JP4137469B2 - 流動性向上剤および燃料油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワックス含有基油とりわけ燃料油の流動性および通油性を改良する流動性向上剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油中間留出油(ディーゼル燃料油、A重油等)は冬期あるいは寒冷地において低温にさらされると、その中に含まれるパラフィンワックスやワックス状物質が析出し、燃料の配管系にあるフィルターを目詰まりさせたり、配管系内で固化する等の問題が発生している。
【0003】
これらの低温での流動性に関する問題を解決するため、従来、エチレン−不飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体を燃料油に添加する方法が数多く提案されている。例えば、特公昭39−20069号公報、特公昭48−23165号公報、特開昭59−136391号公報などに記載されている。また、アルカントリオールのポリオキシアルキレンエーテルと直鎖飽和脂肪酸との完全エステルおよびそれらエステルとエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、長鎖アルキル基を含む(メタ)アクリル酸共重合体等とを併用して添加する方法[特公平2−51477号公報]、ポリオキシアルキレングリコールの脂肪酸エステルおよびこれらのエステルとエチレン−酢酸ビニル共重合体とを併用して添加する方法[特開昭57−177092号公報]、3価以上の多価アルコールまたはその部分エステルのアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸との不完全エステルを添加する方法[特開昭61−181892号公報]が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記に開示されているものの低温流動性向上効果はいまだ不十分であるため、基油中に多量の添加が必要である。その結果、ワックス析出温度(CP)以上であってもフィルターで目詰まりを起こすという問題点がある。
さらに近年、中間留出油に対する需要が増大しており、この需要に対応した結果、ディーゼル燃料油およびA重油の蒸留性状は蒸留沸点範囲の狭い、すなわちナローカットな中間留出油になっている。また、軽油中の硫黄含量を低減するため水素化脱硫が行われることが多く、さらにナローな蒸留性状になる傾向にある。これらの中間留出油ではより多くの流動性向上剤の添加が必要であり、その問題はより大きくなっている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果,蒸留沸点範囲の広い燃料油のみならず、蒸留沸点範囲の狭い燃料油に対しても従来のものに比べ少量の添加で低温流動性を大幅に向上でき、かつ基油への溶解性が良好で通油性に問題のない流動性向上剤を見いだし本発明に至った。
すなわち本発明は、エチレン(a)および下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物からなる群から選ばれる1種以上の単量体(b)から誘導される単位を必須構成単位とする共重合体(A)からなることを特徴とする燃料油用流動性向上剤、該流動性向上剤を含む燃料油添加剤組成物および燃料油組成物である。
R1−COO−R2 (1)
R2−COO−R1 (2)
R3−(COOR1)2 (3)
式中、R1は炭素数5〜23の不飽和脂肪族炭化水素基、R2は炭素数2〜4のアルケニル基、R3は炭素数2〜4のアルケニレン基である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、一般式(1)〜(3)におけるR1は炭素数5〜23の不飽和脂肪族炭化水素基であり、アルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルケニルアルキル基、アルキルシクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、シクロアルカジエニルアルキル基およびアルキルシクロアルカジエニル基などが含まれる。
【0007】
アルケニル基としては、例えば、直鎖アルケニル基(n−ペンテニル基、n−へキセニル基、n−オクテニル基、n−ウンデセニル基、8−ヘプタデセニル基、n−ヘニコセニル基など)および分岐アルケニル基(2−メチルペンテニル基、テトラメチルオクテニル基など);
アルカジエニル基としては、例えば、直鎖アルカジエニル基(1,4−ペンタジエニル基、1,5−ヘキサジエニル基、ウンデカジエニル基、8,11−ヘプタデカジエニル基など)および分岐アルカジエニル基(2−メチル1,5−ペンタジエニル基など);
アルカトリエニル基としては、例えば、直鎖アルカトリエニル基(1,3,5−オクタトリエニル基、8,11,14−ヘプタトリエニル基など);
シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ノルボルネニル基など;
シクロアルケニルアルキル基としては、例えば、シクロペンテニルエチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルブチル基など;
アルキルシクロアルケニル基としては、例えば、2−メチルシクロペンテニル基、3−ノニルシクロヘキセニル基など;
シクロアルカジエニル基としては、例えば、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、ジシクロペンタジエニル基、テトラヒドロインデニル基など;
シクロアルカジエニルアルキル基としては、例えば、シクロペンタジエニルエチル基、シクロヘキサジエニルメチル基など;
アルキルシクロアルカジエニル基としては、例えば、3メチルシクロペンタジエニル基、4−メチルシクロヘキサジエニル基など;
が挙げられる。
R1のうち、好ましいのはアルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基およびシクロアルケニル基であり、さらに好ましいのは、アルケニル基、アルカジエニル基およびアルカトリエニル基である。
また、R1の炭素数は好ましくは10〜24、さらに12〜20、特に18が好ましく、直鎖が好ましい。
【0008】
R2は炭素数2〜4のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、プロペニル基およびイソプロペニル基などが含まれる。
R2のうち好ましいのはビニル基およびアリル基、特にビニル基である。
【0009】
R3は炭素数2〜4のアルケニレン基であり、例えば、ビニレン基、1,3−プロペニレン基、1、2−プロペニレン基およびイソプロペニレン基などがあげられ、好ましいものはビニレン基およびイソプロペニレン基、特にビニレン基である。
【0010】
一般式(1)で表される単量体(b1)のうち、R2がビニル基のものの具体例としては、炭素数6〜24の不飽和脂肪族カルボン酸(炭素数はカルボニル炭素も含む:以下同様)のビニルエステル(b11)[例えば、デセン酸ビニル、ドデセン酸ビニル、テトラデセン酸ビニル、ヘキサデセン酸ビニル、オレイン酸ビニルおよびエイコセン酸ビニルなどR1がアルケニル基のもの;ドデカジエン酸ビニルおよびリノール酸ビニルなどR1がアルカジエニル基のもの、リノレン酸ビニルなどR1がアルカトリエニル基のものなど]、並びにR2がその他のアルケニル基のものの具体例としては、炭素数6〜24の不飽和脂肪族カルボン酸のアルケニルエステル(b12)[例えば、オレイン酸アリル、オレイン酸プロペニルおよびオレイン酸イソプロペニルなどR1がアルケニル基のもの;リノール酸アリル、リノール酸プロペニルおよびリノール酸イソプロペニルなどR1がアルカジエニル基のもの;リノレン酸アリル、リノレン酸プロペニルおよびリノレン酸イソプロペニルなどR1がアルカトリエニル基のもの]などが挙げられ、これら単独でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
一般式(2)で表される単量体(b2)のうち、R2がビニル基のもの(b21)の具体例としては、アクリル酸の不飽和脂肪族炭化水素基エステル[例えば、アクリル酸ヘキセニル、アクリル酸オクテニル、アクリル酸デセニル、アクリル酸ドデセニルおよびアクリル酸オレイルなどR1がアルケニル基のもの;アクリル酸リノレイルなどR1がアルカジエニル基もしくはアルカトリエニル基のもの];R2がイソプロペニル基のもの(b22)の具体例としては、メタクリル酸の不飽和脂肪族炭化水素エステル[例えば、メタクリル酸ヘキセニル、メタクリル酸オクテニル、メタクリル酸デセニル、メタクリル酸ドデセニルおよびメタクリル酸オレイルなどR1がアルケニル基のもの;メタクリル酸リノレイルなどR1がアルカジエニル基もしくはアルカトリエニル基のもの];R2がその他のアルケニル基のもの(b23)の具体例としては、クロトン酸アルケニルエステル[例えば、クロトン酸デセニル、クロトン酸ドデセニルおよびクロトン酸オレイルなどR1がアルケニル基のものなど];が挙げられる。
【0012】
一般式(3)で表される単量体(b3)のうち、R3がビニレン基のもの(b31)の具体例としては、マレイン酸もしくはフマル酸の不飽和脂肪族炭化水素基ジエステル[例えば、マレイン酸ジヘキセニル、マレイン酸酸ジオクテニル、マレイン酸ジデセニル、フマル酸ドデセニルおよびマレイン酸オレイルなどR1がアルケニル基のもの;マレイン酸ジリノレイルなどR1がアルカジエニル基もしくはアルカトリエニル基のもの];R3がイソプロペニレン基のもの(b32)の具体例としては、例えば、イタコン酸ジヘキセニル、イタコン酸ジオクテニル、イタコン酸ジデセニル、イタコン酸ドデセニルおよびイタコン酸ジオレイルなどR1がアルケニル基のもの;イタコン酸ジリノレイルなどR1がアルカジエニル基もしくはアルカトリエニル基のもの];が挙げられる。
【0013】
これら(b)のうち好のましいものは(b1)であり、さらに好ましいものは(b11)、特に好ましいものは炭素数18の不飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステルであり、とりわけオレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニルおよびその混合物が好ましい。
【0014】
本発明における(A)は、(a)および(b)から誘導される単位の他に必要により1種以上の他の単量体(c)から誘導される単位を構成単位として含んでいてもよい。
(c)としては以下の、飽和脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸のアルケニルエステル(c1)、飽和脂肪族アルコールまたは芳香族アルコールなどの不飽和カルボン酸エステル(c2)並びにその他の単量体(c3)が挙げられる。
【0015】
(c1)としては、(c11)飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは炭素数1〜30の直鎖または分岐アルキル基を有するカルボン酸)のアルケニル(ビニル、アリル、イソプロペニルなど)エステル[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、デカン酸ビニル、ドデカン酸ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、酪酸アリル、ヘキサン酸アリル、2-エチルヘキサン酸アリル、ネオデカン酸アリル、デカン酸アリル、ドデカン酸アリル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、ヘキサン酸イソプロペニル、2-エチルヘキサン酸イソプロペニル、ネオデカン酸イソプロペニル、デカン酸イソプロペニル、ドデカン酸イソプロペニルなど];
(c12)シクロアルキルカルボン酸のアルケニル(ビニル、アリル、イソプロペニルなど)エステル[シクロヘキサン酸ビニル、シクロオクタン酸ビニル、デカヒドロナフチル酸ビニル、ビシクロペンチル酸プロペニルなど];
(c13)芳香族カルボン酸のアルケニル(ビニル、アリル、イソプロペニルなど)エステル[安息香酸ビニル、安息香酸アリルなど]などが挙げられる。
【0016】
(c2)としては、(c21)アルキルアルコール(好ましくは炭素数1〜30の直鎖または分岐アルキルアルコール)の不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸など]エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ2-エチルヘキシル、マレイン酸モノドデシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ビス2-エチルヘキシル、マレイン酸ジドデシル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノ2-エチルヘキシル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ビス2-エチルヘキシル、フマル酸ジドデシルイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノ2-エチルヘキシル、イタコン酸モノドデシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ビス2-エチルヘキシル、イタコン酸ジドデシルなど];(c22)脂環アルコールの不飽和カルボン酸エステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルおよび(メタ)アクリル酸デカヒドロナフチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエチルなど];(c23)芳香族アルコールの不飽和カルボン酸エステル[(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、マレイン酸モノベンジル、マレイン酸ジフェニル、フマル酸ジベンジル、フマル酸モノベンジル、フマル酸ジフェニル、フマル酸ジベンジル、イタコン酸モノベンジル、イタコン酸ジフェニル、イタコン酸ジベンジルなど];(c24)多価アルコール類の不飽和カルボン酸エステル[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよび(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ジ(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。
【0017】
その他の単量体(c3)としては、炭素数3〜50の直鎖または分岐の1-オレフィン[プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、1-オクテン、1-ドデセン、1-テトラデセンおよび1-オクタデセンおよびその他のα−オレフィンなど];脂環式炭化水素系ビニル単量体[シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ノルボルネン、ピネン、インデン、ビニルシクロヘキセンなど];炭素数2〜4のアルケニル基を有するアルキルアルケニルエーテル[炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基を有するアルキルアルケニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、オクチルアリルエーテル、ドデシルアリルエーテルなど)、アリールビニルエーテル(フェニルビニルエーテルなど)];芳香族炭化水素系ビニル単量体[スチレン、ビニルトルエンなど];炭素数4〜12のアルカジエン[ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,7-オクタジエンなど];ビニルケトン類[メチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなど];ハロゲン原子含有ビニル単量体[塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニルなど];アミド基もしくはイミド基含有ビニル単量体{非置換もしくはアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-i-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなど]、N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドンなど]、および非置換もしくは置換マレイミド[マレイミド、フェニルマレイミド、エチルマレイミド、ドデシルマレイミドなど]など};ヒドロキシル基含有ビニル単量体{ヒドロキシル基含有芳香族ビニル単量体[p-ヒドロキシスチレンなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど]、および炭素数2〜12のアルケノール[ビニルアルコール(カルボン酸ビニル単位の加水分解により形成される)、(メタ)アリルアルコール、(イソ)プロペニルアルコール、1-オクテノールなど]など};1〜3級アミノ基含有単量体{炭素数2〜6のアルケニルアミン[ビニルアミン、アリルアミン、クロチルアミンなど]、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレートなど]、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリルアミド[アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなど]、アミノ基含有芳香族ビニル単量体[N,N-ジメチルアミノスチレンなど]、含窒素複素環含有ビニル単量体[ビニルピリジン、ビニルカルバゾールなど]など};ニトリル基またはニトロ基含有ビニル単量体[(メタ)アクロロニトリル、シアノスチレン、ニトロスチレンなど];エポキシ基含有ビニル単量体[グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテルなど];カルボキシル基含有ビニルモノマー[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸および(無水)イタコン酸、シトラコン酸およびアコニット酸など];ポリオキシアルキレン鎖を有するビニルモノマー[(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(重合度=2〜100)グリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸ポリオキシプロピレン(重合度=2〜100)グリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(重合度=2〜100)グリコールエステル、(メタ)アクリル酸ラウロキシポリオキシエチレン(重合度=2〜100)グリコールエステルなど];イソシアネート基含有ビニルモノマー[イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルメチルベンジルイソシアネートなど]などが挙げられる。
【0018】
これら(c)のうち好ましいものは(c1)、(c2)およびこれらと少量の(c3)の併用であり、さらに好ましいものは(c11)およびこれらと少量の他の単量体の併用であり、特に好ましいものは炭素数2〜4の飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステルおよびこれらと少量の他の単量体の併用であり、とりわけ好ましいものは酢酸ビニルである。
【0019】
本発明において重合体(A)は、▲1▼それを構成する単量体(a)、(b)および(c)そのものを共重合してもよいが、▲2▼(A)に誘導可能な他の単量体を共重合した後、それをさらに反応せしめて目的の(A)を得ることもできる。▲2▼の方法のほうが、容易に目的の(A)が得られる点で好ましい。
▲2▼の方法としては、エチレン(a)および炭素数2〜4の直鎖または分岐の飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステル(d)[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど]から誘導される単位を必須構成単位とする共重合体(A0)に、炭素数6〜24の不飽和脂肪族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体[酸無水物、酸ハライド、低級アルコール(炭素数1〜4)エステル]を用いてエステル交換反応させる方法などが挙げられる。
【0020】
(A)における構成単位のうち、エチレン基(a)の割合は、好ましくは60〜98モル%、さらに好ましくは70〜95モル%、とくに好ましくは80〜92モル%であり、重量%としては好ましくは30〜80重量%、さらに好ましくは40〜65、とくに好ましくは45〜60重量%である。エチレン基の割合が60モル%以上(または30重量%以上)であれば、流動性向上効果に優れる点で好ましく、98モル%以下(または80重量%以下)であれば通油性に優れる点で好ましい。
(b)の割合は、好ましくは1〜40モル%、さらに好ましくは2〜30モル%、とくに好ましくは5〜15モル%であり、重量%としては好ましくは5〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、とくに好ましくは20〜50重量%である。(b)の割合を1〜40モル%(または5〜70重量%)であれば、流動性向上効果に優れる点で好ましい。
また、必要により併用される(c)の割合は、好ましくは全構成単位のうちの30モル%以下であり、さらに好ましくは20モル%以下、特に好ましくは3〜15モル%である。
【0021】
(A)の溶解度パラメーター(SP値)は、低温流動性および溶解性の観点から、好ましくは8.4〜9.7、さらに好ましくは8.6〜9.5、特に好ましくは8.9〜9.3である。8.4以上にすることで流動性向上効果に優れる点で好ましく、9.7以下にすることで基油に対する溶解性が向上する点で好ましい。
なお、本発明のSP値は、Fedors法[Poym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]によって算出される値である。
【0022】
(A)の重量平均分子量は好ましくは1,000〜100,000、さらに好ましくは3,000〜50,000である。重量平均分子量は標準物質にポリスチレンを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算分子量として測定することが出来る。
【0023】
(A)の分岐度は、好ましくは4%以下、さらに好ましくは3.5%以下、特に好ましくは3.0%以下である。なお、分岐度とは(a)、(b)および(c)のビニル基由来のメチレン基、メチン基の総和に対する枝分かれによって生じたメチル基の比率であり、エチレンおよびビニル基由来のメチレン基とメチン基の総和100個に対する分岐由来のメチル基の個数である。
分岐度は1H-NMRによって求めることができる。たとえばエチレンとオレイン酸ビニルの共重合体の場合は、0.8〜0.9ppmのピーク強度[1](分岐メチル基およびオレイン酸のメチル基由来)と、1.0〜1.9ppmのピーク強度[2](エチレンおよびオレイン酸ビニルのビニルメチレン由来)と、2.0〜2.3ppm付近のピーク強度[3](オレイン酸基のカルボニル基の隣の炭素に結合しているメチレン基由来)と4.7〜5.0ppmのピーク強度[4](オレイン酸ビニルのビニルメチン由来)から下式のように[1]および[2]と重なっているオレイン酸基の吸収を減じて算出する。
分岐度(%)=([1]/3−[4])÷([2]/2−[4]×12+[1]/3)×100
オレイン酸ビニル以外のアルケニルエステルまたはα-オレフィンなど1H-NMRでは分岐と単量体側鎖との区別が困難な単量体から誘導される単位を構成単位として含有する場合は、重合時の仕込量から各単量体の共重合比を算出し、そのモル比から[1]および[2]と重なっている単量体側鎖の吸収を減じて算出する。
【0024】
本発明の共重合体(A)の具体例としては、例えばエチレン/オレイン酸ビニル共重合体、エチレン/オレイン酸ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/オレイン酸ビニル/4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン/リノール酸ビニル共重合体、エチレン/リノール酸ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/リノレン酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0025】
(A)の製造方法は、公知の重合方法が使用でき、単量体を重合して直接製造する方法(P1)以外に、既に製造された共重合体(A0)をさらに有機化学反応させる方法(P2)も含まれる。
【0026】
(P1)単量体を重合して直接製造する方法:
(a)、(b)、および必要により(c)を溶剤中もしくは無溶剤下で重合触媒を使用してラジカル重合する方法である。
重合温度は通常30〜150℃であり、加圧下での反応が好ましい。溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、ベンゼンなど)、脂肪族炭化水素系溶剤(例えば、n−へキサン、n−オクタンなど)、ケトン系溶剤(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル系溶剤(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)などが挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなど)や過酸化物系(例えば、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなど)を用い、必要により、連鎖移動剤(例えば、アルキルメルカプタン、アルコール類、アルデヒド類など)を用いてもよい。重合反応後は必要により溶剤を留去してもよい。
【0027】
(P2)既に製造された共重合体をさらに有機化学反応させる方法:
上記(P1)と同様にして、(a)、(d)と必要により(c)を共重合し、重合体(A0)を得る。次いで(A0)を、アルカリもしくは酸触媒(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、カリウム-t-ブトキシド、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸など)の存在下、水もしくは低級アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール)により加水分解する。さらにこれの加水分解物に、炭素数6〜24の不飽和脂肪族カルボン酸またはその誘導体(酸無水物、酸ハライド、低級アルコール(炭素数1〜4)エステル)を加えて、エステル化もしくはエステル交換反応させる方法などが挙げられる。
【0028】
本発明の(A)からなる流動性向上剤は後述の燃料油組成物の重量に基づいて好ましくは10〜5,000ppm、さらに好ましくは20〜2,000ppm、特に好ましくは20〜700ppm添加される。
【0029】
本発明においては、共重合体(A)とともに、エチレン(a)および(c)から誘導される単位を必須構成単位とする共重合体(B)の1種以上を含有した燃料油用添加剤組成物とすることもできる。(B)を併用することで、より少量の(A)で低温流動性が向上できる点で好ましい。
(B)を構成する(c)のうち、好ましいものは前記と同様な炭素数2〜24の直鎖または分岐の飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル、および炭素数3〜18の1−オレフィンであり、これらは単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)中の(a)/(c)の構成比率(モル%)は、好ましくは80〜99/20〜1、さらに好ましくは85〜98/15〜2である。(a)が80モル%以上、あるいは98モル%以下であれば流動性向上能が良好な点で好ましい。
また、(B)は、上記の(a)および(c)から構成される共重合体にさらに(c)をグラフト共重合したものであってもよい。(c)をグラフト共重合することで基油への溶解性が向上する。グラフト共重合体のグラフト部分を構成する単量体としては、好ましいものは(c2)、さらに好ましいものはフマル酸ジアルキルエステルおよびマレイン酸ジアルキルエステルである。
(A)とともに、他の添加剤として(B)を使用する場合の(A)/(B)の重量比は、好ましくは100〜70/0〜30、さらに好ましくは95〜80/5〜20、特に好ましくは95〜90/5〜10である。(A)が70以上であれば流動性向上効果が充分に発揮できる。
【0030】
本発明の燃料油用添加剤組成物に含まれていてもよい(B)以外の添加剤としては、フェノール系酸化防止剤(C)、炭素数6〜24の不飽和脂肪族カルボン酸(D)およびその他の添加剤が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤(C)としては、フェノール、クレゾール、ハイドロキノン、カテコール、メトキシフェノール、t-ブチルフェノール、ジt-ブチルフェノール、トリt-ブチルフェノール、ジt-ブチルクレゾール、スチレン化フェノールなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、ジt-ブチルフェノール、ジt-ブチルクレゾールおよびスチレン化フェノールである。
(C)を含有させることで、(A)の保管安定性が向上するとともに、燃料油の色相の経日変化が小さくなる点で好ましい。
他の添加剤として(C)を使用する場合の(A)/(C)の重量比は、好ましくは100〜95/0〜5、さらに好ましくは99.99〜97/0.01〜3、特に好ましくは99.98〜98/00.2〜2である。
【0031】
炭素数6〜24の不飽和脂肪族カルボン酸(D)としては、デセン酸、ドデセン酸、ドデカジエン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびエイコセン酸などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびそれらの混合物である。
(D)を含有させることで、燃料油の潤滑性が向上するとともに、添加剤組成物中の後述の希釈剤の量を低減できる点で好ましい。
(A)とともに、他の添加剤として(D)を使用する場合の(A)/(D)の重量比は、好ましくは100〜50/0〜50、さらに好ましくは95〜70/5〜30、特に好ましくは90〜75/10〜25である。
【0032】
その他の添加剤としては、たとえば、ワックス分散剤(フマル酸ジアルキル/酢酸ビニル共重合体、フマル酸ジアルキル/プロピレン共重合体など)、腐食防止剤(ドデシルアミンのエチレンオキサイド付加物、オクチルアミン、脂肪族アミンおよびその塩、有機リン酸エステル、有機スルホン酸塩、アルケニルコハク酸系防錆剤、アルケニルコハク酸のエステル系防錆剤など)、清浄分散剤(ジブチルアミンのエチレンオキサイド付加物、ブタノールのエチレンオキサイド付加物など)、潤滑性向上剤(高級脂肪酸のグリセリンエステル、ソルビタンモノオレート、グリセリンモノオレートなど)、セタン価向上剤(アルキル硝酸エステル類、アミルナイトレート、イソプロピルナイトレートなど)、酸化防止剤(サリチリデン誘導体など)、その他消泡剤、燃焼性向上剤、導電性付与剤、および他の流動性向上剤(ポリアルキルメタクリレート、ポリオールの脂肪酸エステルなど)などが挙げられる。
その他の添加剤の使用量は、燃料油組成物の全重量に基づいて、通常0〜10,000ppm、好ましくは10〜5,000ppmになるような量である。
【0033】
本発明の燃料油用添加剤組成物は、さらに希釈剤で希釈されていてもよい。
あらかじめ希釈剤に溶解し、希釈しておくことで、燃料油などに添加する際に容易に溶解するようになり、低温流動性が発現しやすくなる点で好ましい。
本発明の燃料油用添加剤組成物に含まれてもよい希釈剤としては、以下の溶剤および後述の燃料油などが挙げられる。溶剤としては、脂肪族溶剤{炭素数6〜18の脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン、灯油など)};芳香族溶剤[炭素数7〜15の芳香族溶剤{トルエン、キシレン、エチルベンゼン、炭素数9の芳香族混合溶剤(トリメチルベンゼン、エチルトルエンなどの混合物)、炭素数10〜11の芳香族混合溶剤(ジエチルベンゼン、ジエチルトルエンなどの混合物)など}]など挙げられる。
これらのうち好ましいものは炭素数7〜24の炭化水素、さらに炭素数7〜15の芳香族溶剤であり、とりわけ好ましいものは炭素数9の芳香族混合溶剤および炭素数10〜11の芳香族混合溶剤である。
【0034】
本発明の燃料油用添加剤組成物が希釈剤を含む場合の共重合体成分と希釈剤の重量割合は、共重合体成分と希釈剤の合計重量に対して、好ましくは希釈剤が10〜80重量%、さらに好ましくは25〜60重量%、特に好ましくは30〜50重量%である。希釈剤の割合が多いほうが燃料油などに容易に溶解する点で好ましいが、あまり多いのは経済的ではない。
また、燃料油組成物中の添加剤組成物の含量は、好ましくは15〜25,000ppm、さらに好ましくは25〜1000ppmである。
なお、本発明の添加剤組成物は、その成分をそれぞれ別にして燃料油に添加することもでき、その場合の添加する順序も特に限定されない。
【0035】
本発明の燃料油用添加剤組成物の100℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、さらに好ましくは5〜80mm2/s、特に好ましくは10〜60mm2/sである。動粘度を100mm2/s以下にすることで、燃料油などの基油への溶解が容易になる。
【0036】
本発明の燃料油組成物における燃料油としては、少なくとも炭素数17〜22のワックスを含有する燃料油であり、例えば、低硫黄原油(たとえば、ミナス原油等南方系の原油)の通常の蒸留で得られるJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油、A重油;通常の原油から水素化脱硫処理工程を経て製造される脱硫軽油、A重油;この脱硫軽油と直留軽油(水素化脱硫工程前の軽油)をブレンドして得られる軽油留分から製造されるJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油、A重油が挙げられる。
好ましくは、水素化脱硫処理工程を経て製造される脱硫軽油を50重量%以上使用して製造される、硫黄含有量0.05重量%以下のJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油であり、特に、硫黄含有量0.005重量%以下のJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油が好ましい。
【0037】
また、本発明の流動性向上剤は、燃料油以外のワックス分を含有する油対しても効果を示し、潤滑油などにも有用である。また、石油留分含有のワックス以外にも効果を示し、天然物(例えば動物油や植物油)起因の、偶数のアルキル基を有するワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン等にも効果を示す。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部はいずれも重量部を示す。
【0039】
実施例1
温度計、環流冷却管および撹拌装置の付いたガラス製フラスコに、エチレン/酢酸ビニル共重合体(エチレン/酢酸ビニル=85/15モル%、分岐度3.2%、Mn3300、Mw8300)50部、イソプロピルアルコール50部および水酸化カリウム3.7部を加え、75℃にて撹拌下4時間反応させた。反応終了後、反応混合物をビーカー中の1000部の水に撹拌下に加えた。沈殿したポリマーをろ別、水洗した後、150℃にて減圧乾燥し、部分加水分解物(a-1)を得た。
温度計、環流冷却管おおよび撹拌装置の付いたガラス製フラスコに、不飽和脂肪酸混合物(オレイン酸/リノール酸/リノレン酸=38/55/7重量%)100部と無水酢酸55部を加え、無水酢酸の環流温度で2時間反応させた。次いで、生成した酢酸および残存する無水酢酸を150℃まで昇温しながら常圧で留去し、その後150℃、減圧にて留去することで、不飽和脂肪酸無水物(a-2)を得た。
温度計および撹拌装置の付いたガラス製フラスコに、部分加水分解物(a-1)30部、不飽和脂肪酸無水物(a-2)22.3部を加え、150℃にて撹拌下4時間反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、これに水0.12部、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール0.325部、および希釈剤として炭素数10〜11の石油系芳香族混合溶剤(初留点182℃〜終点204℃)12.2部を加え溶解させることにより、本発明の添加剤組成物(T1)を得た。
添加剤組成物(T1)は、本発明の重合体(A1)60重量%、不飽和脂肪酸20.7重量%、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール0.5重量%、希釈剤18.8重量%の混合物である。
(A1)は、エチレン/酢酸ビニル/炭素数18の不飽和カルボン酸のビニルエステル共重合体であり、その共重合モル比は85/11/4、分岐度は3.2%、Mnは3400、Mwは10700であった。
なお、構成成分の比率および分岐度は1H−NMRから求め、MnおよびMwはGPCを用いて測定した。
【0040】
実施例2
撹拌装置、加熱装置、温度計、窒素吹き込み管を備えたガラス製反応器に、エチレン/酢酸ビニル共重合体(96.5/3.5モル%、分岐度3.4%、Mn2600、Mw6600)500部およびジ2-エチルヘキシルフマレート500部を加え、窒素雰囲気とし、155℃に昇温した。これに155℃にてジータシャリーブチルパーオキサイド20部およびラウリルメルカプタン1.7部を2時間で滴下した。滴下終了後さらに2時間155℃で反応し、重合体(B1)を得た。
(B1)は上記エチレン/酢酸ビニル共重合体にジ2-エチルヘキシルフマレートがグラフトした共重合体であった。
希釈剤を9.0部に減らし、重合体(B1)3.2部を加える以外は実施例1と同様にし、本発明の添加剤組成物(T2)を得た。
添加剤組成物(T2)は、本発明の重合体(A1)60重量%、重合体(B1)4.9重量%、不飽和脂肪酸20.7重量%、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール0.5重量%、希釈剤13.9重量%の混合物である。
【0041】
実施例3
出発共重合体をエチレン/酢酸ビニル共重合体(エチレン/酢酸ビニル=83/17モル%、分岐度1.0%、Mn4300、Mw9100)に変え、水酸化カリウムを3.6部に変える以外は実施例1と同様に加水分解反応し、部分加水分解物(a-3)を得た。
温度計および撹拌装置の付いたガラス製フラスコに、部分加水分解物(a-3)30部、オレイン酸無水物22部を加え、150℃にて撹拌下4時間反応させた。反応終了後、反応混合物をビーカー中の500部のメタノールに撹拌下に加えた。上澄みをデカンテーションにより捨てた後、再度500部のメタノールを加え撹拌洗浄した後、デカンテーションにより上澄みを捨て、沈殿物を得た。沈殿物を150℃にて減圧乾燥し、重合体(A2)を得た。
(A2)は、エチレン/酢酸ビニル/オレイン酸ビニル共重合体であり、その共重合モル比は83/13/4、分岐度は0.98%、Mnは4500、Mwは10100であった。
撹拌装置、加熱装置および温度計を備えたガラス製容器に、重合体(A2)650部、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール1部および炭素数10〜11の石油系芳香族混合溶剤(初留点182℃〜終点204℃)349部を加え、100℃にて均一に溶解し、本発明の添加剤組成物(T3)を得た。
【0042】
比較例1
重合体(A2)の代わりに、エチレン/酢酸ビニル/ネオデカン酸ビニル共重合体(X-1)[84/14/2モル%、分岐度4.2%、Mn3200、Mw7500]を使用した以外は実施例3と同様にして比較例の添加剤組成物(U1)を得た。
【0043】
<燃料油組成物の評価>
実施例4〜9および比較例2、3
表1に示す性状の燃料油(軽油)に(T1)〜(T3)および(U1)を所定量(表2、表3に記載)加え均一に混合し、低温流動性向上効果および潤滑性を評価した。低温流動性向上効果は、流動点(以下、PP)と低温濾過器目詰まり点(以下、CFPP)を測定し評価した。潤滑性はHFRRの摩耗痕径を測定し評価した。PP、CFPPおよびHFRRの評価方法を以下に示す。
流動点(PP):JIS K2269 3に記載の方法
低温濾過器目詰まり点(CFPP):JIS K2288に記載の方法
潤滑性:石油学会規格PI−5S−50−98に記載の方法
【0044】
燃料油1に添加した場合の評価結果を表2に、燃料油2に添加した場合の評価結果を表3にそれぞれ示す。これらから明らかなように本発明の流動性向上剤は、いずれの軽油に対しても、非常に優れた低温流動性を与える。
また、本発明の不飽和脂肪族カルボン酸を含有する添加剤組成物は、いずれの軽油に対しても優れた潤滑性(摩耗防止性)を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【発明の効果】
本発明の流動性向上剤および燃料油用添加剤組成物は従来のものに比較し,燃料油の低温流動特性をさらに向上させ、少量の添加でPPおよびCFPPを向上させる。その結果、燃料油のフィルタ−通油性を良好にするものである。とりわけ、従来の流動性向上剤および添加剤組成物では低温流動性の向上が困難であった沸点範囲が狭い低硫黄含量の軽油に対して有効である。
またさらに、燃料油のエンジン内での潤滑性も向上する。
Claims (15)
- エチレン(a)および下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物からなる群から選ばれる1種以上の単量体(b)から誘導される単位を必須構成単位とする共重合体(A)からなることを特徴とする燃料油用流動性向上剤。
R1−COO−R2 (1)
R2−COO−R1 (2)
R3−(COOR1)2 (3)
[式中、R1は炭素数5〜23の不飽和脂肪族炭化水素基、R2は炭素数2〜4のアルケニル基、R3は炭素数2〜4のアルケニレン基である。] - 一般式(1)〜(3)におけるR1がアルケニル基、アルカジエニル基またはアルカトリエニル基である請求項1記載の流動性向上剤。
- (b)が、一般式(1)で表され、R2がビニル基である単量体(b11)である請求項1または2記載の流動性向上剤。
- (A)が、エチレン(a)および炭素数2〜4の飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステルから誘導される単位を必須構成単位とする共重合体(A0)と、炭素数6〜24の不飽和脂肪族カルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体とのエステル交換反応により得られた共重合体である請求項1〜3のいずれか記載の流動性向上剤。
- (A)が、さらに(a)および(b)以外のビニル単量体から誘導される単位(c)を必須構成単位とする共重合体である請求項1〜4のいずれか記載の流動性向上剤。
- (c)が、飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステルである請求項5記載の流動性向上剤。
- (A)における構成単位のうち、エチレンから誘導される単位の割合が60〜98モル%である請求項1〜6のいずれか記載の流動性向上剤。
- 請求項1〜7のいずれか記載の流動性向上剤、並びに他の添加剤および/または希釈剤からなる燃料油用添加剤組成物。
- 他の添加剤の少なくとも1種が、エチレン(a)および(c)から誘導される単位から構成される共重合体(B)である請求項8記載の添加剤組成物。
- 他の添加剤の少なくとも1種が、フェノール系酸化防止剤(C)である請求項8または9記載の添加剤組成物。
- 他の添加剤の少なくとも1種が、炭素数6〜24の不飽和脂肪族カルボン酸(D)である請求項8〜10のいずれか記載の添加剤組成物。
- 希釈剤が炭素数7〜24の炭化水素である請求項8〜11のいずれか記載の添加剤組成物。
- 炭素数17〜22の炭化水素からなるワックスを含有する燃料油に対して、請求項8〜12のいずれか記載の添加剤組成物を含有する燃料油組成物。
- 炭素数17〜22の炭化水素からなるワックスを含有する燃料油に対して、請求項1〜7のいずれか記載の流動性向上剤を10〜5,000ppm添加してなる燃料油組成物。
- 燃料油の硫黄含量が0.05重量%以下である請求項13または14記載の燃料油組成物。
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