JP4138077B2 - 反射型の液晶表示装置及び電子機器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本願発明は液晶を表示体として利用した表示装置(液晶表示装置またはLCDと呼ばれる)の構成に関する。特に液晶に所定の電圧を印加するための電極の構造に関する技術である。
【0002】
【従来の技術】
従来の表示装置としては、CRTが最も一般的である。しかし、CRTは装置の容積、重量、消費電力が大きく、特に、大面積の表示装置には適していなかった。そこで、近年、CRTに比べて軽量化、低消費電力化及び大画面化で有利な液晶表示装置(以下、液晶パネルと呼ぶ)が注目されている。
【0003】
液晶パネルに利用される液晶の種類によって駆動方法も様々だが、液晶の複屈折性を用いた駆動方法が知られている。これは、液晶物質が分子軸の長軸方向と短軸方向とで誘電率が異なるという性質を利用し、光の偏光や透過量、さらには散乱量を制御するという駆動方法である。液晶材料としては、ネマティック液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶などが用いられる。
【0004】
特に、最近ではガラス基板上に薄膜半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)を複数形成し、そのTFTでもって回路を組んだ液晶パネルの開発が急速に進んでいる。この様な液晶パネルは特にアクティブマトリクス型液晶パネルと呼ばれている。
【0005】
このアクティブマトリクス型液晶パネルの表示方式としては、大きく分けて透過型と反射型とがある。反射型液晶パネルは、液晶層を透過した光が各画素に設けられた画素電極で反射され、その反射光(映像情報を含んだ光)が利用者の目に入ることで映像を見ることができる。
【0006】
この様な反射型液晶パネル(以下、反射型LCDと呼ぶ)は、透過型液晶パネルに較べて有効な画素面積が広いという利点がある。これは透過型液晶パネルの様に開口率に制限されるということがないからである。そのため、反射型は透過型に較べて明るい表示が可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、反射型LCDは透過型LCDに較べて光学系の光損失が大きいと言われている。従って、反射型LCDの最大の課題は入射した光を如何に有効に活用するかにある。即ち、より明るい表示を行うためには、可能な限り多くの光を利用し、光損失を低減することが必要不可欠な要素となる。
【0008】
こういった理由から画素電極の反射率はできるだけ高いことが望まれる。なぜならば反射率が低いと光の利用効率が極端に落ち、表示全体が暗くなってしまうからである。また、バックライトの光量を高めて明るい表示にしても、消費電力の増加や発熱の問題等に対する対策で結局はコストアップにつながる。
【0009】
この様な光損失を低減するため、反射型LCDの画素電極としては反射率の高いアルミニウム系材料(純アルミニウム、アルミニウム合金、又は不純物を含むアルミニウムなど)が用いられる。なお、銀電極はさらに反射率が高いという特徴があるが、加工性に難があるため、取扱いの比較的容易なアルミニウム系材料を用いる場合が多い。
【0010】
ところが、本出願人が調べたところ、アルミニウム系材料で形成された電極に直接光を当てた場合に較べて、電極表面に配向膜の様な高屈折率物質が形成された状態では反射率が大幅に低下してしまうことが判明した。
【0011】
この様に、画素電極として反射率の高い材料を選択しても他の要因で反射率が損なわれるため、反射率向上に向けてさらなる工夫が望まれる。
【0012】
本願発明はその様な問題を解決する手段を提供するものである。即ち、画素電極の光反射率を向上させ、反射型LCDに入射した光の利用効率を向上させるための技術を開示するものである。
【0013】
そして、低コストで、明るく消費電力の少ない液晶パネルを実現し、さらにはその様な液晶パネルを表示ディスプレイとして搭載した電子機器を実現することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本願発明の主旨は、反射型の液晶パネルにおいて画素電極の上に誘電体多層膜でなる増反射膜を形成することによって、反射光を増幅させ、光の有効利用を図るというものである。
【0015】
なお、誘電体多層膜の増反射効果を利用する技術として誘電体ミラーが知られているが、誘電体ミラーは8層以上もの積層を行って形成する場合が殆どであり、誘電体ミラーによって形成される直接接続された容量は非常に小さいものであった。
【0016】
実際の液晶パネルでは、この誘電体多層膜による容量(Cd )と、液晶と配向膜による合成容量(Clc)とが直列に接続されるので、総容量をCtotal とすると、
1/Ctotal =1/Cd +1/Clc
の関係が成り立つ。
【0017】
また、合成容量にかかる電圧をVtotal :液晶と配向膜にかかる電圧をVlc:誘電体多層膜にかかる電圧をVd とすると、
total total =Cd d =Clclc
と表される。これを変形して液晶にかかる電圧を求めると、
lc=Cd total /(Clc+Cd
となる。即ち、誘電体多層膜によって形成される容量が小さいと、液晶にかかる電圧が小さくなってしまうという問題が生じてしまっていた。
【0018】
ところが、本願発明では誘電体多層膜を電極として用いることを念頭においているため、積層数も2層または4層といった具合に非常に少ない。即ち、誘電体多層膜による容量が液晶による容量に較べて大きいので、液晶に印加される電圧が小さくなるといった問題を生じないという利点が得られる。
【0019】
また、液晶表示装置をアクティブマトリクス駆動する場合、誘電体多層膜を設けない液晶セルのピーク電圧をVLC,peak 、TFT等スイッチング素子の耐電圧をVmax とすると、誘電体多層膜を設けた液晶セルをTFTの耐電圧内で駆動するためには、VLC,peak ≦Cd max /(Clc+Cd )となる様に誘電体多層膜の層数及び膜厚を調節すべきである。
【0020】
ここでピーク電圧(VLC,peak )とは、誘電体多層膜を設けない液晶セルのしきい値特性、即ち液晶セルに印加される電圧(V)と液晶セルの明るさ(T)を示すV−Tカーブにおいて、明るさの最大値を100%、最小値を0%とした場合、ノーマリブラックモードで明るさ100%、ノーマリホワイトモードで明るさ0%を示す電圧をいう。
【0021】
【発明の実施の形態】
本願発明の実施の形態について図1を用いて説明する。図1に示すのは、反射型LCDを構成するアクティブマトリクス基板(TFTで回路を構成した基板)の画素の断面構造である。
【0022】
図1において、101は絶縁表面を有する基板、102は公知の手段によって形成されたTFTである。TFT102は本出願人による特開平7−135318号公報に記載された技術を利用することで容易に作製できる。
【0023】
また、TFT102は平坦化膜103で覆われ、その上にはコンタクトホールを介してTFT102と接続する画素電極104が形成される。画素電極104は反射率の高い材料、具体的にはアルミニウム系材料が好ましい。勿論、他の金属膜(銀、タンタル、クロムなど)を利用しても構わない。
【0024】
画素電極104を形成したら、第1の誘電体膜105を形成する。第1の誘電体膜105は屈折率が 1.2〜1.6 程度と低めの材料を用いる。具体的には、アクリル、ポリイミド、フッ化マグネシウム、二酸化シリコンなどが挙げられる。
【0025】
また、第1の誘電体膜105の上には第2の誘電体膜106を積層形成する。第2の誘電体膜106は第1の誘電体膜105よりも屈折率が高い材料、好ましくは屈折率が 1.8〜2.5 と高めの材料を用いる。具体的には、二酸化チタン、ジルコニア、ITO(酸化インジウムスズ)、窒化シリコン、二酸化セリウムなどが挙げられる。
【0026】
なお、誘電体膜の成膜方法としては減圧熱CVD法、プラズマCVD法、スパッタ法、蒸着法などの気相法を用いても良いが、溶液塗布によるスピンコート法を用いることも有効である。スピンコート法を用いると、画素電極による段差を緩和して誘電体多層膜全体の平坦化が図れるという利点が得られる。
【0027】
この時、第1の誘電体膜105の屈折率(nL )と第2の誘電体膜106の屈折率(nH )との差が大きいほど高い反射率が得られる。この事は、次式に示す誘電体多層膜の反射率計算式からも明らかである。
【0028】
【数1】
Figure 0004138077
【0029】
上記の式によると、第1の誘電体膜105の屈折率(nL )と第2の誘電体膜106の屈折率(nH )との差が大きいと、nL /nH が小さくなるため反射率(R)は1に近づく、即ち全反射に近い状態になることが判る。
【0030】
また、第1の誘電体膜105及び第2の誘電体膜106は、それぞれ薄膜の増反射条件を満たす様な屈折率と膜厚の関係を持たせる必要がある。薄膜の増反射条件とは薄膜表面で反射した光と薄膜を透過してから薄膜表面で反射した光とが互いに強め合う条件であり、次式で与えられる。
【0031】
【数2】
Figure 0004138077
【0032】
この式において、nは薄膜の屈折率、dは薄膜の膜厚、λは薄膜に入射する光の中心波長である。なお、中心波長とは増反射可能な光のピーク波長を意味する。この様に、薄膜の光学膜厚(屈折率×膜厚)を光の中心波長(λ)の1/4となる様に設定した時、その薄膜をλ/4膜と呼ぶ。
【0033】
即ち、入射する光の中心波長と屈折率とが決まれば増反射条件の式から最適な膜厚が決まる。換言すれば、屈折率が薄膜固有の値と考えると、反射率が最も高くなる波長(中心波長)をどこに設定するかを、誘電体膜の膜厚で制御することができる。
【0034】
この増反射条件を満たす中心波長(λ)をどこに設定するかは画素電極で反射された反射光の波長依存性に大きく影響するため重要である。
【0035】
例えば、1枚の液晶パネルにカラーフィルターを設けてカラー表示を行う単板式プロジェクターなどに本願発明の反射型LCDを適用する場合、広範囲な可視光領域(約 400〜700 nmの波長領域)において反射率がほぼ一定であることが望ましい。こうすることで、赤、緑、青のどの色が入射しても同じ様な反射率を確保することが可能となる。
【0036】
また、図1では低屈折率の薄膜(低屈折率膜と呼ぶ。この屈折率をnL で表す)と高屈折率の薄膜(高屈折率膜と呼ぶ。この屈折率をnH で表す)とを2層だけ積層した誘電体多層膜を例示しているが、低屈折率膜と高屈折率膜との2層構造を一組として、その組を複数回重ねた構造とすることも可能である。
【0037】
即ち、低屈折率膜、高屈折率膜、低屈折率膜、高屈折率膜・・・といった具合に屈折率の異なる誘電体膜を交互に偶数層重ねていくことで理論的には増反射効果が高くなる。従って、増反射効果だけを考えれば、積層回数を増やした方が高い反射率を得ることができる。
【0038】
しかしながら、誘電体多層膜の積算膜厚が厚くなると誘電体膜による容量が小さくなり、その結果、液晶に印加される電圧が小さくなってしまうという弊害(誘電体膜による電圧損失)がある。この様なことが起こると、画素を駆動するための駆動電圧が高くなり、消費電力の増加につながってしまう。
【0039】
これは、誘電体多層膜による容量と液晶による容量とが直列に接続されているためであり、液晶に印加される電圧を上げるためには、誘電体多層膜によって形成される容量を大きくする必要がある。
【0040】
そのため、誘電体多層膜の積算膜厚はなるべく薄い方が好ましい。従って、増反射効果を高めることと、誘電体膜による電圧損失を抑えることとの兼ね合いによって誘電体膜の積層回数を決定することが望ましい。
【0041】
本出願人のシミュレーション結果によれば、最も単純な図1に示した構造でも十分な増反射効果が得られる。従って、誘電体多層膜の構成としては、画素電極/低屈折率膜/高屈折率膜の組み合わせか、もしくは画素電極/低屈折率膜/高屈折率膜/低屈折率膜/高屈折率膜の組み合わせが良いと言える。
【0042】
なお、誘電体膜による電圧損失に最も大きく影響する支配項は、低屈折率膜によって形成される容量分による損失である。これは低屈折率膜の方が必然的に比誘電率が小さく、形成しうる容量も小さくなりやすいからである。従って、低屈折率膜による容量を大きくすることが誘電体膜による電圧損失を抑制する上で非常に有効に働く。
【0043】
そういった意味で、低屈折率膜の方の中心波長を短波長側にし、高屈折率膜の方の中心波長を長波長側にすることは有効である。なぜならば、この様な構成とすることで、必然的に低屈折率膜の方が膜厚が薄くなり、低屈折率膜によって形成される容量を大きくする方向に作用するからである。
【0044】
以上の様な構成でなる本願発明について、以下に記載する実施例でもってさらに詳細な説明を行うこととする。
【0045】
【実施例】
〔実施例1〕
本願発明の一実施例について説明する。本実施例では、本願発明を単板式プロジェクターに対応した反射型LCDに適用する場合について説明する。
【0046】
本実施例の反射型LCDは、単位画素に相当する領域内に赤、緑、青の3原色に対応した画素が配置された構成からなっている。即ち、光源から到達した入射光(白色光)がカラーフィルターを通過することによって、赤、緑、青の各色に対応した波長光となって各色に対応した画素に入射する。
【0047】
従って、本実施例では同一構造の画素電極において、赤、緑、青の各波長光を効率良く反射しなければならず、可視光領域(約 400〜700 nm)において波長依存性を持たないフラットな反射特性を必要とする。
【0048】
また、本実施例では誘電体膜による電圧損失の影響をできるだけ抑制するために最も簡単な2層構造(低屈折率膜と高屈折率膜とを2層に積層した構造)を採用する場合について説明する。なお、この構造は図1に示す構造であるので、説明には図1を用いることにする。
【0049】
本出願人は図1に示す構造を作製する前に、予めシミュレーション実験を行い、誘電体多層膜の組み合わせを検討した。ここでは、まずその実験データに基づいて本実施例の構成を説明する。
【0050】
本出願人はシミュレーションに際して第1の誘電体膜105(低屈折率膜)として二酸化シリコン膜を想定し、屈折率を 1.43 とした。また、第2の誘電体膜106(高屈折率膜)としてジルコニア膜を想定し、屈折率を 2.04 とした。
【0051】
まず、第1の誘電体膜105の中心波長と第2の誘電体膜106の中心波長をそれぞれどの位に設定するかを系統的にシミュレーションで調べた。また、今回のシミュレーションもnL =1.43、nH =2.04の場合(nL /nH =0.7の場合)について調べた。
【0052】
なお、本シミュレーションでは可視光領域(光波長が 400nm〜 700nmの領域)における平均反射率(以下、単に平均反射率と呼ぶ)が0.91以上(91%以上)となる条件をボーダーラインとして、それ以上の平均反射率となる条件を選定した。
【0053】
なお、0.91という数値は蒸着法で成膜したアルミニウム膜の反射率であり、アルミニウム系材料を用いる限り、従来の方法ではこれ以上の反射率の実現は困難である。即ち、0.91以上の平均反射率を実現するということは、従来の技術では成しえなかった高反射率を実現することに他ならない。
【0054】
ここで代表的なシミュレーション結果を図2に示す。図2は横軸に波長を、縦軸に反射率をプロットしている。
【0055】
図2(A)は高屈折率膜の中心波長を 650nmに固定して低屈折率膜の中心波長を 400nm、500 nm、550 nm、600 nmと変えた時の反射率特性を表している。また、図2(B)は高屈折率膜の中心波長を 600nmに固定して低屈折率膜の中心波長を 400nm、450 nm、500 nm、550 nmと変えた時、また、図2(C)は高屈折率膜の中心波長を 550nmに固定して低屈折率膜の中心波長 400nm、500 nm、550 nmと変えた時の場合である。
【0056】
なお、実際にはさらに多くのデータを取得しているが、おおよその傾向は同じで、低屈折率膜の中心波長を長波長側に設定するほど反射率が低下する傾向にある。即ち、低屈折率膜の中心波長は短波長側にする方がより高い反射率が得られるので好ましい。
【0057】
ここで上述のシミュレーション結果をまとめたものを図3(A)、(B)に示す。図3(A)、(B)は横軸に低屈折率膜の中心波長、縦軸に可視光領域( 400〜700 nm)の平均反射率をプロットしたグラフである。
【0058】
図3において、1つのプロットが可視光領域の平均反射率を表している。即ち、平均反射率が0.91以上であるプロットを抽出することで、中心波長の最適な設定条件を選定することが可能である。
【0059】
図3(A)及び図3(B)のグラフにおいて、平均反射率が0.91以上となる条件を抽出してまとめると、次の様な二つの条件となる。
(1) 350nm≦λL ≦ 550nm、 380nm≦λH ≦ 700nm
(2) 450nm≦λL ≦ 650nm、 300nm≦λH ≦ 450nm
ただし、λL は低屈折率膜の中心波長、λH は高屈折率膜の中心波長を示している。(1)又は(2)のいずれかの範囲内の組み合わせであれば、平均反射率を0.91以上とすることが可能である。
【0060】
また、中心波長の設定によってさらに高い平均反射率を実現することも可能である。可視光領域における平均反射率が92%以上となる条件は、
(1) 400nm≦λL ≦ 500nm、 400nm≦λH ≦ 700nm
(2) 500nm≦λL ≦ 600nm、 300nm≦λH ≦ 450nm
であることがシミュレーション結果から得られている。なお、λL 、λH 等の定義は前述の通りであり、(1)又は(2)のいずれかの条件を満たせば良い。
【0061】
さらに、平均反射率が93%以上となる条件は、 400nm≦λL ≦ 500nm、 450nm≦λH ≦ 700nm(λL 、λH 等の定義は前述の通り)である。
【0062】
また、平均反射率が高い条件ほど反射特性のフラットネスが良好であることが確認されている。即ち、平均反射率が高くなる様な条件を設定するほど、可視光領域の全域でほぼ同一の反射率が得られる。
【0063】
実際には、誘電体膜の屈折率と中心波長が決まれば、その誘電体膜が必要とする膜厚が決まるので、膜厚制御を行うことで所望の中心波長に調節することができる。この様に本願発明では誘電体膜の膜厚制御によって、所望の増反射膜を形成することができる。
【0064】
この時、第1の誘電体膜105と第2の誘電体膜106とは増反射条件をもとに膜厚が決められる。即ち、第1の誘電体膜105の屈折率をnL 、膜厚をdL とし、第2の誘電体膜106の屈折率をnH 、膜厚をdH とした時、λL =4nL L 、λH =4nH H の関係を満たす様な膜厚に調節される。
【0065】
従って、前述の範囲内で低屈折率膜の中心波長と高屈折率膜の中心波長とを組み合わせ、上記2式により膜厚に換算することで第1の誘電体膜105及び第2の誘電体膜106の膜厚が決定される。
【0066】
なお、ここで述べた条件は反射率のみに注目して選定された条件である。この条件に誘電体膜による電圧損失を考慮すると、さらに良好な条件を選定することが可能である。即ち、低屈折率膜の形成する容量を大きくする、換言すれば高屈折率膜の膜厚よりも低屈折率膜の膜厚を薄くすることが有効である。
【0067】
なお、本実施例では低屈折率膜の屈折率(nL )が1.43、高屈折率膜の屈折率(nH )が2.04である場合についてシミュレーションを行ったが、本シミュレーションの結果はこの屈折率の組み合わせに限定されるものではない。
【0068】
前述の〔数1〕に示した様に理論的にはnL /nH が小さくなるほど反射率は高くなる。従って、屈折率比(nL /nH )が0.7以下であっても反射率は全体的に高くなる傾向に向かうため、平均反射率が0.91以上であるというボーダーラインを下回ることはない。即ち、前述の中心波長の設定範囲はnL /nH ≦0.7という条件の中では常に成り立つと言える。
【0069】
〔実施例2〕
本実施例では、低屈折率膜と高屈折率膜との積層構造でなる一組の誘電体多層膜を、2回重ねた場合(誘電体膜の4層構造とした場合)の構成について説明する。説明には図4を用いる。
【0070】
図4(A)において、401は絶縁表面を有する基板、402は公知の手段によって形成されたTFTである。TFT402は平坦化膜403で覆われ、その上にはコンタクトホールを介してTFT402と接続する画素電極404が設けられている。本実施例では画素電極404として1wt% のチタンを含有させたアルミニウム膜を用いた。勿論、この材料に限定される必要はない。
【0071】
本実施例では画素電極404の上に第1の誘電体膜405(低屈折率膜)、第2の誘電体膜406(高屈折率膜)、第3の誘電体膜407(低屈折率膜)、第4の誘電体膜408(高屈折率膜)を積層形成する。第1及び第3の誘電体膜には屈折率が 1.2〜1.6 程度と低めの材料を用い、第2及び第4の誘電体膜には屈折率が 1.8〜2.5 と高めの材料を用いた。
【0072】
ところで、本実施例では便宜上、第1及び第2の誘電体膜でなる誘電体多層膜を誘電体(A)409と呼ぶ。また、第3及び第4の誘電体膜でなる誘電体多層膜を誘電体(B)410と呼ぶ。この時、実施例1における第1の誘電体膜105に相当するのが誘電体(A)409であり、第2の誘電体膜106に相当するのが誘電体(B)410であると考えれば良い。
【0073】
本実施例では、第1の誘電体膜405及び第2の誘電体膜406を同一中心波長(誘電体(A)409の中心波長λA に相当)に設定し、第3の誘電体膜407及び第4の誘電体膜408を同一中心波長(誘電体(B)410の中心波長λB に相当)に設定した。そして、可視光領域内において両者の中心波長を幅広く組み合わせたシミュレーションを行ない、最適な増反射条件を求めた。
【0074】
なお、屈折率及び中心波長の組み合わせに関しては模式的には図4(B)の様に示される。図4(B)に示す様に、金属膜411(画素電極)上には低屈折率膜と高屈折率膜とが交互に形成される。ここで(低)とは低屈折率膜を、(高)とは高屈折率膜を意味する。
【0075】
本実施例の構造とした時の代表的なシミュレーション結果を図5に示す。図5(A)〜(E)は横軸に波長、縦軸に反射率をプロットしたグラフであり、誘電体(A)の中心波長を 400nm、 500nm、 550nm、 600nm、 650nmに固定した場合のそれぞれについて、誘電体(B)の中心波長を変化させた場合を表している。図中において、実線や点線で描かれた曲線が誘電体(B)の各中心波長に対応した反射率特性を示している。
【0076】
なお、実際にはさらに多くのデータを取得しているが、おおよその傾向は同じで、誘電体(A)の中心波長も誘電体(B)の中心波長も長波長側に設定するほど反射率の低下する波長域が長波長側に移動する傾向にある。
【0077】
次に、上述のシミュレーション結果をまとめたものを図6に示す。なお、図6では横軸に誘電体(B)410の中心波長、縦軸に可視光領域における平均反射率をとり、誘電体(A)409の中心波長を 400〜650 nmの範囲で振った時のデータをプロットしている。また、屈折率は実施例1と同様に、低屈折率膜は1.43とし、高屈折率膜は2.04とした。
【0078】
図6より、本出願人は可視光領域における平均反射率が0.91以上となる条件は、 400nm≦λA ≦ 570nm、 400nm≦λB ≦ 800nm(ただしλA は誘電体(A)の中心波長、λB は誘電体(B)の中心波長とする)であるとした。さらに、平均反射率が0.93以上となる様な条件は、 400nm≦λA ≦ 500nm、 600nm≦λB ≦ 700nm(ただしλA 、λB はの定義は上述の通り)であるとした。
【0079】
従って、第1及び第3の誘電体の屈折率をnL 、第2及び第4の誘電体膜の屈折率をnH とし、第1、第2、第3及び第4の誘電体膜の膜厚を各々d1 、d2 、d3 、d4 とする時、第1、第2、第3及び第4の誘電体膜の膜厚は、 400nm≦λA ≦570 、 400nm≦λB ≦800 又は 400nm≦λA ≦ 500nm、 600nm≦λB ≦ 700nm(ただしλA =4nL 1 =4nH 2 、λB =4nL 3 =4nH 4 )を満たす様に調節される。
【0080】
上記の範囲内において、誘電体膜(A)409及び誘電体膜(B)410の中心波長を適切に設定することで0.91以上(好ましくは0.93以上)の高い平均反射率の画素電極を形成することができる。
【0081】
また実際には、実施例1と同様に低屈折率膜と高屈折率膜とからなる誘電体膜の膜厚を制御することで所望の中心波長に調節し、上述の様な構造の増反射膜を形成する。
【0082】
なお、実施例1と同様に、低屈折率膜の屈折率(nL )と高屈折率膜の屈折率(nH )との比(nL /nH )が0.7以下となる組み合わせであれば、上述の波長範囲は全て有効となる。
【0083】
また、実施例1にも示した様に、誘電体容量による液晶の電圧損失を防ぐためにも低屈折率膜の膜厚を高屈折率膜の膜厚より薄くすることが有効である。
【0084】
〔実施例3〕
本実施例の画素構造について図7を用いて説明する。なお、構造は図4と類似しているので、図4と同一の部分に関しては同一の符号を用いることにする。本実施例では画素電極404の上に第1の誘電体膜701(低屈折率膜)、第2の誘電体膜702(高屈折率膜)、第3の誘電体膜703(低屈折率膜)、第4の誘電体膜704(高屈折率膜)を積層形成する。
【0085】
なお、第1及び第3の誘電体膜には屈折率(nL )が 1.2〜1.6 程度と低めの材料を用い、第2及び第4の誘電体膜には屈折率(nH )が 1.8〜2.5 と高めの材料を用いた。
【0086】
また、本実施例は説明の便宜上、第1及び第2の誘電体膜でなる誘電体多層膜を誘電体(C)705と呼び、第3及び第4の誘電体膜でなる誘電体多層膜を誘電体(D)706と呼ぶことにする。
【0087】
本実施例では実施例2と異なり、誘電体(C)及び誘電体(D)の中で設定する中心波長を変化させてシミュレーションを行った。即ち、第1の誘電体膜701及び第3の誘電体膜703(どちらも低屈折率膜)の中心波長を同一波長(λL )に設定し、第2の誘電体膜702及び第4の誘電体膜704(どちらも高屈折率膜)の中心波長を同一波長(λH )に設定する様にした。
【0088】
なお、本実施例では第1及び第3の誘電体膜として同一屈折率の低屈折率膜を用いているが、それぞれ異なる屈折率としても構わない。本実施例の場合、誘電体(C)及び誘電体(D)という単位の中で低屈折率膜と高屈折率膜の積層構造とを形成していれば問題はない。
【0089】
以上の様な構造について、可視光領域内において両者の中心波長を幅広く組み合わせたシミュレーションを行ない、最適な増反射条件を求めた。
【0090】
なお、屈折率の組み合わせに関しては模式的には図7(B)の様に示される。図7(B)に示す様に、金属膜707(画素電極)上には低屈折率膜と高屈折率膜とが交互に形成される。勿論、(低)とは低屈折率膜を、(高)とは高屈折率膜を意味する。
【0091】
ここで、本実施例の構造とした時のシミュレーション結果を図8に示す。図8(A)〜(C)は横軸に波長、縦軸に反射率をプロットしたグラフであり、高屈折率膜の中心波長を 550nm、 600nm、 650nmに固定した場合のそれぞれについて、低屈折率膜の中心波長を変化させた場合を表している。
【0092】
なお、実際にはさらに多くのデータを取得しているが、おおよその傾向は同じで、低屈折率膜の中心波長も高屈折率膜の中心波長も長波長側に設定するほど、反射率の低下する波長域が長波長側に移動する傾向にある。
【0093】
次に、上述のシミュレーション結果をまとめたものを図9に示す。なお、図9では横軸に高屈折率膜(702と704の誘電体膜)の中心波長、縦軸に可視光領域における平均反射率をとり、低屈折率膜(701と703)の誘電体膜)の中心波長を 350〜600 nmの範囲で振った時のデータをプロットしている。また、屈折率は実施例1、2と同様に、低屈折率膜は1.43とし、高屈折率膜は2.04とした。
【0094】
図9より、本出願人は可視光領域における平均反射率が0.91以上となる条件は、
(1) 500nm≦λL ≦ 550nm、 400nm≦λH ≦ 500nm
(2) 350nm≦λL ≦ 500nm、 500nm≦λH ≦ 550nm
(3) 350nm≦λL ≦ 500nm、 550nm≦λH ≦ 750nm
であるとした。ただしλL は低屈折率膜の中心波長、λH は高屈折率膜の中心波長とする。勿論、設定する中心波長は(1)、(2)又は(3)のいずれかの条件を満たす様に選択すれば良い。
【0095】
さらに、平均反射率が0.93以上となる様な条件は、
(4) 500nm≦λL ≦ 525nm、 400nm≦λH ≦ 500nm
(5) 450nm≦λL ≦ 500nm、 500nm≦λH ≦ 550nm
(6) 400nm≦λL ≦ 450nm、 550nm≦λH ≦ 650nm
(7) 350nm≦λL ≦ 400nm、 600nm≦λH ≦ 700nm
であるとした。ただしλL 、λH はの定義は上述の通りであり、(4)、(5)、(6)又は(7)のいずれかの条件を満たせば良い。
【0096】
従って、(1)の条件範囲から中心波長を選択する場合、第1及び第3の誘電体膜の膜厚並びに屈折率を各々dL 、nL とし、第2及び第4の誘電体膜の膜厚並びに屈折率を各々dH 、nH とする時、第1及び第3の誘電体膜の膜厚dL 並びに前記第2及び第4の誘電体膜の膜厚dH は、 500nm≦λL ≦550 nm、 400nm≦λH ≦500 nm(ただしλL =4nL L 、λH =4nH H )を満たす様に調節される。勿論、他の(2)〜(7)の条件範囲においても同様である。
【0097】
上記の範囲内において、中心波長λL 及びλH を適切に設定することで0.91以上(好ましくは0.93以上)の高い平均反射率の画素電極を形成することができる。
【0098】
また実際には、実施例1と同様に低屈折率膜と高屈折率膜とからなる誘電体膜の膜厚を制御することで所望の中心波長に調節し、上述の様な構造の増反射膜を形成する。
【0099】
なお、実施例1と同様に、低屈折率膜の屈折率(nL )と高屈折率膜の屈折率(nH )との比(nL /nH )が0.7以下となる組み合わせであれば、上述の波長範囲は全て有効となる。
【0100】
また、実施例1にも示した様に、誘電体容量による液晶の電圧損失を防ぐためにも低屈折率膜の膜厚を高屈折率膜の膜厚より薄くすることが有効である。
【0101】
〔実施例4〕
実際に本実施例の構造を有する反射型LCDを試作して、本願発明を適用した場合と適用しない場合とについて反射率の比較を行ったところ、図10に示す様な結果が得られた。なお、本実施例では画素電極としてアルミニウム膜に1wt% のチタンを含有させた材料を用いた。膜厚は 200nmである。
【0102】
また、画素電極の上には下から順に誘電体多層膜、配向膜(膜厚 240nm)、液晶層(3μm)、配向膜( 240nm)、透明導電膜( 120nm)、ガラス基板が設けられており、これらを透過した光が画素電極表面で反射される。従って、ここで得られた反射率は配向膜等による光損失を含めた反射率である。
【0103】
図10に示す様に、リファレンスとした画素電極のみの構造に較べて本願発明を採用した画素電極の構造では明らかに反射率が向上することが確認された。なお、本願発明を採用しない場合には視光領域における平均反射率は80.1%であったが、実施例1の構造を採用した画素電極では平均反射率が85.5%、実施例2の構造を採用した画素電極では平均反射率が86.8%と、大幅に反射率を改善することができた。
【0104】
また、上記反射型LCDについて、液晶のしきい値特性及び液晶の応答速度を比較検討した。その結果、本願発明を適用することで液晶のしきい値特性及び応答速度に影響はなく、液晶の電気特性に悪影響を与える様な弊害は生じないことが確認された。
【0105】
また、本実施例の構造を採用した反射型LCDを用いて実際に液晶プロジェクターを組み立ててみたところ、従来に較べて明るい表示が可能となり、輝度及びコントラストの向上が実現された。
【0106】
〔実施例5〕
本実施例では、増反射膜を形成する誘電体膜の成膜方法としてスピンコート法を用いる場合について説明する。なお、実施例1〜実施例4に示したデータは誘電体膜をスピンコート法により成膜している。
【0107】
誘電体膜をスピンコート法で成膜する場合、塗布溶液としては有機溶媒中に無機固形分を分散させたコロイド溶液を用いれば良い。膜厚は溶液の濃度、スピンコート時の回転数、スピン時間などで決定される。この条件は成膜する誘電体膜の種類によっても異なるので実施者が適宜設定すれば良い。
【0108】
本出願人は日産化学製のL−1001(屈折率1.43)を1/3に希釈した溶液とH−1000(屈折率2.04)を1/3に希釈した溶液を用いた。その際、L−1001の塗布条件(スピン時間と回転数)は、1st :500rpm、5sec、2nd :2000rpm 、20sec とした。また、H−1000の塗布条件は、1st :500rpm、5sec、2nd :1000rpm 、20sec とした。
【0109】
そして、スピンコートした誘電体膜に対して90℃5分のプリベークを行ない、その後、250℃2時間のポストベークを行った。勿論、この様なベーク工程(キュア工程とも呼ぶ)は本実施例の条件に限定されるものではない。こうして所望の屈折率と膜厚を有する誘電体膜を得た。
【0110】
本願発明では画素電極を形成した後(画素電極形成のためのパターニング工程を行った後)に誘電体膜を形成するため、画素電極によって形成された段差を覆う様にして誘電体膜を形成しなければならない。
【0111】
そのため、本実施例の様に段差被覆性の高いスピンコート法を利用することは非常に有効である。スピンコート法を利用することで段差を十分に平坦化する様な状態で誘電体膜が形成され、その上に形成される配向膜は十分に平坦なものとなる。従って、液晶層は平坦面上に形成されることになり、段差によるディスクリネーションの発生などを防止することができる。
【0112】
〔実施例6〕
実施例1〜実施例4の構成に従って図1、図4又は図7の構造を形成したら、誘電体多層膜上に配向膜を形成する。また、対向電極と配向膜とを備えた対向基板を用意し、TFT側基板と対向基板との間に液晶材料を封入すれば図11に示す様な構造のアクティブマトリクス型液晶表示装置が完成する。液晶材料を封入する工程は、公知のセル組工程を用いれば良いので詳細な説明は省略する。
【0113】
なお、図11において11は絶縁表面を有する基板、12は画素マトリクス回路、13はソースドライバー回路、14はゲイトドライバー回路、15は対向基板、16はFPC(フレキシブルプリントサーキット)、17は信号処理回路である。
【0114】
信号処理回路17としては、D/Aコンバータ、γ補正回路、信号分割回路などの従来ICで代用していた様な処理を行う回路を形成することができる。勿論、ガラス基板上にICチップを設けて、ICチップ上で信号処理を行うことも可能である。
【0115】
さらに、本実施例では液晶表示装置を例に挙げて説明しているが、アクティブマトリクス型の表示装置であればEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置やEC(エレクトロクロミックス)表示装置に本願発明を適用することも可能であることは言うまでもない。
【0116】
〔実施例7〕
本願発明の電気光学装置は、様々な電子機器のディスプレイとして利用される。その様な電子機器としては、ビデオカメラ、スチルカメラ、プロジェクター、プロジェクションTV、ヘッドマウントディスプレイ、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話等)などが挙げられる。それらの一例を図12に示す。
【0117】
図12(A)は携帯電話であり、本体2001、音声出力部2002、音声入力部2003、表示装置2004、操作スイッチ2005、アンテナ2006で構成される。本願発明を表示装置2004等に適用することができる。
【0118】
図12(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示装置2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106で構成される。本願発明を表示装置2102に適用することができる。
【0119】
図12(C)はモバイルコンピュータ(モービルコンピュータ)であり、本体2201、カメラ部2202、受像部2203、操作スイッチ2204、表示装置2205で構成される。本願発明は表示装置2205等に適用できる。
【0120】
図12(D)はヘッドマウントディスプレイであり、本体2301、表示装置2302、バンド部2303で構成される。本発明は表示装置2302に適用することができる。
【0121】
図12(E)はリア型プロジェクターであり、本体2401、光源2402、表示装置2403、偏光ビームスプリッタ2404、リフレクター2405、2406、スクリーン2407で構成される。本発明は表示装置2403に適用することができる。
【0122】
図12(F)はフロント型プロジェクターであり、本体2501、光源2502、表示装置2503、光学系2504、スクリーン2505で構成される。本発明は表示装置2503に適用することができる。
【0123】
以上の様に、本願発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0124】
【発明の効果】
本願発明を実施することで、アルミニウム系材料を用いた画素電極の反射率を大幅に向上させることが可能となった。また、その反射光は波長 400〜700 nmの可視光領域においてほぼ一定値となる様なフラットな特性を示した。
【0125】
特に、誘電体膜を2層に重ねて形成した増反射膜を設けた場合、反射光のフラットネスが良好であり、また、増反射膜自体の膜厚が薄くて済むので液晶の電圧損失を極力抑えることができた。
【0126】
また、誘電体膜を4層に重ねた構造は、2層構造に較べて平均反射率は高くなるが、波長依存性が大きくなってしまう傾向にあるが、本願発明を実施することでその様な波長依存性の少ないフラットな反射特性を得ることができた。
【0127】
以上により、加工性の困難な銀電極などを利用することなく、汎用性の高いアルミニウム系材料を用いて反射率91%以上(好ましくは93%以上)の画素電極を有する液晶表示装置を作製することが可能となり、低コストで液晶表示装置を得ることが可能となった。
【0128】
また、画素電極の光反射率を向上させ、光の有効利用を図ることでバックライトの出力を抑えても明るい表示が可能となった。即ち、バックライトが消費する消費電力を低減し、コストパフォーマンスの高い液晶表示装置を実現することが可能となった。
【0129】
さらに、その様な液晶表示装置を表示ディスプレイとして搭載した電子機器(具体的には液晶プロジェクター等)のコントラストや輝度を向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 誘電体2層構造の画素構造を示す図。
【図2】 誘電体2層膜の反射率特性を示す図。
【図3】 誘電体2層膜の平均反射率を示す図。
【図4】 誘電体4層構造の画素構造を示す図。
【図5】 誘電体4層構造の反射率特性を示す図。
【図6】 誘電体4層構造の平均反射率を示す図。
【図7】 誘電体4層構造の画素構造を示す図。
【図8】 誘電体4層構造の反射率特性を示す図。
【図9】 誘電体4層構造の平均反射率を示す図。
【図10】 液晶セルの反射率特性を示す図。
【図11】 液晶表示装置の構成を示す図。
【図12】 電子機器の構成を示す図。

Claims (13)

  1. 金属膜からなる画素電極と、
    前記画素電極上に形成された第1の誘電体膜と、
    前記第1の誘電体膜上に形成された、前記第1の誘電体膜よりも屈折率の高い第2の誘電体膜とを有し、
    前記第1の誘電体膜の膜厚及び屈折率を各々dL、n L 、前記第2の誘電体膜の膜厚及び屈折率を各々dH、nHし、その際に前記膜厚d L は前記膜厚d H より薄く、かつ前記第1の誘電体膜の膜厚dL及び第2の誘電体膜の膜厚dHは、
    (1)400nm≦λL≦500nm、400nm≦λH≦700nm
    (2)500nm≦λL≦600nm、300nm≦λH≦450nm
    (ただしλL=4nLL、λH=4nHH
    のいずれかの条件を満たすことを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  2. 請求項1において、
    前記第1の誘電体膜の屈折率は1.2〜1.6であることを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記第2の誘電体膜の屈折率は1.8〜2.5であることを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  4. 請求項1又は請求項2において、
    前記第1の誘電体膜は、アクリル、ポリイミド、フッ化マグネシウムまたは二酸化シリコンであることを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  5. 請求項1又は請求項3において、
    前記第2の誘電体膜は、二酸化チタン、ジルコニア、ITO(酸化インジウムスズ)、窒化シリコンまたは二酸化セリウムであることを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  6. 金属膜からなる画素電極と、
    前記画素電極上に形成された第1の誘電体膜と、
    前記第1の誘電体膜上に形成された前記第1の誘電体膜よりも屈折率の高い第2の誘電体膜と、
    前記第2の誘電体膜上に形成され、前記第1の誘電体膜と同一膜厚で、かつ同一屈折率の第3の誘電体膜と、
    前記第3の誘電体膜上に形成され、前記第3の誘電体膜よりも屈折率が高く、前記第2の誘電体膜と同一膜厚で、かつ同一屈折率の第4の誘電体膜とを有し、
    前記第1及び第3の誘電体膜の膜厚をdL、前記第1及び第3の誘電体膜の屈折率をnL、前記第2及び第4の誘電体膜の膜厚をdH、前記第2及び第4の誘電体膜の屈折率をnHし、その際に前記膜厚d L は前記膜厚d H より薄く、かつ前記第1及び第3の誘電体膜の膜厚dL並びに前記第2及び第4の誘電体膜の膜厚dHは、
    (1)500nm≦λL≦550nm、400nm≦λH≦500nm
    (2)350nm≦λL≦500nm、500nm≦λH≦550nm
    (3)350nm≦λL≦500nm、550nm≦λH≦750nm
    (ただしλL=4nLL、λH=4nHH
    のうちのいずれかの条件を満たすことを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  7. 請求項6において、
    前記第1の誘電体膜及び前記第3の誘電体膜の屈折率は1.2〜1.6であることを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  8. 請求項6又は7において、
    前記第2の誘電体膜及び前記第4の誘電体膜の屈折率は1.8〜2.5であることを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  9. 請求項6において、
    前記第1の誘電体膜及び前記第3の誘電体膜は、アクリル、ポリイミド、フッ化マグネシウムまたは二酸化シリコンであることを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  10. 請求項6又において、
    前記第2の誘電体膜及び前記第4の誘電体膜は、二酸化チタン、ジルコニア、ITO(酸化インジウムスズ)、窒化シリコンまたは二酸化セリウムであることを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれか一項において、
    L/nH≦0.7の関係が成り立つことを特徴とする反射型の液晶表示装置。
  12. 請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載された反射型の液晶表示装置を表示ディスプレイとして有することを特徴とする電子機器。
  13. 請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載された反射型の液晶表示装置を有することを特徴とするビデオカメラ、スチルカメラ、プロジェクター、プロジェクションテレビ、ヘッドマウントディスプレイ、ナビゲーションシステム、パーソナルコンピュータ、または携帯情報端末。
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