JP2015227494A - 高強度鋼部品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】防錆性能を必要とする鋼部品を熱間プレス加工で製造する際に適用し得る、適正なめっき付着量と、ZnOを含有する皮膜の量を明らかにする。
【解決手段】(i)鋼板片面当りのめっき付着量が30〜55g/m2で、合金層厚みが5μm以下の溶融Al系めっき層を有する鋼板の表面に、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層を形成し、次いで、(ii)上記表面皮膜層を有する鋼板を、加熱速度20℃/秒以上で850〜1050℃に加熱し、その後、(iii)成形加工と同時に急速冷却することを特徴とする高強度鋼部品の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、Alを主成分とする溶融めっき層を有するAl系めっき鋼板に熱間プレス加工を施して高強度鋼部品を製造する方法と、該方法で製造した高強度鋼部品に関する。
近年、環境保護と地球温暖化の抑制のために、化石燃料の消費を抑制する要請が高まっており、この要請は、様々な製造業に対して影響を与えている。例えば、移動手段として日々の生活や活動に欠かせない自動車については、車体の軽量化による燃費の向上等が求められている。しかし、自動車では、単に、車体を軽量化することは、製品品質上許されず、軽量化とともに適切な安全性を確保することが必要である。
自動車の車体及び部品は、鋼板で構成されており、この鋼板の重量を低減することが、車体の軽量化に必要である。しかし、上述の通り、単に、鋼板の重量を低減することは許されず、鋼板の重量低減とともに、安全性の確保に必要な機械強度の確保が求められる。
このような鋼板に対する要請は、自動車製造業のみならず、様々な製造業でも同様に高まっている。それ故、鋼板の機械強度を高めて、以前使用の鋼板より薄くしても、機械強度を維持できる鋼板について、研究開発が行われている。
一般に、高い機械強度を有する鋼板は、曲げ加工等の成形加工において、成形性、形状凍結性が低下する傾向にある。それ故、機械強度の高い鋼板を複雑な形状に加工しようとする場合、加工自体が困難となる場合がある。この成形性についての問題を解決する手段の一つとして、いわゆる、熱間プレス方法(ホットスタンプ法、ホットプレス法、ダイクエンチ法、プレスハードニングともいう。)がある。
熱間プレス方法では、成形対象の鋼板を、一旦、高温(オーステナイト域)に加熱し、加熱により軟化した鋼板にプレス加工を施して成形した後、冷却する。熱間プレス方法によれば、鋼板を一旦高温に加熱して軟化させるので、鋼板を容易にプレス加工することができ、更に、成形後の冷却による焼入れ効果により、鋼板の機械強度を高めることができる。したがって、熱間プレス方法により、良好な形状凍結性と高い機械強度が両立した成形品を得ることができる。
しかし、熱間プレス方法を鋼板に適用する場合、鋼板を、例えば、800℃以上の高温に加熱すると、鋼板表面の鉄が酸化してスケール(酸化物)が発生する。それ故、熱間プレス加工の後、スケールを除去する工程(デスケーリング工程)が必要となり、生産性が低下する。また、耐食性を必要とする場合、加工後、鋼板表面に防錆処理や金属被覆を施す必要があるが、表面清浄化工程、表面処理工程が必要となるので、生産性が低下する。
生産性の低下を抑制する方法として、鋼板に、あらかじめ被覆を施す方法がある。通常、鋼板を被覆する被覆材として、有機系材料や無機系材料を使用する。なかでも、鋼板に対し犠牲防食作用のある亜鉛系めっきを施しためっき鋼板が、防食性能と鋼板生産技術の観点から、自動車用鋼板として広く使われている。
しかし、熱間プレス加工における加熱温度(通常、850〜1000℃)は、有機系材料の分解温度や、Znの沸点よりも高く、熱間プレス加工の際、亜鉛系めっき鋼板を加熱すると、めっき層が蒸発し、表面性状の著しい劣化の原因となる場合がある。それ故、高温に加熱して、熱間プレス加工を施す鋼板には、有機系材料被覆の分解温度や、亜鉛系金属被覆の融点に比べて融点が高いAl系金属被覆を施した鋼板、いわゆる、Al系めっき鋼板を使用することが望ましい。
Al系めっきは、鋼板表面にスケールが付着するのを防止するので、デスケーリング工程が不要となり、生産性が向上する。また、Al系めっきには防錆効果があるので、塗装後の耐食性が向上する。
熱間プレス加工は、通常の冷間プレス加工と比較して、プレス工程の生産性が低い。これは、鋼板を、一旦、850℃以上まで加熱する必要があり、通常の炉を用いた場合で、5分程度の時間を必要とするためである。
生産性の低さを補うため、種々の急速加熱技術が検討されている。なかでも、急速加熱に適する通電加熱や高周波誘導加熱の適用が検討されている。しかし、Al系めっき鋼板を通電加熱や高周波誘導加熱で加熱すると、Al系めっき層が約600℃で溶融し、溶融Alに電気が流れてピンチ力が発生し、溶融Alが一部に凝集する現象が発現する。以下、この現象を“めっきの寄り”と記載することがある。
Al系めっき鋼板を加熱すると、めっき層のAlと鋼板のFeが反応して、めっき層は、Al−Fe系の金属間化合物に変化していく。この変化を、通常、合金化という。Al−Feの融点は1100℃以上であるので、合金化が起きると、“めっきの寄り”は生じ難くなる。
“めっきの寄り”が発生して、めっきの厚みが厚くなった部位では、加熱により完全に合金化しきれず、該部位の耐食性が低下する。また、板厚が部分的に厚くなると、めっきが金型に付着する現象や、カジリが生じる場合がある。
“めっきの寄り”を抑制するため、加熱方法の改善が試みられている。特許文献1には、めっき付着量と通電条件を制御して、“めっきの寄り”を防止する技術が開示されている。特許文献2には、通電時の鋼板への電流の流れかたを制御して、“めっきの寄り”を防止する技術が開示されている。特許文献3には、ZnOを含有する皮膜を有するAlめっき鋼板において、ZnOを含有する皮膜が、通電加熱時の“めっきの寄り”の抑制に効果があることが開示されている。
特開2010−70800号公報 特開2012−115864号公報 国際公開第2009/131233号
しかし、特許文献1に開示の技術においては、めっき付着量が多いAlめっき鋼板を通電加熱する際、電流密度を下げる必要がある。電流密度を下げることは、加熱速度が低下することを意味する。特許文献2には、“めっきの寄り”を抑制し得るめっき付着量の限界が開示されておらず、電流の流れかたの制御に基づく効果が不明確である。
特許文献3には、ZnOを含有する皮膜が“めっきの寄り”の抑制に効果があると開示されているが、通電加熱条件は開示されておらず、通電加熱条件と“めっきの寄り”の抑制との関連は不明である。
本発明は、上記従来技術が抱える問題に鑑み、溶融Al系めっき鋼板に通電加熱を適用する際、適正なめっき付着量とZnOを含有する皮膜の量、特に、防錆性能を必要とする鋼部品を熱間プレス加工で製造する際に適用し得る、適正なめっき付着量と、ZnOを含有する皮膜の量を明らかにすることを課題とし、該課題を解決する鋼部品とその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは、熱間プレス加工で製造した鋼部品の表面粗度、塗装後耐食性、及び、スポット溶接性を評価し、溶融Al系めっき鋼板のめっき付着量、ZnOを含有する皮膜の量、及び、通電加熱条件の適正範囲を鋭意調査した。その結果、溶融Al系めっき鋼板のめっき付着量、ZnOを含有する皮膜の量、及び、通電加熱条件の、相互に関連する適正範囲を見いだした。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)(i)鋼板片面当りのめっき付着量が30〜55g/m2で、合金層厚みが5μm以下の溶融Al系めっき層を有する鋼板の表面に、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層を形成し、次いで、
(ii)上記表面皮膜層を有する鋼板を、加熱速度20℃/秒以上で850〜1050℃に加熱し、その後、
(iii)成形加工と同時に急速冷却する
ことを特徴とする高強度鋼部品の製造方法。
(2)前記加熱を、通電加熱又は誘導加熱を用いて行うことを特徴とする前記(1)に記載の高強度鋼部品の製造方法。
(3)前記成形加工と急速冷却を、金型を用いて行うことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高強度鋼部品の製造方法。
(4)前記高強度鋼部品が自動車用鋼部品であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高強度鋼部品の製造方法。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高強度鋼部品の製造方法で製造した高強度鋼部品であって、
(i)上記鋼部品の表面に、(i-1)上記鋼部品の短辺方向における厚みの差異が70μm以下、(i-2)薄い部位の厚みが10〜20μm、(i-3)鋼板側の拡散層の厚みが5μm以下のAl−Fe系金属間化合物層が形成され、
(ii)上記金属間化合物層の表面に、(ii-1)表面粗度Raが0.5〜1.5μm、(ii-2)厚さが0.1〜1.0μmの、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層が形成されている
ことを特徴とする高強度鋼部品。
本発明によれば、溶融Alめっき鋼板を急速加熱した後、熱間プレス加工することで、良好な塗装後耐食性とスポット溶接性を有する高強度鋼部品を生産性よく製造することができる。
急速加熱で生成したAl−Fe金属間化合物層の断面組織を示す図である。
本発明について説明する。
本発明の高強度鋼部品の製造方法(以下「本発明製造方法」ということがある。)は、
(i)鋼板片面当りのめっき付着量が30〜55g/m2で、合金層厚みが5μm以下の溶融Al系めっき層を有する鋼板の表面に、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層を形成し、次いで、
(ii)上記表面皮膜層を有する鋼板を、加熱速度20℃/秒以上で850〜1050℃に加熱し、その後、
(iii)成形加工と同時に急速冷却する
ことを特徴とする。
また、本発明の高強度鋼部品(以下「本発明鋼部品」ということがある。)は、本発明製造方法で製造した高強度鋼部品であって、
(i)上記鋼部品の表面に、(i-1)上記鋼部品の短辺方向における厚みの差異が70μm以下、(i-2)薄い部位の厚みが10〜20μm、(i-3)鋼板側の拡散層の厚みが5μm以下のAl−Fe系金属間化合物層が形成され、
(ii)上記金属間化合物層の表面に、(ii-1)表面粗度Raが0.5〜1.5μm、(ii-2)厚さが0.1〜1.0μmの、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層が形成されている
ことを特徴とする。
まず、本発明製造方法について説明する。
<溶融Al系めっき鋼板>
溶融Al系めっき鋼板は、鋼板の片面又は両面に、Alを主成分とする溶融めっき層が、片面当り30〜55g/m2のめっき付着量で形成され、合金層厚みが5μm以下の鋼板である。本発明製造方法では、溶融Al系めっき鋼板の表面に、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層を形成するが、この表面皮膜層については後述する。
(鋼板)
最終製品が高強度鋼部品であるので、溶融Al系めっきを施す鋼板は、めっき後も、熱間プレスに耐える成形性を有し、かつ、成形後、自動車用鋼部品として必要な機械強度を発現する鋼組織を備える鋼板であればよい。この限りで、鋼板は特定の成分組成の鋼板に限定されないが、一例として、次の鋼板を示す。
質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜0.60%、Mn:0.5〜3.0%、Ti:0.01〜0.10%、B:0.0001〜0.10%を含有し、かつ、残部がFe及び不可避不純物(P、S、Al、N、Cr等)からなる鋼板。
上記鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下、成分組成に係る%は質量%を意味する。
Cは、所要の機械強度の確保に必要な元素である。0.10%未満では、所要の機械強度が得られないので、0.10%以上が好ましい。より好ましくは0.15%以上である。一方、0.40%を超えると、溶融割れが生じ易くなるので、0.40%以下が好ましい。より好ましくは0.35%以下である。
Siは、機械強度の向上に寄与する元素である。0.01%未満では、強度向上効果が十分に得られないので、0.01%以上が好ましい。より好ましくは0.05%以上である。一方、0.60%を超えると、濡れ性が低下し、溶融Al系めっきに不めっきが生じるので、0.60%以下が好ましい。より好ましくは0.40%以下である。
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、機械強度の向上に寄与するとともに、MnSを形成し、Sによる熱間脆性を抑制する元素である。0.5%未満では、添加効果が十分に発現しないので、0.5%以上が好ましい。より好ましくは0.8%以上である。一方、3.0%を超えると、残留γ相が多くなり過ぎて強度が低下するので、3.0%以下が好ましい。より好ましくは2.0%以下である。
Tiは、機械強度の向上、及び、溶融Al系めっき層の耐熱性の向上に寄与する元素である。0.01%未満では、添加効果が十分に発現しないので、0.01%以上が好ましい。より好ましくは0.03%以上である。一方、0.10%を超えると、炭化物や窒化物が生成して組織が軟質化し、所要の機械強度が得られないので、0.10%以下が好ましい。より好ましくは0.08%以下である。
Bは、鋼の焼入れ性を高め、機械強度の向上に寄与する元素である。0.0001%未満では、添加効果が十分に発現しないので、0.0001%以上が好ましい。より好ましくは0.001%以上である。一方、0.10%を超えると、介在物が生成して脆化し、疲労強度が低下するので、0.10%以下が好ましい。より好ましくは0.007%以下である。
溶融Al系めっきを施す鋼板は、上記以外の元素として、溶融Al系めっき後の鋼板の特性を阻害しない範囲で、Cr:0.01〜0.50%、Al:0.01〜0.10%、N:0.001〜0.02%、P:0.001〜0.05%、S:0.001〜0.05%の1種又は2種以上を含有してもよい。
例えば、Crは、Mnと同様に、鋼の焼入れ性を高める元素であり、0.01〜0.50%含有してもよい。Alは、脱酸剤として機能する元素であるので、0.01〜0.10%含有してもよい。溶融Al系めっきを施す鋼板は、原料及び/又は製造工程で不可避的に混入する不純物、例えば、Ni、Cu、Mo、O等を、溶融Al系めっき後の鋼板の特性を阻害しない範囲で含有してもよい。
溶融Al系めっき層を有する上記成分組成の鋼板は、所定温度に加熱後、熱間プレスで、成形加工と同時に急速冷却を施すことにより、1500MPa以上の機械強度を有することができる。上記鋼板は、軽量化のために薄くしても、鋼部品としての所要の機械強度を維持することができる。
(溶融Al系めっき層)
溶融Al系めっき層は、鋼板の片面又は両面に形成する。溶融Al系めっき層は、例えば、溶融めっき法で形成するが、めっき法は溶融めっき法に限定されない。
溶融Al系めっきの付着量は、片面当り30〜55g/m2とする。“めっきの寄り”は、通電による急速加熱で発生し易い。600℃以上に加熱された溶融Alに流れる電流で磁場が発生し、フレミングの左手の法則により、溶融Alに凝集力(ピンチ力)が作用する。めっき付着量が大きいほど、凝集力(ピンチ力)で凝集する溶融Al量が増大するので、“めっきの寄り”が発現し易くなる。
溶融Al系めっきの付着量が、片面当り55g/m2を超えると、上記機構のもとで“めっきの寄り”が発現するので、溶融Al系めっきの付着量は、片面当り55g/m2以下とする。好ましくは、片面当り50g/m2を以下である。
溶融Al系めっきの付着量は、本発明鋼部品の耐食性に影響する。溶融Al系めっきの付着量が、片面当り30g/m2未満では、所要の耐食性を確保できないので、溶融Al系めっきの付着量は、片面当り30g/m2以上とする。好ましくは35g/m2以上である。
溶融Al系めっき層の表面に形成する、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層(後述する)は、“めっきの寄り”を軽減する効果と、熱間プレス後の鋼部品の耐食性を高める効果を奏する。それ故、ZnOを含有する表面皮膜層を形成しない場合、溶融Al系めっきの付着量は、熱間プレス後の鋼部品の耐食性を確保するため、片面当り40g/m2以上とする必要があり、“めっきの寄り”を回避するため、片面当り50g/m2以下とする必要がある。
このことは、ZnOを含有する表面皮膜層を形成しない場合には、鋼板の全長、全幅、表裏において、めっき付着量を40〜50g/m2の範囲内に制御する、即ち、めっき付着量の変動を10g/m2以下に制御することを意味するが、この制御は、現状の付着量の制御能力では極めて困難である。
本発明製造方法では、溶融Al系めっき層の表面に、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層を形成することで、溶融Al系めっきの付着量の下限が30g/m2となり、上限が55g/m2となって、溶融Al系めっきの付着量の許容範囲が広がり、“めっきの寄り”の回避と、熱間プレス後の鋼部品の耐食性の確保が両立可能となる。
鋼板に溶融Al系めっきを施す際、鋼板と溶融Al系めっき層の界面に、合金層、即ち、Al−Fe(−Si)系金属間化合物層が生成する。この合金層の厚みが厚すぎると、熱間プレスに先立つ加熱時に合金層に亀裂が生じ、スケール(Fe酸化物)がAl−Fe(−Si)系金属間化合物層内に生成して、熱間プレス後の鋼部品の耐食性が低下する。それ故、合金層の厚みは5μm以下とする。好ましくは4μm以下である。
合金層の厚みの下限は特に限定しないが、通常、3μm程度の厚みで生成し、1.5μm以下にすることは困難であるので、実質的に1.5μmが下限である。
溶融Al系めっき層は、Alを主成分とするが、他に、Siを含有してもよい。Siを含有すると、溶融めっき時、めっき浴中のAlと鋼板のFeが反応して、溶融Alめっき層と鋼板の界面に生成するAl−Fe系合金層の厚さを制御することができる。
Siが3%未満では、Al-Fe系合金層が厚く成長し、加工時にめっき層割れを助長して、耐食性を阻害するので、Siは3%以上が好ましい。一方、Siが15%を超えると、めっき層の加工性や耐食性が低下するので、15%以下が好ましい。
溶融Al系めっき層は、Si以外の元素として、浴中の機器や鋼帯より溶出するFeを1〜4%含有してもよい。さらに、Alめっき浴中のMg、Ca、Sr、Liの1種又は2種以上を0.01〜1%程度含有してもよい。
鋼板の片面又は両面に形成した溶融Alめっき層は、鋼板の腐食を抑制するとともに、鋼板を熱間プレスする際、鋼板表面が酸化してスケール(鉄酸化物)が発生するのを防止する。なお、溶融Al系めっき層の存在で、スケール除去工程、表面清浄化工程、表面処理工程などを省略でき、生産性が向上する。
また、溶融Al系めっき層は、有機系材料によるめっき被覆や他の金属系材料(例えばZn系)によるめっき被覆より融点が高いので、熱間プレスの際、溶融Al系めっき鋼板を高い温度で加工することが可能となる。
<表面皮膜層>
溶融Alめっき層の表面に、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層を形成する。溶融Alめっき層の表面に、上記換算量でZnOを含有する表面皮膜層を形成することにより、熱間プレス時の潤滑性や、化成処理時の反応性を改善し、溶融Al系めっきの付着量の適正範囲を、40〜50g/m2(表面被覆層がない場合)から35〜55g/m2(表面被覆層がある場合)に広げることができる。
表面皮膜層中、ZnOがZn換算で0.3g/m2未満であると、通電加熱時、“めっきの寄り”が現れて化成処理性が低下し、塗装後耐食性が低下するので、表面皮膜層中のZnOは、Zn換算で0.3g/m2以上とする。好ましくは0.5g/m2以上である。
一方、表面皮膜層中、ZnOがZn換算で1.5g/m2を超えると、鋼部品のスポット溶接性が低下するので、表面皮膜層中のZnOは、Zn換算で1.5g/m2以下とする。好ましくは1.2g/m2以下である。
表面皮膜層は、ZnO微粒子の懸濁液を、例えば、ロールコーター等で、溶融Al系めっき層の表面に塗布し、塗布後、焼付け・乾燥して形成する。ZnO微粒子の懸濁液を有機バインダーと混合し、溶融Al系めっき層の表面に塗布してもよい。また、ZnO微粒子の懸濁液、又は、ZnO微粒子の懸濁液と有機バインダーの混合液を粉体塗装法で塗布してもよい。
有機バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シランカップリング剤などの水溶性樹脂が挙げられる。表面皮膜層を形成する塗布液は、ZnOと有機バインダー以外の成分として、例えば、SiO2、TiO2、Al23などの酸化物、及び/又は、Mg、Ca、Ba、Zr、P、B、V、Si等の化合物を含有してもよい。
有機バインダーを使用しなくてもよいが、使用しない場合、塗布液の溶融Al系めっき層への密着性がやや低く、強い力で擦ると部分的に剥離する懸念があるので、有機バインダーを使用することが好ましい。
塗布後の焼付け・乾燥は、例えば、熱風炉、誘導加熱炉、近赤外線炉を適宜用いて行う。この際、有機バインダーの種類によっては、塗布後の焼付け・乾燥に代わり、例えば、紫外線、電子線で硬化処理を行ってもよい。焼付け温度は200〜600℃が好ましい。なお、表面皮膜層の形成方法は、例示した上記方法に限定されず、種々の形成方法を採用し得る。
表面皮膜層中のZnOの粒径は特に限定されないが、直径50〜1000nm程度が好ましい。ZnOの粒径は、熱間プレス後の粒径である。具体的には、表面皮膜層を有する溶融Al系めっき鋼板を、炉内で、900℃に5〜6分在炉させた後、金型で急冷し、急冷後の表面皮膜層をSEM等で観察して、ZnOの粒径を測定する。
上記保定中、有機バインダー等の有機物や、上記酸化物及び/又は化合物が分解して消失し、表面皮膜層中にはZnOのみが残存するので、ZnOの粒径を容易に測定することができる。
<鋼部品の製造>
本発明製造方法においては、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層を形成した溶融Al系めっき鋼板(以下「本発明めっき鋼板」ということがある。)を、(ii)加熱速度20℃/秒以上で850〜1050℃に加熱し、その後、(iii)成形加工と同時に急速冷却して鋼部品を製造する。
(加熱)
本発明めっき鋼板を、加熱速度20℃/秒以上で850〜1050℃に加熱する。加熱手段は特に限定されないが、20℃/秒以上の加熱速度を容易に達成できる点で、通電加熱又は高周波誘導加熱が好ましい。好ましくは30℃/秒以上である。高い生産性を実現するためには、加熱速度は速い方が好ましく、上限は設定しないが、“めっきの寄り”を回避するためには、200℃/秒以下が好ましい。
本発明めっき鋼板を850〜1050℃に加熱すると、溶融Al系めっきが溶融し、Feとの相互拡散で、Al−Fe化合物、又は、Al−Fe−Si化合物を主体とする合金層(Al−Fe(−Si)合金層)が形成される。Al−Fe(−Si)合金層の融点は高く、1150℃程度であるので、溶融Al系めっき層がAl−Fe(−Si)合金層に変化すると、“めっきの寄り”は生じない。
Al−Fe化合物、及び、Al−Fe−Si化合物は複数あり、高温加熱、又は、長時間加熱すると、Fe濃度の高い化合物へと変化する。その結果、合金層は、複数のAl−Fe化合物、及び/又は、Al−Fe−Si化合物が入り組んだ複雑な組織を示す。
本発明めっき鋼板を炉加熱した場合、合金層は5層が積層したような組織を示すが、通電加熱又は誘導加熱で急速加熱した場合、合金層は明瞭な層状組織を示さない。本発明製造方法において、合金層の組織は規定しないが、急速加熱で合金層を加熱するので、明瞭な層状組織にはならない。
鋼部品として望ましい表面状態は、表面まで合金化され、かつ、合金層中のFe濃度が高くない状態である。合金層中に未合金のAlが残存していると、Al残存部位が急速に腐食して塗膜膨れが起こり易くなる。逆に、合金層中のFe濃度が高くなり過ぎると、合金層自体の耐食性が低下して、塗膜膨れが起こり易くなる。いずれの場合も、塗膜膨れが起き易くなり、鋼部品の塗装後耐食性が低下する。
これは、合金層の耐食性が、合金層中のAl濃度に依存するためである。したがって、鋼部品において優れた塗装後耐食性を確保するためには、合金層を適切な合金化状態にする必要がある。適切な合金化状態は、めっき付着量と加熱条件で決定される。
本発明製造方法では、溶融Al系めっき層を完全に合金化状態にするため、本発明めっき鋼板を、850〜1050℃に加熱する。加熱温度が850℃未満では、合金化が不十分であるので、850℃以上とする。好ましくは900℃以上である。一方、加熱温度が1050℃を超えると、合金化層中の拡散層が成長し過ぎてスポット溶接性が低下するので、1050℃以下とする。好ましくは1000℃以下である。
(成形・冷却)
850〜1050℃に加熱した本発明めっき鋼板を成形加工と同時に急速冷却する。成形加工で鋼部品を製造すると同時に、急速冷却の作用で、鋼部品に所要の機械強度を付与する。例えば、鋼部品に、1500MPa以上の高い機械強度を付与することができる。
<鋼部品>
本発明製造方法で製造した鋼部品(本発明鋼部品)は、
(i)上記鋼部品の表面に、(i-1)上記鋼部品の短辺方向における厚みの差異が70μm以下、(i-2)薄い部位の厚みが10〜20μm、(i-3)鋼板側の拡散層の厚みが5μm以下のAl−Fe系金属間化合物層が形成され、
(ii)上記金属間化合物層の表面に、(ii-1)表面粗度Raが0.5〜1.5μm、(ii-2)厚さが0.1〜1.0μmの、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層が形成されている。
(Al−Fe系金属間化合物層)
本発明鋼部品は、形状が比較的細長いバンパービーム、ドアインパクトビーム、センターピラー等に適用される。この場合、細長い形状の鋼板を加熱することになるが、細長い形状の鋼板の両側の短辺を電極で挟み、長辺方向に通電する。そうすると、通電で発生するピンチ力により、通電方向と平行に“めっきの寄り”が生じ、長辺の中央付近に“めっきの寄り”が発生する。
この“めっきの寄り”により、鋼部品の表面に形成されるAl−Fe金属間化合物層の短辺方向における厚みの差異が70μmを超えると、“めっきの寄り”で厚くなっためっきの部位では、加熱で完全に合金化しきれず、該部位の耐食性が低下し、また、めっきが金型に付着する現象や、カジリが生じる場合がある。それ故、本発明鋼部品においては、該鋼部品の表面に形成されるAl−Fe金属間化合物層の短辺方向における厚みの差異を70μm以下とする。好ましくは50μm以下である。
また、Al−Fe系金属間化合物層の薄い部位の厚みを10〜20μmとする。該薄い部位の厚みが10μm未満では、耐食性が十分に得られないので、10μm以上とする。好ましくは13μm以上である。一方、上記薄い部位の厚みが20μmを超えると、“めっきの寄り”を抑制することが困難となるので、20μm以下とする。好ましくは17μm以下である。
さらに、Al−Fe系金属間化合物層における鋼板側の拡散層の厚みを5μm以下とする。図1に、急速加熱で生成したAl−Fe系金属間化合物層の断面組織を示す。鋼板の断面を研磨した後、ナイタール液でエッチングし、光学顕微鏡で観察した。図1に示す断面組織の拡散層において、色調の薄い層が鋼板側の拡散層である。なお、色調の薄い層と、該層の上の色調の濃い層を合わせて拡散層とする。拡散層の外層は、層状でなく、込み入った組織となっている。
本発明鋼部品では、鋼板側の拡散層の厚みを5μm以下とする。スポット溶接性が拡散層の厚みに依存し、拡散層が5μmを超えると、チリが発生し易くなり、溶接電流の適正範囲が狭くなるので、5μm以下とする。好ましくは4μm以下である。なお、スポット溶接のチリ発生には種々の要因があり、これらを適正化する必要があるが、この点については後述する。
(表面皮膜層)
本発明鋼部品は、自動車用の鋼部品であるので、スポット溶接性は重要である。本発明者らは、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層(以下「ZnO含有皮膜層」ということがある。)のスポット溶接性について調査した。その結果、溶接電源として交流と直流を使用した場合において、スポット溶接性が大きく異なることが判明した。
溶融Al系めっきの付着量が少なく、かつ、ZnO含有皮膜層を有する鋼部材において、直流電源を使用すると、スポット溶接性が大きく低下する。具体的には、チリ発生が起き易くなる。ところが、ZnO含有皮膜層を有する溶融Al系めっき鋼板に急速加熱を施し、溶融Al系めっきを合金化すると、スポット溶接性の低下が抑制されて、チリが発生し難くなる。
急速加熱を適用して、溶融Al系めっきを合金化したとき、めっき層の表面が平滑化する現象が認められており、この平滑化がチリ発生に影響すると考えられる。そこで、本発明鋼部品では、表面粗度の指標として、JIS B 0601(‘01)に定める算術平均粗さ:Raを採用し、Al−Fe系金属間化合物層の表面に形成されているZnO含有皮膜層の粗度を0.5〜1.5μmとする。
Raが1.5μmを超えると、スポット溶接時にチリが発生し易くなるので、Raは1.5μm以下とする。好ましくは1.2μm以下である。急速加熱しても平滑化には限界があり、0.5μm未満にすることは不可能であるので、0.5μmを下限とする。好ましくは0.7μm以上である。
Al−Fe系金属間化合物層の表面に形成されているZnO含有皮膜層の厚みは0.1〜1.0μmとする。ZnO含有皮膜層の厚みが0.1μm未満であると、塗装後耐食性が低下するので、0.1μm以上とする。好ましくは0.3μm以上である。一方、1.0μmを超えると、スポット溶接性が低下するので、1.0μm以下とする。好ましくは0.7μm以下である。
なお、ZnO含有皮膜層は、ZnOを、Zn換算で0.3〜1.5g/m2含有する皮膜であり、厚みは0.1〜1.0μmは、Zn換算の0.3〜1.5g/m2に相当する。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
<実施例1>
表1に示す成分組成の冷延鋼板(板厚1.2mm)に溶融Alめっきを施した。このときの焼鈍温度(?)は約800℃で、Alめっき浴は、Si:9%の他、鋼板から溶出するFeを約2%含有していた。めっき後の付着量をガスワイピング法で、片面25〜60g/m2に調整して冷却した。
冷却後、溶融Alめっき鋼板に、約50nmのZnOを含む懸濁液にアクリル系バインダーをZnO量に対して20%の量を添加した塗布液を、ロールコーターで塗布し、約80℃で焼付け、表面皮膜層を形成した。付着量は、Zn換算で0.1〜4.0g/m2とした。
ZnO含有皮膜層を有する100×500mmの鋼板に、鋼板の長辺に平行に電流が流れるように通電加熱した。鋼板に熱電対を接続して、鋼板温度が最高温度に到達するまで実測し、50℃から、到達温度−30℃までの平均加熱速度を算出した。
最高温度に到達後、約700℃より、鋼板を平坦な金型で挟んで圧下し、下死点で10秒間保持して冷却し焼入れた。焼入鋼板について、“めっきの寄り”の発生、スポット溶接性、耐食性を評価した。評価方法は以下の通りである。
(1)“めっきの寄り”の発生、表面粗度
焼入鋼板から採取した試験片の短辺(100mm)方向に板厚を測定し、最大板厚と最小板厚の差を算出した。また、短辺の中央付近と端部付近より試料を切り出し、光学顕微鏡でAl−Fe層を観察した。
板厚差が大きい試験片においては、中央部に“めっきの寄り”が発生しており、板厚差とAl−Fe層厚みの差はほぼ一致していた。光学顕微鏡による観察に先立ち、試験片を2%ナイタールで腐食し、腐食面を光学顕微鏡で観察し撮像した。光学顕微鏡写真で拡散層の厚みを測定した。また、試験片端部付近の“めっきの寄り”が生じていない部位において、粗度計で表面粗度Raを測定した。
(2)スポット溶接性
試験片から30×50mmの試料を切り出し、スポット溶接における適正電流範囲を調査した。溶接条件は、加圧300kgf、直流電源、通電時間15サイクル(60Hz)、クロム銅、DR(先端6φ:40R)電極とし、下限は4√t、上限はチリ発生として、適正範囲を調査した。
◎:適正範囲2kA超 ○:適正範囲1.5kA超2kA以下
△:適正範囲1kA超1.5kA以下 ×:適正範囲1kA以下
(3)耐食性
試験片を、日本パーカライジング(株)社製化成処理液(PB−SX35)で化成処理した後、試験片に、日本ペイント(株)社製電着塗料(パワーニクス110)を15μm狙いで塗装し、170℃で焼き付けた。
塗装後耐食性の評価は、自動車技術会制定のJASO M609に規定する方法で行った。塗膜にカッターナイフで疵を付与し、端面のみシールして腐食試験に供した。腐食試験では、180サイクル(60日)後の腐食状況を観察して、下記のように評点付けを行った。片側とは、疵からの片側の最大膨れを計測したことを意味する。比較材として、片面45g/m2の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用い、同様に評価した。評点は○であった。
◎:膨れ幅片側3mm以下 ○:膨れ幅片側3mm超5mm以下
△:膨れ幅片側5mm超7mm以下 ×:膨れ幅片側7mm超
表2に結果を示す。めっき付着量(g/m2)、ZnO量(g/m2)、端部Al−Fe層厚み(μm)、ZnO厚み(μm)は、いずれも、片面当りである。板厚差(mm)は、両面のめっき層が影響する数値である。ZnO量(g/m2)は、Znに換算した量であり、ZnO厚み(μm)は、表面皮膜層全体の厚みである。
表2において、めっき付着量が少ない場合(水準1)には、耐食性が低下し、逆に、めっき付着量が多い場合(水準6)には、中央部と端部の板厚差が発生している。板厚差は“めっきの寄り”の発生に対応している。
水準6においては、0.13mmの板厚差が発生している。この板厚差は、片面当り0.065mmであり、Al−Fe層の厚み差65μmに相当し、本発明の範囲内であるが、めっき付着量(58g/m2)が本発明の範囲を超えていて、熱間プレス時、金型凝着が発生した。
水準7は、ZnO含有の表面皮膜層が形成されていない場合である。この場合、“めっきの寄り”が発生し、板厚差が生じ易い。水準7では、熱間プレス時、金型凝着が発生した。一方、ZnO含有皮膜層が厚すぎる場合(水準10)は、直流電源を使用した際のスポット溶接性(直流溶接性)が低下する。
水準11〜21では、通電加熱条件を種々変更した。到達温度が低すぎる場合(水準17)や、到達温度が高すぎる場合(水準21)には、耐食性と直流溶接性が低下する。到達温度が低すぎる場合は、めっき層の合金化が十分に進行せず、特性が低下したと推測される。到達温度が高すぎる場合は、Al−Fe層中のFe濃度が上昇し過ぎて、拡散層も厚くなり過ぎて、特性が低下したと推測される。
水準22は、加熱速度を、電気炉加熱と同等レベルに下げた場合である。この場合は、直流溶接性が低下している。
表2に示す結果から、諸条件を適正にすることで、通電加熱時に発生する“めっきの寄り”を抑制しつつ、優れた耐食性とスポット溶接性を確保できることが解る。
前述したように、本発明によれば、溶融Alめっき鋼板を急速加熱した後、熱間プレス加工することで、良好な塗装後耐食性とスポット溶接性を有する高強度鋼部品を生産性よく製造することができる。本発明の高強度鋼部品は、強度を必要とする機械構造部品や、自動車用部品に好適であるので、本発明は、自動車製造産業や産業機械製造産業において利用可能性が高いものである。

Claims (6)

  1. (i)鋼板片面当りのめっき付着量が30〜55g/m2で、合金層厚みが5μm以下の溶融Al系めっき層を有する鋼板の表面に、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層を形成し、次いで、
    (ii)上記表面皮膜層を有する鋼板を、加熱速度20℃/秒以上で850〜1050℃に加熱し、その後、
    (iii)成形加工と同時に急速冷却する
    ことを特徴とする高強度鋼部品の製造方法。
  2. 前記加熱を、通電加熱又は誘導加熱で行うことを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼部品の製造方法。
  3. 前記成形加工と急速冷却を、金型を用いて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度鋼部品の製造方法。
  4. 前記高強度鋼部品が自動車用鋼部品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼部品の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼部品の製造方法で製造した高強度鋼部品であって、
    (i)上記鋼部品の表面に、(i-1)上記鋼部品の短辺方向における厚みの差異が70μm以下、(i-2)薄い部位の厚みが10〜20μm、(i-3)鋼板側の拡散層の厚みが5μm以下のAl−Fe系金属間化合物層が形成され、
    (ii)上記金属間化合物層の表面に、(ii-1)表面粗度Raが0.5〜1.5μm、(ii-2)厚さが0.1〜1.0μmの、ZnOをZn換算で0.3〜1.5g/m2含有する表面皮膜層が形成されている
    ことを特徴とする高強度鋼部品。
  6. 前記高強度鋼部品が自動車用鋼部品であることを特徴とする請求項5に記載の高強度鋼部品。
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