JP4147450B2 - ナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法及びその織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
ナイロンマルチフィラメントで構成された高密度織物の製造方法およびその織物に関するものである。詳しくは織物用経糸サイジング、糊付け技術に関するものであり、更に詳しくは品質品位の優れた糊付糸を得るだけでなく、糊付糸の糊皮膜、抱合力も良好であり、尚且つ効率的で安定し、経済性に優れたサイジング或いは糊付けの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からナイロン、ポリエステルマルチフィラメントなどの合成繊維を使った高密度織物が製造、商品化され広く消費者に利用されている。該高密度織物は優れた透湿性、耐水圧、引裂き強力を有し、尚且つソフトで柔軟な風合いを有しており、取り分けスポーツ衣料分野への用途展開はめざましいものである。
高密度織物は比較的、単糸繊度の細いマルチフィラメントを使用し、且つカバーファクターと呼ばれる織物の経糸、緯糸の単位密度間のすきまの度合いを示す係数を2000から3000クラスの高密度に製織することによって得ることが出来る。しかしながら、優れた透湿性、耐水圧、引裂き強力を有した高密度織物を得ることは容易なことでなく、高密度織物の規格設計も含めて、甘撚撚糸、経糸糊付、整経、製織など各工程において高い技術力が要求される。例えば、規格設計においては経糸と緯糸のカバーファクターの比を5:5から6:4にする、経糸を無撚で製織する、緯糸の打ち込み本数を多くする、緯糸の繊度を経糸の繊度よりも太くする、製織においては経糸張力を上げて緯糸挿入する、閉口タイミングを早くする、織機レイアウトにおいて間丁を短くする、また織前を短くするなど多くのポイントを有する。
【0003】
しかしながら、ナイロンマルチフィラメントの高密度織物の製造方法において、規格設計および製織に関する技術的な知見は多いが、経糸のサイジング、糊付けに関する知見は少なく、また特許開示例も無い。そして、規格設計および製織技術よりもサイジング、糊付けの良し悪しによって製織性が左右されることを見出した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者の課題は、ナイロンマルチフィラメントで構成された高密度織物の製造方法に関するものであり、詳しくは織物を構成する経糸サイジング、糊付け技術に関するものであり、品質品位の優れた糊付糸を得るだけでなく、糊付糸の糊皮膜、抱合力も良好であり、尚且つ効率的で安定し、経済性に優れたサイジング、或いは糊付け、整経および製織が可能な製造方法を提供することにある。
【0005】
【発明が解決するための手段】
即ち本発明は下記の構成からなる。
【0006】
1.ナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法において、前記ナイロンがナイロン66又はナイロン6であり、織物を構成する経糸には無撚若しくは撚係数が5000以下の甘撚を施し、次いでポリビニルアルコール糊とアクリル系糊の配合比が80:20から100:0で混合し、更に平滑剤、柔軟剤、帯電防止剤、浸透剤から選択される何れか1つ以上を添加した、糊剤濃度が3%から12%、糊剤粘度が40mPas以下の糊剤を使用してサイジング或いは糊付けを行い、ヒラ組織に製織し、経糸と緯糸のカバーファクターの総和が2000以上であり、得られた織物がスポーツ衣料用途として800kPa以上の耐水圧を有することを特徴とするナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。なお、撚係数とはマルチフィラメント繊度(デシテックス)の平方根とマルチフィラメント撚数(T/M)との積で表され、カバーファクターとはマルチフィラメント繊度(デシテックス)の平方根と織物密度(本/in)との積で表される。
2.織物を構成する経糸のサイジング或いは糊付けによる付着率を15重量%以下とし、且つそれによって得られた糊付糸の含有水分率を5.5重量%以下とすることを特徴とする第1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。
3.レピア織機、エアージェットルーム、フライ織機、グリッパ織機から選択されるいずれかで製織することを特徴とする第1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。
4.アクリル酸エステル共重合体、又はアクリル酸エステル共重合体の誘導体を主成分とするアクリル系糊を使用してサイジング或いは糊付けを行うことを特徴とする第1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。
5.織物を構成する経糸と緯糸のカバーファクターの総和が2000から3000であり、経糸および緯糸のトータル繊度が30デシテックスから170デシテックス且つ単糸繊度が1デシテックス以下であることを特徴とする第1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。
6.第1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法により得られてなる経糸のサイジング或いは糊付けによって得られた糊付糸の抱合力試験機による抱合力回数が100回以上であることを特徴とするナイロンマルチフィラメント高密度織物。
【0007】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明のナイロンマルチフィラメントで構成された高密度織物は経糸と緯糸のカバーファクターの総和が2000から3000であり、経糸および緯糸のトータル繊度が30デシテックスから170デシテックス且つ単糸繊度が1デシテックス以下であることが必要である。カバーファクターとは単位密度間のすきまの程度を表す係数であってマルチフィラメントの繊度の平方根と密度の積で表され、カバーファクター値が高いと隙間が小さく、つまり緻密性が高いことを示す。優れた防水性を得るためには、耐水圧が800kPa、さらに好ましくは1000kPaが必要であり、これらを満足させるためにはカバーファクターが2000以上必要である。しかしながら、3000を越えると風合いが硬くなり好ましくない。またトータル繊度も緻密性を高めるためと風合いをソフトにするため比較的細いフィラメントが好ましく30デシテックス以上、170デシテックス以下が必要であり、さらに好ましくは40デシテックス以上、160デシテックス以下である。しかしながら、30デシテックス未満では織物の引裂き強力が弱いものとなり好ましくない。そして、単糸繊度についても緻密性を高めるために1デシテックス以下、更に好ましくは0.8デシテックス以下である。フィラメント数は特に言及されないが、少なくとも70本以上が好ましく、より好ましくは100以上である。なお、単糸繊度の細いナイロンマルチフィラメントの製造方法に関しては単成分紡糸や複合紡糸のいずれを採用してもかなわないが、製造コストや環境問題から直接紡糸法が好ましく採用される。
【0008】
本発明の高密度織物を構成する経糸は無撚若しくは撚係数が5000以下の甘撚を施していることが必要である。高密度織物は染色工場にて通常、カレンダー工程にて織物を押圧し、繊維を偏平化させることによって組織間の隙間を小さくする。従って、経糸の撚数が高くなると繊維の集束性が増し、カレンダー工程において繊維が偏平化しにくくなるため、撚数は低いことが好ましく、より好ましい範囲は無撚若しくは撚係数が4000以下である。緯糸の撚数は特に言及されないが、前述に記載のとおり無撚、若しくは撚係数が5000以下の甘撚糸が好ましい。そして、甘撚を施す際にはアップツイスターに分類されるイタリア撚糸機、ラージアップツイスター、ダウンツイスターに分類されるリング撚糸機、合撚機、またはダブルツイスターなどの一般の撚糸機を使用して製織準備され、取り分け汎用性に優れ、取り扱いが簡単な合撚機や生産性に優れたダブルツイスターが好ましく利用される。なお、無撚で製織する際にはナイロンマルチフィラメントに混繊交絡を施すことが好ましく、混繊交絡度については20ケ/M以上、100ケ/M以下が好ましく、より好ましくは40ケ/M以上、80ケ/M以下であり、この範囲内においては撚糸、製織工程での工程通過性になんら問題は起きることは無い。しかし、100ケ/Mを越えると風合い硬化と好ましくないムラ外観をもたらし、好ましくない。混繊交絡手段についてはエアー交絡ノズルが好ましく、インターレーサーノズルやタスランノズルなどが好適である。
【0009】
そして、無撚若しくは撚係数が5000以下の甘撚が施された経糸にはポリビニルアルコール糊とアクリル系糊の配合比が80:20から100:0で混合し同時に平滑剤、柔軟剤、帯電防止剤、浸透剤から選択される何れか1つ以上を添加させた、糊剤濃度が3%から12%、糊剤粘度が40mPas以下の糊剤を使用してサイジング或いは糊付けを行うことが必要である。本発明の経糸は比較的、単糸繊度の細いフィラメントを使用しているため、毛羽立ち易く、甘撚だけでは集束性が不十分であり、サイジング、糊付けを行うことによってフィラメントを保護するとともに抱合力を持たせ、毛羽伏せする必要が有る。また、甘撚糸についてはトルク、びり止めの役割もする効果がある。
ポリエステルマルチフィラメント、ナイロンマルチフィラメントなどのような合成繊維にはアクリル系糊、ビニル系糊、ビニル系共重合物糊、スチレン系共重合物糊、ポリエステル系糊などの合成糊剤が使われるが、中でもアクリル系糊、ビニル系糊が一般的に良く使われる。アクリル系糊の一般的性質として疎水性繊維に対する接着力が合成糊の中で最も高く、糊皮膜が柔軟で弾性があるなどの特性を有する。なお、アクリル系糊とはポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアマイドなどに代表されるものを指すが、なかでもエステル基を変化させることによって容易に種々の性質を持った糊剤を得ることが可能であり、接着性・吸湿性・フィルム強度・粘着性など糊剤に必要とされる性質に全体的にバランスよく優れたアクリル酸エステル共重合体、若しくはその誘導体がナイロンマルチフィラメントに好ましく使用される。一方、ビニル系としてポリビニルアルコールがナイロンマルチフィラメントに好適であり、ポリビニルアルコール糊の特徴はアクリル系糊よりも安価で糊皮膜の強伸度が他の合成糊剤に対して優れ、ナイロンマルチフィラメントに対して優れた接着性を示す割に糊抜き、精練性に問題がないことが挙げられる。しかしながら、アクリル系糊の配合比が高くなると糊付糸の糊皮膜が軟弱になり、また粘着性が高くなり経糸切れが多くなる、また後述するレピア織機で製織する際にガムアップと呼ばれるガム状の粘着物がレピア先端に付着し、緯糸把持ミスが起きて織機が停止し、織機稼働率が低くなるとともに生産性が低くなる、糊コストとしては割高など、多数の問題が発生する。従って、ナイロンマルチフィラメントにはポリビニルアルコール糊とアクリル系糊との混合糊若しくはポリビニルアルコール糊単独使用が好ましく、混合糊の場合、その配合比は80:20から100:0 の範囲が理想である。なお、アクリル系糊、ポリビニルアルコール糊は多くの種類のものが市販されているが、高密度織物は染色工場において比較的糊抜き精練がしにくい商品であるため、糊抜き、精練性に優れた糊剤を選択することも肝要である。
【0010】
ポリビニルアルコール糊とアクリル系糊の混合糊には同時に平滑剤、柔軟剤、帯電防止剤、浸透剤から選択される何れか1つ以上を添加させることが必要である。その理由としては混合糊だけでは糊皮膜表面の凹凸が大きくざらざらであるので、平滑剤を添加することによって糊皮膜表面の凹凸を小さくし、滑らかにするとともに糊落ちを少なくし、経糸の開口状態もよくなり経糸切れが減少する。柔軟剤は糊皮膜を柔軟にするだけでなく、生機風合いも柔らかくし、また本発明の高密度織物のように緯糸打ち込み密度の高い規格に対しては経糸屈曲をより容易にする効果がある。帯電防止剤は合成繊維、つまり本発明のナイロンマルチフィラメントに対しては必須である。混合糊、糊付糸の水分率、整経条件、整経環境、気象条件などによってナイロンマルチフィラメントの帯電量は変わってくるが、帯電防止剤がなければ整経、製織工程において静電気が発生しやすく、工程通過性を損なう恐れがある。そして、浸透剤は混合糊の表面張力を下げる効果があり、本発明の比較的細い繊度の多数存在したナイロンマルチフィラメントに対し効果的にフィラメント内部に浸透し、各々のフィラメント間を糊で被覆、固着させ抱合力を高めるだけでなく、糊落ちが少なくなるとともに経糸切れも減少する。そして、糊の調合については必要に応じて防腐剤、消泡剤などを少量添加しても構わない。なお、平滑剤、柔軟剤、帯電防止剤、浸透剤、防腐剤、消泡剤などの添加量はメーカによって効果が発揮される量が異なるためメーカの推奨量を添加させることが好ましいが、添加剤は過剰に添加すると糊皮膜を軟弱にする懸念があるので、添加剤のトータルを混合糊の純分に対して25%以下に留めることを考慮して調合すべきである。
【0011】
そして、糊剤濃度に関して、3%未満ではナイロンマルチフィラメントへの接着力が落ち、また水分を多く含んでいるため乾燥効率が低くなる。逆に12%を越えると、糊剤粘度が高くなりナイロンマルチフィラメント間への糊の浸透性が悪くなり抱合力を悪化させるだけでなく、フィラメント表面上に均一な糊皮膜が形成できなくなり、糊皮膜がでこぼこが故に整経、製織工程において糊落ちなどが発生し好ましくない。そして、高濃度の糊剤同様に糊剤粘度が40mPasを越えるとナイロンマルチフィラメント間への糊の浸透性が悪くなり抱合力が悪化するなどの問題を引き起こす。
【0012】
そして、前述の混合糊を使用して経糸のサイジング、糊付けによる付着率を15重量%以下とし、且つそれによって得られた糊付糸の含有水分率を5.5重量%以下とすることが望ましい。付着物のなかにはアクリル系糊、ポリビニルアルコール糊、平滑剤、柔軟剤、帯電防止剤、浸透剤などが含まれており、本発明のナイロンマルチフィラメント高密度織物の整経、製織工程において通過性を良好にするとともに生機品質品位を高めることができる。しかしながら、15重量%を越えると糊落ちが多くなるとともに経糸切れを誘発し、糊付糸の柔軟性が減少して生機風合いも硬くなり、また本発明の高密度織物のように緯糸打ち込み密度の高い規格に対して打ち込み不足の問題が発生する。更に混合糊のコスト、経済性にも良いことは無い。糊付糸の毛羽伏せ、抱合力、整経、製織工程通過性を考慮すると、糊付糸の好ましい付着量範囲は4重量%以上、10%重量以下である。そして、含有水分率は5.5重量%を越えると整経工程で巻かれたビーム内でフィラメント間が接着し、織機上で開口不良の問題を引き起こす恐れがある。但し、過乾燥になるとウジとよばれる生機欠点が発生する懸念があるので注意しながら乾燥させることが必要である。なお、サイジング、糊付けに関しては小ロット少量生産に優れた一本糊付け機、大量生産に優れたワーピングサイザーが使用される。サイジング、糊付けの個々の条件設定、具体的にはサイジング速度、乾燥温度、糊濃度、糊液温度、ローラ速度、糊液面高さなどに関してはサイジング、糊付けの機械、ナイロンマルチフィラメントの特性によって異なるものであるが、サイジング、糊付け工程の操業性、糊付糸の品質品位、後加工工程における工程通過性を考慮した条件設定が肝要である。
【0013】
そして、糊付糸には必要に応じてアフターワックスやアフターオイリング行い、平滑性をより高めることによって経糸切れ、経糸開口不良を防止することが可能となる。但し、付着量が多くなるとコストアップになるばかりでなく逆に平滑性が悪くなり、染色工場における糊落とし、精錬性が悪くなる。
【0014】
本発明のサイジング、糊付けによって得られた糊付糸の抱合力試験機による抱合力回数が100回以上である事が望ましい。抱合力試験機は糊付糸の抱合力を定量的に測定する、つまり切断に至るまでの摩擦回数を測定する試験機であり、数値が低いと糊付糸には抱合力が無くて糊剤がマルチフィラメント内部に浸透しておらず、つまりバラケ易くフィラメント間が固着していないことが予想される。従って、織機上における高密度織物のような過酷な筬打ち運動に対しては抱合力回数を高める必要があり、少なくとも100回以上は必要であり、好ましくは150回以上である。なお、抱合力試験機は特許No.601116号に記載されているものを用いた。
【0015】
本発明のナイロンマルチフィラメント高密度織物はレピア織機、エアージェットルーム、フライ織機、グリッパ織機から選択されるいずれかで製織することが望ましい。第2の本発明に記載されているようにポリビニルアルコール糊を使用しており、ポリビニルアルコール糊には耐水性がないためにウオータージェットルームには適していない。つまり、レピア織機、エアージェットルーム織機、フライ織機、グリッパ織機のようなドライ織機に適しており、なかでもレピア織機、エアージェットルームは好適である。
【0016】
本発明に用いられるナイロンとしては単量体相互の結合部が主としてアミド結合を有するものであり、なかでもナイロン66、ナイロン6などを用いることが出来、ナイロン66はアジピン酸とヘキサメチレンジアミンの縮重合によって得られ、ナイロン6はε-カプロラクタムの付加重合によって得ることが出来る。また本発明の目的を損なわない範囲で、つや消し剤、抗酸化剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、制電剤、難燃剤などの添加物を配合しても良い。
【0017】
そして、本発明に用いられるナイロンマルチフィラメントの断面形状は丸、三角、四角などの多角形、偏平、中空、星、歯車型などどんな形状でも構わず、本発明には限定されない。また、ナイロンマルチフィラメントは溶融紡糸されたものを延伸機で延伸したものを用いても良いし、スピンドロー方式による直接紡糸延伸したもの、更には仮撚機で仮撚した仮撚加工糸、混繊機で収縮率の異なるマルチフィラメントを混繊した異収縮混繊糸、タスラン加工糸などナイロンマルチフィラメントに糸加工を施したものでも構わない。また、ナイロンマルチフィラメントの乾熱収縮率は衣料用を目的にしたものであれば40%以下、更に好ましくは20%以下であり、通常15%以下のナイロンマルチフィラメントが使用される。
【0018】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に発明するが、勿論本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、本発明で使用した付着率、含有水分率、粘度、抱合力回数、耐水圧、引裂き強力は下記の方法によって測定した。
【0019】
[付着率] 適当な枠周のラップリールを使用し、サイジング或いは糊付けを行う前のナイロンマルチフィラメントを100mカセ取りする。同様にして、サイジング或いは糊付けを行った後の糊付糸を100mカセ取りする。両者の重量を天秤を用いて測定し、下記式を用いて付着量を算出した。なお、カセ取りは三回行い、その平均値を下記式に代入した。
付着率(重量%)=(糊付糸−サイジング、糊付け前の繊維)×100/サイジング、糊付け前の繊維
[含有水分率] デシケータ内で試料を絶乾させ、絶乾前後の試料の重さを下記式に代入し求めた。
含有水分率(重量%)=(絶乾前−絶乾後)×100/絶乾前
[粘度]糊剤温度が40℃において、B型粘度計を用いて測定した。
[抱合力試験機による抱合力回数]特許NO.601116に記載の蛭田理研(株)製蛭田式自動記録経糸抱合力試験機を用い、フィラメント糸およびスパン双糸試験の場合に準じて試料を掛け、摩擦板の回転数を80 rpm、荷重を20gとし試料が切断するまでの抱合力回数を測定した。なお、回数は4回の平均値とした。
[耐水圧] JIS L−1092に記載される耐水度試験装置(低水圧用)を用いて測定した。
[引裂き強力] JIS L−1096に記載されるペンジュラム法に準じて測定した。
【0020】
【実施例】
(実施例1)ナイロンセミダルレジンを使用し、溶融紡糸によって得られた未延伸糸を延伸機で延伸し78デシテックス96フィラメント丸断面の延伸糸を得た。次いで、経糸用として該延伸糸に村田機械(株)製309型ダブルツイスターを用いてS撚り方向に撚数200T/Mで撚糸を行った。次いで、(株)ヤマダ製の一本糊付機YS−6型にて速度200M/分、乾燥温度70℃、糊液温度40℃、付着量を5.5重量%に設定し糊付けを行った。なお、糊は日本合成化学工業(株)製のポリビニルアルコール糊としてゴーセノールGL−05と、互応化学工業(株)製のアクリル酸エステル共重合体アンモニウム塩タイプのプラスサイズJ−60を使用し、各々の混合比率を9:1に調整した濃度が6%、粘度が5mPasの混合糊を使用した。また混合糊には平滑剤、柔軟剤、浸透剤として互応化学工業(株)製のサイテックスK−380(有効成分25%)、サイテックスT−190(同35%)、サイテックス24(同40%)を添加し、帯電防止剤として大日本インキ科学工業(株)製のAS−22(同35%)を用い、夫々2%、2%、0.2%、0.2%添加した。また、糊付糸の抱合力試験機による抱合力回数は350回であり、含有水分率は4.4重量%であった。次いで得られた糊付糸を(有)スズキワーパー製NAS SUPER−130W型を用いて筬入巾130cm、経糸本数7412本で整経を行った。差し入れの後、(株)石川製作所製レピア織機2001Sタイプにビームを仕掛けた後、緯糸として先程の78デシテックス96フィラメント丸断面の無撚の延伸糸を打ち込みヒラ組織にて製織した。製織性は非常に良好であり、毛羽発生による経糸切れは問題にならない程度であった。また整経工程においても静電気発生、糊落ちなど特に大きな問題は無かった。そして、得られた生機品質は高いものであり、生機密度は(142本/in,92本/in)であった。該生機を通常のリラックス精練、染色、仕上げ工程に通し、染色加工布を得た。該染色加工布の耐水圧は14.4MPa、引裂き強力は経糸方向1920cN、緯糸方向1045cN であり、スポーツ用途に好適なナイロンマルチフィラメント高密度織物であった。結果を表1に示す。
【0021】
(比較例1)
実施例1において、78 デシテックス96 フィラメント丸断面の延伸糸にS撚り方向に撚数300T/Mで撚糸を行った後、混合糊の比率が0:10つまり互応化学工業(株)製のアクリル酸エステル共重合体アンモニウム塩タイプのプラスサイズJ−60単独で使用し、平滑剤、柔軟剤、浸透剤、帯電防止剤を実施例1と同様に添加した糊剤濃度8%、糊剤粘度2mPasの糊剤を使用して糊付けを行った以外は全く同様にして染色加工布を得た。該染色加工布はスポーツ用途に好適な ナイロンマルチフィラメント高密度織物であったが、製織性に多数の問題が起き、特にアクリル系糊の落ち糊であるガム状のものがレピア先端に付着して緯糸把持ミスが多く発生し、織機の稼動率としては低かった。結果を表1に示す。
【0022】
(比較例2)
実施例1において、糊剤濃度が14%、付着量を20%にした以外は全く同様にして染色加工布を得た。該染色加工布はスポーツ用途に好適なナイロンマルチフィラメント高密度織物であったが、糊付け工程においては糊の消費量が高く、コスト高であり、製織工程においては筬、ヘルド、織機上の落ち糊が観察され、また落ち糊による経糸切れが発生し、工程通過性、経済性にも良くはなかった。結果を表1に示す。
【0023】
(比較例3)
実施例1において、糊は日本合成化学工業(株)製のポリビニルアルコール糊としてゴーセノールGL−05と、互応化学工業(株)製のアクリル酸エステル共重合体アンモニウム塩タイプのプラスサイズJ−60を使用し、各々の混合比率を5:5に調整した濃度が8%、粘度が4mPasの混合糊を使用し、ウオータジェットルームで製織した以外は全く同様にして染色加工布を得た。該染色加工布はスポーツ用途に好適なナイロンマルチフィラメント高密度織物であったが、製織工程においては筬、ヘルド、織機上のポリビニルアルコール糊の落ち糊が多く観察され、毛羽発生による経糸切れが多く、製織性は全く良くは無かった。結果を表1に示す。
【0024】
(比較例4)
実施例1において、経糸本数6178本で整経を行い、生機密度を(122本/in,90本/in)で製織した以外は全く同様にして染色加工布を得た。整経、製織における工程通過性にはなんら問題は起きなかったが、該染色加工布の耐水圧は5.1kPaであり高密度織物とは呼べないものであった。結果を表2に示す。
【0025】
(比較例5)
実施例1において、混合糊には平滑剤、柔軟剤、帯電防止剤、浸透剤は全く添加しなかった以外は全く同様にして染色加工布を得た。該染色加工布の性能は良好なものであったが、整経、製織の工程通過性は実施例1と比較すると若干、経糸切れ、糊落ち、静電気の発生が認められた。結果を表2に示す。
【0026】
(実施例2)
実施例1において、78デシテックス96フィラメント丸断面の延伸糸に仮撚りを行った仮撚加工糸に、経糸用として(株)石川製作所製合撚機を用いてZ撚り方向に撚数300T/Mで撚糸を行った。そして緯糸としては78デシテックス96フィラメント丸断面の延伸糸に仮撚りしたものをそのまま用いた以外は全く同様にして染色加工布を得た。糊付け、整経、製織の各工程の通過性は良好なものであり、該染色加工布の耐水圧、引裂き強力の性能に関しても実施例1と同等レベルを有し申し分無い出来映えであった。結果を表2に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】
本発明によって品質品位の優れた糊付糸を得るだけでなく、糊付糸の糊皮膜、抱合力も良好であり、尚且つ効率的で安定し、経済性に優れたサイジング或いは糊付け、整経および製織が可能となった。
Claims (6)
- ナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法において、前記ナイロンがナイロン66又はナイロン6であり、織物を構成する経糸には無撚若しくは撚係数が5000以下の甘撚を施し、次いでポリビニルアルコール糊とアクリル系糊の配合比が80:20から100:0で混合し、更に平滑剤、柔軟剤、帯電防止剤、浸透剤から選択される何れか1つ以上を添加した、糊剤濃度が3%から12%、糊剤粘度が40mPas以下の糊剤を使用してサイジング或いは糊付けを行い、ヒラ組織に製織し、経糸と緯糸のカバーファクターの総和が2000以上であり、得られた織物がスポーツ衣料用途として800kPa以上の耐水圧を有することを特徴とするナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。なお、撚係数とはマルチフィラメント繊度(デシテックス)の平方根とマルチフィラメント撚数(T/M)との積で表され、カバーファクターとはマルチフィラメント繊度(デシテックス)の平方根と織物密度(本/in)との積で表される。
- 織物を構成する経糸のサイジング或いは糊付けによる付着率を15重量%以下とし、且つそれによって得られた糊付糸の含有水分率を5.5重量%以下とすることを特徴とする請求項1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。
- レピア織機、エアージェットルーム、フライ織機、グリッパ織機から選択されるいずれかで製織することを特徴とする請求項1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。
- アクリル酸エステル共重合体、又はアクリル酸エステル共重合体の誘導体を主成分とするアクリル系糊を使用してサイジング或いは糊付けを行うことを特徴とする請求項1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。
- 織物を構成する経糸と緯糸のカバーファクターの総和が2000から3000であり、経糸および緯糸のトータル繊度が30デシテックスから170デシテックス且つ単糸繊度が1デシテックス以下であることを特徴とする請求項1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法。
- 請求項1記載のナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法により得られてなる経糸のサイジング或いは糊付けによって得られた糊付糸の抱合力試験機による抱合力回数が100回以上であることを特徴とするナイロンマルチフィラメント高密度織物。
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JP2001376005A JP4147450B2 (ja) | 2001-12-10 | 2001-12-10 | ナイロンマルチフィラメント高密度織物の製造方法及びその織物 |
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