JP4938054B2 - 有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板 - Google Patents
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Description
(1) バイオ燃料の燃料容器用の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板であって、鋼板両面に、Zn含有量が1質量%以上8.8質量%以下で、かつ、片面当たりのめっき付着量が10g/m2以上50g/m2以下の溶融Sn−Znめっきが施された溶融Sn−Znめっき鋼板の少なくとも一方の面に施されためっき表面に、ビスフェノール型骨格、エステル骨格及びカルボキシル基を有するエーテル型熱硬化性ウレタン樹脂(a)と、エポキシ樹脂(b)と、ポリオレフィンワックス(c)とを含有する水性塗料を用いて形成される、膜厚が0.2μm以上10μm以下の有機物塗膜を有することを特徴とする、有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。
(2) 前記水性塗料は、前記熱硬化性ウレタン樹脂(a)と前記エポキシ樹脂(b)を合計量で前記塗料中の全固形分に対して50質量%以上85質量%以下含有し、かつ、前記ポリオレフィンワックス(c)を3質量%以上30質量%以下含有することを特徴とする、(1)に記載の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。
(3) 前記水性塗料は、前記熱硬化性ウレタン樹脂(a)が有するカルボキシル基の当量に対する前記エポキシ樹脂(b)が有する水酸基及びエポキシ基の当量の比が0.2以上0.8以下となる比率で、前記熱硬化性ウレタン樹脂(a)及び前記エポキシ樹脂(b)を含有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。
(4) 前記熱硬化性ウレタン樹脂(a)は、ポリエステル骨格とポリエーテル骨格との質量比率が10:90〜50:50であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。
(5) 前記溶融Sn−Znめっき鋼板がプレス加工されて燃料容器に加工された場合に、前記有機物塗膜は、少なくとも前記燃料容器の内面側に相当する面に施されためっき表面に形成されることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。
上述したように、本発明は、バイオ燃料の燃料容器用の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板であって、鋼板両面に、Zn含有量が1質量%以上8.8質量%以下で、かつ、片面当たりのめっき付着量が10g/m2以上50g/m2以下の溶融Sn−Znめっきが施された溶融Sn−Znめっき鋼板の少なくとも一方の面に施されためっき表面に、ビスフェノール型骨格、エステル骨格及びカルボキシル基を有するエーテル型熱硬化性ウレタン樹脂(a)と、エポキシ樹脂(b)と、ポリオレフィンワックス(c)とを含有する水性塗料を用いて形成される、膜厚が0.2μm以上10μm以下の有機物塗膜を有する、有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板である。
まず、有機物塗膜が形成される溶融Sn−Znめっき鋼板について詳細に説明する。
次に、本発明の有機物塗膜について詳細に説明する。
まず、熱硬化性ウレタン樹脂(a)としては、例えば、分子量が3000以上でビスフェノール型骨格とエステル骨格を有し、かつ、カルボキシル基を有する水分散性かつ熱硬化性のエーテル型ウレタン樹脂を使用することができる。熱硬化性の樹脂を用いることにより低温(200℃以下程度)焼付けでも耐溶剤性の高い塗膜を形成させることができる。このポリエステル骨格とポリエーテル骨格との質量比率は、10:90〜70:30であることが好ましい。この範囲よりもポリエステルの比率が高いとプレス加工性に悪影響を及ぼし、ポリエーテルの比率が高いと強靱ではあるが伸びが悪化する。また、ガソリンや、劣化して有機酸を発生させやすいバイオ燃料等に対する耐溶剤性を向上させるという観点からは、ポリエステル骨格とポリエーテル骨格との質量比率は、10:90〜50:50であることがさらに好ましい。
次に、エポキシ樹脂(b)は、グリコール骨格またはビスフェノール骨格を有するタイプであることが好ましい。また、エポキシ樹脂(b)の配合量としては、エポキシ樹脂(b)の有する反応性官能基(水酸基及びエポキシ基)が、ウレタン樹脂(a)のカルボキシル基の20〜80%と反応する比率で配合するのが好ましい。すなわち、本発明の主眼とするガソリンや、劣化して有機酸を発生させやすいバイオ燃料等に対する耐溶剤性を向上させるという観点からは、熱硬化性ウレタン樹脂(a)が有するカルボキシル基の当量に対するエポキシ樹脂(b)が有する水酸基及びエポキシ基の当量の比が0.2以上0.8以下となる比率で、熱硬化性ウレタン樹脂(a)及びエポキシ樹脂(b)を配合することが好ましい。当量比が0.2未満では、エポキシ樹脂(b)による熱硬化性ウレタン樹脂(a)の架橋による塗膜の耐食性の向上効果が乏しく、当量比が0.8を越える量では、エポキシ樹脂(b)が可塑剤的役割となるため高度の加工性が得にくくなる。また、当量比が0.8を超える量では、熱硬化性ウレタン樹脂(a)に対するエポキシ樹脂(b)の比率が多くなりすぎるため、ガソリンや、劣化して有機酸を発生させやすいバイオ燃料等に対する耐溶剤性が低下するおそれがある。
ポリオレフィンワックス(c)の添加量は、有機物塗膜の形成に使用する水性塗料中の全固形分の質量に対して固形分比で3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。ポリオレフィンワックスの添加量が3質量%未満では、有機物塗膜の加工性向上効果が小さく、30質量%を越えると有機物塗膜の加工性および耐食性が低下する可能性がある。
その他の添加物として、耐食性及び加工性向上のため粒径3nm〜30nmのシリカ(SiO2)(d)を全固形分に対して10質量%〜40質量%を添加してもよい。シリカ(d)の粒径が3nm未満の場合及び30nmを越える場合には、高度の加工性、耐食性が得られにくい。また、シリカ(d)の添加量が10質量%未満の場合には耐食性及び加工性の向上効果が不十分であり、40質量%を越えると、有機物塗膜中の樹脂のバインダー効果が小さくなり耐食性が低下すると共に、樹脂の伸びと強度が低下する。シリカ(d)の種類としては、液相コロイダルシリカ及び気相シリカのいずれでもよい。
上記のような組成を有する有機物塗膜の膜厚は、0.2μm以上10μm以下とする必要がある。有機物塗膜の膜厚が0.2μm未満では、塗膜がめっき表面を覆いきれないために十分な耐食性や加工性が得られず、10μm超では、塗膜の内部応力によりクラックが発生し耐食性が確保できなくなる。
有機物塗膜の溶融Sn−Znめっき鋼板表面への形成方法としては、例えば、浸漬法、カーテンフロー法、ロールコート法、バーコート法、静電法、刷毛塗り法、T−ダイ法、ラミネート法などの公知の方法が用いられるが、特に限定はされない。焼き付け方法としては、例えば、熱風、常温、近赤外線、遠赤外線、誘導加熱等の公知の方法が挙げられるが、到達板温度がめっきの融点を超えないようにする必要がある。
以上説明したような本発明に係る有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板によれば、この鋼板を使用して加工された、自動車用、自動二輪用、機械用等における燃料容器内で、有機酸が生成したり、スラッジ等の異物が付着した厳しい腐食環境下でも、有機物塗膜によりめっき鋼板の金属面を腐食環境から隔離することで、燃料容器の内面での腐食を長期間抑制し、長期的な耐食性を発揮するとともに、優れたプレス加工性等をも維持することが可能となる。従って、本発明は産業上の極めて価値の高い発明であるといえる。
極低炭素鋼を通常の転炉−真空脱ガス処理により溶製し、鋼片とした後、通常の条件で熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍工程を行い、焼鈍鋼板(板厚0.8mm)を得た。この鋼板の一部にFe−Niめっきを0.2g/m2施した後、フラックス法でSn−Znめっきを行った。Fe−Ni合金めっき浴はNiめっきのワット浴に対して、硫酸鉄を30〜200g/L添加したものを使用した。フラックスはZnCl2水溶液をロール塗布して使用し、めっき浴のZnの組成は0〜20wt%まで変化させた。浴温は280℃とし、めっき後ガスワイピングによりめっき付着量を調整した。こうして製造しためっき鋼板を種々の粗度を有するロールで調質圧延して表面粗度を調節した。この鋼板に3価Crをベースとした塗布型化成処理を金属Cr換算で20mg/m2施した。
(1)プレス性
有機物塗膜が内側になるように円筒深絞りを行なった(ポンチ直径50mm、絞り比2.0)。その際、本発明鋼板はそのまま試験に供したが、比較の鋼板については一部未処理面にプレス油を塗布して行なった。プレス性は、◎:表裏共にカジリ発生なし、×:カジリ発生を示す。
(2)塗料密着性
サンプルの底部を打ち抜いた小片を、40℃の蒸留水中に240Hr浸漬したあと、1mm幅の碁盤目カット(100マス)し、マスの残存塗膜面積が50%以上の場合を◎、マスの残存塗膜面積が50%未満の場合を×と評価した。
(3)耐燃料溶解性
サンプル内に市販のレギュラーガソリン80mL入れO−リングを介してステンレス板で機械的にフタをして、これを45℃で1000時間放置した。放置後の塗膜膨潤状態を目視観察して評価した。塗膜表面が浸漬前と比較して変化がない場合を◎、塗膜表面にミミズ腫れの様な跡残りが激しくあり塗膜の膨潤が激しく認められる場合を×と評価した。
(4)内面耐食性試験
サンプル内に蟻酸100ppm、酢酸200ppmからなる有機酸水溶液8mLと市販のレギュラーガソリン72mLを入れ、ステンレ
ス板で機械的にフタをして、これを45℃で1000時間放置した。放置後の塗膜膨潤状態を目視観察して評価した。塗膜表面が浸漬前と比較して変化がない場合を◎、塗膜が剥離してめっきや地鉄が腐食している場合を×と評価した。
以上の評価試験の結果を表1に示す。これらの結果から明らかなように、本発明の実施例である鋼板(No.1〜No.26)は、加工性、塗料密着性、耐燃料溶解性、内面耐食性にも優れている。一方、めっき中の亜鉛含有量が1%未満の場合(No.27)や8.8%超の場合(No.28,29)では犠牲防食能の低下および巨大亜鉛晶の晶出によるバリアー性低下による耐食性劣位、めっき付着量が10g/m2未満(No.30)でも十分の耐食性は得られなかった。めっき付着量が50g/m2超(No.31)の場合はパウダリング性が劣化し加工性が不十分であった。熱可塑性(No.32)やブロック型(No.33)のウレタン樹脂ではガソリンに皮膜が溶解した。ウレタン樹脂とエポキシ樹脂の固形分比率が50質量%未満では、全性能でやや不十分であった。オレフィンワックス量が無添加の場合(No.37)は加工性が悪く、30質量%超の添加では、下地との密着性が悪くなり耐食性もやや低い傾向にあった。膜厚も0.2μm未満(No.34)では加工性と耐食性が、10μm超(No.35)では塗膜にクラックが生じて耐食性が劣化した。
Claims (5)
- バイオ燃料の燃料容器用の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板であって、
鋼板両面に、Zn含有量が1質量%以上8.8質量%以下で、かつ、片面当たりのめっき付着量が10g/m2以上50g/m2以下の溶融Sn−Znめっきが施された溶融Sn−Znめっき鋼板の少なくとも一方の面に施されためっき表面に、ビスフェノール型骨格、エステル骨格及びカルボキシル基を有するエーテル型熱硬化性ウレタン樹脂(a)と、エポキシ樹脂(b)と、ポリオレフィンワックス(c)とを含有する水性塗料を用いて形成される、膜厚が0.2μm以上10μm以下の有機物塗膜を有することを特徴とする、有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。 - 前記水性塗料は、前記熱硬化性ウレタン樹脂(a)と前記エポキシ樹脂(b)を合計量で前記塗料中の全固形分に対して50質量%以上85質量%以下含有し、かつ、前記ポリオレフィンワックス(c)を3質量%以上30質量%以下含有することを特徴とする、請求項1に記載の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。
- 前記水性塗料は、前記熱硬化性ウレタン樹脂(a)が有するカルボキシル基の当量に対する前記エポキシ樹脂(b)が有する水酸基及びエポキシ基の当量の比が0.2以上0.8以下となる比率で、前記熱硬化性ウレタン樹脂(a)及び前記エポキシ樹脂(b)を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。
- 前記熱硬化性ウレタン樹脂(a)は、ポリエステル骨格とポリエーテル骨格との質量比率が10:90〜50:50であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。
- 前記溶融Sn−Znめっき鋼板がプレス加工されて燃料容器に加工された場合に、前記有機物塗膜は、少なくとも前記燃料容器の内面側に相当する面に施されためっき表面に形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機被覆溶融Sn−Znめっき鋼板。
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