JP4149110B2 - 散乱線除去グリッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は放射線撮影装置に使用される散乱線除去グリッド及びその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、生体等の被写体を透過した放射線により被写体の放射線透過像を撮影する際、散乱線の少ない高画質の透過像を得るために、被写体を透過する放射線が被写体により散乱されて発生する散乱線を吸収する散乱線除去グリッドを用いることが知られている。
【0003】
この散乱線除去グリッドの一般的な形状は、放射線の進行方向に幅を持った放射線吸収部と放射線透過部とが交互に平行に並設されて全体として平板状に形成されたもので、放射線が被写体に散乱されて斜めに進む散乱線は放射線吸収部により吸収されて除去され、略直線的に透過する主透過線のみが放射線透過部を透過して検出器上に到達し放射線透過像を形成するようになっている。この放射線透過部は木、アルミニウム等により形成され、鉛等から形成される放射線吸収部と交互に密接させて配置することにより全体として強度を保っている。この放射線透過部は、主透過線の透過率を低下させないよう、放射線の透過率が高いものであるのが望ましい。
【0004】
この放射線透過部を空気とした散乱線除去グリッド、所謂エアグリッドの一例として、例えば特開平10−5207号に開示された散乱線除去グリッドが知られている。この散乱線除去グリッドは、図17に200で示すように(図17bに図17aの一部を拡大して示す)夫々焦点Fを通るZ軸を軸とした円筒面状に湾曲した2枚の支持板202a、202bを備え、支持板202a、202bの互いに対向する面にはZ軸に沿う溝(スロット)204、206が焦点F(放射線源)に向かって整列するよう複数対形成されている。これらの溝204、206には放射線(X線)吸収が大きいタングステン等の金属で作られたコリメータ板210が図17(a)で示す如く、支持板202a、202bの一側からZ軸に沿って2枚の支持板202a、202b間に挿入固定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この散乱線除去グリッド200即ち2枚の支持板202a、202bの間に、放射線吸収部材としてのストリップ(コリメータ板210)を支持する散乱線除去グリッド200を作るには、予め2枚の支持板202a、202bに所定の間隔で支持用の溝204、206を設け、2枚の支持板202a、202bを一定間隔で固定し散乱線除去グリッド200の枠組みを作成した上で、枠組みの端部からコリメータ板210を、コリメータ板210の長軸方向に沿って滑り込ませていく必要がある。
【0006】
しかし、このような方式では支持板202a、202bの歪み、コリメータ板210自体の歪み、及びコリメータ板210の挿入時に溝204、206との間に生じる摩擦などの要因で、長い距離に亘って挿入する途中でコリメータ板210が曲がり易く、組立のための工数もかかるという問題がある。溝204、206の幅を広くして挿入しやすくしようとすると、溝204、206内で遊びができ、正確な位置決めが困難となり、集束精度が低下する。また、クロスグリッドを構成するため特開平10−5207号の図1に12で示すようにもう1組のコリメータ板をコリメータ板210と直交する方向に延びるコリメータ板とすると、そのコリメータは平面内で湾曲したコリメータ板としなければならず、それを一層長い湾曲した溝に沿って挿入する工程を要し、組立は一層困難となる。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、高精度で、確実に、且つ容易に組み立てることができる散乱線除去グリッドを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の散乱線除去グリッドは、放射線吸収物質からなり放射線が照射される領域全体に亘って、所定の間隔で平行に配置される放射線の進行方向に幅を持った複数のプレートと、このプレートの両端部を支持する少なくとも2枚の支持部材とを備え、支持部材はプレートが支持されるスロットを備え、プレートをこのスロットに挿入することによりプレートが支持部材に支持された自己支持型のグリッドを形成しているものである。
【0009】
支持部材に設けられたこのスロットはプレートの両端縁を受容支持する溝、或いは、プレートの両端部近傍を受容支持する切り込み、またはプレートの両端部近傍を受容支持する細孔とすることができる。
【0010】
プレートは、プレートを伸張する方向に引っ張られた状態で支持部材に固定されるようにしてもよい。
【0011】
散乱線除去グリッドは、天板、及び/若しくは底板を備えた構成とされ、プレートが、スロット、天板、底板のうち少なくとも一つに固定されてもよい。
【0012】
この散乱線除去グリッドは、支持部材がプレートの両端部を支持する2枚の支持部材の他に、これらの2枚の支持部材の両端同士を結合する2枚の支持部材を有し、合わせて4枚の支持部材で矩形の枠を構成するようにしてもよい。
【0013】
スロットは、使用時の放射線源に向けて集束する方向に延びるように設けることができる。詳しくは、集束するよう設けられたスロットにプレートが挿入されることで、より透過効率の高い集束型のグリッドを構成することができる。
【0014】
支持部材の他にプレートと直交する放射線吸収物質からなる他のプレートを、支持部材と平行に放射線が照射される領域全体に亘って多数設けることにより、クロスグリッドを形成するようにしてもよい。
【0015】
請求項1に記載の2枚の支持部材の間に弾性体が配置され、2枚の支持部材がこの弾性体により支持部材に固定されたプレートを伸張する方向に付勢されるようにしてもよい。弾性体とはばね材などを指し、例として圧縮コイルばね等を用いることができる。
【0016】
本発明の散乱線除去グリッドの製法は、放射線吸収物質からなり放射線が照射される領域全体に亘って、所定の間隔で平行に配置される放射線の進行方向に幅を持った複数のプレートが、多数のスロットを備えた少なくとも2枚の支持部材のスロットに挿入されて、各プレートの両端部が支持部材に支持されることによりグリッドが構成されることを特徴とする。
【0017】
この時プレートはスロットに固定されることが好ましい。
【0018】
散乱線除去グリッドは、天板、及び/若しくは底板を備え、プレートは、スロット、天板、底板のうち少なくとも一つに固定されることが好ましい。
【0019】
グリッドを構成する際、プレートが、このプレートの長手方向に伸張するように引っ張られた状態で固定されることが好ましい。
【0020】
散乱線除去グリッドは、スロットを有する支持部材、天板、及び/若しくは底板を備え、プレートが、天板、底板のうち少なくとも一つに固定された後、支持部材を取り除く用構成してもよい。
【0021】
スロットにプレートが挿入されて支持されるとは、単に係合して摩擦力で支持されるものばかりではなく、接着、融着などの固着手段により固定されるものも含むものとする。
【0022】
プレートが支持部材により支持される位置に、支持部材のスロット(切り込み)と組み合うスロット(切り込み)をプレート側にも設け、スロット同士を組み合わせることによって散乱線除去グリッドを構成してもよい。この場合、支持部材とプレートを同じ幅にして、両方に設けられるスロットの長さを、夫々各部材の高さの約1/2とすればちょうど組み合わせたときに支持部材とプレートの上下が一致して全体として整った形状とすることができる。
【0023】
プレートの両端部近傍に、穴を開け、この穴に金属線(針金)、ロッド(棒)等を通してプレートを両側に伸張してもよく、或いは、プレートの両端部近傍に切欠きを設け、この切欠きに金属線等を巻き付けてプレートを両側に伸張してもよい。この場合、金属線、ロッドの他端側は、散乱線除去グリッドの周囲を取り巻くよう配置した治具に固定して、プレートを支持部材及び/若しくは天板、底板に固定するまでプレートの伸張を一時的に維持するようにしてもよい。
【0024】
プレートの両端部近傍をペンチ等の工具で把持してプレートを両側に伸張してもよい。
【0025】
【発明の効果】
本発明の散乱線除去グリッド及びその製法は、プレートが2枚の支持部材に対し両端部で挿入され、支持されるので、長い距離に亘って挿入する必要がなく、摩擦抵抗も少ないので、挿入時にプレートが折れ曲がる虞が少なく高精度で、確実、且つ容易に組み立てることができる。
【0026】
支持部材に設けられたスロットをプレートの両端縁を受容支持する溝とした場合には、支持部材に切り込みがないので支持部材の強度を保つことができ、またプレートの両端部近傍を受容支持する切り込みとした場合には、支持部材による支持が強固になるので組み立て後のグリッドの強度を大きくすることができる。
【0027】
スロットを細孔状とした場合は、プレートを細孔に挿入後、上下方向即ち支持部材の長手方向と直交する方向にプレートがずれるおそれがないので、上下方向の位置決めを一層精度よく行うことができる。
【0028】
プレートが、その長手方向に張られた状態で支持部材及び/若しくは天板/底板に固定される場合は、万一、プレートの歪みが生じていても、それらを矯正して固定することができるので集束精度が向上する。
【0029】
散乱線除去グリッドが、プレートの両端部を支持する2枚の支持部材の他に、これらの2枚の支持部材の両端同士を結合する2枚の支持部材を有し、合わせて4枚の支持部材で矩形の枠を構成するようにした場合は、支持部材の剛性が増大し、プレートの正確な位置決めが容易になされ、グリッドの強度を更に大きくすることができる。
【0030】
支持部材のプレートが、使用時の放射線源に向けて集束する方向に傾斜して設けた場合は、放射線源から放射され被写体を透過して略直進する放射線の透過率がよくなり、散乱線除去グリッドの周辺部のカットオフがなくなるので透過像の放射線透過量のムラがなくなり、高画質が得られる。
【0031】
プレートが集束するよう設けられたスロットに挿入されることにより放射線源に向けて集束するよう構成した場合も同様に、放射線透過量のムラがなくなり、高画質が得られる。
【0032】
支持部材の他に、プレートと直交する放射線吸収物質からなるプレートを支持部材と平行に放射線が照射される領域全体に亘って多数設けて、クロスグリッドを形成した場合は、格子状の散乱線除去グリッドを形成でき透過像全体にわたってさらに高画質が得られる。
【0033】
切り込みをプレートと支持部材の両方に設けた場合は、挿入抵抗を低減でき組立が容易になると共に、互いの位置決めが確実になされるという効果を奏する。
【0034】
請求項1に記載の2枚の支持部材の間に弾性体が配置され、2枚の支持部材がこの弾性体により支持部材に固定されたプレートを伸張する方向に付勢されるよう構成される場合は、プレートが常に伸張された状態に維持されるので、プレートの真直度が常に維持される。
【0035】
散乱線除去グリッドは、プレートが、天板、底板のうち少なくとも一つに固定された後、支持部材を取り除くよう構成された場合は、重い部品の数を減らすことができるので、軽量化でき、グリッドの取り扱いが容易になる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図は説明のための概略図であり、各部材の板厚、スロットの幅、プレートの数、或いは各部材の寸法の比率等は実際とは必ずしも整合していない。
【0037】
図1は、本発明の第1の実施形態となる散乱線除去グリッド(以下、単にグリッドという)1を示し、(A)はグリッド1の平面図、(B)は支持板(支持部材)2の正面図、(C)はプレート4の側面図を夫々示す。グリッド1は、放射線を透過する放射線透過材料(放射線非吸収材料)、例えば、木、アルミニウム等からなる支持板2、2を有する。各支持板2は平行に離隔した2枚のプレート4より構成されると共に、両端で連結部(他の支持板)6により互いに連結され、支持板2は全体として四角い枠状のフレーム8を構成しグリッド1に剛性を付与している。連結部6は支持板2と接着により結合するか、或いは一体に構成してもよい。また、この第1の実施形態では連結部6を設けてあるが、連結部6を有しない構造も可能である。また、後述の他の実施形態でも同様に連結部を設けない構造にすることもできる。プレート4は、鉛、タンタル、タングステン等、比較的放射線をよく吸収する物質の板、及びそれら物質を含む材質からなり、他の実施形態の説明においてもプレートは同様の材料からなるものとして説明する。
【0038】
支持板2には図1(B)に示す如く、上縁2aから下縁2bに向けて、本実施形態の場合、切り込みの形状である複数のスロット14が支持板2の高さhの略半分(1/2h)まで所定の間隔で平行に形成されている。スロット14は、放射線源側に略向かう方向即ち図1(A)のグリッド1に対し紙面と直交する方向且つ手前側に向けて延びている。他方、プレート4は2枚の支持板2、2に対応する位置即ち支持板2,2と直角に交差する位置に、スロット16が下に向けて(支持板2のスロット14とは反対向きに)2つ平行に形成されている。即ちプレート4のスロット16は側縁4bから4aに向けてプレート4の高さhの約半分(1/2h)まで形成されている。
【0039】
支持板2のスロット14にプレート4のスロット16を位置合わせして組み合わせると図1(A)に示す如く直線グリッド即ちプレート4が所定の間隔で並置されたグリッドが構成される。この構成ではプレート4は互いに平行に配置されて平行グリッドを構成すると共に、支持板2,2に対しては直交して配置される。これによって支持板2はプレート4を支持すると共に、プレート4の位置決めも行うことができる。
【0040】
各スロット14,16は夫々の部材の高さhの半分の寸法を有しているため、組立てられた後はプレート4の側縁4aと支持板2の上縁2aは略面一となる。プレート4の高さ寸法hは、例えば1乃至3センチ、厚さは約0.1ミリとされる。また、支持板2のスロット14同士の間隔、即ちプレート4が配置されるときの間隔は約1ミリとされる。
【0041】
組立に際し、プレート4は支持板2の上縁2a側からプレート4の側縁4bを下にして挿入されるが、支持板2の高さhは、支持板2の長手方向と比べて短く、挿入時の抵抗は小さい。更に高さhの半分までの挿入は、プレート4と支持板2の両方にスロット16,14が夫々形成されて抵抗は一層少ないので極めて容易である。このことはスロットの長さが高さhの約1/2である、後述の他の実施形態についても同様の効果がある。(もちろん、一方のスロットの長さをhの1/3、他方のスロットの長さをhの2/3としても同様の効果がある。)組立後はプレート4間に中間部材として固体が介在しなくともプレート4と支持部材2が、互いに支持し合うのでそのままで組み立てられた形状を保つことができ、所謂自己支持型のグリッドとなる。プレート4と支持板2の固定は挿入したままでもよいし、接着剤、融着等により補強してもよい。接着剤、融着等により補強することは後述の他の実施形態についても同様に可能である。
【0042】
次に、図2及び図3に第2の実施形態となる、グリッド1と同様なグリッド20を示す。図2(A)はグリッド20の平面図、(B)は支持板(支持部材)22の正面図、(C)はプレート24の側面図を夫々示す。図3はグリッド20の斜視図を示す。斜視図において各部材はその板厚を省略して示し、連結部26も省略して示す。
【0043】
図2及び図3に示すように、グリッド20がグリッド1と異なるところは、プレート24がスロットを有せず、支持板22のスロット34が支持板22の上縁22aから下縁22b近傍まで延びていることである。
【0044】
プレート24にはスロットは全く形成されていないので、プレート24の製造は容易である。組立てにあたっては、プレート24を支持板22のスロット34に挿入するだけでよい。2枚の支持板22,22の各スロット34は互いに位置合わせされ、且つ平行に形成されているので、プレート24は平行に並んだ状態に配置されて、第1の実施形態と同様に平行グリッドを構成する。図2及び図3では便宜上、プレート24は数を省略して示してあるが、実際は多数のプレート24がスロット34に配置される。プレート24はスロット34内を移動しないようスロット34の部分で接着することが好ましい。或いはプレート24に、支持板22を間に挟むように突起25(図3)を形成して位置ずれを防止してもよい。この場合でも接着して補強することができる。
【0045】
次に、図4及び図5に、支持板42のスロット54を溝状とした場合の第3の実施形態によるグリッド40を示す。図4は図1と同様の図であり、(A)はグリッド40の平面図、(B)は支持板42の正面図、(C)はプレート44の側面図を夫々示す。図5はグリッド40の概略斜視図を示す。斜視図には連結部46を省略して示す。
【0046】
図4及び図5に示すように、この第3の実施形態のグリッド40も前述の2つの実施形態と同様に直線グリッドであるが、異なるところは、支持部材42のスロット54を溝状とした点である。プレート44には第2の実施形態と同様にスロットは形成されていない。支持板42には対向する内面に溝状のスロット54が上縁42aから下縁42bまで複数本が平行に形成されている。したがってプレート44はそれらの端縁44cが、支持板42、42のスロット54に上縁42a側から挿入され、支持されることにより平行グリッドが形成される。
【0047】
スロット54の幅はプレート44の端縁44cが圧入支持される寸法とされるが、短距離の挿入なのでスロット54を幅広に形成しなくとも挿入時の摩擦抵抗は小さくプレート44が折れ曲がる虞は小さい。この第3の実施形態の場合もプレート44の構造が簡単なので製造が容易に行え、低コストである。スロット54は支持板42の上縁42aから下縁42bに亘って形成され、2つの支持板42を同一のものとすることができる。この実施形態の場合、スロット54は支持板42の板厚を貫通した開口でないので強度が大きい。従ってグリッドの剛性が大きくなり、プレート44の位置決めの精度が向上する。
【0048】
次に図6及び図7に第4の実施形態のグリッド60を示す。図6はグリッド60の斜視図であり、図7(A)はこのグリッド60に使用される支持板62の正面図を示し、(B)はプレート64の側面図を夫々示す。この第4の実施形態は前述の各実施形態と同様に直線グリッドであるが、プレート64が所定の集束距離に位置する放射線源X(図7)に向けて傾いた集束グリッドである点が相違する。支持板62は図6及び図7(A)に示す如く、本実施形態では切り込みとなる複数のスロット74が放射線源Xに向けて夫々収束する方向に、長さは支持板の高さhの約2分の1(1/2h)まで延びている。図6及び図7に示すスロット74は、実際は多数存在するが、便宜上理解を容易にするために省略して示している。放射線源Xは通常、グリッド60の中央部上方に位置するので、支持板64の両端のスロット74dは、放射線源Xに向くよう最も傾斜している。各スロット74は両端のスロット74dから内方に位置を変えるに従い、順次その傾斜が緩やかになり上縁62aに対し直角に近づく。そして中央のスロット74cのみが上縁62aと直交する。
【0049】
プレート64は図1で示した第1の実施形態のプレート4と同様なスロット76を2箇所に有する。この支持板62とプレート64を組立てると図6に示す構成のグリッド60が得られる。プレート64は放射線源Xに対し収束するように配置されているので、放射線源Xとグリッド60の間に位置する被写体(図示せず)を通過した透過線のうち放射線源Xから直線的にグリッド60に入射する放射線はプレート64に遮られることなく、グリッド60の下側に位置する放射線検出器(図示せず)に到達し、透過像を形成する。これにより透過線がプレート64により遮られることによる所謂カットオフが生じないので、透過像の放射線透過量のムラがなくなり高画質が得られる。2枚の支持板62は同じものとすることができる。
【0050】
次に図8に第5の実施形態となるグリッド80を示す。(A)はグリッド80の平面図、(B)は図1(B)と同様のフレームの一部となる支持板2の正面図、(C)は支持板2より薄板の支持板82の正面図、(D)はプレート84の側面図を夫々示す。
【0051】
この第5の実施形態のグリッド80と前述の4つの実施形態のグリッド1,20,40及び60との相違点はプレート84に複数のスロット96を所定間隔で平行に設けたことである。これによってプレート84と同様な材質即ち鉛、タンタル等の放射線吸収物質からなる薄板状の支持板(プレート)82を、プレート84のスロット96に所定の間隔で複数配置して、全体として格子状のクロスグリッドが構成される。支持板82の両端は連結部86により連結され、支持板82はこの連結部86にも両端のスロット94が係合している。また、多数のプレート84と支持板82が組み合うので強度が大きい自己支持型のグリッド80が得られる。
【0052】
このようにしてクロスグリッドの複数の支持板82はプレート84と協働して直線グリッドよりも更に散乱線を吸収し、高画質化を達成する。しかし、この実施形態では支持板82、プレート84が放射線源X(図7)に集束していないため、グリッド80の周辺部ではカットオフが生じる。このため放射線源Xから被写体を透過して直線的に進んできた放射線(透過線)の入射も、グリッド80の周辺部ではある程度吸収してしまうので画質が低下する可能性がある。
【0053】
これを改善した第6の実施形態のグリッド100を図9、及び図10に示す。図9はグリッド100の斜視図を、図10はグリッド100に使用される支持板102,及びプレート104の正面図及び側面図を夫々示す。第6の実施形態のグリッド100では、支持板102とプレート104の両方に放射線源X(図10)に集束するスロット114,116が形成されている。プレート104のスロット116は、一側縁104bから他側縁104aに向けて高さ方向hの約2分の1だけ形成されている。これにより複数の支持板102とプレート104が互いに組み合ってクロスグリッドが形成される。この支持板102も第5の実施形態と同様に、両側の支持板102の間に位置する支持板102が薄板であることが望ましい。
【0054】
支持板102のスロット114の高さは、図7(A)と同様に支持板102の高さの約2分の1の高さである。支持板102は、第5の実施形態と同様に放射線吸収物質からなるので、被写体を通過した散乱線は、格子状のグリッド100により吸収されると共に、被写体を透過して直線的に進む透過線は、グリッド100に妨げられることなく、即ちカットオフを生じることなく検出器(図示せず)に到達する。従ってこの第6の実施形態のクロスグリッドでは、透過線の透過率が向上すると共に、散乱線が効果的に除去され、グリッド100の全面に亘り高画質の透過像が得られる。
【0055】
次に図11に第7の実施形態のグリッド120を示す。(A)はグリッド120の、図1(A)と同様な平面図、(B)は支持板122の、図1(B)と同様な正面図、(C)はプレート124の、図1(C)と同様な側面図である。第7の実施形態と前述の各実施形態との相違するところは、支持板122に設けたスロット134が細孔状で有る点である。支持板122は、連結部126により両端を連結されて全体として、第1の実施形態と同様に枠状に構成されている。この支持板122には上下方向に延びる細孔即ちスロット134が支持板122の長手方向に沿って所定の間隔で多数形成されている。これらのスロット134には矩形状のプレート124が挿入され、各プレート124の端部125がスロット134を貫通して突出している。プレート124がスロット134に挿入された後は、プレート124は上下方向、即ちプレート124の長手方向と直交する方向の移動が規制され、プレート124が上下方向にずれる虞がない。これによりプレート124は支持板122に平行に支持されグリッド120が構成される。プレート124はこの状態で支持板122に接着等により固定されてもよいが、プレート124に撓み、皺等がある場合に、固定前にこれらの変形を矯正して平坦なプレート124にする必要がある。
【0056】
この矯正の方法について、図12を参照して説明する。(A)は端部125に穴126を穿設したプレート124aの側面図であり、(B)は端部125の両側縁に切欠き128が形成されたプレート124bの側面図であり、(C)は端部に凹凸部130が形成されたプレート124cの側面図である。(A)に示すように穴126には金属線(針金)131が通され輪の形に金属線131が緊縛される。このようにすることによってプレート124aは、金属線131で両側から引っ張られて皺等の変形が矯正される。この操作は支持板122にプレート124aを挿通した後になされるが、これは後述のプレート124b、124cについても同様である。グリッド120の周囲を取り囲むように枠状の治具133(図ではその一部を示す)が配置され、各プレート124aを伸張する金属線131の他端はこの治具133に巻回され固定される。次に、プレートはこのように伸張された状態で、接着等により支持板122に固定される。また、金属線131の代わりに図示しないロッド(棒)を穴126に差込み、このロッドの他端を適宜方法で治具133に固定してもよい。
【0057】
図12(B)に示すプレート124bの場合は、プレート124bの端部125切欠き128が形成されている。前述の金属線131はこの切欠き128に巻回された後、輪状に緊縛されてもよい。その後の操作は(A)の場合と同じである。
【0058】
金属線131を使用しない場合は、図12(C)に示すようにプレート124cの両端部125をペンチ等の工具135で把持して両側に引っ張るようにしてもよい。前述の凹凸部130は打ち出しにより形成され、工具135により把持された際、滑らないための引っ掛かりとなる。工具135を使用したときには、前述の治具133は使用されない。また、凹凸部130は切り起こしにより形成されてもよい。
【0059】
尚、プレートの変形の矯正方法についてスロット134が細孔状の場合について述べたが、切り込みタイプのスロット14、34(図1、図2)及び溝タイプのスロット54(図4)についても、同様な方法で矯正することができる。例えば、図1に示す切り込みタイプのスロット14については、細孔状タイプと同様に支持板2にプレート4を組み込んだ後、突出したプレート4の端部を引っ張って、プレート4の変形を矯正した後、プレート4が支持板2に接着される。この方法は、プレート4を格子状に組み合わせたクロスグリッド80(図8)においても使用できる。即ち、この場合においては、引っ張る方向を上下左右から、換言すると4方向からバランスよく引っ張ることによって、全てのプレート82,84を矯正することができる。その後接着により同様に固定すればよい。
【0060】
図4に示す溝タイプのスロット54においては、プレート44を引っ張って、プレート44の長さを支持板42、42の間隔に合わせた後、スロット54に組み込み、接着するという方法が採られる。プレート44の長さが長い場合は、切断して支持板の間隔に合わせればよい。その後同様に支持板42に接着される。
【0061】
次に、グリッドを構成した後も、プレート124を常に伸張した状態に維持することができるグリッドを図13に示す。(A)は、グリッド140の平面図であり、(B)は、グリッド160の、図13(A)と同様な平面図である。なお、図において同じ部品については同じ参照番号を付して説明する。最初に図13(A)に示すように、多数のプレート124を平行に支持した2枚の支持板142の両端部に、圧縮コイルばね(以下、単にばねという)(弾性体)144が配置されている。ばね144は支持板142を両側に押し広げるよう作用するので、支持板142に固定されたプレート124は、伸張されその平面性が確保される。ばね144は、その中心に図示しない心棒が通され、或いは、筒状の部材(図示せず)にばね144を収容してその形状が維持される。ばね144に変えて他の弾性体、例えば、ポリウレタンのような弾性を有する合成樹脂材料を用いてもよい。
【0062】
図13(B)に示すグリッド160においては、支持板162を付勢するばね164が一対の固定部166の両側に取り付けられている。固定部166は、支持板162の両端部に配置され、グリッド160の一部となるベース板168により連結されるか、一体に成形される。固定部166は2枚の支持板162の間の略中間に配置されている。これにより、ばね164の長さを短くするとともに、ばね166が横方向へ撓む虞をなくしている。
【0063】
次に、図14に、第8の実施形態となるグリッド180の斜視図を示す。このグリッド180では、伸張されたプレート184が、例えばカーボンからなる面板、即ち天板186と底板188を使用して固定される。まず、プレート184が接着剤185、あるいは突起187等により支持板182に固定された後、天板186と底板188により上下からプレート184を挟むように配置して、接着等により天板186と底板188がプレート184に接着される。天板186と底板188は、支持板182と連結部190から構成される枠状のフレーム192より外形形状がわずかに小さく形成されているので、フレーム192の中に入り込んで、プレート184と容易に接着することができる。これによりプレート184の固定が一層確実なものとなり、グリッド全体の剛性が向上すると共にフレーム192の強度が向上する。この場合、天板186、底板188とプレート184が固定されるのでスロットを有する支持板182は除去可能である。また、天板186と底板188がフレーム192内に入り込まず、フレーム192の周囲の端縁194で接着固定された場合は、プレート184は天板186と底板188に接着されないものの、全体の剛性を保つことができ、また外部からの影響から保護されるので、整列性も確保される。
【0064】
このように、天板186と底板188を使用した場合は、プレート184の固定方法は種々のバリエーションが考えられる。例えば、図15にグリッド180の他の実施例の概略図を示す。このグリッド180の場合は、底板188がプレート184に接着され、天板186が支持板182、即ちフレーム192の上側の端縁194に接着された状態を示す。この場合、底板188はフレーム192の内側に入り込んでいるので底板188は、フレーム192と接着することもできる。この構成により、プレート184の真直度が確保されると共に、フレーム192の剛性を保つことができる。
【0065】
これとは逆に、天板186が、フレーム192内に入り込んでプレート184と接着され、底板188が、プレート184から離れて フレーム192の下側の端縁194に接着される構成も考えられる。これにより同様の効果を得ることができる。
【0066】
前者の場合、即ち面板とプレート184が接着される場合、天板186と底板188の内側には、プレート184に対応する位置に溝を形成して、取り付けの際、それらの溝にこれらのプレート184を受容するようにして接着を補強すると共に、それらの位置決めを確実にしてもよい。また、後者の場合、即ち面板とプレート184を接着しない場合は、天板186と底板188の、支持板182と連結部190に対応する位置に同様に溝、あるいは段差を形成してフレーム192の位置決めを確実にするとともにそれらが変形し難いようにしてもよい。
【0067】
次に図16に、更に他の実施形態のグリッド180aの概略斜視図を示す。この実施形態に使用されているプレートは前述のプレート184と同じものであるが、図示しない放射線源に向けて傾斜した状態で底板188に取付けられている。これは、例えば、図11に示すスロット134を放射線源に向けて整列した支持板122aを用いて所定の方向にプレート184を傾斜させた後、底板188に接着されて形成される。尚、図では支持板122aは、片側のみを示してある。その後、支持板122aが取り除かれると図に示す構造のグリッド180aが得られる。この場合、天板186には接着されていないので、プレート184は底板188のみによって傾斜した状態に維持される。
【0068】
これとは逆に他の変形例として、プレート184を天板186に接着固定し、底板188と支持板122aを取り除いて構成する場合も考えられる。
【0069】
このように最終的に支持板122aを不要とした場合、グリッド180aを軽量化でき、その取り扱いが容易となる。プレートの幅、即ち高さ方向の寸法が大きい場合は、支持板の高さ方向の寸法も大きく、重くなるので、支持板を取り除く効果は一層大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による散乱線除去グリッドを示し、(A)はグリッドの平面図、(B)はこのグリッドに使用される支持板の正面図、(C)はこのグリッドに使用されるプレートの側面図を夫々示す。
【図2】本発明の第2の実施形態による散乱線除去グリッドを示し、(A)はグリッドの平面図、(B)はこのグリッドに使用される支持板の正面図、(C)はこのグリッドに使用されるプレートの側面図を夫々示す。
【図3】本発明の第2の実施形態による散乱線除去グリッドの概略斜視図
【図4】本発明の第3の実施形態による散乱線除去グリッドを示し、(A)はグリッドの平面図、(B)はこのグリッドに使用される支持板の正面図、(C)はこのグリッドに使用されるプレートの側面図を夫々示す。
【図5】本発明の第3の実施形態による散乱線除去グリッドの概略斜視図
【図6】本発明の第4の実施形態による散乱線除去グリッドの概略斜視図
【図7】図6の散乱線除去グリッドに使用される支持板及びプレートを示す図1と同様な図であり、(A)は支持板の正面図、(B)はプレートの側面図を夫々示す。
【図8】本発明の第5の実施形態による散乱線除去グリッドを示し、(A)はグリッドの平面図、(B)は図1(B)と同様のフレームの一部となる支持板の正面図、(C)は薄板の支持板の正面図、(D)はプレートの側面図を夫々示す。
【図9】本発明の第6の実施形態による散乱線除去グリッドの斜視図
【図10】図9の散乱線除去グリッドに使用される支持板の正面図及びプレートの側面図を放射線源と共に示す。
【図11】本発明の第7の実施形態のグリッドを示し、(A)はグリッドの、図1(A)と同様な平面図、(B)は支持板の、図1(B)と同様な正面図、(C)はプレートの、図1(C)と同様な側面図を夫々示す。
【図12】プレートを伸張する方法を示し、(A)は端部に穴を穿設したプレートの側面図、(B)は端部の両側縁に切欠きが形成されたプレートの側面図、(C)は端部に凹凸部が形成されたプレートの側面図を夫々示す。
【図13】プレートを常に伸張した状態に維持することができるグリッドを示し、(A)は、グリッドの平面図、(B)は、他のグリッドの、図13(A)と同様な平面図を夫々示す。
【図14】本発明の、第8の実施形態となるグリッドの斜視図を示す。
【図15】他の実施形態のグリッドの概略図を示す。
【図16】更に他の実施形態のグリッドの概略斜視図を示す。
【図17】従来の散乱線除去グリッドの一例を示し、(a)は斜視図、(b)は仮想線で囲んだ部分の部分拡大図を示す。
【符号の説明】
1、20、40、60、80、100、120、140、160、180、180a 散乱線除去グリッド
2、22、42、62、82、102、122、122a、142、162、182、 支持部材
4、24、44、64、84、104、124、144、184 プレート
14、34、54、74、74c、74d、94、114、134 支持部材のスロット
16、76、96、116 プレートのスロット
125 プレートの端部
144、164 弾性体
186 天板
188 底板
X 放射線源
Claims (6)
- 放射線吸収物質からなり放射線が照射される領域全体に亘って、所定の間隔で平行に配置される放射線の進行方向に幅を持った複数のプレートと、該プレートの両端部を支持する少なくとも2枚の支持部材とを備えた散乱線除去グリッドにおいて、
前記支持部材は前記複数のプレートを支持する多数のスロットを備え、該スロットが前記プレートの両端部近傍を受容支持する細孔状であり、前記プレートが前記スロットに挿入されて、前記プレートが該プレートの長手方向に伸張するように引っ張られた状態で前記支持部材に支持されていることを特徴とする散乱線除去グリッド。 - 前記散乱線除去グリッドが、天板、及び/若しくは底板を備え、前記プレートが、前記スロット、前記天板、前記底板のうち少なくとも一つに固定されていることを特徴とする、請求項1記載の散乱線除去グリッド。
- 前記支持部材が前記プレートの両端部を支持する2枚の支持部材の他に、該2枚の支持部材の両端同士を結合する2枚の支持部材を有し、4枚の支持部材で矩形の枠を構成するものであることを特徴とする請求項1記載の散乱線除去グリッド。
- 使用時の放射線源に向けて集束する方向に前記プレートが傾斜していることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の散乱線除去グリッド。
- 前記プレートが、前記放射線源に向けて集束している前記スロットに挿入されることにより、前記放射線源に向けて集束することを特徴とする請求項4記載の散乱線除去グリッド。
- 前記支持部材の他に、前記プレートと直交する放射線吸収物質からなるプレートが設けられ、全体としてクロスグリッドを形成していることを特徴とする請求項1から5いずれか記載の散乱線除去グリッド。
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