JP4138373B2 - ドライクリーニング用洗浄剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライクリーニングにおいて洗浄媒体に添加して用いられる洗浄剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
衣料などのドライクリーニングにおける洗浄媒体である溶剤としては、従来、石油系溶剤の他、パークロロエチレンや1,1,1−トリクロロエタンなどの塩素系溶剤が主として使用されている。また、これらの洗浄媒体には、衣料への柔軟性付与、水の可溶化などを目的として界面活性剤などからなる洗浄剤が添加されてドライクリーニングが行われている。
【0003】
近年、地球環境問題などにより、上記した従来の洗浄媒体に代わる代替溶剤の使用が求められている。このような代替溶剤の一つに1−ブロモプロパンがあり、例えば金属部品の脱脂洗浄に使用されている(特開2000−26897号)。この1−ブロモプロパンは、各種油に対して優れた溶解力を有している反面、金属との接触により分解反応を起こしやすいという欠点がある。そのため、特開2000−26897号では、安定化剤として1,2−ブチレンオキサイドとニトロメタンを添加することが開示されている。
【0004】
ところで、一般にドライクリーニングにおいては、汚染溶剤を清浄化して再利用するために蒸留が繰り返して行われる。また、被洗物や前処理剤から水分が溶剤中に混入し、また水溶性汚れの除去のために水を含有する洗浄剤が使用される場合もあり、系内に水が混在しやすい。このようなドライクリーニング特有の事情から、1−ブロモプロパンをドライクリーニングの洗浄媒体として用いた場合、金属部品の脱脂洗浄の場合に比べて加水分解しやすいという問題がある。すなわち、ドライクリーニングでは、1−ブロモプロパンが蒸留時に加水分解しやすく、加水分解により酸を発生してドライクリーニング装置内の金属を著しく腐食させるとともに、被洗物にもダメージを与えてしまう。
【0005】
そのため、ドライクリーニングにおいては、金属部品の脱脂洗浄の場合に使用する上記の安定化剤だけでは、金属腐食の防止には不十分であり、1−ブロモプロパンの安定性をより一層高める洗浄剤が必要とされているのが実情である。
【0006】
国際公開WO01/53598には、ドライクリーニング用の洗浄媒体として1−ブロモプロパンを使用し、これに安定化剤として上記した金属部品の脱脂洗浄の場合と同様に1,2−ブチレンオキサイドとニトロメタンを添加することが開示されているが、この場合、更なる耐腐食性の向上が求められるのは上述した通りである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、1−ブロモプロパンなどの臭化炭化水素を洗浄媒体として用いるドライクリーニングにおいて、洗浄性や柔軟性などの洗浄剤としての性能を損なうことなく、ドライクリーニング装置内の金属腐食を抑制することができる洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステルと、脂肪酸アルカノールアミドと、エポキシドとを組み合わせて使用することにより、上記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、炭素数3〜6の1−ブロモアルカンを洗浄媒体として用いるドライクリーニングのための洗浄剤組成物であって、(A)下記一般式(1)で表される高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸モノエステル又はジエステルをジエタノールアミンで中和したもの、(B)下記一般式(2)又は(3)で表される脂肪酸アルカノールアミド、及び、(C)エポキシドを含有することを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物である。
【化3】
(式(1)中、R 1 は炭素数8〜20のアルキル基、R 2 及びR 3 は−OH又はR 1 O(CH 2 CH 2 O) n −であって、少なくとも一方は−OHであり、nは2〜10である。)
【化4】
(式(2)及び(3)中、R 4 は炭素数8〜18のアルキル基、R 5 は炭素数2〜3のアルキル基を示す。)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0011】
本発明の洗浄剤組成物は、炭素数3〜6の1−ブロモアルカンを洗浄媒体として使用するドライクリーニングにおいて、該洗浄媒体に添加して用いられるものである。該洗浄媒体としては、1−ブロモアルカンを単独で使用することが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲内で他の溶剤(フッ素系、炭化水素系あるいは塩素系溶剤など)との混合液を用いることもできる。上記1−ブロモアルカンとしては、1−ブロモプロパンが特に好ましく用いられる。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、A成分として、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステルを含有する。このA成分は、B成分及びC成分と組合せることで金属の腐食抑制効果を高めるとともに、被洗物の帯電防止性向上、洗浄性の向上に寄与することができるものである。
【0013】
A成分のリン酸エステルとしては、下記一般式(1)で表されるリン酸モノエステル、又はジエステルが用いられる。
【0014】
【化5】
式(1)において、R1はアルキル基であって炭素数は8〜20であり、より好ましくは10〜16である。R2 及びR3は−OH又はR1O(CH2CH2O)n−であって、少なくとも一方は−OHである。エチレンオキサイドの付加モル数であるnは2〜10である。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物は、B成分として、脂肪酸アルカノールアミドを含有する。このB成分は、溶剤のpH低下を防いで、A成分及びC成分とともに金属の腐食抑制効果を高めるために添加される。
【0017】
より詳細には、B成分としては、下記一般式(2)で表される脂肪酸アルカノールアミドが好ましく用いられる。
【0018】
【化6】
式(2)中、R4は炭素数8〜18のアルキル基、R5は炭素数2〜3のアルキル基を表す。
【0019】
B成分としては、また、下記一般式(3)で表されるような脂肪酸に対してアルカノールアミンを過剰に反応させて得られる脂肪酸アルカノールアミドを用いることもできる。
【0020】
【化7】
式(3)中のR4及びR5は式(2)と同じである。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物は、C成分として、エポキシドを含有する。このC成分は、A成分及びB成分とともに金属の腐食抑制効果を高めるために添加される。
【0022】
C成分のエポキシドとしては、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド等があげられ、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。これらの中でも特に、1,2−ブチレンオキサイドが好適に用いられる。
【0023】
上記のA〜C成分の配合割合について、まず、A成分とB成分については重量比でA/Bが0.5〜1.5であることが好ましい。A/Bが0.5よりも小さいと、洗浄性が低下するとともに金属腐食性が強くなる。また、A/Bが1.5よりも大きいと、鉄の腐食性が強くなる。次に、C成分については、A成分とB成分の合計量100重量部に対して10〜50重量部配合することが好ましい。C成分が10重量部未満では、本発明の洗浄剤のpHが経日的に低下し、洗浄剤として好ましくなくなり、50重量部を越えて配合しても金属腐食抑制効果は上昇せず、また洗浄剤に引火点が出てこれも好ましくない。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物は、D成分として、4級アンモニウム塩を含有することが好ましい。4級アンモニウム塩は、通常柔軟仕上げ剤として配合されるものであるが、本発明では更に、A成分のリン酸エステルとの間でコンプレックスを形成して巨大分子化することで、被洗物の柔軟性を一層向上させることができる。
【0025】
D成分の4級アンモニウム塩としては、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、パルミチルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジメチルステアリル(ジヒドロキシエチル)アンモニウム−p−トルエンスルホネート、オレイルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウムメチルサルフェートなどが挙げられる。
【0026】
D成分を配合する場合、上記のコンプレックス形成による柔軟性向上効果を高めるために、A成分との重量比D/Aを3/7〜7/3とすることが好ましく、より好ましくはD/Aをほぼ1/1とすることである。但し、洗浄剤組成物中にA成分のほかにE成分として他のアニオン界面活性剤を配合する場合、上記D成分と、A成分及びE成分の合計量との重量比D/(A+E)が3/7〜7/3であることが好ましく、より好ましくはD/(A+E)をほぼ1/1とすることである。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物において場合により配合される上記E成分のアニオン界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のアルキルエーテルサルフェートなどが挙げられる。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物には、更に、洗浄媒体である炭素数3〜6の1−ブロモアルカン、特に1−ブロモプロパンを配合してもよい。また、溶剤中への水の可溶化を促進するためにポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどの他のノニオン界面活性剤を配合してもよく、また、A成分のリン酸エステルを中和するためにジエタノールアミンなどの塩基を配合することもできる。更に、水溶性汚れの除去のために水を配合してもよく、その他、必要に応じて公知の添加剤を配合することもできる。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物中における各成分の含有率は特に限定されないが、好ましくは、A成分が5〜20重量%、B成分が3〜40重量%、C成分が1〜15重量%、D成分が5〜20重量%である。
【0030】
以上よりなる本発明の洗浄剤組成物を用いてドライクリーニングする際には、例えば図1に示すようなドライクリーニング装置を使用し、その洗浄槽内に洗浄媒体としての1−ブロモアルカンを入れ、これに洗浄剤組成物を添加し、被洗物である衣料を投入して行う。その際、洗浄剤組成物は、洗浄媒体に対して好ましくは0.2〜1.0容量%添加される。
【0031】
洗浄後、被洗物は洗浄槽から取り出され、一方、洗浄により汚染した溶剤は蒸留器に導かれる。蒸留器において1−ブロモアルカンは水とともに蒸発して汚れなどの残留分から分離され、次いで水分離器で水を除去される。その際、本発明の洗浄剤組成物であると、蒸留器内では1−ブロモアルカンとともにA成分のリン酸エステルとB成分のアミドとC成分のエポキシドが存在するため、蒸留中における1−ブロモアルカンの加水分解が抑制され、溶剤のpHが中性に保たれる。また、A成分とB成分は残留分として溶剤から分離されるが、C成分のエポキシドは、1−ブロモアルカンとともに蒸発して、水分離器における1−ブロモアルカンの安定化に寄与することができる。
【0032】
水分離器で水を除去された1−ブロモアルカンは、清浄な洗浄媒体として洗浄槽に戻される。そして、この洗浄媒体に新たに洗浄剤が添加され、更に次回の被洗物が投入される。このようにして洗浄が繰り返される。
【0033】
以上のように、本発明の洗浄剤組成物であると、繰り返し行う蒸留でも1−ブロモアルカンの加水分解を抑制し、また溶剤のpHを低下させず、そのため、クリーニング装置内の鉄や銅などの金属の腐食を効果的に抑制することができる。洗浄剤組成物は毎回洗浄槽に投入されるので、腐食抑制成分が蒸留などでなくなることはなく、効果を持続することができる。また、本発明の洗浄剤組成物であると、後記の実施例から明らかなように、ドライクリーニング用洗浄剤としての洗浄性や帯電防止性、柔軟性などに悪影響を与えることもなく、むしろこれらを改善することもできる。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
1.評価方法
実施例及び比較例の評価は下記方法にて行った。
【0036】
(1)洗浄効率
洗浄用評価布として、ウールの乾式汚染布、ポリエステルの乾式汚染布、ウールの醤油汚染布およびポリエステルの醤油汚染布の各汚染布と、これらの清浄白布を準備した。250mLのマヨネーズ瓶に1−ブロモプロパン100mLを入れ、これに洗浄剤組成物を1.0mL添加して洗浄液を調製した。次いで、この洗浄液に上記各汚染布を入れ、振盪器で10分間振盪後、布を取り出して自然乾燥した後、白度を測定した。清浄白布、洗浄前および洗浄後の各汚染布の白度を東京電色社製のTC−1500SXにより測定した。そして、洗浄効率(%)=(洗浄後の白度−洗浄前の白度)/(清浄白布の白度−洗浄前の白度)×100により、洗浄効率を算出した。
(2)帯電防止性・柔軟性
450mLのマヨネーズ瓶に1−ブロモプロパン200mLを入れ、これに洗浄剤組成物を2.0mL添加して洗浄液を調製した。これに10cm×30cmのウールモスリン、ポリエステルタフタおよびナイロンタフタを各1枚、柔軟性の評価布として30cm四方のアクリルジャージを1枚入れ、振盪器で10分間振盪後に布を取り出して遠心脱液機で30秒間脱液後、自然乾燥し、その後各評価を行った。
【0037】
〔帯電防止性〕
ロータリースタティックテスター(興亜商会製)を用いて静電気発生量(KV)を測定した。値が小さい方が防電性は良好である。
【0038】
〔柔軟性〕
感触法にてアクリルジャージの柔軟性を以下の指標により評価した。◎;非常に良好、○;良好、△;やや良好、×;不良。
【0039】
(3)金属腐食性
250mLのマヨネーズ瓶に1−ブロモプロパン100mLを入れ、これに洗浄剤組成物を1.0mL添加して試験液を作る。これに1×3cmの鉄、銅それぞれの金属テストピースを液中と、気層に糸で吊し、35℃、7日間放置し、金属表面の腐食状態を観察した。判定は以下の通りである。◎;全く錆がない、○;錆はないが表面の輝きが少し無い、△;少し錆発生が見られる、×;錆発生あり。
【0040】
(4)蒸留試験後の水pH
500mLの丸底フラスコに1−ブロモプロパン180mL、洗浄剤組成物30mL、水30mLを入れ、100℃、72時間還流蒸留して、試験終了後の水のpHを測定した。
【0041】
2.実施例及び比較例
下記表1に示す配合組成により実施例1〜3及び比較例1〜3の洗浄剤組成物を調製し、上記評価方法により各洗浄剤組成物の評価を行った。なお、表中、A成分のポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルとしては第一工業製薬株式会社製「プライサーフA208S」を、B成分のヤシ脂肪酸ジエタノールアミドとしては第一工業製薬株式会社製「ダイヤノールCDE」を用いた。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
上記の実施例からも明らかなように、本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物であると、洗浄媒体として1−ブロモアルカンを用いるドライクリーニングにおいて、洗浄性や柔軟性、帯電防止性といった洗浄剤としての性能を損なうことなく、溶剤のpH低下を防いで、クリーニング装置内における金属の腐食を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄剤組成物を使用することができるドライクリーニング工程の概略図である。
Claims (5)
- 炭素数3〜6の1−ブロモアルカンを洗浄媒体として用いるドライクリーニングのための洗浄剤組成物であって、
(A)下記一般式(1)で表される高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸モノエステル又はジエステルをジエタノールアミンで中和したもの、
(B)下記一般式(2)又は(3)で表される脂肪酸アルカノールアミド、及び、
(C)エポキシド
を含有することを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物。
- 前記A成分と前記B成分は重量比でA/Bが0.5〜1.5であり、
前記C成分は前記A成分とB成分の合計量100重量部に対して10〜50重量部配合された
ことを特徴とする請求項1記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物。 - 更に(D)4級アンモニウム塩を含有し、
このD成分と前記A成分(A成分の他にアニオン界面活性剤を含有する場合にはA成分と他のアニオン界面活性剤との合計量)との重量比が3:7〜7:3である
ことを特徴とする請求項1又は2記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物。 - 前記1−ブロモアルカンが1−ブロモプロパンであり、
前記エポキシドが1,2−ブチレンオキサイドである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物。 - 前記洗浄媒体として、前記1−ブロモアルカンと、フッ素系溶剤、炭化水素系溶剤および塩素系溶剤からなる群から選択された少なくとも一種の他の溶剤との混合液を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物。
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