しかし上述の如き従来の車輌用操舵装置に於いては、回転−直線運動変換装置は単なるねじ式の回転−直線運動変換装置であるため、回転−直線運動変換装置のねじ部のバックラッシに起因するがたつきが生じ易く、十分な耐荷重性を確保することが困難であり、電動機の故障等の非作動時に車輪側よりの逆入力により車体側部材と車輪側部材とが相対的に直線変位し易いという問題がある。この問題は、回転−直線運動の変換が円滑に行われるよう回転−直線運動変換装置がボールねじ式の回転−直線運動変換装置である場合にも同様である。
本発明は、単なるねじ式又はボールねじ式の回転−直線運動変換装置により電動機の回転を車体側部材と車輪側部材との間の相対的直線運動に変換し、車体側部材と車輪側部材とを相対的に直線変位させて車輪を操舵するよう構成された従来の車輌用操舵装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、単なるねじ式及びボールねじ式の回転−直線運動変換装置よりも耐衝撃性等に優れ逆入力に対する抵抗が高い回転−直線運動変換装置を採用することにより、回転−直線運動変換装置を備えた車輌用操舵装置の性能を向上させることである。
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち車体側に接続された車体側部材と、車輪側に接続された車輪側部材と、回転アクチュエータと、前記回転アクチュエータの回転を前記車体側部材と前記車輪側部材との間の相対的直線運動に変換する回転−直線運動変換装置とを有し、前記回転−直線運動変換装置はねじ軸と、前記ねじ軸の周りに配設され前記ねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラと、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラを囲繞し前記遊星ねじローラと螺合するローラナットとを有する遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置であり、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラは互いに逆方向のねじにて螺合し、前記遊星ねじローラ及び前記ローラナットは互いに同一方向のねじにて螺合し、前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットのねじのピッチは互いに等しく、前記ねじ軸又は前記ローラナットが回転されても前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの何れもスラスト変位しない前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの有効ねじ径及び条数の関係に対し、前記ねじ軸又は前記ローラナットの条数が増減されており、前記ねじ軸及び前記ローラナットが相対的に回転すると前記遊星ねじローラは滑ることなくねじ山の噛み合いにより前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転し、前記ねじ軸は前記車体側部材及び前記車輪側部材の一方に連結され、前記ローラナットは前記車体側部材及び前記車輪側部材の他方に回転可能に支持され、前記回転アクチュエータにより前記車体側部材及び前記車輪側部材の他方に対し相対的に回転駆動されることを特徴とする車輌用操舵装置、又は請求項2の構成、即ち車体側に接続された車体側部材と、車輪側に接続された車輪側部材と、回転アクチュエータと、前記回転アクチュエータの回転を前記車体側部材と前記車輪側部材との間の相対的直線運動に変換する回転−直線運動変換装置とを有し、前記回転−直線運動変換装置はねじ軸と、前記ねじ軸の周りに配設され前記ねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラと、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラを囲繞し前記遊星ねじローラと螺合するローラナットとを有する遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置であり、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラは互いに逆方向のねじにて螺合し、前記遊星ねじローラ及び前記ローラナットは互いに同一方向のねじにて螺合し、前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットのねじのピッチは互いに等しく、前記ねじ軸又は前記ローラナットが回転されても前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの何れもスラスト変位しない前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの有効ねじ径及び条数の関係に対し、前記ねじ軸又は前記ローラナットの条数が増減されており、前記ねじ軸及び前記ローラナットが相対的に回転すると前記遊星ねじローラは滑ることなくねじ山の噛み合いにより前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転し、前記ねじ軸は前記車体側部材及び前記車輪側部材の一方に回転可能に支持され、前記回転アクチュエータにより前記車体側部材及び前記車輪側部材の他方に対し相対的に回転駆動され、前記ローラナットは前記車体側部材及び前記車輪側部材の他方に連結されていることを特徴とする車輌用操舵装置、又は請求項3の構成、即ち車体側に接続された車体側部材と、車輪側に接続された車輪側部材と、回転アクチュエータと、前記回転アクチュエータの回転を前記車体側部材と前記車輪側部材との間の相対的直線運動に変換する回転−直線運動変換装置とを有し、前記回転−直線運動変換装置はねじ軸と、前記ねじ軸の周りに配設され前記ねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラと、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラを囲繞し前記遊星ねじローラと螺合するローラナットとを有する遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置であり、前記車体側部材と前記車輪側部材とを相対的に直線変位させて車輪を操舵する車輌用操舵装置に於いて、前記車体側部材及び前記車輪側部材の軸線は前記回転アクチュエータの軸線と平行であり、前記車体側部材及び前記車輪側部材の少なくとも一方の軸線は前記回転アクチュエータの軸線に対し前記回転アクチュエータの軸線に垂直な方向にオフセットされていることを特徴とする車輌用操舵装置、又は請求項4の構成、即ち車体側に接続された車体側部材と、車輪側に接続された車輪側部材と、回転アクチュエータと、前記回転アクチュエータの回転を前記車体側部材と前記車輪側部材との間の相対的直線運動に変換する回転−直線運動変換装置とを有し、前記回転−直線運動変換装置はねじ軸と、前記ねじ軸の周りに配設され前記ねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラと、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラを囲繞し前記遊星ねじローラと螺合するローラナットとを有する遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置であり、前記車体側部材と前記車輪側部材とを相対的に直線変位させて車輪を操舵する車輌用操舵装置に於いて、前記車体側部材及び前記車輪側部材の軸線は前記回転アクチュエータの軸線と平行であり、前記ローラナットの外周面の軸線は前記ねじ軸の軸線に対し前記ねじ軸の軸線に垂直な方向にオフセットされていることを特徴とする車輌用操舵装置によって達成される。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットのねじのピッチ角は前記遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の正効率が正であり且つ逆効率が0以下であるよう設定される(請求項5の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3乃至5の何れか一つの構成に於いて、前記ねじ軸は前記車体側部材及び前記車輪側部材の一方に連結され、前記ローラナットは前記車体側部材及び前記車輪側部材の他方に回転可能に支持され、前記回転アクチュエータにより前記車体側部材及び前記車輪側部材の他方に対し相対的に回転駆動されるよう構成される(請求項6の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3乃至5の何れか一つの構成に於いて、前記ねじ軸は前記車体側部材及び前記車輪側部材の一方に回転可能に支持され、前記回転アクチュエータにより前記車体側部材及び前記車輪側部材の他方に対し相対的に回転駆動され、前記ローラナットは前記車体側部材及び前記車輪側部材の他方に連結されているよう構成される(請求項7の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は6又は7の構成に於いて、前記ねじ軸は前記遊星ねじローラ及び前記ローラナットに対し相対的に直線変位するよう構成される(請求項8の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は6の構成に於いて、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラは前記ローラナットに対し相対的に直線変位するよう構成される(請求項9の構成)。
上記請求項1乃至4の構成によれば、回転アクチュエータの回転を車体側部材と車輪側部材との間の相対的直線運動に変換する回転−直線運動変換装置は、ねじ軸と、ねじ軸の周りに配設されねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラと、ねじ軸及び遊星ねじローラを囲繞し遊星ねじローラと螺合するローラナットとを有する遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置であり、遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置は単なるねじ式やボールねじ式の回転−直線運動変換装置に比して耐荷重性、耐衝撃荷重性、耐がたつき性に優れているので、回転−直線運動変換装置を大型化することなく確実に且つ良好に回転運動と直線運動との間の運動変換を行わせることができ、従って操舵装置を円滑に作動させ、その耐久性を向上させることができる。
また遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置はねじのリード角(ピッチ角)の設定の自由度が高く、容易に正効率を正に設定し逆効率を負に設定できる。従って上記請求項1乃至4の構成によれば、回転アクチュエータの回転を効率的に車体側部材と車輪側部材との間の相対的直線運動に変換しつつ、操舵装置の非制御時や回転アクチュエータの故障時に車輪側よりの逆入力により車体側部材と車輪側部材とが相対的に直線変位することを効果的に防止することができ、従って回転アクチュエータの回転制御により車輪の操舵角を効率的に達成しつつ車輪のふらつきを効果的に防止して車輌の良好な走行安定性を確保することができる。
更に遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置に於いては遊星歯車機構による減速及び差動ねじ機構による減速の両者により減速が達成され、回転アクチュエータの回転角度に対する車体側部材と車輪側部材との間の相対的直線変位の比を小さくすることができる。従って上記請求項1乃至4の構成によれば、回転アクチュエータとして例えば高回転且つ低トルク型の小型の電動機を使用することができると共に、ボールねじ式の回転−直線運動変換装置が使用される場合に比して車輪の操舵角を高精度に制御することができる。
特に上記請求項1及び2の構成によれば、ねじ軸及び遊星ねじローラは互いに逆方向のねじにて螺合し、遊星ねじローラ及びローラナットは互いに同一方向のねじにて螺合し、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのねじのピッチは互いに等しく、ねじ軸又はローラナットが回転されてもねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの何れもスラスト変位しないねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの有効ねじ径及び条数の関係に対し、ねじ軸又はローラナットの条数が増減されており、ねじ軸及びローラナットが相対的に回転すると遊星ねじローラは滑ることなくねじ山の噛み合いによりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転するので、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットは互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たすと共に、ねじ軸又はローラナットは遊星ねじローラと共働して差動ねじとしての機能を果たし、これにより遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置はねじ軸とローラナットとの間に於いて回転角度と直線変位量とを一対一に正確に対応させて回転運動を微小な直線運動に正確に変換し或いは直線運動を大きい回転運動に正確に変換することができ、またねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットは互いに螺合するので、優れた耐荷重性能を確保することができる。
また上記請求項1の構成によれば、上記請求項6の構成の場合と同様、ねじ軸は車体側部材及び車輪側部材の一方に連結され、ローラナットは車体側部材及び車輪側部材の他方に回転可能に支持され、回転アクチュエータにより車体側部材及び車輪側部材の他方に対し相対的に回転駆動されるので、回転アクチュエータによってローラナットを回転駆動することによりねじ軸と共に車体側部材及び車輪側部材の一方を車体側部材及び車輪側部材の他方に対し相対的に直線運動させ、これにより車体側部材と車輪側部材とを相対的に変位させることができる。
また上記請求項2の構成によれば、上記請求項7の構成の場合と同様、ねじ軸は車体側部材及び車輪側部材の一方に回転可能に支持され、回転アクチュエータにより車体側部材及び車輪側部材の他方に対し相対的に回転駆動され、ローラナットは車体側部材及び車輪側部材の他方に連結されているので、回転アクチュエータによってねじ軸を回転駆動することによりローラナットと共に車体側部材及び車輪側部材の他方を車体側部材及び車輪側部材の一方に対し相対的に直線運動させ、これにより車体側部材と車輪側部材とを相対的に変位させることができる。
また上記請求項3の構成によれば、車体側部材及び車輪側部材の軸線は回転アクチュエータの軸線と平行であり、車体側部材及び車輪側部材の少なくとも一方の軸線は回転アクチュエータの軸線に対し回転アクチュエータの軸線に垂直な方向にオフセットされているので、車体側部材と車輪側部材との間の相対的直線運動によって回転アクチュエータが回転されることがなく、従って車体側部材及び車輪側部材はそれらが相対的に直線運動しようとしても相対的に直線運動できない。よってねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのねじのピッチ角に拘らず、換言すれば遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の正効率及び逆効率の何れも正であっても、非制御時や回転アクチュエータの故障時に車輪側よりの逆入力により車体側部材と車輪側部材とが相対的に直線変位することを確実に防止することができ、従って回転アクチュエータの回転制御により車輪の操舵角を効率的に達成しつつ車輪のふらつきを確実に防止して車輌の良好な走行安定性を確実に確保することができる。
また上記請求項4の構成によれば、車体側部材及び車輪側部材の軸線は回転アクチュエータの軸線と平行であり、ローラナットの外周面の軸線はねじ軸の軸線に対しねじ軸の軸線に垂直な方向にオフセットされているので、車体側部材及び車輪側部材の少なくとも一方の軸線が回転アクチュエータの軸線に対し回転アクチュエータの軸線に垂直な方向にオフセットされていなくても、車体側部材と車輪側部材との間の相対的直線運動によって回転アクチュエータが回転されることを防止することができ、上記請求項3の場合と同様、非制御時や回転アクチュエータの故障時に車輪側よりの逆入力により車体側部材と車輪側部材とが相対的に直線変位することを確実に防止することができ、従って回転アクチュエータの回転制御により車輪の操舵角を効率的に達成しつつ車輪のふらつきを確実に防止して車輌の良好な走行安定性を確実に確保することができる。
また上記請求項5の構成によれば、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのねじのピッチ角は遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の正効率が正であり且つ逆効率が0以下であるよう設定されるので、車体側部材及び車輪側部材の軸線が回転アクチュエータの軸線に整合しているか否かに拘らず、車体側部材及び車輪側部材はそれらが相対的に直線運動しようとしても相対的に直線運動できない。よって回転アクチュエータの回転を効率的に車体側部材と車輪側部材との間の相対的直線運動に変換しつつ、非制御時や回転アクチュエータの故障時に車輪側よりの逆入力により車体側部材と車輪側部材とが相対的に直線変位することを確実に防止することができ、従って回転アクチュエータの回転制御により車輪の操舵角を効率的に達成しつつ車輪のふらつきを確実に防止して車輌の良好な走行安定性を確実に確保することができる。
また上記請求項6の構成によれば、ねじ軸は車体側部材及び車輪側部材の一方に連結され、ローラナットは車体側部材及び車輪側部材の他方に回転可能に支持され、回転アクチュエータにより車体側部材及び車輪側部材の他方に対し相対的に回転駆動されるので、回転アクチュエータによってローラナットを回転駆動することによりねじ軸と共に車体側部材及び車輪側部材の一方を車体側部材及び車輪側部材の他方に対し相対的に直線運動させ、これにより車体側部材と車輪側部材とを相対的に変位させることができる。
また上記請求項7の構成によれば、ねじ軸は車体側部材及び車輪側部材の一方に回転可能に支持され、回転アクチュエータにより車体側部材及び車輪側部材の他方に対し相対的に回転駆動され、ローラナットは車体側部材及び車輪側部材の他方に連結されているので、回転アクチュエータによってねじ軸を回転駆動することによりローラナットと共に車体側部材及び車輪側部材の他方を車体側部材及び車輪側部材の一方に対し相対的に直線運動させ、これにより車体側部材と車輪側部材とを相対的に変位させることができる。
また上記請求項8の構成によれば、ねじ軸は遊星ねじローラ及びローラナットに対し相対的に直線変位するので、ねじ軸及び遊星ねじローラがローラナットに対し相対的に直線変位する構成の場合に比して直線変位する部材の重量を低減すると共に、ローラナットの必要な長さを低減することができる。
また上記請求項9の構成によれば、ねじ軸及び遊星ねじローラはローラナットに対し相対的に直線変位するので、ねじ軸が遊星ねじローラ及びローラナットに対し相対的に直線変位する構成の場合に比してねじ軸の必要な長さを低減することができ、これによりアクティブサスペンション装置を大きくすることなく十分なサスペンションストロークを確保することができる。
[課題解決手段の好ましい態様]
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至9の何れか一つの構成に於いて、車輪は前輪であり、操舵装置はタイロッドに組み込まれ、タイロッドを伸縮させて前輪を補助操舵するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至9の何れか一つの構成に於いて、車輪は前輪であり、操舵装置は車体と前輪の車輪支持部材との間に組み込まれ、車体と前輪の車輪支持部材との間の距離を変化させて車輪支持部材をキングピン軸の周りに枢動させることにより前輪を操舵するよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至9の何れか一つの構成に於いて、車輪は後輪であり、操舵装置は車体と後輪の車輪支持部材との間に組み込まれ、車体と後輪の車輪支持部材との間の距離を変化させて車輪支持部材をキングピン軸の周りに枢動させることにより後輪を操舵するよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至9の何れか一つの構成に於いて、車体側部材及び車輪側部材の少なくとも一方はそれぞれ車体側及び車輪側に軸線の周りに回転不可能に接続されているよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、回転アクチュエータは回転−直線運動変換装置の周りに配設されているよう構成される(好ましい態様5)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1の構成に於いて、回転アクチュエータは電動機であり、ローラナットは電動機のロータであるよう構成される(好ましい態様6)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、回転アクチュエータは回転−直線運動変換装置に対しその軸線方向に隔置された状態にて配設されているよう構成される(好ましい態様7)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様3の構成に於いて、回転アクチュエータは電動機であり、ローラナットが電動機のロータに接続されているよう構成される(好ましい態様8)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様3の構成に於いて、回転アクチュエータは電動機であり、ねじ軸が電動機のロータに接続されているよう構成される(好ましい態様9)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのねじのピッチ角は遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の正効率及び逆効率の何れも正であるよう設定される(好ましい態様10)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様10の構成に於いて、回転−直線運動変換装置の正効率は逆効率よりも大きいよう構成される(好ましい態様11)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5の構成に於いて、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのねじのピッチ角は遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の正効率が正であり且つ逆効率が0以下であるよう設定される(好ましい態様12)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は6の構成に於いて、ローラナットが回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、ねじ軸が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ねじ軸の条数が増減されているよう構成される(好ましい態様13)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2又は7の構成に於いて、ねじ軸が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、ローラナットが回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ローラナットの条数が増減されているよう構成される(好ましい態様14)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様13の構成に於いて、ローラナットと共働して遊星ねじローラをねじ軸の軸線周りの所定の位置に保持し遊星ねじローラをそれらの軸線周りに回転可能に支持するキャリアを有するよう構成される(好ましい態様15)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様14の構成に於いて、ねじ軸と共働して遊星ねじローラをねじ軸の軸線周りの所定の位置に保持し遊星ねじローラをそれらの軸線周りに回転可能に支持するキャリアを有するよう構成される(好ましい態様16)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様15の構成に於いて、キャリアはローラナットによりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転可能に且つローラナットに対し相対的にスラスト変位不可能に支持されているよう構成される(好ましい態様17)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様16の構成に於いて、キャリアはねじ軸によりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転可能に且つねじ軸に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されているよう構成される(好ましい態様18)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、遊星ねじローラがねじ山の噛み合いによりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転する際の摩擦損失は、遊星ねじローラがねじ軸若しくはローラナットに対し相対的に回転することなくねじ軸若しくはローラナットに対し相対的に滑る際の摩擦損失よりも小さいよう構成される(好ましい態様19)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は上記好ましい態様13乃至19の何れか一つの構成に於いて、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットはそれぞれ対応する軸線の周りに螺旋状に延在するねじを有し、各ねじのねじ山はそれぞれ対応する軸線に沿う断面で見て左右対称であるよう構成される(好ましい態様20)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2又は上記好ましい態様13乃至20の何れか一つの構成に於いて、遊星ねじローラの個数は、ねじ軸及びローラナットの合計の条数を正の整数にて除算した値であるよう構成される(好ましい態様21)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項8の構成に於いて、遊星ねじローラ及びローラナットに対するねじ軸の相対的直線変位量を検出する変位センサを有し、変位センサはねじ軸の雄ねじに噛合する歯車を含んでいるよう構成される(好ましい態様22)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項8の構成に於いて、遊星ねじローラ及びローラナットに対するねじ軸の相対的直線変位量を検出する一対の変位センサを有し、各変位センサはねじ軸の雄ねじに噛合する歯車を含み、二つの歯車は互いに異なる歯数を有するよう構成される(好ましい態様23)。
図1は前輪の補助操舵装置として構成された本発明による車輌用操舵装置の実施例1が組み込まれた車輌を示す説明図、図2は図1に示された右前輪側の操舵装置を示す概略構成図、図3は図1及び図2に示された操舵装置の要部を示す拡大断面図である。
図1に於いて、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ左右の後輪を示している。操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14の転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置16によりタイロッド18L及び18Rを介して操舵される。
タイロッド18L及び18Rはそれぞれ内端にてボールジョイント20L及び20Rを介してパワーステアリング装置16のラックバー22に連結され、外端にてボールジョイント24L及び24Rを介して前輪10FL及び10FRの車輪支持部材11FL及び11FRと一体に形成されたナックルアーム26L及び26Rに連結されている。図示の実施例に於いては、タイロッド18L及び18Rにそれぞれ本発明による操舵装置28L及び28Rが組み込まれている。操舵装置28L及び28Rは左右対称である点を除き互いに同一の構成を有するので、これ以降操舵装置28Rについてのみ詳細に説明する。
図2に示されている如く、操舵装置28Rはボールジョイント20Rを介してラックバー22に接続された車体側部材30と、ボールジョイント24Rを介して右前輪10FRの車輪支持部材のナックルアーム26Rに接続された車輪側部材34と、回転アクチュエータとしての電動機36と、電動機36の回転を車体側部材30と車輪側部材34との間の相対的直線運動に変換する遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38とを有し、車体側部材30と車輪側部材34とを相対的に直線変位させて右前輪10FRを補助操舵するようになっている。
車体側部材30はその内端にてボールジョイント20Rのボール部材20RBのロッド部にねじ込み、圧入、溶接の如き手段により連結固定されており、その軸線40は回転−直線運動変換装置38の軸線42に整合している。車輪側部材34の外端にはボールジョイント24Rのソケット部24RSが一体に形成されており、車輪側部材34の内端は操舵装置28Rのハウジング44に一体的に連結されている。車輪側部材34の軸線46は回転−直線運動変換装置38の軸線42に平行に延在し且つ軸線42に対し垂直な方向へ距離Loオフセットされている。
図3に示されている如く、車体側部材30の内端部はハウジング44内に収容された回転−直線運動変換装置38のねじ軸48を構成しており、ねじ軸48は雄ねじを有し軸線42に沿って延在している。ねじ軸48は同じく軸線42に沿って延在するローラナット50に挿通され、ローラナット50はねじ軸48よりも大きい軸線方向長さを有している。ハウジング44の内端とパワーステアリング装置16の外端との間には、ラックバー22及び車体側部材30を被包するゴム製のダストカバー52が渡設されている。
ローラナット50は内周面に雌ねじを有し、ハウジング44の本体部44Aの内面によりボールベアリング54を介して軸線42の周りにねじ軸48に対し相対的に回転可能に支持されている。ボールベアリング54のアウタレースはハウジング44の本体部44Aと内端キャップ部44Bのとの間に挾持され、インナレースはローラナット50の一端に螺合するナット56によりローラナット50に固定されている。ローラナット50の外面には径方向に磁極を有する複数個の永久磁石58が周方向に等間隔に隔置された状態にて固定されている。
永久磁石58の周りにてハウジング44の本体部44A内には径方向に延在する複数個のコア60が周方向に等間隔に隔置された状態にて配置されている。各コア60にはコイル62が巻回されており、永久磁石58、コア60、コイル62は互いに共働してローラナット50を軸線42の周りに回転駆動する回転アクチュエータとしての電動機36を構成している。コア60はストッパリング66によりハウジング44の本体部44Aに固定されている。またコイル62はそのボビン68が支持部材70によって支持されることにより支持されており、支持部材70はハウジング44の本体部44Aの外端に固定された外端キャップ部44Cにより支持されている。
図示の実施例に於いては、車体側部材30の外周面には軸線40に沿って延在するセレーション72が設けられており、ハウジング44の内端エンドキャップ部44Bにはセレーション72に係合する内歯を有するリング73が例えば圧入により固定されており、これにより車体側部材30及びねじ軸48はハウジング44に対し相対的に回転することなく軸線40に沿って往復動する。車体側部材30の内端部にはナット74が螺合しており、ナット74及びリング73により車体側部材30及びねじ軸48の図2及び図3で見て右方への移動距離が規制されるようになっている。
ねじ軸48とローラナット50との間には雄ねじを有する複数個の遊星ねじローラ76が配置されており、各遊星ねじローラ76は軸線42に平行に延在し、ローラナット50よりも短い長さを有している。図示の実施例に於いては、遊星ねじローラ76は9個設けられ、軸線42の周りに等間隔に互いに周方向に隔置されている。各遊星ねじローラ76は両端に円柱状のシャフト部を有し、各シャフト部はそれぞれねじ軸48を囲繞する環状のキャリア78及び80により各自の軸線の周りに自転可能に且つ軸線42の周りに公転可能に且つねじ軸48に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されている。
キャリア78及び80はねじ軸48よりも大きい内径及びローラナット50よりも小さい外径を有し、ねじ軸48及びローラナット50に対し相対的に軸線42の周りに自由に回転可能である。またキャリア78及び80は例えば含油金属の如き摩擦係数が低い材料にて形成され、ねじ軸48の両側にて車体側部材30に螺合するナット82及び84により車体側部材30に固定されたストッパリング86及び88によりねじ軸48に対し相対的に軸線方向へ移動しないよう支持されており、これにより後に詳細に説明する如く、ねじ軸48、遊星ねじローラ76、キャリア78及び80は一体的にローラナット50に対し相対的に軸線42に沿って直線変位するようになっている。
車体側部材30の外端部には軸線42に沿って延在する穴が設けられており、該穴には変位センサ92のシャフト94が嵌入している。変位センサ92はそのフランジ部がビス96によって支持部材70に固定されることにより支持されており、シャフト94は軸線42の周りにねじ軸48に対し相対回転可能に軸線42に沿って延在している。図には示されていないが、車体側部材30の穴には突起が固定され、シャフト94には突起を受け入れる螺旋溝が設けられている。ねじ軸48が軸線42に沿って直線変位するとシャフト94が軸線42の周りに回転し、これにより変位センサ92はシャフト94の回転変位量及び回転方向としてねじ軸48の直線変位量及び変位方向を検出する。
図1には示されていないが、コイル62及び変位センサ92の導線はハウジング44の本体部44Aと外端キャップ部44Cとの間に固定されたパイプ98を経て操舵装置10外へ延在し、電子制御装置90に接続されている。コイル62に通電され電動機36が駆動されることによりローラナット50が回転されると、後に詳細に説明する如く車体側部材30が軸線42に沿って直線変位してタイロッド18L及び18Rが伸縮し、これにより運転者によりステアリングホイール14及びパワーステアリング装置16を介して操舵される左右前輪10FL及び10FRの舵角が増減制御される。
コイル62への通電による電動機36の制御、従って操舵装置10の制御は運転者の操舵操作を補助すべく或いは車輌の走行安定性を向上させるべくセンサ群91により検出される車輌の横加速度の如き車輌の走行状態及び変位センサ92の検出結果に基づいて電子制御装置90により行われるが、操舵装置10の制御自体は本発明の要旨をなすものではないので、その詳細な説明を省略する。
図示の如く、ローラナット50の雌ねじ及び遊星ねじローラ76の雄ねじは同一方向のねじであるのに対し、ねじ軸48の雄ねじ及び遊星ねじローラ76の雄ねじは互いに逆方向のねじである。各遊星ねじローラ76の雄ねじはねじ軸48の雄ねじ及びローラナット50の雌ねじに螺合している。特にローラナット50がねじ軸48に対し相対的に回転すると、遊星ねじローラ76は滑ることなくねじ山の噛み合いによりねじ軸48及びローラナット50に対し相対的に回転する。
尚「遊星ねじローラ76が滑ることなくねじ山の噛み合いによりねじ軸48及びローラナット50に対し相対的に回転する」ことは、「遊星ねじローラ76がねじ山の噛み合いによりねじ軸48及びローラナット50に対し相対的に回転する際の摩擦損失」が、「遊星ねじローラ76がねじ軸48若しくはローラナット50に対し相対的に回転することなくねじ軸48若しくはローラナット50に対し相対的に滑る際の摩擦損失」よりも小さくなるよう、各ねじの間の摩擦係数等との関係にて各ねじのピッチ角等が最適に設定されることにより達成される。
図4はねじ軸48等のねじのピッチ角(リード角)と遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38の効率との関係を示しており、特に太い実線は正効率(回転運動を直線運動に変換する効率)を示し、太い破線は逆効率(直線運動を回転運動に変換する効率)を示している。また図4は比較例として単なるねじやボールねじよりも耐荷重性等に優れた台形ねじについて正効率(細い実線)及び逆効率(細い破線)を示している。
図4より解る如く、遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38によれば、台形ねじよりも正効率を高くすることができ、広いピッチ角の範囲に亘り正効率及び逆効率を高くすることができる。尚ピッチ角を小さくすれば回転−直線運動変換装置38の逆効率を0以下に設定し、回転−直線運動変換装置38による逆変換、即ち直線運動より回転運動への変換を阻止することができるが、回転−直線運動変換装置38による逆変換が行われないようにすればピッチ角を広い範囲に亘り自由に設定することができることが解る。
図5はねじ軸48の雄ねじを軸線42に平行な断面にて示す拡大部分断面図である。尚図5に於いて、二点鎖線48Aは有効ねじ径の位置を示している。図5に示されている如く、ねじ軸48の雄ねじは90度の挾角をなし先端が丸みを帯びた実質的に二等辺三角形のねじ山形状を有し、軸線42の周りに螺旋状に延在している。またねじ軸48の雄ねじのねじ山はねじの延在方向に垂直な断面で見て左右対称であるのではなく、軸線42に沿う断面で見て左右対称であるよう形成されている。更に各ねじ山の斜面は軸線42に沿う断面で見て半径Rsの円弧状をなし、有効ねじ径の位置48Aに於ける各ねじ山の斜面の軸線42に対する傾斜角は45度である。
またローラナット50の雌ねじ及び遊星ねじローラ76の雄ねじもねじ軸48の雄ねじと同様に形成されており、従ってねじ軸48の雄ねじと遊星ねじローラ76の雄ねじ及び遊星ねじローラ76の雄ねじとローラナット50の雌ねじは、それらの回転方向及び回転角度の大小に拘らず常にそれぞれ有効ねじ径の径方向位置であって軸線方向に互いにねじピッチ分隔置された複数の位置に於いて互いに実質的に点接触する状況を維持する。
またねじ軸48の雄ねじ、ローラナット50の雌ねじ、遊星ねじローラ76の雄ねじは互いに同一のピッチを有する多条ねじであるが、ローラナット50が回転されてもねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50の何れもスラスト変位しないねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50の有効ねじ径及び条数の関係に対し、ねじ軸48の条数が1増減された条数に設定される。即ちねじ軸48の差動条数が+1又は−1に設定される。
即ち、ねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50の有効ねじ径をそれぞれDs、Dp、Dnとし、ねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50の条数をそれぞれNs、Np、Nnとすると、ローラナット50が回転されてもねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50の何れもスラスト変位しないねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50の有効ねじ径及び条数の関係とはNs:Np:Nn=Ds:Dp:Dnが成立する関係であり、ねじ軸48の条数Nsがこの関係を満たす値に対し1多い数又は1少ない数に設定され、図示の実施例1に於いては、ねじ軸48の差動条数が−1に設定されている。
以上の説明より解る如く、ねじ軸48、ローラナット50、遊星ねじローラ76、キャリア78及び80は互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機構を構成すると共に、ねじ軸48の差動条数によりローラナット50及び遊星ねじローラ76に対し相対的にねじ軸48を軸線42に沿ってスラスト変位させる差動ねじ機構を構成している。
図6は実施例1に於ける回転−直線運動変換装置38の作動原理を示す解図的説明図であり、特に図6(A)は図3の右方より回転−直線運動変換装置38を見た場合のねじ軸48、ローラナット50、遊星ねじローラ76、キャリア78及び80の回転方向を示し、図6(B)は図3の右斜め上方より回転−直線運動変換装置38を見た場合についてキャリア78及び80を固定してねじ軸48、ローラナット50、遊星ねじローラ76のスラスト移動方向を示している。
図6(A)に示されている如く、ねじ軸48は回転しないので、ローラナット50が軸線42の周りに時計廻り方向へ回転されると、各遊星ねじローラ76はそれぞれ各自の軸線の周りに時計廻り方向へ自転しつつねじ軸48の周りに時計廻り方向へ公転し、キャリア78及び80は軸線42の周りに時計廻り方向へ回転する。
図6(B)に示されている如く、右ねじを有する一つの遊星ねじローラ76についてキャリア78及び80を固定して考えると、遊星ねじローラ76はその軸線の周りに時計廻り方向へ回転することにより右ねじの締め込み方向へスラスト変位しようとし、これに螺合する左ねじのねじ軸48は軸線42の周りに反時計廻り方向へ回転することにより手前側へスラスト変位しようとする。
この場合遊星ねじローラ76はキャリア78及び80によりスラスト変位が阻止されるので、ねじ軸48は軸線42の周りに反時計廻り方向へ回転することにより遊星ねじローラ76に対し相対的にスラスト変位する。従ってローラナット50が軸線42の周りに時計廻り方向へ回転されると、ねじ軸48はその差動条数が−1であるので手前側へスラスト変位し、ローラナット50が軸線42の周りに反時計廻り方向へ回転されると、ねじ軸48は向こう側へスラスト変位する。
尚ねじ軸48の差動条数が+1である場合には、ねじ軸48は上述の場合とは逆方向へ移動する。またローラナット50の差動条数が+1の場合に於いて、ローラナット50が軸線42の周りに時計廻り方向へ回転されると、ねじ軸48は手前側へスラスト変位し、ローラナット50が軸線42の周りに反時計廻り方向へ回転されると、ねじ軸48は向こう側へスラスト変位し、ローラナット50の差動条数が−1である場合にはねじ軸48は逆方向へスラスト変位する。
遊星ねじローラ76に対するねじ軸48の相対的スラスト変位量の大きさは遊星ねじローラ76の1公転当り1条分、即ちねじのピッチPであり、ローラナット50の1回転当りの公転数は「ローラナット50の有効ねじ径Dn」を「ねじ軸48の有効ねじ径Dsとローラナット50の有効ねじ径Dnとの和」にて除算した値であるので、ローラナット50の1回転当りのねじ軸48のスラスト変位量の大きさLsは下記の式1にて表される。
Ls=P・Dn/(Ds+Dn) ……(1)
例えば図示の実施例1に於いて、ピッチPが1mmであり、遊星ねじローラ76の雄ねじが4条(Np=4)の右ねじであり、その有効ねじ径が7mmであり、ローラナット50の雌ねじの有効ねじ径Dnが遊星ねじローラ76の雄ねじの4.5倍の31.5mmであり、その右ねじの条数Nnがねじ軸48及び遊星ねじローラ76が相対的にスラスト変位しない条件4.5×4の18条であるとすると、ねじ軸48の雄ねじの有効ねじ径Dsは、遊星ねじローラ76の雄ねじの2.5倍の17.5mmであり、その左ねじの条数Nsはねじ軸48及び遊星ねじローラ76が相対的にスラスト変位しない条件、即ち1条の2.5×4倍より1少ない9条であるとすると、ローラナット50の1回転当りのねじ軸48のスラスト変位量の大きさLsは上記式1より17.749mmである。
尚図示の実施例1に於ける遊星ねじローラ76の個数は上述の如く9個であるが、これは上記具体例に於いてねじ軸48及びローラナット50の合計の条数27を正の整数3にて除算した値であり、遊星ねじローラ76の個数がねじ軸48及びローラナット50の合計の条数を正の整数にて除算した値である場合に遊星ねじローラ76を軸線42の周りに等間隔にて互いに周方向に隔置された状態に配置することができる。
また図示の実施例1に於いて、ねじ軸48が軸線42に沿ってスラスト変位せしめられると、各遊星ねじローラ76が各自の軸線の周りに自転しつつねじ軸48の周りに公転し、これによりローラナット50が軸線42の周りに回転する。この場合ローラナット50の回転方向はねじ軸48のスラスト変位の方向及びねじ軸48の差動条数が+1であるか−1であるかにより決定され、何れの場合にもねじ軸48のスラスト変位の大きさがLsであるときのローラナット50の回転角度の大きさθnは下記の式2にて表される。
θn=(Ds+Dn)/(580・P・Dn) ……(2)
かくしてねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50は互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たすと共に、ねじ軸48及び遊星ねじローラ76は互いに共働して差動ねじとしての機能を果たし、またねじ軸48が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ローラナット50が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持されているので、回転角度と直線変位量とを一対一に正確に対応させてローラナット50の回転運動を正確にねじ軸48の微小な直線運動に正確に変換することができる。
従って図示の実施例1によれば、電子制御装置90によって電動機36を制御することにより、車体側部材30を車輪側部材34に対し相対的に正確に軸線42に沿って直線変位させてタイロッド18L及び18Rを正確に伸縮させ、車輪支持部材11FL及び11FRを図には示されていないキングピン軸の周りに枢動させ、これにより左右の前輪10FL及び10FRの舵角を正確に増減制御することができる。
また図示の実施例1によれば、回転アクチュエータとしての電動機36の回転を往復動車体側部材30と車輪側部材34との間の相対的直線運動に変換する回転−直線運動変換装置は、ねじ軸48と、ねじ軸の周りに配設されねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラ76と、ねじ軸及び遊星ねじローラを囲繞し遊星ねじローラと螺合するローラナット50とを有する遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38であり、遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38は単なるねじ式やボールねじ式の回転−直線運動変換装置に比して耐荷重性や耐衝撃荷重性に優れているので、回転−直線運動変換装置を大型化することなく確実に且つ良好に回転運動と直線運動との間の運動変換を行わせることができ、従って操舵装置を円滑に作動させ、その耐久性を向上させることができる。
また図示の実施例1によれば、車輪側部材34の軸線46は回転−直線運動変換装置38の軸線42に平行に延在し且つ軸線42に対し垂直な方向へ距離Loオフセットされており、セレーション72及びリング73によりハウジング44に対する車体側部材30の相対回転が阻止されるので、車輪よりの逆入力により車体側部材30及び車輪側部材34にこれらを相対的に直線運動させようとする荷重が作用しても回転−直線運動変換装置38の逆変換、即ち直線運動より回転運動への変換は行われず、従って車輪よりの逆入力によりタイロッド18L及び18Rが伸縮され左右前輪10FL及び10FRの舵角が変化して車輌の走行安定性が低下することを確実に防止することができ、また回転−直線運動変換装置38の逆効率が正であってもよいので、図4より解る如くねじ軸48等のねじのピッチ角を比較的広い範囲の値に任意に設定することができる。
また図示の実施例1によれば、回転−直線運動変換装置38のねじ軸48等のねじのピッチ角は正効率及び逆効率の何れも正であるよう設定されるので、例えば車輪側部材34の軸線46と回転−直線運動変換装置38の軸線42とがオフセットされず且つ正効率は正であるが逆効率は負であるようねじのピッチ角が設定される場合に比して、回転−直線運動変換装置38の正効率を高くすることができ、これにより電動機36の回転を効率的に車体側部材30と車輪側部材34との間の相対的直線運動に変換し、車輪の舵角に制御を効率的に実行することができる。
また図示の実施例1によれば、電動機36は遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38を囲繞するよう回転−直線運動変換装置38の周りに設けられているので、例えば後述の実施例2及び3の如く電動機36及び回転−直線運動変換装置38が互いに他に対し軸線に沿って配設された構造の場合に比して、操舵装置10の長さを低減することができる。
また図示の実施例1によれば、遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38に於いては上述の如く遊星歯車機構による減速及び差動ねじ機構による減速の両者により減速が達成され、電動機36の回転角度に対する車体側部材30と車輪側部材34との間の相対的直線変位の比を小さくすることができるので、回転−直線運動変換装置が例えばボールねじ式の回転−直線運動変換装置である場合に比して、車体側部材30及び車輪側部材34の相対変位量を正確に制御して車輪の舵角を高精度に制御することができ、また電動機36として例えば高回転且つ低トルク型の小型の電動機を使用することができる。
特に図示の実施例1によれば、ねじ軸48及び遊星ねじローラ76がローラナット50に対し相対的に直線変位するので、ねじ軸48が遊星ねじローラ76及びローラナット50に対し相対的に直線変位する構成の場合に比して、ねじ軸48の必要な長さを低減することができる。
また図示の実施例1によれば、ねじ軸48と共働して遊星ねじローラ76をねじ軸48の軸線周りの所定の位置に保持し遊星ねじローラ76をそれらの軸線の周りに回転可能に支持するキャリア78及び80が設けられ、キャリア78及び80はねじ軸48によりねじ軸に対し相対的に回転可能に且つねじ軸に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されているので、遊星ねじローラ76をねじ軸48の軸線42の周りの所定の位置に確実に保持すると共に、遊星ねじローラ76を確実にそれらの軸線の周りに回転可能に支持することができ、これにより遊星ねじローラ76がねじ軸48に対し相対的にスラスト変位することを確実に阻止しつつ遊星ねじローラ76を確実にねじ軸48及びローラナット50に対し相対的に回転させ公転させることができる。
また図示の実施例1によれば、遊星ねじローラ76がねじの歯の噛み合いによりねじ軸48及びローラナット50に対し相対的に回転する際の摩擦損失は、遊星ねじローラ76がねじ軸48若しくはローラナット50に対し相対的に回転することなくねじ軸48若しくはローラナット50に対し相対的に滑る際の摩擦損失よりも小さいので、ねじ軸48及びローラナット50が相対的に回転すると遊星ねじローラ76が滑ることなくねじ山の噛み合いによりねじ軸48及びローラナット50に対し相対的に回転する状況を確実に確保することができる。
また図示の実施例1によれば、ねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50は互いに螺合するので、優れた耐荷重性能を確保することができ、特にねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50の各ねじ山の斜面は対応する軸線に沿う断面で見て円弧状をなし、それらの回転に拘らず常にそれぞれ有効ねじ径の径方向位置であって軸線方向に互いにねじピッチ分隔置された複数の位置に於いて互いに実質的に点接触する状況を維持するので、回転方向や回転角度の大きさ等に関係なく回転角度と直線変位量とを非常に正確に一対一に対応させて運動の変換を行うことができる。
また図示の実施例1によれば、ねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50はそれぞれ対応する軸線の周りに螺旋状に延在するねじを有し、各ねじの延在方向に垂直な断面は左右対称であるので、ねじ軸48、遊星ねじローラ76、ローラナット50が互いに共働して確実に遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たす状況を確保することができると共に、ねじ軸48及び遊星ねじローラ76が互いに共働して確実に差動ねじとしての機能を果たす状況を確保することができる。
図7は前輪の補助操舵装置として構成された本発明による車輌用操舵装置の実施例2を示す軸線に沿う断面図である。尚図7に於いて図2及び図3に示された部材と同一の部材にはこれらの図に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この実施例に於いては、ハウジング44の本体部44Aは内端エンドキャップ部44Bと一体に形成され、内端エンドキャップ部44Bは車体側部材30の外端と一体に連結されている。車体側部材30の内端には内筒100Aと外筒100Bと内筒と外筒との間に介装されたゴムブッシュ100Cとよりなるゴムブッシュ装置100の外筒100Bが一体的に固定されており、ゴムブッシュ装置100の軸線100Dは車体側部材30の軸線40に直交し、車体側部材30の内端はゴムブッシュ装置100を介して図7には示されていないパワーステアリング装置16のラックバー22に軸線40の周りに回転不可能に連結されている。
ハウジング44の本体部44B内にてその内面側にはガイドロッド102の一端がねじ込まれると共にナット104により固定され、ガイドロッド102は軸線42に沿って延在している。ねじ軸48はガイドロッド102を受け入れるガイド穴106を有し、ガイドロッド102により軸線42に沿って相対的に往復動可能に支持されている。尚図示の実施例に於いては、ガイドロッド102及びガイド穴106の断面形状は円形であるが、ねじ軸48がガイドロッド102に対し軸線42の周りに相対回転しないよう正方形の如き多角形であってもよく、また軸線42に沿って延在するキー及びキー溝が設けられていてもよい。
電動機36の永久磁石58はねじ軸48に遊嵌合し軸線42に沿って延在する円筒状のロータ108の外周面に固定されており、ロータ108はその内端にてボールベアリング54により軸線42の周りに回転可能に支持されている。ロータ108の外端には軸線42に沿って延在する大径の円筒部108Aが一体に形成されている。円筒部108Aは遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38のローラナット50の内端部の周りに遊嵌合状態にて延在し、キー110及びこれを受けるキー溝によりローラナット50に連結されている。
円筒部108Aの周りにはロータ108の回転角度及び方向を検出するレゾルバ112が設けられており、レゾルバ112は円筒部108Aの外面に固定された有歯リング112Aと、有歯リング112Aに径方向に対向してハウジング44の本体部44Aに固定された複数個のコア112Bと、各コアに巻回された複数個のコイル112Cとよりなる周知の構成を有している。
ローラナット50は二つのボールベアリング114及び116により軸線42の周りに回転可能に支持されている。ボールベアリング114及び116のインナレースはローラナット50の外端に螺合するナット118によりローラナット50に固定され、ボールベアリング114及び116のアウタレースはハウジング44の外端エンドキャップ部44Cにねじ込まれたリングナット120により外端エンドキャップ部44Cに固定されている。各遊星ねじローラ76の両端を回転可能に支持するキャリア78及び80はローラナット50の内面に圧入、その他の手段によって固定されたストッパリング86及び88によりローラナット50の内面に固定されており、キャリア78、80及びストッパリング86、88はねじ軸48に遊嵌合している。
図7に示されている如く、回転−直線運動変換装置38はハウジング44内にて軸線42に沿って電動機36より隔置されている。ローラナット50の長さは遊星ねじローラ70の長さよりも僅かに大きく、ねじ軸48の長さはローラナット50の長さよりも遥かに大きく設定されており、操舵装置28L及び28Rが収縮した状況にあるときには、ねじ軸48の内端部が電動機36のロータ108内に延在するようになっている。
ハウジング44の外端エンドキャップ部44Cにはロータリエンコーダ式の変位センサ122及び124が設けられており、変位センサ122及び124の回転軸にはねじ軸48の雄ねじに螺合する歯車126及び128が固定されている。歯車126及び128は互いに異なるピッチ円及び歯数を有し、これにより変位センサ122及び124は軸線42に沿うねじ軸48の直線変位に伴う歯車126及び128の回転数の相違によりねじ軸48の直線変位量及び方向を正確に検出する。
またハウジング44の外端エンドキャップ部44Cにはねじ軸48と外端エンドキャップ部44Cとの間を封止するシール部材130が外端エンドキャップ部44Cの外端に螺合するリングナット132により固定されている。ねじ軸48の外端部は外端エンドキャップ部44Cを貫通して延在し、ねじ軸48の外端部には車輪側部材34の内端がねじ止め、圧入、溶接等の手段により固定されている。尚図示の実施例2に於いては車輪側部材34の軸線46は回転−直線変換装置38の軸線42に整合しており、また図7には示されていないが、この実施例に於いても車輪側部材34の外端にはボールジョイントのソケットが一体に形成されている。
図7に示されている如く、この実施例2の他の点は上述の実施例1と同様に構成されており、電動機36のロータ108の回転によりローラナット50が軸線42の周りに回転され、ローラナット50の回転が回転−直線変換装置38により軸線42に沿うねじ軸48の往復動に変換され、これによりタイロッド18L及び18Rが伸縮される点を除き、実施例2の操舵装置28L及び28Rは実施例1の操舵装置と同様に作動する。尚この実施例に於いても車輪側部材34の軸線46が回転−直線変換装置38の軸線42に対し垂直な方向へオフセットされていてもよい。
従ってこの実施例2によれば、上述の実施例1の場合と同様の作用効果を得ることができると共に、車体側部材30及び車輪側部材34はそれぞれパワーステアリング装置16のラックバー22及びナックルアーム26Rに軸線40及び46の周りに回転不可能に連結されるので、車体側部材30の軸線40、車輪側部材34の軸線46、回転−直線変換装置38の軸線42が互いに整合していても、車体側部材30と車輪側部材34との間の相対的直線運動が回転‐直線運動変換装置38の逆変換によりローラナット50の回転運動に変換されることを確実に防止することができる。
また実施例2によれば、ローラナット50が回転されても遊星ねじローラ70はスラスト変位せず、ねじ軸48のみがスラスト変位するので、例えば上述の実施例1及び後述の実施例3の場合に比してスラスト変位する部材全体の質量を小さくし、操舵装置の大きさを小さくすることができる。
また実施例2によれば、ねじ軸48の雄ねじに螺合する歯車126及び128を備えたロータリエンコーダ式の変位センサ122及び124が設けられ、歯車126及び128は互いに異なるピッチ円及び歯数を有し、変位センサ122及び124は軸線42に沿うねじ軸48の直線変位に伴う歯車126及び128の回転数の相違によりねじ軸48の直線変位量及び方向を正確に検出するようになっているので、タイロッド18L及び18Rの伸縮量を正確に制御することができる。
図8は前輪の補助操舵装置として構成された本発明による車輌用操舵装置の実施例3の電動機及びその周囲を示す軸線に沿う断面図、図9は実施例3の回転‐直線運動変換装置及びその周囲を示す軸線に沿う断面図、図10は回転‐直線運動変換装置の横断面を示す拡大断面図である。尚図8乃至図10に於いて図1又は図7に示された部材と同一の部材にはこれらの図に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この実施例に於いては、操舵装置28Rは軸線42に沿って一体に連結された電動機ユニット140と回転−直線運動変換ユニット142とよりなっており、電動機ユニット142は回転−直線運動変換ユニット142に対し車体側に配設されている。電動機ユニット140は内部に電動機36を収容するハウジング144を有し、ハウジング144の内端には図には示されていないボルトにより車体側部材30の外端が連結されている。車体側部材30の外端にはパワーステアリング装置16のラックバー22に連結するためのゴムブッシュ装置100が固定されている。
電動機36は軸線40及び42に整合する軸線148に沿って延在する中実のロータシフト150を有し、ロータシャフト150の外周面に複数個の永久磁石58が固定されている。ロータシャフト150は互いに他に対し軸線148に沿って隔置されたボールベアリング54及び152により軸線148の周りに回転可能に支持されている。ボールベアリング54のインナレースはロータシャフト150の内端に螺合するナット154によりロータシャフト150に固定され、ボールベアリング54のアウタレースはハウジング144に支持されている。ボールベアリング152のインナレース及びアウタレースはロータシャフト150及びこれに遊嵌合する支持部材156により支持されている。
支持部材156は内端にて図には示されていないボルトによりハウジング144の外端に連結固定された回転−直線運動変換ユニット142のハウジング44とハウジング144との間に挾持されている。ロータシャフト150の外端にはねじ軸48に遊嵌合するナット160が螺合しており、ナット160と支持部材156との間にはローラ式のスラストベアリング162が配設されており、これによりロータシャフト150は軸線48に沿って移動することなく軸線148の周りに回転するようになっている。
ロータシャフト150の外端にはキー164及びこれを受けるキー溝によりねじ軸48の内端が連結されており、ねじ軸48は軸線42に沿って延在し、ロータシャフト150と一体的に軸線42の周りに回転する。車輪側部材34の内端部には軸線42に沿って延在するガイド穴34Aが設けられており、ガイド穴34Aにはねじ軸48の外端部が軸線42に沿って車輪側部材34に対し相対的に往復動可能に嵌合している。図9及び図10に示されている如く、車輪側部材34の軸線46は軸線42に整合しているが、ローラナット50の外周面及びハウジング44の軸線44Dは軸線42に対しこれに垂直な方向へ僅かな距離Loオフセットされており、ボールジョイント24のボールの中心Oを通り軸線42に平行な直線Lに整合している。
この実施例の回転−直線運動変換装置38のローラナット50はハウジング44により軸線42及び46に沿って往復動可能に支持されており、ローラナット50の両端近傍の外周面に設けられた環状溝にはローラナット50とハウジング44との間を封止するゴムシール166及び168が配設されている。各遊星ねじローラ76の両端をそれらの軸線の周りに回転可能に支持するキャリア78及び80はねじ軸48に遊嵌合しており、それぞれローラナット50の内面に取付けられたCリング170及び172によりローラナット50に固定されている。
ローラナット50の外端には車輪側部材34に遊嵌合するナット174が螺合しており、ナット174により保持され径方向に延在するキー176及びキー溝によりローラナット50の外端が車輪側部材34の内端に一体的に連結されており、これにより車輪側部材34はローラナット50と一体となってハウジング44に対し相対的に軸線42及び46に沿って往復動する。車輪側部材34には緩衝部材178が固定されており、ハウジング44の外端のアーム部44Eにはボルト180が固定されており、車輪側部材34の伸長方向の移動量が緩衝部材178及びボルト180によって制限されるようになっている。
更にローラナット50の外周面にはリセス182が設けられており、リセス182にはハウジング44に取り付けられた変位センサ184のプローブ186が嵌入している。プローブ186は軸線42に沿うローラナット50の往復動に伴って自らの枢軸線の周りに枢動し、変位センサ184はプローブ186の枢動角度及び枢動方向を検出することによりハウジング44に対するローラナット50の相対的直線変位量及び方向を検出する。
この実施例3の他の点は上述の実施例1と同様に構成されており、電動機36のロータシャフト150が軸線42の周りに回転すると、その回転がねじ軸48へ伝達され、ねじ軸48の回転が回転‐直線運動変換装置38により軸線42に沿うローラナット50及び遊星ねじローラ76の往復動に変換され、ローラナット50の往復動が車輪側部材34へ伝達され、これにより車輪側部材34が軸線42に沿ってハウジング44に対し相対的に往復動され、タイロッド18L及び18Rが伸縮される点を除き、この実施例3の操舵装置は実施例1及び2の操舵装置と同様に作動する。
従ってこの実施例3によれば、上述の実施例1及び2の場合と同様の作用効果を得ることができると共に、車輪側部材34の軸線46は軸線42に整合しているが、ローラナット50の外周面及びハウジング44の軸線44Aは軸線42に対しこれに垂直な方向へ僅かな距離Loオフセットされているので、キー及びキー溝の如き回転阻止手段を設けなくてもねじ軸48の回転に伴うローラナット50の回転を確実に防止することができる。
また図示の実施例3によれば、内部に電動機36を収容する電動機ユニット140と内部に回転‐直線運動変換装置38を収容する回転−直線運動変換ユニット142とが独立しているので、上述の実施例1及び2の場合に比して操舵装置28L及び28Rの分解保守を容易に行うことができる。
また図示の実施例3によれば、ローラナット50の外周面及びハウジング44の軸線44Aは軸線42に対しこれに垂直な方向へ僅かな距離Loオフセットされているが、車輪側部材34の軸線46は軸線42に整合しているので、例えばガイド穴34Aが軸線44Aに整合して設けられ、軸線46に対し偏心している場合に比して、車輪側部材34を容易に製造することができる。
尚図示の実施例1及び2によれば、遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38は軸線42に整合する構造であってよいので、上述の実施例3の如く回転−直線運動変換装置38自体が偏心した構造の場合に比して、回転−直線運動変換装置の構造を簡略化し、その組み立て容易に行うことができる。
また図示の実施例2及び3によれば、電動機36及び遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置38は互いに他に対し軸線42に沿って配設されているので、例えば上述の実施例1の如く電動機36が回転−直線運動変換装置38を囲繞するよう回転−直線運動変換装置38の周りに設けられた構造の場合に比して、操舵装置10の太さを低減し、他の部材との干渉の虞れを低減することができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の実施例1及び2に於いては、ねじ軸48及びローラナット50の軸線は互いに整合しているが、これらの実施例に於いても実施例3の場合と同様、ローラナット50の外周面の軸線がねじ軸48の軸線に対し垂直な方向へオフセットされ、ローラナット50に対するねじ軸48の回転が阻止されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、本発明による操舵装置28L及び28Rはそれぞれ前輪のタイロッド18L及び18Rに組み込まれ、前輪の補助操舵装置として機能するようになっているが、例えば本発明の操舵装置は車体と前輪の車輪支持部材との間に配設され、前輪をブレーキバイワイヤ式に操舵する操舵装置や前輪を自動操舵する自動操舵装置として機能するよう修正されてもよく、本発明の操舵装置は後輪の補助操舵装置として構成されてもよい。
特に本発明の操舵装置が後輪の補助操舵装置として構成される場合には、図1に於いて仮想線にて示されている如く、例えば左右の後輪10RL及び10RRの車輪支持部材11RL及び11RRと車体188とを接続するサスペンションアーム190RL及び190RRに本発明の操舵装置192RL及び192RRが組み込まれてよく、或いは本発明の操舵装置は左右の後輪10RL及び10RRの車輪支持部材と車体188とを接続する操舵リンクに組み込まれてよく、車輪支持部材11RL及び11RRを図には示されていないキングピン軸の周りに枢動させるよう構成されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、ねじ軸48又はローラナット50の差動条数は+1又は−1であるが、差動条数は任意に設定されてよく、またねじ軸48の雄ねじが左ねじであり、遊星ねじローラ76の雄ねじ及びローラナット50の雌ねじが右ねじであるが、ねじ軸48の雄ねじが右ねじに設定され、遊星ねじローラ76の雄ねじ及びローラナット50の雌ねじが左ねじに設定されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、ねじ軸48の雄ねじ等のピッチ角は回転‐直線運動変換装置38の正効率及び逆効率の何れも正であるよう設定されているが、軸線をオフセットさせなくても車体側部材30と車輪側部材34との間の相対的直線運動が回転‐直線運動変換装置38の逆変換によりローラナット50の回転運動に変換されることがないよう、正効率が正であり且つ逆効率が0以下、好ましくは負であるよう設定されてもよい。
更に上述の実施例1及び3に於いては、ねじ軸48が車体側に接続され且つローラナット50が車輪側に接続され、上述の実施例2に於いては、ねじ軸48が車輪側に接続され且つローラナット50が車体側に接続されているが、ねじ軸48及びローラナット50と車体側及び車輪側との接続関係は上記各実施例と逆に設定されてもよい。