JP4151228B2 - 高耐食性燃料タンク用鋼板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料タンク用鋼板に関し、より詳しくは抵抗溶接性、特にタンク外面での抵抗溶接性及びプレス加工性に優れるとともに、耐食性、特にアルコールあるいはこれと蟻酸の混合されたガソリンに対する耐食性にも優れた高耐食性燃料タンク用鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料タンク用鋼板には、燃料及び外部環境に対する耐食性、溶接性、プレス加工性など種々の性能に優れることが要求される。まず始めに、燃料に対する耐食性について記述する。
【0003】
北米、中南米、欧州等では、エネルギー対策として石油依存率の低減を国策とする国が多い。そのため、これらの国では、自動車用新燃料としてアルコール(メタノール、エタノール)そのもの、あるいはこれらをガソリンに5〜20%混合した、いわゆるガソホールの導入比率が年々拡大の傾向にある。
【0004】
しかしながら、これらのアルコール系燃料は、(a)水を含みやすい、(b)水混入量の増加や温度の低下によって層分離しやすい、(c)酸化劣化して有機酸を生成する可能性があり(例えば、メタノールの場合は蟻酸、エタノールの場合は酢酸へと変化する。)、下層にアルコール及び/又は有機酸と水を主成分とする分離層を生じる、(d)メタノールを40%以上含むアルコールとガソリン混合物は、現行タンク材料の主流であるターン(Pb−Sn合金)めっき鋼板のめっき層を溶解するなど、通常のガソリン燃料に比べて一段と強い腐食性を有している。
【0005】
さらに、自動車の燃料タンク用鋼板には、シーム溶接やスポット溶接によって形成する溶接部に欠陥がないこと、タンクの内外面ともに腐食が発生しないこと、さらには燃料循環系統でフィルターの目詰まりを発生するような浮遊性の腐食生成物が生じないことが要求される。
【0006】
ところで、自動車用の燃料タンク用鋼板としてこれまでに実用化されている鋼板は、例えば、特公昭57−61833号公報に示されるようなPb−Sn合金溶融めっき鋼板や、特公昭53−19981に示されるようなZnめっき鋼板に厚クロメート処理を施したものが使用されている。
【0007】
これらの材料のガソリン、アルコールあるいはアルコール混合ガソリンに対する耐食性(以下「内面耐食性」という。)について見ると、Pb−Sn合金はメタノールに非常に溶解しやすい欠点を有しており、メタノール混合ガソリンに対しては実用化が困難である。
【0008】
一方、電気亜鉛めっき鋼板に厚クロメート処理を施した材料の内面耐食性は、亜鉛の犠牲防食作用により、若干の防錆機能は有する。しかし、この材料は、アルコールやガソリン中で亜鉛の溶出速度が大きく、浮遊性の白色沈殿物が多量に発生し、燃料循環系統でフィルターの目詰まりが発生する。また、亜鉛溶出後は素地鋼の赤錆が発生するという欠点を有し、この材料も燃料タンク用鋼板として不十分なものである。
【0009】
このため、アルコール単独あるいはアルコール混合ガソリン、とりわけ腐食性の強いアルコールと蟻酸の混合されたガソリンに対して優れた内面耐食性を発揮するとともに、タンク外面が外部環境に対しても優れた耐食性(以下「外面耐食性」という。)や、タンク製造工程において優れたプレス加工性及び抵抗溶接性を発揮する高耐食性燃料タンク用鋼板の開発が行われるようになった。
【0010】
例えば、特公平2−18981号公報には、Pb−Sn合金又はSnを主成分とする金属めっき層の上層に金属粉末を含む有機樹脂皮膜を有する鋼板が記載されており、また、特公平2−18982号公報及び特公平3−25349号公報には、亜鉛系めっき層の上層に金属粉末を含む有機樹脂皮膜を有する鋼板が記載されている。
【0011】
上記3つの公報に記載されている前記有機樹脂皮膜は、その有機樹脂中の40〜90%がフェノキシ樹脂で占められているものである。そのため、これらの有機樹脂皮膜を有する鋼板を、ガソリンタンクの材料として用いた場合、その外面側では、フェノキシ樹脂が有する水酸基と金属粉末の親和性が不足するため、プレス加工時に金属粉末が皮膜から脱離することがある。そのため、外面側では、めっきの剥離が生じ、プレス加工性が悪くなる。
【0012】
また、前記ガソリンタンクの内面側では、前記有機樹脂皮膜中に含有させた金属粉末の脱離やめっき層の剥離によってダメージを受けた部分の内面耐食性が悪くなる。さらに、ダメージを受けていないタンクの平面部分も、皮膜中の樹脂と金属粉末の間に腐食液が滞留しやすくなり、内面耐食性が劣る。
【0013】
さらにまた、上記3つの公報においてはいずれも、めっき層の上層に、クロメート又は化成皮膜を介さずに、前記有機樹脂皮膜を直接塗布しているため、この有機樹脂皮膜とめっき層との密着性が不足しており、プレス加工時に前記有機樹脂皮膜が剥離し、有機樹脂皮膜による有機酸や塩素イオンからの遮蔽能が著しく劣化する傾向があり、よって、これらの鋼板は、未だ実用化には無理があるものである。
【0014】
さらに、上掲公報に提案されている鋼板はいずれも、タンク内外面に対応する表面の有機樹脂皮膜が必須成分として硬化剤を含んでおり、このとき、硬化度が高いと、熱溶融しづらく、溶接時のナゲット生成過程における皮膜排除が適正範囲内の電流値では困難になり、高電流値で溶接しなけらばならない場合がある。かかる場合には、電極の損耗が著しく、電極の手入れなしに連続的に溶接することが困難になり、製造ラインの生産性を著しく低下させる。さらに、硬化度が低く未反応硬化剤を含む場合には、その部分の凝集力が低いこと及び未反応物の親水性が高いことなどを理由として、腐食因子(酸、塩素イオンなど)が侵入しやすくなり、タンク内外面の耐食性が低下することとなる。
【0015】
特開昭64−33173号公報には、アルミ、ステンレス、これらの合金をブレンドした金属粉末と本質的にニッケルからなる金属粉末を共に含有したエポキシ系の溶接可能な耐食性コーティング組成物が記載されている。この組成物をガソリンタンク材にコーティングして用いた場合、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂と金属粉末の親和性が前記と同様の理由で不足している。そのためプレス加工時に金属粉末が皮膜から脱離することがある。また、タンクの内外面にこのコーティングを施した場合、共に皮膜の損傷とこれに伴うめっきの損傷により耐食性が悪くなる。また損傷を受けていないタンクの平面部分も、親和性の弱い樹脂と金属粉末の界面に腐食性イオンが侵入しやすいため、タンクの内外面とも耐食性が劣る。
【0016】
また、前述のめっき鋼板、有機被覆鋼板を高電流で溶接した場合、溶接部割れが発生する場合がある。溶接部割れは、実走行において、進展することも考えられるため、その発生を防止する必要がある。
溶接部割れは、溶接電流の適正範囲内においては発生することはないが、適正範囲を超える高電流値で溶接した場合に発生することがある。実際のタンク製造の際は、適正範囲内で溶接するが、複雑な形状の成形品を溶接するため、電極と鋼板の接触の仕方によっては、局所的に高電流密度になる恐れがある。従って、高電流値で溶接した場合も溶接部割れが発生しない、材料を設計する必要がある。
【0017】
そこで、発明者らは抵抗溶接性、プレス加工性、及びタンクの内外面における耐食性の全てを満足する燃料タンク用鋼板を開発するための検討を行ったところ、その鋼板の開発に成功し、既に特許出願して出願公開された特開平10−337805号公報に開示した。
【0018】
特開平10−337805号公報に開示した燃料タンク用鋼板は、鋼板の両表面に、亜鉛系めっき層及び化成皮膜(例えばクロメート皮膜)を順次積層形成し、前記鋼板の、一方の表面側に形成した化成皮膜上には、Al及びNiの金属粉末とアミン変性エポキシ樹脂とを含有する金属粉末含有有機樹脂皮膜を形成し、他方の表面側に形成した化成皮膜上には、水酸基、イソシアネート基、カルボキシル基、グリシジル基及びアミノ基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種の有機樹脂とシリカと潤滑剤を含有するシリカ含有有機樹脂皮膜を形成したものである。
【0019】
そして、発明者らは、上記燃料タンク用鋼板についてさらに検討を行ったところ、上記燃料タンク用鋼板の抵抗溶接性、特に電極がシリカ含有有機樹脂皮膜と直接接触するように鋼板を重ねた状態で連続的に抵抗溶接したときの溶接性は、シリカ含有有機樹脂皮膜中に導電性を有する粒子を含有させるとともに、亜鉛系めっきを施す前の鋼板の組成成分の適正化を図ることによって、さらに向上することを見出した。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、抵抗溶接性及びプレス加工性に優れるとともに、耐食性、特にアルコールあるいはこれと蟻酸の混合されたガソリンに対する耐食性にも優れた特開平10−337805号公報に開示した燃料タンク用鋼板と比べて、特に抵抗溶接性をより一層向上させた高耐食性燃料タンク用鋼板を提供することにある。
【0021】
一方、特開2000-104180号公報に重量%でC:0.0005〜0.0040%、N:0.0005〜0.0040%、P:0.005〜0.020%、B:0.0005〜0.0030%を含有する鋼板に第1めっき層としてZnめっき層、さらに第2めっき層としてNiめっき層を有する燃料容器用表面処理鋼板が開示されている。これも高電流条件での抵抗溶接時の溶接金属表層のクラックを防止する燃料タンク用鋼板を提供するものであるが、上層のNiが貴に、下層のZnが卑となるために下層のZnの溶解が促進され耐食性が大きく劣化することがある。また、異なるめっき層を二層形成しなければならず製造工程が複雑となり、さらにP及びBを狭い範囲で制御しなければクラック防止効果が得られないことから、結果的に製造コストの面で本発明より極めて不利となる。
【0022】
【課題を解決するための手段】
これに対し、発明者らは、シーム溶接やスポット溶接における抵抗溶接性をより一層向上させるために鋭意検討した結果、シリカ含有有機樹脂皮膜中に導電性を有する粒子を含有させるとともに、亜鉛系めっきを施す前の鋼板中にB成分を積極的に含有させることにより、適正電流範囲を超える高電流値で抵抗溶接した場合であっても、溶接部割れが全く発生せず、かつ連続溶接性に優れた燃料タンク用鋼板の開発に成功した。
【0023】
すなわち、この発明は、質量%で、C:0.0007〜0.0050%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.10%、より好適には0.01〜0.05%、S:0.015%以下、Al:0.01〜0.20%、N:0.01%以下、Ti:0.005〜0.08%及びB:0.001〜0.01%を含有する鋼板の両表面に、亜鉛系めっき層及びクロメート層を順次積層形成し、前記鋼板の、一方の表面側に形成したクロメート層上には、Al及びNiの金属粉末とアミン変性エポキシ樹脂とを含有する第1複合皮膜を形成し、他方の表面側に形成したクロメート層上には、アクリル系エマルション樹脂と、シリカと、潤滑剤と、導電性を有する粒子とを含有する第2複合皮膜を形成してなることを特徴とする高耐食性燃料タンク用鋼板である。
【0024】
また、第2複合皮膜の導電性を有する粒子は、金属粒子、金属化合物粒子及びグラファイト粒子の中の1種又は2種以上であることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の燃料タンク用鋼板は、めっき前の被めっき鋼板の組成成分を以下のように限定することが必要である。
【0026】
・B:0.001〜0.01mass%
Bは、この発明における鋼板の組成成分のうち、最も重要な成分の一つであり、特に溶接部割れを有効に防止する作用を有している。溶接部割れを防止するためには、B含有量を0.001mass%以上にすることが必要であるが、0.01mass%を超えると深絞り性が劣化する。このため、B含有量は0.001〜0.01mass%の範囲とした。 尚、溶接部割れが発生する理由は、溶接時に、電極の主成分であるCuとめっき成分のZnとが液体金属を形成し、これが粒界に進入することによって脆性割れを引き起こすことによるものと推定されるが、上述したように鋼板中にBを積極的に含有させることにより、Bが粒界に偏析し、粒界が強化される結果として、溶接部割れが抑制できるものと考えられる。より好ましくは0.001〜0.004mass%である。
【0027】
・C:0.0007〜0.0050mass%
Cは、深絞り性に悪影響を及ぼす成分であり、できるだけ低減することが好ましいため、C含有量の上限を0.0050mass%とした。なお、C含有量を0.0007mass%未満としても、それ以上の深絞り性の向上が得られず、逆に、より高度な脱炭処理を行う必要が生じるため、これに伴って、コストの上昇を招くので、その下限を0.0007mass%とした。
【0028】
・Si:0.5 mass%以下、Mn:2.0 mass%以下
Si及びMnはいずれも鋼の強度を増加させる作用を有するので、所望の強度に応じて添加する。しかし、Si及びMnの添加量がそれぞれ0.5 mass%及び2.0 mass%を超えると、深絞り性が低下する。このため、Si及びMnの含有量は、それぞれ0.5 mass%以下及び2.0 mass%以下とした。
【0029】
・P:0.10mass%以下、より好適には0.01〜0.05mass%
Pは、Bと同様に、この発明における鋼板の組成成分のうち、最も重要な成分の一つである。特に、Pが粒界に偏析することにより粒界が強化され、溶接部割れを抑制する作用と鋼を強化する作用を有するので、所望の強度に応じて添加する。しかし、P含有量が0.10 mass%を超えると深絞り性が劣化する。このため、P含有量は、0.10mass%以下とした。尚、特に溶接部割れをより一層抑制する必要がある場合には、P含有量を0.01〜0.05mass%の範囲に制限することが好ましい。P含有量が0.01mass%未満では、溶接部割れを抑制する効果が顕著ではなくなり、また、0.05mass%を超えると深絞り性が低下する傾向があるからである。
【0030】
・S:0.015 mass%以下
Sは、深絞り性に悪影響を及ぼす成分であり、できるだけ低減することが好ましいため、S含有量の上限を0.015mass%とした。
【0031】
・Al:0.01〜0.20 mass%
Alは、脱酸及び炭窒化物形成元素の歩留り向上のために添加する。しかし、Al含有量が0.01 mass%未満では添加効果が少なく、一方、0.20 mass%を超えて含有させても含有量に見合う効果が得られない。そのため、Al含有量は0.01〜0.20
mass%の範囲とした。
【0032】
・N:0.01mass%以下
Nは、深絞り性に悪影響を及ぼす成分であり、できるだけ低減するのが好ましいため、その含有量の上限を0.01mass%とした。
【0033】
・Ti:0.005〜0.08mass%
Tiは、鋼中のCと結合して炭化物として析出させ、固溶Cによる深絞り性劣化を防止する効果を有している。Ti含有量は、0.005 mass%未満だと前記効果が少なく、また、0.08mass%を超えて含有させても含有量に見合う効果が得られない。そのため、Ti含有量は0.005〜0.08mass%の範囲とした。
【0034】
尚、その他の組成成分については特に限定を要しないが、熱延板の結晶粒を微細化し、冷間圧延−焼鈍後の深絞り性を向上させる場合には、Nbを0.0005〜0.0050 mass%の範囲内で含有させることが好ましい。
【0035】
また、この発明では、鋼板中に不可避的に含有する不純物成分については特に規定はしていないが、不可避不純物成分は通常含有する範囲内であればよい。例えば、不可避的不純物成分としてのOは、0.010mass%以下の範囲内であればよい。
【0036】
また、この発明では、前記組成成分に調整した被めっき鋼板の両表面に、亜鉛系めっき層及びクロメート層を順次積層形成する。
【0037】
亜鉛系めっき層は、鉄素地(被めっき鋼板)よりも卑な電位を示すため、このめっき層が損傷したプレス加工部においても、亜鉛の犠牲防食作用により赤錆の発生を抑制し、特に燃料タンクの外面耐食性を向上させるものである。
【0038】
亜鉛系めっき層としては、特に限定はしないが、例えば電気亜鉛めっき、電気亜鉛−ニッケル合金めっき、電気亜鉛−コバルト合金めっき、電気亜鉛−鉄合金めっき、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融亜鉛−アルミニウムめっき、溶融亜鉛−マグネシウムめっき、溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウムめっきなどの他、シリカ、アルミナ、有機樹脂などをめっき層中に分散させた亜鉛系分散めっきや、これらを積層した多層めっきなどで形成する場合が挙げられる。
【0039】
また、亜鉛系めっき層は、片面あたりの付着量を10〜200g/m2にすることが好ましい。前記付着量が10g/m2未満では、亜鉛の犠牲防食作用が不十分となって耐食性が不足するおそれがあるからであり、また、前記付着量が200 g/m2を超えると、耐食性の向上効果が期待できず、不経済であるばかりでなく溶接性が劣化するおそれがあるからである。尚、前記付着量は、より好ましくは15〜100 g/m2の範囲である。
【0040】
クロメート層は、耐食性を向上させる作用に加えて、その上層に形成する後述する第1及び第2複合皮膜中に含有する有機樹脂と、亜鉛系めっき層との十分な密着性を確保するために必要な中間層である。
【0041】
また、クロメート層の付着量は、金属クロム換算で片面あたり5〜200mg/m2とすることが好ましい。前記付着量が5mg/m2未満だと、耐食性が不足するばかりでなく、前記複合皮膜中の有機樹脂層と亜鉛系めっき層との密着性が不足する傾向があるため、プレス加工時に摺動部の前記複合皮膜が剥離し、場合によってはめっき層の剥離まで発生するおそれがある結果、タンクの内外面の加工部耐食性が不足しがちになるからであり、また、200 mg/m2を超えると、クロメート皮膜自体が非常に脆くなり、加工摺動部でクロメート層の剥離が発生し、これに伴って上層の有機樹脂含有の複合皮膜の剥離も生じやすくなり、内外面の加工部耐食性が不足するからである。尚、クロメート層の付着量は、より好ましくは10〜100mg/m2である。
【0042】
クロメート層の形成は、通常の処理方法にしたがって行うことができ、特に制限されない。例えば、クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩等を主剤とした処理液を用いた浸漬クロメート処理や電解クロメート処理等を行うことによって、3価クロム化合物皮膜としてクロメート層を形成することも可能であるし、あるいは上記処理液にコロイダルシリカ等を混合した処理液をめっき鋼板上に塗布する塗布型クロメート処理を行うことによって、6価クロム化合物を含有する皮膜としてクロメート層を形成してもよい。
【0043】
また、上記処理液は、6価クロムを主として含有するが、この発明では、クロメート処理液として、上記処理液以外に、6価クロムを含有しないいわゆる3価クロメート処理液を用いることができる。この3価クロメート処理液は、6価クロムを含有しないことから、環境上の点から好ましい。尚、3価クロメート処理液は、クロム酸(CrO3)を出発原料とし、還元剤を用いてCr3+に変化させる方法により得られる。
【0044】
さらに、還元剤としては、でんぷん、果糖、蔗糖等の多糖類、あるいは、蓚酸、ぎ酸等の有機酸、あるいは、フェノール類、過酸化水素、亜りん酸、次亜りん酸等の無機化合物を用いることができる。さらにまた、上述した方法以外に、3価クロム化合物を用いることもできる。
【0045】
なお、めっき鋼板をクロメート処理した後、必要に応じて水洗する工程、ゴムロール等で絞る工程、熱風乾燥等の乾燥工程を経てクロメート層を形成してもよい。
【0046】
この発明の燃料タンク用鋼板は、鋼板の両表面に、亜鉛系めっき層及びクロメート層を順次積層形成し、前記鋼板の一方の表面側に形成したクロメート層上には、Al及びNiの金属粉末とアミン変性エポキシ樹脂とを含有する第1複合皮膜を形成し、また、前記鋼板の他方の表面側に形成したクロメート層上には、アクリル系エマルション樹脂と、シリカと、潤滑剤と、導電性を有する粒子とを含有する第2複合皮膜を形成したものである。
【0047】
尚、この発明の燃料タンク用鋼板の、第1複合皮膜を形成した表面側は、溶接性、耐ガソリン性等に優れるため、ガソリンタンクなどの燃料タンクの内面側(すなわちガソリンと接する側)として用いるのが好ましく、また、第2複合皮膜を形成した表面側は、潤滑性、加工部耐食性等に優れるので、ガソリンタンクなどの燃料タンクの外面側(すなわち外界と接する側)として用いるのが好ましい。
【0048】
第1複合皮膜は、アルコール、特にメタノールそのものあるいはメタノールが酸化して生成した蟻酸の混合されたガソリンに対して優れた耐食性及び耐久性を有する金属粉末と有機樹脂とを含有し、下層の亜鉛系めっき層及びクロメート層とアルコール系燃料との直接接触を阻止するバリヤー層の役目を果たす皮膜である。
【0049】
また、第1複合皮膜中の金属粉末は、抵抗溶接性を確保することを主目的として含有させる。すなわち、有機樹脂からなる皮膜は、一般に高い電気絶縁性を有するため、膜厚が1μm以上になると鋼板の露出が全く期待できず、抵抗溶接が困難である。
【0050】
そこで、この発明においては、ガソリンタンク内面側に位置する第1複合皮膜中に金属粉末を必要量分散させることによって、皮膜の導電性を高める必要がある。
【0051】
尚、この発明において抵抗溶接性を確保するためには、前記金属粉末を第1複合皮膜中に含有させるだけでは不十分な場合がある。すなわち、第1複合皮膜中に有機樹脂の硬化剤を含有させて十分な架橋反応が起こっていると、溶接時の発熱により第1複合皮膜中の有機樹脂が溶融しにくくなって皮膜排除が期待できなくなり、有機樹脂が残存する部分周辺が溶接不良を起こし、ナゲット間のラップが不十分となるおそれがある。また、架橋が不十分で硬化剤が未反応物として残存する場合であっても、その部分の凝集力が低くなったり、親水性が高くなることなどの理由で腐食因子(酸、塩素イオンなど)が侵入しやすくなり、タンクの内面耐食性が不十分となる傾向がある。よって、この場合には、第1複合皮膜は、有機樹脂の硬化剤を全く含有しないことが好ましい。
【0052】
第1複合皮膜に含有する金属粉末としては、固有抵抗が高く、発熱量が大きい性質を有することが好ましく、具体的にはNi、Al、Fe、Cu等が挙げられる。これらの中でも、Niは、メタノールに対する耐食性が優れ、かつ固有抵抗が高いため最も有用な金属である。また、Alは、Niと比較すると固有抵抗や融点が低く、必ずしも溶接には最適ではないが、後述のとおり鱗片状(フレーク状)の形状にしたAlを第1複合皮膜中に含有させることによって、蟻酸水溶液などの腐食性イオンの透過を抑制することができ、内面耐食性を向上させるため有用な金属である。
【0053】
そこで、この発明では、AlとNiの金属粉末を組み合わせ、適正比率で第1複合皮膜中に含有させることにより、皮膜の導電性を高めて抵抗溶接性を向上させるとともに、腐食性イオンの透過を抑制して内面耐食性をも向上させることができる。さらに、第1複合皮膜中には、必須成分であるAl及びNiの金属粉末以外に、Fe、Cu等の金属粉末が含有されていてもよい。
【0054】
前記金属粉末の形状としては、粉状と鱗片状(フレーク状)のいずれでもよいが、前記の通り、形状によって内面耐食性や抵抗溶接性が若干変化する。
【0055】
この発明で用いられるNi粉末は、平均粒径1〜9μmの粒状のものが好ましい。平均粒径が1μm未満だと通電点が不足するおそれがあり、また、平均粒径が9μmを超えると通電点を有効に確保できるため、少量の含有量で抵抗溶接性を向上させることができるものの、皮膜が多孔質になるため内面耐食性が劣化し、さらにはプレス加工時における塗膜のパウダリングも問題になる可能性があるからである。尚、より好ましくは、2〜7μmである。
【0056】
この発明で用いられるAl粉末は、平均長径が8〜18μm、平均短径が1〜10μm、厚みが1〜5μmの鱗片状のものが好ましい。平均長径及び平均短径が各々8μm及び1μm未満の場合には、鱗片の面積が小さすぎるため、蟻酸等の腐食性イオンの透過抑制能が低くなり、内面耐食性が低下する傾向がある。この問題は平均長径のみ又は平均短径のみが短い場合にも同様の現象が起こる。一方、平均長径及び平均短径が各々18μm及び10μmを超える場合には、皮膜が多孔質になりすぎるため、皮膜の強度が不足するとともに脆い状態になり、パウダリングが生じたり、プレス加工部の内面耐食性が低下する傾向がある。また、平均厚みが1μm未満の場合には、内面耐食性の寿命が短くなるおそれがあり、また、平均厚みが5μmを超える場合には、第1複合皮膜の表面に露出するAl粉末の割合が多くなりすぎるため、抵抗溶接性が低下するので好ましくない。尚、Al粉末は、より好ましくは平均長径が10〜15μm、平均短径が5〜8μm、平均厚みが2〜4μmである。
【0057】
第1複合皮膜中のNi及びAlの金属粉末の合計配合量は、有機樹脂100重量部に対して30〜110重量部の割合となる量であることが好ましい。前記合計配合量が30重量部未満の場合には、通電点が不足し、導電性に劣るため抵抗溶接性が低下するおそれがあるからであり、また、前記合計配合量が110重量部を超える場合には、第1複合皮膜自体が脆弱になり、プレス加工時の耐パウダリング性が低下し内面耐食性が低下するおそれがある。尚、前記合計配合量は、より好ましくは有機樹脂100重量部に対して45〜100重量部の割合となる量である。
【0058】
また、第1複合皮膜中のNi及びAlの金属粉末の合計配合量が前記好適範囲である場合において、Ni/Al比(質量比)を80/20〜30/70とすることにより、抵抗溶接性及び内面耐食性をバランスよく向上させることができる。Ni/Al比が30/70未満の場合には、固有抵抗が高いNiの量が不足して抵抗溶接性が低下するおそれがあり、また、Ni/Al比が80/20を超える場合には、燃料の浸透を抑制する働きを有するAlの量が減るため、内面耐食性が低下するおそれがある。尚、Ni/Al比は、より好ましくは70/30〜40/60である。
【0059】
また、第1複合皮膜中に含有する有機樹脂は、ガソリン、アルコール、蟻酸系燃料に対して、優れた耐食性及び耐久性を有し、かつ素地原板(鋼板+めっき層+クロメート層)に対する塗膜密着性及びプレス加工性に優れていることが必要であり、この発明では、このような特性を有する有機樹脂としてアミン変性エポキシ樹脂を用いることとし、これによって、優れたプレス加工性とアルコール系燃料に対する耐食性及び素地原板に対する塗膜密着性が確保される。
【0060】
アミン変性エポキシ樹脂とは、主骨格を形成するエポキシ樹脂のオキシラン環がアミンにより開環したものである。このアミン変性エポキシ樹脂の主骨格を形成するエポキシ樹脂としては、優れたプレス加工性を確保するため、5000〜50000、好ましくは10000〜40000の重量平均分子量を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
このアミン変性エポキシ樹脂の主骨格を形成するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂は、第1複合皮膜の形成に際して、塗料としての安定性に優れ、また、プレス加工性及び内面耐食性に優れる皮膜を安定して得ることができる製造条件の範囲が広い点でより好ましい。また、エポキシ樹脂は、単独、あるいはアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、ダイマー酸等のジカルボン酸を反応させたエポキシエステル樹脂として用いてもよく、さらに、ポリアルキレングリコールジグリシジンエーテルを併用してもよい。
【0062】
アミン変性エポキシ樹脂において、エポキシ樹脂のオキシラン環に付加するアミンとしては、例えば、エチルエタノールアミン、エタノールアミン等のモノアルカノールアミン、及びジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン等のジアルカノールアミン等の1級又は2級アミンが挙げられる。これらの中でも、ジエタノールアミンは、安定した付加条件を有し、かつ化成皮膜や金属粉末との密着性が高い点で好ましい。
【0063】
このアミン変性エポキシ樹脂において、主骨格であるエポキシ樹脂のオキシラン環1当量に付加するアルカノールアミンのモル数は0.2〜1.0モルが好ましい。エポキシ当量が500〜1000の場合には、アルカノールアミンのモル数は0.2〜0.6モル、エポキシ当量が1000〜5000の場合には、アルカノールアミンのモル数は0.6〜1.0モルであることがより好ましい。エポキシ樹脂のオキシラン環1当量に付加するアルカノールアミンのモル数が0.2未満の場合には、アミン変性度が不足するため、金属粉末とアミン変性エポキシ樹脂の親和性が低下し、プレス加工時に金属粉末が皮膜から脱離しやすくなり、その程度が激しい場合には、めっき層の剥離が生じるため、プレス加工性が悪化するおそれがあり、加えて、同様の理由から皮膜中の樹脂/金属粉末間に腐食性イオンが滞留しやすくなり、十分な疎水性が得られず、蟻酸イオンなどの腐食性イオンを皮膜中に呼び込み易いことも要因となって、腐食性の強いメタノール系燃料に対する内面耐食性が不足するおそれがある。また、付加するアルカノールアミンのモル数が1.0モルを超えると、その超えた分はオキシラン環に付加されないので経済的ではなく、余剰アミンが吸水性を高めて内面耐食性が低下するおそれがある。
【0064】
上記のように、アミン変性エポキシ樹脂は、第1複合皮膜中の金属粉末と主骨格エポキシ樹脂との界面を強化する。さらにアミン変性エポキシ樹脂を用いた時の特徴として第1複合皮膜とクロメート層との界面密着力を向上させる効果も有する。この界面を強化する効果は、平面の耐食性向上や、プレス加工時の皮膜剥離抑制、さらにはプレス加工部の内面耐食性を向上させることになる。
【0065】
この発明において、アミン変性エポキシ樹脂は、重量平均分子量が5000〜50000の範囲が好ましい。重量平均分子量が5000未満の場合には、主骨格エポキシ樹脂の分子量が低すぎるため、分子間力が不足し、皮膜の強靱性が不足するため、プレス加工時に皮膜が削られ、所期のプレス加工性を得ることができないおそれがあるからである。また、重量平均分子量が50000を超える場合には、分子末端のオキシラン環に付加されているアルカノールアミンの量が少なくなるため、樹脂と金属粉末との親和性が不足し、プレス加工時に皮膜からの金属粉末の脱離が発生したり、所期の内面耐食性を得ることができないおそれがあるからである。
【0066】
また、第1複合皮膜は、アミン変性エポキシ樹脂以外の樹脂、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はオレフィン樹脂の1種以上をさらに含有していてもよい。
【0067】
第1複合皮膜の厚さは1〜10μmとすることが好ましい。1μm未満では内面層として要求される内面耐食性が十分に得られないおそれがあるからであり、また、10μmより厚くしても、内面耐食性やプレス加工性の向上効果が期待できず、単にシーム溶接性が低下するにすぎないからである。
【0068】
また、第1複合皮膜には、必要に応じて、潤滑剤、カップリング剤、顔料、チクソトロピック剤、分散剤等の添加剤を添加することもできる。
【0069】
第1複合皮膜の形成は、前記アミン変性エポキシ樹脂とAl及びNiの金属粉末、ならびに必要に応じて適宜添加される各種の添加剤を含む塗料を調製し、これを内面側のクロメート層の上層に塗布する方法によって行うことができる。
【0070】
前記塗料の調製は、エポキシ当量が500〜5000のエポキシ樹脂にアルカノールアミンを添加して、常温〜100℃で4〜5時間反応させて得られるアミン変性エポキシ樹脂に、サンドミル、アトライター等を用いて、金属粉末、及び必要に応じて添加される各種の添加剤を、所定の配合割合で配合して行うことができる。
【0071】
また、この発明では、鋼板の他方の表面側、具体的にはタンクの外面側に形成したクロメート層上には、アクリル系エマルション樹脂と、シリカと、潤滑剤と、導電性を有する粒子とを含有する第2複合皮膜を形成する。
【0072】
第2複合皮膜は、シリカと導電性粒子を複合した潤滑性樹脂皮膜であり、有機樹脂成分として使用するベース樹脂としては、アクリル系エマルション樹脂を使用する。
タンクの外面側に形成させる第2複合皮膜の樹脂種について検討した結果、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が使用できることが判明したが、更に検討を進めた結果、アクリル系エマルション樹脂とシリカと潤滑剤と導電性を有する粒子とを含有する第2複合皮膜によってタンクの外面を形成することが最適であることが判明した。
【0073】
燃料タンク用鋼板には、優れたプレス加工性が要求されるために強靭な皮膜を形成させる必要がある。このような皮膜を形成させるためには、上記ベース樹脂と硬化剤との架橋反応による皮膜を形成させる手法がある。
しかし、この場合は溶接時の発熱により、第2複合皮膜の中の有機樹脂が溶融しにくくなって、皮膜排除が期待できなくなり、有機樹脂が残存する部分周辺で溶接不良を起こす可能性がある。後述する導電性粒子を使用した場合も、導電性粒子の添加による改善効果が期待できない。
【0074】
従って、硬化剤なしで強靭な皮膜を得る樹脂系について検討した結果、アクリル樹脂が最適であることが判明した。
【0075】
また、樹脂の形態はエマルションタイプが最適である。水溶性の場合、水溶化させるために親水性の官能基を大量に付加させる必要があるため、皮膜の親水性が高くなり、腐食因子(酸、塩素イオンなど)が進入しやすくなり、タンク外面の耐食性が不十分となる傾向があるためである。
【0076】
上記より、第2複合皮膜に含有させる樹脂としては、アクリル系エマルション樹脂が最適であるという結論に達した。
【0077】
アクリル系エマルション樹脂としては、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含有するビニル系モノマー混合物を、乳化剤または高分子量樹脂分散安定剤の存在下で、水中にて乳化重合したエマルション樹脂であり、必要に応じて、中和や変性を行った樹脂である。
上記アクリル系エマルション樹脂は、常温架橋性を有していてもよく、例えばアクリル系エマルション樹脂中にカルボニル基を持たせ、ポリヒドラジド化合物を加えて架橋させる方法を用いてもよい。
【0078】
上記アクリル系エマルション樹脂作製のために使用されるビニル系モノマー混合物のモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル(n−、i−、t−)、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18(1〜24)のアルキルエステル又はシクロアルキルエステルや、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルや、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和モノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステルや、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレートや、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類や、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和モノマーや、酢酸ビニル、スチレン、α−クロロスチレン、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0079】
乳化重合反応は、乳化剤の存在下において、水媒体中で攪拌化に所定温度でモノマーおよび重合開始剤を一括、或いは連続的に供給することにより行われる。
【0080】
乳化剤は通常、重合モノマー全量に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲で用いられる。乳化剤の具体例としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等のカチオン乳化剤、オレイン酸カリウム、ラウリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリル燐酸エステルなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンプロピルブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系乳化剤、ラウリルペタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどの両イオン性乳化剤等が挙げられる。
【0081】
その他にも水溶性高分子のポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル共重合体、スチレンスルホン酸ナトリウムの共重合体等も単独もしくは上記の乳化剤と併用して用いることができる。
【0082】
重合時のモノマー濃度は、通常30〜70質量%、好ましくは35〜65質量%とすればよく、重合開始剤としては一般的に用いられるラジカル重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ソーダなどの過硫酸塩、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルパレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤などを用いることができる。
【0083】
ラジカル重合開始剤の使用量は、重合モノマー全量に対し0.1〜10質量%程度、好ましくは0.3〜5質量%程度とすればよい。
反応時間は、通常2〜16時間程度とすればよく、重合時の温度は通常60〜100℃程度とすればよい。
【0084】
プレス加工時の金型と鋼板の接触面積を可能な限り低減するために硬度の高い皮膜とすることが重要であり、このためにはガラス転移点(Tg)の高いベース樹脂が有効である。
【0085】
第2複合皮膜のベース樹脂のTgは0〜90℃が好ましい。Tgが0℃未満の場合、プレス時の金型や鋼板表面温度では皮膜の硬度が低く軟弱すぎて金型/鋼板接触率が高く、加工性が不良となり、Tgが90℃以上では皮膜が脆すぎて加工性が不良となるからである。より好ましくはTgは50〜80℃である。
【0086】
第2複合皮膜中に含有するシリカは、タンクの外面における耐食性を付与するために配合される。このシリカとしては、例えば、コロイダルシリカ、オルガノシリカゾル、シリカ粉末、あるいは脱水縮合によりシリカとなる有機シリケート(例えば、エチルシリケート等を酸触媒と併用して用いる)等が挙げられる。
【0087】
尚、前記シリカの平均粒径は、第2複合皮膜中にシリカを均一に分散させるため、5〜70nmにすることが好ましい。
【0088】
第2複合皮膜中に含有するシリカの配合量は、前記有機樹脂:100重量部に対してシリカ:5〜80重量部とすることが好ましい。5重量部未満では耐食性が低下し、80重量部を超えると皮膜が脆弱になり、加工時に型かじりが生じてプレス加工性が低下するおそれがあるからである。尚、シリカは熱分解性が劣り抵抗溶接性を低下させる傾向があるため、より好ましくは20〜60重量部とする。
【0089】
また、この発明では、ベース樹脂とシリカの反応促進剤としてシランカップリング剤を用いてもよい。用いられるシランカップリング剤として、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0090】
さらに、ベース樹脂中に反応促進剤、安定剤、分散剤等の一般的な添加剤を、この発明の主旨を損なわない範囲で適宜添加することは差し支えなく、むしろ好ましい。
【0091】
また、第2複合皮膜中に含有する潤滑剤としては、ポリオレフィンワックスであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のオレフィン系炭化水素の重合体からなるワックスなどが好ましく、これらを組み合わせて用いてもよい。また、フッ素を含有した潤滑剤を用いてもよい。これらの潤滑剤は、第2複合皮膜中で、プレス加工時には、皮膜層と金型との間に潤滑層を形成することにより、皮膜の良好なプレス加工性を維持することができる。
【0092】
第2複合皮膜中に含有する潤滑剤の配合量は、前記有機樹脂:100重量部に対して潤滑剤:1〜40重量部とすることが好ましい。40重量部を超えると、形成される第2複合皮膜の皮膜強度が低下し、潤滑性が低下するおそれがあるからであり、また、1重量部未満では潤滑性が不足する傾向があるからである。尚、より好ましくは5〜30重量部とする。
【0093】
前記潤滑剤の平均粒径は、1〜7μmであることが好ましい。平均粒径が1μm未満だと、第2複合皮膜から突出する潤滑剤の量が少なくプレス加工性が低下するおそれがあり、また、7μm超えだと、第2複合皮膜が脆弱になりすぎ、皮膜の耐パウダリング性が低下し、プレス加工性が劣る傾向があるからである。
【0094】
また、潤滑剤の軟化点は、70〜150℃の範囲であれば、何れのものを用いてもよく、また、軟化点の異なる2種以上の潤滑剤を組み合わせて用いてもよく、これにより、いっそうプレス加工性が良好になる。潤滑剤の軟化点が70℃未満だと、発熱を伴う過酷なプレス条件下では、潤滑層の弾性率が著しく低下するため、潤滑性が低下し、プレス加工性が劣る傾向があり、また、150℃よりも高いと、潤滑剤の軟化が不足して潤滑層が強靱になりすぎるため、潤滑性が低下し、プレス加工性が劣る傾向があるからである。
【0095】
そして、この発明では、特開平10−337805号公報に開示した燃料タンク用鋼板の優れた性能のうち、特に電極がタンク外面と接触する、より具体的には第2複合皮膜と接触するような抵抗溶接を行う場合の溶接性をより一層向上させることにより、連続的に溶接できるようにするため、第2複合皮膜中にさらに導電性粒子を含有させたものである。
【0096】
第2複合皮膜中に含有する導電性粒子としては、種々のものが知られているが、この発明では、金属粒子、金属化合物粒子、グラファイト粒子の中から選択した1種又は2種以上の粒子を用いることが好ましい。
【0097】
また、導電性粒子には種々のものが知られているが、この発明においては金属粒子、金属化合物粒子、グラファイト粒子の中の1種または2種以上であることが良い。
【0098】
金属粒子としては、ニッケル、錫、銅等の粒子、SUS304L、SUS316、SUS430等のステンレスに代表される合金の粒子が好ましく、特にニッケル、錫、ステンレスの粒子がより好適である。
【0099】
金属化合物粒子としては、導電性を有する金属の酸化物粒子のことであり、酸化錫粉末に代表され、この金属酸化物粒子が単一組成のみならず複合酸化物や、コアに安価な粒子を使用し表面に導電性に優れた金属酸化物をドープしたもの、複合化処理を施したものなどが好ましい。
【0100】
酸化錫粉末として、Nano Tek Tinoxide (シーアイ化成製)、酸化錫のコロイド分散液としてセラメ‐スS−8(多木化学製)、ATO(アンチモン錫複合酸化物)粉としてSN-100P(石原産業製)、ATOのコロイド分散液としてSN―100D(石原産業製)、AZO(アンチモン亜鉛複合酸化物)粉としてSC-18(堺化学工業製)、AZOのコロイド分散液としてセルナックスCX-Z300H(日産化学工業製)等が挙げられる。
【0101】
グラファイト粒子としては、グラファイト粉末、有機溶媒や水に分散したコイドゾル等が挙げられ、市販品の粉末タイプとしては、例えばAUP(黒鉛工業(株)製)、TGP-05(東海カーボン(株)製)、GP-60S、GP-82、GP-78、GP-63(以上日立冶金(株)製)等が挙げられ、有機溶媒や水に分散したコロイドゾルとしてはヒタゾルGA-66、同AB-1、同GA-315(以上日立冶金(株)製)、バニーライC-9A、同BP-4(日本黒鉛工業(株)製)が挙げられる。
【0102】
これら導電性粒子の粒子径は、平均粒径で0.01μm〜3.0μmにすることが好ましい。3.0μm超えの場合にはプレス時に皮膜より突出している導電性粒子が金型と接触しプレス性が劣化するとともに、プレス加工部の耐食性が劣化するおそれがあるからであり、また、0.01μm未満であると、皮膜中に通電経路ができにくくなり抵抗溶接性、特にスポット溶接性が低下する傾向があるからである。尚、より好ましくは0.03〜2.0μm、さらに好適には0.05〜1.5μmである。
【0103】
第2複合皮膜中に含有する導電性粒子の配合量は、前記有機樹脂:100重量部に対して導電性粒子:5〜30重量部とすることが好ましい。30重量部を超えると皮膜の強靭性が損なわれ、プレス時に皮膜がパウダリングしプレス性が劣化するとともに、プレス加工部の耐食性が劣化するおそれがあるからであり、また、5重量部未満であるとこの粒子の添加効果が得られなくなり、抵抗溶接性、特にスポット溶接性が劣化する傾向があるからである。尚、前記配合量のより好ましい範囲は、11〜30重量部である。
【0104】
また、第2複合皮膜は、有機樹脂(ベース樹脂)に、シリカ、潤滑剤及び導電性粒子を上記配合量で含有させるものであれば、その他の添加剤等を含有させてもよい。
【0105】
従って、この発明の燃料タンク用鋼板は、以上の構成を有するものである。さらに、プレス加工の難易度に応じて潤滑油を塗布しても全く問題はなく、むしろ塗膜の損傷防止の観点からは有効である。
【0106】
【実施例】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0107】
(実施例)
表1に示す化学組成の鋼素材(スラブ)を1200℃に加熱し、仕上げ温度880℃、巻取り温度600℃の条件で熱間圧延して板厚を3.5mmとした後、圧下率77%で冷間圧延して冷延鋼帯とした。次いで、連続焼鈍ラインにより830℃で再結晶焼鈍を施した後、さらに0.8%の調質圧延を施すことによって、板厚1.0mmの被めっき鋼板を作製した。
【0108】
【表1】
Figure 0004151228
【0109】
次に、作製した被めっき鋼板の両表面に、表2及び3に示す以下に示す各種の亜鉛系めっき層を施した。
【0110】
さらに亜鉛系めっき層の上層に、ロールコーターによって表2及び3に示す種類及び付着量のクロメート層を形成した。
【0111】
【表2】
Figure 0004151228
【0112】
【表3】
Figure 0004151228
【0113】
その後、前記鋼板のクロメート層上には、それぞれ第1複合皮膜と第2複合皮膜を形成した。
【0114】
第1複合皮膜は、以下のような方法で形成した。まず、還流冷却器、攪拌装置、温度計及び窒素ガス吹き込み装置を具えた反応装置に、エピコート1007(油化シェルエポキシ(株)製、エポキシ樹脂:エポキシ当量=2000)2000g(オキシラン環1当量)及びトルエン1000gを入れ、窒素置換後に80℃まで昇温し、均一溶液とした。次に、ジエタノールアミン52.5gを30分かけて滴下した後、1時間反応させることによりアミン変性を行い、アミン変性エポキシ樹脂を調整した。なお、アルカノールアミン付加量(モル)はエポキシ樹脂中のオキシラン環1当量に対する量として表4及び5に示した。
【0115】
【表4】
Figure 0004151228
【0116】
【表5】
Figure 0004151228
【0117】
次いで、金属粉末、有機溶剤、及びその他の添加剤を加えて混練し懸濁液を作製した。 Al金属粉末は鱗片状のもの、Ni金属粉末は粒状のものを用いた。また、有機溶剤の量は懸濁液全体の60〜85重量部とした。この樹脂混合物(懸濁液)を、ロール塗布により所定の厚さとなるように塗布し、10〜30秒後の到達板温が100〜200℃となるような条件で焼付することによって、第1複合皮膜を形成した。
【0118】
また、第2複合皮膜は、以下のような方法で形成した。
攪拌機、温度計及び還流冷却器などを備えた反応槽に脱イオン水29.18部、乳化剤A(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム)0.13部、乳化剤B(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)0.4部を仕込み、加熱攪拌して80℃まで昇温した後、過硫酸アンモニウム0.1部を加え、5分間攪拌する。次いで、脱イオン水21.92部、乳化剤A0.52部、スチレン12.6部、メタクリル酸メチル1.2部からなる単量体予備混合物を3時間かけて反応槽に滴下する。滴下終了後80℃で2時間保持した後、40℃に冷却し、ジメチルアミノエタノールでpH8.5に調整し、安定な水分散体を得た。
【0119】
次いで、シリカ、潤滑剤、導電性を有する粒子と脱イオン水を加えて混練し懸濁液を作製した。また、溶媒(脱イオン水など)の量は懸濁液全体の75〜90重量部とした。この樹脂混合物をロール塗布により、所定の厚さになるように塗布し、10〜30秒後の到達板温が10〜200℃になるような条件で焼付けすることによって、第2複合皮膜を形成した。
以上の第2複合皮膜の組成は、表6及び表7に示した。
【0120】
【表6】
Figure 0004151228
【0121】
【表7】
Figure 0004151228
【0122】
以上のようにして得られるこの発明の燃料タンク用鋼板の模式的な断面構成を図1に一例として示す。得られた各燃料用タンク鋼板(実施例1〜130)の構成等は表2〜7に示した。また、以下に示す評価法により、プレス加工性、抵抗溶接性、外面耐食性、内面耐食性、ろう付け性の評価を行なった。それらの評価結果を表8及び9に示す。なお、比較のため、特開平10−337805号公報の発明鋼板(比較例1)、ターンめっき鋼板(比較例9, 34)、溶融アルミニウムめっき鋼板(比較例10,35)などについても評価した(比較例1〜39)。
【0123】
【表8】
Figure 0004151228
【0124】
【表9】
Figure 0004151228
【0125】
(A)プレス加工性評価方法
下記の条件で円筒加工を行い、限界絞り比及び耐パウダリング性を調査することにより、プレス加工性を評価した。
【0126】
<プレス加工条件>
・塗油・・・・・・・・防錆油Z5(出光石油(株)製)を1g/m2塗油
・ポンチ径と形状・・・33mmφ平底円筒
・クリアランス・・・・1mm
・プランク径・・・・・種々変化
・しわ押え荷重・・・・3t
・絞り速度・・・・・・60mm/sec.
【0127】
上記条件で、鋼板の外面側をダイス側、内側面をポンチ側として円筒加工し、各サンプルの限界絞り比(絞り抜けたサンプルのブランク径/ポンチ径のうち最大の値)を求め、下記の基準により潤滑性を評価した。
【0128】
○:2.1≦限界絞り比
△:2.0≦限界絞り比<2.1
×:限界絞り比<2.0
【0129】
また、ブランク径を60mmとして円筒加工を行った場合の、カップ外面側壁の樹脂皮膜のパウダリングの程度を調査することにより、耐パウダリング性を評価した。すなわち、加工前後のCカウント比(加工後のCのスポットカウント/加工前のCのスポットカウント) をEPMAにより測定し、下記の基準により耐パウダリング性を評価した。
【0130】
○:0.8≦Cカウント比
△:0.2≦Cカウント比<0.8
×:Cカウント比<0.2
【0131】
(B)抵抗溶接性評価方法
抵抗溶接性は、シーム溶接性とスポット溶接性とに分けて評価した。
<シーム溶接条件>
・電極・・・・・・クロム−銅合金、断面が15mmRの中央部4.5mm幅、端部4mmRの8mm幅の円盤状電極(上下両電極に第2複合皮膜が接する)
・溶接方法・・・・二重かさね、ラップシーム溶接
・加圧力・・・・・400kgf(3920N)
・通電時間・・・・2/50秒通電on、1/50秒通電off
・冷却・・・・・・内部水冷
・溶接スピード・・2.5m/min.
・溶接電流・・・・種々変化
【0132】
上記の条件下でサイズが500×300mmである複数枚の試験片を用いて内面同士を接触させて繰り返し300m連続溶接後、さらに300m(計600m)連続溶接を行い、10m毎に100mm×200mmの試験片を用いて途中の溶接状態を確認した。すなわち、100mm×200mmの溶接試験片より、Tピール引張り試験による母材(被めっき鋼板)破断の有無により連続シーム溶接性を評価した。
【0133】
◎:母材破断(連続溶接500m超え)
○:母材破断(連続溶接300m超え500m以内)
△:ナゲット内破断(連続溶接300m超え500m以内)、母材破断(連続溶接300m以内
×:ナゲット内破断(連続溶接300m以内)
【0134】
また、適正電流範囲の上限値からそれぞれ+3kA と+7kAまでの2種類の範囲の電流値で溶接し、溶接部の断面を観察した。サンプルは、溶接方向と平行でかつ溶接部の中央部より採取したものを、樹脂に埋め込み、研磨した後、エッチングし、光学顕微鏡にて観察し、全サンプルの溶接部割れの発生本数をカウントした。下記の評価基準で評価した。
【0135】
○:発生なし
△:1〜2本
×:3本以上
【0136】
<スポット溶接性>
電極 ;クロム‐銅合金、DR型とCF型
板組み ;二枚重ね、DR型(第1複合皮膜が接する)CF型(第2複合皮膜が接する)
通電条件 ;表10に示す。
冷却 ;内部水冷
連続溶接時の電流;各材料のチリ発生溶接電流値−0.5kA
【0137】
【表10】
Figure 0004151228
【0138】
【表11】
Figure 0004151228
【0139】
表10に示す条件下で、サイズが100×200mmである複数枚の試験片を用いてDR型電極に第1複合皮膜が、CF型電極に第2複合皮膜が接するように重ね、連続溶接を行い、20打点ごとに20mm×80mmの試験片を用いて途中の溶接状態を確認した。すなわち、20mm×80mmの溶接試験片の溶接部を剥離し、ボタンの長径と短径を測定し、短径が4√t以上を満たす打点を合格とした。合格した打点数により、下記の評価基準で評価した。
【0140】
◎:800打点以上
○:600打点以上800打点未満
△:300打点以上600打点未満
×:300打点未満
【0141】
また、適正電流範囲の上限値からそれぞれ+3kA と+7kAまでの2種類の範囲の電流値で溶接し、溶接部の断面を観察した。サンプルは、溶接部の中央部より採取したものを、樹脂に埋め込み、研磨した後、エッチングし、光学顕微鏡にて観察し、全サンプルの溶接部割れの発生本数をカウントした。下記の評価基準で評価した。
【0142】
○:発生なし
△;1〜2本
×:3本以上
【0143】
(C)外面耐食性評価方法
第2複合皮膜の外面耐食性の評価を下記の通り行った。JASO−M610法の条件(塩水噴霧2時間→60℃、20〜30RH%乾燥4時間→50℃、98RH%2時間を1サイクルとする)にて、平面部については300サイクル、平面クロスカット部及び(A)のプレス加工条件(ブランク径60mm)で加工したカップ側壁部については100サイクルの試験に供し、それぞれの板厚減少値を測定して、下記の基準により外面耐食性を評価した。尚、実際のタンクの製造においては、皮膜の上層に、上塗り塗料を塗装するのが一般的であるが、第2複合皮膜の性能を評価するために、ここでは、上塗り塗膜なしで性能を評価した。
【0144】
○:板厚減少値<0.5mm
△:0.5mm≦板厚減少値<1.0mm
×:1.0mm≦板厚減少値(穴あき)
【0145】
(D)内面耐食性評価方法
平面部及び(A)のプレス加工条件(ブランク径60mm)で加工したカップ内面について評価した。平面部を調査する場合には、20mm×100mmの試験片を、無鉛ガソリン/500ppm蟻酸水溶液=1/1(重量)の燃料中に浸漬し、常温で1ヶ月浸漬後の赤錆発錆面積率(%)を測定した。カップ内面を評価する場合には、カップ内に前記燃料を容積の約80%投入し、常温で1ヶ月放置後のカップ内面の赤錆発錆面積率(%)を測定した。なお、前記燃料は比重の順列から下層に蟻酸水溶液、上層に無鉛ガソリンと分離するので、それぞれの部位における赤錆発生面積率を測定し、下記の基準で内面耐食性を評価した。
【0146】
○:赤錆発生面積率<50%
△:50%≦赤錆発生面積率<80%
×:80%≦赤錆発生面積率
【0147】
(E)ろう付け性評価方法
15mm×200mmサイズのサンプルを2枚準備し、第2複合皮膜面同士を15mm×15mmでラップし、その間に金属ろう(石福金属興業(株)製、IS−344、JIS規格名:キングソルダー#101)及びフラックス(石福金属興業(株)製、イシフクフラックス#6)をガス加熱(加熱時間10秒)により流し込み、ろう付けを行った。その後、剪断引張り試験を行い、以下の基準によりろう付け性を評価した。
【0148】
○:母材が破断
△:母材破断と、母材/ろう間での剥離の複合
×:母材/ろう間で剥離
【0149】
表8及び表9に示す評価結果から、実施例はいずれも、プレス加工性、抵抗溶接性、内外面耐食性及びろう付け性が優れていた。特に、前記鋼板中のP含有量を0.01〜0.05質量%の範囲内にした実施例4、5及び70〜130は、厳しい抵抗溶接条件下においても、溶接部割れが発生せず、抵抗溶接性が顕著に優れているのがわかる。
【0150】
【発明の効果】
この発明のガソリンタンク用鋼板は、抵抗溶接性及びプレス加工性に優れるとともに、耐食性、特にアルコールあるいはこれと蟻酸の混合されたガソリンに対する耐食性にも優れた特開平10−337805号公報に開示した燃料タンク用鋼板と比べて、特に抵抗溶接性をより一層向上させた高耐食性燃料タンク用鋼板の提供が可能になった。また、ターンめっき鋼板のように、有害物質である鉛をまったく含有しないものであるので、燃料タンク用鋼板として極めて工業的価値が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の燃料タンク用鋼板の構造を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2a, 2b 亜鉛系めっき層
3a, 3b クロメート層
4 第1複合皮膜
5 第2複合皮膜

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.0007〜0.0050%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.10%以下、S:0.015%以下、Al:0.01〜0.20%、N:0.01%以下、Ti:0.005〜0.08%及びB:0.001〜0.01%を含有する鋼板の両表面に、亜鉛系めっき層及びクロメート層を順次積層形成し、前記鋼板の、一方の表面側に形成したクロメート層上には、Al及びNiの金属粉末とアミン変性エポキシ樹脂とを含有する第1複合皮膜を形成し、他方の表面側に形成したクロメート層上には、アクリル系エマルション樹脂と、シリカと、潤滑剤と、導電性を有する粒子とを含有する第2複合皮膜を形成してなることを特徴とする高耐食性燃料タンク用鋼板。
  2. 前記鋼板中のP含有量を0.01〜0.05質量%の範囲に制限する請求項1記載の高耐食性燃料タンク用鋼板。
  3. 第2複合皮膜の導電性を有する粒子は、金属粒子、金属化合物粒子及びグラファイト粒子の中の1種又は2種以上である請求項1又は2記載の高耐食性燃料タンク用鋼板。
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