JP4137452B2 - 非水系電解液及びそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水系電解液及びそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池はエネルギー密度が高く、しかも自己放電を起こしにくいという利点がある。そこで近年、携帯電話やノートパソコン、PDA等の民生用モバイル機器用の電源として広く利用されている。リチウム二次電池用の電解液は、支持電解質であるリチウム塩と非水系の有機溶媒とから構成される。非水系の有機溶媒は、リチウム塩を解離させるために高い誘電率を有すること、広い温度領域で高いイオン伝導度を発現させること、電池中で安定であることが要求される。この要求を一つの溶媒で達成するのは困難であるので、通常はプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等に代表される高沸点溶媒とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の低沸点溶媒とを組み合わせて使用している。また初期容量、レート特性、サイクル特性、高温保存特性、低温特性、トリクル充電特性等の諸特性を改良するために各種の添加剤を電解液に添加する方法が数多く報告されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、高性能化への要求はますます高く、上記の諸特性がバランス良く向上することが求められている。特に最近は過充電防止等の安全対策への要求が高くなっているため、特許第3113652号等に例示されているシクロヘキシルベンゼン等の添加剤を電解液に加える場合があるが、この場合、保存特性の大幅な悪化を招くことがある。そこで過充電特性等を向上しつつ、良好な保存特性をも与える電解液が切望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、非水系電解液に特定の化合物を含有させることによって、電池の保存特性が大幅に改善され、しかも過充電特性も向上することを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の要旨は、リチウム塩が非水系有機溶媒に溶解されてなる非水系電解液であって、該非水系有機溶媒が分子内に一般式:S=C―N―C=X(但し、Xは炭素原子または酸素原子を表す)で表される結合を有するヘテロ元素含有有機化合物を含有することを特徴とする非水系電解液、に存する。
【0005】
また本発明の他の要旨は、上記非水系電解液を用いたことを特徴とするリチウム二次電池、に存する。
上記ヘテロ元素含有有機化合物を含有する電解液を用いると保存特性が向上する要因の詳細は不明であるが、充電時に上記ヘテロ元素含有有機化合物の一部が正極上では酸化され、かつ負極上では還元されるために、正・負の両極において熱的に安定で抵抗の低い界面保護皮膜(SEI)が形成され、保存時の溶媒等の分解反応を抑制することができ、保存後の容量が低下しにくくなるものと推定される。
【0006】
また上記の本発明における過充電特性の向上とは、具体的には過充電時のガス発生量の増大を指している。即ち円筒電池等に見られるような、内圧を感知して電流を遮断するタイプの電池においては、過充電の早期の段階で電流を遮断することが可能となるのである。過充電時にガスの発生量が増大する要因の詳細は不明であるが、上記ヘテロ元素含有有機化合物中のS=C―N―C=X(但し、Xは炭素原子または酸素原子を表す)で表される結合が大きく関与しているものと推定される。この結合においては、窒素上のローンペアがC=S及びC=Xの両二重結合に供与されるためにNの塩基性は大きく低下している。しかし電池が過充電状態になると、正極においてC=SまたはC=X上のπ電子が奪われ、Nの塩基性が高まる。すると炭酸エステルなどの非水系溶媒はこの塩基触媒により分解して二酸化炭素等を発生することになる。即ち、S=C―N―C=X(但し、Xは炭素原子または酸素原子を表す)で表される結合は、過充電時には非水系溶媒を分解させる触媒に変化しているものと推定されるのである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
本発明の非水系電解液は、非水系有機溶媒にリチウム塩が溶解され、さらに特定のヘテロ元素含有有機化合物が含有されているものである。
本発明では、分子内にS=C―N―C=X(但し、Xは炭素原子または酸素原子を表す)で表される結合を有するヘテロ元素含有有機化合物を添加剤として使用する。
【0008】
上記ヘテロ元素含有有機化合物としては、例えばチオアセトアニリド、N−フェニルチオアセトアニリド、2−キノリンチオール(2−チオキノロン)、2−メルカプトピリジン(2−チオピリドン)、1,3,3−トリメチル−2−インドリンチオン、1,3−ジ−p−トリル−2−チオウレア、1,3−ジ−o−トリル−2−チオウレア、1−フェニル−3−(2−チアゾリル)−2−チオウレア、1−アセチル−2−チオウレア、1,3−ジフェニル−2−チオウレア、N’−ベンゾイル−N、N−ジエチルチオウレア、1−ベンゾイル−3−p−トリル−2−チオウレア等が挙げられる。また下記一般式(1)〜(6)で表される化合物などが挙げられる。
【0009】
【化7】
【0010】
(上式中、R1〜R4はそれぞれ独立して水素原子または炭化水素基を表す)
【0011】
【化8】
【0012】
(上式中、R5〜R10はぞれぞれ独立して水素原子または炭化水素基を表す)
【0013】
【化9】
【0014】
(上式中、R11〜R13はそれぞれ独立して水素原子または炭化水素基を表す)
【0015】
【化10】
【0016】
(上式中、R14〜R18はそれぞれ独立して水素原子または炭化水素基を表す)
【0017】
【化11】
【0018】
(上式中、R19〜R22はそれぞれ独立して水素原子または炭化水素基を表し、R20とR21とは結合して環を形成していてもよい)
【0019】
【化12】
【0020】
(上式中、R23〜R28はそれぞれ独立して水素原子または炭化水素基を表す)
上記一般式(1)で表される化合物としては、4,6―ジヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン(2−チオバルビツール酸)(R1〜R4=H)、1,3−ジメチル−2−チオバルビツール酸(R1〜R2=Me、R3〜R4=H)、1,3−ジエチル−2−チオバルビツール酸(R1〜R2=Et、R3〜R4=H)、1,3−ジ−n−プロピル−2−チオバルビツール酸(R1〜R2=n−Pr、R3〜R4=H)、1,3−ジ−n−ブチル−2−チオバルビツール酸(R1〜R2=n−Bu、R3〜R4=H)、1,3−ジフェニル−2−チオバルビツール酸(R1〜R2=Ph、R3〜R4=H)、1,3−ジベンジル−2−チオバルビツール酸(R1〜R2=ベンジル基、R3〜R4=H)、5−エチル−5−(1−メチルブチル)−2−チオバルビツール酸(R1〜R2=H、R3=Et、R4=s―ペンチル基)、5−アリル−5−(1−メチルブチル)−2−チオバルビツール酸(R1〜R2=H、R3=アリル基、R4=s―ペンチル基)等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(2)で表される化合物としては、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン(R5〜R10=H)が例示される。
上記一般式(3)で表される化合物としては3−メチルローダニン(R11=Me、R12〜R13=H)、3−エチルローダニン(R11=Et、R12〜R13=H)、3−アリルローダニン(R11=アリル基、R12〜R13=H)等が挙げられる。
【0022】
上記一般式(4)で表される化合物としては、2−メルカプトベンゾチアゾール(3H−ベンゾチアゾール−2−チオン)(R14〜R18=H)、3−ベンジル−3H−ベンゾチアゾール−2−チオン(R14=ベンジル基、R15〜R18=H)等が挙げられる。
上記一般式(5)で表される化合物としては、2−チオヒダントイン(R19〜R22=H)、5,5−ジフェニル−2−チオヒダントイン(R19〜R20=H、R21〜R22=Ph)、MTH−グリシン(R19=Me、R20〜R22=H)、MTH−プロリン(R19=Me、R20及びR21で−CH2CH2CH2−基を形成、R22=H)等が挙げられる。
【0023】
また上記一般式(6)で表される化合物としては、2−メルカプトベンズイミダゾール(R23〜R28=H)、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール(R23〜R25=H、R26=Me、R27〜R28=H)等が挙げられる。
これらの添加剤は2種類以上を混合して使用してもよい。
上記ヘテロ元素含有有機化合物の添加量は特に限定されないが、非水系電解液に対して通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%である。添加量が多すぎるとイオン伝導度が低下してレート特性などの電池特性が低下する傾向にある。また添加量が少な過ぎる場合は、充分な添加効果が発現せず保存特性が悪化する。
【0024】
本発明で支持電解質として用いるリチウム塩としては、特に制限はないが、例えばLiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)2NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に、溶媒に溶けやすくかつ高い解離度を示すLiPF6、LiBF4、CF3SO3Li及び(CF3SO2)2NLiからなる群から選ばれるリチウム塩は好適に用いられる。また非水系電解液中のリチウム塩の濃度は、非水系電解液に対して通常0.5〜2mol/Lの範囲で使用するのが好ましい。
【0025】
本発明で用いる非水系有機溶媒としては、リチウム塩を溶解させることができる限り特に限定はされないが、なかでも高いイオン導電性を発現させる溶媒として、通常、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート類、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等の不飽和カーボネート類、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類が好ましく用いられる。
【0026】
これらの有機溶媒は、通常、適切な物性を達成するように混合して使用される。例えば上記鎖状カーボネート類の中でも特にエチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート等の非対称カーボネートを混合使用するのは好ましい。中でもエチルメチルカーボネートは粘度が低いためリチウムの移動性を高めるだけでなく、沸点が比較的高く、また電極と電解液の界面に形成された層(SEI)に悪影響を与えにくいので好適に用いられる。またビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等の不飽和カーボネートを混合すると、これらの不飽和カーボネートが初期充電時に還元されやすく、安定なSEIを形成するのに寄与するので好ましい。
【0027】
本発明では芳香族炭化水素または芳香族エーテルを上記電解液に添加してもよい。好適な芳香族炭化水素としてはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、2−フェニルトルエン、3−フェニルトルエン、4−フェニルトルエン、ナフタレン、1−フェニルナフタレン、o−テルフェニル、m−テルフェニル、p−テルフェニル、ジフェニルメタン、3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジメチルビフェニル、テルフェニルの部分水素化物等が挙げられる。また芳香族エーテルとしては、アニソール、エチルフェニルエーテル、1,2’―ジメトキシベンゼン、1,3’―ジメトキシベンゼン、1,4’―ジメトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、2−メトキシビフェニル、4−メトキシビフェニル、3−フェノキシトルエン、1,3−ジフェノキシベンゼン等が挙げられる。上記芳香族炭化水素または芳香族エーテルの添加量は特に限定されないが、非水系電解液に対して通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
本発明の非水系電解液を調製するに際し、電解液の各原料は予め脱水しておくのが好ましい。水分量は通常、50ppm以下、好ましくは30ppm以下がよい。水が多量に存在すると、水の電気分解及びリチウム金属との反応、リチウム塩の加水分解などが起こる可能性があり、電池用の電解質として不適当な場合がある。脱水の手段に特に制限はないが、溶媒などの液体の場合はモレキュラーシーブ等を用いればよい。またリチウム塩などの固体の場合は分解が起きる温度以下で乾燥すればよい。
【0028】
本発明の非水系電解液はリチウム二次電池用の電解液として有用である。以下、本発明のリチウム二次電池について説明する。
本発明の非水系電解液を適用できるリチウム二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウム二次電池と同様であり、正極と負極とが多孔膜及び本発明の非水系電解液を介してケースに収納されて構成される。本発明の二次電池に使用される正極及び負極は、電池の種類に応じて適宜選択すればよいが、少なくとも正極、負極に対応した活物質を含有する。また、活物質を固定するためのバインダーを含有してもよい。
【0029】
本発明のリチウム二次電池に使用できる正極活物質としては、例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属を有する酸化物、リチウムとの複合酸化物、硫化物等の無機化合物が挙げられる。具体的には、MnO、V2O5、V6O13、TiO2等の遷移金属酸化物、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物が挙げられる。また、正極活物質として、例えばポリアニリン等の導電性ポリマー等の有機化合物を挙げることもできる。無論、上記の活物質の複数種を混合して用いてもよい。活物質が粒状の場合の粒径は、レ−ト特性、サイクル特性等の電池特性が優れる点で通常、1〜30μm、好ましくは1〜10μm程度である。
【0030】
本発明のリチウム二次電池に使用できる負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金も挙げられるが、添加剤の使用による皮膜形成の効果が大きいので、リチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物としてコークス,アセチレンブラック、メゾフェーズマイクロビーズ、グラファイト等の炭素質物質を使用するのが特に好ましい。粒状の負極活物質の粒径は、初期効率、レ−ト特性、サイクル特性等の電池特性が優れる点で、通常、1〜50μm、好ましくは15〜30μm程度である。
【0031】
また、上記炭素質物質を有機物等と混合・焼成した材料、あるいはCVD法等を用いて少なくとも表面の一部に上記炭素質物に比べて非晶質の炭素を形成した材料もまた、炭素質物質として好適に使用することができる。
上記有機物としては、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ;乾留液化油等の石炭系重質油;常圧残油、減圧残油等の直留系重質油;原油、ナフサ等の熱分解時に副生する分解系重質油(例えばエチレンヘビーエンド)等の石油系重質油が挙げられる。また、これらの重質油を200〜400℃で蒸留して得られた固体状残渣物を、1〜100μmに粉砕したものも使用することができる。さらに塩化ビニル樹脂や、焼成によりフェノール樹脂やイミド樹脂となるこれらの樹脂前駆体も使用することができる。
【0032】
正極又は負極に使用できるバインダーとしては、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等の観点から各種の材料が挙げられる。具体的には、シリケート、ガラスのような無機化合物や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1,1−ジメチルエチレンなどのアルカン系ポリマー;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの不飽和系ポリマー;ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドンなどの環を有するポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドなどのアクリル誘導体系ポリマー;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニドなどのCN基含有ポリマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ポリマー;ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが使用できる。また上記のポリマーなどの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などであっても使用できる。これらの樹脂の重量平均分子量は、通常1万〜300万、好ましくは10万〜100万程度である。分子量が低すぎると電極の強度が低下する傾向にある。一方、分子量が高すぎると粘度が高くなり電極の形成が困難になることがある。好ましいバインダー樹脂は、フッ素系樹脂、CN基含有ポリマーである。
【0033】
バインダーの使用量は、活物質100重量部に対して通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、また通常30重量部以下、好ましくは20重量部以下である。バインダーの量が少なすぎると電極の強度が低下する傾向にあり、バインダーの量が多すぎるとイオン伝導度が低下する傾向にある。電極中には、電極の導電性や機械的強度を向上させるため、導電性材料、補強材など各種の機能を発現する添加剤、粉体、充填材などを含有させてもよい。導電性材料としては、上記活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限はないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末や、各種の金属のファイバー、箔などが挙げられる。補強材としては各種の無機、有機の球状、繊維状フィラーなどが使用できる。
【0034】
電極は、活物質やバインダー等の構成成分と溶剤とを含む塗料を塗布・乾燥することによって形成することができる。電極の厚さは、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、最も好ましくは40μm以上であり、また通常200μm以下、好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。薄すぎると塗布が困難になり均一性が確保しにくくなるだけでなく、電池の容量が小さくなりすぎることがある。一方、あまりに厚すぎるとレート特性が低下しすぎることがある。
【0035】
正極及び負極の少なくとも一方の電極は、通常、集電体上に形成される。集電体としては、各種のものを使用することができるが、通常は金属や合金が用いられる。具体的には、正極の集電体としては、アルミニウムやニッケル、SUS等が挙げられ、負極の集電体としては、銅やニッケル、SUS等が挙げられる。好ましくは、正極の集電体としてアルミニウムを使用し、負極の集電体として銅を使用する。正負極層との結着効果を向上させるため、これら集電体の表面を予め粗面化処理しておくのが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理や粗面ロールにより圧延するなどの方法、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤ−ブラシなどで集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。
【0036】
また、電池の重量を低減させる、即ち重量エネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの集電体を使用することもできる。この場合、その開口率を変更することで重量も自在に変更可能となる。また、このような穴あけタイプの集電体の両面に活物質を存在させた場合、この穴を通しての塗膜のリベット効果により塗膜の剥離がさらに起こりにくくなる傾向にあるが、開口率があまりに高くなった場合には、塗膜と集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
【0037】
集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。あまりに厚すぎると、電池全体の容量が低下しすぎることになり、逆に薄すぎると取り扱いが困難になることがある。
本発明の非水系電解液は、これを高分子によってゲル化して半固体状にしてもよい。半固体状電解質における上記電解液の使用量は、半固体状電解質の総量に対して、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上であり、また通常99.95重量%以下、好ましくは99重量%以下、さらに好ましくは98重量%以下とする。使用量が多すぎると、電解液の保持が困難となって液漏れが生じやすくなり、逆に少なすぎると充放電効率や容量の点で不十分となることがある。
【0038】
正極と負極との間には、短絡を防止する上で、多孔性のスペーサが設けられているのが好ましい。即ち、この場合、電解液は、多孔性のスペーサに含浸されて使用される。スペーサの材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン等を用いることができるが、好ましくはポリオレフィンである。スペーサの厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、また通常50μm以下、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。多孔膜が薄すぎると、絶縁性や機械的強度が悪化することがあり、厚すぎるとレート特性等の電池性能が悪化するばかりでなく、電池全体としてのエネルギー密度が低下することがある。スペーサの空孔率としては、通常20%以上、好ましくは35%以上、さらに好ましくは45%以上であり、また通常90%以下、好ましくは85%以下、さらに好ましくは75%以下である。空孔率が小さすぎると膜抵抗が大きくなりレート特性が悪化する傾向にある。また大きすぎると膜の機械的強度が低下し絶縁性が低下する傾向にある。スペーサの平均孔径は、通常0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下であり、また通常0.05μm以上である。あまりに大きいと短絡が生じやすくなり、小さすぎると膜抵抗が大きくなりレート特性が悪化することがある。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明の具体的態様を更に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
[正極の製造]
コバルト酸リチウム(LiCoO2)90重量%とポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%とアセチレンブラック5重量%を混合し、N−メチルピロリドンを加えスラリー状にしたものをアルミニウムからなる集電体の片面に塗布・乾燥して正極を得た。
【0040】
[負極の製造]
グラファイト粉末87.4重量%とPVdF9.7重量%とアセチレンブラック2.9重量%を混合し、N−メチルピロリドンを加えスラリー状にしたものを銅からなる集電体の両面に塗布・乾燥して負極を得た。
[電解液の調合]
LiPF6を1.25mol/Lの割合で含有するエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(混合体積比2:3:3)100重量%にビニレンカーボネート2重量%とシクロヘキシルベンゼン2重量%を加えたものをベース電解液とし、これにN―メチルベンゾチアゾール−2−チオン(一般式(4)において、R14=Me、R15〜R18=H)1重量%を加えて電解液とした。
【0041】
[リチウム二次電池の製造]
上記正極、負極、及び膜厚16μm、空孔率45%、平均孔径0.05μmのポリエチレン製2軸延伸多孔膜フィルムに、それぞれ上記電解液を塗布・含浸させた後、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層した。こうして得られた電池要素を、まずPETフィルムで挟んだ後、アルミニウム層の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムに正極負極の端子を突設させつつ、真空封止してシート状のリチウム二次電池を作製した。さらに電極間の密着性を高めるためにシリコンゴム及びガラス板でシート状電池を挟んだ上で0.35kg/cm2で加圧した。図1に二次電池の概略断面図を示す。
【0042】
[電池初期特性評価]
コバルト酸リチウムの1時間当たりの放電量を138mAh/gとし、これと評価用リチウム二次電池の正極の活物質量とから放電速度1Cを求めてレート設定をした上で、0.2Cで4.2Vまで充電した後、0.2Cで3Vまで放電し初期のフォーメーションを行った。ついで0.5Cで4.2Vまで充電した後、1Cで3Vまで放電し、1C放電容量を求めた。結果を表−1に示した。なお充電時のカット電流は何れも0.05Cとした。
【0043】
[保存特性評価]
初期特性評価の終了した電池を0.5Cで4.2Vまで充電した後、60℃の恒温槽に7日間保存した。その後、電池を取り出し、0.5Cで4.2Vまで充電した後、1Cで放電し、保存後の1C放電容量を求めた。また保存前後の1C放電容量から下記計算式により容量回復率を求めた。結果を表−1に示した。
【0044】
【数1】
容量回復率(%)=
保存後1C放電容量(mAh/g)/1C放電容量(mAh/g)
[過充電特性評価]
初期特性評価の終了した電池を0.5Cで4.2Vまで充電した後、負極端子に熱電対を付けて2Cの電流値で過充電を開始した。21分後(SOC170%に相当)に通電を停止し、ガスの発生量をエタノール浴に電池を漬けて浮力を測定(アルキメデスの原理)して求めた。結果を表−1に示した。
【0045】
実施例2
添加剤としてN−メチルベンゾチアゾール−2−チオンの代わりに1,3−ジエチル−2−チオバルビツール酸(一般式(1)において、R1〜R2=Et、R3〜R4=H)を添加した電解液を使用したこと以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様の電池特性試験を実施した。結果を表−1に示した。
【0046】
比較例1
N−メチルベンゾチアゾール−2−チオンを添加しない電解液を使用したこと以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様の電池特性試験を実施した。結果を表−1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、高い容量及び優れたレート特性の二次電池が得られ、また保存特性、安全性に優れた二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施したリチウム二次電池の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 PETフィルム
5 シリコンゴム
6 ガラス板
7 ラミネートフィルム
8 封止材付きリード
Claims (6)
- リチウム塩が非水系有機溶媒に溶解されてなる非水系電解液であって、該非水系有機溶媒が、下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表されるヘテロ元素含有有機化合物を含有することを特徴とする非水系電解液。
- ヘテロ元素含有有機化合物の含有量が非水系電解液に対して0.01〜10重量%である、請求項1に記載の非水系電解液。
- 非水系電解液が、芳香族炭化水素または芳香族エーテルを含有する、請求項1又は2に記載の非水系電解液。
- 非水系有機溶媒が、不飽和カーボネートを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系電解液。
- 非水系有機溶媒が、非対称カーボネートを含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の非水系電解液。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の非水系電解液を用いたことを特徴とするリチウム二次電池。
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