JP5144316B2 - 灯油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料油組成物に関し、更に詳しくは、酸化安定性に優れる灯油組成物に関する。
現在石油ストーブに使用されている灯油の種類と規格は、日本工業規格(JIS K 2203)に示されており、その中でも1号灯油は、家庭用の暖房機器等に広く用いられている。灯油留分は主に、原油を常圧蒸留により所定の蒸留性状となるように分留することで得られる。次いで水素化脱硫装置により硫黄分が所定量以下となるように水素化精製される。更に灯油製造過程において、ストリッパにより軽質分を蒸発させることで引火点が40℃以上となるように調整される。
このようにして得られる灯油の品質は前述したように、JIS K 2203に示される規格に基づき管理されているが、実用面では規格外の品質として酸化安定性も重要であると思われる。酸化安定性を向上させる方法としては、酸化防止剤を添加する方法がある(特許文献1、2参照)。更に臭気や燃焼性を良好にする灯油組成物に関する発明もある(特許文献3、4参照)。また、酸化安定性を改善する目的で、灯油の蒸留性状、硫黄分、芳香族量等を規定した発明もある(特許文献5参照)。
特開2004−182744号公報 特開2004−182745号公報 特公平7−103384号公報 特開平3−182594号公報 特開2006−233087号公報
しかしながら、上記従来技術のように酸化防止剤を添加しても、灯油そのもの自体の酸化安定性を改善しているわけではなく、添加剤添加により、かえってコストアップしてしまうこととなる。また、臭気や燃焼性を良好にしても、酸化安定性の向上には至っていない。そして、灯油の蒸留性状、硫黄分、芳香族量等を規定しても、過酷な条件下の貯蔵においては、パーオキサイドの発生が懸念され、更なる改善が求められる。
上記問題点に鑑み、本発明の目的は、酸化安定性に優れる灯油組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、灯油の酸化安定性には原油由来のフェノール、およびアルキルフェノール類が大きく影響することを突き止め、これらの含有量を規定することで灯油自体の酸化安定性を改善することが可能になるという知見を得て本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す特徴を有する灯油組成物を提供するものである。
(1)原油を常圧蒸留して得られる灯油留分を脱硫した脱硫灯油であって、初留点135〜170℃、50%留出温度165〜220℃、70%留出温度170〜240℃、90%留出温度215〜265℃、95%留出温度230〜270℃の蒸留性状を有し、フェノールおよび下記式(1)で表されるアルキルフェノール類の総含有量が0.2〜12質量ppmであり、硫黄分が10質量ppm以下であることを特徴とする灯油組成物。
Figure 0005144316
[上記式(1)中、R1〜5のうち1〜4個はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、他は水素原子を表し、かつアルキル基の総炭素数は1〜4である。]
(2)ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量が1〜8質量ppmであることを特徴とする上記(1)に記載の灯油組成物。
(3)ナフテンベンゼン類含有量が8.0容量%以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の灯油組成物。
(4)ナフタレン類含有量が0.1〜2.5容量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の灯油組成物。
本発明によれば、灯油組成物自体の酸化安定性が改善され、酸化安定性に優れた灯油組成物を提供することができる。
以下、本発明の内容を更に詳しく説明する。
本発明の灯油組成物において、フェノールと下記式(1)で表されるアルキルフェノール類の総含有量は0.2〜12質量ppm、好ましくは0.5〜12質量ppmである。
Figure 0005144316
上記式(1)中、R1〜5のうち1〜4個はそれぞれ独立して炭素数1〜4、好ましくは炭素数1のアルキル基を表し、他は水素原子を表す。また、アルキル基の総炭素数は1〜4であることが好ましい。式(1)で表されるアルキルフェノール類(以下、単に「アルキルフェノール類」とも言う。)においては、アルキル基の総炭素数が1である場合とは、1つのメチル基が置換している状態を意味し、総炭素数が2もしくは3である場合とは、1つのエチル基もしくはプロピル基が置換している状態、または2〜3個のメチル基が置換している状態を意味する。このようなアルキルフェノール類の具体例としては、p−クレゾール、2,6−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノールなどが挙げられる。フェノールおよびアルキルフェノール類は酸化時に発生するラジカルを捕捉してラジカル発生を抑える作用を有し、極微量であっても強力なラジカル捕捉剤となることから、灯油の酸化安定性を向上させる効果を与える。フェノールとアルキルフェノール類の総含有量が0.2質量ppm以上であれば、酸化安定性に優れ、室温での1年間貯蔵した場合などよりも、より過酷な燃料機器の高温下にさらされるような条件、例えば、100℃で20時間貯蔵してもパーオキサイドの発生を抑制することができる。また、フェノールとアルキルフェノール類の総含有量が12質量ppm以下であれば、これらの物質が急性毒性や腐食性を有するため、人体や環境に与える影響が抑制できる。
また、本発明における、灯油組成物中のフェノールとアルキルフェノール類の総含有量は、試料を水酸化ナトリウム溶液と混合し、振とう・静置することで得られた水酸化ナトリウム溶液層にUVを照射し、292nmの吸光度を測定することで定量できる。
本発明の灯油組成物において、蒸留性状は、初留点135〜170℃、好ましくは140〜170℃、50%留出温度165〜220℃、好ましくは195〜220℃、70%留出温度170〜240℃、好ましくは205〜240℃、90%留出温度215〜265℃、好ましくは220〜260℃、95%留出温度230〜270℃、好ましくは240〜270℃である。初留点が170℃より低ければ、着火し難い等の問題が生じる可能性が少ないため好ましい。初留点が135℃より高ければ、引火点が高くなりJIS K 2203で定められる灯油の引火点規格値である40℃を下回る可能性が少なくなるため好ましい。また、50%留出温度が220℃、70%留出温度が240℃、90%留出温度が265℃、95%留出温度が270℃より低ければ、着火し難く定常燃焼に至るまでに時間がかかる等の問題が生じる可能性が少なくなるため好ましい。また50%留出温度が165℃、70%留出温度が170℃、90%留出温度が215℃、95%留出温度が230℃より高ければ、芯式・放射形石油ストーブ使用時において、炎を燃焼筒の上部から出さずに、燃焼筒を赤熱した状態に保つという安定した燃焼状態が保て、また、消火の際に鎮火し難い等の問題が起きる可能性が少なくなるため好ましい。
また、本発明の灯油組成物に含まれる硫黄分は10質量ppm以下、好ましくは8質量ppm以下である。硫黄分が10質量ppmより少なければ、硫黄分に由来する臭気等が強くならないため好ましい。
なお、本発明における、蒸留性状はJIS K 2254の常圧法蒸留試験、硫黄分はJIS K 2541の微量電量滴定式酸化法により、それぞれ測定できる。
本発明の灯油組成物において、ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量は、1〜8質量ppmであることが好ましく、更に好ましくは1〜7質量ppmである。ここで言うベンゾチオフェン類とは、ベンゾチオフェン及びそのアルキル置換基誘導体などを示す。ベンゾチオフェン類は過酸化物分解反応の阻害のためパーオキサイドを不活性な化合物に分解して連鎖反応への寄与を切断する作用を持っており、極微量であっても強力な過酸化物分解剤となる。これにより、フェノールおよびアルキルフェノール類程ではないが、灯油の酸化安定性を向上させる効果を与える。ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量が1質量ppm以上であれば、酸化安定性に優れ、室温での1年間貯蔵した場合などよりも、より過酷な燃料機器の高温下にさらされるような条件、例えば、100℃で20時間貯蔵してもパーオキサイドの発生を抑制することができる。
また、本発明におけるベンゾチオフェン類由来の硫黄分量は、ガスクロマトグラフ法−硫黄化学発光法(GC−SCD)により、灯油組成物中の硫黄化合物のタイプ別分析を行い、硫黄化合物中のベンゾチオフェン類の割合を算出する。ここで得られた割合を微量電量滴定式酸化法(JIS K 2541)により求めた灯油組成物中の全硫黄分量に乗ずることで求めることができる。
本発明の灯油組成物において、好ましいナフテンベンゼン類含有量は8.0容量%以下、更に好ましくは1.0〜8.0容量%、最も好ましくは1.0〜6.0容量%以下である。ナフテンベンゼン類含有量が8.0容量%以下であれば、酸化安定性が良好となる。
本発明の灯油組成物において、好ましいナフタレン類含有量は0.1〜2.5容量%、更に好ましくは0.3〜2.5容量%である。ナフタレン類含有量が0.1容量%以上であれば、酸化安定性が向上し、また、2.5容量%以下であれば、灯油自身の臭気が弱い上、
燃焼性が良好で煤の発生が少ない。
また、本発明におけるナフテンベンゼン類及びナフタレン類含有割合は、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)により分画採取した芳香族分を、ガスクロマトグラフ法−質量分析法(GC−MS)で分析し、ASTM D 3239に従って解析を行い芳香族分中のナフテンベンゼン類割合とナフタレン類割合を算出し、ここで得られた割合を、JPI−5S−59−97により求めた芳香族分割合に乗ずることで求めることができる。
また、本発明の灯油組成物において、ナフテン類含有量は0〜45容量%であることが好ましく、更に好ましくは0〜40容量%である。45容量%以下であれば、酸化安定性の低下を抑制できるので好ましい。ナフテン類の含有割合は、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)により分画採取した芳香族分を、ガスクロマトグラフ法−質量分析法(GC−MS)で分析し、ASTM D 3239に従って解析を行い芳香族分中のナフテン類割合を算出し、ここで得られた割合を、JPI−5S−59−97により求めた芳香族分割合に乗ずることで求めることができる。
更には、本発明の灯油組成物において、15℃における密度、引火点、及び煙点は下記の範囲であることが好ましい。
15℃における密度は、0.78〜0.81g/cmであることが好ましく、更に好ましくは0.79〜0.81g/cmである。0.78g/cm以上であれば、燃費を良好に保てるので好ましい。密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法」で求めることができる。
引火点は、40〜60℃であることが好ましく、更に好ましくは41〜60℃である。40℃以上であれば、常温で可燃性蒸気が発生することがなく、静電気などで着火する危険性を低減できるので好ましい。引火点は、JIS K 2265「原油及び石油製品−引火点試験方法」で求めることができる。
煙点は、21〜27mmであることが好ましく、23〜27mmであることが更に好ましい。21mm以上であれば、燃焼性が良好であるので好ましい。煙点は、JIS K 2537「石油製品−灯油及び航空タービン燃料油−煙点試験方法」で求めることができる。
本発明の灯油組成物の製造方法は、製造される灯油組成物が本発明に規定する性状を有する限りにおいて、特に制限されるものではなく、種々の原料を用いて、また種々の方法により本発明の灯油組成物を製造することができる。例えば、原油を常圧蒸留して得られる灯油留分やそれらを脱硫した脱硫灯油を用いることができる。更に、直接脱硫装置から得られる直接脱硫灯油留分、及び重油や残油の水素化分解により得られる灯油留分等が使用可能であり、特に定めるものではないが、脱硫処理に当たって脱硫反応後の精製油中のフェノールとアルキルフェノール類の含有量が0.2〜12質量ppmで、好ましくはベンゾチオフェン類由来の硫黄分量が1〜8質量ppm、ナフタレン類含有量が0.1〜2.5容量%となるように、選択的な脱硫触媒、及び反応条件(温度、水素分圧など)、更には反応方式(2段脱硫など)を適切に設定し脱硫することが好ましい。また、脱硫後の灯油留分にフェノール、アルキルフェノール類、ベンゾチオフェン類、ナフタレン類を本発明の規定を満たすように添加することで得ることができる。また、別の方法として市販溶剤を混合した混合溶剤や、合成ガスからフィッシャー・トロプシュ合成で得られたパラフィン系炭化水素類等に、特定の化合物としてフェノールとアルキルフェノール類、ベンゾチオフェン類、ナフタレン類を本発明の規定を満たすように添加することでも得ることができる。
本発明の灯油組成物においては、必要に応じて種々の燃料油添加剤を適宜添加することができる。この燃料油添加剤としては、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、シッフ型化合物やチオアミド型化合物等の金属不活性剤、有機リン系化合物等の表面着火防止剤、琥珀酸イミド、ポリアルキルアニリン、ポリエーテルアミン等の清浄分散剤、多価アルコール及びそのエーテル等の氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステル等の助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の帯電防止剤、アルケニル琥珀酸エステル等錆止め剤等の公知の燃料油添加剤が挙げられる。これらは、1種添加することも複数種組み合わせて添加することもでき、これらの燃料油添加剤の添加量は必要に応じて適宜設定することができる。また、フェノールとアルキルフェノール類、ベンゾチオフェン類、ナフタレン類化合物を直接添加することもできる。
本発明の灯油組成物は、所謂民生用暖房機器、例えば各種石油ストーブ類、石油ファンヒーター類、あるいは石油式給湯器等に好ましく用いることができ、更には直火式の食品乾燥用燃料、工業用燃料、石油発動機用燃料、ソルベント等各種用途にも好ましく使用できる。
次に、本発明を実施例、比較例により更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
実施例、比較例において、灯油組成物の性状測定や、その酸化安定性の評価のための貯蔵試験は次のように行った。
灯油組成物の引火点、蒸留性状、硫黄分、煙点は、JIS K 2203に定められる方法に準拠して測定を行なった。
貯蔵試験は、従来の酸化安定性の評価よりも更に過酷な燃料機器の高温下にさらされるような条件、100℃で20時間貯蔵した際のパーオキサイドの発生について試験を行った。
貯蔵試験方法、その条件を下記に示す。
試験温度:100℃、試料量:300ml、容器材質:ほう珪酸ガラス、
容器容量:500ml、雰囲気:酸素常圧密閉、光の有無:暗所、
鋼片(SPCC):1×20×50mmを1枚入れる
試験期間:20時間
貯蔵試験後のパーオキサイド測定は、JPI−5S−46−96に準拠して行なった。
灯油組成物中のフェノールとアルキルフェノール類の総含有量は、試料を水酸化ナトリウム溶液と混合し、振とう・静置することで得られた水酸化ナトリウム溶液層にUVを照射させ、292nmの吸光度を測定することで定量した。UV分析装置及び分析条件の一例を以下に示す。
装置:島津紫外可視分光光度計 UV2500PC
測定吸光度:292nm
試料量:100mL
10%水酸化ナトリウム溶液量:5mL
振とう条件:300rpm 5min
灯油組成物の飽和分、芳香族分の割合と、芳香族分の環数別割合は、JPI−5S−49−97に基づいて測定を行った。HPLCの装置構成及び分析条件を以下に示す。
装置:Agilent 1100 Series(ALS:G1329A, Bin Pump: G1312A, Degasser: G1379A, Rid:G1362A, Colcom: G1316A)
移動相:n−ヘキサン
流量:1.0ml/min
カラム:硝酸銀含浸シリカカラム(4.6mml.D.*70mml センシュー科学製 AgNO3−1071−Y)
:アミン修飾カラム(4.0mml.D.*250mmL.2本 センシュー科学製 LICHROSORB−NH2)
カラム温度:35℃
試料濃度:10容量%
注入量:5μl
灯油組成物の飽和分、芳香族分のタイプ分析は下記方法で行なった。
まず、試料をHPLCにより飽和分と芳香族分に分画後、飽和分、芳香族分それぞれについて、GC−MSによりタイプ分析を行なった。ここで得られた分析結果を基に、飽和分はASTM D 2786に、芳香族分はASTM D 3239に従って解析を行い、飽和分中のナフテン類割合と環数別ナフテン類割合、及び芳香族分中のナフテンベンゼン類割合とナフタレン類割合を求めた。分析条件を以下に示す。
装置:HP−6890 HP5973 四重極質量分析計
カラム:DB−1:30m×0.25mmI.D.×0.25μm
オーブン温度:40℃(1min)→10℃/min→280℃(5min)
注入口温度:43℃ Oven track mode ON
インターフェース温度:300℃
キャリアガス:He:55kPa Constant flow mode ON
Solvent Delay:4.5min
イオン化電圧:70eV
注入方法:オンカラム注入 3.0μl(芳香族分)、1.0μl(飽和分)
灯油組成物のベンゾチオフェン類由来の硫黄分量は、GC−SCDにより硫黄化合物のタイプ別分析を行い、そこで得られたベンゾチオフェン類割合を微量電量滴定式酸化法により求めた全硫黄分量に乗ずることで求めた。GC−SCDの分析条件を下記に示す。
装置:GC;GC−2010(SHIMAZU)
SCD;7090S(ANTEK)
カラム:HP−1MS(Polydimethyl siloxane)
カラム温度:40℃(1min)−(10℃/min)−300℃(3min)
測定時間:30min
Inlet温度:300℃、検出器温度:300℃
キャリアガス:He;80kPa、2.62ml/min、40.3cm/sec
制御モード:線速度
Total flow:34.4ml/min、Purge flow:3.0ml/min
注入モード:Split、Split ratio:11:1
Sample size:0.5μl
実施例1
中東系原油を常圧蒸留することで得られた直留灯油留分を、Co−Mo系脱硫触媒を用いて、脱硫後の灯油の性状が本発明で規定する範囲内になるように確認しながら脱硫条件を反応温度300〜330℃、水素分圧3.0〜5.0MPa、液空間速度1.0〜10.0h−1の範囲内で調節し、沸点範囲154.5〜260℃、硫黄分5質量ppm、密度0.7931の灯油組成物を得た。貯蔵試験の結果を合わせて表1にその性状を示した。
実施例2
中東系原油を常圧蒸留することで得られた直留灯油留分を、Co−Mo系脱硫触媒を用いて、脱硫後の灯油の性状が本発明で規定する範囲内になるように確認しながら脱硫条件を反応温度300〜330℃、水素分圧3.0〜5.0MPa、液空間速度1.0〜10.0h−1の範囲内で調節し、沸点範囲149.0〜260.5℃、硫黄分7質量ppm、密度0.7978の灯油組成物を得た。貯蔵試験の結果を合わせて表1にその性状を示した。
実施例3
中東系原油を常圧蒸留することで得られた直留灯油留分を、Co−Mo系脱硫触媒を用いて、脱硫後の灯油の性状が本発明で規定する範囲内になるように確認しながら脱硫条件を反応温度300〜330℃、水素分圧3.0〜5.0MPa、液空間速度1.0〜10.0h−1の範囲内で調節し、沸点範囲151.5〜269.5℃、硫黄分5質量ppm、密度0.7940の灯油組成物を得た。貯蔵試験の結果を合わせて表1にその性状を示した。
実施例4
中東系原油を常圧蒸留することで得られた直留灯油留分を、Co−Mo系脱硫触媒を用いて、脱硫後の灯油の性状が本発明で規定する範囲内になるように確認しながら脱硫条件を反応温度300〜330℃、水素分圧3.0〜5.0MPa、液空間速度1.0〜10.0h−1の範囲内で調節し、沸点範囲151.5〜260.5℃、硫黄分5質量ppm、密度0.7947の灯油組成物を得た。貯蔵試験の結果を合わせて表1にその性状を示した。
実施例5
中東系原油を常圧蒸留することで得られた直留灯油留分を、Co−Mo系脱硫触媒を用いて反応温度300〜330℃、水素分圧3.0〜5.0MPa、液空間速度1.0〜10.0h−1の脱硫条件範囲で脱硫し、得られた脱硫灯油(フェノール及びアルキルフェノール類の総含有量が0.0質量ppm、沸点範囲が148.5〜281.5℃)に、2,6−キシレノールを0.25質量ppm、2,3,5−トリメチルフェノールを0.25質量ppm添加し、フェノール及びアルキルフェノール類の総含有量が本発明で規定する範囲内になるよう調製して灯油組成物を得た。貯蔵試験の結果を合わせて表1にその性状を示した。
実施例6
実施例5で使用した脱硫灯油(フェノール及びアルキルフェノール類の総含有量が0.0質量ppm、沸点範囲が148.5〜281.5℃)に、2,6−キシレノールを0.5質量ppm、2,3,5−トリメチルフェノールを0.5質量ppm添加し、フェノール及びアルキルフェノール類の総含有量が本発明で規定する範囲内になるよう調製して灯油組成物を得た。貯蔵試験の結果を合わせて表1にその性状を示した。
比較例1
中東系原油を常圧蒸留することで得られた直留灯油留分を、Co−Mo系脱硫触媒を用いて反応温度300〜330℃、水素分圧3.0〜5.0MPa、液空間速度1.0〜10.0h−1の脱硫条件範囲で脱硫し、脱硫処理することで得られる脱硫灯油のフェノール及びアルキルフェノール類の総含有量が本願規定範囲を満たさない灯油組成物を得た。それぞれの灯油組成物の性状、および貯蔵試験の結果を表2に示した。
比較例2
フェノールとアルキルフェノール類の総含有量、及びベンゾチオフェン由来の硫黄分量が、本願の規定範囲を満たさない灯油組成物を以下の調合方法により得た。得られた灯油組成物の性状、及び貯蔵試験結果を表2に示した。
純度98.0容量%以上の市販n−パラフィン溶剤(n−C8〜n−C15)を用いて沸点範囲が145〜258℃になるように調整したn−パラフィン溶剤を15質量%、沸点範囲が166〜219℃である純度98.0容量%以上の市販イソパラフィン溶剤を11.5容量%、沸点範囲が202〜262℃である純度98.0容量%以上の市販イソパラフィン溶剤を3.5容量%の割合で、更に沸点範囲が157〜179℃である純度99.0容量%以上の市販ナフテン系溶剤を35.0容量%、沸点範囲が201〜217℃である純度99.0容量%以上の市販ナフテン系溶剤を5.0容量%、沸点範囲が221〜240℃である純度99.0容量%以上の市販ナフテン系溶剤を10.0容量%の割合で、更に沸点範囲が180〜209℃である純度99.0容量%以上の市販芳香族系溶剤を12.0容量%、市販の特級テトラリンを8.0容量%混合することで、沸点範囲164〜245℃、硫黄分1質量ppmの灯油組成物を得た。
比較例3
中東系原油を常圧蒸留することで得られた直留灯油留分を、Co−Mo系脱硫触媒を用いて反応温度300〜330℃、水素分圧3.0〜5.0MPa、液空間速度1.0〜10.0h−1の脱硫条件範囲で脱硫し、脱硫処理することで得られる脱硫灯油のフェノール及びアルキルフェノール類の含有量とナフタレン類の総含有量が本願規定範囲を満たさない、沸点範囲が146〜290℃の灯油組成物を得た。それぞれの灯油組成物の性状、および貯蔵試験の結果を表2に示した。
比較例4
市販の特級テトラリンを8.0容量%混合した点を除き、比較例2と同様に調製し、灯油組成物を得た。これに、市販の特級ベンゾチオフェンを6.0質量ppm添加し、さらに、ナフタレン類含有量が2.25容量%となるように、市販の特級ナフタレンを添加して灯油組成物を得た。得られた灯油組成物の性状および貯蔵試験結果を表2に示した。
Figure 0005144316
Figure 0005144316
なお、表1、表2において「フェノール、アルキルフェノール類」とは、「フェノールと、アルキル基の総炭素数が1〜4であるアルキルフェノール類」を意味する。
上記貯蔵試験において、貯蔵試験後のパーオキサイドの生成量が10質量ppm以下であれば、長期貯蔵、あるいは燃焼機器により高温にさらされる過酷な条件での安定性に問題がないことを示している。
上記表1,2の結果から、フェノールとアルキルフェノール類の総含有量が本発明で規定する範囲に入る実施例1〜6の灯油組成物は、いずれも酸化安定性に優れ、過酷な貯蔵試験条件100℃で20時間貯蔵した際にパーオキサイドの生成量が10質量ppm以下という結果となり、貯蔵安定性に優れた灯油組成物であることは明らかである。

Claims (4)

  1. 原油を常圧蒸留して得られる灯油留分を脱硫した脱硫灯油であって、初留点135〜170℃、50%留出温度165〜220℃、70%留出温度170〜240℃、90%留出温度215〜265℃、95%留出温度230〜270℃の蒸留性状を有し、フェノールおよび下記式(1)で表されるアルキルフェノール類の総含有量が0.2〜12質量ppmであり、硫黄分が10質量ppm以下であることを特徴とする灯油組成物。
    Figure 0005144316

    [上記式(1)中、R1〜5のうち1〜4個はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、他は水素原子を表し、かつアルキル基の総炭素数は1〜4である。]
  2. ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量が1〜8質量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の灯油組成物。
  3. ナフテンベンゼン類含有量が8.0容量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の灯油組成物。
  4. ナフタレン類含有量が0.1〜2.5容量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の灯油組成物。
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