JP4152230B2 - 複合基材の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ガラスクロス、不織布等の繊維布からなる長尺シートに溶融した樹脂もしくは溶剤で希釈した樹脂ワニス等のマトリックス樹脂を塗布して作製する複合基材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラスクロス等の繊維布に樹脂含浸を行って塗工布を作製する両面同時塗布は、マトリックス樹脂の液溜槽が基材搬送路中に設置され、基材が液槽内に浸漬することによって塗布液を両面に付着させるディップ方式が一般的である。液溜槽上空には一定のクリアランスを維持した状態で平行に配置された2本のスクイズロールが設置されており、塗布液の付着した基材がロール間隙を通過することにより余分な液をかき落とされ、塗布液付着量の計量および塗布膜の厚みを制御が行われる。通常、これら塗工布は乾燥炉により半硬化な状態でプリプレグとして作製され、このプリプレグを構成要素とした基板を加圧成形により製造する。
【0003】
ディップ方式の塗布装置には基材を液中に浸漬することが困難であるという理由から、流動性の悪い高粘度の塗布液よりも低粘度の塗布液の方が適していると言われている。また塗布液付着量の基材表裏バランスを制御するための機構を有さないため、塗布膜厚が厚膜である製品仕様に対しては均一な塗布が困難であった。そのため近年ではダイ等を用いた両面塗工装置が開発され、吐出量の制御による塗工方式が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ガラスクロス、不織布等の繊維布を基材として複合基材を作製する場合には、塗布膜厚、塗布表面の平滑性とともに繊維間への樹脂含浸性が重要視される。特に複合基材を表示素子用基板の構成要素として使用する場合においては、基材に内包された気泡は製品性能として致命的な欠陥となるために十分な脱泡処理を行う必要がある。ディップ方式の塗布では液溜槽内に浸漬させるため含浸時間が長く比較的含浸性も良好である。ダイ方式の塗布においてはダイ吐出口のリップ幅においてのみ樹脂を含浸させることが可能であるため含浸時間が非常に短く、さらに基材両面から塗布されることにより基材内部の空気は逃げ場を失い、繊維間に介在する気泡が十分に抜けない可能性が高いと考えられる。
【0005】
ダイを用いた両面型塗工装置は種々開発が進められているが、繊維布を主用途としたものでないため上述のような問題点は顕在化していない。例えば特許文献1において両面ダイ方式に関する記述がされているが、塗布液の適応粘度範囲および基材に付着する塗布液量の制御が開発主目的であり含浸性に関しては特に問題視されていない。特許文献2では網状もしくは多孔質の金属シートに対する含浸性が実施例として記載されているが、布帛については孔のウェブとして記述されていることから繊維布等にたいしては含浸性に関する考慮されていないと思われる。
【0006】
また、ダイに比較的近い形状をもつノズルを使用した特許文献3では溶剤もしくは希釈した樹脂ワニスを予め塗布しておくための予備含浸機構が設置されており、ノズル単体においての樹脂含浸に対する補助をおこなっておいる。このような予備含浸機構の設置は含浸性を向上させるための一般的な手法であり、ディップ方式においても厚みの厚い基材に対してしばしば用いられる。このような多段の含浸方式に関しては、含浸後の基材が溶剤を揮発させることなくガイドロールに接触しなければならないため、ロール面に樹脂が付着しべたつきの原因となる。また、スクイズロール等はドクターバー等の付着樹脂除去機構を設置しているが、近接するダイのリップ間にそういった機構を設けることは空間的に困難であり、リップへの樹脂付着により塗布表面を平坦化できない問題点を生じる。予備含浸に溶剤を使用する場合には上述のような問題点は生じにくいが、液の循環機構を有するディップ式と比較し、ダイ方式は吐出した液を全量付着させるワンパス系であるため基材のレジン量にムラを生じる可能性が高い。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−314647
【特許文献2】
特開平10−34050
【特許文献3】
特開2001−122992
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
(1)繊維布から成る基材に、溶融した樹脂もしくは溶剤で希釈した樹脂ワニスを塗布して作製する複合基材の製造方法であって、基材搬送路の両側に対向して配置した一対のダイより液量を制御しながら塗布液を吐出することにより繊維布に両面同時塗布を行うことを特徴とする複合基材の製造方法であり、ダイ上型のリップ部が下型リップ部よりも突出し、その角度が基材搬送路に対し垂直な面から基材搬入側に10〜80°傾斜した複合基材の製造方法、
(2)前記一対のダイの吐出方向が基材搬送路に対し垂直な面から基材搬出側に5〜45°傾けた(1)の複合基材の製造方法、
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について図を用いて詳細に説明する。図1は本発明に使用する両面同時塗布装置の一例を示す。装置の主な構成としては縦方向に搬送経路をもつ繊維布(基材)(1)と基材搬送路を介して設置された左側ダイ(2)および右側ダイ(3)、ダイに対する基材の位置調整を行うガイドロール(13)より構成されている。各ダイは上型(5)と下型(12)を組み合わせて構成されており、上型、下型間に塗布液を溜めるマニホールド部(6)と流路であるランド部(7)、吐出口となるリップ部(4)を形成する。また、各ダイにはダイの位置設定を行うための設置手段(11)と基材搬送路に対して角度を設定する角度保持手段(10)、内圧を測定するための内圧測定手段(8)、塗布液を供給するための液供給手段(9)が各々に設置されている。
【0010】
次に本発明の原理を示す。図1において塗布液が液供給手段(9)により各ダイ内部に供給されると、内部に形成されたマニホールド部(6)に溜まる。塗布液はこのマニホールド部にて幅方向に圧力分布を均等化されてランド部(7)を通過し、リップ部(4)から吐出され、基材(1)の表面に塗布される。
【0011】
塗布部(ダイリップ間)に搬入される基材は繊維間の空間に空気を挟み込んでいる。対向するダイの吐出流路(ランド部(7)の方向)が図2のように基材搬送路に対して垂直である場合、ダイリップから吐出した塗布液は図2(a)の矢印のように流れる。このような流れにおいてはリップの基材搬入側に加圧ピークをとる圧力分布となり、基材に樹脂ワニスが浸透する前に圧力がかかることとなる(図2(b))。そのため、樹脂が基材内部に浸透したときには圧力が低下しており、基材内部の空気は内部に残留する可能性がある。この傾向はダイの吐出流路を基材搬入側に傾けた場合に顕著に生じる。
【0012】
ダイの吐出流路を基材の搬出側に傾けた場合には、ダイリップから吐出した塗布液は図3の(a)の矢印のように流れる。この際、塗布液は上型リップ部4aに沿って流れ、基材への圧力分布はリップ部の基材搬出側にピークをもつ分布となる(図3(b))。この際、基材表面に塗布された塗布液は基材内部に浸透するに従って加圧されるため、基材内部に介在する気泡は低圧側である基材搬入側に向けて逃げていくこととなる。そのため、基材内部に残留する気泡はなく、含浸性の良好な複合基材を得ることが可能となる。
【0013】
本発明で用いられる樹脂はプリント基板や表示素子用基板に用いられるものであればとくに限定はしないが、耐熱性の観点からTg150℃以上であることが好ましい。具体的にはシアネート樹脂、ビスマレイミドを構成成分として含む熱硬化型のポリイミド樹脂、多官能エポキシ樹脂などを挙げることができる。なかでも、シアネート樹脂が特に好ましい。シアネート樹脂としては、ビスフェノールジシアネート、ジ(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、4,4’−チオジフェニルシアネート、2,2’−ジ(4−シアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビスフェノールEジシアネート、フェノール/ジシクロペンタジエン共重合体のシアネート、フェノールノボラック型シアネート樹脂、クレゾールノボラック型シアネート樹脂、及び/又はそのプレポリマーを用いることができる。中でも耐熱性が高く線膨張係数が低いことからノボラック型シアネート樹脂及び/又はそのプレポリマーが好ましい。ここでいうノボラック型シアネート樹脂とは任意のノボラック樹脂と、ハロゲン化シアン等のシアネート化試薬とを反応させることで得られるもので、またこの得られた樹脂を加熱することでプレポリマー化することが出来る。
本発明におけるノボラック型シアネート樹脂の数平均分子量は、250未満であると、架橋密度が小さく、耐熱性や線膨張係数に劣る場合があり、900を超えると、架橋密度が上がりすぎて反応が完結できない場合があるため、260〜900であることが望ましく、より好ましくは300〜600である。また、プレポリマーを用いる際には、上記数平均分子量のノボラック型シアネート樹脂をメチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等の溶媒に可溶な範囲でプレポリマー化して用いることが望ましい。本発明で言うところの数平均分子量は、東ソー株式会社製HLC−8120GPC装置(使用カラム:SUPER H4000、SUPER H3000、SUPER H2000×2、溶離液:THF)を用いて、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー報で測定した値である。
【0014】
本発明の樹脂は、シアネート樹脂に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の他の熱硬化樹脂、フェノキシ樹脂、溶剤可溶性ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルスルホン等の一種類以上の熱可塑性樹脂を併用した樹脂組成物であってもよい。特にエポキシ樹脂の併用は、耐薬品性を悪化させずに吸水率を低減できるので好ましい。併用するエポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂などが挙げられ、特にジシクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。ここでアリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に1つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいい、キシリレン型エポキシ樹脂やビフェニレンジメチル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
併用するエポキシ樹脂の量はシアネート樹脂100重量部に対して10〜200重量部が好ましい。10重量部未満であると添加効果が発現されにくく、200重量部を超えるとシアネート樹脂の耐熱性が損なわれる場合がある。
【0015】
本発明でシアネート樹脂を用いる場合には、樹脂組成物に硬化促進剤を添加することが好ましい。硬化促進剤としては、公知のものを用いることができ、例としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール、フェノール樹脂等のフェノール化合物および有機酸等、またはこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でもフェノール樹脂が硬化性、イオン性不純物が少ない等の点で好ましい。本発明で硬化促進剤の配合量は使用条件に応じて適宜変更することが可能であるが、有機金属塩の場合はシアネート樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部、イミダゾール類の場合は0.05〜10重量部、フェノール樹脂の場合は0.5〜50重量部の範囲であることが好ましい。これらの範囲より少ないと硬化が遅くなる傾向があり、これらの範囲より多いと硬化が促進されすぎることによる樹脂組成物およびプリプレグライフの低下、硬化促進剤に由来する揮発成分による周囲汚染等の悪影響がでる恐れがある。
【0016】
本発明で用いられる繊維布は特に限定されるものではなく、種々の無機系または有機系の繊維布を用いることができる。 その具体例としては、 Eガラス(無アルカリガラス)、Sガラス、Dガラス、クォーツ、高誘電率ガラス等のガラスクロス、ケブラー(商品名:デュポン・東レ・ケブラー社製)、テクノーラ(商品名:帝人社製)、コーネックス(商品名:帝人社製)に代表されるポリ -p-フェニレンフタルアミド、ポリ -m-フェニレンフタルアミド、p-フェニレンフタルアミドおよび3,4'- ジフェニルエーテルフタルアミドの共重合体等からなる芳香族ポリアミド系繊維布やアラミド系繊維布、ポリエステル繊維布、ナイロン繊維布、ポリベンザゾール繊維布、炭素繊維布等が挙げられる。 好ましくはガラスクロスである。織布フィラメントの織り方についても特に限定されるものではなく、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り等の構造を有する織物でも良く、好ましくは平織りである。 また、織布に限定されるのではなく不織布であってもかまわない。繊維の厚みも特に限定されるものではないが、30〜150μmであることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられる繊維布は、樹脂成分との濡れ性を改善する目的で各種のシランカップリング剤、ボランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等の表面処理剤で処理されても良く、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、滑剤、耐熱剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料等、光安定剤等の成分を配合することができる。
本発明のプリプレグを用いることによりプラスチック基板(積層板)を得ることができるが、このプリプレグの1枚又は複数枚を加熱成形して樹脂層のみの積層板としても良いし、あるいは、銅箔等の金属板とともに加熱成形することにより、金属層と樹脂層から成る積層板とすることもできる。また、エッチング処理等により、金属板の一部または全てを剥離して用いても良い。
【0019】
【実施例】
以下に本発明の一実施例を説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(装置例)
図1に示すガラス繊維基材の製造装置を用い、以下の実施例を行なった。各ダイの角度保持手段(10)にはテーパー付のライニングを用い、設置台との間に挟み込むことによりダイ角度を調整した。ダイ上型は先端リップ部のみを取替可能な構造としており、リップ先端角度を変えた部材に変更することが可能である。
(実施例)
ダイ吐出角度を図4(a)に示すように基材搬送路に対し垂直な面から15°基材搬入側に傾け、ダイ上型リップは図4( b )に示すように同面から60°傾斜している部材を使用した。樹脂ワニスはノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製PT60、数平均分子量560)100重量部及びフェノールノボラック樹脂(住友デュレズ製PR−51714)2重量部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー製A−187)1重量部、球状溶融シリカ(株式会社アドマテックス製SO−25R 平均粒径0.5μm )150重量部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌することにより得たものを使用した。また、基材は厚み53μmのガラスクロス(日東紡績製、WEA-1080)を使用した。塗布後の基材は乾燥炉にて溶剤を揮発させ、半硬化状態のプリプレグを作製した。
得られたプリプレグは良好な外観が得られた。プリプレグの断面を顕微鏡観察したところ、ガラスクロス上の表裏樹脂層はともに10μmと表裏の厚みも均一であり、表面粗さRaも1.2μmのものがえられた。また、透過照明を用いた顕微鏡観察により内部に存在する気泡を確認したところ、直径1μm以下の気泡が2〜3個/500mm□で存在した。
(比較例)
実施例と同じ樹脂ワニス、基材を使用し、ダイを図5のように配置した。このダイ配置で複合基材を作製したところ、塗布直後に塗布表面に気泡跡と思われるクレーター状の凹凸が無数に発生した。基材内部に残留した気泡が樹脂表面まで到達して発泡したと考えられ、この配置設定では含浸性は得られないと考えられた。
【0020】
【発明の効果】
本発明の方法により繊維布等の基材に溶融した樹脂もしくは樹脂ワニスを塗布する塗工布の製造方法において、塗布膜厚の表裏バランス、塗布膜厚、基材への樹脂含浸性を向上させる製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を用いた両面塗布装置の一例を示す断面図
【図2】基材に対し垂直に配置した場合の樹脂流れと圧力分布を示す図
【図3】基材に対し角度をつけて配置した場合の樹脂流れと圧力分布を示す図
【図4】実施例におけるダイ角度設定を示す図であり、(a)は基材搬送路に対するダイ吐出方向の角度を示す図、(b)はダイ上型のリップ部が下型リップ部よりも突出している角度を示す図である。
【図5】両面塗布装置比較例の一例を示す図であり、基材に対しダイをオフセットして配置した場合を示す。
【符号の説明】
1 繊維布(基材)
2 左側ダイ
3 右側ダイ
4 リップ部
4a上型リップ部
4b下型リップ部
5 上型
6 マニホールド部
7 ランド部
8 内圧測定手段
9 液供給手段
10 角度保持手段
11 設置手段
12 下型
13 ガイドロール
Claims (2)
- 繊維布から成る基材に、溶融した樹脂もしくは溶剤で希釈した樹脂ワニスを塗布して作製する複合基材の製造方法であって、基材搬送路の両側に対向して配置した一対のダイより液量を制御しながら塗布液を吐出することにより繊維布に両面同時塗布を行うことを特徴とする複合基材の製造方法であり、ダイ上型のリップ部が下型リップ部よりも突出し、その角度が基材搬送路に対し垂直な面から基材搬入側に10〜80°傾斜した複合基材の製造方法。
- 前記一対のダイの吐出方向が基材搬送路に対し垂直な面から基材搬出側に5〜45°傾けた請求項1記載の複合基材の製造方法。
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