JPH10231494A - 水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油及び鋼板冷間圧延方法 - Google Patents

水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油及び鋼板冷間圧延方法

Info

Publication number
JPH10231494A
JPH10231494A JP9308281A JP30828197A JPH10231494A JP H10231494 A JPH10231494 A JP H10231494A JP 9308281 A JP9308281 A JP 9308281A JP 30828197 A JP30828197 A JP 30828197A JP H10231494 A JPH10231494 A JP H10231494A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
rolling
water
lubricating oil
weight
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP9308281A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2972169B2 (ja
Inventor
Yuichi Haraguchi
祐一 原口
Masayuki Yamashita
雅之 山下
Takehiko Ichimoto
武彦 市本
Kenichi Miyamoto
健一 宮本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Kao Corp
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp, Nippon Steel Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP9308281A priority Critical patent/JP2972169B2/ja
Publication of JPH10231494A publication Critical patent/JPH10231494A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2972169B2 publication Critical patent/JP2972169B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)
  • Lubricants (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 循環使用方式の鋼板冷間圧延機において、軟
質材で1700m/分以上、硬質材で1500m/分以上の高速
圧延に適した潤滑性と優れた耐スカム堆積性を有し、実
用性のあるエマルション型鋼板冷間圧延油用潤滑油及び
これを用いた高速圧延方法の提供。 【解決手段】 水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油は、
(a)鉱物油及び/又は炭素数12〜22の脂肪族カルボン
酸と炭素数1〜12の脂肪族アルコールとから得られるモ
ノエステル、(b)油脂類、及び(c)炭素数16〜20の
高級脂肪族不飽和酸のダイマー酸及び/又はポリマー酸
とポリオール類とから得られるエステルであり、かつ残
余のカルボキシル基又は水酸基が炭素数12〜22の1価ア
ルコール又は1価脂肪酸によってエステル化されている
複合エステル類を含有する。さらに(d)リン系極圧剤
又は硫黄系極圧剤を含有できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼板の冷間圧延油
に用いる新規な水分散型の潤滑油、及びその使用方法に
関する。より詳しくは、優れた圧延潤滑性、板表面品質
性、耐ミル汚れ性が要求され、しかも高速圧延化による
生産性向上と堆積スカムによる火災の危険性がないこと
を目指す冷間圧延機に用いるに適した、循環使用方式の
水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油に関するものである。
【0002】さらに本発明は、こうした潤滑油を用いて
鋼板を高速圧延する方法、より特定的には軟質材で1700
m/分以上、硬質材で1500m/分以上の速度において、
チャタリングやヒートスクラッチ(焼き付き傷)などの
潤滑不良や、ミル廻りへのスカムの堆積、火災の危険
性、美観の低下や作業性の悪化などの問題を起こさずに
高速圧延する方法に関する。
【0003】
【従来の技術】鋼板の冷間圧延油としては、潤滑成分と
して牛脂やパーム油などの天然油脂を主成分とし、これ
らに油性向上剤や極圧添加剤等の潤滑成分や防錆剤、酸
化防止剤などを配合し、さらに乳化剤や分散剤を加えて
から水と混合して水系エマルションとしたものが、従来
から用いられて来た。鉄鋼メーカーにおいては近年、既
存生産設備の有効利用の観点から、高速圧延化を図るこ
とによって生産性を向上することが大きな課題となって
いる。製造ラインによっても異なるが、例えば循環使用
方式の圧延ラインでは、一般に鋼板の平均圧延速度とし
て軟質材で1700m/分以上、硬質材で1500m/分以上の
高速圧延を行うことが求められている。しかしながら天
然油脂を主成分とする従来の冷間圧延油は、低コストで
はあるが、スカムが多量に堆積すること、循環安定性が
不足すること、そして高速圧延化では潤滑性が不十分で
あることといった、数多くの問題点があった。加えて、
従来の牛脂などの固体脂を用いた圧延油を使用した場
合、ミル廻りのスカムの堆積が多く、作業環境が悪化す
るのみならず、火災事故の原因ともなっている。そのた
め、固体脂を用いない圧延油を用いて圧延することが長
年の課題となっている。
【0004】これに関して、室温で固化しない液状の基
油、特に合成エステルを用いて高速圧延できる圧延油が
種々提案されている。例えば、多価アルコールと脂肪酸
のエステルであるいわゆるヒンダードエステルを用いた
ものとして、特開平6−108079号公報や特開平6−3223
85号公報に記載の圧延油があり、またヒンダードエステ
ルを複合エステルと併用したものとして特開平6−2797
78号公報等に記載の圧延油が挙げられる。しかしこれら
は高速圧延性が十分とは言えず、またミル廻りへのスカ
ムの堆積を低減するといった要求性能等も満足できる水
準には至っていない。
【0005】一般的に、圧延油の基油粘度を高くすれば
潤滑性が向上することはよく知られている(山本普康ら
「塑性と加工」37−422(1996),265)。しかしなが
ら、従来の非イオン活性剤等の界面活性剤を用いた乳化
型圧延油では、スリップの発生や循環安定性の低下等が
起こりやすく、逆に生産性が低下してしまうといった問
題が生じているのが現状である。この点について循環安
定性に優れる圧延油組成物として、特公昭62−14599号
公報に記載の圧延油組成物が知られているが、さらなる
高速圧延化や堆積スカムの問題の解決には必ずしも十分
ではなかった。また、特公平3−4600号公報には、合成
エステルと高分子分散剤を用いるミルクリンタイプの圧
延油も開示されているが、堆積スカムの問題は解決でき
るものの、高速圧延化について具体的な記載はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、多品
種の鋼板を冷間圧延する場合に、油コストの上昇や長期
循環安定性の低下といった問題なしに、従来の圧延油用
潤滑油では達成できなかった高速圧延化による生産性向
上が可能であると共に、耐スカム堆積性、耐スリップ
性、及び耐焼付き性等に優れた、安価な循環使用方式の
水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油を提供することにあ
る。
【0007】また本発明の別の課題は、循環使用方式の
鋼板冷間圧延ラインにおいて、チャタリングやヒートス
クラッチなどの潤滑不良を起こさずに、軟質材で1700m
/分以上、硬質材で1500m/分以上の速度で高速圧延す
る方法、さらにはミル廻りへのスカムの堆積を低減し、
火災の危険性、美観低下や作業性の悪化といった問題点
を回避しながら、上記の速度で高速圧延する方法を提供
することにある。なおここで軟質材とは、鋼中の炭素含
有量が0.11重量%未満の材質を指し、また硬質材とは、
鋼中の炭素含有量が0.11重量%以上の材質を指すもので
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本
発明者らは鋭意研究を行った結果、(a)鉱物油類及び
又はモノエステル類と、(b)油脂類と、(c)特定の
複合エステル類を含有し、所定の動粘度と流動点を示す
水分散型鋼板用冷間圧延油用潤滑剤を使用すると、ミル
廻りへのスカムの堆積が低減され、火災の危険性や、美
観低下や作業性の悪化といった問題点を回避し、しかも
油価格を低下させながら、チャタリングやヒートスクラ
ッチなどの潤滑不良を起こさずに高速圧延できることを
見い出し、本発明に到達した。さらに本発明者らは、こ
れらに加えて(d)リン系極圧剤及び/又は硫黄系極圧
剤を併せて使用することにより、さらに高速での圧延が
可能になることを見い出すに至っている。
【0009】すなわち本発明は、(a)鉱物油、及び炭
素数12〜22の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜12の脂肪族
アルコールとから得られるモノエステルからなる群より
選ばれる1種以上を5重量%以上40重量%未満、(b)
油脂類5〜70重量%、及び(c)炭素数16〜20の高級脂
肪族不飽和酸のダイマー酸及びポリマー酸からなる群よ
り選ばれる1種以上と、ポリオール類とから得られるエ
ステルであり、かつ残余のカルボキシル基又は水酸基が
炭素数12〜22の1価アルコール又は1価脂肪酸によって
エステル化されている、重量平均分子量750〜20000の複
合エステル類20〜90重量%を含有する、動粘度が60mm2/
s(40℃) 以上で且つ流動点が10℃以下である水分散型鋼
板冷間圧延油用潤滑油、そしてさらに(d)リン系極圧
剤及び硫黄系極圧剤からなる群より選ばれる1種以上を
含有する水分散型鋼板用冷間圧延油用潤滑油を提供する
ものである。
【0010】また一方、本発明者らは、上記した特定の
複合エステル類を含有する水分散型鋼板用冷間圧延油用
潤滑油を所定の冷間圧延条件の下で用いると、軟質材で
1700m/分以上、硬質材で1500m/分以上の速度で高速
圧延が可能であることを見い出し、本発明の高速圧延方
法に到達している。即ちこれによれば、冷間圧延機にお
いて、鋼板を1.5mm以下の板厚へと、軟質材で1700m/
分以上、硬質材で1500m/分以上の速度で圧延する
際に、潤滑成分として、炭素数16〜20の高級脂肪族不
飽和酸のダイマー酸及びポリマー酸からなる群より選ば
れる1種以上と、ポリオール類とから得られるエステル
であり、かつ残余のカルボキシル基又は水酸基が炭素数
12〜22の1価アルコール又は1価脂肪酸によってエステ
ル化され、重量平均分子量が750〜20000である複合エス
テル類を20〜90重量%含有すると共に、動粘度が60mm2/
s(40℃)以上、流動点が10℃以下、高圧粘度が140mPa
・s以上である水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油を用い
ることを特徴とする鋼板冷間圧延方法が提供される。潤
滑油としては、さらに油脂類を5〜70重量%、鉱物油及
び炭素数12〜22の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜12の脂
肪族アルコールとから得られるモノエステルからなる群
より選ばれる1種以上を5〜70重量%、リン系極圧剤及
び硫黄系極圧剤からなる群より選ばれる1種以上を0.5
〜5重量%を含有するものを使用することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の水分散型鋼板用冷間圧延
油用潤滑剤は、前述したように、(a)鉱物油、及び炭
素数12〜22の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜12の脂肪族
アルコールとから得られるモノエステルからなる群より
選ばれる1種以上を5重量%以上40重量%未満、(b)
油脂類5〜70重量%、及び(c)炭素数16〜20の高級脂
肪族不飽和酸のダイマー酸及びポリマー酸からなる群よ
り選ばれる1種以上と、ポリオール類とから得られるエ
ステルであり、かつ残余のカルボキシル基又は水酸基が
炭素数12〜22の1価アルコール又は1価脂肪酸によって
エステル化されている、重量平均分子量750〜20000の複
合エステル類20〜90重量%からなる。
【0012】(a)鉱物油類としては、例えばスピンド
ル油、タービン油、シリンダー油、ニュートラル油等の
パラフィン系鉱物油、マシン油などのナフテン系鉱物油
又はアロマ系鉱物油等が挙げられる。これらの鉱物油類
はスカム溶解性に寄与し、ミル廻り清浄性の向上効果を
有する。耐熱性と潤滑性の点から、パラフィン系鉱物油
であることがより好ましい。鉱物油類の粘度は、ミル廻
り清浄性の向上効果の点から30mm2/s(40℃)以下であ
ることがより好ましい。
【0013】また上記のモノエステルは、炭素数12〜22
の高級脂肪酸と炭素数1〜12の脂肪族1価アルコールと
から得られるものであり、例えば、メチルステアレー
ト、ブチルステアレート、オクチルステアレート、ラウ
リルステアレート、メチルオレート、イソデシルオレー
ト、ブチルパルミテート、メチルベヘネート、牛脂脂肪
酸のメチルエステル、パーム油脂肪酸のブチルエステ
ル、ヤシ油脂肪酸の2エチルヘキシルエステル、パーム
油脂肪酸のラウリルエステル等を代表例に挙げることが
できる。これらのモノエステルは鉱物油類と同様にスカ
ム溶解性に寄与し、ミル廻り清浄性の向上効果を有する
が、このスカム溶解性の点からは、モノエステルである
ことがより好ましい。モノエステルに用いる脂肪族カル
ボン酸の炭素数が22、脂肪族アルコールの炭素数が12よ
りも大きい場合はスカム溶解性が低下する傾向があり、
また脂肪族カルボン酸の炭素数が12より小さい場合は潤
滑性が低下してくる。脂肪族カルボン酸の炭素数は好ま
しくは12〜20であり、脂肪族アルコールの炭素数は好ま
しくは4〜10である。
【0014】これらの(a)成分の鉱物油類又はモノエ
ステルは1種でもよいが、2種以上を混合して使用する
こともできる。またその添加量は潤滑油の5〜40重量
%、更に好ましくは10〜30重量%の範囲で使用される
が、これはスカム溶解性、即ちミル廻り清浄性の向上
と、潤滑性のバランスという観点から好ましい添加量で
ある。
【0015】(b)次に油脂類としては、例えば牛脂、
牛脂オレイン、豚脂、サフラワー油、ナタネ油、ヒマシ
油、パーム油、精製パーム油、パームオレイン、ヤシ油
等の動植物油脂を代表例に挙げることができる。これら
の(b)成分の油脂類は、潤滑性をほぼ維持しながら油
価格を下げる効果を有する。また、油脂類の融点が常温
以下である場合はミル廻り清浄性の向上効果も有する。
融点が10℃以下のとき、この向上効果は特に著しくな
る。これらの油脂類は1種でもよいが、2種以上を混合
して使用することもできる。また、その添加量は潤滑油
の5〜70重量%、好ましくは5〜40重量%の範囲で使用
される。これは油価格の低減と潤滑性のバランスという
観点から好ましい範囲である。
【0016】(c)三つ目の成分は、炭素数16〜20の高
級脂肪族不飽和酸のダイマー酸及びポリマー酸からなる
群より選ばれる1種以上と、ポリオール類とから得られ
るエステルであり、残余のカルボキシル基又は水酸基が
炭素数12〜22の1価アルコール又は1価脂肪酸によって
エステル化されている複合エステル類である。本発明で
言う複合エステルとは、上記の複合エステルにカルボキ
シル基又は水酸基を一部残余させ、さらにポリオール
類、1価アルコール又は1価脂肪酸、ダイマー酸、ポリ
マー酸でエステル結合で、連結させた複合エステルを含
むものである。複合エステル中に多くの水酸基が残って
いると、潤滑性能の観点から好ましくない。複合エステ
ルの水酸基価は25以下が好ましく、さらに好ましくは15
以下、特に好ましくは10以下である。また複合エステル
の酸価は、高すぎると熱安定性や乳化安定性が低下する
ため、通常は10以下のものとするのがよい。
【0017】ここで用いるダイマー酸及びポリマー酸
は、炭素数16〜20の高級脂肪族モノエン酸又はジエン酸
のダイマー酸及びポリマー酸であり、例えばゾーマリン
酸、オレイン酸、リノール酸、ガドレイン酸、トール油
脂肪酸のダイマー酸及びポリマー酸が挙げられる。好ま
しくは、炭素数18の高級脂肪酸モノエン酸又はジエン酸
のダイマー酸及びポリマー酸である。
【0018】ポリオール類としては、例えばプロピレン
グリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコ
ール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコー
ル、ブタンジオール、ペンタンジオール、ポリオキシエ
チレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、
トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリ
セリン、ポリオールにさらにエチレンオキサイド、プロ
ピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレン
オキサイドを付加したもの等が挙げられる。好ましく
は、プロピレングリコール、エチレングリコール、ネオ
ペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタ
エリスリトールなどである。
【0019】炭素数12〜22の1価アルコールとしては、
例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パ
ルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニル
アルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。ま
た、炭素数12〜22の1価脂肪酸としては、例えばラウリ
ン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベ
ヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、牛脂脂肪酸、パーム
油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等が挙げられる。好ましくは炭
素数16〜20の1価アルコール、炭素数16〜20の1価脂肪
酸であり、特に好ましくは、パルミチルアルコール、ス
テアリルアルコール、オレイルアルコール、パルミチン
酸、ステアリン酸、オレイン酸、牛脂脂肪酸、パーム油
脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等である。
【0020】潤滑成分(c)の複合エステル類は、従来
潤滑成分として用いられていた牛脂等の油脂類よりエス
テル基数が多く、動粘度も高いので、著しい潤滑性向上
効果を有する。複合エステル類の分子量は750〜20000で
あり、750〜7500のものがより好ましい。分子量が750よ
り小さい場合は潤滑性が油脂類より劣る傾向があり、ま
た20000より大きい場合は潤滑成分への溶解性が低下
し、且つ高粘度となる傾向があるため取り扱いにも問題
が生ずる恐れがある。なおここで言う分子量は重量平均
分子量であり、ポリスチレンを標準物質としてゲルパー
ミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定さ
れる。
【0021】潤滑成分(c)の複合エステル類は1種で
もよいが、2種以上を混合して使用することができる。
また、その添加量は潤滑成分の20〜90重量%の範囲で使
用される。20重量%より少ない場合は、潤滑性の向上効
果が余り期待できなくなってくる。潤滑性と油価格のバ
ランスという点からは、30〜60重量%がより好ましい。
しかし60重量%を超える場合であっても、将来的に2500
m/分を超えるような高速圧延用として実用的に用いる
ことができる。
【0022】本発明の水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油
は、動粘度が60mm2/s(40℃)以上であり、流動点が10
℃以下である。動粘度が60mm2/s(40℃)未満である場
合は、潤滑性に関して従来の牛脂系圧延油との差異が小
さくなる。好ましくは65mm2/s(40℃)以上、より好ま
しくは70mm2/s(40℃)以上である。また、流動点が10
℃より高い場合は、冬期に流動性が悪くなって耐スカム
堆積性が低下する傾向がある。
【0023】以上のように潤滑成分(a)〜(c)を含
み、所定の動粘度と流動点を示す水分散型鋼板用冷間圧
延油を用いた場合には、スリップやチャタリング等の発
生なしに高速圧延を行うことが可能となると共に、ミル
廻りへのスカムの堆積を低減させ、火災の危険性、美観
低下や作業性の悪化といった問題を回避することがで
き、しかも油価格の上昇も避けられる。達成される圧延
速度は軟質材で1700〜2800m/分であり、好ましくは17
50〜2800m/分、より好ましくは1800〜2800m/分であ
る。硬質材ではこれは1500〜2500m/分であり、好まし
くは1550〜2500m/分である。
【0024】本発明においては、上記の如き潤滑成分に
対して、さらに(d)リン系極圧剤及び硫黄系極圧剤か
らなる群より選ばれる1種以上を含有することができ
る。リン系極圧剤としては、例えばトリオクチルホスフ
ェート、トリクレジルホスフェート、トリオレイルホス
フェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリ
ルアシッドホスフェート、トリブチルホスファイト、ト
リオレイルホスファイト、ジトリデシルアシッドホスフ
ァイト、ジオレイルアシッドホスファイト、モノ2エチ
ルヘキシルアシッドホスフェートの芳香族アミン塩等が
挙げられる。また硫黄系極圧剤としては、例えば硫化ラ
ード、硫化牛脂や硫化植物油エステル等の硫化油脂、硫
化オレフィン、硫化鉱油のそれぞれ活性型及び不活性
型、ジベンジルジサルファイド、ジターシャルブチルジ
サルファイド、亜鉛−ジアルキルジチオホスフェート等
が挙げられる。
【0025】これらの(d)成分のリン系極圧剤、硫黄
系極圧剤の添加は耐焼き付き性に寄与し、圧延速度をさ
らに向上させる効果がある。これらのリン系極圧剤、硫
黄系極圧剤は1種でもよいが、2種以上を混合して使用
することもできる。また、その添加量は潤滑油の0.5〜
5重量%の範囲で使用される。添加量が多いほど潤滑性
は向上するが、5重量%を超えると油価格が高くなる傾
向が生じてくる一方で、増加に対する耐焼き付き性の向
上が小さくなってくる。油価格と潤滑性の向上効果のバ
ランスからは、1.0〜3重量%の範囲がより実用的であ
り、好ましい。
【0026】上記の(d)成分を含む場合、やはりスリ
ップやチャタリング等の発生なしに、ミル廻りへのスカ
ムの堆積を低減し、火災の危険性、美観低下や作業性の
悪化を回避しながら、更に高速圧延することが可能であ
る。
【0027】本発明の水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油
は、水溶性分散剤を用いて潤滑成分を水に分散させるこ
とにより、水分散型圧延油として使用される。なお圧延
油用潤滑油とは油(潤滑剤)のみの状態のものを指し、
一般的にはこの形態で市販が行われている。また圧延油
とはこうした圧延油用潤滑油を水に分散したものを指
す。一般的に、冷間圧延の加工部にはこの圧延油の形態
で供給される。別名、圧延油エマルション又はクーラン
トと呼ばれることもある。さらにここで言う水分散型圧
延油用潤滑油とは、水と潤滑油を混合した際に、潤滑油
が水に分散した形態を形成するような水溶性分散剤を含
んだ圧延油用潤滑油を指している。
【0028】水溶性分散剤は潤滑油に含有させてもよい
し、潤滑油とは別個に供給し、潤滑油及び水と混合して
エマルションを形成させてもよい。通常は、(a)〜
(c)からなる潤滑成分に対し、必要に応じて他の潤滑
成分(d)や後述する油性向上剤、極圧添加剤、酸化防
止剤などを加えて潤滑油としてから、分散剤を加えて水
に分散させる。この際の混合割合は特に限定されない
が、通常は水分散型圧延油組成物中の潤滑油の濃度が1
〜20%となるようにすることが好ましい。1%未満では
圧延油としての十分な効果が期待できなくなり、また20
%を超えた場合には増加量に見合う効果の向上を得るこ
とが困難になってくる。
【0029】水溶性分散剤としては公知の分散剤を使用
することができ、その添加量は潤滑油に対して0.1〜10
重量%の範囲で使用される。好ましくは0.5〜5重量
%、特に好ましくは0.5〜3重量%である。こうした水
溶性分散剤としては、例えば次の〜、即ち 塩基性窒素原子もしくは陽イオン性窒素原子を少な
くとも1個含有するビニル系単量体又はその塩もしくは
第4級アンモニウム塩の単独重合物又はこれらの共重合
物、 塩基性窒素原子もしくは陽イオン性窒素原子を少な
くとも1個含有するビニル系単量体又はその塩もしくは
第4級アンモニウム塩と、塩基性窒素原子及び陽イオン
性窒素原子を含有しないビニル系単量体又はその塩との
共重合物、 エチレンイミンの開環重合体の塩又は第4級アンモ
ニウム塩、 脂肪族ジカルボン酸とポリエチレンポリアミン又は
ジポリオキシエチレンアルキルアミンとの重縮合物の塩
又は第4級アンモニウム塩、 ジハロアルカン−ポリアルキレンポリアミン重合
物、 エピハロヒドリン−アミン重縮合物、 キトサンの塩あるいはデンプン又はセルロースある
いはこれらのカチオン変性物 からなる群から選ばれる重合体で、その平均分子量が10
00〜10000000の範囲にある水溶性陽イオン性高分子化合
物及び水溶性両性イオン高分子化合物からなる群から選
ばれる1種又は2種以上の分散剤成分を主成分とするも
のを使用することができる。こうした水溶性陽イオン性
高分子化合物及び水溶性両性イオン高分子化合物は、塩
基性窒素原子又は陽イオン性窒素原子を含むことが必須
であるが、更に分子中にカルボン酸塩、スルホン酸塩、
アミド、エステル等の基を含んでいてもよく、その例と
しては次のものが挙げられる。
【0030】(1)次の一般式(I)〜(V)で表され
る、塩基性窒素原子もしくは陽イオン性窒素原子を少な
くとも1個含有するビニル系単量体(以下、「含窒素ビ
ニル系単量体」と略称する)の塩もしくは第4級アンモ
ニウム塩の単独重合物あるいはこれらの2種以上の共重
合物。
【0031】
【化1】
【0032】〔式中、Aは−O−又は−NH−を、n1
は1〜3の整数を示し、R1はH又はCH3を、R2及び
3はH、CH3又はC25を示す〕
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】これら単量体の具体例としては、(I)式
のジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノ
エチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレ
ート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチル
アミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピ
ルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリル
アミド、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド等;
(II)式のジメチルアミノメチルエチレン、ジエチルア
ミノメチルエチレン、ジメチルアミノメチルプロペン、
ジエチルアミノメチルプロペン等:(III)式のビニル
ピリジン等:(IV)式のビニルピペリジン、ビニル−N
−メチルピペリジン等;(V)式のビニルベンジルアミ
ン、ビニル−N,N−ジメチルベンジルアミン等が挙げ
られる。
【0038】これら単量体の単独重合物又は共重合物の
うち、平均分子量が1000〜10000000のものが使用され
る。
【0039】(2)前記一般式(I)〜(V)で表され
る含窒素ビニル系単量体又はその塩もしくは第4級アン
モニウム塩の1種又は2種以上と、α,β−不飽和カル
ボン酸又はその塩あるいはその誘導体、スルホン酸基含
有ビニル化合物又はその塩、アクリロニトリル、ビニル
ピロリドン及び炭素数2〜20の脂肪族オレフィンからな
る群から選ばれる塩基性窒素原子及び陽イオン性窒素原
子を含有しないビニル系単量体(以下「ビニル系単量
体」と略称する)の1種又は2種以上との共重合物。
【0040】このビニル系単量体としては、例えば、ビ
ニルピロリドン、アクリロニトリル;アクリル酸、メタ
クリル酸、マレイン酸又はこれらの酸のアルカリ金属
塩、アンモニウム塩、アマイド化合物もしくはエステル
化物;ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−ア
クリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−ス
チレンスルホン酸又はこれらの酸のアルカリ金属塩もし
くはアンモニウム塩等が挙げられる。そして、当該含窒
素ビニル系単量体とビニル系単量体との共重合物のう
ち、平均分子量が1000〜10000000のものが使用される。
【0041】(3)エチレンイミンの開環重合物の塩又
は第4級アンモニウム塩。
【0042】これは具体的にはその繰返し単位が次の一
般式(VI)で表され、平均分子量が1000〜10000000のも
のが挙げられる。
【0043】
【化6】
【0044】〔式中、n2は1〜5の整数、n3は0〜5
の整数を示す〕 (4)脂肪族ジカルボン酸とポリエチレンポリアミン又
はジポリオキシエチレンアルキルアミンとの重縮合物の
塩又は第4級アンモニウム塩。
【0045】具体的には、それらの繰返し単位が一般式
(VII)で表されるポリエチレンポリアミンとの重縮合
物及び一般式(VIII)で表されるジポリオキシエチレン
アルキルアミンとの重縮合物で分子量が1000〜10000000
のものが挙げられる。
【0046】
【化7】
【0047】〔式中、R4はダイマー酸残基又は炭素数
1〜10のアルキレン基、R’は−CH2CH2−、n4
2〜7の整数を示す〕
【0048】
【化8】
【0049】〔式中、R4は式(VII)と同じ。R5は炭
素数1〜8のアルキル基、R6はH又はCH3、n5及び
6は1〜10の整数を示す〕 上記脂肪族ジカルボン酸としては、ダイマー酸、アジピ
ン酸等が挙げられ、ポリエチレンポリアミンとしては、
ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が使
用できる。
【0050】(5)ジハロアルカン−ポリアルキレンポ
リアミン重縮合物。
【0051】具体的には、1,2−ジクロルエタン、
1,2−ジブロムエタン、1,3−ジクロルプロパン等
のジハロアルカンと、分子内に2個もしくはそれ以上の
3級アミノ基を有するポリアルキレンポリアミンとの第
4級アンモニウム塩である重縮合物であり、その平均分
子量が1000〜10000000のものが挙げられる。
【0052】上記ポリアルキレンポリアミンとしては、
次のものが挙げられる。
【0053】
【化9】
【0054】(6)エピハロヒドリン−アミン重縮合
物。
【0055】具体的には繰返し単位が次の一般式(IX)
で表され、平均分子量が1000〜10000000のものが挙げら
れる。
【0056】
【化10】
【0057】〔式中、R7〜R9はCH3又はC25、X-
はハロゲンイオンを示す〕 (7)キトサンの塩あるいはデンプン又はセルロースの
カチオン変性物。
【0058】上記(1)〜(6)の重合物は、その平均
分子量が10000〜1000000のものがより好ましい。
【0059】また、水溶性陽イオン性高分子化合物又は
水溶性両性イオン高分子化合物を与える含窒素ビニル系
単量体の塩もしくは第4級アンモニウム塩を形成する対
イオンとしてのアニオンとしては、硫酸イオン、硝酸イ
オン、塩素イオン、グリコール酸イオン、酢酸イオン、
リン酸イオン等が挙げられ、それらの中で酸性リン酸基
を有する有機又は無機リン酸イオン、又は硼酸イオンが
潤滑性又は防錆性の観点から好ましいが、これら以外の
対イオンの適用も妨げるものではない。
【0060】これらの水溶性陽イオン性又は両性イオン
高分子化合物は1種又は2種以上を混合して使用するこ
とができ、これは前述のように圧延油組成物全量に対し
て0.1〜10重量%になるように配合される。
【0061】上記(1)〜(7)の水溶性陽イオン性高
分子化合物及び水溶性両性イオン高分子化合物の作用機
構は完全には解明されていないが、おおよそ次の如くで
あると考えられる。すなわち、水層に完全均一に溶解し
た水溶性陽イオン性又は両性イオン高分子化合物が、機
械的な剪断力に応じて微粒子化した潤滑油成分の粒子
を、合一の始まる以前に吸着し、その高分子化合物が油
粒子どうしを一種の凝集作用によって大きな粒子とし、
更にその高分子化合物の立体的かつ電気的保護コロイド
作用によりその大きな粒子を水中に安定に分散せしめて
いる。
【0062】水溶性分散剤としてより好ましいものは、
塩基性窒素原子または陽イオン性窒素原子を1個上含有
するビニル系単量体又はその塩もしくは第4級アンモニ
ウム塩と、塩基性窒素原子又は陽イオン性窒素原子を含
有しないビニル系単量体又はその塩とからなる群より選
ばれる1種以上の単量体の単独重合物又は共重合物から
なる群より選ばれる重合体で、その重量平均分子量が10
00〜1000000の範囲にある水溶性陽イオン性高分子化合
物及び水溶性両性イオン高分子化合物からなる群より選
ばれる1種以上である。より具体的には、上記(1)又
は(2)の化合物が例示される。
【0063】本発明の水分散型鋼板用冷間圧延油を用い
ると、軟質材で1700m/分以上、硬質材で1500m/分以
上の速度で鋼板を圧延することが可能になる。本発明に
よる高速圧延化は、水分散型鋼板用冷間圧延油によって
達成できるものである。即ち潤滑油のみを非イオン界面
活性剤などにより乳化させた乳化型圧延油では、油が鋼
板に不均一に付着してスリップやチャタリングを発生
し、十分な高速圧延はできなくなる。上記の様な分散剤
を使用して水分散型とすることによって、初めて加工部
に基油が均一に濡れて行き渡るため、スリップやチャタ
リング等の発生なしに高速圧延を行うことが可能となる
ものである。
【0064】また本発明の圧延油は、表面張力が40mN/
m(25℃、デュ・ヌーイの張力計)以上であることが好
ましい。界面活性剤を主乳化剤とする潤滑油エマルショ
ンは、表面張力が低く、親油性を示し、従って圧延ロー
ルへの濡れ性が悪く冷却性にも劣る。これに対し、上記
のように水溶性分散剤を主乳化剤とする潤滑油のエマル
ションは、表面張力が高く親水性を示す。このようなエ
マルションは乳化安定性に優れるとともに、圧延ロール
への濡れ性が良好で冷却性にも優れ、高速圧延用に適し
ている。特に、40mN/m以上の表面張力の時には上記特
性に優れるものである。45〜70mN/mがより好ましい。
【0065】本発明の水分散型鋼板用冷間圧延油には、
上記成分の他に必要に応じて公知の各種添加剤、例えば
他の潤滑剤、油性向上剤、防錆剤、酸化防止剤及び乳化
剤等を添加することもできる。
【0066】他の潤滑剤としては、多価アルコールと脂
肪酸からなるヒンダードエステル、油性向上剤として
は、例えば、オレイン酸、牛脂脂肪酸、パーム油脂肪
酸、トール油脂肪酸のポリマー酸等の脂肪酸を用いるこ
とができ、これらは本発明の水分散型鋼板冷間圧延油用
潤滑油中に10重量%程度まで添加することができる。
【0067】防錆剤としては、例えばアルケニルコハク
酸及びその誘導体、オレイン酸等の脂肪酸、ソルビタン
モノオレート等のエステル、その他アミン類等を用いる
ことができ、これらは本発明の水分散型鋼板冷間圧延油
用潤滑油中に2重量%程度まで添加することができる。
【0068】また、酸化防止剤としては、例えば2,4
−ジ−tert−ブチルp−クレゾール、テトラキス〔メチ
レン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキ
シフェニル)プロピオネート〕メタン等のフェノール系
化合物、フェニルα−ナフチルアミン、フェノチアジン
等の芳香族アミン等を用いることができ、これらは本発
明の水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油中に5重量%程度
まで添加することができる。
【0069】更に、乳化剤としては、例えばオレイン酸
トリエタノールアミン塩、石油スルホネートナトリウム
塩等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニ
ルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタント
リオレート等の非イオン性界面活性剤等を、潤滑性能に
影響を与えない範囲で用いることができる。
【0070】本発明の高速圧延方法によれば、冷間圧延
機において、鋼板を1.5mm以下の板厚に圧延する際に、
潤滑成分として、(c)成分として上記した特定の複合
エステル類を20〜90重量%、より好ましくは30〜60重量
%含有すると共に、動粘度が60mm2/s(40℃)以上、流
動点が10℃以下、高圧粘度が140mPa・s以上である水分
散型鋼板冷間圧延油用潤滑油を用いることにより、軟質
材で1700m/分以上、硬質材で1500m/分以上の速度で
高速圧延が可能である。
【0071】本発明の高速圧延方法は、鋼板を1.5mm以
下、さらに好ましくは0.5mm以下の板厚に圧延する場合
に適したものである。鋼板の冷間圧延では、板厚の薄肉
化のために生産性の低下が問題となっているが、特に0.
5mm以下の板厚になると加工熱による板温度の上昇が大
きく、ヒートスクラッチが多発するため、従来の牛脂系
冷間圧延油では圧延速度を増加することができず、生産
性が低下してしまう。同じ生産性を確保するためには、
板厚が薄くなった分だけ圧延速度を増加することが必要
であるが、従来油では圧延速度の低下を余儀なくされ
る。将来の鋼板の高張力化及び薄肉板厚の加工技術の進
歩によって、ますます板厚の薄肉化が予想されるが、生
産性の維持・増加には0.5mm以下の板厚において圧延速
度を増加させることが非常に重要である。
【0072】またこの高速圧延方法においては、高圧粘
度が140mPa・s以上であることが必要である。ここでい
う高圧粘度は、次式(1)で求められる。
【0073】 η=η0・exp(α・P) …(1) (但し、式(1)中、ηは130℃、300MPaにおける潤滑
油の高圧粘度(単位:mPa・s)を表し、η0は130℃、
0.1MPaにおける潤滑油の常圧粘度(単位:mPa・s)を
表し、Pは潤滑油にかかる圧力300MPaであり、αは潤滑
油の圧力粘度係数(単位:kPa-1×105)を表す)。ま
た、αは式(2)で求められる。
【0074】 α=(0.1657+0.2332・Logη0)・m0 …(2) (但し、式(2)中、m0は温度粘度係数(単位:
-1)を表し、常圧での温度2水準における潤滑油の粘
度測定結果から次のASTM-Walther式を用いて求められ
る。
【0075】 Log(Log(ηm+0.7))=−mq・LogT+n … ASTM Walter式 (但し、ηmは温度2水準における潤滑油の各粘度(mm2
/s)を表し、Tは温度(K)を表し、nは定数であ
る))。
【0076】鋼板冷間圧延の際の冷却兼潤滑剤としては
圧延油用潤滑油を水に分散したエマルションが用いられ
る。エマルションは圧延加工部の入口高圧部においてO
/Wエマルションからエマルション破壊され、油単独で
加工部に導入され、水は排除され加工部にほとんど導入
されない。圧延潤滑性を決定する主要因は加工部導入油
量と境界摩擦係数であり、このうち境界摩擦係数(金属
面に強い吸着膜を形成する度合い)は潤滑油組成によっ
て決まり、加工部導入油量は圧延加工入口部の高温・高
圧下(通常は100〜150℃、100〜700MPa)の潤滑油粘度
によって決まる。この粘度が適切であって加工部導入油
量が多くなると、鋼板と圧延ロールの接触率が小さくな
り、ヒートスクラッチの発生を抑制することができる。
本発明の高速圧延方法において潤滑油の130℃、300MPa
における高圧粘度は140mPa・s以上であるが、この場合
に得られる加工部導入油量は、従来の牛脂系冷間圧延油
より多くなり、軟質材で1700m/分以上、硬質材で1500
m/分以上の高速圧延が可能である。潤滑油の高圧粘度
が170〜300mPa・sであると、さらに高速圧延が可能と
なり、より好ましい。また、将来のさらなる高速圧延に
対しては、潤滑油の高圧粘度が200〜300mPa・sである
ことが特に好ましい。
【0077】高圧粘度ηの計算手順の例としては、まず
潤滑油の40℃と100℃の動粘度を測定する。測定結果をA
STM-Walther式に入力すると2つの変数の連立方程式が
成立し、m0、nが導き出される。次に130℃の動粘度η
0をASTM-Walther式で計算し、(2)式にm0とともに入
力すると、圧力粘度係数αが計算される。最後に(1)
式により130℃、300MPaの粘度ηを、先に計算したη0
αと300MPaを入力することで算出する。
【0078】潤滑油としては、さらに前記で(b)とし
て述べた油脂類を5〜70重量%含有することができる。
前述の場合と同様、油脂類は1種でもよいが、2種以上
を混合して使用することもできる。また、その添加量は
潤滑油の5〜70重量%の範囲で使用される。添加量が70
重量%を超えると複合エステルの配合割合が相対的に減
少し、潤滑性の向上効果が発揮されにくくなる。また5
重量%より少ない場合は、油価格の低減効果が小さきに
失する恐れがある。油価格の低減と潤滑性のバランスと
いう観点からは、5〜50重量%が好ましく、さらに好ま
しくは5〜40重量%の範囲である。
【0079】また本発明の高速圧延方法に用いられる潤
滑油にはさらに、前記で(a)として説明した鉱物油及
び炭素数12〜22の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜12の脂
肪族アルコールとから得られるモノエステルからなる群
より選ばれる1種以上を5〜70重量%含有することがで
きる。これらの鉱物油類又はモノエステルも1種又は2
種以上を混合して使用することもできる。またその添加
量は潤滑油の5〜70重量%の範囲で使用されるが、これ
は70重量%を越えると潤滑性の低下が大きくなりがちで
あり、また5重量%より少ない場合はスカム溶解性が低
下してミル廻り清浄性の向上効果が発揮されにくくなる
からである。ミル廻り清浄性と潤滑性のバランスという
観点から、好ましい添加量は5〜50重量%の範囲であ
り、より好ましくは5〜40重量%である。特に好ましく
は10〜30重量%である。
【0080】潤滑油はさらに、リン系極圧剤及び硫黄系
極圧剤からなる群より選ばれる1種以上を0.5〜5重量
%を含有することができる。
【0081】また本発明の高速圧延方法においても、潤
滑油は水溶性分散剤を用いて潤滑成分を水に分散させる
ことにより、水分散型圧延油として使用される。この場
合も水溶性分散剤は潤滑油に含有させてもよいし、潤滑
油とは別個に供給し、潤滑油及び水と混合してエマルシ
ョンを形成させてもよい。また通常は水分散型圧延油組
成物中の潤滑油の濃度が1〜20%となるように希釈され
るが、これに限定されるものでないことも同様である。
水溶性分散剤としては前述したような公知の分散剤を使
用することができ、その添加量もやはり潤滑油に対して
0.1〜10重量%の範囲で使用される。またこうして得ら
れる圧延油は、表面張力が40mN/m(25℃、デュ・ヌー
イの張力計)以上であることが好ましい。
【0082】
【作用】本発明の圧延油用潤滑油を用いて得られる水分
散型圧延油は、潤滑油の分散粒子が適度な粒径を持ち、
その均一な乳化分散性及び粒径分布を長期間安定に保つ
ことができるため、冷間圧延機に循環させて使用する場
合でも、初期の良好な圧延潤滑性を長期間維持すること
ができる。また、高速圧延時のように加工部が高温とな
る場合、従来の高粘度基油を用いた乳化型圧延油では油
が不均一に付着してスリップやチャタリングを発生する
が、水分散型とすることによって加工部に基油が均一に
濡れて行き渡るため、高粘度基油によるスリップ等の発
生はない。また、基油の粘度が高く、高耐焼き付き性の
基油の使用によって、ロールと鋼板界面の摩擦熱による
温度の上昇を抑制するため、高速圧延時でも焼き付きを
発生することがない。さらに、流動点が10℃以下のた
め、冬期でも耐スカム堆積性の低下はほとんどない。加
えて、基油粘度が高く、高耐焼付き性基油の使用によっ
て油展着量を少なくすることができるため、圧延後の鋼
板表面の付着油分量が少なく被洗浄性の低下がないとい
った効果もある。
【0083】また本発明の高速圧延方法は、上記のよう
に潤滑油が良好な圧延潤滑性を有すると共に、所定の高
圧粘度を満たすことによって加工部導入油量を良好に維
持することができるため、軟質材で1700m/分以上、硬
質材で1500m/分以上という従来よりも速い速度で、鋼
板を1.5mm以下の板厚に圧延することができる。
【0084】
【実施例】以下、実施例により更に詳細に説明するが、
本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】実施例1〜9及び比較例1〜8 表1及び表2に示す各種圧延油用潤滑油成分(本発明例
1〜9及び比較例1〜8)を混合した後、60〜90℃で加
温しながら、DCスターラーで撹拌して均一に溶解させ
た。次に、以下に示す各試験条件に記載の油分濃度とな
るように油と水道水とを混合した後、加温してホモミキ
サーで攪拌を行い、エマルションを調製した。得られた
エマルションについて、以下に示す試験例によって、潤
滑性、脱脂性、耐スカム堆積性、粒径安定性、高速圧延
性を評価した。その結果を表1及び表2に併記した。
【0086】試験例1(圧延試験) 調製した各種圧延油用潤滑油について、二段圧延機(200
mmφ× 200mm幅、SUJ-2 、Hs=90)を用い、下記条件で
短冊単パス圧延試験を行い、圧下率=40%時の圧延荷重
(tonf/m)により潤滑性を評価した。圧延荷重が従来の市
販牛脂系冷間圧延油用潤滑油の95%より低ければ潤滑性
は良好である。また、圧延鋼板を下記条件で脱脂したも
のの水濡れ面積率(%)により脱脂性を評価した。尚、
80%以上の水濡れ面積率を示せば脱脂性は良好である。
【0087】(圧延条件) 圧 延 材:軟鋼(SPCC-B,30mm幅×700mm長×2mm
厚,Ra=0.02μm) ロール粗度:研磨紙により圧延方向に研磨し、Ra=0.3
〜0.4μm(Rz=2.8〜3.2μm)に調整する。
【0088】 板 温 度:100℃ 圧延速度 :400m/分 圧 下 率:40% 圧延枚数 :2枚 圧延油濃度:3vol.% 圧延油温度:60℃ 攪拌条件 :M型ホモミキサー 9000rpm スプレー量:2リットル/分,1kgf/cm2 (脱脂条件) 脱 脂 液:カセイソーダ2%+ポリオキシエチレンノ
ニルフェニルエーテル(HLB=12.4)0.1%+グルコン
酸ソーダ 0.1%溶液 脱脂方法 :浸漬→電解→ブラシ→リンス 浸漬条件 :80℃、1秒 電解条件 :80℃、5A/dm2、1秒 ブラシ条件:500rpm逆方向、1回 リンス条件:50℃温水スプレー(1リットル/分×3
秒) 試験例2(連続圧延試験) 調製した各種圧延油用潤滑油について、上記二段圧延機
を用い、下記条件でコイル張力3パス圧延試験を行い、
堆積スカム量(g)により耐スカム堆積性を評価した。
堆積スカム量が従来の市販牛脂系冷間圧延油用潤滑油の
50%より少なければ、耐スカム堆積性は良好である。ま
た、試験前後のエマルションの粒子径をコールターカウ
ンターにて測定し、平均粒子径(体積分布)の変化量絶
対値(μm)から粒径安定性を評価した。変化量絶対値が
2μm 以下であれば粒径安定性は良好である。
【0089】(圧延条件) 圧 延 材:軟鋼(SPCC-D,50mm幅×100mm長×1mm
厚,Ra=0.5μm) ロール粗度:Ra=1.5μmに調整する 板 温 度:常温 圧延速度 :10m/分 圧延張力 :7kgf/mm2 圧 下 率:各パス25%(総圧下率58%) 圧延油濃度:3vol.% 液 条 件:60℃、10リットル 攪拌条件 :M型ホモミキサー 9000rpm スプレー量:1リットル/分、1kgf/cm2、ノズル上下
各1本 雰囲気温度:20℃ 試験例3(高速圧延試験) 調製した各種圧延油組成物について、下記条件で薄板の
高速圧延を行い、ヒートスクラッチやスリップを生じな
い最大圧延速度(m/分) により、高速圧延性を評価し
た(軟質材を用いる評価を高速圧延性1、硬質材を用い
る評価を高速圧延性2とした)。高速圧延性1の最大圧
延速度が1700m/分以上、又は高速圧延性2の最大圧延
速度が1500m/分以上であれば、高速圧延性は良好であ
る。
【0090】(圧延条件) 圧 延 機:一方向式2段圧延機(530mmφ×120mm幅、
特殊鍛鋼、Hs=90) 圧 延 材:軟質材(SPCC-B,C=0.08重量%,30mm幅
×700mm長×2.0mm厚,Ra=0.02μm) 硬質材(C=0.12重量%,30mm幅×700mm長×2.0mm厚,
Ra=0.3μm) ロール粗度:Ra=0.3μm 板 温 度:100℃ 圧延速度 :500〜2000m/分 圧 下 率:35% 圧延油濃度:4vol.% 液 条 件:60℃、20リットル 攪拌条件 :M型ホモミキサー 9000rpm スプレー量:1リットル/分、1kgf/cm
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】尚、上記表1及び表2中、潤滑油組成物成
分の鉱物油、モノエステル、油脂、複合エステル、その
他の添加剤は、次のものを意味する。
【0094】 鉱物油A … パラフィン系鉱物油(10mm/s(40℃)) 鉱物油B … パラフィン系鉱物油(28mm2/s(40℃)) モノエステルA… 2エチルヘキシルステアレート モノエステルB… イソデシルステアレート。
【0095】 油脂A … 精製パーム油(ヨウ素価65、融点8℃) 油脂B … サフラワー油(ヨウ素価70、融点0℃) 油脂C … 牛脂オレイン(ヨウ素価60、融点20℃)。
【0096】 複合エステルA… オレイン酸のポリマー酸(ダイマー酸:トリマー酸以上 のポリマー酸=60:40(重量比))/ジエチレングリコー ル/オレイルアルコール=2/1/2(モル比)から得 られるエステル(酸価8、水酸基価6、重量平均分子量 1800) 複合エステルB… トール油脂肪酸のポリマー酸(ダイマー酸:トリマー酸 以上のポリマー酸=75:25(重量比))/ペンタエリスリ トール/オレイン酸=1/2/6(モル比)から得られ るエステル(酸価4、水酸基価8、重量平均分子量3000) 複合エステルC… トール油脂肪酸のポリマー酸(ダイマー酸:トリマー酸 以上のポリマー酸=90:10(重量比))/トリメチロール プロパン/パーム油脂肪酸=1/2/4(モル比)から 得られるエステル(酸価3、水酸基価6、重量平均分子 量1900)。
【0097】 極圧剤A … トリオレイルホスフェート 極圧剤B … モノ2エチルヘキシルアシッドホスフェートの芳香族ア ミン塩 極圧剤C … 硫化ラード(活性型、S%=10.5%)。
【0098】 その他A … 油性向上剤(パーム油脂肪酸) その他B … 防錆剤(ヘキサデセニルコハク酸) その他C … 酸化防止剤(フェニル−α−ナフチルアミン) その他D … 乳化剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、 HLB=12.4) その他E … トリメチロールプロパン/オレイン酸/ステアリン酸= 14.4/60.0/25.6(重量比)から得られるエステル(酸 価5) その他F … ペンタエリスリトール/オレイン酸/ステアリン酸= 14.4/60.0/25.6(重量比)から得られるエステル(酸 価5) その他G … ペンタエリスリトール/(イソステアリン酸:オレイン 酸:リノール酸=70:28:2(重量比))=1/3(モル 比)から得られるエステル その他H … セバシン酸/ペンタエリスリトール/(イソステアリン 酸:オレイン酸:リノール酸=70:28:2(重量比))= 1/2/4(モル比)から得られるエステル その他I … 2エチルヘキシルアルコール/(ステアリン酸:オレイ ン酸=1:1(重量比))=1/1(モル比)から得られ るエステル その他J … トール油脂肪酸のポリマー酸(ダイマー酸:トリマー酸 以上のポリマー酸=7:3(重量比))。
【0099】 分散剤A … ジメチルアミノエチルアクリレートのグリコール酸中和 物/メタクリル酸ドデシル/メタクリル酸ナトリウム= 3/1/1(モル比)の共重合物(重量平均分子量=10 万) 分散剤B … ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの単独重合物の グリコール酸中和物(重量平均分子量=30万) 分散剤C … ジメチルアミノエチルメタクリレートのリン酸中和物/ アクリル酸ナトリウム=6/1(モル比)の共重合物 (重量平均分子量=60万) 分散剤D … ジエチルアミノエチルメタクリレートの単独重合物のカ プリル酸中和物(重量平均分子量=3万) 市販牛脂系圧延油用潤滑油…牛脂/乳化剤=98重量%/2重量% さらに、上記複合エステル類と分散剤類の重量平均分子
量の測定方法については、以下の通りである。
【0100】1)複合エステル類(GPC分子量分析の
結果をそのまま表示) (条件)・カラム:HS6K(シリカゲル系)×2本 ・カラム温度:(40℃) ・溶離液:THF(テトラヒドロフラン) ・検出器:RI(屈折率計) ・注入量:3重量%THF溶液、20マイクロリットル ・液流速: 1.0ミリリットル/分 ・分子量標準:ポリスチレン 2)分散剤類(加水分解後のGPC分子量分析し、その
結果から元の分子量を換算して表示) (条件)・カラム:G2000SW(シリカゲル系)×2本 ・カラム温度:(40℃) ・溶離液: 0.1N塩化ナトリウム溶液/アセトニトリル
=70/30(重量比) ・検出器:RI(屈折率計) ・注入量:1重量%溶離液、20マイクロリットル ・液流速: 0.4ミリリットル/分 ・分子量標準:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム。
【0101】表1及び表2に示す結果から明らかなよう
に、本発明の圧延油用潤滑油は、比較品に比べて全ての
性能において優れている。比較品1の市販牛脂系冷間圧
延油との比較では、潤滑性、耐スカム堆積性、粒径安定
性、高速圧延性において優れている。また、所定の複合
エステルを含み、所定の高圧粘度を有することにより、
軟質材で1700m/分以上、硬質材で1500m/分以上の高
速での圧延が可能になっている。特に例示した実施例の
場合には、軟質材で1800m/分以上、硬質材で1550m/
分以上という極めて良好な高速圧延が可能になってい
る。
【0102】
【発明の効果】本発明の水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑
油は、(c)複合エステル類が従来の牛脂系圧延油用潤
滑油に比べ潤滑性に優れており、しかも長期使用時の粒
径増大によるスリップの発生がないことから、高速圧延
化によって生産性の向上を図ることが可能になる。特に
この複合エステル類を含み、所定の高圧粘度を有する場
合には、冷間圧延機において鋼板を1.5mm以下の板厚に
圧延する際に、軟質材で1700m/分以上、硬質材で1500
m/分以上の速度で高速圧延することができる。また
(a)成分によりミル廻りへのスカムの堆積が低減さ
れ、火災の危険性、美観低下や作業性の悪化を改善する
ことが可能となる。さらに(b)成分を含むことによっ
て、洗浄性の低下なしに従来の合成エステル系冷間圧延
油用潤滑油に比べて安価となるとともに、従来の合成エ
ステル系冷間圧延油用潤滑油による操業コストの増加を
回避できる。また、圧延油用潤滑油の濃度の低減、スカ
ム発生による油原単位悪化の改善などから、従来の牛脂
系圧延油用潤滑油による操業に比べて、鋼板をより安価
かつ高効率で生産することができるという優れた効果を
有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C10M 107:30) C10N 20:00 20:02 20:04 40:24 (72)発明者 市本 武彦 和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研 究所内 (72)発明者 宮本 健一 和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研 究所内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)鉱物油、及び炭素数12〜22の脂肪族
    カルボン酸と炭素数1〜12の脂肪族アルコールとから得
    られるモノエステルからなる群より選ばれる1種以上を
    5重量%以上40重量%未満、(b)油脂類5〜70重量
    %、及び(c)炭素数16〜20の高級脂肪族不飽和酸のダ
    イマー酸及びポリマー酸からなる群より選ばれる1種以
    上と、ポリオール類とから得られるエステルであり、か
    つ残余のカルボキシル基又は水酸基が炭素数12〜22の1
    価アルコール又は1価脂肪酸によってエステル化されて
    いる、重量平均分子量750〜20000の複合エステル類20〜
    90重量%を含有する、動粘度が60mm2/s(40℃) 以上で且
    つ流動点が10℃以下である水分散型鋼板冷間圧延油用潤
    滑油。
  2. 【請求項2】(b)油脂類の融点が10℃以下であること
    を特徴とする請求項1記載の水分散型鋼板冷間圧延油用
    潤滑油。
  3. 【請求項3】 さらに(d)リン系極圧剤及び硫黄系極
    圧剤からなる群より選ばれる1種以上0.5〜5重量%を
    含有することを特徴とする請求項1又は2記載の水分散
    型鋼板冷間圧延油用潤滑油。
  4. 【請求項4】 請求項1から3の何れか1記載の潤滑油
    と、水溶性分散剤を1種以上含有することを特徴とする
    水分散型鋼板冷間圧延油。
  5. 【請求項5】 水溶性分散剤が、塩基性窒素原子または
    陽イオン性窒素原子を1個以上含有するビニル系単量体
    又はその塩もしくは第4級アンモニウム塩と、塩基性窒
    素原子又は陽イオン性窒素原子を含有しないビニル系単
    量体又はその塩とからなる群より選ばれる1種以上の単
    量体の単独重合物又は共重合物からなる群より選ばれる
    重合体で、その重量平均分子量が1000〜1000000の範囲
    にある水溶性陽イオン性高分子化合物及び水溶性両性イ
    オン高分子化合物からなる群より選ばれる1種以上であ
    ることを特徴とする、請求項4記載の水分散型鋼板冷間
    圧延油。
  6. 【請求項6】 圧延油の表面張力が40mN/m(25℃、デ
    ュ・ヌーイの張力計)以上である請求項4又は5記載の
    水分散型鋼板冷間圧延油。
  7. 【請求項7】 冷間圧延機において、鋼板中の炭素含有
    量が0.11重量%未満の軟質材からなる鋼板を1700m/分
    以上の速度で1.5mm以下の板厚に圧延する際に、潤滑成
    分として、 炭素数16〜20の高級脂肪族不飽和酸のダイマー酸及びポ
    リマー酸からなる群より選ばれる1種以上と、ポリオー
    ル類とから得られるエステルであり、かつ残余のカルボ
    キシル基又は水酸基が炭素数12〜22の1価アルコール又
    は1価脂肪酸によってエステル化され、重量平均分子量
    が750〜20000である複合エステル類を20〜90重量%含有
    すると共に、動粘度が60mm2/s(40℃)以上、流動点が1
    0℃以下、次式(1)で求められる高圧粘度が140mPa・
    s以上である水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油を用いる
    ことを特徴とする鋼板冷間圧延方法。 η=η0・exp(α・P) …(1) (但し、式(1)中、ηは130℃、300MPaにおける潤滑
    油の高圧粘度(単位:mPa・s)を表し、η0は130℃、
    0.1MPaにおける潤滑油の常圧粘度(単位:mPa・s)を
    表し、Pは潤滑油にかかる圧力300MPaであり、αは潤滑
    油の圧力粘度係数(単位:kPa-1×105)を表す)。ま
    た、αは式(2)で求められる。 α=(0.1657+0.2332・Logη0)・m0 …(2) (但し、式(2)中、m0は温度粘度係数(単位:
    -1)を表し、常圧での温度2水準における潤滑油の粘
    度測定結果から次のASTM-Walther式を用いて求められ
    る。 Log(Log(ηm+0.7))=−mq・LogT+n … ASTM Walter式 (但し、ηmは温度2水準における潤滑油の各粘度(mm2
    /s)を表し、Tは温度(K)を表し、nは定数であ
    る))。
  8. 【請求項8】 鋼板中の炭素含有量が0.11重量%以上の
    硬質材からなる鋼板を1500m/分以上の速度で圧延す
    る、請求項7記載の鋼板冷間圧延方法。
  9. 【請求項9】 潤滑油として、さらに油脂類5〜70重量
    %を含有する水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油、を用い
    ることを特徴とする、請求項7又は8記載の鋼板冷間圧
    延方法。
  10. 【請求項10】 潤滑油として、さらに鉱物油、及び炭
    素数12〜22の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜12の脂肪族
    アルコールとから得られるモノエステルからなる群より
    選ばれる1種以上を5〜70重量%含有する水分散型鋼板
    冷間圧延油用潤滑油を用いることを特徴とする、請求項
    7から9の何れか1記載の鋼板冷間圧延方法。
  11. 【請求項11】 潤滑油として、さらにリン系極圧剤及
    び硫黄系極圧剤からなる群より選ばれる1種以上0.5〜
    5重量%を含有する水分散型鋼板冷間圧延油用潤滑油を
    用いることを特徴とする、請求項7から10の何れか1記
    載の鋼板冷間圧延方法。
  12. 【請求項12】 前記潤滑油を水溶性分散剤の1種以上
    と共に用いてなる水分散型鋼板冷間圧延油を用いること
    を特徴とする、請求項7から11の何れか1記載の鋼板冷
    間圧延方法。
  13. 【請求項13】 水溶性分散剤が、塩基性窒素原子又は
    陽イオン性窒素原子を1個以上含有するビニル系単量体
    又はその塩もしくは第4級アンモニウム塩と、塩基性窒
    素原子又は陽イオン性窒素原子を含有しないビニル系単
    量体又はその塩とからなる群より選ばれる1種以上の単
    量体の単独重合物又は共重合物からなる群より選ばれる
    重合体で、その重量平均分子量が1000〜1000000の範囲
    にある水溶性陽イオン性高分子化合物及び水溶性両性イ
    オン高分子化合物からなる群より選ばれる1種以上であ
    ることを特徴とする、請求項12記載の鋼板冷間圧延方
    法。
  14. 【請求項14】 圧延油の表面張力が40mN/m(25℃、
    デュ・ヌーイの張力計)以上であることを特徴とする、
    請求項12又は13記載の鋼板冷間圧延方法。
JP9308281A 1996-12-20 1997-11-11 鋼板冷間圧延方法 Expired - Fee Related JP2972169B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9308281A JP2972169B2 (ja) 1996-12-20 1997-11-11 鋼板冷間圧延方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34185296 1996-12-20
JP8-341852 1996-12-20
JP9308281A JP2972169B2 (ja) 1996-12-20 1997-11-11 鋼板冷間圧延方法

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11159268A Division JP3096289B2 (ja) 1996-12-20 1999-06-07 水分散型鋼板冷間圧延油

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10231494A true JPH10231494A (ja) 1998-09-02
JP2972169B2 JP2972169B2 (ja) 1999-11-08

Family

ID=26565482

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9308281A Expired - Fee Related JP2972169B2 (ja) 1996-12-20 1997-11-11 鋼板冷間圧延方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2972169B2 (ja)

Cited By (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001046350A1 (en) * 1999-12-20 2001-06-28 Unichema Chemie B.V. Esters and their use in lubrificant compositions for extreme pressure applications
JP2003336088A (ja) * 2002-05-22 2003-11-28 Idemitsu Kosan Co Ltd 冷間圧延油組成物
KR100482203B1 (ko) * 2002-11-01 2005-04-14 범우화학공업 주식회사 압연유 첨가제 및 이를 포함하는 압연유 조성물
JP2005200610A (ja) * 2004-01-19 2005-07-28 Kyodo Yushi Co Ltd 冷間圧延油組成物及び冷間圧延方法
JPWO2003097774A1 (ja) * 2002-05-15 2005-09-15 出光興産株式会社 冷間圧延油組成物
JP2007045877A (ja) * 2005-08-08 2007-02-22 Kyodo Yushi Co Ltd 金属加工用油剤組成物、金属加工方法及び金属加工品
JP2010254813A (ja) * 2009-04-24 2010-11-11 Kyodo Yushi Co Ltd 金属加工用油剤、金属加工方法及び金属加工品
JP2010275350A (ja) * 2009-05-26 2010-12-09 Kyodo Yushi Co Ltd 圧延油組成物及び冷間圧延方法
JP2010275352A (ja) * 2009-05-26 2010-12-09 Kyodo Yushi Co Ltd 金属加工油剤組成物、金属加工方法及び金属加工品
WO2016136623A1 (ja) * 2015-02-27 2016-09-01 富士フイルム株式会社 潤滑剤組成物
CN106544145A (zh) * 2016-11-03 2017-03-29 金福英 一种植物基冷轧轧制油及其制备方法
WO2021187511A1 (ja) * 2020-03-19 2021-09-23 出光興産株式会社 金属加工油組成物
WO2021215474A1 (ja) * 2020-04-23 2021-10-28 日本製鉄株式会社 冷間圧延の前処理用組成物及び冷間圧延方法
CN113617853A (zh) * 2021-08-23 2021-11-09 包头常铝北方铝业有限责任公司 一种铝合金的冷轧方法
CN114276855A (zh) * 2021-12-23 2022-04-05 东莞市英飞特润滑科技有限公司 一种免洗型拉伸油及其生产工艺
WO2024004900A1 (ja) * 2022-06-29 2024-01-04 出光興産株式会社 潤滑油組成物並びにその使用方法及び製造方法

Cited By (21)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001046350A1 (en) * 1999-12-20 2001-06-28 Unichema Chemie B.V. Esters and their use in lubrificant compositions for extreme pressure applications
JPWO2003097774A1 (ja) * 2002-05-15 2005-09-15 出光興産株式会社 冷間圧延油組成物
JP4658594B2 (ja) * 2002-05-15 2011-03-23 出光興産株式会社 冷間圧延油組成物
JP2003336088A (ja) * 2002-05-22 2003-11-28 Idemitsu Kosan Co Ltd 冷間圧延油組成物
KR100482203B1 (ko) * 2002-11-01 2005-04-14 범우화학공업 주식회사 압연유 첨가제 및 이를 포함하는 압연유 조성물
JP2005200610A (ja) * 2004-01-19 2005-07-28 Kyodo Yushi Co Ltd 冷間圧延油組成物及び冷間圧延方法
JP2007045877A (ja) * 2005-08-08 2007-02-22 Kyodo Yushi Co Ltd 金属加工用油剤組成物、金属加工方法及び金属加工品
JP2010254813A (ja) * 2009-04-24 2010-11-11 Kyodo Yushi Co Ltd 金属加工用油剤、金属加工方法及び金属加工品
JP2010275350A (ja) * 2009-05-26 2010-12-09 Kyodo Yushi Co Ltd 圧延油組成物及び冷間圧延方法
JP2010275352A (ja) * 2009-05-26 2010-12-09 Kyodo Yushi Co Ltd 金属加工油剤組成物、金属加工方法及び金属加工品
WO2016136623A1 (ja) * 2015-02-27 2016-09-01 富士フイルム株式会社 潤滑剤組成物
JPWO2016136623A1 (ja) * 2015-02-27 2017-11-30 富士フイルム株式会社 潤滑剤組成物
CN106544145A (zh) * 2016-11-03 2017-03-29 金福英 一种植物基冷轧轧制油及其制备方法
WO2021187511A1 (ja) * 2020-03-19 2021-09-23 出光興産株式会社 金属加工油組成物
JP2021147507A (ja) * 2020-03-19 2021-09-27 出光興産株式会社 金属加工油組成物
CN115244158A (zh) * 2020-03-19 2022-10-25 出光兴产株式会社 金属加工油组合物
WO2021215474A1 (ja) * 2020-04-23 2021-10-28 日本製鉄株式会社 冷間圧延の前処理用組成物及び冷間圧延方法
JP2021172718A (ja) * 2020-04-23 2021-11-01 日本製鉄株式会社 冷間圧延の前処理用組成物及び冷間圧延方法
CN113617853A (zh) * 2021-08-23 2021-11-09 包头常铝北方铝业有限责任公司 一种铝合金的冷轧方法
CN114276855A (zh) * 2021-12-23 2022-04-05 东莞市英飞特润滑科技有限公司 一种免洗型拉伸油及其生产工艺
WO2024004900A1 (ja) * 2022-06-29 2024-01-04 出光興産株式会社 潤滑油組成物並びにその使用方法及び製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2972169B2 (ja) 1999-11-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2972169B2 (ja) 鋼板冷間圧延方法
JP2004263087A (ja) アルミニウム板用熱間圧延油用潤滑油
JP5634056B2 (ja) 熱間圧延油用潤滑油および熱間圧延板の製造方法
JPH034600B2 (ja)
JP2004204214A (ja) 鋼板冷間圧延油
KR100345222B1 (ko) 수분산형강판냉간압연유용윤활유및강판의냉간압연방법
JP3096289B2 (ja) 水分散型鋼板冷間圧延油
JP4463632B2 (ja) アルミニウム及びアルミニウム合金板用熱間圧延油
JP2779506B2 (ja) アルミニウム及びアルミニウム合金用熱間圧延油組成物
JPH03109494A (ja) 冷間圧延油組成物
JP3331013B2 (ja) チタン板用冷間圧延油組成物
JP2008037928A (ja) 鋼板冷間圧延油用潤滑油
JP3370880B2 (ja) アルミニウム及びアルミニウム合金板の圧延方法
JP3475983B2 (ja) 金属の圧延加工用潤滑剤組成物
JP3709667B2 (ja) 冷間圧延油組成物
JP3370873B2 (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金板の圧延方法
JP4829425B2 (ja) 鋼板用水溶性冷間圧延油
JP2869850B2 (ja) アルミニウム及びアルミニウム合金用熱間圧延油組成物
JPH0625689A (ja) アルミニウム熱間圧延油組成物
US11732212B2 (en) Aqueous metalworking fluids and methods for using the same
JP3370872B2 (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金板の圧延方法
JP6982763B2 (ja) フェライト系ステンレス鋼帯用冷間圧延油組成物及びフェライト系ステンレス鋼帯の冷間圧延方法
JPH0221437B2 (ja)
JP3370874B2 (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金板の圧延方法
JPH0517790A (ja) 鋼板の冷間圧延用潤滑油

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 19990727

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080827

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080827

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090827

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090827

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100827

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110827

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110827

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120827

Year of fee payment: 13

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees