JP5409421B2 - 油性離型剤組成物 - Google Patents
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Description
ダイカスト鋳造においては、一般に、鋳物をダイカスト金型から外し易くするために、ダイカスト金型の内面に離型剤が付与される。
水性離型剤は、作業性が優れているものの、離型性が不十分であり、又、ライデンフロスト現象が生じて鋳物の品質が低下する欠点がある。
例えば、所定の溶剤、鉱油及び/又は合成油、シリコーン油、添加剤を含む油性ダイカスト用離型剤が知られている(例えば、特許文献4参照)。
また、離型性が水性離型剤よりも優れるものの十分とはいえず、鋳物の鋳肌が粗くなる場合がある。
また、上記油性離型剤組成物においては、高粘度油と溶剤の配合割合、及び、潤滑剤と溶剤との配合割合を所定の範囲とすることにより、鋳物への焼付きを防止でき、ダイカスト金型と鋳物との離型性も向上させることができる。これにより、鋳物の鋳肌が粗くなることを抑制できる。なお、本発明において「離型性」とは、鋳物のダイカスト金型からの離れ易さの度合いを意味する。
また、ダイカスト鋳造の温度に関わらず、鋳物への焼付きが防止され、離型性も向上することになる。
高粘度油である鉱油は、石油等の鉱物質の油から分留等して得られ、上述した動粘度を備えるものであれば特に限定されない。例えば、スピンドル油、マシン油、モーター油、シリンダー油等が挙げられる。
高粘度油である合成油は、化学合成して得られ、上述した動粘度を備えるものであれば特に限定されない。例えば、合成エステル等が挙げられる。
なお、鉱油と合成油は、それぞれを単独で用いても、混合して用いてもよい。
40℃における動粘度が40mm2/S未満であると、ダイカスト金型への付着が不十分となり、40℃における動粘度が180mm2/Sを超えると、特にダイカスト鋳造を低温で行った場合、粘度が高すぎて、ダイカスト金型に均一に付着できないことになる。
100℃における動粘度が6.5mm2/S未満であると、特にダイカスト鋳造を高温で行った場合、ダイカスト金型への付着が不十分となり、100℃における動粘度が17mm2/Sを超えると、粘度が高すぎて、ダイカスト金型に均一に付着できないことになる。
低粘度油である鉱油は、石油等の鉱物質の油から分留等して得られ、上述した動粘度を備えるものであれば特に限定されない。例えば、スピンドル油、マシン油、モーター油、シリンダー油等が挙げられる。
低粘度油である合成油は、化学合成して得られ、上述した動粘度を備えるものであれば特に限定されない。例えば、合成エステル等が挙げられる。
なお、鉱油と合成油は、それぞれを単独で用いても、混合して用いてもよい。
また、高粘度油と低粘度油とは、粘度がそれぞれ上記範囲内であれば、同じ材料であっても異なる材料であってもよい。
40℃における動粘度が30mm2/Sを超えると、特にダイカスト鋳造を高温で行った場合、ダイカスト金型への付着性向上の効果が認められない。
100℃における動粘度が6mm2/Sを超えると、特にダイカスト鋳造を高温で行った場合、ダイカスト金型への付着性向上の効果が認められない。
高粘度油の配合割合が12質量%未満であると、付着性が不十分であり、焼付きが生じ易くなる。また、配合割合が20質量%を超えると、油性離型剤組成物自体の粘度が高くなり過ぎ、ダイカスト金型に吹付け難くなる。
高粘度油1質量部に対する低粘度油の配合割合が1.5質量部を超えると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、ダイカスト鋳造時に多くの煙が発生する傾向にある。なお、低粘度油の配合割合が0質量部というのは、油性離型剤組成物が低粘度油を含んでいない場合を意味する。
モリブデン含有量が4.5質量%を超えると、モリブデン含有量が上記範囲内にある場合と比較して、ダイカスト金型の表面に二硫化モリブデンの黒色皮膜を形成する恐れがあり、硫黄含有量が5質量%を超えると、硫黄含有量が上記範囲内にある場合と比較して、悪臭がする恐れがある。
潤滑剤の配合割合が0.2質量%未満であると、十分な離型性を得ることができない。また、配合割合が0.8質量%を超えると、ダイカスト金型において、有機モリブデン化合物が不溶性の二硫化モリブデンに変化し、ダイカスト金型の表面に黒色皮膜を形成するおそれがある。
潤滑剤1質量部に対する潤滑助剤の配合割合が0.001質量部未満であると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、有機モリブデン化合物の潤滑性の十分な向上が認められない。また、配合割合が0.01質量部を超えると、有機モリブデン化合物の潤滑性が向上しなくなる。
溶剤100質量部に対するシリコーン油の配合割合が5質量%を超えると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、潤滑性の向上が認められない。なお、シリコーン油の配合割合が0質量%というのは、油性離型剤組成物がシリコーン油を含んでいない場合を意味する。
イソパラフィンは、合成ガスから直接合成されたものであることが好ましい。なお、ノルマルパラフィンは、一般に石油成分の中から分離して得られる。
かかる添加剤としては、皮膜形成剤、油性剤、清浄分散剤、酸化防止剤、極圧剤、摩耗防止剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤等が挙げられる。
これらの中でも、ダイカスト金型への付着性を向上させるため、油性剤が添加されていることが好ましい。
上記油性剤としては、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸や、ソルビタンモノオレート、グリセリンステアリン酸エステル、グリセリンオレイン酸エステル等の脂肪酸エステルが挙げられる。
上記極圧潤滑剤としては、リン酸エステル等が挙げられる。
かかる付与方法としては、特に限定されないが、例えば、スプレー方式、シャワー方式、インクジェット方式等が挙げられる。
塗布量が3ml/m2未満であると、塗布量が上記範囲内にある場合と比較して、十分な離型性が得られない場合があり、塗布量が10ml/m2を超えても、塗布量が上記範囲内にある場合と比較して、離型性の向上が認められない。
40℃における動粘度が170mm2/Sであり、100℃における動粘度が16mm2/Sである高粘度油(鉱油)を15質量部と、モリブデンジチオフォスフェート(潤滑剤)を0.4質量部と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(潤滑補助剤)を0.003質量部と、シリコーン油を3質量部と、ソルビタンモノオレート(油性剤)を0.1質量部と、にイソパラフィン(溶剤)を加えて、100質部とすることにより、油性離型剤組成物を得た。なお、モリブデンジチオフォスフェートのモリブデン含有量は4.5質量%以下であり、硫黄含有量は5質量%以下であった。
高粘度油の配合割合を12質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。
高粘度油の配合割合を14質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。
高粘度油の配合割合を17質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。
高粘度油の配合割合を20質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。
モリブデンジチオフォスフェートの代わりにモリブデンジチオカーバメイト0.2質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。なお、モリブデンジチオカーバメイトのモリブデン含有量は4.5質量%以下であり、硫黄含有量は5質量%以下であった。
モリブデンジチオフォスフェートの代わりにモリブデンジチオカーバメイト0.3質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。なお、モリブデンジチオカーバメイトのモリブデン含有量は4.5質量%以下であり、硫黄含有量は5質量%以下であった。
モリブデンジチオフォスフェートの代わりにモリブデンジチオカーバメイト0.6質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。なお、モリブデンジチオカーバメイトのモリブデン含有量は4.5質量%以下であり、硫黄含有量は5質量%以下であった。
モリブデンジチオフォスフェートの代わりにモリブデンジチオカーバメイト0.8質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。なお、モリブデンジチオカーバメイトのモリブデン含有量は4.5質量%以下であり、硫黄含有量は5質量%以下であった。
40℃における動粘度が170mm2/Sであり、100℃における動粘度が16mm2/Sである高粘度油を15質量部と、40℃における動粘度が10mm2/Sであり、100℃における動粘度が2.6mm2/Sである低粘度油を20質量部と、モリブデンジチオフォスフェート(潤滑剤)を0.4質量部と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(潤滑補助剤)を0.003質量部と、シリコーン油を3質量部と、ソルビタンモノオレート(油性剤)を0.1質量部と、にイソパラフィン(溶剤)を加えて、100質部とすることにより、油性離型剤組成物を得た。なお、モリブデンジチオフォスフェートのモリブデン含有量は4.5質量%以下であり、硫黄含有量は5質量%以下であった。
高粘度油の配合割合を10質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。
モリブデンジチオフォスフェートを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。
モリブデンジチオフォスフェートの配合割合を1.0質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、油性離型剤組成物を得た。
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた油性離型剤組成物に対して、離型性試験を施した。
図1の(a)〜(c)は、離型性試験の概要を説明するための図である。
まず、縦150mm、横150mm、高さ15mmの鉄板1を準備し、所定の温度に加熱した後、実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた油性離型剤組成物をスプレーにて付与し、油性離型剤組成物による離型層2を形成した。
その後、図1の(a)に示すように、離型層2上に、直径9.5mm、高さ20mmのリング3を載置し、その中に加熱溶解した溶解アルミニウム100gを流し込んだ。なお、リング3は、ワイヤー4を介して図示しないモーターに接続されている。
油性離型剤組成物の吹き付け時の温度を300℃、350℃、400℃とし、実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた油性離型剤組成物を用いた場合において、焼付きの評価をした。焼付きの評価は、引っ張った後の固化アルミニウム5の離型層2との接触面に、焼付きがないものを「A」、やや焼付きが認められるもの「B」、焼付きが認められるものを「C」とした。
油性離型剤組成物の吹き付け時の温度を300℃、350℃、400℃とし、実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた油性離型剤組成物を用いた場合において、鋳肌の評価をした。鋳肌の評価は、引っ張った後の固化アルミニウム5の離型層2との接触面(鋳肌)が滑らかなものを「A」、やや滑らかなものを「B」、粗いものを「C」とした。
油性離型剤組成物の吹き付け時の温度を300℃、350℃、400℃とし、実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた油性離型剤組成物を用いた場合において、汚染の評価をした。汚染の評価は、引っ張った後の固化アルミニウム5の離型層2との接触面に汚染が認められないものを「A」、やや汚染が認められるものを「B」、汚染しているものを「C」とした。
油性離型剤組成物の吹き付け時の温度を300℃、350℃、400℃とし、実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた油性離型剤組成物を用いた場合において、ワイヤー4で固化アルミニウム5及び錘6引っ張ったときの力の量(kgf/cm2)を測定した。なお、離型抵抗の値が小さいほど、離型性が優れることを意味する。
特に、実施例1の油性離型剤組成物は、300℃における焼付き、鋳肌、汚染、離型抵抗に優れるものであり、実施例10の油性離型剤組成物は、400℃における焼付き、鋳肌、汚染、離型抵抗に優れるものであった。
以上より、本発明の油性離型剤組成物によれば、焼付きを防止でき、離型性を極めて向上させることができることがわかった。
2・・・離型層
3・・・リング
4・・・ワイヤー
5・・・固化アルミニウム
6・・・錘
Claims (6)
- 40℃における動粘度が40〜180mm2/Sであり、100℃における動粘度が6.5〜17mm2/Sである高粘度油と、
有機モリブデン化合物からなる潤滑剤と、
パラフィンからなる溶剤と、
を備え、
前記高粘度油の配合割合が12〜20質量%であり、
前記潤滑剤の配合割合が0.2〜0.8質量%であり、
前記有機モリブデン化合物中のモリブデン含有量が4.5質量%以下、硫黄含有量が5質量%以下である油性離型剤組成物。 - 有機亜鉛化合物からなる潤滑補助剤を更に備える請求項1記載の油性離型剤組成物。
- 40℃における動粘度が30mm2/S以下であり、100℃における動粘度が6mm2/S以下である低粘度油を更に備える請求項1又は2に記載の油性離型剤組成物。
- 前記パラフィンがイソパラフィンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の油性離型剤組成物。
- 潤滑性を向上させるためのシリコーン油を更に備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の油性離型剤組成物。
- ダイカスト鋳造に用いられ、
ダイカスト金型に付与される請求項1〜5のいずれか一項に記載の油性離型剤組成物。
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