファー層の存在によりさら
に結晶性が良くなる理由としては、(1)格子不整合度
の緩和、(2)熱膨張係数差によるクラックの抑制、
(3)成長初期過程における横方向(基板方向)成長の
促進など種々の理由が考えられるが、実験の結果からバ
ッファー層の厚さとしては、25〜75nm程度が好ま
しいことがわかった。
【0022】次に、本発明の大気圧下でのエピタキシャ
ル成長の一例として、キャリヤガスに窒素を用いた場合
について以下に説明する。本発明で用いた気相エピタキ
シャル成長装置は、水平型の石英反応器であり、水平型
の温度プロフィールを有している。装置の概略を図1の
(B)に、(A)に装置の温度プロフィールを示す。図
1に示すように、反応装置1は原料供給部2と成長部3
とからなり、それぞれ所定の温度に保持されている。原
料供給部は通常300〜450℃の間(380℃の場合
を図示)に加熱され、ここで亜鉛原料のヨウ化亜鉛をソ
ースボート4からその一部が気化し、これは左側から供
給される窒素により成長部に運ばれる。一方、酸化物を
形成するための酸素は、所定の分圧をもって、窒素とと
もに装置内の成長部に導入される。
【0023】成長部は、通常、通常酸化亜鉛の成長温度
である500〜850℃の間に加熱され、基材5となる
サファイアも同温度で保持されている。そして、成長部
に供給されたヨウ化亜鉛と酸素とが反応し、酸化亜鉛を
生じサファイア(0001)表面上に吸着・成長し、エ
ピタキシャル層を形成する。装置の右側から導入される
窒素は(1)成長部に滞流状態を作り反応を促進する、
(2)所定の排気口にガスを誘導するためのものであ
り、装置内の全圧力は大気圧に保たれている。反応後の
ヨウ素や未反応のヨウ化亜鉛、酸素はキャリアガスの窒
素とともに排気口より排出される。なお、図中のロッド
6は石英の棒で、サファイア基板をその上に乗せて出し
入れするためのものである。典型的な反応条件を表1に
示す。なお、表中「sccm」は「Standard cubic cen
timeter per minute」のことである。
【0024】
【表1】 エピタキシャル層の成長速度は、温度とともに増加し、
最大3μm/hの成長速度が得られた。この成長速度は
通常のレーザーMBE法などによる成長速度である0.
2μm/h程度に比べ、15倍ほど大きな成長速度が得
られている。
【0025】また、このようにして得られた本発明の酸
化亜鉛エピタキシャル層は、不純物を含まず、高い結晶
性を有し、室温でも励起子発光を示すものである。従っ
て、得られた薄膜は、i−ZnO、n−ZnOやp−Z
nOなどを積層することにより、レーザーダイオード
(LD)や発光ダイオード(LED)などの素子として
用いることができる。
【0026】
【実施例】本発明を実施例を用いてより詳細に説明す
る。
【0027】実施例1 図1に示す装置で、図1の左上から酸素(純度99.9
%以上)を流量180sccmおよび窒素ガス(純度9
9.9%以上)を流量20sccmで流し、また、ヨウ
化亜鉛(純度99.5%)8gをソースボートに入れ、
380℃に加熱するとともに、図1の左側から窒素ガス
を流量100sccmで流し、さらに、図1の右側から
窒素ガスを300sccmで流し、全流量を600sc
cmにし、全圧を1atmに調整した。このとき、酸素
の分圧は3.0×10−1atmであり、ヨウ化亜鉛の
分圧は、1.2×10−4atmであった。基材には、
サファイア(0001)(格子不整合度18.3%)を
用い、基材の温度を500〜850℃に設定して、厚さ
3μmの酸化亜鉛エピタキシー薄膜を得た。得られた薄
膜について、二結晶X線回折(DC−XRD)、走査型
電子顕微鏡(SEM)およびHe−Cdレーザー(32
5nm)を用いて励起した場合のフォトルミネセンスを
測定することにより評価した。
【0028】比較例1 実施例1で用いたヨウ化亜鉛の代わりに塩化亜鉛(純度
99.9%)を用い、蒸気圧を考慮し原料供給部の温度
を480℃として、成長部の温度を700〜900℃に
設定し、実施例1と同様の操作を行い、サファイア(0
001)基板上に酸化亜鉛エピタキシャル層を作製し
た。この時の塩化亜鉛の分圧および酸素の分圧はそれぞ
れ、1.3×10−3atm 、3.0×10−1at
mであった。得られた薄膜を実施例1と同様に評価し
た。
【0029】次に、実施例1および比較例1で得られた
酸化亜鉛エピタキシャル層について説明する。まず、本
発明で得られた酸化亜鉛エピタキシャル層の一例とし
て、成長温度を750℃とした場合の、X線回折(XR
D)の結果を図2に示す。測定は、「RIGAKU R
INT 2000」を用いて行い、測定条件は、表2に
示すとおりである。
【0030】
【表2】 図2に示すX線回折プロフィールによれば、六方晶Zn
O層の(0002)に対する強い回折ピークが2θ=3
4.4°にあり、成長した層は六方晶系の構造を有して
いることがわかる。2θ=41.8°にみられるピーク
はサファイア基板の(0006)回折ピークである。な
お、比較例1として行った塩化亜鉛を用いた場合も、全
く同じパターンを示していた。
【0031】また、エピタキシャル膜では基板面上の特
定の成長面が配向するので、ある特定面のみのピークが
強く表れる。本発明ではサファイア(0001)基板上
にZnO(0001)を成長させているので、ZnO
(000x)のピークが強く表れることが期待され、現
実にZnO(0002)のピークが強く表れていること
から、得られた酸化亜鉛薄膜は、c軸配向のエピタキシ
ャル成長を示すことがわかる。
【0032】次に、各温度で成長した酸化亜鉛層の二結
晶X線回折(0002)のピークより半値幅(FWH
M)求め、各成長温度に対してプロットした結果を、比
較例1の場合とともに図3に示した。図3によれば、結
晶性の程度を示す半値幅(FWHM)は成長温度の増加
とともに減少し、次いで再び増加する傾向が認められ
た。また、比較例1(塩化亜鉛の系)では成長温度90
0℃で最低値23.3分であるのに対し、実施例1(ヨ
ウ化亜鉛の系)では、750℃において20.2分とい
う値であり、本発明のヨウ化亜鉛を用いる系が、塩化亜
鉛を用いる系に比べ150℃低温で結晶性の優れたZn
O薄膜を作製できたことがわかる。
【0033】また、各成長温度における成長速度を走査
型電子顕微鏡(SEM)の断面写真の膜厚から算出し、
図4に示した。測定には「SIMAZU SUPERS
CAN−220」を用いた。図4によれば、ヨウ化亜鉛
を用いる系では、成長温度500℃から結晶化し始め、
850℃で3μm/hの値を示し、全体的にヨウ化亜鉛
を用いる系のほうが、塩化亜鉛を用いる系に比べ速い成
長速度が得られ、かつより低温でエピタキシャル成長を
行えることがわかった。また、グラフから明らかなよう
に、ZnI系およびZnCl系とも傾きは同じであ
り、この傾きから求めた活性化エネルギーは13.6k
cal/molであった。一般に、気相成長において、
活性化エネルギーが通常10〜18kcal/mol程
度の範囲にあれば、この反応は表面反応律速に支配され
ているということができる。
【0034】以上のことから、亜鉛原料としてZnI
を用いることにより、ZnClを用いた場合に比べ、
より低温で、結晶性の優れた酸化亜鉛エピタキシャル薄
膜が得られることがわかった。
【0035】次に、得られた酸化亜鉛エピタキシャル層
の励起子発光を調べるために、この酸化亜鉛薄膜に15
mWのHe−Cdレーザー(325nm)を照射し、励
起した時のフォトルミネセンスを測定した。測定には日
本分光社製の分光器(型番TASCO−CT−500C
S)を用いて、20K〜室温下で測定を行った。測定条
件を表3に示す。
【0036】
【表3】 以下の説明では、一連の実施例と比較例とにおいて、最
も結晶性のよかったエピタキシャル薄膜同士について比
較しながら説明する。得られた結果を図5〜図8に示し
た。
【0037】図5は、比較例の塩化亜鉛を用いた系(成
長温度:900℃、成長速度:2.15μm/h、FW
HM:23.3分)で得られた酸化亜鉛薄膜の20Kで
測定した紫外域から可視光域の低温フォトルミネセンス
スペクトルであり、図6は、実施例のヨウ化亜鉛を用い
た系(成長温度:750℃、成長速度:1.62μm/
h、FWHM:20.2分)で得られた酸化亜鉛薄膜の
20Kで測定した紫外域から可視光域の低温フォトルミ
ネセンススペクトルである。また、図7は、室温で測定
した紫外域から可視光域のフォトルミネセンススペクト
ルを示している。なお、測定は、すべて膜厚約2μmに
統一して行った。
【0038】図5に示した塩化亜鉛系のものは、バンド
端発光が約370.0nmにある。しかし、このピーク
は110Kの測定温度までは確認できるが、図7に示す
ように室温では認められない。一方、図6に示したヨウ
化亜鉛系のものも20Kで同じようにバンド端発光が約
370.0nmにあるが、図7に示すようにこのピーク
は室温でも観察される。そして、ヨウ化亜鉛の系では、
この370nmのピークは、20Kで測定されたピーク
に比べ、ピークが長波長側にシフトし、線幅が拡がって
いる。この発光は自由励起子による発光であると思われ
る。両者の薄膜のFWHMはほぼ同等のものであるにも
かかわらず、室温においてその発光特性は大きく変化し
ている。これは、後述する理由によるものと考えられ
る。なお、両者とも室温において可視領域の発光ピーク
は、20Kの場合と同様認められなかった。
【0039】ZnOの光学データとして、極低温(4
K)におけるバンドギャップが3.42eVであり、極
低温(4K)における励起子エネルギーが0.06eV
であることが知られている。一般に、励起子発光は、バ
ンドギャップエネルギーから励起子の結合エネルギーを
マイナスしたエネルギーに相当する波長の光を放出する
とされている。従って、バンド間発光の場合は、124
0/3.42=362.6nmとなり、励起子発光で
は、1240/(3.42−0.06)=369.0n
mとなる。このことから、上記の370.0nmに観測
された発光は励起子発光による考えられる。
【0040】また、一般に、酸化亜鉛薄膜では、可視領
域に不純物および/または格子欠陥の一つであるZn
O:Znによる深い準位の発光が観察されるが、塩化亜
鉛およびヨウ化亜鉛を用いて製造した酸化亜鉛の双方と
も、スペクトルを100倍に拡大して測定しても可視領
域の発光は認められなかった。これは、得られた薄膜が
高い光学的特性を有することを示している。
【0041】図8は、上記の370.0nm付近の励起
子発光部の20Kにおける拡大フォトルミネセンススペ
クトルである。塩化亜鉛の系とヨウ化亜鉛の系とを比較
すると、発光ピークの位置が微妙に異なり、ヨウ化亜鉛
の系の場合が僅かに低波長側(368.9nm)にあ
る。ピークの波長から見積もると、ヨウ化亜鉛の系での
ピークはIであり、塩化亜鉛の系でのピークはI
あると思われる。これらはいずれも中性ドナーやアクセ
プターによる束縛励起子発光である。しかし、図8から
明らかなように、ヨウ化亜鉛の系では、D−A対(D-A
pair)や励起子発光のLOフォノンレプリカが観察され
ていない。
【0042】従って、ヨウ化亜鉛の系のみで室温におけ
る励起子発光が観測された理由として、このような低温
におけるフォトルミネセンススペクトルの相違、すなわ
ち、ヨウ化亜鉛の系では、ゼロフォノン線のみが観察さ
れるのに対し、塩化亜鉛の系ではその他のピークが存在
するという事実に起因するものと思われる。言い換えれ
ば、ヨウ化亜鉛を原料として調製した酸化亜鉛エピタキ
シャル層は、極めて純度の高い、光学特性に優れたもの
が得られるものであり、これは、塩化亜鉛の系では塩素
(Cl)が微量に混在するのに対し、ヨウ化亜鉛の系で
はヨウ素(I)が混在していないことに起因すると理解
することができる。
【0043】実施例2 酸化亜鉛エピタキシャル層を形成する前に、基材上に種
々の厚さのバッファー層を設け、バッファー層の効果を
調べた。バッファー層は、500℃で酸化亜鉛を堆積さ
せアニールすることによって作製し、その上に酸化亜鉛
エピタキシャル層を成長させ、得られたエピタキシャル
層について、それぞれDC−XRDにより測定し、FW
HMを求めた。結果を図9に示した。図9によれば、酸
化亜鉛エピタキシャル薄膜の結晶性は、バッファー層の
厚さにより変化し、50nmのとき最も結晶性がよいこ
とがわかる。なお、結晶性が良いものは、励起子発光強
度も大きかった。
【0044】
【発明の効果】本発明により、亜鉛源としてヨウ化亜鉛
を用い、真空装置を使わない簡便な方法により、レーザ
ーダイオードや発光ダイオードに有用な室温で励起子発
光が可能な酸化亜鉛エピタキシャル薄膜を提供すること
ができた。
【0045】また、本発明の酸化亜鉛エピタキシャル薄
膜を製造するための方法は、ヨウ化亜鉛を原料とする大
気圧気相エピタキシャル成長法であり、この方法は、従
来薄膜が得られていたレーザーMBE法やプラズマMB
E法に比べ、(1)大気圧下で行うことでき高価な真空
装置が不要であり大がかりな装置は必要としない、
(2)薄膜の成長速度が極めて大きく、量産性にも優れ
る、(3)高純度の原料は必要なく、簡単かつ安価に作
製できる、(4)しかも、結晶性が高く室温で励起子発
光を示す、高純度で光学特性のよい薄膜が得られるな
ど、の種々の特徴を示すものである。従って、この方法
は紫外発光ZnOの作製に、極めて有用な方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化亜鉛エピタキシャル成長を行うた
めの装置の概略(B)および同装置の温度プロフィール
(A)を示す図である。
【図2】ヨウ化亜鉛を原料として用いて作製した酸化亜
鉛エピタキシャル層の二結晶X線回折(DC−XRD)
のスペクトル図である。
【図3】エピタキシャル成長温度と、半値幅(FWH
M)との関係を示すグラフである。
【図4】エピタキシャル成長温度と、エピタキシャル層
の成長速度との関係を示すグラフである。
【図5】塩化亜鉛を用いて作製した酸化亜鉛薄膜の20
KにおけるHe−Cdレーザー励起によるフォトルミネ
センススペクトルを示す図である。
【図6】ヨウ化亜鉛を用いて作製した酸化亜鉛薄膜の2
0KにおけるHe−Cdレーザー励起によるフォトルミ
ネセンススペクトルを示す図である。
【図7】ヨウ化亜鉛および塩化亜鉛を用いて作製した酸
化亜鉛薄膜の室温におけるHe−Cdレーザー励起によ
るフォトルミネセンススペクトルを示す図である。
【図8】ヨウ化亜鉛および塩化亜鉛を用いて作製した酸
化亜鉛薄膜の20KにおけるHe−Cdレーザー励起に
よる励起子発光部の拡大フォトルミネセンススペクトル
を示す図である。
【図9】バッファー層の厚さと、半値幅(FWHM)と
の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 反応装置 2 原料供給部 3 成長部 4 ソースボート 5 基材 6 ロッド 7 炉
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01S 5/327 H01S 5/327

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛源としてヨウ化亜鉛を用いて大気圧
    下で基板上にエピタキシャル成長させてなる酸化亜鉛エ
    ピタキシャル薄膜。
  2. 【請求項2】 25℃において15mWのHe−Cdレ
    ーザー(325nm)で励起したとき、紫外部に励起子
    発光を示す請求項1記載の酸化亜鉛エピタキシャル薄
    膜。
  3. 【請求項3】 紫外部の励起子発光の波長が381nm
    である請求項2に記載の酸化亜鉛エピタキシャル薄膜。
  4. 【請求項4】 大気圧下において、亜鉛源としてヨウ化
    亜鉛を気化し基材上に導入する工程と、導入されたヨウ
    化亜鉛を酸素と反応させて基板上に酸化亜鉛を堆積させ
    る工程とを含む酸化亜鉛エピタキシャル薄膜の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 さらに、基材上にバッファー層を設ける
    工程を含む請求項4記載の酸化亜鉛エピタキシャル薄膜
    の製造方法。
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