JP2010275352A - 金属加工油剤組成物、金属加工方法及び金属加工品 - Google Patents

金属加工油剤組成物、金属加工方法及び金属加工品 Download PDF

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Abstract

【課題】高速圧延時の潤滑性を損ねることなく、圧延後の鋼板表面に発生する油焼けと言われる変色の防止に有効な金属加工油剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ヨウ素価が56〜72及び上昇融点が24℃以下であるパームオレイン油5〜98質量%、(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体0.5〜45質量%、(C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体0.5〜15質量%、(D)リン脂質1〜35質量%を含み、成分(C)の配合量に対する成分(B)の配合量が1〜3倍であることを特徴とする金属加工油剤組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属加工、例えば、塑性加工、特に冷間圧延時に用いる金属加工油剤組成物に関し、特に高速圧延時の潤滑性を損ねることなく、圧延後の鋼板表面に発生する油焼けと言われる変色の防止に有効な金属加工油剤組成物に関する。
鋼板等の金属の冷間圧延では、一般に圧延油原液を水で希釈し、水含有圧延油として用いており、圧延機の入り側においてロール及び金属表面にスプレー塗布される。その水含有圧延油が圧延後、圧延機出側の金属帯表面に付着したままコイルとして巻き取られ次工程に移るまでの間放置される。この間に、圧延油中の水分や酸素が油の存在下で金属と反応し、金属帯表面に油焼けと呼ばれる変色(錆)が発生する。この油焼けとは、油が焼け焦げたような茶褐色の錆であり、コイル温度が高いほど発生し易い。油焼けが発生したコイルは、表面の手入れを行うかもしくはスクラップ処理されるため甚大なコスト高を招く。
この油焼けを防止する為、プレートアウト性に優れ、冷間圧延後の鋼板に油焼けによる錆が発生しない鋼板冷間圧延用の圧延油として、精製パーム油及び再生パーム油よりなる混合油を含み、混合油の酸価が2〜20mgKOH/gであることを特徴とする鋼板冷間圧延油及びこの圧延油を用いた冷間圧延方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、油焼けが発生しない金属帯の冷間圧延方法の提供を目的に、圧延油として合成エステル系冷間圧延油(使用時:3%水希釈、6μmエマルション)を使用して冷間圧延を行い、圧延終了後巻取り迄の間の金属帯に、120℃以上に加熱したロールを押し当て、金属帯表面に付着した圧延油中の水分を除去する冷間圧延方法により、巻き取ったコイル内に圧延油中の水分を取り込まず、かつコイル温度の上昇を抑制することで、油焼けのない金属帯を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの方法を鋼板の冷間圧延に用いても圧延後の鋼板表面に発生する油焼けと言われる変色防止には不十分であり、未だユーザーの満足するものは得られていないのが現状であった。
特開平8−176569号公報 特開平8−238517号公報
本発明の目的は、金属加工油剤組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、水溶性金属加工、例えば、冷間圧延時に用いる水溶性油剤に関し、特に高速圧延時の潤滑性を損ねることなく、圧延後の鋼板表面に発生する油焼けと言われている変色を効果的に軽減ないし防止する水溶性金属加工油剤組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、圧延油の各成分の種類、含有量及び、特定の比率を有する圧延油剤によってこの目的が完全に達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下に示す金属加工油剤組成物、金属加工方法及び金属加工品を提供するものである。
1.(A)ヨウ素価が56〜72及び上昇融点が24℃以下であるパームオレイン油5〜98質量%、
(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体0.5〜45質量%、
(C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体0.5〜15質量%、及び
(D)リン脂質1〜35質量%を含む金属加工油剤組成物において、
成分(C)の配合量に対する成分(B)の配合量が1〜3倍であることを特徴とする金属加工油剤組成物。
2.(E)有機ホスホン酸及びそのエステル、有機ホスフィン酸及びそのエステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル及び次亜リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする上記1記載の金属加工油剤組成物。
3.(F)フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする上記1または2記載の金属加工油剤組成物。
4.(G)ノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする上記1〜3のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物。
5.(H)炭化水素系ポリマー及びエステル系ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする上記1〜4のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物。
6.(I)炭素数4〜16のアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする上記1〜5のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物。
7.(J)鉱油、炭化水素系合成油及び合成エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする上記1〜6のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物。
8.上記1〜7のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物を使用して金属材料を加工する、金属加工方法。
9.上記1〜7のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物を冷間圧延油として冷間圧延に用いる、上記8記載の金属加工方法。
10.上記8または9記載の金属加工方法により得られた金属加工品。
本発明の金属加工油剤組成物は、乳化安定性、焼付き荷重、摩擦係数の使用適切範囲、耐油焼け性が優れているため、塑性加工、圧延、特に冷間圧延などの金属加工を効率的に行うことが出来る。本発明の金属加工方法により得られた金属加工品は加工表面及び加工精度が良好である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、耐油焼け性が優れた塑性加工、圧延、特に冷間圧延などの金属加工法に用いるのに好適な金属加工油剤組成物であって、(A)ヨウ素価が56〜72及び上昇融点が24℃以下であるパームオレイン油5〜98質量%、(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体0.5〜45質量%、(C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体0.5〜15質量%、及び(D)リン脂質1〜35質量%を含む金属加工油剤組成物において、成分(C)の配合量に対する成分(B)の配合量が1〜3倍であることを特徴とする。
本発明の油剤組成物は、好ましくは、(E)有機ホスホン酸及びそのエステル、有機ホスフィン酸及びそのエステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル及び次亜リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種類、(F)フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類、(G)ノニオン系界面活性剤、(H)炭化水素系ポリマー及びエステル系ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種類、(I)炭素数4〜16のアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種類、及び/又は(J)溶剤として鉱油、炭化水素系合成油及び合成エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含む。
本発明に用いる(A)パームオレイン油(パームオレインとも呼ぶ、palm olein oil)は、一般的にアブラヤシの果肉(油脂含量16〜20%)から圧搾によって得られる油脂を分別し、必要な性状をもつ油脂分に分けたパーム分別油の中の一つであり、潤滑作用に有効である。パーム分別油には、高融点画分のパームステアリンとパームオレインがあり、パームオレインはさらに中融点画分と曇り点の低い低融点画分に分別することが行われている。パームオレイン油は低融点画分の油であり、JAS規格で酸価0.20以下、水分夾雑物0.1%以下、ヨウ素価56〜72、上昇融点24℃以下と規定されている。本発明の油剤に使用するパームオレイン油は、ヨウ素価が56〜72及び上昇融点が24℃以下のものである。好ましくはヨウ素価が56〜65及び上昇融点が20℃以下のものである。
本発明の油剤組成物に使用される(A)パームオレイン油の質量比率は、組成物全体に対して、5〜98質量%、好ましくは30〜98質量%、さらに好ましくは50〜90質量%、最も好ましくは70〜90質量%である。この範囲より、成分の量が少ないと、圧延油として使用した場合には、期待する高速圧延時における最適な摩擦係数を得ることが困難になり、この範囲より多くても添加量の増加に伴う効果の向上はなく、逆に摩擦係数が低くなりすぎることによるスリップなどの悪影響を及ぼすことがある。
本発明の油剤組成物に使用される(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体としては、炭素数が10〜20のアルケニル基をもつアルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸無水物などがある。
本発明の油剤組成物に使用される(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体の質量比率は、組成物全体に対して、0.5〜45質量%、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。この範囲より、成分の量が少ないと期待する油焼けを防止する性能を得ることが困難になり、この範囲より多くても添加量の増加に伴う効果の向上はなく、逆に潤滑成分の付着を妨げ潤滑性の低下、圧延材の汚れを増長させるなど悪影響を及ぼすことがあり、また、不経済でもある。
本発明の油剤組成物に使用される(C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体としては、炭素数58の炭化水素置換のコハク酸及び、炭素数72の炭化水素置換のコハク酸などがある。
本発明の油剤組成物に使用される(C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体の質量比率は、組成物全体に対して、0.5〜15質量%、好ましくは1〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。この範囲より、成分の量が少ないと期待する(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体の選択吸着を防止することが困難になり、この範囲より多くても添加量の増加に伴う効果の向上はなく、逆に製品粘度が上昇するため、付着過多などによるスリップなどの悪影響を及ぼすことがあり、また、不経済でもある。
本発明の油剤組成物において、(C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体の配合量に対する(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体の配合比は1〜3倍であり、好ましくは、1〜2倍である。この比率が高過ぎると、すなわち成分(B)の量が少な過ぎると、(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体の選択吸着を防止することが困難になる。一方この比率が低過ぎると、すなわち成分(C)の量が多過ぎると、(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体の吸着を妨げ、油焼け発生の防止力が低下する。
本発明の油剤組成物に使用される(D)リン脂質としては、卵黄レシチン、大豆レシチン等が挙げられる。卵黄レシチン、大豆レシチン等は、精製度の高い粉状のものと、精製度の低い液状のものが市販されている。このレシチンは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールなどの各種リン脂質分子種とトリグリセリド(主に大豆油)との混合物である。本発明の油剤組成物に使用するリン脂質は、どの様な形状のものでも良いが、液状のものが基油に溶かしやすく、油剤の製造に適している。リン脂質は市場で一般に入手することができ、本発明では市販品を使用することができる。そのような市販品の例として、商品名レシチン(味の素株式会社製)、レシチンDX(日清製油株式会社製)等がある。
本発明の油剤組成物において、リン脂質の質量比率は、組成物全体に対して、好ましくは1〜35質量%、さらに好ましくは1〜20質量%、最も好ましくは1〜10質量%である。この範囲より、成分の量が少ないと(C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体及び、(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体を均一に分散する性能を得ることが困難になり、この範囲より多くても添加量の増加に伴う効果の向上はなく、逆に乳化過多による付着量減少により、潤滑性低下、油焼けの発生など悪影響を及ぼすことがあり、また、不経済でもある。
本発明の油剤組成物に任意成分として使用される、(E)有機ホスホン酸及びそのエステル、有機ホスフィン酸及びそのエステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル及び次亜リン酸エステルとしては、以下の式で表される化合物が挙げられる。
有機ホスホン酸及びそのエステルは下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
Figure 2010275352

〔式(1)中、R1は炭素数1〜22の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜18、好ましくは5〜15の脂環式炭化水素基であり、R2及びR3は水素原子、炭素数1〜22の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜18、好ましくは5〜15の脂環式炭化水素基である。〕
有機ホスフィン酸及びそのエステルは下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
Figure 2010275352

〔式(2)中、R4は炭素数1〜22の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜18、好ましくは5〜15の脂環式炭化水素基であり、R5及びR6は水素原子、炭素数1〜22の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜18、好ましくは5〜15の脂環式炭化水素基である。〕
リン酸エステルは下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
Figure 2010275352

〔式(3)中、R7、R8、R9は水素原子、炭素数1〜22の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜18、好ましくは5〜15の脂環式炭化水素基である。ただし、R7、R8、R9が同時に水素原子であることはない。〕
亜リン酸エステルは下記一般式(4)、(5)又は(6)で表されるものが好ましい。
Figure 2010275352
Figure 2010275352
Figure 2010275352
〔式(4)、(5)、(6)中、R10、R11、R12、R15、R16、R18、R19は炭素数1〜22の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜18、好ましくは5〜15の脂環式炭化水素基であり、R17は炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数2〜24のアルケニレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、炭素数7〜24のアリーレンアルキレン基又は炭素数7〜24のアルキルアリーレン基、炭素数2〜4アルキレンオキシド基、炭素数3〜18の2価の脂環式炭化水素基であり、R13、R14は水素原子、炭素数1〜22の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜18、好ましくは5〜15の脂環式炭化水素基である。ただし、R13とR14が共に水素原子の場合を除く。nは1〜20の数である。〕
次亜リン酸エステルは、下記一般式(7)、(8)又は(9)で表されるものが好ましい。
Figure 2010275352
Figure 2010275352
Figure 2010275352

〔式(7)、(8)、(9)中、R20、R22、R23、R24、R25、R27、R28は炭素数1〜22の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜18、好ましくは5〜15の脂環式炭化水素基であり、R21は水素原子、炭素数1〜22の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜18、好ましくは5〜15の脂環式炭化水素基であり、R26は炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数2〜24のアルケニレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、炭素数7〜24のアリーレンアルキレン基又は炭素数7〜24のアルキルアリーレン基、炭素数2〜4のアルキレンオキシド基、炭素数3〜18の2価の脂環式炭化水素基である。〕
具体的には、有機ホスホン酸及びそのエステルとして、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、メチルホスホン酸メチル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
有機ホスフィン酸及びそのエステルとして、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、メチルホスフィン酸エチル、ジメチルホスフィン酸エチル、メチルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸エチルなどが挙げられる。
リン酸エステルは、例えば、脂肪族リン酸エステルとして、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリイソブチルなどのリン酸トリC1〜22アルキルエステル;リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)などのリン酸ジC1〜22アルキルエステル;リン酸モノメチル、リン酸モノエチル、リン酸モノプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸モノブチル、リン酸モノイソブチルなどのリン酸モノC1〜22アルキルエステルが挙げられ、芳香族リン酸エステルとして、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシリル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、リン酸ジフェニルエチルクレジルなどのリン酸トリC6〜22アリールエステル;脂肪族−芳香族リン酸エステルとしてリン酸メチルジフェニル、リン酸フェニルジエチルなどが挙げられる。
亜リン酸エステルは、例えば、芳香族亜リン酸エステルとして、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリクレジル、亜リン酸トリキシリル、亜リン酸ジフェニルクレジルなどの亜リン酸トリC6〜22アリールエステル;脂肪族亜リン酸エステルとして、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリイソプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリイソブチル、亜リン酸トリオレイルなどの亜リン酸トリC1〜22アルキルエステル;亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチルなどの亜リン酸ジC1〜22アルキルエステル;亜リン酸モノメチル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸モノプロピル、亜リン酸モノイソプロピル、亜リン酸モノブチル、亜リン酸モノイソブチルなどの亜リン酸モノC1〜22アルキルエステル;脂肪族−芳香族亜リン酸エステルとして、メタンホスホン酸ジフェニル、メタンホスホン酸ジエチルなどのアルキルホスホン酸アリールエステル;その他の例として、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジエチレングリコールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルジブチレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
次亜リン酸エステルは、例えば、次亜リン酸ジエステルとして、次亜リン酸ジメチル、次亜リン酸ジエチル、次亜リン酸ジプロピル、次亜リン酸ジブチル、次亜リン酸ジヘキシル、次亜リン酸ジオクチル、次亜リン酸ジデシル、メチル−ジフェニルホスホナイト、エチル−ジフェニルホスホナイト、プロピル−ジフェニルホスホナイト、ブチル−ジフェニルホスホナイト、ヘキシル−ジフェニルホスホナイト、オクチル−ジフェニルホスホナイト、デシル−ジフェニルホスホナイト、ビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニル、ビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニルなどが挙げられ、次亜リン酸モノエステルとして、次亜リン酸モノメチル、次亜リン酸モノエチル、次亜リン酸モノプロピル、次亜リン酸モノブチル、次亜リン酸モノヘキシル、次亜リン酸モノオクチル、次亜リン酸モノデシルなどが挙げられ、さらにその他の例として、ビス(ジフェノキシホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェノキシホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェノキシホスフィノ)プロパン、1,6−ビス(ジフェノキシホスフィノ)ヘキサン、1,8−ビス(ジフェノキシホスフィノ)オクタン、テトラフェニル−1,4−フェニレンジホスホナイト、テトラフェニル−4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(4−メチルフェニル)エチレンジホスホナイト、テトラキス(4−メチルフェニル)−1,3−フェニレンジホスホナイト、テトラキス(4−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)エチレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−1,3−フェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)エチレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−1,3−フェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラフェニル−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスホナイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスホナイトなどが挙げられる。
本発明の油剤組成物(原液)全体に対する(E)有機ホスホン酸及びそのエステル、有機ホスフィン酸及びそのエステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル及び次亜リン酸エステルの量は、好ましくは0.3〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
本発明の油剤組成物はさらに任意成分として、(F)フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤、(G)ノニオン系界面活性剤、(H)炭化水素系ポリマー及びエステル系ポリマー、(I)炭素数4〜16のアミン、(J)鉱油、炭化水素系合成油、及び合成エステルからなる少なくとも1種類を含んでも良い。
成分(F)のフェノール系酸化防止剤としては、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、チオジエチレンビスプロピオネート、ペンタエスリトールテトラキスプロピオネートなど、アミン系酸化防止剤としては、アルキルフェニル−αナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、オクチルブチルジフェニルアミンなどが挙げられる。
成分(G)のノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン変性脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、硬化ひまし油ポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンジグリセリン、油脂部分分解ポリオキシエチレン付加物などからなる群から選ばれる少なくとも1種類が挙げられる。前記のポリオキシエチレンはオキシエチレンとオキシプロピレンのミックス又はブロックを重合したポリマーでも良い。
成分(H)の炭化水素系ポリマーとしては、ポリイソブチレン、ポリブテンなどが、エステル系ポリマーとしては、メタクリレート系共重合物、アルキルメタクリレート系共重合物などが挙げられる。
成分(I)の炭素数4〜16のアミンとしては、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、トリブチルアミンなどを代表例とするアルキルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロへキシルアミンなどを代表例とする脂環式アミン、ジフェニルアミン、アニリンなどを代表例とする芳香族アミン、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを代表例とするアルカノールアミンが挙げられる。
成分(J)の鉱油、炭化水素系合成油、及び合成エステルからなる少なくとも1種類である。鉱油としては、ナフテン系及びパラフィン系の鉱油が挙げられる。炭化水素系合成油としては、ポリα−オレフィン、ポリブテンに代表される合成炭化水素油、アルキルジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールに代表されるエーテル系合成油、シリコン油、フッ素化油が挙げられる。
合成エステル油としては、メチルオレート、2−エチルへキシルステアレート、2−エチルへキシルパルミテート、ブチルステアレート等のモノエステル、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等の二塩基酸エステル、トリメチロールプロパントリオレート、ペンタエリスリトールテトラオレート等の多価アルコールエステルの部分エステル、フルエステル等が挙げられる。潤滑性、新生面への吸着性の点から、エステル油が最も好ましい。エステル油は分子内に極性基を持っており、金属表面に潤滑性の良好な吸着膜を造る。
本発明の油剤組成物は、成分(A)〜(D)、さらには任意成分としての成分(E)〜(J)を、適当な温度条件下、例えば、40〜70℃程度で混合溶解させることにより容易に製造できる。
本発明の油剤組成物に使用する水としては、超純水、蒸留水、イオン交換水、水道水、市水、工業用水等のいずれを用いても良い。
本発明の油剤組成物(原液)は、種々の金属加工に使用される。例えば、圧延加工に使用する場合、使用時に原液を水に好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%、最も好ましくは1〜3質量%に希釈し、低炭素鋼、高張力鋼板、ステンレス鋼、珪素鋼板等の鉄系鋼板、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン及び、チタン合金等の非鉄系材料の冷間圧延に使用される。油剤組成物は被加工材表面及び工具表面の一方、または双方に汎用の手段(例えば、ノズルを用いて圧延機入り側で給油)を用いて汎用の量(例えば、1スタンドあたり、4〜8m3/min)適用される。
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記の実施例は本発明を制限するものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。
実施例1−39,比較例1−8
表1〜表9に示す成分を表に記載した質量比率で混合し、油剤組成物を調製した。比較例8は市販の圧延油である。これらの油剤組成物について以下の方法によりその特性を評価した。
1.油剤エマルションの性状測定方法
各油剤のエマルションを下記の試験条件・試験方法により測定した。
(1)乳化安定性1
油剤組成物を2質量%となるようにイオン交換水で希釈して得られる(50〜55℃、イオン交換水、400ml、プライミクス(株)製T.K.ホモミクサーMARKII 2.5にて8000rpmで3分攪拌)エマルションの粒径(μm)(コールター社製コールターマルチサイザーIIIで測定した値)とESI値(8分静置後の、下層濃度/上層濃度)で評価した。評価は以下の基準に従った。
○:エマルションの粒径10μm未満、かつ、ESI値0.8以上
×:エマルションの粒径10μm以上、又は、ESI値0.8未満
(2)乳化安定性2
油剤組成物を2質量%となるようにイオン交換水で希釈して得られる(50〜55℃、イオン交換水、鉄超微粉1000ppm添加、400ml、プライミクス(株)製T.K.ホモミクサーMARKII 2.5にて8000rpmで3分攪拌)エマルションの粒径(μm)(コールター社製コールターマルチサイザーIIIで測定した値)とESI値(8分静置後の、下層濃度/上層濃度)で評価した。添加した鉄超微粉は200Å(真空冶金(株)製)のものを使用した。評価は以下の基準に従った。
○:エマルションの粒径10μm未満、かつ、ESI値0.8以上
×:エマルションの粒径10μm以上、又は、ESI値0.8未満
2.効果の評価
(1)焼付き荷重(N)
曽田式四球耐圧試験機を用い、焼付きの発生する限界荷重(N)で評価した。評価は以下の基準に従った。
○:限界荷重100N以上
×:限界荷重100N未満
(2)摩擦係数
高速通板試験機(ロール径=240mmΦ、試験片=SPCC材の圧延直後の材料;幅30mm×厚さ0.8mm、圧延速度=1000m/min、圧下率40%)での摩擦係数で評価した。評価は以下の基準に従った。
○:0.025〜0.045
×:0.025未満又は0.045超
0.025未満ではスリップの危険性が高く、0.045を超えると圧延動力が高くなる。
(3)耐油焼け性
試験片(SPCC材の圧延直後の材料、厚さ0.8mm材)を低速圧延機(ロール径=150mmΦ、圧延速度15m/min、圧下率20%)で圧延した後、水切り処置を行わないでアルミ箔にて梱包する。その後、圧着板にて圧着し120℃恒温槽に20時間放置して油焼けの発生状態により評価した。評価は以下の基準に従った。
○:油焼け発生なし
△:油焼け少量発生
×:油焼け多量発生
総合評価
合格(○):全て○か△の場合
不合格(×):1つでも×がある場合
結果を表1〜表8に示す。
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(A)パームオレイン油:ヨウ素価が60、上昇融点が20℃
(B)コハク酸のC10-20置換体1:炭素数15のアルケニルコハク酸
(B)コハク酸のC10-20置換体2:炭素数12のアルケニルコハク酸無水物
(C)コハク酸のC50-90置換体1:炭素数58(C58)の炭化水素置換のコハク酸
(C)コハク酸のC50-90置換体2:炭素数72(C72)の炭化水素置換のコハク酸
(D)リン脂質:大豆レシチン
(E)次亜リン酸エステル1:1,2−ビス(ジフェノキシホスフィノ)エタン
(E)次亜リン酸エステル2:次亜リン酸ジオクチル
(E)亜リン酸エステル1:亜リン酸ジラウリル
(E)亜リン酸エステル2:テトラフェニルジエチレングリコールジホスファイト
(E)リン酸エステル1:リン酸トリフェニル
(E)リン酸エステル2:リン酸トリブチル
(F)酸化防止剤1:BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)
(F)酸化防止剤2:フェニル−1−ナフチルアミン
(F)酸化防止剤3:オクチルブチルジフェニルアミン
(G)界面活性剤1:ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル
(G)界面活性剤2:硬化ひまし油ポリオキシエチレン付加物
(G)界面活性剤3:ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル
(H)ポリマー1:アルキルメタクリレート系共重合物(分子量;約18万)
(H)ポリマー2:ポリイソブチレン(分子量;約6万)
(I)アミン1:トリブチルアミン
(I)アミン2:ジシクロへキシルアミン
(I)アミン3:ジフェニルアミン
(J)合成エステル1:トリメチロールプロパントリオレート
(J)合成エステル2:ジ−2−エチルへキシルセバケート
(J)鉱油:500ニュートラル油(40℃粘度:約100mm/s)
表1〜7に示す実施例1〜39は、(A)パームオレイン油30〜98質量%、(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体0.5〜30質量%、(C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体0.5〜10質量%、及び(D)リン脂質1〜30質量%を含む金属加工油剤組成物において、(C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体の配合量に対する(B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体の配合量が1〜3倍である油剤組成物、又はさらに成分(E)〜(J)の一つ以上が含まれる油剤組成物であり、乳化安定性1、乳化安定性2、焼き付き荷重、摩擦係数、耐油焼け性において良好な結果を示しており、すべて合格であった。
一方、表8及び9に示す比較例1は成分(B)を含まないため、耐油焼け性が不良である。
比較例2は成分(C)を含まないため、摩擦係数が高い。
比較例3は成分(D)を含まないため、乳化安定性が不良であり、焼き付き荷重が低く、摩擦係数が高い。
比較例4は成分(A)〜(D)を含むが、成分(B)/成分(C)の比が4であるため、摩擦係数が高い。
比較例5は成分(A)〜(D)を含むが成分(B)と成分(C)の量が少ないため耐油焼け性が不良である。
比較例6は成分(A)〜(D)及び(F)〜(I)を含むが成分(B)と成分(C)の量が多いため摩擦係数が高い。
比較例7は成分(A)〜(I)を含むが成分(B)と成分(C)の量が多いため摩擦係数が高い。
また市販の植物油脂系圧延油は耐油焼け性が不良である。

Claims (10)

  1. (A)ヨウ素価が56〜72及び上昇融点が24℃以下であるパームオレイン油5〜98質量%、
    (B)コハク酸の炭素数10〜20の炭化水素置換体0.5〜45質量%、
    (C)コハク酸の炭素数50〜90の炭化水素置換体0.5〜15質量%、及び
    (D)リン脂質1〜35質量%を含む金属加工油剤組成物において、
    成分(C)の配合量に対する成分(B)の配合量が1〜3倍であることを特徴とする金属加工油剤組成物。
  2. (E)有機ホスホン酸及びそのエステル、有機ホスフィン酸及びそのエステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル及び次亜リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1記載の金属加工油剤組成物。
  3. (F)フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1または2記載の金属加工油剤組成物。
  4. (G)ノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物。
  5. (H)炭化水素系ポリマー及びエステル系ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物。
  6. (I)炭素数4〜16のアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物。
  7. (J)鉱油、炭化水素系合成油及び合成エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物を使用して金属材料を加工する、金属加工方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項記載の金属加工油剤組成物を冷間圧延油として冷間圧延に用いる、請求項8記載の金属加工方法。
  10. 請求項8または9記載の金属加工方法により得られた金属加工品。
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