JP4136730B2 - 細孔を有する構造体及びその製造方法 - Google Patents

細孔を有する構造体及びその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は孔を有する構造体およびその製造方法に関する。特に、本発明のAlの陽極酸化の手法を用いて作製したナノ構造体は、電子デバイスやメモリー媒体、メモリー素子などの機能材料や、構造材料などとして、広い範囲で利用可能である。特に垂直磁気記録媒体、パターンドメディア、固体磁気メモリー、磁気センサー、フォトニックデバイスなどとしての応用が有効である。
【0002】
【従来の技術】
金属及び半導体の薄膜、細線、ドットなどでは、ある特徴的な長さより小さいサイズにおいて、電子の動きが閉じ込められることにより、特異な電気的、光学的、化学的性質を示すことがある。このような観点から、機能性材料として、100ナノメータ(nm)より微細な構造を有する材料(ナノ構造体)の関心が高まっている。
【0003】
ナノ構造体の製造方法としては、たとえば、フォトリソグラフィーをはじめ、電子線露光、X線露光などの微細パターン描画技術をはじめとする半導体加工技術による作製があげられる。
【0004】
また、このような作製法のほかに、自然に形成される規則的な構造、すなわち、自己組織的に形成される構造をベースに、新規なナノ構造体を実現しようとする試みがある。これらの手法は、ベースとして用いる微細構造によっては、従来の方法を上まわる微細で特殊な構造を作製できる可能性があるため、多くの研究が行われ始めている。
【0005】
自己組織的に形成される特異な構造の例としては、陽極酸化アルミナ皮膜が挙げられる(たとえば、非特許文献1等参照)。Al板を酸性電解液中で陽極酸化すると、多孔質酸化皮膜が形成される。この多孔質酸化皮膜の特徴は、図2(a)に示すように、直径(2r)が数nm〜数100nmの極めて微細な円柱状ナノホール(細孔)14が、数10nm〜数100nmの間隔(2R)で平行に配列するという特異的な幾何学的構造を有することにある。この円柱状のナノホール14は、高いアスペクト比を有し、断面の径の一様性にも優れている。またこのナノホール14の直径2rおよび間隔2Rは、陽極酸化の際の電流、電圧を調整することによりある程度の制御が可能である。陽極酸化アルミナ皮膜は、バリア層22を介してAl板21上に作製される。
【0006】
この陽極酸化アルミナナノホールの特異的な幾何学構造に着目した、さまざまな応用が試みられている。益田による解説が詳しいが、以下、応用例を列記する。たとえば、陽極酸化膜の耐摩耗性、耐絶縁性を利用した皮膜としての応用や、皮膜を剥離してフィルターへの応用がある。さらには、ナノホール内に金属や半導体等を充填する技術や、ナノホールのレプリカ技術を用いることより、着色、磁気記録媒体、EL発光素子、エレクトロクロミック素子、光学素子、太陽電池、ガスセンサ、をはじめとするさまざまな応用が試みられている。さらには量子細線、MIM素子などの量子効果デバイス、ナノホールを化学反応場として用いる分子センサー、など多方面への応用が期待されている(非特許文献2参照)。
【0007】
【非特許文献1】
アール シー フルノー、ダブル アール リグビー、エー ピー ダヴィットソン(R.C.Furneaux,W.R.Rigby&A.P.Davidoson)”NATURE”Vol.337、p.147、1989年
【非特許文献2】
益田「固体物理」31,p.493、1996年
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
先に述べた半導体加工技術によるナノ構造体の作製は、歩留まりの悪さや装置のコストが高いなどの問題があり、簡易な手法で再現性よく作製できる手法が望まれている。
【0009】
このような観点から、自己組織的手法、特にAlの陽極酸化の手法は、ナノ構造体を容易に、制御よく作製することができるという利点がある。また、これらの手法では、一般に、大面積のナノ構造体を作製することが可能である。
しかし、基板上にアルミニウム層を形成し、当該アルミニウム層を陽極酸化する場合、孔壁と基板の密着性が低い場合があった。
【0010】
図2および図3は、従来のAl板(膜)上の陽極酸化アルミナナノホールを示す概念図である。図2(a)はAl板を陽極酸化した場合の断面図、図2(b)は基板上のAl膜を途中まで陽極酸化した場合の断面図、図3(c)はバリア層を残して陽極酸化を終了した断面図、図3(d)はバリア層をドライエッチングなどの方法で除去した断面図である。
【0011】
しかし、従来の陽極酸化アルミナナノホールは、一般に図2(a)、(b)に示すように、Al板(膜)表面に限られていたため、その応用も形態にも制限があった。たとえば、Alの融点は660℃であるが、その表面に作製されたナノホールに対しても、上記温度以上の熱処理を施すことができなかったことが挙げられる。その意味で、ナノホールを機能材料として多様な方向で使用するためには、高融点の基板上に陽極酸化アルミナナノホール形成する技術が望まれる。
【0012】
さらには、陽極酸化アルミナナノホールを電子デバイスなどとして応用することを考えると、内包物を埋め込み、前記内包物に下地から電気的に接続可能な陽極酸化アルミナナノホールを形成する技術が望まれる。金属などの良導電性材料の下地に陽極酸化アルミナナノホールを均一、且つ安定に作製することができれば、制御された電着により陽極酸化アルミナナノホールに内包物の作製を可能にし、さらに応用範囲を広げることが期待できる。
【0013】
基板上に陽極酸化アルミナナノホールを構成した例としては、特開平7−272651号公報に、「Si基板上にAl膜を形成し、Al膜を陽極酸化膜に変換した後、ナノホール部の底部のバリア層を除去し、ナノホール底部に露出したSi基板にSiと共晶合金が形成可能な金属層(Au、Pt、Pd、Ni、Ag、Cu)を形成し、VLS法によりSi針状結晶を成長する」技術が開示されている。
【0014】
この技術においては、ナノホールをSi基板まで貫通させるために、Al膜を陽極酸化後、ナノホール底部のバリア層を除去する工程を行っている。このバリア層を除去する手法としては、クロム酸系のエッチング液を用いる手法、陽極酸化終了後、Si基板と対向電極を外部導線で接続して液中で放置する手法が挙げられている。
【0015】
しかし、本発明者らが鋭意検討したところ、Al膜を全膜厚にわたり陽極酸化し、バリア層を残した図3(c)の状態で、再現良く陽極酸化を終了することは非常に困難であることが判明した。
【0016】
特に基板やAl膜に下地層があり、基板や下地層が反応性の低い材料の場合には、図3(c)の状態から陽極酸化をすすめると、ごく短時間のうちにバリア層が変質もしくは失われ、電解液が基板(もしくは下地層)に接触し、電解液の分解が生じてしまうためである。また、図3(c)の直前で陽極酸化を終了しても、それぞれのナノホールの深さにはある程度ばらつきが生じるため、広い範囲にわたって均一なバリア層を残した図3(c)の形状を作製することは困難である。
【0017】
また、基板上の一部においては、バリア層を残した図3(c)を実現できる場合が有るが、この場合も、後からバリア層除去工程を行うと、図3(d)に示すように、バリア層除去部のナノホール径がその部分で直線性を乱し、不連続になること、さらには、それぞれのナノホールで形状が大きく異なるなどの問題を呈した。
【0018】
特にナノホールの深さが深い場合には、膜厚や陽極酸化の進行具合に分布が出やすく、均一な厚みのバリア層を残すのは困難であり、またドライエッチングなどでバリア層を除去することは、不可能に近くなる。
【0019】
また貴金属やカーボンを下地とした陽極酸化アルミナナノホールの作製は報告がない。これは下地にこれら反応性が低い材料を用いた場合には、陽極酸化がこれら下地に到達したとき水の電気分解が始まり、その際の泡の発生で陽極酸化膜が破壊されてしまうのが一般的であることが原因であると思われる。
【0020】
そこで、本発明は、所定の深さ領域まで貫通している孔を有する構造体を提供することを目的とする。
本発明の目的は、ナノホール底部が下地の導電性金属層まで貫通した、直線性と径の一様性に優れたナノホールを有するナノ構造体、および前記陽極酸化アルミナナノホールを均一、且つ安定に形成するナノ構造体の製造方法を提供することにある。
【0021】
また、本発明の目的はアルミナナノホール層と基板との密着性(基板上に下地金属層を介して、アルミナナノホール層がある場合には、アルミナナノホール層と下地金属層との密着性)に優れたナノ構造体およびその製造方法を提供することである。特に、本発明が提供するナノ構造体は、ナノホール作製後に研磨工程がある場合や使用時に応力などの力がかかる場合などには特に密着性に優れているので好ましい。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る孔を有するナノ構造体の特徴は、孔を有するナノ構造体であって、基板、陽極酸化アルミナナノホールを有する第1の層、及び該基板と該第1の層の間に位置する第2の層を備え、該第2の層は、シリコンを含み構成され、且つ前記陽極酸化アルミナナノホールよりも孔径の小さい孔を有することを特徴とする。
【0023】
ここで、前記基板と前記第2の層間には、導電性を有する第3の層が形成されていてもよいし、前記陽極酸化アルミナナノホール内に、機能材料が充填されていてもよい。
【0024】
また、本発明の第1の発明は、ナノ構造体に係わるものである。すなわち、基板上に陽極酸化法により形成される陽極酸化アルミナナノホール層を具備するナノ構造体において、前記陽極酸化アルミナナノホール層の下部に微細孔を有する接合層を介して下地層が設けられ、且つ前記陽極酸化アルミナナノホール層のナノホールが前記微細孔を介して前記下地層まで貫通しており、且つ前記微細孔を有する接合層がSiを主成分として含有することを特徴とするナノ構造体である。
【0025】
上記ナノ構造体において、前記接合層がSiとAlを主成分として含有すること、特にSiとAlを含有する酸化物であることが好ましい。またこの接合層にある微細孔の平均直径(以降、平均直径は直径とも称す)は1nm以上9nm以下であること、厚みは1〜50nmであることが好ましい。
【0026】
更に前記下地層は応用によっては導電性であること、特に貴金属を含有していることが好ましく、また前記陽極酸化アルミナナノホール層のナノホールの一部もしくは全てに内包物が埋め込まれているナノ構造体が好ましい。
【0027】
また、本発明の第2の発明は、基板上に少なくとも下地層と陽極酸化アルミナナノホール層があり、且つ前記陽極酸化アルミナナノホール層のナノホールが前記下地層まで貫通しているナノ構造体の製造方法において、少なくとも基板上に下地層、接合層用AlSi層、Al層を順じ積層して積層膜を形成する成膜工程、該積層膜を陽極酸化して陽極酸化アルミナナノホール層を形成する陽極酸化工程を有することを特徴とするナノ構造体の製造方法である。
【0028】
また、ナノ構造体の製造方法においては、前記接合層用AlSi層を形成する工程が、AlとSiを非平衡状態で物質を形成する成膜法を用いて、Siの含有量が20〜70atomic%であるAlSi層を形成する工程からなることが好ましい。
【0029】
また、前記陽極酸化の工程が硫酸を含有する電解液で行なうことが好ましい。また、前記接合層用AlSi層の一部をエッチングする工程を有すること、特に酸溶液もしくはアルカリ溶液によるウェットエッチング工程であることが好ましい。更には前記エッチング工程の前もしくは後にアニール工程を施すことが好ましい。
【0030】
ナノ構造体の製造方法において、前記エッチング処理後に前記アルミナナノホール内へ内包物を埋め込む工程を有することが応用上有用であるが、この埋め込む工程がめっき工程であることが好ましい。
【0031】
以下、本発明の特徴を説明する。
本発明のナノ構造体は、基板/下地層/接合層/陽極酸化アルミナナノホール層の積層構造からなり、陽極酸化アルミナナノホールは、Alを主成分とする膜を陽極酸化し、表面から接合層界面までAlの全膜厚にわたり酸化し、適切な時間で陽極酸化を終了し、その後適切なエッチング工程を行うことにより作製される。エッチング工程後の前記接合層用AlSi層には、微細孔が形成されている。このため、ナノホール底部は下地層まで接合層に存在する微細孔を介して貫通しており、そのナノホールは接合層界面まで直線性が良好であるいう特徴を有している。
【0032】
また、本発明者らは、ナノホール底の貫通部分では陽極酸化アルミナナノホール層と下地層との界面に適切な接合層を設けることにより、陽極酸化アルミナナノホール層と下地層間の接合強度、密着性が増加することを見出した。
【0033】
すなわち、図3(d)に示す従来の陽極酸化工程後にバリア層除去工程を経たナノホールに比べ、本発明の図1のナノホールにおいては、ナノホールの直線性と径の一様性に優れ、また陽極酸化アルミナナノホール層と下地層間の接合強度、密着性が良いという特徴がある。
【0034】
本発明のナノ構造体は下地層と陽極酸化アルミナナノホール層間の接合性、密着性に優れるため、研磨などの応力がかかる工程や使用の際に有用である。また、接合性に優れていることから、アニール工程などで熱処理による応力があっても比較的安定である。すなわち、本発明のナノ構造体は耐熱性に優れるため、後工程において高温プロセスの適用が可能である。さらには、熱処理することによる陽極酸化アルミナナノホールの化学的安定性の改善も可能である。
【0035】
本発明のナノ構造体の陽極酸化ナノホールに、金属、半導体、酸化物等を埋め込むことにより、新たな電子デバイスへと応用できる可能性がある。
【0036】
本発明のナノ構造体は、その陽極酸化アルミナナノホールを、量子細線、MIM素子、電気化学センサー、着色、磁気記録媒体、EL発光素子、エレクトロクロミック素子、光学素子、耐摩耗性、耐絶縁性皮膜、フィルターをはじめとするさまざまな形態で応用することを可能とするものであり、その応用範囲を著しく広げることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
<ナノ構造体の構成>
本発明のナノ構造体を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のナノ構造体を示す概念図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はAA線で切断した断面図を示す。図1において、11は基板、12は導電性金属などからなる下地層、13は接合層、14はナノホール、15は陽極酸化アルミナナノホール層(陽極酸化膜とも称する)、16は接合層のナノホール部分に存在する微細孔である。
【0038】
この陽極酸化膜15は、Alと酸素を主成分として含有し、図1に示すように、多数の円柱状のナノホール14を有し、そのナノホール14は、下地層の表面にほぼ垂直に配置し、それぞれのナノホールは互いに平行かつほぼ等間隔に配置している。また、各ナノホール14は、図1(a)に示すように三角格子状に配列する傾向がある。ナノホールの直径2rは数nm〜数100nm、間隔2Rは数10nm〜数100nm程度である。
【0039】
また、特にナノホールをハニカム状に規則化させた場合には、ナノホール径などの形状やナノホール底部の貫通の均一性は向上する。この規則化は、Al表面に適切な間隔で凹凸を作製しておき、その凹部を陽極酸化によるナノホール作製の開始点とすることで行うことができる。凹凸の形成は、アルミニウム表面に窪みをつけたり、アルミニウム表面に凹凸を形成するための部材を配置することにより行う。
【0040】
ナノホールの間隔、直径は、陽極酸化に用いる電解液の濃度と温度、及び陽極酸化電圧印加方法、電圧値、時間、さらには、その後のポアワイド処理となるエッチング処理条件などのプロセスの諸条件でかなり制御することができる。
【0041】
陽極酸化アルミナナノホール層の厚さ、ナノホールの深さは、Alを主成分とする膜の厚さで制御することができる。これはたとえば10nm〜100μmの間である。従来、ナノホールの深さは、陽極酸化の時間により制御するのが一般的であったが、本発明においては、Alを主成分とする膜の厚さで規定できるため、ナノホールの深さが均一な陽極酸化アルミナナノホールを構成することができる。
【0042】
この陽極酸化アルミナナノホール層の成分はAlの酸化物であることが好ましいが、他の元素が含有していてもナノホールの形成に支障が無ければ構わない。
【0043】
接合層13としては、Siを主成分とするナノホールより微細な細孔を有する膜であることが特徴である。この接合層は接合層用AlSi層から得られるが、このAlSiの混合層、特にAl1-xSixと表した場合に陽極酸化前の組成がx=0.2〜0.7であることが好ましい。この組成は、AlとSiの全量に対してSiを20〜70atomic%の割合で含有するAlSi層からなる。陽極酸化もしくはエッチング後にはAlが溶解することにより、この組成よりもSiが主成分になる傾向がある。
【0044】
上記Siの割合は、より好ましくは、30〜60atomic%である。
なお、Siに変えて、SiとGeの混合物を用いることも出来る。
【0045】
接合層用AlSi層は、AlとSiを用いて、上記の様な組成比にスパッタリング成膜することにより、AlとSiに適度な組成偏析が起こり、Alが主成分なAl柱状構造体がSiが主成分な領域中に分散的に形成される。このAl柱状構造体の直径は数nm程度であり、また間隔は3〜10nm程度になる。Al柱状構造体の直径や間隔は成膜条件やAlとSiの組成比により変化する。また、この膜を陽極酸化、及びエッチング工程を施すことによりAl柱状構造体部分が溶解して微細孔16が形成される。接合層部分の陽極酸化を十分施した場合にはSiが主成分な部分も酸化し、酸化Siを主成分とする接合層が形成されるが、接合層部分の陽極酸化を抑制してエッチング処理を施せばアモルファスSiの接合層が形成される。またこの接合層に存在する微細孔はアルミナナノホールが存在する部分に優先的に形成される。接合層の膜厚は特に限定はないが、0.3nm〜100nmが利用される。特に好ましくは1nm〜50nm程度が良い。
【0046】
前記微細孔を有する接合層はSiを主成分として含有する場合には、Siの含有量は80〜100atomic%、好ましくは90〜100atomic%が望ましい。また、Alを0〜20atomic%、好ましくは1〜10atomic%含有していてもよい。
【0047】
また、前記微細孔を有する接合層がSiとAlを含有する酸化物である場合には、酸素を除いた元素におけるSiの含有量は80〜100atomic%、好ましくは90〜100atomic%が望ましい。また、Alを0〜20atomic%、好ましくは1〜10atomic%含有していてもよい。
【0048】
下地層12としては特に限定は無いが、平坦であることが好ましい。下地層を電極として利用する場合には導電性材料であることが好ましく、特に貴金属(Ag、Au、Pt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru)、およびそれらの合金、Cu、グラファイト、Si、InP、Geなどの半導体などの材料が適用可能である。この下地層は薄膜でも良いし、基板そのものでも構わない。但し、ナノホールに電着などで内包物を埋め込む場合などは下地層に貴金属が含有されていることが好ましい。本発明のナノ構造体は、充填材と下地層との電気的接続が良好なものとなるという利点がある。
【0049】
内包物の埋め込み構造としては、図5(a)に示す様に内包物41をナノホール表面まで均一に埋め込む構造や、図5(b)に示す様に内包物積層膜42を埋め込む構造、もしくは図5(c)に示す様に内包物41をナノホールの途中まで埋め込む構造、また図示はしていないがナノホール層外部まで伸びた構造の内包物を埋め込む構造などが挙げられる。
【0050】
内包物が磁性体の場合には垂直磁化膜として有用な磁気媒体として利用したり、磁性体の細線として見れば、量子効果デバイスとしても有効である。またナノホール内にCoとCuを図5(b)に示すように積層電着すれば、磁場に応答するGMR素子も作製可能である。
【0051】
内包物を図5(c)に示すようにナノホールの途中まで埋め込む構造にすれば、電子放出素子も作製可能である。
また、内包物が発光体や蛍光体の場合には発光デバイスはもちろん、波長変換層としても利用可能である。また内包物にアルミナとは異なる誘電体を埋め込んだ場合にもフォトニックデバイスとして有効である。
【0052】
本発明において、内包物とは陽極酸化アルミナナノホール内部のみではなく、内部からホール外へ伸びているものでも構わない。
また、もちろん本発明の陽極酸化アルミナナノホールをマスクやモールドとして利用することも可能である。
【0053】
<ナノ構造体の製造方法>
以下、本発明にかかるナノ構造体の製造方法について図面に基づいて詳細に説明する。
図4は、本発明のナノ構造体の製造方法の一実施態様を示す工程図である。図4において、本発明のシリコンナノ構造体の製造方法は、下記の(a)工程〜(d)工程を有することを特徴とする。
【0054】
(a)工程:成膜工程
成膜工程で、下記の(a−1)〜(a−3)工程からなり、基板上に下地層/接合層用AlSi層/Al層からなる積層膜を形成する。
【0055】
(a−1)工程:基板上に下地層を形成する。
(a−2)工程:次に、該AlとSiを非平衡状態で物質を形成する成膜法を用いて、基板の下地層上に接合層用AlSi層を形成する。成膜された接合層用AlSi層は、Alを主成分として含む柱状構造体と該柱状構造体を取り囲むSi領域とを有し、AlとSiの全量に対してSiを20〜70atomic%の割合で含有する混合膜からなる。
(a−3)工程:次に、接合層用AlSi層上にAl膜を形成する。
【0056】
上記の(a−1)〜(a−3)工程の膜の成膜は、抵抗加熱蒸着、EB蒸着、スパッタ、CVDをはじめとする任意の成膜方法が適用可能であるが、Al膜表面は平坦であることが好ましい。
【0057】
(b)工程:陽極酸化工程
次に、陽極酸化工程により、上記の(a)工程で積層された積層膜を陽極酸化して陽極酸化アルミナナノホール層を形成する。上部のAl膜が陽極酸化されてアルミナナノホールが形成される。さらに陽極酸化により、接合層用AlSi層中のAl柱状構造体が酸化及び溶解を起こし微細孔が形成され、同時に接合層用AlSi層中のSi部分も酸化される。
【0058】
(c)工程:エッチング工程
次に、エッチング工程により、陽極酸化工程後に残っているナノホール底の接合層用AlSi層を含む非貫通部分をエッチング除去し、前記接合層用AlSi層に微細孔を形成する。また、ナノホール径も広げられる。
【0059】
(d)工程:内包物埋め込工程
次に、内包物埋め込工程により、エッチング工程の後のアルミナナノホール内へ内包物を埋め込む。
【0060】
以下、図6〜図9を用いて、本発明のナノ構造体の製造方法について説明する。
図6は本発明のナノ構造体の製造方法の工程を示す概念図である。図6(a)は陽極酸化前の膜構成の断面図であり、基板11上に下地層12と接合層用AlSi層31、Alを主成分とする膜32が順次形成される。図6(b)は陽極酸化が終了した時点の断面図であり接合層13には微細孔53が形成されている場合やAl柱状構造体が残留している場合がある。図6(c)はエッチング処理により接合層部分に残留していたAl部分を溶解し、且つナノホール径を広げた状態の断面図であり、図6(d)はナノホールを金属や半導体などの内包物41で充填した断面図である。図7は本工程に用いる陽極酸化装置の一例を示す概略図である。
【0061】
図6の(a)〜(d)の順に追って説明する。
以下の工程(a)〜(d)は、図6の(a)〜(d)に対応する。
(a)成膜工程
基板11上に下地層12と接合層用AlSi層31とAl膜32を形成することで試料とする。これらの膜の成膜は、抵抗加熱蒸着、EB蒸着、スパッタ、CVDをはじめとする任意の成膜方法が適用可能であるが、Al膜表面は平坦であることが好ましい。
【0062】
本発明は、成膜工程において、特に接合層用AlSi層を形成する工程に特徴を有するので、この工程について以下に説明する。
AlとSiを非平衡状態で物質を形成する成膜法を用いて、基板11に形成した下地層12上に接合層用AlSi層31を形成する。ここでは、非平衡状態で物質を形成する成膜法として、スパッタリング法を用いた例を示す。
【0063】
下地層12を形成した基板11上に、非平衡状態で物質を形成する成膜法であるマグネトロンスパッタリング法により、接合層用AlSi層31を形成する。接合層用AlSi層31は、図11に示す様に、Alを主成分とする組成からなるAl柱状構造体37と、その周囲のSiを主成分とするSi領域38から構成される。
【0064】
図10を用いて、非平衡状態で成膜する方法として、スパッタリング法を用いて接合層用AlSi層を成膜する方法について説明する。なお、図10において、1が基板、2がスパッタリングターゲットである。スパッタリング法を用いる場合は、AlとSiの割合を簡単に変化させることができる。
【0065】
図10に示すように、基板1上に、非平衡状態で物質を形成する成膜法であるマグネトロンスパッタリング法により、接合層用AlSi層を形成する。基板1は下地層12を形成した基板11を表わす。
【0066】
原料としてのSi及びAlは、図10のようにAlターゲット(基板)2上にSiチップ3を配することで達成される。Siチップは、図10では、複数に分けて配置しているが、勿論これに限定されるものではなく、所望の成膜が可能であれば、1つであっても良い。但し、均一なAlを含む柱状構造体をSi領域内に均一に分散させるには、基板1に対称に配置しておくのがよい。
【0067】
また、所定量のAlとSiとの粉末を焼成して作製したAlSi焼成物を成膜のターゲット材として用いることもできる。
また、AlターゲットとSiターゲットを別々に用意し、同時に両方のターゲットをスパッタリングする方法を用いても良い。
【0068】
形成されるAlSi層中のSiの量は、AlとSiの全量に対して20〜70atomic%であり、好ましくは25〜65atomic%、さらに好ましくは30〜60atomic%である。Si量が斯かる範囲内であれば、Si領域内にAlの柱状構造体が分散した接合層用AlSi層が得られる。
【0069】
上記のAlとSiの割合を示すatomic%とは、SiとAlの原子の数の割合を示し、atom%あるいはat%とも記載され、例えば誘導結合型プラズマ発光分析法で接合層用AlSi層中のSiとAlの量を定量分析したときの値である。
【0070】
なお、上記割合においては、atomic%を単位として用いているが、wt%を単位として用いる場合は、Siが20atomic%以上70atomic%以下の場合は、20.65wt%以上70.84wt%以下となる(atomic%からwt%への換算は、Alの原子量を26.982、Siの原子量を28.086としてAlとSiの重量比を求め、(重量比)×(atomic%)の値からwt%に換算することができる)。
【0071】
また、基板温度としては、300℃以下であり、好ましくは200℃以下であるのがよい。なお、AlSi層が形成できれば、基板温度は、0℃以上100℃以下でもよい。
【0072】
なお、このような方法で接合層用AlSi層を形成すると、AlとSiが準安定状態の共晶型組織となり、Alが数nmレベルのナノ構造体(柱状構造体)を形成し、自己組織的に分離する。そのときのAlはほぼ円柱状形状であり、その直径は1〜10nmであり、間隔は3〜15nmである。
接合層用AlSi層のSiの量は、例えばAlターゲット上に置くSiチップの量を変えることで制御できる。
【0073】
非平衡状態で成膜を行う場合、特にスパッタリング法の場合は、アルゴンガスを流したときの反応装置内の圧力は、0.2〜1Pa程度がよい。しかし、特に、これに限定されるものではなく、アルゴンプラズマが安定に形成される圧力であればよい。
【0074】
非平衡状態で物質を形成する成膜法は、スパッタ法が好ましいが抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)をはじめとする任意の非平衡状態で物質を形成する成膜法が適用可能である。
【0075】
また、成膜する方法としては、SiとAlを同時に形成する同時成膜プロセスを用いても良いし、SiとAlを数原子層づつ積層する積層成膜プロセスを用いてもよい。
【0076】
上記の様にして成膜された接合層用AlSi層31は、図11に示す様に、Alを主成分とする組成からなるAl柱状構造体37と、その周囲のSiを主成分とするSi領域38を備える。
【0077】
Alを含有する柱状構造体部37の組成は、Alを主成分とするが、柱状構造の微細構造体が得られていれば、Si、酸素、アルゴン、などの他の元素を含有していてもよい。
【0078】
また、Al柱状構造体の周囲を取り囲んでいるSi領域38の組成は、Siを主成分とするが、柱状構造の微細構造体が得られていれば、Al、酸素、アルゴンなどの元素を含有してもよい。
【0079】
(b)陽極酸化工程
上記(a)成膜工程で基板上に積層膜が形成された試料に陽極酸化を行うことで、本発明のナノ構造体を構成する。図7は本工程に用いる陽極酸化装置の一例を示す概略図である。
【0080】
図7中、60は恒温槽であり、61は反応容器、62はPt板などの対向電極、63は電解液、64は試料、65は陽極酸化電圧を印加する電源、66は陽極酸化電流を測定する電流計、67は試料ホルダーである。図では省略してあるが、このほか電圧、電流を自動制御、測定するコンピュータなどが組み込まれている。試料64および対向電極62は、恒温水槽により温度を一定に保たれた電解液中に配置され、電源より試料、対向電極間に電圧を印加することで陽極酸化が行われる。ここで67は不必要な部分に電圧が印加されない様にする為のホルダーである。
【0081】
陽極酸化に用いる電解液は、たとえば、シュウ酸、りん酸、硫酸、クロム酸溶液などが挙げられる。特に好ましい溶液は低電圧(〜30V程度)は硫酸、高電圧(60V〜)はりん酸、その間の電圧ではシュウ酸の溶液が好ましい。またアルコール、例えばエタノールやイソプロピルアルコールを3%以上電解液に混合すると、Al層にピンホールがあって下地層に電解液が触れて水の電気分解が発生し、それに伴い酸素などの泡が発生しても、アルコールが泡切れを良くするので、陽極酸化が安定化する傾向がある。
【0082】
ここで陽極酸化について説明する。
図8には各種の下地金属層を用いた場合の陽極酸化時の電流プロファイルを示す。ここで石英などの基板の上に上記積層膜を形成したものを試料として用い、下地層から電極をとり、シュウ酸などの電解液中で定電圧陽極酸化をすると、最初Alの表面が酸化されて急激に電流値が下がるが(図8のAのポイント)、Al膜にナノホールが形成され始めると電流が徐々に増大して一定になる(図8のBのポイント)。ここで正確な酸化電流を測定するには、下地層が電解液に接触しないようにする必要がある。そして陽極酸化が接合層用AlSi層まで到達すると(図8のCのポイント)、Alの酸化や電解液中へのAlイオンの拡散が抑制されて電流値が減少する(図8のDのポイント)。そして次にAlSi層の陽極酸化が始まる(図8のEのポイント)。このときの状態は図9(b)に示す様に上部のAl膜の陽極酸化が終了し図9(c)に示す様に接合層用AlSi層中のAl柱状構造体が酸化、及び溶解を起こしており、同時に接合層用AlSi層中のSi部分も図9(d)に示す様に酸化してゆく。しかし、このまま陽極酸化を継続すると下地層表面が水溶液に接し、場合によっては水の電気分解などが起こり電流値が増大する(図8のFのポイント)。この電気分解が起こるとナノホールは徐々に破壊されてしまう。ここで下地金属層の材料に酸化物が安定に存在する場合(Si、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wやこれらの金属が混合している場合など)は電流減少が十分起こる(図8のG)。陽極酸化の終了時点として好ましいのは図8中のEのポイント、もしくはそれ以降のG、Fのポイントである。ただし、G,Fの時点を長時間行なうと下地層の激しい酸化やナノホールの破壊が起こり好ましくない。
【0083】
陽極酸化工程により、上記の(a)工程で積層された積層膜が陽極酸化されて陽極酸化アルミナナノホール層が形成される。まず、積層膜の上部のAl膜が陽極酸化されてアルミナナノホールが形成される。さらに陽極酸化により、接合層用AlSi層中のAl柱状構造体が酸化及び溶解を起こし、一部または非貫通部分がある不完全な微細孔が形成され、同時に接合層用AlSi層中のSi部分も酸化される。
【0084】
(c)エッチング処理
上記ナノ構造体をエッチング処理することにより、ナノホール底の非貫通部分をエッチング除去することが可能である。この処理には酸溶液(たとえばリン酸溶液)中に浸す工程やアルカリ溶液(KOH溶液など)に浸す工程があげられる。また、このエッチング処理では同時にナノホール径を広げることができる。酸濃度、処理時間、温度等により所望のナノホール径を有するナノ構造体とすることができる。
【0085】
(d)内包物埋め込工程(電着工程)
上記ナノホール内に金属を電着する場合は、電着金属がイオンになっている溶液中に上記の工程を終了した基板を浸して、下地層に電圧を印加すればよい。この溶液には例えば硫酸コバルトの水溶液などが利用される。また、電着の際に核発生を十分起こさせるために交流の電圧を印加することも有効である。ここで、CoやCu、Niなどの金属を電着する場合においては、これらの元素が電着溶液中において陽イオンなので、下地層には負の電圧印加が必要になる。
【0086】
本発明では、電気泳動などによる内包物の形成も電着と呼ぶことにする。例えばDNAは水溶液中で負に帯電しているので、上記と同様下地層に正の電圧を印加することでナノホール内にDNAを埋め込むことが可能である。
【0087】
もちろん電着ではなくても、ナノホール上部からの浸透や、CVD法などの様な成膜法によってもナノホール内包物を作製することができる。また電着においても金属だけではなく、半導体や酸化物などの材料を充填することが可能である。
【0088】
またナノホール内に電着を十分したあと、ナノホール表面を平坦にするために表面研磨することも場合により有効である。
【0089】
また、エッチング処理の前や後にアニール処理を行うことも有効である。アニールは1200℃まで可能であり、100℃以上のアニールで膜に残存する水分を除去できることや、更に高い温度のアニールで陽極酸化膜の結晶性を高めることができる。また、内包物を充填した後にアニールを行えば、内包物の特性や構造を制御したり密着性を高める効果もある。上記のアニール処理は、真空中や水素および不活性ガスなどの還元性雰囲気内で可能であるばかりでなく、下地層が破壊されない場合は空気や酸素中でのアニールも可能である。
【0090】
【実施例】
以下に実施例をあげて、本発明を説明する。
【0091】
実施例1
本実施例は、図6を用いて貫通陽極酸化アルミナナノホールを作製した場合の例を説明する。
a)下地層、接合層用AlSi層、Al膜の形成
まず、石英基板上にRFスパッタ法によりまずTiを5nm成膜した後、下地層としてPtを厚さ20nm成膜した。そして接合層用AlSi層として、Al1-xSixの組成において、x=10〜80atomic%(以降の実施例では、%と記す)のSiを含有する厚さ20nmの膜を、Si含有量が10%刻みで8種類作製した。さらに、各々の接合層用AlSi層の上部に厚さ200nmのAl膜を成膜した。
【0092】
ターゲットには、直径100mmの円形のアルミニウムターゲット上に、15mm角のシリコンチップを、2から14枚置いたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWとした。また、基板温度は室温(25℃)とした。
【0093】
なお、ここではターゲットとして、アルミニウムターゲット上にシリコンチップを2から14枚置いたものを用いたが、シリコンチップの枚数はこれに限定されるものではなく、スパッタ条件により変化し、接合層用AlSi層の組成が所定のシリコン含有量近辺になれば良い。また、ターゲットはアルミニウムターゲット上にシリコンチップを置いたものに限定したものではなく、シリコンターゲット上にアルミニウムチップを置いたものでも良いし、シリコンとアルミニウムを焼結したターゲットを用いても良い。
【0094】
なお、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、アルミニウム・シリコン混合膜を観察した。基板真上方向から見た表面の形状は図11のように、シリコン領域に囲まれた円形のアルミニウム柱状構造体が二次元的に配列していた。アルミニウム柱状構造体部分の直径は1〜9nmであった。また、断面をFE−SEMにて観察した所、長さは20nmであり、それぞれのアルミニウム柱状体はお互いに独立していた。
【0095】
b)陽極酸化
図7の陽極酸化装置を用い陽極酸化処理を施した。
本実施例においては、電解液として0.3mol/Lのシュウ酸水溶液を使用し、恒温水槽により電解液を17℃に保持した。ここで陽極酸化電圧はDC40Vであり、電極は均一に陽極酸化が進行するように下地層側からとった。陽極酸化工程途中、陽極酸化がAl表面から進行し下地層まで到達したことを示す電流を検知するため、陽極酸化電流をモニターした。陽極酸化の終了は図8中Eから電流が増大し始めた時点で行った。
陽極酸化処理後、純水、およびイソプロピルアルコールによる洗浄を行った。
【0096】
c)エッチング処理
陽極酸化処理後、5wt%のリン酸溶液中に15分間浸す本処理により、適宜、エッチング処理を行った。
【0097】
結果
取り出した試料の表面、断面をFE−SEM(Field Emission−Scanning Electron Microscope:電界放出走査型電子顕微鏡)にて観察した。その結果Al1-xSixの組成においてx=20〜70%の試料においては、図1に示すようにナノホールが接合層を介して下地層12まで貫通しており、接合層用AlSi層は直径2〜8nmの細孔を有した酸化された状態で陽極酸化アルミナナノホール層と下地層の間に残存していた。
【0098】
x=10%、80%の試料においては、微細孔の形状もしくはナノホールの貫通状態が不十分であった。そして、本発明の試料と接合層を設けない試料を研磨装置で陽極酸化アルミナナノホール層の約半分までダイヤモンドスラリーを用いて研磨したところ、本発明の試料には破損が見られなかったが、接合層を設けない試料では一部に陽極酸化アルミナナノホール層が剥離する破損が見られた。このことから、本発明の試料は十分な接合強度を有していることがわかった。また、上記エッチング工程を施さない試料を作製して同様の評価をしたところ、ナノホールの貫通は出来ていたが、一部に貫通が不十分であることがわかった。
【0099】
実施例2
実施例1と同様にして試料を用意した。ただし、接合層用AlSi層にはAl1-xSixの組成において、x=40%のSiを含有する試料を用いて、接合層用AlSi層の厚みを1〜100nmまで変化させた。また、エッチングにはKOH溶液を用いて、1〜10分エッチング処理を施した。
【0100】
FE−SEM観察で作製した試料を観察したところ、接合層の厚みが50nm以下では図1に示したような下地層12まで貫通したナノホールが得られていたが、50nmより厚い試料では一部のナノホールが貫通しないで残っていた。このことから、接合層は1〜50nmが好ましいと言える。
【0101】
実施例3
実施例1と同様にして試料を用意した。ただし、接合層用AlSi層にはAl1-xSixの組成において、x=40%のSiを含有する試料を用いて、陽極酸化の終了時間を変化させた。
【0102】
すなわち
A:図8においてEの電流領域の時点に到達して陽極酸化を終了させた試料
B:図8においてEの電流領域の時点が終了して陽極酸化を終了させた試料
の2種類を作製した。その後、りん酸5wt%の溶液中で20分エッチング処理を行なった。
【0103】
FE−SEM観察で作製した試料を観察したところ、Aの試料では図9(c)に示したような下地層12まで貫通した微細孔を有するSiの接合層34が陽極酸化ナノホール下部に見られ、Bの試料では図9(d)に示したような下地層12まで貫通した微細孔を有する酸化されたSiの接合層35が陽極酸化ナノホール下部に見られた。
【0104】
実施例4
実施例1と同様にして試料を用意した。ただし、接合層用AlSi層にはAl1-xSixの組成において、x=40%のSiを含有する試料を用い、接合層用AlSi層の厚みは5nmとした。ここで下地層としてSiO2とTiとPtの3種類を用いた。また陽極酸化終了は図8においてEの電流領域において行なった。その後、りん酸5wt%の溶液中で20分エッチング処理を行なった。
【0105】
得られた試料をFE−SEM観察で観察したところ、全ての試料において図9(c)に示したような下地層12まで貫通した微細孔を有するSiの接合層が陽極酸化ナノホール下部に見らた。
【0106】
実施例5
本実施例においては、実施例4と同様に、下地層としてSiO2とTiとPtの3種類を用いて、陽極酸化アルミナナノホールを作製した後、内包物を電着した。
電着は試料を作用極、Coを対極として、メッキ浴に5%CoSO4・7H2O、2%H3BO3を用い、DC電圧−2V、電着時間20秒を施した。
【0107】
そしてFE−SEMで電着した試料の断面を観察したところ、下地層がPtの場合には図5(a)に示す形態を有していた。直径が約40nmの円柱状ナノホールにCoが充填されており、約100nmの間隔で互いに平行かつほぼ等間隔に配列形成していた。また、ナノホールの底までピラー直径は接続されており接合層中の微細孔中にもCoが電着されていた。但し下地層がTiの場合にはCo電着が部分的にしか出来ておらず、下地層がSiO2の場合には電着は見られなかった。このことから下地層が貴金属である方が、電着などの工程には有利であることが分かる。
【0108】
実施例6
実施例3と同様に試料を用意した。ただし陽極酸化は下記の3種類を行なった。
A:硫酸0.3mol/L、5℃、25V
B:シュウ酸0.3mol/L、15℃、40V
C:りん酸0.3mol/L、10℃、80V
【0109】
上記条件において図8中のEの定電流領域が最も明確に見られたのはAの硫酸の場合であった。FE−SEM観察の結果、陽極酸化アルミナナノホールの下部と接合層の接合状態が最も良かったのはAの硫酸での陽極酸化の場合であった。
【0110】
上記の各実施例に示した様に、本発明は、下地層と陽極酸化アルミナナノホール層の接合性が強くなる。このため研磨やアニールなど応力がかかる工程や使用にも耐久性がり、陽極酸化アルミナナノホールの用途を格段に広げることができる。
【0111】
また、本発明は、貴金属などの下地層電極上に底が貫通した陽極酸化アルミナナノホールを安定に形成できるため、ナノホールへの内包物の電着充填を均一に施すことが出来き、これを用いた磁気媒体や量子効果デバイス、光デバイス等を実現できる。
【0112】
これらは、陽極酸化アルミナナノホールをさまざまな形態で応用することを可能とするものであり、その応用範囲を著しく広げるものである。
本発明のナノ構造体は、それ自体機能材料として使用可能であるが、さらなる新規なナノ構造体の母材、モールドなどとして用いることもできる。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ナノホール底部が下地層まで貫通し、かつ陽極酸化アルミナナノホール層と導電性の下地層との密着性に優れたナノ構造体を提供することができる。
また、本発明は、上記のシリコンナノ構造体を容易に製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のナノ構造体を示す概念図である。
【図2】従来のAl板(膜)上の陽極酸化アルミナナノホールを示す概念図である。
【図3】従来のAl板(膜)上の陽極酸化アルミナナノホールを示す概念図である。
【図4】本発明のナノ構造体の製造方法の一実施態様を示す工程図である。
【図5】本発明のナノ構造体の陽極酸化アルミナナノホールに内包物を埋め込んだ概念図である。
【図6】本発明のナノ構造体の製造方法の工程を示す概念図である。
【図7】陽極酸化装置を示すの概略図である。
【図8】陽極酸化時の電流プロファイルを示す図である。
【図9】本発明の陽極酸化アルミナナノホールを示す概念図である。
【図10】本発明における接合層用AlSi層の成膜方法の一例を示す概略図である。
【図11】本発明における接合層用AlSi層を示す概念図である。
【符号の説明】
1 基板
2 Alターゲット
3 Siチップ
4 Arプラズマ
11 基板
12 下地層
13 接合層
14 ナノホール
15 陽極酸化膜(陽極酸化アルミナナノホール層)
16 微細孔
21 Al板
22 バリア層
23 基板
24 Al膜
25 バリア層除去部
31 接合層用AlSi層
32 Al膜
34 Si接合層
35 微細孔
36 酸化Si接合層
37 Al柱状構造体
38 Si領域
41 内包物
42 内包物積層膜
53 微細孔
60 恒温槽
61 反応容器
62 対向電極
63 電解液
64 試料
65 電源
66 電流計
67 試料ホルダー

Claims (19)

  1. 孔を有するナノ構造体であって、基板、陽極酸化アルミナナノホールを有する第1の層、及び該基板と該第1の層の間に位置する第2の層を備え、該第2の層は、シリコンを含み構成され、且つ前記陽極酸化アルミナナノホールよりも孔径の小さい孔を有することを特徴とするナノ構造体。
  2. 前記基板と前記第2の層間には、導電性を有する第3の層が形成されている請求項1記載のナノ構造体。
  3. 前記陽極酸化アルミナナノホール内に、機能材料が充填されていることを特徴とする請求項1記載のナノ構造体。
  4. 基板上に陽極酸化法により形成される陽極酸化アルミナナノホール層を具備するナノ構造体において、前記陽極酸化アルミナナノホール層の下部に微細孔を有する接合層を介して下地層が設けられ、且つ前記陽極酸化アルミナナノホール層のナノホールが前記微細孔を介して前記下地層まで貫通しており、且つ前記微細孔を有する接合層がSiを含有することを特徴とするナノ構造体。
  5. 前記接合層がSiとAlを含有する請求項4に記載のナノ構造体。
  6. 前記接合層がSiとAlを含有する酸化物である請求項5に記載のナノ構造体。
  7. 前記微細孔の平均直径が1nm以上9nm以下である請求項4に記載のナノ構造体。
  8. 前記接合層の厚みが1〜50nmである請求項4に記載のナノ構造体。
  9. 前記下地層が導電性である請求項4に記載のナノ構造体。
  10. 前記下地層が貴金属を含有している請求項9に記載のナノ構造体。
  11. 前記陽極酸化アルミナナノホール層のナノホールの一部もしくは全てに内包物が埋め込まれている請求項4に記載のナノ構造体。
  12. 基板上に少なくとも下地層と陽極酸化アルミナナノホール層があり、且つ前記陽極酸化アルミナナノホール層のナノホールが前記下地層まで貫通しているナノ構造体の製造方法において、少なくとも基板上に下地層、接合層用AlSi層、Al層を順じ積層して積層膜を形成する成膜工程、該積層膜を陽極酸化して陽極酸化アルミナナノホール層を形成する陽極酸化工程を有することを特徴とするナノ構造体の製造方法。
  13. 前記接合層用AlSi層を形成する工程が、AlとSiを非平衡状態で物質を形成する成膜法を用いて、Siの含有量が20〜70atomic%であるAlSi層を形成する工程からなる請求項12に記載のナノ構造体の製造方法。
  14. 前記陽極酸化工程を硫酸を含有する電解液で行なう請求項12に記載のナノ構造体の製造方法。
  15. 前記陽極酸化工程の後に、さらに前記接合層用AlSi層の一部をエッチングしてナノホールを下地層まで貫通するエッチング工程を有する請求項12に記載のナノ構造体の製造方法。
  16. 前記エッチング工程が酸もしくはアルカリ溶液によるウェットエッチング工程である請求項15に記載のナノ構造体の製造方法。
  17. 前記エッチング工程の前もしくは後にアニール工程を有する請求項12または13に記載のナノ構造体の製造方法。
  18. 前記エッチング工程の後に前記ナノホール内へ内包物を埋め込む工程を有する請求項12または15に記載のナノ構造体の製造方法。
  19. 前記内包物を埋め込む工程が電着工程である請求項18に記載のナノ構造体の製造方法。
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