JP2004359813A - 水溶性潤滑皮膜剤及び成形加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム等の金属の成形加工性に優れ、温風乾燥で容易に皮膜を形成し、しかもその皮膜が、水洗により容易に除去できる水溶性潤滑皮膜剤、及びこれを使用した金属材料の成形加工方法を提供すること。
【解決手段】水溶性高分子樹脂、濡れ性向上剤、及び水を含む水溶性潤滑皮膜剤、これを使用する金属材料の成形加工方法。
【解決手段】水溶性高分子樹脂、濡れ性向上剤、及び水を含む水溶性潤滑皮膜剤、これを使用する金属材料の成形加工方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料の成形加工、特にプレス成形加工等の塑性加工に使用する潤滑皮膜剤に関し、さらに詳細には、金属材料表面に高い潤滑性能を付与することができ、塗布後容易に乾燥し、かつ成形加工後は水洗により容易に溶解除去できる皮膜を形成しうる水溶性潤滑皮膜剤に関する。本発明は特に、自動車車体等のアルミニウム合金プレス成形加工において加工性を向上させる皮膜を付与する水溶性潤滑皮膜剤に関する。本発明はさらに上記水溶性潤滑皮膜剤を使用する金属の成形加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属材料の成形、特にアルミニウム板やアルミニウム合金板のプレス成形加工には、冷延鋼板で使用している低粘度のプレス油(40℃の動粘度lOmm2/s以下)が使用されている。しかし、アルミニウム板やアルミニウム合金板は鋼板に比べ成形性が悪く、加工油として上記冷延鋼板に使用するプレス油を使用するとプレス割れが発生する。この問題を解消するために高粘度のプレス油やワックス系潤滑剤を用いると成形性は向上するが、大きな改善は得られず、加工機械周囲の汚れが目立ち、低粘度油を使用した場合と比較して洗浄性が低下する。例えば、特許文献1には水溶性アクリル共重合体又は水溶性ポリエステル、水溶性セルロースエステル及びワックス、及び必要により2価金属イオン含有化合物を含有する潤滑皮膜剤が記載されている。しかしこの潤滑皮膜剤は、皮膜形成に際し、金属材料表面を200℃程度まで加熱して乾燥するため、温度管理を行う必要があり、またワックスを使用しているため水洗により十分に除去できない、高温時にワックスが溶け出す等の問題がある。
また、特許文献2には、ポリエチレンオキシドの皮膜を有するアルミニウム合金板が記載されているが、皮膜形成に際し、ポリエチレンオキシド水溶液のみではアルミニウム合金板上で塗布液がはじかれてしまい、均一に塗布するのが困難であるという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−221691号公報
【特許文献2】特許第2854262号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形性が乏しく、プレス割れが生じるような金属材料、特にアルミニウム板やアルミニウム合金板等の成形性を向上させることができる水溶性潤滑皮膜剤を提供することである。
本発明の他の目的は、金属表面に対する濡れ性に優れ金属材料表面にはじきを生じることなく塗布でき、容易に皮膜を形成できる水溶性潤滑皮膜剤を提供することである。
本発明の他の目的は、120℃前後の温風乾燥で容易に皮膜を形成し、その皮膜が、水洗により容易に除去できる水溶性潤滑皮膜剤を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、固体潤滑剤やワックス類を含まなくても、アルミニウム板やアルミニウム合金板の成形性を向上させることができ、しかも環境に対する負荷の小さい水溶性潤滑皮膜剤を提供することである。
本発明の他の目的は、上記水溶性潤滑皮膜剤を使用した金属材料の成形加工方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の水溶性潤滑皮膜剤、及びこれを使用した金属材料の成形加工方法を提供するものである。
1.水溶性高分子樹脂、濡れ性向上剤、及び水を含む水溶性潤滑皮膜剤。
2.水溶性高分子樹脂が、ポリビニルアルコール及びポリエチレンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、濡れ性向上剤が、多価アルコール、多価アルコールエーテル、及び多価アルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1記載の水溶性潤滑皮膜剤。
3.ポリビニルアルコールが、平均分子量1万〜16万のものであり、ポリエチレンオキシドが、平均分子量10万〜500万のものである上記2記載の水溶性潤滑皮膜剤。
4.水溶性高分子樹脂の含有量が0.5〜30質量%であり、水溶性高分子樹脂の含有量対濡れ性向上剤の含有量が質量比で1/20〜20/1である上記1〜3のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
5.さらにアニオン界面活性剤を含有する上記1〜4のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
6.アニオン界面活性剤が脂肪酸のアルカリ金属塩である上記5記載の水溶性潤滑皮膜剤。
7.金属材料の成形加工に使用する上記1〜6のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
8.金属材料がアルミニウム板又はアルミニウム合金板である上記7記載の水溶性潤滑皮膜剤。
9.成形加工がプレス成形加工である上記7又は8記載の水溶性潤滑皮膜剤。
10.40℃の動粘度が3〜40mm2/sである上記1〜9のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
11.上記1〜10のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤を使用することを特徴とする金属材料の成形加工方法。
12.金属材料がアルミニウム板又はアルミニウム合金板である上記11記載の金属材料の成形加工方法。
13.成形加工がプレス成形加工である上記11又は12記載の金属材料の成形加工方法。
14.成形加工後、金属材料表面等に付着した水溶性潤滑皮膜剤を水で洗浄する工程を含む上記11〜13のいずれか1項記載の金属材料の成形加工方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤に使用する水溶性高分子樹脂は、皮膜形成性を有する樹脂である。具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。ポリビニルアルコールの平均分子量は、好ましくは1万〜16万、さらに好ましくは2万〜10万である。ポリエチレンオキシドの平均分子量は、好ましくは10万〜500万、さらに好ましくは10万〜380万、最も好ましくは10万〜220万である。
上記範囲より分子量が低いと乾燥後の皮膜の強度が充分でなくなり、また分子量が高いと水溶性が低下し、泡を抱き込み易くなり脱泡性が劣る傾向がある。
【0007】
ポリビニルアルコールは、けん化度が、好ましくは70〜98モル%、さらに好ましくは80〜92モル%、最も好ましくは85〜90モル%、特に87〜89モル%の部分けん化ポリビニルアルコールが望ましい。けん化度が高いと水溶性が低くなり、また、皮膜形成後、水洗による除去が困難となり、けん化度が低いと水に溶解しにくくなる。
【0008】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤中、水溶性高分子樹脂の含有量は好ましくは、0.2〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%、最も好ましくは0.5〜10質量%である。0.2質量%未満では、プレス成形加工に耐え得る厚みを有する皮膜が形成できず、30質量%を超えると、水溶性潤滑皮膜剤の粘性が高くなり過ぎて、均一に塗布することが難しくなり、また作業性も低下するという点で好ましくない。
特にポリビニルアルコールの含有量は好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは1〜20質量%、最も好ましくは2〜20質量%である。
また、ポリエチレンオキシドの含有量は好ましくは0.2〜7質量%、さらに好ましくは0.2〜6質量%、最も好ましくは0.2〜5質量%である。
水溶液高分子樹脂の含有量は、本発明の水溶性潤滑皮膜剤の40℃における粘度が好ましくは3〜40mm2/s、さらに好ましくは10〜20mm2/sとなるように調整することが望ましい。
【0009】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤に使用する濡れ性向上剤としては、多価アルコール、多価アルコールエーテル、多価アルコールエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、2価又は3価の多価アルコール、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール(HO−(CH2CH2O)n−H)(好ましくはn=5〜200(例えば、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600等))等が挙げられる。
多価アルコールエーテルとしては、上記多価アルコールと脂肪族アルコール、芳香族アルコール又はこれらの混合アルコールとのエーテルが挙げられる。上記脂肪族アルコールとしては、炭素原子数が好ましくは7〜60、さらに好ましくは12〜50のものが望ましく、また、上記芳香族アルコールとしては、炭素原子数が好ましくは7〜60、さらに好ましくは14〜18のものが望ましい。上記エーテルはモノエーテル、ジエーテル、ポリエーテルのいずれでもよい。
これら多価アルコールエーテルのHLBは、好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、最も好ましくは13以上である。
【0010】
また、多価アルコールエステルとしては上記多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルが挙げられる。上記脂肪族カルボン酸としては、炭素原子数が好ましくは6以上、さらに好ましくは6〜40のものが望ましい。上記エステルはモノエステル、ジエステル、ポリエステルのいずれでもよい。
上記脂肪族カルボン酸の具体例としては、ひまし油脂肪酸、ペラルゴン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、樹脂酸等が挙げられる。
これら多価アルコールエステルのHLBは、好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、最も好ましくは13以上である。
【0011】
多価アルコールのエーテル又はエステルの具体例としては、ポリオキシエチレンラノリンエーテル(エチレンオキシド付加モル数(EO)=50,75等)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(EO=13.6)、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル(EO=15,18,30)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(EO=78)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO=6,10,16)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO=8,15,24)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩(EO=7,8,10)等が挙げられる。
【0012】
濡れ性向上剤の含有量対水溶性高分子樹脂の含有量は質量比で、好ましくは1/20〜20/1、さらに好ましくは1/10〜16/1である。質量比が1/20未満では、金属材料表面への濡れ性、広がり性、潤滑性が充分でない場合があり、また20/1を越えると水溶性高分子樹脂による皮膜形成が困難になる。
特に、水溶性高分子樹脂がポリビニルアルコールである場合、濡れ性向上剤対ポリビニルアルコールの質量比は、好ましくは1/20〜10/20、さらに好ましくは4/20〜10/20である。また、水溶性高分子樹脂がポリエチレンオキシドである場合、濡れ性向上剤対ポリエチレンオキシドの質量比は、好ましくは1/20〜18/1、さらに好ましくは2/20〜16/1である。
【0013】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤にはさらにアニオン界面活性剤を含有させることが好ましい。アニオン界面活性剤としては、水溶性アルカリ金属塩が好ましく、特に、炭素原子数9〜24の脂肪酸のアルカリ金属塩が好ましい。炭素原子数9〜24の脂肪酸の例としては、ペラルゴン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩が挙げられる。
本発明の水溶性潤滑皮膜剤中のアニオン界面活性剤の含有量は、好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5.0質量%である。
【0014】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤中、水の含有量は、水溶性高分子樹脂、濡れ性向上剤、任意成分であるアニオン界面活性剤及び他の任意成分の合計量を100質量%から差し引いたものであるが、通常は65〜95質量%である。水の含有量が、65質量%より少ないと、水溶性潤滑皮膜剤の粘性が高くなり、均一な塗膜を得ることが困難になり、95質量%より多いと皮膜形成が困難になる。
【0015】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤の塗付量は、洗浄性、加工性の観点から、乾燥後の塗布量で0.5〜2.0g/m2程度が適当である。0.5g/m2未満では潤滑効果が充分でなく、加工性が低下し、2.0g/m2を超えてもさらなる効果の向上はなく不経済である。
【0016】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤を使用して金属材料を成形加工する方法は、例えば、プレス成形加工では、水溶性潤滑皮膜剤を金属材料表面、プレス金型表面、又は金属材料表面とプレス金型表面の両者に塗付し、120℃前後の温風で乾燥して皮膜を形成した後、プレス成形を行う。
【0017】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、(1)適度な伸縮性と強度を持つ水溶性高分子ポリビニルアルコールやポリエチレンオキシド等の水溶性高分子樹脂を皮膜形成剤として使用したこと、(2)濡れ性向上剤として、上記皮膜に保湿作用を持たせる多価アルコール、多価アルコールエーテル又は多価アルコールエステルを使用して、塗布時に加工材料表面に濡れ性や広がり性を付与し、これによって均一な皮膜の形成を容易ならしめ、必要によりさらにアニオン界面活性剤、特に脂肪酸のアルカリ金属塩を使用して、皮膜自身の潤滑性能を向上させたこと、を特徴とするものであり、これにより金属材料、特にアルミニウム板材料やアルミニウム合金板材料等の成形性を向上させたものである。さらに本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、すべての成分を水溶性のものとすることにより、加工後の水洗浄をさらに容易にすることができる。
【0018】
以下実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜6及び比較例1
表1に示す成分を表1に示す割合(質量部)で混合し、実施例1〜6の潤滑皮膜剤を調製した。比較例1は従来のプレス油である。
試験例
上記実施例及び比較例で調製した各潤滑皮膜剤の原液安定性、アルミニウム板に対する濡れ性、乾燥性、乾燥後の皮膜の状態、成形加工性、洗浄除去性を以下の試験方法により試験した。
(1)濡れ性
アルミニウム合金板に潤滑皮膜剤を塗布し、板表面で皮膜剤がはじかれることなく塗布できるかどうかを目視で判断する。はじかれなければ「○」、はじかれれば「×」とする。
(2)乾燥性
アルミニウム合金板4枚に潤滑皮膜剤を塗布し、120℃前後の恒温槽内で90秒間乾燥した後、室温まで冷却し、4枚の板を重ねて室温で24時間静置する。その後、板を1枚ずつ剥がし、板同士の貼り付きの有無を調べる。貼り付きがなければ「○」、あれば「×」とする。
【0019】
(3)乾燥後の皮膜の状態
上記乾燥冷却後、皮膜を強制的に剥がし、皮膜の柔軟性を調べる。はがれた皮膜が2倍以上の伸びを示せば「柔軟」、途中で切れた場合「硬い」とする。
(4)成形加工性(張り出し成形性)
#6000系アルミニウム合金板(厚さ1.0mm)を90mmφの円板に切断し、試験片として用い、この試験片の両面に潤滑皮膜剤を乾燥後の塗付量で0.5〜1.5g/m2となるように塗布し、内径42mmφの雌型と外径40mmφの雄型を用いて、6トンと7トンの加圧にて成形加工を行い、成形高さを測定する。成形高さが大きいほど成形性が優れている。
【0020】
(5)洗浄除去性
#6000系アルミニウム合金板(厚さ1.0mm)の90mmφの試験板を用意し、この試験板の両面に潤滑皮膜剤を乾燥後の塗付量で0.5〜1.5g/m2となるように塗布し、120℃前後の温風で90秒間乾燥後、試験板の質量(b)を測定する。
1000mlのビーカーに水800mlを入れ、その中に潤滑皮膜剤を塗布した試験板を浸潰し、25℃前後で2分間超音波洗浄後、乾燥し、試験板の質量(c)を測定する。
下記の式により皮膜除去率を算出する。
皮膜除去率(%)=[(c)−(a)]/[(b)−(a)]×100
皮膜除去率が高いほど洗浄除去性が高い。
上記試験の結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
水溶性樹脂A:平均分子量30万のポリビニルアルコール(けん化度87〜89)
水溶性樹脂B:平均分子量30万のポリエチレンオキシド
水溶性樹脂C:平均分子量200万のポリエチレンオキシド
濡れ性向上剤A:グリセリン
濡れ性向上剤B:ジステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB=17.0)
濡れ性向上剤C:ポリオキシエチレン樹脂酸エステル(HLB=16.1)
濡れ性向上剤D:ポリオキシエチレンラノリンエーテル(HLB=13.0)
アニオン界面活性剤A:オレイン酸カリウム
【0023】
表1から、本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、アルミニウム板に対する濡れ性、乾燥性、乾燥後の皮膜の状態、成形加工性、及び洗浄除去性に優れていることがわかる。アニオン界面活性剤を含む実施例5及び6の潤滑皮膜剤は、これを含まないものと比較して成形加工性がより優れている。
これに対して、従来のプレス油を用いた比較例1では、成形加工性が低く、乾燥性が悪く、皮膜は形成されず、洗浄除去性も極めて低いことがわかる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、金属材料、特にアルミニウム板及びアルミニウム合金板の塑性加工、特にプレス成形加工の際に使用され、透明で、高い密着性、均一性、伸縮性を持つ皮膜を与える。この皮膜は、従来の油系プレス油に比べ高い成形加工性を有する。
本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、金属材料に塗布後、数十秒の120℃前後の温風によって容易に乾燥し、皮膜を形成する。この皮膜は、成形加工後も水溶性を保持しているため、水洗により容易に除去可能であり、成形加工品の表面に皮膜の痕跡を残すことなく洗い落とせる。従って、洗浄後、廃水処理をする際にフィルターの閉塞はおこさない。
本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、従来の皮膜形成剤が含有する固体潤滑剤を用いなくても、水溶性高分子樹脂、及び濡れ性向上剤の存在により充分な加工性能を有する。また、皮膜形成成分として生分解性樹脂のみを使用してもよく、環境に対する負荷が小さい。
本発明の水溶性潤滑皮膜剤を使用した金属材料、特にアルミニウム板及びアルミニウム合金板のプレス成形加工では、プレス割れを生じることがなく、また成形加工品表面に潤滑皮膜剤が残存することもなく、外観の美しい成形品を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料の成形加工、特にプレス成形加工等の塑性加工に使用する潤滑皮膜剤に関し、さらに詳細には、金属材料表面に高い潤滑性能を付与することができ、塗布後容易に乾燥し、かつ成形加工後は水洗により容易に溶解除去できる皮膜を形成しうる水溶性潤滑皮膜剤に関する。本発明は特に、自動車車体等のアルミニウム合金プレス成形加工において加工性を向上させる皮膜を付与する水溶性潤滑皮膜剤に関する。本発明はさらに上記水溶性潤滑皮膜剤を使用する金属の成形加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属材料の成形、特にアルミニウム板やアルミニウム合金板のプレス成形加工には、冷延鋼板で使用している低粘度のプレス油(40℃の動粘度lOmm2/s以下)が使用されている。しかし、アルミニウム板やアルミニウム合金板は鋼板に比べ成形性が悪く、加工油として上記冷延鋼板に使用するプレス油を使用するとプレス割れが発生する。この問題を解消するために高粘度のプレス油やワックス系潤滑剤を用いると成形性は向上するが、大きな改善は得られず、加工機械周囲の汚れが目立ち、低粘度油を使用した場合と比較して洗浄性が低下する。例えば、特許文献1には水溶性アクリル共重合体又は水溶性ポリエステル、水溶性セルロースエステル及びワックス、及び必要により2価金属イオン含有化合物を含有する潤滑皮膜剤が記載されている。しかしこの潤滑皮膜剤は、皮膜形成に際し、金属材料表面を200℃程度まで加熱して乾燥するため、温度管理を行う必要があり、またワックスを使用しているため水洗により十分に除去できない、高温時にワックスが溶け出す等の問題がある。
また、特許文献2には、ポリエチレンオキシドの皮膜を有するアルミニウム合金板が記載されているが、皮膜形成に際し、ポリエチレンオキシド水溶液のみではアルミニウム合金板上で塗布液がはじかれてしまい、均一に塗布するのが困難であるという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−221691号公報
【特許文献2】特許第2854262号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形性が乏しく、プレス割れが生じるような金属材料、特にアルミニウム板やアルミニウム合金板等の成形性を向上させることができる水溶性潤滑皮膜剤を提供することである。
本発明の他の目的は、金属表面に対する濡れ性に優れ金属材料表面にはじきを生じることなく塗布でき、容易に皮膜を形成できる水溶性潤滑皮膜剤を提供することである。
本発明の他の目的は、120℃前後の温風乾燥で容易に皮膜を形成し、その皮膜が、水洗により容易に除去できる水溶性潤滑皮膜剤を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、固体潤滑剤やワックス類を含まなくても、アルミニウム板やアルミニウム合金板の成形性を向上させることができ、しかも環境に対する負荷の小さい水溶性潤滑皮膜剤を提供することである。
本発明の他の目的は、上記水溶性潤滑皮膜剤を使用した金属材料の成形加工方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の水溶性潤滑皮膜剤、及びこれを使用した金属材料の成形加工方法を提供するものである。
1.水溶性高分子樹脂、濡れ性向上剤、及び水を含む水溶性潤滑皮膜剤。
2.水溶性高分子樹脂が、ポリビニルアルコール及びポリエチレンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、濡れ性向上剤が、多価アルコール、多価アルコールエーテル、及び多価アルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1記載の水溶性潤滑皮膜剤。
3.ポリビニルアルコールが、平均分子量1万〜16万のものであり、ポリエチレンオキシドが、平均分子量10万〜500万のものである上記2記載の水溶性潤滑皮膜剤。
4.水溶性高分子樹脂の含有量が0.5〜30質量%であり、水溶性高分子樹脂の含有量対濡れ性向上剤の含有量が質量比で1/20〜20/1である上記1〜3のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
5.さらにアニオン界面活性剤を含有する上記1〜4のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
6.アニオン界面活性剤が脂肪酸のアルカリ金属塩である上記5記載の水溶性潤滑皮膜剤。
7.金属材料の成形加工に使用する上記1〜6のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
8.金属材料がアルミニウム板又はアルミニウム合金板である上記7記載の水溶性潤滑皮膜剤。
9.成形加工がプレス成形加工である上記7又は8記載の水溶性潤滑皮膜剤。
10.40℃の動粘度が3〜40mm2/sである上記1〜9のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
11.上記1〜10のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤を使用することを特徴とする金属材料の成形加工方法。
12.金属材料がアルミニウム板又はアルミニウム合金板である上記11記載の金属材料の成形加工方法。
13.成形加工がプレス成形加工である上記11又は12記載の金属材料の成形加工方法。
14.成形加工後、金属材料表面等に付着した水溶性潤滑皮膜剤を水で洗浄する工程を含む上記11〜13のいずれか1項記載の金属材料の成形加工方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤に使用する水溶性高分子樹脂は、皮膜形成性を有する樹脂である。具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。ポリビニルアルコールの平均分子量は、好ましくは1万〜16万、さらに好ましくは2万〜10万である。ポリエチレンオキシドの平均分子量は、好ましくは10万〜500万、さらに好ましくは10万〜380万、最も好ましくは10万〜220万である。
上記範囲より分子量が低いと乾燥後の皮膜の強度が充分でなくなり、また分子量が高いと水溶性が低下し、泡を抱き込み易くなり脱泡性が劣る傾向がある。
【0007】
ポリビニルアルコールは、けん化度が、好ましくは70〜98モル%、さらに好ましくは80〜92モル%、最も好ましくは85〜90モル%、特に87〜89モル%の部分けん化ポリビニルアルコールが望ましい。けん化度が高いと水溶性が低くなり、また、皮膜形成後、水洗による除去が困難となり、けん化度が低いと水に溶解しにくくなる。
【0008】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤中、水溶性高分子樹脂の含有量は好ましくは、0.2〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%、最も好ましくは0.5〜10質量%である。0.2質量%未満では、プレス成形加工に耐え得る厚みを有する皮膜が形成できず、30質量%を超えると、水溶性潤滑皮膜剤の粘性が高くなり過ぎて、均一に塗布することが難しくなり、また作業性も低下するという点で好ましくない。
特にポリビニルアルコールの含有量は好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは1〜20質量%、最も好ましくは2〜20質量%である。
また、ポリエチレンオキシドの含有量は好ましくは0.2〜7質量%、さらに好ましくは0.2〜6質量%、最も好ましくは0.2〜5質量%である。
水溶液高分子樹脂の含有量は、本発明の水溶性潤滑皮膜剤の40℃における粘度が好ましくは3〜40mm2/s、さらに好ましくは10〜20mm2/sとなるように調整することが望ましい。
【0009】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤に使用する濡れ性向上剤としては、多価アルコール、多価アルコールエーテル、多価アルコールエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、2価又は3価の多価アルコール、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール(HO−(CH2CH2O)n−H)(好ましくはn=5〜200(例えば、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600等))等が挙げられる。
多価アルコールエーテルとしては、上記多価アルコールと脂肪族アルコール、芳香族アルコール又はこれらの混合アルコールとのエーテルが挙げられる。上記脂肪族アルコールとしては、炭素原子数が好ましくは7〜60、さらに好ましくは12〜50のものが望ましく、また、上記芳香族アルコールとしては、炭素原子数が好ましくは7〜60、さらに好ましくは14〜18のものが望ましい。上記エーテルはモノエーテル、ジエーテル、ポリエーテルのいずれでもよい。
これら多価アルコールエーテルのHLBは、好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、最も好ましくは13以上である。
【0010】
また、多価アルコールエステルとしては上記多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルが挙げられる。上記脂肪族カルボン酸としては、炭素原子数が好ましくは6以上、さらに好ましくは6〜40のものが望ましい。上記エステルはモノエステル、ジエステル、ポリエステルのいずれでもよい。
上記脂肪族カルボン酸の具体例としては、ひまし油脂肪酸、ペラルゴン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、樹脂酸等が挙げられる。
これら多価アルコールエステルのHLBは、好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、最も好ましくは13以上である。
【0011】
多価アルコールのエーテル又はエステルの具体例としては、ポリオキシエチレンラノリンエーテル(エチレンオキシド付加モル数(EO)=50,75等)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(EO=13.6)、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル(EO=15,18,30)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(EO=78)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO=6,10,16)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO=8,15,24)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩(EO=7,8,10)等が挙げられる。
【0012】
濡れ性向上剤の含有量対水溶性高分子樹脂の含有量は質量比で、好ましくは1/20〜20/1、さらに好ましくは1/10〜16/1である。質量比が1/20未満では、金属材料表面への濡れ性、広がり性、潤滑性が充分でない場合があり、また20/1を越えると水溶性高分子樹脂による皮膜形成が困難になる。
特に、水溶性高分子樹脂がポリビニルアルコールである場合、濡れ性向上剤対ポリビニルアルコールの質量比は、好ましくは1/20〜10/20、さらに好ましくは4/20〜10/20である。また、水溶性高分子樹脂がポリエチレンオキシドである場合、濡れ性向上剤対ポリエチレンオキシドの質量比は、好ましくは1/20〜18/1、さらに好ましくは2/20〜16/1である。
【0013】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤にはさらにアニオン界面活性剤を含有させることが好ましい。アニオン界面活性剤としては、水溶性アルカリ金属塩が好ましく、特に、炭素原子数9〜24の脂肪酸のアルカリ金属塩が好ましい。炭素原子数9〜24の脂肪酸の例としては、ペラルゴン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩が挙げられる。
本発明の水溶性潤滑皮膜剤中のアニオン界面活性剤の含有量は、好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5.0質量%である。
【0014】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤中、水の含有量は、水溶性高分子樹脂、濡れ性向上剤、任意成分であるアニオン界面活性剤及び他の任意成分の合計量を100質量%から差し引いたものであるが、通常は65〜95質量%である。水の含有量が、65質量%より少ないと、水溶性潤滑皮膜剤の粘性が高くなり、均一な塗膜を得ることが困難になり、95質量%より多いと皮膜形成が困難になる。
【0015】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤の塗付量は、洗浄性、加工性の観点から、乾燥後の塗布量で0.5〜2.0g/m2程度が適当である。0.5g/m2未満では潤滑効果が充分でなく、加工性が低下し、2.0g/m2を超えてもさらなる効果の向上はなく不経済である。
【0016】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤を使用して金属材料を成形加工する方法は、例えば、プレス成形加工では、水溶性潤滑皮膜剤を金属材料表面、プレス金型表面、又は金属材料表面とプレス金型表面の両者に塗付し、120℃前後の温風で乾燥して皮膜を形成した後、プレス成形を行う。
【0017】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、(1)適度な伸縮性と強度を持つ水溶性高分子ポリビニルアルコールやポリエチレンオキシド等の水溶性高分子樹脂を皮膜形成剤として使用したこと、(2)濡れ性向上剤として、上記皮膜に保湿作用を持たせる多価アルコール、多価アルコールエーテル又は多価アルコールエステルを使用して、塗布時に加工材料表面に濡れ性や広がり性を付与し、これによって均一な皮膜の形成を容易ならしめ、必要によりさらにアニオン界面活性剤、特に脂肪酸のアルカリ金属塩を使用して、皮膜自身の潤滑性能を向上させたこと、を特徴とするものであり、これにより金属材料、特にアルミニウム板材料やアルミニウム合金板材料等の成形性を向上させたものである。さらに本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、すべての成分を水溶性のものとすることにより、加工後の水洗浄をさらに容易にすることができる。
【0018】
以下実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜6及び比較例1
表1に示す成分を表1に示す割合(質量部)で混合し、実施例1〜6の潤滑皮膜剤を調製した。比較例1は従来のプレス油である。
試験例
上記実施例及び比較例で調製した各潤滑皮膜剤の原液安定性、アルミニウム板に対する濡れ性、乾燥性、乾燥後の皮膜の状態、成形加工性、洗浄除去性を以下の試験方法により試験した。
(1)濡れ性
アルミニウム合金板に潤滑皮膜剤を塗布し、板表面で皮膜剤がはじかれることなく塗布できるかどうかを目視で判断する。はじかれなければ「○」、はじかれれば「×」とする。
(2)乾燥性
アルミニウム合金板4枚に潤滑皮膜剤を塗布し、120℃前後の恒温槽内で90秒間乾燥した後、室温まで冷却し、4枚の板を重ねて室温で24時間静置する。その後、板を1枚ずつ剥がし、板同士の貼り付きの有無を調べる。貼り付きがなければ「○」、あれば「×」とする。
【0019】
(3)乾燥後の皮膜の状態
上記乾燥冷却後、皮膜を強制的に剥がし、皮膜の柔軟性を調べる。はがれた皮膜が2倍以上の伸びを示せば「柔軟」、途中で切れた場合「硬い」とする。
(4)成形加工性(張り出し成形性)
#6000系アルミニウム合金板(厚さ1.0mm)を90mmφの円板に切断し、試験片として用い、この試験片の両面に潤滑皮膜剤を乾燥後の塗付量で0.5〜1.5g/m2となるように塗布し、内径42mmφの雌型と外径40mmφの雄型を用いて、6トンと7トンの加圧にて成形加工を行い、成形高さを測定する。成形高さが大きいほど成形性が優れている。
【0020】
(5)洗浄除去性
#6000系アルミニウム合金板(厚さ1.0mm)の90mmφの試験板を用意し、この試験板の両面に潤滑皮膜剤を乾燥後の塗付量で0.5〜1.5g/m2となるように塗布し、120℃前後の温風で90秒間乾燥後、試験板の質量(b)を測定する。
1000mlのビーカーに水800mlを入れ、その中に潤滑皮膜剤を塗布した試験板を浸潰し、25℃前後で2分間超音波洗浄後、乾燥し、試験板の質量(c)を測定する。
下記の式により皮膜除去率を算出する。
皮膜除去率(%)=[(c)−(a)]/[(b)−(a)]×100
皮膜除去率が高いほど洗浄除去性が高い。
上記試験の結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
水溶性樹脂A:平均分子量30万のポリビニルアルコール(けん化度87〜89)
水溶性樹脂B:平均分子量30万のポリエチレンオキシド
水溶性樹脂C:平均分子量200万のポリエチレンオキシド
濡れ性向上剤A:グリセリン
濡れ性向上剤B:ジステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB=17.0)
濡れ性向上剤C:ポリオキシエチレン樹脂酸エステル(HLB=16.1)
濡れ性向上剤D:ポリオキシエチレンラノリンエーテル(HLB=13.0)
アニオン界面活性剤A:オレイン酸カリウム
【0023】
表1から、本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、アルミニウム板に対する濡れ性、乾燥性、乾燥後の皮膜の状態、成形加工性、及び洗浄除去性に優れていることがわかる。アニオン界面活性剤を含む実施例5及び6の潤滑皮膜剤は、これを含まないものと比較して成形加工性がより優れている。
これに対して、従来のプレス油を用いた比較例1では、成形加工性が低く、乾燥性が悪く、皮膜は形成されず、洗浄除去性も極めて低いことがわかる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、金属材料、特にアルミニウム板及びアルミニウム合金板の塑性加工、特にプレス成形加工の際に使用され、透明で、高い密着性、均一性、伸縮性を持つ皮膜を与える。この皮膜は、従来の油系プレス油に比べ高い成形加工性を有する。
本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、金属材料に塗布後、数十秒の120℃前後の温風によって容易に乾燥し、皮膜を形成する。この皮膜は、成形加工後も水溶性を保持しているため、水洗により容易に除去可能であり、成形加工品の表面に皮膜の痕跡を残すことなく洗い落とせる。従って、洗浄後、廃水処理をする際にフィルターの閉塞はおこさない。
本発明の水溶性潤滑皮膜剤は、従来の皮膜形成剤が含有する固体潤滑剤を用いなくても、水溶性高分子樹脂、及び濡れ性向上剤の存在により充分な加工性能を有する。また、皮膜形成成分として生分解性樹脂のみを使用してもよく、環境に対する負荷が小さい。
本発明の水溶性潤滑皮膜剤を使用した金属材料、特にアルミニウム板及びアルミニウム合金板のプレス成形加工では、プレス割れを生じることがなく、また成形加工品表面に潤滑皮膜剤が残存することもなく、外観の美しい成形品を製造することができる。
Claims (14)
- 水溶性高分子樹脂、濡れ性向上剤、及び水を含む水溶性潤滑皮膜剤。
- 水溶性高分子樹脂が、ポリビニルアルコール及びポリエチレンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、濡れ性向上剤が、多価アルコール、多価アルコールエーテル、及び多価アルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の水溶性潤滑皮膜剤。
- ポリビニルアルコールが、平均分子量1万〜16万のものであり、ポリエチレンオキシドが、平均分子量10万〜500万のものである請求項2記載の水溶性潤滑皮膜剤。
- 水溶性高分子樹脂の含有量が0.5〜30質量%であり、水溶性高分子樹脂の含有量対濡れ性向上剤の含有量が質量比で1/20〜20/1である請求項1〜3のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
- さらにアニオン界面活性剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
- アニオン界面活性剤が脂肪酸のアルカリ金属塩である請求項5記載の水溶性潤滑皮膜剤。
- 金属材料の成形加工に使用する請求項1〜6のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
- 金属材料がアルミニウム板又はアルミニウム合金板である請求項7記載の水溶性潤滑皮膜剤。
- 成形加工がプレス成形加工である請求項7又は8記載の水溶性潤滑皮膜剤。
- 40℃の動粘度が3〜40mm2/sである請求項1〜9のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載の水溶性潤滑皮膜剤を使用することを特徴とする金属材料の成形加工方法。
- 金属材料がアルミニウム板又はアルミニウム合金板である請求項11記載の金属材料の成形加工方法。
- 成形加工がプレス成形加工である請求項11又は12記載の金属材料の成形加工方法。
- 成形加工後、金属材料表面等に付着した水溶性潤滑皮膜剤を水で洗浄する工程を含む請求項11〜13のいずれか1項記載の金属材料の成形加工方法。
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- 2003-06-04 JP JP2003159687A patent/JP2004359813A/ja active Pending
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