JP4144940B2 - 電波吸収体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶や航空機等に用いられる電波吸収体に関し、さらに詳しくは、Xバンドを含むマイクロ波帯とミリ波帯で良好な電波吸収性能を発揮することを可能にした電波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電波吸収体は船舶や航空機などに広く使用されている。この電波吸収体としては、大別して減衰型の吸収体と整合型の吸収体とがある。前者は電波吸収材の内部を透過中に電波のエネルギーが減衰していくタイプであり、後者は電波吸収材の後面に電波を反射するための反射板を設け、入射した電波の吸収材表面での反射量と反射板からの反射量とをコントロールして両者を相殺することにより、電波の反射波を実質的に減少させるようにしたものである。
【0003】
従来、後者の整合型電波吸収体で単層構造を有するものとして、特公平3−35840号公報に開示されるように、電気比抵抗が100 〜105 Ωcmの炭化珪素繊維を電波吸収材に使用したものが知られている。但し、この電波吸収体はミリ波帯で有効であるとされている。
また、レーダの周波数帯であるXバンドで有効な整合型電波吸収体としては、反射層の表面に、電気比抵抗が例えば104 〜106 Ωcmと大きい炭化珪素繊維の複合材からなる表層(整合層)と、電気比抵抗が例えば5Ωcm以下と小さい炭化珪素繊維の複合材からなる吸収層とを積層した二層系のものが知られている。
【0004】
しかしながら、一般にマイクロ波帯での電波吸収性能とミリ波帯での電波吸収性能とを両立可能な電波吸収体を得ることは極めて困難であった。なお、吸収層を多層化することにより電波吸収性能を改善することが試みられているが、多層化すると製造コストが大幅に増大するという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、マイクロ波帯とミリ波帯で良好な電波吸収性能を発揮することを可能にした電波吸収体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の電波吸収体は、電波を反射するための反射層と、電気比抵抗が0.5〜25Ωcmの炭化珪素繊維で補強された繊維強化プラスチックからなる第1吸収層と、銅張ポリエチレンテレフタレートフィルムの銅張部分を選択的にエッチングして得られる導体パッチパターンであってミリ波を選択的に反射する導体パッチパターンからなる電波選択層と、電気比抵抗が500〜2000Ωcmの炭化珪素繊維で補強された繊維強化プラスチックからなる第2吸収層とを有し、前記第1吸収層を前記反射層上に積層し、前記第2吸収層を前記第1吸収層上に積層し、前記電波選択層を前記第1吸収層と前記第2吸収層との間に介在させたことを特徴とするものである。
【0007】
このように吸収層の層間に導体パッチパターンに基づいてミリ波を選択的に反射する電波選択層を介在させることにより、反射層によって反射されるマイクロ波を第1吸収層と第2吸収層からなる積層体で吸収するようにし、電波選択層によって反射されるミリ波を第2吸収層だけで吸収するので、マイクロ波帯での電波吸収性能とミリ波帯での電波吸収性能とを両立することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる電波吸収体を例示するものである。図において、電波吸収体は電波を反射するための反射層1と、該反射層1の外側に設けられた吸収層2(第1吸収層)と、該吸収層2の外側に設けられた吸収層3(第2吸収層)と、これら吸収層2と吸収層3との間に挿入された電波選択層4とを備えている。
【0009】
反射層1は、炭素繊維又は金網に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含浸させて成形された樹脂板、金属板、或いは金属粉、金属繊維等を含有させた樹脂板等から適宜選択して構成されている。炭素繊維は、短繊維をランダムに分散させて使用してもよいし、また長繊維を一方向に引き揃え、或いは格子状に編組して使用してもよい。金網、金属板及び金属粉に使用する金属は、アルミニウム、鉄、鋼、黄銅等を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0010】
吸収層2(第1吸収層)は、電波吸収材料として電気比抵抗が0.5〜25Ωcm、より好ましくは1.5〜10Ωcmの炭化珪素繊維を使用し、この炭化珪素繊維に樹脂を含浸して硬化させた繊維強化プラスチックにより構成されている。吸収層2を構成する炭化珪素繊維の電気比抵抗が上記範囲から外れると、マイクロ波帯での電波吸収性能が不十分になる。吸収層2の厚さは0.5〜5.0mmにすることが好ましい。
【0011】
一方、吸収層3(第2吸収層)は、電波吸収材料として電気比抵抗が500〜2000Ωcm、より好ましくは800〜1500Ωcmの炭化珪素繊維を使用し、この炭化珪素繊維に樹脂を含浸して硬化させた繊維強化プラスチックにより構成されている。吸収層3を構成する炭化珪素繊維の電気比抵抗が上記範囲から外れると、ミリ波帯での電波吸収性能が不十分になる。吸収層3の厚さは0.5〜3.0mmにすることが好ましい。
【0012】
吸収層2,3において、炭化珪素繊維の配列構造は、織布状、マット状、フェルト状、或いは一方向に引き揃えた繊維束等にすることができる。また、上記配列を適宜組み合わせて積層した構造であってもよい。繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、或いはナイロン等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0013】
電波選択層4は導体パッチパターンから構成されており、その導体パッチパターンに基づいてミリ波を選択的に反射するようになっている。この導体パッチパターンは、図2〜図5に示すように、円形、四角形、十字型、トライポール型等のパッチパターン5を導体で一定間隔に描いたものである。円形の場合、直径を1.5〜3.0mmとし、間隔を0.3〜5.0mmにするとよい。四角形の場合は、一辺の長さを1.0〜3.0mm、間隔を0.3〜5.0mmにするとよい。十字型類の場合は、一辺の長さを1.5〜5.0mm、間隔を0.3〜7.0mmにするとよい。トライポール型の場合は、一辺の長さを1.0〜2.0mm、間隔を0.3〜5.0mmにするとよい。
【0014】
上記導体パッチパターンは、銅張ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの銅張部分を選択的にエッチングして得られる。
【0015】
上述のように吸収層2,3の層間に導体パッチパターンに基づいてミリ波を選択的に反射する電波選択層4を介在させた場合、Xバンドを含むマイクロ波は電波選択層4を透過して反射層1で反射され、吸収層2,3の積層体によって吸収される。一方、ミリ波は電波選択層4で反射され、吸収層3によって吸収される。
【0016】
図6は電波選択層を持たない場合における第1吸収層と第2吸収層からなる積層体の電波吸収特性を示すものである。図6に示すように、第1吸収層と第2吸収層からなる積層体はマイクロ波帯Aに顕著な吸収ピークを示すものの、ミリ波帯Bでは吸収ピークが分散している。一方、図7は第2吸収層の電波吸収特性を示すものである。図7に示すように、第2吸収層はミリ波帯Bに顕著な吸収ピークを示している。
【0017】
そこで、本発明ではマイクロ波帯Aに顕著な吸収ピークを示す第1吸収層と第2吸収層からなる積層体の電波吸収特性と、ミリ波帯Bに顕著な吸収ピークを示す第2吸収層の電波吸収特性とを同時に生かすために、これら吸収層の層間に図8に示す反射特性を有する電波選択層を設けたのである。即ち、電波選択層はミリ波帯Bの電波をほぼ全反射するため、全体としての電波吸収特性は図9に示すものとなり、マイクロ波帯Aでの電波吸収性能とミリ波帯Bでの電波吸収性能とを両立することができる。
【0018】
【実施例】
アルミニウム板からなる反射層の表面に、第1吸収層、電波選択層、第2吸収層を順次積層して電波吸収体を製作した。第1吸収層は、エポキシ樹脂をマトリックスとし、4Ωcmの電気比抵抗を有する炭化珪素繊維で補強した繊維強化プラスチックを1.6mmの厚さにプレス成形したものである。第2吸収層は、エポキシ樹脂をマトリックスとし、1000Ωcmの電気比抵抗を有する炭化珪素繊維で補強した繊維強化プラスチックを1.65mmの厚さにプレス成形したものである。電波選択層は、厚さ25μmのPETフィルムに厚さ18μmの電解銅箔を形成した銅張PETフィルムを使用し、このフィルムの銅張部分を選択的にエッチングすることにより、直径2.3mmの円形パッチを0.7mmの間隔でパターン形成したものである。この電波選択層はWバンド(75〜110GHz)で全反射特性を示し、マイクロ波帯では透過体であることが実験により確認されている。
【0019】
上述の電波吸収体に対して電波を入射し、その周波数を変化させながら電波吸収性能を調べた。その結果、本発明の電波吸収体は10GHz帯で36dB以上の吸収性能を有していると共に、95GHz帯でも20dB以上の吸収性能を有していることが判った。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、電波を反射するための反射層と、電気比抵抗が0.5〜25Ωcmの炭化珪素繊維で補強された繊維強化プラスチックからなる第1吸収層と、銅張ポリエチレンテレフタレートフィルムの銅張部分を選択的にエッチングして得られる導体パッチパターンであってミリ波を選択的に反射する導体パッチパターンからなる電波選択層と、電気比抵抗が500〜2000Ωcmの炭化珪素繊維で補強された繊維強化プラスチックからなる第2吸収層とを有し、第1吸収層を反射層上に積層し、第2吸収層を第1吸収層上に積層し、電波選択層を第1吸収層と第2吸収層との間に介在させたことにより、反射層によって反射されるマイクロ波を第1吸収層と第2吸収層との積層体で吸収するようにし、電波選択層によって反射されるミリ波を第2吸収層だけで吸収することが可能になるので、マイクロ波帯とミリ波帯で良好な電波吸収性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる電波吸収体を示す断面図である。
【図2】円形の導体パッチパターンを示す平面図である。
【図3】四角形の導体パッチパターンを示す平面図である。
【図4】十字型の導体パッチパターンを示す平面図である。
【図5】トライポール型の導体パッチパターンを示す平面図である。
【図6】電波選択層を持たない場合における第1吸収層と第2吸収層からなる積層体の電波吸収特性を示す図である。
【図7】第2吸収層の電波吸収特性を示す図である。
【図8】電波選択層の反射特性を示す図である。
【図9】本発明の実施形態からなる電波吸収体の電波吸収特性を示す図である。
【符号の説明】
1 反射層
2 吸収層(第1吸収層)
3 吸収層(第2吸収層)
4 電波選択層
5 パッチパターン
Claims (5)
- 電波を反射するための反射層と、電気比抵抗が0.5〜25Ωcmの炭化珪素繊維で補強された繊維強化プラスチックからなる第1吸収層と、銅張ポリエチレンテレフタレートフィルムの銅張部分を選択的にエッチングして得られる導体パッチパターンであってミリ波を選択的に反射する導体パッチパターンからなる電波選択層と、電気比抵抗が500〜2000Ωcmの炭化珪素繊維で補強された繊維強化プラスチックからなる第2吸収層とを有し、前記第1吸収層を前記反射層上に積層し、前記第2吸収層を前記第1吸収層上に積層し、前記電波選択層を前記第1吸収層と前記第2吸収層との間に介在させた電波吸収体。
- 前記導体パッチパターンは、円形をなす複数のパッチパターンを導体で一定間隔に描いたものであり、該円形をなすパッチパターンの直径が1.5〜3.0mmであり、間隔が0.3〜5.0mmである請求項1に記載の電波吸収体。
- 前記導体パッチパターンは、四角形をなす複数のパッチパターンを導体で一定間隔に描いたものであり、該四角形をなすパッチパターンの一辺の長さが1.0〜3.0mmであり、間隔が0.3〜5.0mmである請求項1に記載の電波吸収体。
- 前記導体パッチパターンは、十字型をなす複数のパッチパターンを導体で一定間隔に描いたものであり、該十字型をなすパッチパターンの一辺の長さが1.5〜5.0mmであり、間隔が0.3〜7.0mmである請求項1に記載の電波吸収体。
- 前記導体パッチパターンは、トライポール型をなす複数のパッチパターンを導体で一定間隔に描いたものであり、該トライポール型をなすパッチパターンの一辺の長さが1.0〜2.0mmであり、間隔が0.3〜5.0mmである請求項1に記載の電波吸収体。
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