JP5386147B2 - 多糖類誘導体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多糖類誘導体の効率的な製造方法に関する。
多糖類のヒドロキシ基の一部又は全てに置換基を導入した多糖類誘導体は、様々な化粧料、トイレタリー製品等に用いられる有用な化合物である。例えば多糖類のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、長鎖アルキルグリセリルエーテル基及び/又は長鎖アルケニルグリセリルエーテル基、並びにスルホン酸含有基で置換された多糖類スルホン化体は、水溶性に優れ、その水溶液が低濃度で安定かつ高い増粘性及び優れた乳化安定化作用を示し、化粧料やトイレタリー製品に使用した場合、良好な使用感を有することが報告されている(例えば、特許文献1)。
上述の多糖類誘導体は、多糖類の疎水化(長鎖アルキル及び/又は長鎖アルケニルの導入)反応や親水性官能基の導入反応等により製造することができる。
これら多糖類誘導体の効率的な製造方法として、特許文献2には、ニーダー型の反応装置中で、多糖類を溶解することなく、粉状のまま反応させる方法が開示されている。この方法に従えば、前述の疎水化反応剤または親水性官能基の導入反応剤の溶媒による分解が抑制され、高選択的に目的とする多糖類誘導体を合成することができる。
特許第3329668号公報 特許第3910375号公報
しかしながら、上述のニーダー型反応装置を用いる製造方法では、粗大粒子が生成する。これらの粗大粒子は、水への溶解速度が遅い等、配合上の観点から好ましくなく、分級等での除去操作が必要になるため、除去工程後の収率が低くなってしまう問題があった。
本発明は粗大粒子の生成を抑制し、目的とする多糖類誘導体を効率的かつ高い生産性で製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、多糖類にエポキシ化合物及び/又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤を反応させ、所望の多糖類誘導体を製造する方法であって、主撹拌翼と副撹拌翼とを有する特定の反応装置を用いることにより、粗大粒子の生成が抑制されて、分級工程を経た収率が顕著に向上し、また反応の選択率が向上して、効率的に多糖類誘導体を製造し得ることを見出した。
すなわち本発明は、多糖類のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、ヒドロキシ基含有基及び/又はポリオキシアルキレン含有基で置換された多糖類誘導体を得る方法であって、垂直駆動軸に固定された主撹拌翼と水平駆動軸に固定された副撹拌翼とを有する反応装置を用い、主攪拌翼と副攪拌翼とを攪拌しながら、該多糖類に、エポキシ化合物及び/又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤を反応させる多糖類誘導体の製造方法を提供する。
本発明によれば、粗大粒子の生成が抑制されることにより、目的とする多糖類誘導体を、効率的かつ高い生産性で製造することができる。
本発明は、多糖類に、後述の化合物(a)〜(f)から選ばれる1種以上のエポキシ化合物及び/又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤を反応させ、多糖類誘導体を得る製造方法の発明であって、垂直駆動軸に固定された主撹拌翼と水平駆動軸に固定された副撹拌翼とを有する反応装置を用いることを特徴とするものである。該反応装置を用いることで、粗大粒子の生成が抑制されて分級工程を経た収率が顕著に向上し、また反応の選択率が向上して、効率的に多糖類誘導体を製造することができる。
[原料多糖類]
本発明に用いられる原料多糖類としては、多糖類に低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基等が置換した誘導体をも含み、例えば特許第3910375号公報段落[0007]に記載された多糖類などを挙げることができる。これら原料多糖類のメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシプロピル基等の置換基は、単一の置換基で置換されたものでもよいし、複数の置換基で置換されたものでもよく、その構成単糖残基当たりの置換度は0.1〜10が好ましく、0.5〜5がより好ましい。
原料多糖類の重量平均分子量は、好ましくは1万〜1000万、より好ましくは10万〜500万の範囲である。これら原料多糖類は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、上記重量平均分子量は、GPC−LALLS法で測定した値である。
[化合物(a):アルキル化剤]
多糖類に化合物(a)を反応させた場合、多糖類に疎水性置換基(A)が導入された疎水化多糖類を得ることができる。当該疎水化反応に用いられる炭素数10〜40のアルキル基又はアルケニル基を有するグリシジルエーテル(a)のアルキル基及びアルケニル基は、直鎖及び分岐のいずれでもよく、分岐の場合の分岐位置、アルケニル基中の不飽和結合の数及び位置は特に限定されない。直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基の具体例としては、特許第3910375号公報段落[0008]に記載された直鎖アルキル基、分岐アルキル基及びアルケニル基などのほか、イソデシル基が挙げられる。これらのうち、炭素数12〜36、特に16〜24のアルキル基及びアルケニル基が好ましく、また、安定性の点から、アルキル基、特に直鎖アルキル基が好ましい。これら疎水化剤である化合物(a)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[化合物(b):スルホン化剤]
多糖類に化合物(b)を反応させた場合、多糖類に置換基(B)を導入することができる。スルホン化剤である化合物(b);炭素数2〜5のエポキシアルカンスルホン酸としては、例えば特許第3910375号公報段落[0009]に記載された炭素数2〜5のエポキシアルカンスルホン酸及びその塩などが挙げられる。これらスルホン化剤である化合物(b)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[化合物(c):カルボキシ化剤]
多糖類に化合物(c)を反応させた場合、多糖類に置換基(C)を導入することができる。カルボキシ化剤である化合物(c);炭素数3〜6のエポキシ脂肪酸としては、例えば特許第3910375号公報段落[0010]に記載された炭素数3〜6のエポキシ脂肪酸などが挙げられる。これらカルボキシ化剤である化合物(c)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[化合物(d):アミノ化剤又はアンモニウム化剤]
多糖類に化合物(d)を反応させた場合、多糖類に置換基(D)を導入することができる。アミノ化剤である化合物(d);炭素数2〜5のエポキシアルキルアミンとしては、例えば特許第3910375号公報段落[0011]に記載された1級アミンの他、これら1級アミンをアルキル化して得られる2級アミン、3級アミン及び4級アンモニウム塩などが挙げられ、アンモニウム塩の対イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン等を対イオンとするものが挙げられる。これらアミノ化剤、もしくはアンモニウム化剤である化合物(d)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[化合物(e):リン酸化剤]
多糖類に化合物(e)を反応させた場合、多糖類に置換基(E)を導入することができる。リン酸化剤である化合物(e);炭素数2〜5のエポキシリン酸エステルとしては、例えば特許第3910375号公報段落[0011]に記載された炭素数2〜5のエポキシリン酸エステルなどが挙げられる。これらリン酸化剤である化合物(e)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[化合物(f):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤]
多糖類に化合物(f)を反応させた場合、多糖類に置換基(F)を導入することができる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤である化合物(f)は、
一般式(1) E3−(OA)n−E2−R で表され、例えば以下のような化合物が挙げられる。
一般式(1)におけるE3で示される基のうち、炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基としては、例えば2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、及び5,6−エポキシヘキシル基等が挙げられる。ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のハロゲン化アルキル基としては、例えば2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、4−クロロブチル基、6−クロロヘキシル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、及び1−ヒドロキシメチル−2−クロロエチル基等が挙げられる。また、炭素数2〜6のカルボキシアルキル基としては、例えばカルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、及びカルボキシペンチル基等が挙げられる。これらカルボキシアルキル基又はカルボキシ基の誘導体としては、例えばメチルエステル化物、エチルエステル化物、酸ハロゲン化物、トシル化物、メシル化物、及び無水物等が挙げられる。E3で示される基のうち好ましいものとしては、2,3−エポキシプロピル基;2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基;カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、及びそのメチルエステル化物又は酸ハロゲン化物等が挙げられる。
一般式(1)において、n個のAは同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示すが、入手の容易さから、炭素数2又は3のものが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン及びトリメチレンが好ましい。
nはオキシアルキレン基のモル平均重合度であり、8〜300の数を示すが、反応性の観点からnは8〜100の数が好ましく、特に8〜20の数が好ましい。
E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)を示すが、化学的安定性の観点から、エーテル結合が好ましい。
Rはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数4〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Rとしては、炭素数5〜25、特に6〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。具体的にはオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソデシル基、イソステアリル基等が好ましい。
これらポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤である化合物(f)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[反応装置]
反応装置としては、装置内への付着及び粗大粒子の発生を抑制でき、効率的に多糖類誘導体を製造するという観点から、垂直駆動軸に固定された主撹拌翼と水平駆動軸に固定された副撹拌翼とを有する反応装置を用いる。
主撹拌翼は、反応装置底部から突出させた垂直駆動軸に固定させて設置することができる。さらに、主撹拌翼は、垂直駆動軸から遠心方向に直線状に延びる2〜5の翼片で構成されていることが好ましく、各翼片には、その先端部に上方に湾曲する跳ね上げ面が形成されていることが好ましい。また、粉体混合性の観点から、反応装置の底部を充分に混合できる直径を有した撹拌翼であることが好ましく、反応装置底部に設置されていることが好ましい。
一方、副撹拌翼は、反応装置の内周壁に設けられた水平駆動軸、又は反応装置の内周壁間に軸支された水平駆動軸に固定させて設置することができる。さらに、水平駆動軸には2〜5の翼が付設されていることが好ましい。
主撹拌翼と副撹拌翼は接触しないように設けられ、両者の撹拌方向が異なることから、反応装置内の滞留部分が減少し、撹拌の均一性を高めることができる。その結果、粗大粒子の生成を抑制するだけでなく、反応選択率(=本願記載の付加反応に使用された化合物のモル数/化合物の仕込みモル数)の向上に寄与していると考えられる。
反応の際、主撹拌翼の回転数は、粉体混合性の観点から、10〜1000rpm程度であることが好ましく、より好ましくは30〜600rpm、さらに好ましくは50〜300rpmである。
水平方向を軸に回転する副撹拌翼は、粗大粒子の生成を抑制する観点から、反応に際して翼の回転数が、100〜10000rpm程度であることが好ましく、より好ましくは300〜5000rpm、さらに好ましくは500〜2000rpmの高速回転を行うことが好ましい。
このような形態を有する装置として、例えばハイスピードミキサー(商品名、深江パウテック株式会社製)、バーチカルグラニュレーター(商品名、株式会社パウレック製)等が挙げられる。
[反応条件等]
前記化合物(a)〜(f)から使用目的に応じ1種以上を選択して多糖類と反応させることにより、目的物である置換基(A)〜(F)から選ばれる1種以上の基を有する多糖類誘導体が得られるが、化合物(a)〜(f)から選ばれる2群以上の化合物を反応させてこれらに対応する2群以上の置換基を有する多糖類誘導体を得ることも出来る。なかでも、この2群以上の化合物の1つとして化合物(a)または(f)を用い、他の化合物として化合物(b)〜(e)から選ばれる化合物を用いて、疎水性置換基(A)または(F)と置換基(B)〜(E)から選ばれる基とを有する多糖類誘導体を得るのが好ましく、特に化合物(a)又は(f)とスルホン化剤(b)を用いて、疎水性置換基(A)または(F)とスルホン酸基(B)を有する多糖類誘導体を得るのが好ましい。なお、2種以上の化合物(a)〜(f)と多糖類との反応は、いずれを先に行ってもよく、また同時に行ってもよいが、疎水化反応が含まれる場合には、これを先に行うのがより好ましい。
化合物(a)〜(f)の使用量は、多糖類への置換基(A)〜(F)の所望する導入量によって適宜調整することができるが、通常、多糖類の構成単糖残基当たり、化合物(a)、(f)は0.0001〜10当量の範囲が好ましく、0.0003〜1当量の範囲がより好ましく、化合物(b)〜(e)は0.01〜10当量の範囲が好ましく、0.05〜3当量の範囲がより好ましい。
多糖類と化合物(a)〜(f)との反応は、反応溶媒として、原料多糖類に対し好ましくは5〜150質量%、より好ましくは5〜100質量%、さらに好ましくは5〜80質量%の水を用いて行う。なお、化合物(a)〜(f)の溶解性を向上させ置換基(A)〜(F)を効率良く多糖類に導入できる点で、水と共に、原料の多糖類に対し好ましくは5〜300質量%、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%の炭素数1〜5の脂肪族アルコールを用いた混合溶媒中で反応を行うことが好ましい。
各反応はアルカリ存在下で行うのが好ましく、かかるアルカリとしては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、及び炭酸水素塩等が挙げられ、なかでも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウム等が好ましい。疎水化反応において、アルカリの使用量は、化合物(a)及び/又は(f)を用いる場合には、これら化合物に対し好ましくは0.1〜300モル倍量、より好ましくは1〜100モル倍量であると、良好な結果を与える。また、化合物(b)〜(e)のなかから選ばれる少なくとも1種を用いる場合には、アルカリの使用量は、これら化合物に対し好ましくは0.01〜300モル倍量、より好ましくは0.1〜100モル倍量であると、良好な結果を与える。
反応温度はいずれの反応も0〜200℃が好ましく、30〜100℃の範囲がより好ましい。反応終了後は、必要に応じて、酸を用いてアルカリを中和することができる。酸としては、例えば硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、及びコハク酸等の有機酸を用いることができる。また、途中で中和することなく次の反応を行うこともできる。
各反応において得られた多糖類誘導体は、例えば続いて次の反応に用いる場合、中和せずそのまま用いることができるほか、必要に応じてろ過等により分別したり、熱水、含水イソプロピルアルコール、含水アセトン溶媒等で洗浄し、未反応の化合物や中和等により副生した塩類を除去して使用することもできる。すべての反応が終了した後は、必要に応じて洗浄、中和等を行った後、前記反応装置内で乾燥することにより、目的とする多糖類誘導体を得ることができる。
乾燥工程においては乾燥時間短縮の観点から、反応装置内を減圧にして加熱乾燥することが好ましい。乾燥温度は0〜200℃が好ましく、30〜100℃の範囲がより好ましい。また、乾燥時の翼の回転数は、反応時と同様の高速回転で行うことが好ましい。
以下の実施例及び比較例において、多糖類誘導体の置換基(A)及び(F)の置換度は、Zeisel法〔D.G.Anderson,Anal.Chem.,43,894
(1971)〕により算出した。また、置換基(B)の置換度は、コロイド滴定法により求めた。
なお、ここでの「置換度」とは、多糖類の構成単糖残基当たりの置換基の平均数を示す。分級収率とは、分級して得られた目的物の質量を、分級前の質量に対し質量百分率で示したものである。反応選択率とは、〔反応選択率(%)=本願記載の付加反応に使用された化合物(a)〜(f)いずれかのモル数/対応する化合物の仕込みモル数〕で定義した。
[合成例1]n−アルキル(C16,18)ポリオキシエチレン(10)グリシジルエーテル
1m3の反応槽に、ポリオキシエチレン(10)−n−アルキル(C16,18)エーテル(日本エマルション社製,製品名;エマレックス110,アルキル鎖長;n−C16/n−C18=84/16(mol/mol)、オキシエチレン基のモル平均重合度;10)250kgを融解して仕込み、さらにテトラブチルアンモニウムブロミド(広栄化学工業株式会社製)3.8kg、エピクロロヒドリン(ダウケミカル社製)81kg、トルエン83kgを投入して、攪拌・混合した。槽内温を50℃に維持しつつ、攪拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液(南海化学株式会社製)130kgを1時間で滴下した。滴下終了後、槽内温を50℃に維持したまま6時間、攪拌・熟成した。熟成終了後、反応混合物を水250kgで6回抽出して塩及びアルカリを除去し、その後、有機相を減圧(6.6kPa)下、90℃まで昇温し、残留するエピクロロヒドリン、溶媒及び水を留去した。減圧下、さらに水蒸気250kgを吹き込んで低沸点化合物を除去し、n−アルキル(C16,18)ポリオキシエチレン(10)グリシジルエーテル240kg(収率91%)を得た。
[合成例2]ステアリルグリシジルエーテルの合成
100L反応槽に、ステアリルアルコール(花王株式会社製,製品名;カルコール8098)10kg、テトラブチルアンモニウムブロマイド(広栄化学工業株式会社製)0.36kg、エピクロルヒドリン(ダウケミカル社製)7.5kg、ヘキサン10kgを投入し、窒素雰囲気下で混合した。混合液を50℃に保持しながら48質量%水酸化ナトリウム水溶液(南海化学株式会社製)12kgを滴下した。滴下終了後、さらに4時間50℃で熟成した後、水13kgで8回抽出を繰り返し、塩及びアルカリの除去を行った。その後、槽内温度を90℃に昇温して上層からヘキサンを留去し、減圧下(6.6kPa)、さらに水蒸気を吹き込んで低沸点化合物を除去した。脱水後、槽内温度250℃、槽内圧力1.3kPaで減圧蒸留することによって、白色のステアリルグリシジルエーテル8.6kg(収率68%)を得た。
[合成例3]2,3−エポキシプロパンスルホン酸ナトリウムの合成
800L反応槽に、35%重亜硫酸ソーダ水溶液(大東化学株式会社製)110kg、48質量%水酸化ナトリウム水溶液(南海化学株式会社製)0.92kg、水22kgを投入し、窒素雰囲気下で混合した。混合液を50℃に保持しながらエピクロルヒドリン(ダウケミカル製)34kgを2時間かけて滴下し、さらに70℃で2時間反応を行った。その後10℃まで冷却し、48質量%水酸化ナトリウム水溶液26kgを滴下した。さらに15℃で2時間反応を行った後、イソプロピルアルコール100kgを投入し、混合・静置し分相した。得られた下層182kgおよびイソプロピルアルコール100kgを800L反応槽に投入し、混合・静置して分相し下層として40質量%2,3−エポキシプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液128kg(定量的)を得た。
[実施例1]
ハイスピードミキサー(商品名、深江パウテック株式会社製、容量800L、主撹拌翼:3枚、副撹拌翼:3枚)内に、ヒドロキシエチルセルロース(SE400、ダイセル化学工業株式会社製、以下「HEC」と記すこともある。)240kgを投入し、合成例1で得たn−アルキル(C16,18)ポリオキシエチレン(10)グリシジルエーテル6.3kgをイソプロピルアルコール125kg(52質量%対HEC)に溶解させた溶液を、粉体の攪拌を行いながら徐々に加えた。さらに23質量%水酸化ナトリウム水溶液31kg(総水量10質量%対HEC)を、粉体の攪拌を行いながら徐々に加え、装置内を窒素置換した後80℃まで昇温し、主攪拌翼を100rpm,副攪拌翼を1000rpmで回転させながら、15時間反応を行った。反応終了後、コハク酸10.4kgをゆっくりと添加して中和を行った後、ハイスピードミキサー内で減圧乾燥(85℃/3kPa,主攪拌翼回転数;100rpm,副攪拌翼回転数;1000rpm)を行い、黄白色粉体のヒドロキシエチルセルロース誘導体241kgを得た。
得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体を1mm金網で分級し、黄白色粉末194kg(1mm分級収率:81%)を得た。また得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体の3−n−アルキル(C16,18)ポリオキシエチレン(10)−2−ヒドロキシプロピル基の置換度は0.0078であった(反応選択率=86%)。
[実施例2]
実施例1記載のハイスピードミキサー内に、ヒドロキシエチルセルロース(QP15000H、ダウケミカル社製)240kgを投入し、合成例2で得たステアリルグリシジルエーテル1.46kgをイソプロピルアルコール120kg(50質量%対HEC)に溶解させた溶液を粉体の攪拌を行いながら徐々に加えた。さらに7.4質量%水酸化ナトリウム水溶液104kg(総水量40質量%対HEC)を粉体の攪拌を行いながら徐々に加え、装置内を窒素置換した後80℃まで昇温し、主攪拌翼を100rpm,副攪拌翼を1000rpmで回転させながら、9時間反応を行った。さらに50℃まで冷却後、粉体の攪拌を継続しながら、合成例3で得た40質量%2,3−エポキシプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液70kg(総水量18質量%対HEC)を徐々に加え、引き続き50℃で8時間反応を行った。反応終了後、コハク酸10.4kgをゆっくりと添加して中和を行った後、ハイスピードミキサー内で減圧乾燥(85℃/3kPa,主攪拌翼回転数;100rpm,副攪拌翼回転数;1000rpm)を行い、黄白色粉体のヒドロキシエチルセルロース誘導体299kgを得た。
得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体を1mm金網で分級し、黄白色粉末239kg(1mm分級収率:80%)を得た。また得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体の3−ステアリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル基の置換度は0.0036であり(反応選択率=80%)、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基の置換度は0.145であった(反応選択率=73%)。
[比較例1]
ニーダー(容量2000L、近畿機械製作所製)内に、ヒドロキシエチルセルロース(SE400、ダイセル化学工業製)700kgを投入し、合成例1で得たn−アルキル(C16,18)ポリオキシエチレン(10)グリシジルエーテル18.4kgを、イソプロピルアルコール365kg(52質量%対HEC)に溶解させた溶液を粉体の攪拌を行いながら徐々に加えた。さらに23質量%水酸化ナトリウム水溶液91kg(総水量10質量%対HEC)を粉体の攪拌を行いながら徐々に加え、装置内を窒素置換した後80℃まで昇温し15時間反応を行った。反応終了後、コハク酸30.3kgをゆっくりと添加して中和を行った後、ニーダー内で減圧乾燥(85℃/20kPa)を行い、黄白色粉体のヒドロキシエチルセルロース誘導体725kgを得た。
得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体を1mm金網で分級し、黄白色粉末500kg(1mm分級収率:69%)を得た。また得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体の3−n−アルキル(C16,18)ポリオキシエチレン(10)−2−ヒドロキシプロピル基の置換度は0.0071であった(反応選択率=78%)。
[比較例2]
比較例1記載のニーダー内に、ヒドロキシエチルセルロース(QP15000H、ダウケミカル社製)700kgを投入し、合成例2で得たステアリルグリシジルエーテル4.3kgをイソプロピルアルコール350kg(50質量%対HEC)に溶解させた溶液を粉体の攪拌を行いながら徐々に加えた。さらに7.4質量%水酸化ナトリウム水溶液303kg(総水量40質量%対HEC)を粉体の攪拌を行いながら徐々に加え、装置内を窒素置換した後80℃まで昇温し9時間反応を行った。さらに50℃まで冷却後、合成例3と同様の方法で得た40質量%2,3−エポキシプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液204kg(総水量18質量%対HEC)を粉体の攪拌を継続しながら徐々に加え、引き続き50℃で8時間反応を行った。反応終了後、コハク酸30.3kgをゆっくりと添加して中和を行った後、ニーダー内で減圧乾燥(85℃/20kPa)を行い、黄白色粉体のヒドロキシエチルセルロース誘導体903kgを得た。
得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体を1mm金網で分級し、黄白色粉末605kg(1mm分級収率:67%)を得た。また得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体の3−ステアリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル基の置換度は0.0033であり(反応選択率=73%)、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基の置換度は0.139であった(反応選択率=70%)。
実施例1、2及び比較例1、2の結果を表1にまとめて示す。
Figure 0005386147
表1からわかるとおり、実施例は比較例よりも反応選択率及び1mm分級収率が向上している。これは、反応装置を従来用いられていたニーダーからハイスピードミキサーに変更したことにより、粉体の混合状態が改善し、かつ粗大粒子の生成を抑制できたためであると推測される。
本発明によれば、化粧品、トイレタリー製品、外用医薬品、水溶性塗料、建材等の増粘剤、ゲル化剤、賦形剤、エマルジョン安定剤、凝集剤等として有用な多糖類誘導体を効率的かつ高い生産性で製造することができる。

Claims (5)

  1. 多糖類のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、ヒドロキシ基含有基及び/又はポリオキシアルキレン含有基で置換された多糖類誘導体を得る方法であって、垂直駆動軸に固定された主撹拌翼と水平駆動軸に固定された副撹拌翼とを有する反応装置を用い、主攪拌翼と副攪拌翼とを攪拌しながら、該多糖類に、エポキシ化合物及び/又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤を反応させ、かつ反応溶媒として、原料多糖類に対して5〜150質量%の水及び原料多糖類に対して5〜300質量%の炭素数1〜5の脂肪族アルコールを用いる、多糖類誘導体の製造方法。
  2. 主攪拌翼の回転数が10〜1000rpmであり、副攪拌翼の回転数が100〜10000rpmである、請求項1記載の多糖類誘導体の製造方法。
  3. エポキシ化合物及び/又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤が、下記(a)〜(f)から選ばれる1種以上であり、ヒドロキシ基含有基及び/又はポリオキシアルキレン含有基が、下記(A)〜(F)で表される基[(A)〜(F)のヒドロキシ基の水素原子はさらに(A)〜(F)で置換されてもよい]から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の多糖類誘導体の製造方法。
    (a)炭素数10〜40のアルキル基又はアルケニル基を有するグリシジルエーテル
    (b)炭素数2〜5のエポキシアルカンスルホン酸又はその塩
    (c)炭素数3〜6のエポキシ脂肪酸又はその塩
    (d)炭素数2〜5のエポキシアルキルアミン又はこれから誘導されるアンモニウム塩
    (e)炭素数2〜5のエポキシアルキルリン酸エステル又はその塩
    (f)一般式(1):E3−(OA)n−E2−R
    〔式中、E3は炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のハロゲン化アルキル基、又はカルボキシ基若しくは炭素数2〜6のカルボキシアルキル基若しくはそれらの誘導体を示し、n個のAは同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、nはオキシアルキレン基のモル平均重合度であり、8〜300の数を示し、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)を示し、Rはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数4〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。〕
    (A)炭素数13〜43のアルキル又はアルケニルグリセリルエーテル基
    (B)ヒドロキシ基を有する炭素数2〜5の遊離又は塩型スルホアルキル基
    (C)ヒドロキシ基を有する炭素数3〜6の遊離又は塩型カルボキシアルキル基
    (D)ヒドロキシ基を有する炭素数2〜5のアミノアルキル基又はアンモニウムアルキル基
    (E)ヒドロキシ基を有する炭素数2〜5の遊離又は塩型リン酸アルキル基
    (F)一般式(2):−E1−(OA)n−E2−R
    〔式中、E1はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基、カルボニル基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を示し、n個のAは同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、nはオキシアルキレン基のモル平均重合度であり、8〜300の数を示し、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)を示し、Rはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数4〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。〕
  4. 原料の多糖類の重量平均分子量が、1万〜1000万である請求項1〜のいずれかに記載の多糖類誘導体の製造方法。
  5. 原料の多糖類が、セルロース、グアーガム、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、及びヒドロキシプロピルメチルスターチから選ばれる1種以上である請求項1〜のいずれかに記載の多糖類誘導体の製造方法。
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