JP2010065135A - アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤、及びそれを用いたアルミニウム熱間鍛造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウムという)の熱間鍛造に用いられる水分散型の潤滑離型剤である。水、固形潤滑剤、及び濡れ性改善剤を含有する。濡れ性改善剤は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカルボン酸ナトリウム塩、及びパーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム塩のうち1種又は2種以上よりなる。固形潤滑剤の含有量は1〜60質量%であり、濡れ性改善剤の含有量は0.005〜5質量%である。固形潤滑剤の大きさは、0.1〜20μmである。
【選択図】なし
Description
従来、熱間鍛造において使用される潤滑離型剤としては、潤滑成分を水または油中に分散させたものが多く用いられている(特許文献1〜4)。
そして、水分散型潤滑離型剤としては、黒鉛などの無機潤滑離型剤を界面活性剤等を用いて水に分散させた水溶性分散液と水溶液に溶解させた水溶性溶液タイプ、さらに、これらにバインダーとしての樹脂成分を添加したタイプが主に使用されている。水分散型潤滑離型剤は、高温において熱分解ガスを発生させない。
そのため、水分散型潤滑離型剤を用いて、潤滑に必要な成分を金型に付着させるためには、金型の最表面温度を低下させる必要があり、結果として、必要な潤滑離型剤の3〜20倍の噴霧を行うこととなる。
また、潤滑離型剤の吹き付け量が多いと、金型の最表面温度が下がりすぎ、加工性の低下を招く原因となっている。
水、固形潤滑剤、及び濡れ性改善剤を含有し、
上記濡れ性改善剤は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカルボン酸ナトリウム塩、及びパーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム塩のうち1種又は2種以上よりなり、
上記固形潤滑剤の含有量は1〜60%(質量%、以下同様)であり、上記濡れ性改善剤の含有量は0.005〜5%であり、
上記固形潤滑剤の大きさは、0.1〜20μmであることを特徴とするアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤にある(請求項1)。
上記濡れ性改善剤は、界面活性剤としても用いられるものであるが、本発明においては、上述の水分散型の潤滑離型剤の濡れ性を向上させることを目的として含有されている。
この場合には、特に摩擦係数を低減させることができ、良好な潤滑性を得ることができる。
そして、摩擦条件によっては、上記固形潤滑剤は、2種以上の混合物であることが好ましい場合もある。
固形潤滑剤の含有量が1%未満である場合には、付着量が低すぎるため、必要量を付着させるために時間を要し、その間に金型の温度が低下しすぎるという問題がある。一方、固形潤滑剤の含有量が60%を超える場合には、濃度が高すぎて粘度が上がり、均一に付着させることが困難となる。
上記濡れ性改善剤の含有量が0.005%未満である場合には、上述の水分散型の潤滑離型剤の濡れ性向上効果を十分に得ることができない。一方、上記濡れ性改善剤の含有量が5%を超える場合には、乾燥時に臭気が発生するという問題がある。
上記固形潤滑剤の大きさが0.1μm未満である場合には、分散性が悪く、均一性が劣るおそれがある。一方、上記固形潤滑剤の大きさが20μmを超える場合には、サイズが大きいため、付着量は増加するものの外観上ムラが目立ち易くなるおそれがある。
上記界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
また、上記界面活性剤の含有量は、0.5〜5.0質量%であることが好ましい。
この場合には、上記アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤の潤滑性をより向上させることができ、複雑な形状や厳しい鍛造条件であっても良好に鍛造を行うことができる。一般に、アルミニウムの熱間鍛造において、潤滑離型剤の潤滑性は、主として境界潤滑性によるところが大きい。上記アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤においては、上記特定の油性剤を添加することにより、境界潤滑性を向上することができるため、潤滑性をより向上することができる。
また、上記油性剤は、1.0〜20質量%含有することが好ましい。
また、上記合成エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、及びテトラエ
ステルから選ばれる1種又は2種以上からなることが好ましい。
この場合には、熱による酸化に対する安定性や、境界潤滑性をより向上させることができる。
上記一般式(1)において、上記アルキル基R1の炭素数が6以下の場合には、上記ステンレス合金板あるいは鋼板プレス加工用潤滑油の境界潤滑性が低下したり、ステンレス合金粉が凝着し易くなりプレス不良が起こるおそれがある。また、この場合には、上記潤滑油の臭気がきつくなり、作業環境を悪化させるおそれがある。一方、上記アルキル基R2の炭素数が18以上の場合、又は上記アルキル基R2の炭素数が5以上の場合には、上記潤滑油の融点が高くなり、常温で固化し易くなるおそれがある。そのため、上記潤滑油の使用時に、該潤滑油を加熱するための加熱設備等が必要となり、ステンレス合金板あるいは鋼板プレス加工用潤滑油の取り扱いが困難になるおそれがある。
この場合には、上記アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤の潤滑性をより向上させることができる。
また、上記りん系極圧剤としては、例えば、下記の一般式(3)で表されるアルキルフォスフォン酸エステル、リン酸トリトリル等を用いることができる。
また、上記極圧剤の含有量は、0.5〜5.0質量%であることが好ましい。
本例は、本発明のアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤にかかる実施例及び比較例について具体的に説明する。
本例では、表1に示すごとく、本発明の実施例として、17種類のアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤(試料E1〜試料E17)を作製し、また、表2に示すごとく、本発明の比較例として、6種類のアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤(試料C1〜試料C6)を作製し、その特性を評価した。
<濡れ性改善剤>
a1:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
a2:ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
a3:パーフルオロアルキルカルボン酸ナトリウム塩
a4:パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム塩
b1:ラウリルアルコールエチレンオキサイド4モル付加物
b2:ラウリン酸モノエステル(エチレンオキサイド2モル〜20モル付加物)
濡れ性改善剤は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカルボン酸ナトリウム塩、及びパーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム塩のうち1種又は2種以上よりなる。
また、上記固形潤滑剤の含有量は1〜60質量%であり、上記濡れ性改善剤の含有量は0.005〜5質量%である。
また、上記固形潤滑剤の大きさは、0.1〜20μmである。
まず、アルカリ洗浄を行った1050アルミニウムブロックを150℃、及び250℃に加熱した。その後、アルミニウムブロックに対して、アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤を、一流体スプレーノズルを用いて0.02秒間スプレーを行うことにより塗布した。塗布後は、アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤は乾燥し、乾燥皮膜となった。
付着性は、150℃で乾燥皮膜を形成した場合、及び250℃で乾燥皮膜を形成した場合のそれぞれについて、付着量を測定することにより評価した。
上記乾燥皮膜が0.3g/m2以上である場合を評価◎とし、0.2g/m2以上0.3g/m2未満である場合は評価を○とし、0.1g/m2以上0.2g/m2未満である場合は評価を△とし、0.1g/m2未満である場合は評価を×とした。評価が◎、○、△である場合を合格とし、評価が×である場合を不合格とする。
150℃における付着量、及び250℃における付着量のいずれも合格である場合を合格とし、150℃における付着量、又は250℃における付着量が不合格である場合を不合格とする。
均一性は、150℃で乾燥皮膜を形成した場合、及び250℃で乾燥皮膜を形成した場合のそれぞれについて、外観を目視にて観察することにより評価した。均一に付着している場合は評価を○とし、付着部分が付着していない部分よりも広い場合は評価を△とし、付着していない部分が多い場合は評価を×とした。評価が○、△である場合を合格とし、評価が×である場合を不合格とする。
150℃における均一性、及び250℃における均一性のいずれも合格である場合を合格とし、150℃における均一性、又は250℃における均一性が不合格である場合を不合格とする。
臭気は、乾燥時の臭気を評価した。まったく気にならない場合は評価を○とし、気になるが我慢できる場合は評価を△とし、非常に気になり我慢できない場合は評価を×とした。評価が○、△である場合を合格とし、評価が×である場合を不合格とする。
このように、本発明による潤滑離型剤は、高温の金型に対しても均一に潤滑成分を付着させることができ、作業環境及び作業効率を悪化させないことが分かる。
また、比較例としての試料C2は、濡れ性改善剤の含有量が本発明の上限を上回るため、乾燥時に臭気が発生し、不合格であった。
また、比較例としての試料C4は、固形潤滑剤の含有量が本発明の上限を上回るため、アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤の粘度が高くなり、スプレー塗布性が悪化し、均一性が不合格であった。
また、比較例としての試料C6は、固形潤滑剤の粒子径が本発明の上限を上回るため、付着量は充分であったが、均一性が不合格であった。
Claims (6)
- アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウムという)の熱間鍛造に用いられる水分散型の潤滑離型剤であって、
水、固形潤滑剤、及び濡れ性改善剤を含有し、
上記濡れ性改善剤は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカルボン酸ナトリウム塩、及びパーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム塩のうち1種又は2種以上よりなり、
上記固形潤滑剤の含有量は1〜60%(質量%、以下同様)であり、上記濡れ性改善剤の含有量は0.005〜5%であり、
上記固形潤滑剤の大きさは、0.1〜20μmであることを特徴とするアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤。 - 請求項1において、上記固形潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、窒化珪素、金属酸化物およびフッ化物、雲母、ポリテトラフルオロエチレン、及びタルクのうち1種または2種以上よりなることを特徴とするアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤。
- 請求項1又は2において、さらに、上記濡れ性改善剤とは異なる界面活性剤を含有することを特徴とするアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、さらに、油性剤として、天然油脂、合成エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸、及びアルコールのうち1種又は2種以上を含有することを特徴とするアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、さらに、極圧剤として、硫黄系極圧剤、及びりん系極圧剤のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とするアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤を、一流体または二流体スプレーにより150〜250℃の金型に噴霧後、乾燥皮膜とし、アルミニウムの熱間鍛造を行うことを特徴とするアルミニウム熱間鍛造方法。
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