JP4143399B2 - 全反射蛍光x線分析装置および全反射蛍光x線を用いた分析方法 - Google Patents

全反射蛍光x線分析装置および全反射蛍光x線を用いた分析方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、全反射蛍光X線分析装置および全反射蛍光X線を用いた分析方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特許第3093329号公報
【非特許文献1】
社団法人日本分析機器工業会「分析機器の手引き(第10版)」:平成14年9月4日発行
従来、例えば、図5に示す非特許文献1に記載の全反射蛍光X線分析装置10は、測定対象試料に照射するX線を測定対象試料の表面(試料表面)に対して超低角度で入射することにより、特に試料表面における測定感度を高める装置として知られている。
【0003】
図5において、従来の全反射蛍光X線分析装置10は平板状のシリコンウェハなどからなる濃縮プレート11上に凝縮させた汚染物質などの試料S(以下、単に試料Sともいう)に照射するX線を発生するX線管12と、このX線管12から出射されるX線X0 から特定波長(エネルギ)のX線X1 だけを選択的に反射して試料Sの測定部位Ap(図7を用いて後述する)に導くモノクロメータ13と、測定部位Apに位置する試料Sから励起した蛍光X線X2 の強度を測定するX線検出器14とからなる。
【0004】
すなわち、X線は通常は物質を透過(または侵入)するものであるが、図5に示すように、濃縮プレート11の表面11aにX線X1 をある一定の角度以下の角度αで入射すると、X線X1 は試料表面11aから50〜100Å程度の深さまで侵入して、表面11a部分で反射(全反射)し、濃縮プレート11の内部への透過をほとんど無くすことが可能となる。この全反射する入射角度は臨界角度(θc)と呼ばれており、主にX線X1 の波長と濃縮プレート11の密度によって以下の式(1)に示すように決まる。
θc=0.9396√ρ×λ … 式(1)
但し、ρは濃縮プレート11の密度〔g/cm3 〕、λはX線X1 の波長〔nm〕であり、臨界角度θcは度(degree)で表わされる値である。
【0005】
すなわち、図5のように構成された全反射蛍光X線分析装置10は、濃縮プレート11によって全反射したX線X3 を検出しないことにより、バックグランドを小さくできると共に、試料の元素は効率よく励起されてP/B比の良い測定を行うことができる。また、濃縮プレート11の表面11aにおける試料Sの元素からの蛍光X線の強度およびバックグランドとなる試料内部から散乱するX線の強度の比率は、濃縮プレート11の表面11aに対するX線X1 の入射角度αに依存して変化する。
【0006】
図6は図5に示す濃縮プレート11としてシリコンウェハを用いた場合におけるX線X1 の入射角度αと、濃縮プレート11からのX線強度Ibおよび試料Sからの蛍光X線強度Ipとの関係を示す図である。図6が示すように、X線X1 の入射角αは0.1°程度の超低角度であれば、濃縮プレート11からのX強度Ibを抑えながら、試料Sからの蛍光X線の強度Ipを強くすることができる。また、入射角αが0.18°のときに試料Sからの蛍光X線Ipを強くすることが可能である。
【0007】
図7は濃縮プレート11としてのシリコンウェハの表面11aに試料Sを溶質として有する溶液を凝縮する方法を説明する図である。図7において、15は試料Sを溶かしてなる溶液、16は溶液15を収容する容器、17は容器16の中から溶液15を取り出して前記濃縮プレート11の上に滴下するためのスポイドである。
【0008】
図7(A)に示すように、濃縮プレート11の上に溶液15を滴下すると、幾らかの接触角βpを形成して、溶液15が濃縮プレート11の上に幾らかの面積をもって広がる。また、溶液15は蒸留水などの溶媒中に、試料Sを溶解させたものである。したがって、図7(B)に示すように、時間が経過して溶媒が蒸発すると、前記濃縮プレート11上の広がった部分(凝縮部位Ap)において溶質(すなわち試料S)だけが残渣として残り、幾らかの径を有する薄い層のように凝縮する。この凝縮部位Apの面積は前記濃縮プレート11上に広がった溶液15と濃縮プレート11との接触面積と同じであり、凝縮した試料Sの厚みdは溶液15に含まれる試料Sの量によって決まる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般的に全反射蛍光X線分析装置10を用いて溶液15の分析を行なう場合には、溶液15に含まれる試料Sは極めて少量であるから、凝縮した試料Sの厚みdは極めて薄くならざるをえなかった。
【0010】
また、濃縮プレート11を構成するシリコンに対する溶液15の前記接触角βpが大きくないので、溶液15の滴下によって形成される試料Sは、例えば約5〜10mm程度と大きくなるだけでなく、滴下した溶液15が濃縮プレート11の上で広がる速度と、蒸発する速度の釣り合いや、滴下時の溶液15の速度や揺れ、さらには、接触角βpの僅かな違いなどによって凝縮部位Apの面積が大きく変わり、凝縮部位Apの面積を適正に管理することが難しかった。
【0011】
図8は、凝縮された試料Sに対してX線X1 を照射して、蛍光X線を検出する部分の構成を説明する図である。図8(A)は斜視図、図8(B)は縦断面図である。図8に示すように、濃縮プレート11上の比較的広い凝縮部位A1 に凝縮した試料Sの全体に対して例えば0.1°(図には図示できる程度の大きな角度としている)の入射角αでX線X1 を照射するとき、濃縮プレート11上のX線X1 を照射する測定部位A2 は平面視楕円形であり、かつ、内部に凝縮部位A1 を含む必要があった。
【0012】
このため、凝縮部位A1 の形や面積が安定しない場合に、X線X1 を照射している測定部位A2 は十分に大きく設定せざるをえず、単位面積当たりに照射できるX線X1 の強度が弱くならざるを得なかった。
【0013】
ところが、前記測定部位A2 に照射するX線X1 は、図8(B)に示すように、濃縮プレート11の表面から例えば50〜100Åの深さ位置までの領域Bに侵入し、領域Bに位置する濃縮プレート11からも幾らかの蛍光X線が発生する。ここで、試料Sの厚さdが薄く(例えば50Å以下)なればなるほど、試料SがX線X1 に励起されて発生する蛍光X線の強度が、その他の領域Bに位置する濃縮プレート11によって発生する蛍光X線の強度に比べて小さくなり、それだけ、測定感度が低くなっていた。
【0014】
つまり、現在市販されている全反射蛍光X線分析装置10を用いた分析方法では、試料Sに照射するX線X1 のビームが集光されておらず、また、試料S(溶液を乾燥させた残渣)も濃縮プレート11上に滴下するのみであり、乾燥後は残渣径(凝縮部位A1 の直径)が約5〜10mm程度と大きく、試料Sが発生する蛍光X線X2 の強度が弱くなるという問題があった。ゆえに、現状では試料Sの種類にもよるが、試料Sが例えば鉄のときに、全反射蛍光X線分析装置10を用いたとしても、検出限界は1cm2 当たり9.3×10-14 g程度であった。
【0015】
そこで、溶液15を濃縮プレート11上に滴下する前の段階で、容器16内の溶液15に熱を加えることでその溶媒を気化し、溶質の濃度を上げてから濃縮プレート11上の上に滴下することも考えられるが、これには多大な手間がかかるだけでなく、加熱によって溶媒だけでなく、試料Sの溶質もその種類によっては気化してしまう可能性があるので、好ましくない。
【0016】
本発明は、上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的とするところは、溶液をピンポイントの微小領域に凝縮させると共に、凝縮した測定対象試料を用いて超微量の測定対象試料を高感度で分析できる全反射蛍光X線分析装置および全反射蛍光X線を用いた分析方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の全反射蛍光X線分析装置は、表面に撥水性を有する板体上の微小領域に凝縮された測定対象試料に対して照射するX線を発生するX線管と、このX線を前記測定対象試料が凝縮された微小領域に合わせて絞られた微小な測定部位に集光すると共に板体に対して臨界角度以下の入射角で照射する集光手段と、X線を照射した測定対象試料から発生する蛍光X線の強度を検出するX線検出器を備えた全反射蛍光X線分析装置であって、
前記板体がシリコンウェハであり、このシリコンウェハ表面に、フッ素樹脂の薄膜を介してジメチルポリシロキサンによる分子被覆である撥水性を有する被膜を形成してあることを特徴としている。(請求項1)
【0018】
前記表面に撥水性を有する板体の上に滴下された溶液は、板体の撥水性によって大きな接触角が形成されるので、この溶液には多少の外力が加わったとしても、常にほゞ球の形状となり、溶液と板体との接触面は極めて小さな微小領域となる。そして、溶液に含まれる溶媒が気化すると、その溶質だけが微小領域内にピンポイント的に凝縮乾燥され、この濃縮された溶質を測定対象試料とすることができる。なお、この凝縮の手順は前記特許文献1に詳述している通りである。
【0019】
次いで、凝縮された測定対象試料に照射するX線はX線集光手段、例えば集光チューブによって前記微小領域に合わせて集光するので、集光されたX線の単位面積当たりの強度は極めて強くなる。前記X線の集光を照射するX線の全反射が可能な集光チューブを用いて行なうことにより、X線の減衰を避けてX線の照射密度を効率的に上げることができる。つまり、高密度の強力なX線を測定対象試料(残渣)が凝縮された微小領域に合わせて集中的に照射することで、測定対象試料をより強力に励起して、蛍光X線強度が向上し、それだけ高感度分析が可能となる。なお、X線の集光に用いられるX線集光手段、例えば集光チューブは単一でも複数でもよい。
【0020】
前記板体がシリコンウェハであり、基本的にシリコンウェハは極めて純度が高いので、シリコンウェハから生じたX線は常に安定したバックグランドになり、この影響を容易に取り除くことができる。また、シリコンは軽元素であり、測定対象試料として重元素の分析を行なう場合に、シリコンは測定対象試料から生じた蛍光X線に重なるような蛍光X線を発生しにくいので、バックグランドをほゞ無くすことができる。なお、図6に示すように、測定対象試料に対するX線の入射角が0.1°程度以下である場合には、バックグランドとしてのシリコンウェハからの生じるX線を低く抑えることができる。
【0021】
前記板体が、表面に撥水性を有する被膜を形成する撥水処理を施してある場合には、板体自体には撥水性がなくても、その表面に撥水性を得させることができるので、板体の材質を選ばずに測定対象試料を凝縮できる。とりわけ、薄膜の厚さが、100Å以上あるときには、X線は薄膜によって全て反射されるので、板体の材質をX線の吸光特性や蛍光特性などに影響されることなく定めることができる。
【0022】
前記撥水性を有する被膜としては、撥水処理として表面にコーティング処理されたフッ素樹脂の薄膜が考えられる。また、シリコーン被膜を形成することも考えられる。加えて、既に前記フッ素樹脂の薄膜によるコーティングを施して板体の表面に、さらに撥水性を有する被膜を形成する撥水処理を施した場合には、より強力な撥水性を得ることができ、より効率的な凝縮を行うことができる。
【0023】
本発明の全反射蛍光X線を用いた分析方法は、表面に撥水性を有する板体の上に測定対象溶液を滴下し、溶媒を蒸発させることにより溶液を微小領域にピンポイント的に凝縮させて、この凝縮によって抽出した溶質を測定対象試料とし、この測定対象試料の位置に合わせて微小な測定部位に集光したX線を板体に対して臨界角度以下の入射角で照射することで、測定対象試料から発生する蛍光X線の強度を測定して、この測定対象試料を構成する元素の種類および含有量を測定するにあたり、
前記板体がシリコンウェハであり、このシリコンウェハ表面に、フッ素樹脂の薄膜を介してジメチルポリシロキサンによる分子被覆である撥水性を有する被膜を形成する撥水処理を施して表面層を形成したことを特徴としている。(請求項2
この表面層は極性の強い酸素や、疎水性の炭化水素基によって形成されるので、これらは全て軽元素であるから、水素,炭素,酸素といった軽元素からの蛍光X線が、全反射蛍光X線分析装置による一般的な測定対象試料としての重元素による蛍光X線と重なることがない。つまり、表面層からの蛍光X線によって測定対象試料の検出感度が低下することはない。
また、本発明は、表面に撥水性を有する板体の上に測定対象溶液を滴下し、溶媒を蒸発させることにより溶液を微小領域にピンポイント的に凝縮させて、この凝縮によって抽出した溶質を測定対象試料とし、この測定対象試料の位置に合わせて微小な測定部位に集光したX線を板体に対して臨界角度以下の入射角で照射することで、測定対象試料から発生する蛍光X線の強度を測定して、この測定対象試料を構成する元素の種類および含有量を測定するにあたり、
前記板体がシリコンウェハであり、このシリコンウェハ表面に、フッ素樹脂の薄膜を介して極性の強い酸素を内側に向け、疎水性の炭化水素基を外側に向けて分子被覆を形成することを特徴とする全反射蛍光X線を用いた分析方法を提供する。(請求項3
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、図1〜4を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る全反射蛍光X線分析装置1の構成を説明する図、図2は溶液を凝縮する方法を示す側面図、図3は撥水性と測定対象試料Sを凝縮する微小領域の大きさとの関係を説明する図、図4は凝縮された測定対象試料Sの蛍光X線を測定する方法示す図である。
【0025】
図1において、2は表面に撥水加工を施してなるシリコンウェハなどからなる板体(板状の濃縮プレート)、3はこの濃縮プレート2上に凝縮された測定対象試料Sに照射するためのX線X0 を発生させるX線管、4はX線管3からのX線X0 の中から単色の波長(特定エネルギ)のX線X1 を選択的に反射することでX線X1 を単色化するモノクロメータ、5はモノクロメータ4から出射するX線X1 を測定対象試料Sが凝縮された領域に合わせて絞られた微小な部位に集光すると共に濃縮プレート2に対して臨界角度θc〔式(1)参照〕以下の入射角αで照射する集光チューブ、6は集光されたX線X1 ’によって励起された蛍光X線X2 の強度を検出するX線検出器である。
【0026】
本発明の全反射蛍光X線分析装置1における測定対象試料S(以下、単に試料Sという)は、例えば雨滴や河川の水などの水溶液に含まれる重元素を測定するために、水溶液中の水(溶媒)を蒸発させて、溶質を凝縮したものである。すなわち、試料Sは水溶液中に含まれるppm〜ppfレベルの含有物質を高感度に測定するものである。
【0027】
図2に示すように、前記濃縮プレート2の表面2aには例えば強力な撥水性を有する表面層2Aが形成されている。したがって、試料Sを含む溶液7(測定対象溶液)は、図2(A)に示すように、例えばスポイド8等を用いて濃縮プレート2の表面層2A上に滴下することにより、濃縮プレート2の表面2aに対して極めて大きな接触角βが形成され、溶液7の水滴はその表面張力によって球に近い形状になる。
【0028】
そして、濃縮プレート2の表面2aに対する溶液7の接触部は極めて小さくなって微小領域Aを形成する。なお、この微小領域Aの面積は、接触角βによって決定されるものであり、この接触角βは濃縮プレート2の表面2a(表面層2A)における撥水性の大きさによって影響を受ける。また、接触角βが大きいので溶液7を滴下するときの速度や溶液7に生じる揺れ、さらには、溶媒が蒸発する速度などには関係なく、滴下した溶液7は、その量と接触角βによってほゞ確定できる面積の微小領域Aにおいて濃縮プレート2の表面2aに接触する。
【0029】
次いで、図2(B)に示すように、溶液7中に含まれる溶媒が蒸発すると、前記溶液7が濃縮プレート2の表面2aに接触した微小領域Aにおいて、溶質である試料Sだけが凝縮する。このとき、濃縮プレート2は敢えて加熱することなく、溶媒を自然に気化させることで、気化しやすい試料Sを微小領域Aに凝縮することができる。しかしながら、試料Sが気化しやすい物質でない場合には濃縮プレート2をヒータなどで幾らか加熱することにより、凝縮にかかる時間を短縮することが可能である。
【0030】
図3(A)はシリコンウェハ2の表面2aにフッ素樹脂の薄膜9によるコーティングを施して表面層2Aを形成した場合において微小領域A1 内に凝縮する例を示している。この場合においても、微小領域A1 の形状および面積は、薄膜9によって撥水性があって溶液7との接触角が大きくなるので、この接触角と溶液7の体積によってほゞ決まる直径の円形の領域となる。つまり、微小領域A1 の形状および面積は、溶液7を落とすときの速度や揺れなどの外力や、蒸発速度などに一切影響されることなく、安定したものとなる。
【0031】
図3(B)はシリコンウェハー表面に撥水性を有する被膜10を形成する撥水処理を施して表面層2Aを形成した状態における前記微小領域A2 の例を示すものである。本例に示す撥水処理は、例えば、富士システムズ株式会社の商品名「シリコナイズ」などのジメチルポリシロキサン(Di-methyl polysiloxane)による分子被覆を形成するものであって、この被膜10の構成は拡大図に示すように、極性の強い酸素を内側に向け、疎水性の炭化水素基を外側に向けて膜厚約100Åの分子被覆を形成するものである。
【0032】
本例に示すように、フッ素樹脂の薄膜9によるコーティングのさらに表面にジメチルポリシロキサンなどの疎水性の物質による撥水処理を行なうことにより、濃縮プレート2の表面2aにおける撥水性を極めて強力にすることができ、接触角β(図2参照)を例えば160°程度にして、被膜10の上に置いた溶液7の形状をほぼ球体にすることができる。
【0033】
また、溶液7を凝縮する微小領域A2 の形状および面積は、溶液7を落とすときの速度や揺れなどの外力や、蒸発速度などに一切影響されることなく、安定すると共に、この微小領域A2 を図3(A)に示したフッ素樹脂の薄膜(撥水性を有する被膜)9によるコーティングのみを施した場合における微小領域A1 に比べてさらに小さくすることができる。
【0034】
図4は凝縮した試料SにX線を照射する要部の構成を示す図であり、図4において、Axは前記微小領域A(A1 ,A2 )の全体をカーバーする程度に絞られたX線X1 ’を照射する微小な測定部位を示している。本発明の全反射蛍光X線分析装置1は、集光チューブ5は例えばその内周面5aでX線X1 を全反射可能なキャピラリチューブであり、その形状は二次曲線を描くように形成することにより、蛍光X線X2 が減衰することなく微小な測定部位Ax内に集光したX線X1 ’を出射するように構成している。
【0035】
つまり、濃縮プレート2の表面2aの微小領域A内に試料Sを凝縮できるので、この試料Sの全体に照射するX線X1 ’を従来(図8に示すX線X1 )に比べて大幅に集光できる。なお、集光チューブ5は一本のキャピラリチューブであってもよいが、複数のキャピラリチューブを束ねたものであってもよい。
【0036】
また、微小領域Aの面積を表面層2Aに対する溶液7の接触角βによってほゞ確実に定めることができるので、微小領域Aを含む測定部位Axの面積を必要最小限に抑えることが可能となる。つまり、それだけ単位面積当たりに照射されるX線X1 ’の強度を強くすることが可能となり、それだけ試料Sを効果的に励起して十分な強度の蛍光X線X2 を発生させることができる。
【0037】
加えて、図2,3を用いて既に詳述したように、試料Sの凝縮が効果的に行われるので、試料Sは十分の厚みDを有しており、X線X1 ’の大部分が試料Sを励起するために用いられる。さらに、測定部位Axの面積を狭くすることにより、濃縮プレート2のX線X1 ’が照射される領域Cを小さくすることが可能となり、それだけP/B比の良い測定を行うことができる。
【0038】
そして、本例の場合、表面層2Aは極性の強い酸素や、疎水性の炭化水素基によって形成されるので、これらは全て軽元素であるから、水素,炭素,酸素といった軽元素からの蛍光X線が、全反射蛍光X線分析装置1による一般的な測定対象試料Sとしての重元素による蛍光X線と重なることがない。つまり、表面層2Aからの蛍光X線によって測定対象試料Sの検出感度が低下することはない。
【0039】
また、前記濃縮プレート2をセットする試料台(図外)は図示する三次元方向(X方向、Y方向、Z方向)にそれぞれ高精度に調整可能とするXYZ調整機能、およびその角度調整機構を備えている。これによって、濃縮プレート2と集光チューブ5との距離を微妙に調整して測定部位Axの大きさや位置を調整したり、濃縮プレート2の角度を調整して前記入射角αの調整によって蛍光X線の強度を調整したり、X線の反射率を調整可能としている。
【0040】
試料Sから発生する蛍光X線X2 は例えば半導体検出器からなるX線X線検出器6を用いて計測する。このとき、試料Sに照射するX線X1 ’の波長はモノクロメータ4によって単色化されているので、各測定対象成分に対する蛍光X線のスペクトルが明瞭に表れ、試料Sの成分分析を容易かつ的確に行うことができる。
【0041】
さらに、上述の各例においては、X線集光手段の一例としてX線集光チューブを挙げて説明しているが、本発明はこれに限られるものではなく、X線集光手段としてコリメータなどを使用することも可能である。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、試料は常に安定した微小領域内に効果的に濃縮できると共に、凝縮された試料Sは集光手段を用いて集光されたより強力なX線によって励起されるので、より強力な蛍光X線を発生できる。すなわち、全反射蛍光X線分析装置の検出感度がさらに飛躍的に向上でき、超高感度分析を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の全反射蛍光X線分析装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】 濃縮プレートの表面に測定対象試料を凝縮する方法を説明する図である。
【図3】 濃縮プレートの表面と測定対象試料が凝縮する微小領域の大きさとの関係を示す図である。
【図4】 全反射蛍光X線分析装置の要部の構成および測定方法を説明する図である。
【図5】 従来の一般的な全反射蛍光X線分析装置の構成を示す図である。
【図6】 入射角度と蛍光X線強度および反射X線強度との関係を示す説明図である。
【図7】 従来の測定対象試料を凝縮する方法を説明する図である。
【図8】 従来の全反射蛍光X線分析装置の要部の構成を示す図である。
【符号の説明】
1…全反射蛍光X線分析装置、2…板体(濃縮プレート)、2a…表面、2A…撥水処理部分(表面層)、A(A1 ,A2 )…微小領域、3…X線管、5…集光チューブ、6…X線検出器、7…測定対象溶液、9…撥水性を有する被膜、10…撥水性を有する被膜、S…測定対象試料、X0 ,X1 ,X1 ',X2 ,X3 …X線。

Claims (3)

  1. 表面に撥水性を有する板体上の微小領域に凝縮された測定対象試料に対して照射するX線を発生するX線管と、このX線を前記測定対象試料が凝縮された微小領域に合わせて絞られた微小な測定部位に集光すると共に板体に対して臨界角度以下の入射角で照射する集光手段と、X線を照射した測定対象試料から発生する蛍光X線の強度を検出するX線検出器を備えた全反射蛍光X線分析装置であって、
    前記板体がシリコンウェハであり、このシリコンウェハ表面に、フッ素樹脂の薄膜を介してジメチルポリシロキサンによる分子被覆である撥水性を有する被膜を形成してあることを特徴とする全反射蛍光X線分析装置。
  2. 表面に撥水性を有する板体の上に測定対象溶液を滴下し、溶媒を蒸発させることにより溶液を微小領域にピンポイント的に凝縮させて、この凝縮によって抽出した溶質を測定対象試料とし、この測定対象試料の位置に合わせて微小な測定部位に集光したX線を板体に対して臨界角度以下の入射角で照射することで、測定対象試料から発生する蛍光X線の強度を測定して、この測定対象試料を構成する元素の種類および含有量を測定するにあたり、
    前記板体がシリコンウェハであり、このシリコンウェハ表面に、フッ素樹脂の薄膜を介してジメチルポリシロキサンによる分子被覆である撥水性を有する被膜を形成する撥水処理を施して表面層を形成したことを特徴とする全反射蛍光X線を用いた分析方法。
  3. 表面に撥水性を有する板体の上に測定対象溶液を滴下し、溶媒を蒸発させることにより溶液を微小領域にピンポイント的に凝縮させて、この凝縮によって抽出した溶質を測定対象試料とし、この測定対象試料の位置に合わせて微小な測定部位に集光したX線を板体に対して臨界角度以下の入射角で照射することで、測定対象試料から発生する蛍光X線の強度を測定して、この測定対象試料を構成する元素の種類および含有量を測定するにあたり、
    前記板体がシリコンウェハであり、このシリコンウェハ表面に、フッ素樹脂の薄膜を介して極性の強い酸素を内側に向け、疎水性の炭化水素基を外側に向けて分子被覆を形成することを特徴とする全反射蛍光X線を用いた分析方法。
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