JP4150453B2 - 多糖誘導体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は洗濯用仕上剤として有用な多糖誘導体及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、衣類の張り感を向上させる目的で衣類の洗濯の最後に糊づけ(仕上げ剤処理)が行われており、天然原料として澱粉糊が主に使われている。
【0003】
この場合まず洗濯を行う際の50リットル程度の量と比較して少ない量の10〜30リットル程度の水に澱粉糊を約3%程度の濃度にして衣類を浸して、これを衣類に付着させ、その後軽く脱水し乾燥する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような方法では糊剤が多く必要であり(例えば250〜300グラム程度が必要である)、一方、排水時には、衣類に付着しなかった多くの糊剤を捨てることになり、環境面と経済的にも損失が大きく、非常に効率が悪い。また、ポリ酢酸ビニルをエマルジョン化して繊維に付きやすく工夫した糊剤も市販されているが、これは衣類の張り感は見られるが洗濯の洗浄力はあまりない。
【0005】
そこで本発明は、少量の使用で、衣類に糊づけによる張り感を付与し、洗濯洗浄力を向上させることの可能な多糖誘導体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、多糖類又はその誘導体のヒドロキシル基の水素原子の一部又は全てが、次の基(A)、(B)及び(C)
(A)ヒドロキシル基が置換していてもよく、またオキシカルボニル基(−COO−又は−OCO−)又はエーテル結合が挿入されていてもよい炭素数10〜43の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基又はアシル基〔該置換基(A)のヒドロキシル基の水素原子は更に置換基(A)、(B)又は(C)で置換されていてもよい〕、
(B)カルボキシメチル基又はその塩、
(C)下記一般式(1)で表わされる基〔該置換基(C)のヒドロキシル基の水素原子は更に置換基(A)、(B)又は(C)で置換されていてもよい〕、
【0007】
【化3】
Figure 0004150453
【0008】
〔式中、D1 はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示し、R1 、R2 及びR3 は同一又は異なってヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、X- はヒドロキシイオン、ハロゲンイオン又は有機酸イオンを示す。〕
で置換されている多糖誘導体、及びその製造法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の多糖誘導体は、多糖類又はその誘導体としてセルロース類を用いた場合を例に挙げれば、その繰返し単位は次のような一般式で例示される。
【0010】
【化4】
Figure 0004150453
【0011】
〔式中、Rは同一又は異なって、(1):水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等、(2):疎水性置換基(A)、(3):カルボキシメチル基(B)、(4):カチオン性置換基(C)から選ばれる基を示し、Qは同一又は異なって、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、a、b及びcは、同一又は異なって0〜10の数を示す。QO基、R基、a、b及びcは、繰り返し単位内で又は繰り返し単位間で同一でも異なってもよく、また上記置換基(A)及び(C)のヒドロキシル基は更に他の置換基(A)、(B)及び(C)で置換されていてもよい。〕
【0012】
本発明の多糖誘導体においては、上記一般式で表される構成単糖残基におけるRとして、疎水性置換基(A)、カルボキシメチル基(B)及びカチオン性置換基(C)を含む。ただし、同一のくり返し単位中に必ず置換基(A)、(B)及び(C)が存在しなければならないという意味ではなく、一分子全体として見た場合に、置換基(A)、(B)及び(C)が上記の平均置換度で導入されていればよい。残りのRは上記のとおり、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等である。
【0013】
疎水性置換基(A)は炭素数10〜43の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、好ましくは炭素数12〜36、特に16〜24のものが好ましく、具体的には、直鎖アルキル基として、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等が;分岐鎖アルキル基として、2−ヘキシルデシル基、2−ヘプチルウンデシル基、イソステアリル基等が;アルケニル基として、オレイル基等が挙げられる。また、安定性の点から、アルキル基、特に直鎖アルキル基が好ましい。疎水性置換基(A)としては、これらアルキル基及びアルケニル基のほか、これらにヒドロキシル基が置換した2−ヒドロキシアルキル基、1−ヒドロキシメチルアルキル基、2−ヒドロキシアルケニル基、1−ヒドロキシメチルアルケニル基等、エーテル結合が挿入されている2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル基、2−アルコキシ−3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−アルケニルオキシプロピル基、2−アルケニルオキシ−3−ヒドロキシプロピル基等、1位にオキソ基が置換した1−オキソアルキル基及び1−オキソアルケニル基(すなわちアシル基)、並びにオキシカルボニル基が挿入されている基を挙げることができるが、ヒドロキシル基が置換していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルコキシプロピル基、アルケニルオキシプロピル基、及びアシル基が好ましく、特に、安定面や製造面から、2−ヒドロキシアルキル基、アルコキシヒドロキシプロピル基が好ましい。
【0014】
これら疎水性置換基(A)は、多糖分子に直接結合しているヒドロキシル基の水素原子のみならず、多糖分子に結合しているヒドロキシエチル基やヒドロキシプロピル基のヒドロキシル基の水素原子又は他の置換基(A)、(B)若しくは(C)の有するヒドロキシル基の水素原子と置換してもよい。これら疎水性置換基(A)による置換度は、構成単糖残基当たり0.0001〜1.0の範囲内で適宜調整できるが、構成単糖残基当たり0.002〜0.5の範囲が好ましい。
【0015】
カルボキシメチル基(B)は、その全てあるいは一部がNa、K等のアルカリ金属、Ca、Mg等のアルカリ土類金属類、アミン類等の有機カチオン基、アンモニウムイオンなどとの塩となっていてもよい。カルボキシメチル基(B)による置換度は、構成単糖残基当たり0.01〜2.0の範囲内で、適宜調整できるが、構成単糖残基当たり0.01〜1.0、特に0.02〜0.7の範囲が好ましい。
【0016】
カチオン性置換基(C)におけるD1 で示されるヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、1−メチルトリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、3−メチルテトラメチレン、1,1−ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレン、2−ヒドロキシトリメチレン、2−ヒドロキシテトラメチレン、3−ヒドロキシトリメチレン、1−ヒドロキシメチルエチレン等が挙げられ、中でも炭素数2又は3のもの、具体的にはエチレン、プロピレン、トリメチレン、2−ヒドロキシトリメチレン、1−ヒドロキシメチルエチレン等が好ましい。
【0017】
カチオン性置換基(C)におけるR1 、R2 及びR3 で表わされるヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられ、中でもメチル基及びエチル基が好ましい。
【0018】
カチオン性置換基(C)におけるX- で表わされるハロゲンイオンとしては塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が、有機酸イオンとしては、CH3COO- 、CH3CH2COO- 、CH3(CH22COO- 等が挙げられる。X- としては、ヒドロキシイオン、塩素イオン及び臭素イオンが好ましい。
【0019】
これらカチオン性置換基(C)は、多糖分子に直接結合しているヒドロキシル基の水素原子のみならず、多糖分子に結合しているヒドロキシエチル基やヒドロキシプロピル基の水素原子又は他の置換基(A)、(B)若しくは(C)の有するヒドロキシル基の水素原子と置換してもよい。これらカチオン性置換基(C)による置換度は、構成単糖残基当たり0.0001〜0.5の範囲内で適宜調整できるが、構成単糖残基当たり0.01〜0.3の範囲が好ましい。
【0020】
本発明の多糖誘導体は、例えば多糖類又はその誘導体を、(a)炭素数10〜40の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基を有するグリシジルエーテル、エポキシド、ハライド及びハロヒドリン、並びに炭素数10〜40の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のアシル基を有するエステル、酸ハライド及びカルボン酸無水物から選ばれる疎水化剤、(b)カルボキシメチル化剤、並びに(c)下記一般式(2)
【0021】
【化5】
Figure 0004150453
【0022】
〔式中、D2 は炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基、又はヒドロキシル基が置換していてもよくかつハロゲン原子が置換した炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示し、R1 、R2 及びR3 は同一又は異なってヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、X- はヒドロキシイオン、ハロゲンイオン又は有機酸イオンを示す。〕
で表わされるカチオン化剤と反応させることにより製造することができる。
【0023】
本発明の多糖誘導体は、多糖類又はその誘導体のヒドロキシル基の水素原子を部分的に疎水化〔疎水性置換基(A)の導入〕、カルボキシメチル化〔置換基(B)の導入〕及びカチオン化〔カチオン性置換基(C)の導入〕することにより得られる。疎水化反応、カルボキシメチル化反応、カチオン化反応はどの順序で行ってもよく、また2つあるいは3つの全ての反応を同時に行うこともできるが、疎水化反応、カチオン化反応、カルボキシメチル化反応の順で反応を行うのが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる多糖類又はその誘導体としては、セルロース、グアーガム、スターチ等の多糖類;これらにメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が置換した誘導体が挙げられる。これらの置換基は、構成単糖残基中に単独で又は複数の組合せで置換することができ、多糖誘導体の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられる。これら多糖類又はその誘導体のうち、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、特にヒドロキシエチルセルロースが好ましい。また、上記多糖誘導体の置換基は、ヒドロキシエチル基やヒドロキシプロピル基のヒドロキシル基に更に置換して、例えばポリオキシエチレン鎖等を形成することで、構成単糖残基当たり3.0を超える置換度も可能であり、その構成単糖残基当たりの置換度は0.1〜10.0、特に0.5〜5.0が好ましい。また、これら多糖類又はその誘導体の重量平均分子量は、1万〜1000万、10万〜500万、特に50万〜200万の範囲が好ましい。
【0025】
以下、疎水化反応、カルボキシメチル化反応及びカチオン化反応に分けて説明する。
【0026】
〈疎水化反応〉
多糖類又その誘導体の疎水化反応は、多糖類又はその誘導体を適当な溶媒に溶解又は分散させ、(a)炭素数10〜40の直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基を有するグリシジルエーテル、エポキシド、ハライド及びハロヒドリン、並びに炭素数10〜40の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のアシル基を有するエステル、酸ハライド及びカルボン酸無水物から選ばれる疎水化剤と反応させることにより行われる。
【0027】
上記疎水化剤のうち、グリシジルエーテル、エポキシド、ハライド及びアシルハライドが特に好ましく、これら疎水化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。疎水化剤の使用量は、多糖類又はその誘導体への疎水性置換基の所望する導入量によって適宜調整することができるが、通常、多糖類又はその誘導体の構成単糖残基当たり、0.0001〜10当量、特に0.0005〜1当量の範囲が好ましい。
【0028】
疎水化反応は、必要に応じてアルカリ存在下で行うのが好ましく、かかるアルカリとしては特に限定されないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等が挙げられ、なかでも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が好ましい。アルカリの使用量は、用いる疎水化剤に対して1〜1000モル倍量、特に100〜500モル倍量が良好な結果を与え、好ましい。
【0029】
溶媒としては、低級アルコール、例えばイソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール等が挙げられる。多糖類又はその誘導体を膨潤させて疎水化剤との反応性を高める目的で、低級アルコールに対し、1〜70重量%、更に好ましくは2〜30重量%の水を加えた混合溶媒を用いて反応を行ってもよい。
【0030】
反応温度は0〜200℃、特に30〜100℃の範囲が好ましい。反応終了後は、必要に応じて、酸を用いてアルカリを中和することができる。酸としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を用いることができる。また、途中で中和することなく次の反応を行ってもよい。
【0031】
このようにして得られた疎水化多糖類を続いてカルボキシメチル化反応、カチオン化反応に用いる場合には、中和せずそのまま用いることができるほか、必要に応じ濾過などにより分別したり、熱水、含水イソプロピルアルコール、含水アセトン溶媒等で洗浄して未反応の疎水化剤や中和等により副生した塩類を除去して使用することもできる。なお、既に疎水化反応の前にカルボキシメチル化反応あるいはカチオン化反応を行っている場合は、中和し、濾過などによる分別後、必要に応じて洗浄等を行った後、乾燥して本発明の多糖誘導体を得ることができる。
【0032】
<カルボキシメチル化>
多糖類又はその誘導体のカルボキシメチル化反応は、例えば多糖類又はその誘導体を適当な溶媒に溶解又は分散させて、水酸化アルカリ金属又は水酸化アルカリ土類金属の存在下、モノハロゲン化酢酸及び/又はその金属塩と反応させることにより行われる。
【0033】
モノハロゲン化酢酸及びモノハロゲン化酢酸金属塩としては、具体的には、モノクロル酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモ酢酸ナトリウム、モノブロモ酢酸カリウム等が例示される。これらモノハロゲン化酢酸及びその金属塩は単独あるいは2種以上を組み合せても使用することができる。
【0034】
本反応に用いられる水酸化アルカリ金属又は水酸化アルカリ土類金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。水酸化アルカリ金属又は水酸化アルカリ土類金属の使用量は反応速度向上と副反応抑制の観点から用いるモノハロゲン化酢酸及び/又はその金属塩に対して1.0〜3.0倍モル量、好ましくは1.05〜2.5倍モル量が望ましい。
【0035】
用いる溶媒としては、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール、又はこれらに1〜50重量%の水を加えた混合溶媒を用いて反応が行われる。
【0036】
反応温度は0〜150℃、特に30〜100℃の範囲が好ましい。反応終了後は、必要に応じて、酸を用いてアルカリを中和することができる。酸としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を用いることができる。また途中で中和することなく次の反応を行ってもよい。
【0037】
このようにして得られたカルボキシメチル化多糖類を続いて疎水化反応、カチオン化反応に用いる場合には、中和せずそのまま用いることができるほか、必要に応じ濾過などにより分別したり、熱水、含水イソプロピルアルコール、含水アセトン溶媒等で洗浄して未反応のカルボキシメチル化剤や中和等により副生した塩類を除去して使用することもできる。なお、既にカルボキシメチル化反応の前に疎水化反応あるいはカチオン化反応を行っている場合は、中和し、濾過などによる分別後、必要に応じて洗浄等を行った後、乾燥して本発明の多糖誘導体を得ることができる。
【0038】
<カチオン化反応>
多糖類又はその誘導体のカチオン化反応は、多糖類又はその誘導体を適当な溶媒に溶解又は分散させて、カチオン化剤と反応させることにより行われる。
【0039】
上記一般式(2)におけるD2 で示される基のうち、炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基としては2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、5,6−エポキシヘキシル基等が挙げられ、ヒドロキシル基が置換していてもよくかつハロゲン原子が置換した炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、4−クロロブチル基、6−クロロヘキシル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、1−ヒドロキシメチル−2−クロロエチル基等が挙げられる。D2 のうち好ましいものとしては、2,3−エポキシプロピル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基等が挙げられる。これらカチオン化剤(2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。カチオン化剤(2)の使用量は、多糖類又はその誘導体に対するカチオン性置換基(C)の所望する導入量によって適宜調整することができるが、通常、多糖類又はその誘導体の構成単糖残基当たり、0.0001〜10当量、特に0.00015〜5当量の範囲が好ましい。
【0040】
本反応は、必要に応じてアルカリ存在下で行うのが好ましく、かかるアルカリとしては特に限定されないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等が挙げられ、なかでも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が好ましい。アルカリの使用量は、用いるカチオン化剤(2)に対して1.0〜3.0モル倍量、特に1.05〜1.5モル倍量の範囲が良好な結果を与え、好ましい。
【0041】
溶媒としては、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール、又はこれらのアルコールに対し、0.1〜100重量%、更に好ましくは1〜50重量%の水を加えた混合溶媒を用いて反応を行ってもよい。
【0042】
反応温度は0〜150℃、特に30〜100℃の範囲が好ましい。反応終了後は、酸を用いてアルカリを中和することができる。酸としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を用いることができる。また、途中で中和することなく次の反応を行ってもよい。
【0043】
このようにして得られたカチオン化多糖類を続いて疎水化反応、カルボキシメチル化反応に用いる場合には、中和せずそのまま用いることができるほか、必要に応じ濾過などにより分別したり、熱水、含水イソプロピルアルコール、含水アセトン溶媒等で洗浄して未反応のカチオン化剤や中和等により副生した塩類を除去して使用することもできる。なお、既にカチオン化反応の前に疎水化反応あるいはカルボキシメチル化反応を行っている場合は、中和し、濾過などによる分別後、必要に応じて洗浄等を行った後、乾燥して本発明の多糖誘導体を得ることができる。
【0044】
本発明の多糖誘導体は、洗濯用仕上げ剤として好適に使用することができる。
【0045】
【実施例】
以下の実施例において、本発明の多糖誘導体の疎水性置換基(A)の置換度は、置換基(A)が1位にオキソ基を有しない場合(エーテルを形成している場合)には、Zeisel法(D. G. Anderson, Anal. Chem., 43, 894(1971))により定量し、置換基(A)が1位にオキソ基を有する場合(エステルを形成している場合)には、試料を酸で加水分解し中和した後ジアゾメタンでエステル化を行ってガスクロマトグラフィーで定量した。カルボキシメチル基(B)の置換度とカチオン性置換基(C)の置換度はコロイド滴定法により求めた。
【0046】
以下の実施例において「置換度」とは、構成単糖残基当たりの置換基の平均数を示す。使用原料と生成物の略号は以下に示す通りである。
Figure 0004150453
Figure 0004150453
【0047】
実施例1
(1)原料多糖(1)80g、溶媒(1)640g及び48%水酸化ナトリウム水溶液5.5gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。この溶液に疎水化剤(1)2.5gを加え、80℃で8時間反応させて疎水化を行った。疎水化反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物を濾別した。反応生成物を80%イソプロピルアルコール500gで2回、イソプロピルアルコール500gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、疎水化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体74.3gを得た。
【0048】
(2)(1)で得られた疎水化多糖(1)35.0g、溶媒(3)350g及び48%水酸化ナトリウム水溶液2.4gを混合してスラリー液を調製し、窒素気流下室温で30分間攪拌した。反応液にカチオン化剤(1)70mg及び48%水酸化ナトリウム水溶液20mgを加え、50℃で1時間カチオン化を行った。更にカルボキシメチル化剤(1)25.1g及び48%水酸化ナトリウム水溶液18.0gを加え、50℃で5時間カルボキシメチル化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し生成物を濾別した。生成物を70%イソプロピルアルコール400gで3回、イソプロピルアルコール300gで2回洗浄後、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、本発明化合物1 34.2gを得た。
【0049】
(A)の置換度は0.0031、(B)の置換度は0.48、(C)の置換度は0.001であった。
【0050】
実施例2〜8
実施例1と同様の方法で表1に示す本発明化合物2〜8を得た。
【0051】
【表1】
Figure 0004150453
【0052】
1)実施例1の70%イソプロピルアルコール400gにかえて600g及びイソプロピルアルコール300gにかえて400gで洗浄して得た。
2)実施例1の70%イソプロピルアルコール400gで3回にかえて300gで3回及びイソプロピルアルコール300gで2回にかえて300gで4回洗浄して得た。
【0053】
実施例9
(1)原料多糖(2)50g、70%イソプロピルアルコール500g及び48%水酸化ナトリウム水溶液3.45gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。この溶液にカチオン化剤(1)7.48g及び48%水酸化ナトリウム水溶液2.16gを加え、50℃で3時間反応させてカチオン化を行った。カチオン化反応終了後、反応液を濾過し、反応生成物を濾別した。反応生成物を70%イソプロピルアルコール300gで3回、イソプロピルアルコール200gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、カチオン化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体47.6gを得た。
【0054】
(2)(1)で得られたカチオン化ヒドロキシエチルセルロース誘導体30.0g、ピリジン70g及びイオン交換水5gを混合してスラリー液を調製し、窒素気流下室温で30分間攪拌した。この溶液を10℃以下になるまで冷却した後、ドデカン酸クロリド13.6gを滴下し、更に溶液を昇温し、90℃で5時間疎水化を行った。反応終了後、反応液を80%イソプロピルアルコール500gに加え、生じた固体を濾別し、80%イソプロピルアルコール400gで3回、イソプロピルアルコール300gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、カチオン化及び疎水化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体28.5gを得た。
【0055】
(3)(2)で得られたカチオン化及び疎水化したヒドロキシエチルセルロース誘導体20.0g、70%イソプロピルアルコール200g及び48%水酸化ナトリウム水溶液1.4gを混合してスラリー液を調製し、窒素気流下室温で20分間攪拌した。反応液にカルボキシメチル化剤(1)4.6g及び48%水酸化ナトリウム水溶液3.3gを加え、50℃で3時間カルボキシメチル化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し生成物を濾別した。生成物を70%イソプロピルアルコール600で3回、イソプロピルアルコール400gで2回洗浄後、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、本発明化合物9 19.0gを得た。
【0056】
(A)の置換度は0.051、(B)の置換度は0.32、(C)の置換度は0.049であった。
【0057】
実施例10(仕上げ処理)
以下の処方で仕上げ処理を行った。この布の張りは良好なものであった。
木綿 100g
水 1000g
化合物1 2g
(浸漬1分,脱水30secの後、乾燥)
【0058】
実施例11(洗浄力)
実施例10で得られた布に20gのドロ汚れを付着させ、アタック(花王(株)製)にて洗浄評価を行った。
その結果、仕上げ処理をしていない布に比べて良好な洗浄性が見られた。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、多糖類のヒドロキシル基の水素原子を、特定の疎水性置換基、カルボキシメチル基を含む置換基及びカチオン性置換基で置換して得られる多糖誘導体が、少量で効率よく衣類の仕上げを行うことを可能にし、洗濯洗浄力をも向上させることを可能にした。

Claims (2)

  1. 多糖類又はその誘導体のヒドロキシル基の水素原子の一部又は全てが、次の基(A)、(B)及び(C)
    (A)ヒドロキシル基が置換していてもよく、またオキシカルボニル基(−COO−又は−OCO−)又はエーテル結合が挿入されていてもよい炭素数10〜43の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基又はアシル基〔該置換基(A)のヒドロキシル基の水素原子は更に置換基(A)、(B)又は(C)で置換されていてもよい〕、構成単糖残基当りの置換度0.0001〜1.0
    (B)カルボキシメチル基又はその塩、構成単糖残基当りの置換度0.01〜2.0
    (C)下記一般式(1)で表わされる基〔該置換基(C)のヒドロキシル基の水素原子は更に置換基(A)、(B)又は(C)で置換されていてもよい〕、構成単糖残基当りの置換度0.0001〜0.5
    Figure 0004150453
    〔式中、D1 はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示し、R1 、R2 及びR3 は同一又は異なってヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、X- はヒドロキシイオン、ハロゲンイオン又は有機酸イオンを示す。〕
    で置換されている重量平均分子量1万〜1000万の多糖誘導体。
  2. 多糖類又はその誘導体を、(a)炭素数10〜40の直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基を有するグリシジルエーテル、エポキシド、ハライド及びハロヒドリン、並びに炭素数10〜40の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のアシル基を有するエステル、酸ハライド及びカルボン酸無水物から選ばれる疎水化剤、(b)カルボキシメチル化剤、並びに(c)下記一般式(2)
    Figure 0004150453
    〔式中、D2 は炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基、又はヒドロキシル基が置換していてもよくかつハロゲン原子が置換した炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示し、R1 、R2 及びR3 は同一又は異なってヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、X- はヒドロキシイオン、ハロゲンイオン又は有機酸イオンを示す。〕で表わされるカチオン化剤と反応させる請求項1記載の多糖誘導体の製造方法。
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