JP6125313B2 - めっき鋼板の熱間プレス方法 - Google Patents

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本発明は、めっき鋼板の熱間プレス方法に関する。
近年、環境保護及び地球温暖化の抑制のために、化石燃料の消費を抑制する要請が高まっており、この要請は、様々な製造業に対して影響を与えている。例えば、移動手段として日々の生活や活動に欠かせない自動車についても例外ではなく、車体の軽量化などによる燃費の向上等が求められている。しかし、自動車では単に車体の軽量化を実現することは製品品質上許されず、適切な安全性を確保する必要がある。
自動車の構造の多くは、鉄、特に鋼板により形成されており、この鋼板の重量を低減することが、車体の軽量化にとって重要である。しかしながら、上述のように単に鋼板の重量を低減することは許されず、鋼板の機械的強度を維持することが求められる。このような鋼板に対する要請は、自動車製造業のみならず、様々な製造業でも同様に高まっている。従って、鋼板の機械的強度を高めることにより、以前使用されていた鋼板より薄くしても機械的強度を維持又は高めることが可能な鋼板について、研究開発が行われている。
一般的に高い機械的強度を有する材料は、曲げ加工等の成形加工において、成形性、形状凍結性が低下する傾向にあり、複雑な形状に加工する場合、加工そのものが困難となる。この成形性についての問題を解決する手段の一つとして、いわゆる「熱間プレス方法(ホットスタンプ法、ホットプレス法、ダイクエンチ法、プレスハードニングとも呼ばれる。)」が挙げられる。この熱間プレス方法では、成形対象である材料を一旦高温(オーステナイト域)に加熱して、加熱により軟化した鋼板に対してプレス加工を行って成形した後に、冷却する。この熱間プレス方法によれば、材料を一旦高温に加熱して軟化させるので、その材料を容易にプレス加工することができ、更に、成形後の冷却による焼入れ効果により、材料の機械的強度を高めることができる。従って、この熱間プレス加工により、良好な形状凍結性と高い機械的強度とを両立した成形品を得ることができる。
しかしながら、この熱間プレス方法を鋼板に適用した場合、例えば800℃以上の高温に加熱することにより、表面の鉄などが酸化してスケール(酸化物)が発生する。従って、熱間プレス加工を行った後に、このスケールを除去する工程(デスケーリング工程)が必要となり、生産性が低下する。また、耐食性を必要とする部材等では、加工後に部材表面に対して防錆処理や金属被覆を行う必要があり、表面清浄化工程及び表面処理工程が必要となって、やはり生産性が低下する。
このような生産性の低下を抑制する方法の例として、鋼板に被覆を施す方法が挙げられる。一般に鋼板上の被覆としては、有機系材料や無機系材料など様々な材料が使用される。なかでも鋼板に対して犠牲防食作用のある亜鉛系めっき鋼板が、その防食性能と鋼板生産技術の観点から、自動車鋼板等に広く使われている。しかし、熱間プレス加工における加熱温度(700〜1000℃)は、有機系材料の分解温度やZn(亜鉛)の沸点などよりも高く、熱間プレスで加熱したとき、表面のめっき層が蒸発し、表面性状の著しい劣化の原因となる場合がある。
そのため、高温に加熱する熱間プレス加工を行う鋼板に対しては、例えば、有機系材料被覆やZn系の金属被覆に比べて沸点が高いAl(アルミニウム)系の金属被覆した鋼板、いわゆるAlめっき鋼板を使用することが望ましい。Al系の金属被覆を施すことにより、鋼板表面へのスケールの付着を防止でき、デスケーリング工程などの工程が不要となるため生産性が向上する。また、Al系の金属被覆には防錆効果もあるため、塗装後の耐食性も向上する。以上説明したような、Al系の金属被覆を所定の鋼成分を有する鋼に施したAlめっき鋼板を熱間プレス加工に用いる方法が、下記の特許文献1に記載されている。
また、下記の特許文献2には、亜鉛めっき鋼板の熱間プレスにおいて、表面亜鉛めっき層の蒸発による表面劣化を解決する方法が開示されている。この特許文献2に開示された方法は、亜鉛めっき層の表面に高融点の酸化亜鉛(ZnO)層をバリア層として生成させることにより、下層の亜鉛めっき層の蒸発流出を防止するものである。しかしながら、この特許文献2に開示された方法は、亜鉛めっき層を前提としたものである。特許文献2では、Alに関しては0.4%の含有まで許容しているものの、Al濃度は低い方がよいとしており、実質Alを想定していない技術である。この文献での技術課題がZnの蒸発であることから、沸点の高いAlめっきでは当然起こりえない課題である。
また、下記の特許文献3には、ウルツ鉱型の化合物を含有する表面皮膜層をAlめっき鋼板表面に設けた上で、熱間プレス加工を行うことで、熱間潤滑性及び化成処理性を改善する方法が開示されている。
特開2000− 38640号公報 特開2003−129209号公報 国際公開第2009/131233号
A.Yanagida and A.Azushima,CIRP Annals−Manufacturing Technology,58(2009),p.247 M.Nakata et.al.,CAMP−ISIJ,24(2011),p.302
以上説明したように、比較的高融点のAlをめっきしたAlめっき鋼板は、自動車鋼板等の耐食性を要求する部材として有望視され、Alめっき鋼板の熱間プレスへの適用について、上記のように種々の提案がなされている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、より簡便にAlめっき鋼板の熱間湿潤性の低下を抑制して成形性を向上させることが可能な、めっき鋼板の熱間プレス方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは以下のような検討を鋭意行った。すなわち、熱間プレスにより鋼板を成形する際に、表面の摺動特性は重要である。しかしながら、熱間での摩擦係数についてはその測定方法も検討途上にあり、漸く定量値が得られつつある段階にある。その知見によると、非めっき材の熱間摩擦係数は約0.45であり、Alめっき鋼板の熱間摩擦係数は0.5〜0.6であり、Znめっき鋼板の熱間摩擦係数は約0.4であることが報告されている(上記非特許文献1及び非特許文献2を参照。)。
ここで、上記の特許文献3に開示された方法は、Alめっき鋼板表面にZnOを主成分とする熱間摺動性に優れた皮膜を付与するものであり、かかる皮膜によりZnめっき鋼板と同等の熱間摩擦係数が得られることが想定される。これに対して、本発明者らが更なる検討を行った結果、「Alめっき鋼板とZnO皮膜の組合せ」、あるいは「Znめっき鋼板とその表面に熱間プレス工程で生成するZnOと金型表面処理の組合せ」では、いずれも上記のような効果は得られないことも知見した。
得られた知見に基づき、本発明者らが更に鋭意検討を行った結果、Alめっき鋼板におけるAlめっき皮膜の上層に更に皮膜を設けた上で、所定の表面処理が施された金型を利用して熱間プレス加工を行うことで、上記の課題を全て解決できることを見出し、本発明を成すに至った。以下で説明する本発明により、熱間摩擦係数として約0.3を得る技術を構築したのである。そして、その要旨は、以下のとおりである。
(1)少なくとも加工対象物と接する部分に窒化物、酸化物、ホウ化物、炭化物又は金属Crの少なくとも何れかからなる単層構造の表面処理皮膜が0.5〜50μm形成されており、表面粗度Raが0.01〜1μmである金型を利用し、鋼板表面に、両面で40〜200g/mの付着量のAlめっき層と、当該Alめっき層上に形成された、金属Zn量で0.3〜3g/mのZnOを主体とする皮膜と、を有するめっき鋼板を熱間プレスすることを特徴とする、めっき鋼板の熱間プレス方法。
(2)前記金型の表面には、非金属を用いた表面処理が施されることを特徴とする、(1)に記載のめっき鋼板の熱間プレス方法。
(3)前記金型の表面には、窒化物を用いた表面処理が施されることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のめっき鋼板の熱間プレス方法。
)前記めっき鋼板は、鋼成分として、質量%で、C:0.1〜0.5%、Si:0.05〜1%、Mn:0.3〜2.5%、Cr:0.05〜2%、B:0.00003〜0.01%、P:0.001〜0.1%、S:0.001〜0.1%を含有し、残部は、Fe及び不可避的不純物であることを特徴とする、(1)〜()の何れか1に記載のめっき鋼板の熱間プレス方法。
)前記窒化物は、TiN、又は、TiAlNの少なくとも何れか一方であることを特徴とする、(3)に記載のめっき鋼板の熱間プレス方法。
以上説明したように本発明によれば、Alめっき鋼板のAlめっき層の上層にZnOを主成分とする皮膜を形成した上で、所定の表面処理が施された金型により熱間プレス加工を行うことで、Alめっき鋼板の熱間湿潤性の低下を抑制して成形性を向上させることが可能となる。
本発明の第1の実施形態に係るめっき鋼板の熱間プレス方法に用いられるめっき鋼板を説明するための説明図である。 同実施形態に係るめっき鋼板の熱間プレス方法に用いられる金型を説明するための説明図である。 同実施形態に係るめっき鋼板の熱間プレス方法に用いられる金型を説明するための説明図である。 同実施形態に係るめっき鋼板の熱間プレス方法に用いられる金型を説明するための説明図である。 実験例で使用した引抜試験装置を模式的に示した説明図である。 実験例1について説明するための説明図である。 実験例1について説明するための説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(一般的なめっき鋼板の熱間プレス方法について)
本発明者らは、上記課題を解決するために、まず、めっき鋼板に対する一般的な熱間プレス加工処理について、検討を行った。以下では、本発明の第1の実施形態に係るめっき鋼板の熱間プレス方法について説明するに先立ち、本発明者らが得ることのできた知見について、まず簡単に説明する。
上記のように、一般的な熱間プレス加工処理は、700〜1000℃程度まで加工対象である鋼板を加熱した後、鋼により形成された金型を用いて、加熱された鋼板をプレスすることとなる。このような高温で鋼板と金型とが接触するため、鋼板−金型間で結合が生じやすく、結果として、熱間プレス加工処理後の金型の一部に、鋼板の一部が残存してしまうことがあった。
すなわち、熱間プレス加工処理の対象となる鋼板に対して、上記特許文献1に記載のようなAl系の金属被覆を施した場合、熱間プレス加工の前段階での予備加熱の条件によっては、Al被覆は、まず溶融した後、鋼板からのFe(鉄)拡散によってAl−Fe化合物へと変化する。このAl−Fe化合物は成長していき、鋼板の表面に至るまでAl−Fe化合物となる。以下、この化合物層を合金層と称することとする。この合金層は、極めて硬質であるため、プレス加工時における金型との接触により、加工疵が形成される。
つまり、元来Al−Fe合金層は、比較的表面が滑りにくく、潤滑性が悪い。加えて、Al−Fe合金層は、比較的硬いために割れやすく、めっき層にヒビが入ったり、パウダー状に剥離したりしやすい。更に、剥離したAl−Fe合金層が金型に付着したり、Al−Fe表面が強く擦過されて金型に付着したりし、金型にAl−Feが凝着・堆積して、プレス品の品位を低下させることとなる。
このような問題に対応するために、上記特許文献2で開示されているようなZnO皮膜を、めっき層の表面に形成する処理が行われてきた。この際、めっき層の表面に形成されるZnO皮膜の付着量は、一般的に金属Zn量で約2g/m程度であり、ZnO皮膜の膜厚は約1μm程度であった。
その一方で、本発明者らは、予備加熱処理によって成長するAl−Fe合金層の表面粗度について検証を行った結果、Al−Fe合金層の表面粗度は、算術平均粗さRaで2μm以上であり、粗さ曲線の最大断面高さRtで15μm以上であるという知見を得た。この値からも明らかなように、一般的に行われるZnO皮膜の形成処理では、Al−Fe合金層の金型への凝着・堆積を防止することは困難である。また、Alめっき層の表面に形成するZnO皮膜の膜厚を一般的な膜厚である約1μmから十分な厚みまで増加させることは、コストの増加を招くため好ましくない。
そこで、本発明者らは更に鋭意検討を行った結果、Alめっき層の上層としてZnO皮膜が形成されたAlめっき鋼板を、表面処理が施された金型を利用して熱間プレス加工する方法に想到し、以下で説明する本発明に係るめっき鋼板の熱間プレス方法を完成したのである。
(第1の実施形態)
以下では、本発明の第1の実施形態に係るめっき鋼板の熱間プレス方法について説明する。本実施形態に係るめっき鋼板の熱間プレス方法は、Alめっき層の上層にZnOを主体とするZnO皮膜層を形成したAlめっき鋼板を、所定の表面処理が施された金型を利用して熱間プレス加工するものである。
<めっき鋼板について>
まず、本実施形態に係る熱間プレス方法で用いられるめっき鋼板について、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る熱間プレス方法で用いられるめっき鋼板の層構造を模式的に示した説明図である。
本実施形態に係る熱間プレス方法で用いられるめっき鋼板(Alめっき鋼板)10は、図1に示したように、母材となる鋼板101と、鋼板101の両面に形成されたAlめっき層103と、Alめっき層103の表面に形成されたZnO皮膜層105と、を有している。
[鋼板について]
鋼板101としては、例えば、高い機械的強度を有するように形成された鋼板を使用することが好ましい。ここで、上記の機械的強度とは、例えば、引張強さ・降伏点・伸び・絞り・硬さ・衝撃値・疲れ強さ・クリープ強さなどの機械的な変形及び破壊に関する諸性質を意味している。本実施形態で用いられる鋼板101は、上記のような高い機械的強度を有している鋼板であれば特に限定されるものではないが、高い機械的強度を実現する鋼板の成分の一例を挙げると、以下の通りである。
すなわち、高い機械的強度を実現する鋼板は、その成分として、質量%で、
C:0.1〜0.5%
Si:0.05〜1%
Mn:0.3〜2.5%
Cr:0.05〜2%
B:0.0003〜0.01%
P:0.001〜0.1%
S:0.001〜0.1%
を含有し、残部は、Fe及び不可避的不純物であることが好ましい。
以下、鋼中に添加される各成分について、説明する。
C(炭素)は、目的とする機械的強度を確保するために添加される。Cの含有量が0.1%未満となる場合には、十分な機械的強度の向上が得られず、Cを添加する効果が乏しくなるため、好ましくない。一方、Cの含有量が0.5%超過となる場合には、鋼板を更に硬化させることができるものの、溶融割れが生じやすくなるため、好ましくない。従って、Cは、質量%で0.1%以上0.5%以下の含有量で添加されることが好ましい。
Si(ケイ素)は、機械的強度を向上させる強度向上元素の一つであり、Cと同様に、目的とする機械的強度を確保するために添加される。Siの含有量が0.05%未満となる場合には、強度向上効果を発揮しにくく、十分な機械的強度の向上が得られないため、好ましくない。一方、Siは、易酸化性元素でもあるため、Siの含有量が1%超過となる場合には、溶融Alめっきを行う際に、濡れ性が低下して不めっきが生じる可能性があり、好ましくない。従って、Siは、質量%で0.05%以上1%以下の含有量で添加されることが好ましい。
Mn(マンガン)は、鋼を強化させる強化元素の一つであり、焼入れ性を高める元素の一つでもある。更に、Mnは、不可避的不純物の一つであるS(硫黄)による熱間脆性を防止するのにも有効である。Mnの含有量が0.3%未満となる場合には、上記の効果を得ることができず、好ましくない。一方、Mnの含有量が2.5%超過となる場合には、残留γ相が多くなり過ぎて強度が低下する可能性があるため、好ましくない。従って、Mnは、質量%で0.3%以上2.5%以下の含有量で添加されることが好ましい。
Cr(クロム)は、Alめっき層を合金化してAl−Fe合金層を形成する際に、Alめっき層と鋼板母材との界面に生成することでめっき層剥離の原因となる、AlNの生成を抑制する効果がある元素である。また、Crは、耐摩耗性を向上させる元素の一つであり、焼入れ性を高める元素の一つでもある。Crの含有量が0.05%未満となる場合には、上記の効果を得ることができず、好ましくない。また、Crの含有量が2%超過となる場合には、これらの効果が飽和し、また、コストも上昇するため、好ましくない。従って、Crは、質量%で0.05%以上2%以下の含有量で添加されることが好ましい。
B(ホウ素)は、焼入れ時に作用して強度を向上させる効果を有する元素である。Bの含有量が0.0003%未満となる場合には、このような強度向上効果が低いため、好ましくない。一方、Bの含有量が0.01%超過となる場合には、介在物を形成して脆化し、疲労強度を低下させる可能性があるため、好ましくない。従って、Bは、質量%で0.0003%以上0.01%以下の含有量で添加されることが好ましい。
P(リン)は、不可避的に含有される元素である一方で固溶強化元素でもあり、比較的安価に鋼板の強度を向上させることが可能であるが、経済的な精錬限界から含有量の下限を0.001%とした。また、リンの含有量が0.1%超過となる場合には、鋼板の靭性が低下する可能性があるため、好ましくない。従って、Pは、質量%で0.001%以上0.1%以下とすることが好ましい。
S(硫黄)は、不可避的に含有される元素であり、MnSとして鋼中の介在物となって破壊の起点となり、延性や靭性を阻害して加工性劣化の要因となるため、含有量は低いほど好ましく、本実施形態では、含有量の上限を0.1%とした。一方、Sの含有量を低下させるためには、製造コストの増加が見込まれるため、含有量の下限を0.001%とした。
かかる鋼板は、上記の元素の他に、製造工程などで混入しうる不可避的不純物を含んでいてもよい。このような不可避的不純物としては、例えば、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Mo(モリブデン)、O(酸素)、N(窒素)などがある。
また、かかる鋼板に対して、上記の元素に加えて、Ti(チタン)、W(タングステン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Sb(アンチモン)などといった元素を選択的に添加してもよい。
このような成分で形成される鋼板は、熱間プレス方法などによる加熱により焼入れされて、約1500MPa以上の機械的強度を有することができる。このように高い機械的強度を有する鋼板ではあるが、熱間プレス方法により加工することで、加熱により軟化した状態でプレス加工を行うことが可能であるため、容易に成形することができる。また、鋼板は、高い機械的強度を実現でき、ひいては軽量化のために薄くしたとしても機械的強度を維持又は向上させることができる。
[Alめっき層について]
本実施形態に係るAlめっき層103は、図1に例示したように、鋼板101の両面に形成される。このAlめっき層103は、例えば溶融めっき法により鋼板101の表面に形成することが好ましい。しかしながら、Alめっき層103の形成方法はかかる例に限定されるものではなく、電気めっき法、真空蒸着法、クラッド法などといった公知の方法を利用することが可能である。
このようなAlめっき層103の付着量は、両面で40〜200g/mとする。付着量が40g/m未満である場合には、上述のような、Al系の金属被覆に起因する各種の効果を十分に得ることができず、好ましくない。また、付着量が200g/m超過となる場合には、溶融しためっきが加熱炉内のロールに付着するため、好ましくない。また、Alめっき層103の付着量は、より好ましくは、両面で60〜160g/mである。
本実施形態に係るAlめっき層103を溶融めっき法により形成する場合、Al単独のめっき浴を使用することが可能であるが、めっき浴として、Alに3〜15質量%のSiを含有するものを使用することが好ましい。Siは、Alめっき時の合金層成長を抑制する効果があるからである。熱間プレス用途に限れば合金層成長を抑制する必然性は小さいが、溶融めっき法においては、1つの浴で種々の用途の製品を製造するため、Alめっきの加工性を要求される用途においては、合金層成長を抑制することが好ましい。Siの含有量が3質量%未満となる場合には、合金層が成長するため、Alめっき鋼板としての加工性が低下するため好ましくない。一方、Siの含有量が多すぎるとめっき層中に粗大結晶として晶出し、耐食性やめっきの加工性を阻害するため、15%質量以下とすることが好ましい。
このようなめっき浴には、不可避的不純物として、鋼板から溶出したFe等が混入している。また、このようなめっき浴には、Alを主体とした上で、添加元素として、Mn、Cr、Mg(マグネシウム)、Ti、Zn、Sb(アンチモン)、Sn(スズ)、Cu、Ni、Co(コバルト)、In(インジウム)、Bi(ビスマス)、Mo、ミッシュメタルなどを添加してもよい。特に、耐食性向上に効果のある元素がMn、Cr、Mo、Mgであり、これらの元素を少量添加することも可能である。
このような成分で形成されるAlめっき層103は、鋼板101の腐食を防止することができる。また、鋼板を熱間プレス方法により加工する際には、高温に加熱された鋼板の表面が酸化することにより発生するスケール(鉄の酸化物)の発生を、防止可能である。従って、かかるAlめっき層103を設けることで、スケールを除去する工程、表面清浄化工程、表面処理工程などを省略することができ、生産性を向上できる。また、Alめっき層103は、有機系材料によるめっき被覆や他の金属系材料(例えばZn系など)によるめっき被覆よりも沸点などが高いため、熱間プレス方法により成形する際に高い温度での加工が可能となり、熱間プレス加工における成形性を更に高め、かつ、容易に加工できるようになる。
上述の通り、溶融めっき金属被覆時や熱間プレスによる加熱工程時などにおいて、このAlめっき層103に含まれるAlの一部は、鋼板中のFeと合金化しうる。よって、このAlめっき層103は、必ずしも成分が一定な単一の層で形成されるとは限らず、部分的に合金化した層(合金層)を含むものとなる。
[ZnO皮膜層について]
本実施形態に係るZnO皮膜層105は、Alめっき層103の表面に積層される、ZnO(酸化亜鉛)を主体とする皮膜層である。ZnO皮膜層105は、例えば、微粒子を水溶液中に懸濁させた液を用いて、形成することができる。かかるZnO皮膜層105は、熱間プレス加工における潤滑性や化成処理液との反応性を改善する効果がある。
また、ZnO皮膜層105を形成するための懸濁液には、ZnO以外の成分として、例えば有機物のバインダ成分を添加してもよい。このような有機性バインダ成分として、例えば、公知のポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シランカップリング剤などといった水溶性樹脂を挙げることができる。また、ZnO以外の酸化物として、例えば、SiO、TiO、Alなどを添加してもよい。
かかるZnO皮膜層105は、公知の塗布方法により形成することが可能である。塗布方法として、例えば、上記の懸濁液を所定の有機性バインダ成分と混合してAlめっき層の表面にロールコーター等で塗布する方法、粉体塗装による塗布方法などが挙げられる。
ここで、利用するZnOの粒径は、特に限定されるものではないが、例えば、直径50〜1000nm程度であることが好ましい。ZnOの粒径を上記の範囲とすることで、ZnO皮膜層の密着性を向上させることが可能となる。なお、ZnOの粒径の定義は、加熱処理をした後の粒径として定義する。代表的には、900℃で炉内に5〜6分在炉させた後に金型で急冷するプロセスを経た後の粒径を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)などで観察して定めるものとする。このとき、バインダの有機成分は分解されるため、観察サンプル内には、酸化物のみが残存している。
一方、樹脂成分又はシランカップリング剤などといった有機性バインダ成分の含有量は、ZnOに対する質量比で、3〜30%程度とすることが好ましい。含有量が3%未満である場合には、バインダ効果が十分得られず、加熱前の塗膜が剥離しやすくなるため、好ましくない。バインダ効果を安定して得るためには、有機性バインダ成分の含有量を質量比で10%以上とすることが、より好ましい。一方、有機性バインダ成分の含有量が質量比で30%超過となる場合には、加熱時の匂い発生が顕著になるため好ましくない。
かかるZnO皮膜層105の塗布量(付着量)は、鋼板の片面側のZnO皮膜層105において、金属Zn量換算で0.3〜3g/mとする。ZnOの含有量が金属Znとして0.3g/m以上である場合には、潤滑向上効果などを効果的に発揮することができる。一方、ZnOの含有量がZnとして3g/m超過となる場合には、上記Alめっき層103及びZnO皮膜層105の厚みが厚くなり過ぎ、溶接性や塗料密着性が低下する。ZnO皮膜層105の付着量は、更に好ましくは、0.5〜2g/m程度である。かかる範囲の付着量とすることで、熱間プレス時の潤滑性の確保に加え、溶接性や塗料密着性も良好となる。
塗布後の焼付け・乾燥方法としては、例えば、熱風炉・誘導加熱炉・近赤外線炉などの公知の方法を、単独で利用したり組み合わせて利用したりすることが可能である。この際、塗布に使用されるバインダの種類によっては、塗布後の焼付け・乾燥の代わりに、例えば紫外線・電子線などによる硬化処理が行われてもよい。
なお、有機性バインダ成分を使用しない場合には、Alめっき層103上に塗布した後、加熱前の密着性がやや低く、強い力で擦ると部分的に剥離する可能性がある。
以上説明したように、本実施形態に係るZnO皮膜層105は、熱間プレス加工での潤滑性を向上させるなどといった効果を発揮することにより、プレス加工時の成形性及びプレス加工後の耐食性を向上させることができる。また、ZnO皮膜層105は潤滑性に優れ、金型20への凝着を抑制する。仮にAlめっき層103がパウダリングした場合であっても、後述する金型20に形成された表面処理層と共に、ZnO皮膜層105が後続のプレス加工に使用される金型20にパウダ(Al−Fe粉など)が凝着することを防止する。従って、金型20に凝着したAl−Fe粉を除去する工程などを行うことなく、更に生産性を向上させることができる。
また、ZnO皮膜層105は、鋼板101及びAlめっき層103にプレス加工時に発生しうる傷などを防止する保護層としての役割をも担うことができ、成形性を高めることも可能である。更には、このZnO皮膜層105は、スポット溶接性、塗料密着性等の使用性能を低下させることも無い。従って、塗装後耐食性は大幅に改善され、めっきの付着量を更に低減させることも可能である。その結果、急速プレスでの凝着を更に低減させることとなり、生産性は更に高まることとなる。
ここで、ZnO皮膜層105の金属Zn換算量は、一般的に用いられているいわゆる湿式法や乾式法のいずれの分析方法を利用しても測定することが可能である。例えば湿式法を用いる場合には、めっき鋼板10を塩酸、硫酸又は硝酸等の酸に浸漬してめっき層を溶解させ、めっき層の溶解した液を高周波誘導結合プラズマ(Inductively coupled plasma:ICP)発光分析法によりZnを定量する等といった方法を用いることで、測定可能である。また、例えば乾式法を用いる場合には、Alめっき鋼板10を所定のサイズに切り出した後、蛍光X線分析法でZnを定量する等といった方法を用いることで、測定可能である。
以上、図1を参照しながら、本実施形態に係る熱間プレス方法に用いられるAlめっき鋼板10について、詳細に説明した。
<金型について>
次に、図2〜図3Bを参照しながら、本実施形態に係る熱間プレス方法で用いられる金型20について、詳細に説明する。図2〜図3Bは、本実施形態に係る熱間プレス方法で用いられる金型20を模式的に示した説明図である。
本実施形態に係る熱間プレス方法で用いられる金型20は、図2に例示したように、基材201と、基材201のうちAlめっき鋼板10に接する部分に少なくとも設けられた表面処理皮膜203と、を備える。
基材201は、例えば700〜1000℃の熱間域で実施されるプレス成形に適用可能な金属材により形成される。このような基材201の構成材としては、例えば、SKD61、SKD11などといった工具用合金鋼を挙げることができる。
表面処理皮膜203は、Alめっき鋼板10と接する基材201の部分に少なくとも設けられる。この表面処理層203は、窒化物、酸化物、ホウ化物、炭化物などの無機化合物(セラミックス)又は金属クロム(Cr)の少なくとも何れかを用いて形成される。
表面処理皮膜203に用いられる窒化物としては、例えば、TiN、TiAlN、ZrN、HfN、VN、NbN、TaNなどがある。また、ホウ化物としては、例えば、FeB、FeB、FeBなどのホウ化鉄がある。また、炭化物としては、例えばダイヤモンドライクカーボン(Diamond−Like Carbon:DLC)がある。また、酸化物としては、上記金属の酸化物などを挙げることができる。
窒化物、酸化物、ホウ化物、炭化物、金属Cr等の物質を用いて表面処理皮膜203を形成することで、Alめっき鋼板10に存在するAl−Fe化合物と、金型20の基材201との接触を防止することができる。その結果、Alめっき鋼板10−金型20間の摩擦係数を低減させることが可能となり、熱間潤滑性を向上させることができる。
ここで、表面処理皮膜203の形成に利用する物質として、非金属物質、すなわち窒化物、酸化物、ホウ化物、炭化物などの無機化合物を利用することが更に好ましい。非金属物質を用いて表面処理皮膜203を形成することで、Alめっき鋼板10−金型20間で生じうる金属−金属結合を抑制することが可能となり、熱間潤滑性を更に向上させることが可能となる。また、表面処理皮膜203の形成に利用する物質として、窒化物を用いることが更に好ましく、TiN又はTiAlNを用いることが特に好ましい。
これらの物質からなる表面処理皮膜203の膜厚は、0.5〜50μmである。かかる表面処理皮膜203が基材201の表面に形成されることで、Alめっき鋼板10におけるZnO皮膜層105の表面に突出している可能性のあるAl−Fe化合物から、基材201を保護することが可能となる。表面処理皮膜203の膜厚が0.5μm未満である場合には、Alめっき鋼板10の表面に存在している可能性のあるAl−Fe化合物から基材201を保護することができず、金型にAl−Feが凝着・堆積して、プレス品の品位を低下させる可能性があるため、好ましくない。一方、表面処理皮膜203の膜厚が50μm超過である場合には、経済合理性を欠くため、好ましくない。また、表面処理皮膜203の膜厚は、より好ましくは、1〜5μmである。
また、表面処理皮膜203の表面粗度は、算術平均粗さRaで0.01〜1μmである。経済的な製造限界から表面粗度Raを0.01μm未満とすることが困難であるため、表面処理皮膜203の表面粗度の下限値を0.01μmとした。一方、表面処理皮膜203の表面粗度Raが1μm超過である場合には、Alめっき鋼板10に接する金型20の表面の凹凸により、Alめっき鋼板10の表面にプレスに伴う凹凸が発生する可能性があるため、好ましくない。表面処理皮膜203の表面粗度Raは、より好ましくは、0.1〜0.8μmである。
なお、かかる表面処理皮膜203は、図3Aに例示したように、単層構造の皮膜であってもよいし、図3Bに例示したように、2層以上の層からなる複層構造の皮膜であってもよい。
このような表面処理皮膜203は、例えば、各種の物理的蒸着法(Physical Vapor Deposition:PVD)や各種の化学的蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)などといった公知の方法により形成することが可能である。また、上記のような蒸着を利用した方法以外にも、形成する化合物の種類に応じて、公知の成膜方法を適宜選択することが可能である。
ここで、表面処理皮膜203の膜厚及び算術平均粗さRaは、各種の測定機器を用いた公知の方法により測定することが可能である。
以上、図2〜図3Bを参照しながら、本実施形態に係る熱間プレス方法で用いられる金型20について、詳細に説明した。
このように、本実施形態に係る熱間プレス方法は、ZnO皮膜層105の形成されたAlめっき鋼板10と、所定の物質を用いて形成された表面処理皮膜203を有する金型20と、を用いて熱間プレス加工を行うことで、Alめっき鋼板の熱間湿潤性の低下を抑制して成形性を向上させることが可能となる。
<熱間プレス方法による加工>
以上、本実施形態に係るAlめっき鋼板10及び金型20について説明した。続いて、上記構成を有するAlめっき鋼板10が上記構成を有する金型20を用いて熱間プレス方法により加工される場合について説明する。
本実施形態に係る熱間プレス方法では、まず、Alめっき鋼板10を高温に加熱して、鋼板をオーステナイト化する。そして、オーステナイト化したAlめっき鋼板10をプレス加工して成形し、その後、成形されたAlめっき鋼板10を冷却する。このように鋼板を一旦加熱して軟化させることにより、後続するプレス加工を容易に行うことができる。また、上記成分を有する鋼板は、加熱及び冷却されることにより、焼入れされて約1500MPa以上の高い機械的強度を実現することができる。
本実施形態に係るAlめっき鋼板10は、熱間プレス加工を実施するにあたって、加熱される。このときの加熱方法としては、特に限定されるものではなく、通常の電気炉、ラジアントチューブ炉に加え、赤外線加熱等といった公知の方法を利用することができる。
Alめっき鋼板10は、加熱された際に融点以上で溶融し、同時にFeとの相互拡散により、Al−Fe合金層や、Al−Fe−Si合金層へと変化する。Al−Fe合金層や、Al−Fe−Si合金層の融点は高く、1150℃程度である。このようなAl−Fe化合物やAl−Fe−Si化合物は複数存在し、高温加熱あるいは長時間加熱すると、よりFe濃度の高い化合物へと変態していく。最終製品として好ましい表面状態は、表面まで合金化された状態で、かつ、合金層中のFe濃度が高くない状態である。未合金のAlが残存すると、この部位のみが急速に腐食して塗装後耐食性において塗膜膨れが極めて起こりやすくなるために、好ましくない。逆に、合金層中のFe濃度が高くなり過ぎても合金層自体の耐食性が低下して塗装後耐食性において塗膜膨れが起こりやすくなる。これは、合金層の耐食性は合金層中のAl濃度に依存するためである。従って、塗装後耐食性上望ましい合金化状態があり、合金化状態は、めっき付着量と加熱条件で決定される。
本実施形態に係るめっき鋼板の熱間プレス方法において、Alめっき鋼板101を加熱する際、50℃から最高到達板温度より10℃低い温度までの高温下における平均昇温速度を、10℃〜300℃/秒に設定することができる。加熱の平均昇温速度は、めっき鋼板のプレス加工における生産性を左右するが、一般的な平均昇温速度としては、例えば雰囲気加熱の場合には高温下で約5℃/秒程度である。100℃/秒以上の平均昇温速度は、通電加熱あるいは高周波誘導加熱で達成可能である。
本実施形態に係るAlめっき鋼板10は、上述の通り高い平均昇温速度を実現することが可能であるため、生産性を向上させることが可能である。また、平均昇温速度は、合金層の組成や厚みを左右するなど、めっき鋼板における製品品質を制御する重要な要因の一つである。本実施形態に係るAlめっき鋼板10の場合、昇温速度を300℃/秒にまで高めることができるので、より広範囲な製品品質の制御が可能である。最高到達温度については、熱間プレスの原理よりオーステナイト領域で加熱する必要があることから、通常約900〜950℃程度の温度が採用されることが多い。本実施形態において最高到達温度は特に限定しないが、850℃以下では十分な焼入れ硬度が得られない可能性があり好ましくない。またAlめっき層103はAl−Fe合金層に変化する必要があり、この観点からも850℃以下は好ましくない。1000℃を超える温度で合金化が進行し過ぎると、Al−Fe合金層中のFe濃度が上昇して塗装後耐食性の低下を招くことがある。これは昇温速度やAlめっき付着量にも依存するため一概には言えないが、経済性を考慮しても1100℃以上の加熱は望ましくない。
以上、本発明の実施形態に係るめっき鋼板の熱間プレス方法について、詳細に説明した。
以下、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係るめっき鋼板の熱間プレス方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明に係るめっき鋼板の熱間プレス方法のあくまでも一例であって、本発明に係るめっき鋼板の熱間プレス方法が以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実験例1)
<Alめっき鋼板>
通常の方法に従って熱延、冷延した冷延鋼板(板厚2mm、成分は、下記表1に示した。)をAlめっきした。めっき付着量を両面50〜180g/mに調整し、Alめっき表面にZnOを主体とする皮膜を付与した。皮膜中には、有機性バインダとしてウレタン系樹脂をZnOに対して20質量%含有していた。皮膜の量は、金属Zn換算で0.1〜4g/mとし、具体的なZnO量(金属Zn換算量)については、蛍光X線分析法により測定した。
Figure 0006125313
<金型>
上記のAlめっき鋼板を20mm×1000mmに切出し、レーザー溶接して20mm×2000mmの試験片を作成した。このAlめっき鋼板を使用して熱間引抜試験を行った。このとき、摺動させる金型は、工具用鋼SKD61をベースとし、高さ12mm、平衡部の幅20mm、コーナー半径5mmとした。金型は、表面処理しないものと、表面処理したものと、を用い、表面処理種として、TiN、TiAlN、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、シリカ、チタニア、BN、AlN、SiC、金属Crを用いた。DLCはCVD法にて、金属Crはめっき法にて、それ以外はPVD法にて処理し、膜厚は、0.3〜70μmとした。表面処理した金型については表面処理後に、そうでない金型はそのままで、表面粗度を測定した。なお、膜厚は断面観察により測定し、また、表面粗度は、粗度計で測定することにより測定した。
<試験方法>
試験は、以下のようにして実施して、形成したAlめっき鋼板の摩擦係数を測定した。すなわち、上記のようにして形成したAlめっき鋼板10を試験材として、図4に示した引抜試験装置に固定した。この引抜試験装置は、図4に示したように、試験材を加熱する加熱炉と、加熱炉の後段に設けられた油圧アクチュエータと、試験材を引き抜く引抜装置と、が設けられている。また、油圧アクチュエータの内部には、上記のようにして作製した工具(金型)が設置してある。
引抜試験装置に固定された試験材を、赤外線瞬間加熱炉により加熱した。加熱炉では、試験材の加熱部が設定加熱炉温度Tで均一となるまで試験材を保持した。その後、加熱した試験材を一定速度Vで工具の間を移動させた。試験材の加熱部が工具間を通過する際に、試験材に対して所定の荷重を付加し、その際の圧縮荷重Pと引抜荷重Tを測定した。このような試験において、摩擦係数μは、以下の式(1)で算出される。
μ=T/2P ・・・(1)
試験では、試験材を900℃まで加熱した後、加熱炉温度を720℃とした。また、引抜速度を10mm/sとし、圧縮荷重を3.5kNとし、引抜速度を70mmとした。なお、かかる引抜試験は、潤滑油等を使用せずに実施した。なお、算出した摩擦係数の評価を行うために、算出した摩擦係数μを利用し、以下の式(2)で定義される摩擦係数の平均値μを算出した。なお、下記の式(2)において、L=20mm、L=40mmとした。
Figure 0006125313
得られた摩擦係数の平均値(平均摩擦係数)μを、以下の表2にまとめた。
Figure 0006125313
ZnOも金型表面処理もない例(番号1)においては、摩擦係数は0.6程度を示した。ZnO皮膜を付与することで、摩擦係数は0.5以下まで低減した(番号6)。一方、金型表面処理単独では、ほとんど摩擦係数の改善効果は見られなかった(番号7)。これに対して、例えば番号3〜5に示すように、ZnO皮膜と金型表面処理とを両方用いることで、摩擦係数は0.4以下を示した。ZnO皮膜の付着量が0.2g/mの番号2では、効果が不十分であった。金型表面処理の膜厚も影響し、0.6μm以上で安定した摩擦係数を示した(番号8〜13)。金型表面粗度も同じく影響し、小さい方が良好な傾向を示した(番号14〜17)。比較例の番号31、32に示されるように、Zn系めっきを同様に金型表面処理と組み合わせても、十分な効果は得られなかった。Zn系めっき鋼板はホットスタンプの加熱時に表面にZnOが生成することが知られており、本発明で得られた効果は、AlめっきとZnO皮膜と金型表面処理とを組み合わせることで、初めて発現したことが分かる。番号18〜24は種々の金型表面処理を適用したものであるが、金属Crを除いて0.4以下の摩擦係数を示した。金属Crについては、摩擦係数は0.4となり、効果はやや小さかった。
また、番号4の条件で熱間プレス加工後の金型(工具)の表面プロファイルを測定し、得られた結果を、図5及び図6に示した。本発明の実施形態に係るAlめっき鋼板及び金型を用いなかった例(図6)では、金型表面の凹凸が顕著となり、数μm以上の凹凸が存在している。その一方で、本発明の実施形態に係るAlめっき鋼板及び金型を用いた例(図5)では、表面の凹凸変化は抑制され、サブミクロンオーダーの凹凸となっていることがわかる。これは、本実施形態に係るAlめっき鋼板及び金型を用いることで、熱間プレス加工後の金型表面に、Al−Fe化合物等が付着していないことを示している。
以上説明したように、本発明の実施形態に係るAlめっき鋼板及び金型を利用して熱間プレス加工を行うことで、Alめっき鋼板の熱間湿潤性の低下を抑制して成形性を向上させることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10 Alめっき鋼板
20 金型
101 鋼板
103 Alめっき層
105 ZnO皮膜層
201 基材
203 表面処理皮膜

Claims (5)

  1. 少なくとも加工対象物と接する部分に窒化物、酸化物、ホウ化物、炭化物又は金属Crの少なくとも何れかからなる単層構造の表面処理皮膜が0.5〜50μm形成されており、表面粗度Raが0.01〜1μmである金型を利用し、
    鋼板表面に、両面で40〜200g/mの付着量のAlめっき層と、当該Alめっき層上に形成された、金属Zn量で0.3〜3g/mのZnOを主体とする皮膜と、を有するめっき鋼板を熱間プレスする
    ことを特徴とする、めっき鋼板の熱間プレス方法。
  2. 前記金型の表面には、非金属を用いた表面処理が施される
    ことを特徴とする、請求項1に記載のめっき鋼板の熱間プレス方法。
  3. 前記金型の表面には、窒化物を用いた表面処理が施される
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のめっき鋼板の熱間プレス方法。
  4. 前記めっき鋼板は、鋼成分として、質量%で
    C:0.1〜0.5%
    Si:0.05〜1%
    Mn:0.3〜2.5%
    Cr:0.05〜2%
    B:0.00003〜0.01%
    P:0.001〜0.1%
    S:0.001〜0.1%
    を含有し、残部は、Fe及び不可避的不純物である
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載のめっき鋼板の熱間プレス方法。
  5. 前記窒化物は、TiN、又は、TiAlNの少なくとも何れか一方である
    ことを特徴とする、請求項3に記載のめっき鋼板の熱間プレス方法。
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