JP4136028B2 - 磁性薄膜メモリ素子、それを用いた磁性薄膜メモリ及びその記録再生方法 - Google Patents

磁性薄膜メモリ素子、それを用いた磁性薄膜メモリ及びその記録再生方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁化の向きによって情報を記録し、磁気抵抗効果によって再生する磁性薄膜メモリ素子およびそれを用いた磁性薄膜メモリに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁性薄膜メモリは半導体メモリと同じく可動部のない固体メモリであるが、電源が断たれても情報を失わず、繰り返し書き換え回数が無限回であり、放射線が入射しても記録内容が消失する危険性がない等、半導体メモリと比較して有利な点がある。特に近年、巨大磁気抵抗(GMR)効果を利用した薄膜磁気メモリは、従来から提案されている異方性磁気抵抗効果を用いた磁性薄膜メモリと比較して大きな出力が得られるため注目されている。
【0003】
例えば日本応用磁気学会誌VOL.20、p22(1996)には、図12に示したように硬質磁性膜HM/非磁性膜NM/軟磁性膜SM/非磁性膜NMなる構成要素を複数回積層してメモリー素子とした固体メモリが提案されている。このメモリー素子には金属導体と接合されてセンス線Sが、また、絶縁膜Iによって上記センス線Sと絶縁されたワード線Wが、各々設けられており、このワード線電流およびセンス線電流によって発生する磁界により情報の書き込みを行う。
【0004】
具体的には図13に示したように、ワード線Wに電流Iを流し電流の向きIDによって異なる方向の磁界を発生させて硬質磁性膜HMの磁化反転を行いメモリー状態“0”,“1”の記録を行う。例えば同図(a)に示すように正の電流を流して、同図(b)に示すように右向きの磁界を発生させて硬質磁性膜HMに“1”の記録を行い、また同図(c)に示すように負の電流を流して、同図(d)に示すように左向きの磁界を発生させて硬質磁性膜HMに“0”の記録を行う。情報の読み出しは図14に示すようにワード線Wに記録電流より小さい電流Iを流して軟磁性膜SMの磁化反転のみを起こし、その際の抵抗変化を測定する。巨大磁気抵抗効果を利用すれば軟磁性膜SMと硬質磁性膜HMの磁化が平行の場合と反平行の場合で抵抗値が異なるので、そのとき生ずる抵抗変化により“1”,“0”のメモリー状態を判別することができる。
【0005】
同図(a)に示したような正から負のパルスを印加すると、軟磁性膜は右向きから左向きとなり、メモリー状態“1”に対しては、同図(b)のように小さい抵抗値から同図(c)のように大きい抵抗値に変化する。メモリー状態“0”に対しては、同図(d)のように大きい抵抗値から同図(e)のように小さい抵抗値に変化する。このようにして抵抗の変化を読み取れば、記録後の軟磁性膜SMの磁化状態に関わらず硬質磁性膜HMに記録した情報の読み出しが可能であり、非破壊読み出しが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記構成の磁性薄膜メモリは、ビットセルの面積を小さくするに伴って、磁性層内部で生じる反磁界(自己減磁界)が無視できなくなり、記録保持する磁性層の磁化方向が一方向に定まらず不安定となってしまう。従って上記構成の磁性薄膜メモリは、ビットセルを微細化すると共に情報の保存ができず、高集積化が不可能であるといった欠点を有していた。
【0007】
本発明は、これらの点に鑑み、ビットセルを微細化する際に問題となる磁性薄膜の反磁界をなくし、高集積化を可能にした磁性薄膜メモリを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明はさらに安定した記録再生を実現し、非磁性層の製造マージンが広く、再生時間が短く、ノイズの少ない再生を実現する磁性薄膜メモリの記録再生方法提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板上に、膜面内の一方向に磁化配向し低い保磁力を有する第1磁性層と、この第1磁性層の磁化配向と平行または反平行に磁化配向し第1の磁性層よりも高い保磁力を有する第2磁性層と、この第1磁性層と第2磁性層との層間に設けられた非磁性層とを有し、この第1磁性層から第2磁性層までの積層構造の層方向の電気抵抗が、前記第1磁性層の磁化方向とこの第2磁性層の磁化方向が平行のときは低い抵抗値を示し、反平行のときは平行状態に比較して高い抵抗値を示す磁気抵抗素子を用いた磁性薄膜メモリ素子であって、前記第1磁性層および第2磁性層と共に前記非磁性層を囲むように前記第1磁性層および第2磁性層に接して第3磁性層が設けられ、外部磁界が0のときには前記第1磁性層の磁化方向と前記第2磁性層の磁化方向が反平行状態を示して第1磁性層、第2磁性層および第3磁性層によりこの非磁性層を囲む閉磁路を構成することを特徴とする磁性薄膜メモリ素子に関する。
【0010】
本発明で用いられる基板は、特に制限はないがシリコン基板を用いるとメモリ動作に必要なスイッチング素子、センス回路、ドライバー、アンプ等の半導体素子を本発明の磁性薄膜素子と同一の基板上に作成することができる。
【0011】
前記第3磁性層は、前記第1磁性層および前記第2磁性層の側面に接して設けられることが好ましい。
【0012】
また、前記第3磁性層は、前記第1磁性層と前記第2磁性層の層間にあって前記非磁性層の両端に設けられていてもよく、さらにこの場合には前記第3磁性層の全体の長さは、前記非磁性層の長さの3分の1以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の磁性薄膜メモリ素子において、第1磁性層および第2磁性層の長さL(μm)と磁性層の膜厚t(μm)との関係は、(式1)で表されることが好ましい。
【0014】
(式1) L<30×t
また、前記磁性薄膜素子を複数個配列したときに、隣接する磁性薄膜素子の第2磁性層間の距離d(μm)と第1磁性層および第2磁性層の膜厚t(μm)との関係が(式2)で表されることが好ましい。
【0015】
(式2) d<3.38×t0.68
前記第3磁性層の磁気異方性、保磁力は、前記第1磁性層および前記第2磁性層の磁気異方性、保磁力より小さいことが好ましい。
【0016】
前記第3磁性層の材料としては、 NiおよびFeを主要構成成分とする金属膜からなることが好ましい。
【0017】
また、前記第3磁性層の材料として、GdFeおよびTbFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の合金を含む金属膜からなることも好ましい。
【0018】
さらに前記第3磁性層は絶縁性材料からなることも好ましい。
【0019】
前記第1磁性層の保磁力は、前記第2磁性層の保磁力の半分以下であることが好ましく、前記第2磁性層の保磁力は5[Oe]以上で50[Oe]以下であることが好ましく、この場合、第1磁性層の保磁力は2[Oe]以上で25[Oe]以下であることが好ましい。
【0020】
前記第1磁性層および前記第2磁性層の長さと幅の比は、2以上であり、長さ方向に前記第3磁性層が設けられていることが好ましい。
【0021】
前記第1磁性層は、 Ni、FeおよびCoからなる群より選ばれる少なくとも1種を構成成分とする金属膜からなることが好ましい。
【0022】
また前記第2磁性層は、Feおよび/またはCoを主要構成成分とする金属膜からなることが好ましい。
【0023】
本発明の磁性薄膜メモリの第1の例は、スピン依存トンネリングにより磁気抵抗効果が生じることを特徴とする。この場合、前記非磁性層はAlOx、AlNx、SiOx、SiNxおよびNiOxからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物からなることが好ましく、前記非磁性層の膜厚は4オングストローム以上25オングストローム以下であることが好ましい。また前記第1磁性層および第2磁性層の膜厚は20オングストローム以上が好ましくさらには80オングストローム以上が好ましく、5000オングストローム以下が好ましくより好ましくは1000オングストローム以下がよい。
【0024】
本発明の磁性薄膜メモリの第2の例は、スピン依存散乱により磁気抵抗効果が生じることを特徴とする。この場合、前記非磁性層に良導体である金属層を用いることが好ましく、特にCuを構成成分とすることが好ましい。この非磁性層の膜厚は5オングストローム以上60オングストローム以下であることが好ましい。また前記第1磁性層および第2磁性層の膜厚は20オングストローム以上200オングストローム以下であることが好ましい。
【0025】
また前記第1磁性層と前記非磁性層の間、もしくは前記第2磁性層と前記非磁性層の間、またはその両方にCoを主成分とする磁性層が設けられていることが好ましい。
【0026】
また、前記磁性薄膜素子は、前記非磁性層を挟んで第1磁性層および第2磁性層が2回以上30回以下に積層することも可能である。
【0027】
本発明の磁性薄膜メモリは、マトリックス状に配列された複数の上記の磁性薄膜メモリ素子と、縦(または横方向)に並ぶ複数の磁性薄膜メモリ素子の第2磁性層(または第1磁性層)に接続される第1ワード線と、この第1ワード線と交差する方向に並ぶ複数の磁性薄膜メモリ素子の第1磁性層(または第2磁性層)に接続される第2ワード線とを有し、各磁性薄膜メモリ素子が第1ワード線および第2ワード線により挟まれて構成される。
【0028】
本発明の磁性薄膜メモリに記録を行う場合、第1ワード線と第2ワード線に電流を流しこの電流により生じる合成磁界により前記第2磁性層の磁化方向を定め、前記ワード線の電流を流す方向を変えることにより“0”と“1”の状態を記録する。また再生する場合は、再生時のワード電流により生じる磁界により、前記メモリ素子の第1磁性層のみの磁化方向が反転することにより生じる抵抗変化を利用する。前記ワード電流により生じる磁界は、第1磁性層の反転磁界より大きく、第2磁性層の反転磁界より小さい。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の磁性薄膜メモリ素子においては、保存時には記録に関わる磁性膜が閉磁路を構成するため、反磁界による悪影響をなくすことが可能であり、安定に磁化情報を保存できる。従って、1ビットのセル幅を小さくすることができ、集積度の高い磁性薄膜メモリを実現することができる。
【0030】
また隣接セルに漏洩磁界が漏れ出さないため、より安定に情報の記録再生を行うことが可能となる。
【0031】
また、再生を1パルスで行うことができるためアクセス時間を短縮することができる。
【0032】
また非磁性層の製造マージンを広げることが可能であり、再生時の抵抗ばらつきを抑えることができS/Nを向上させることができる。
【0033】
[磁性薄膜メモリ素子の構成]
次に本発明を図面を用いてより詳細に説明する。図1および図2は本発明の磁性薄膜メモリ素子の一例を示す説明図である。図1(a)において、1は第1磁性層、2は第2磁性層、3は第3磁性層、4は非磁性層を示す。また矢印は各磁性層における主な磁化方向を示している。また図1(b)は図1の構成のメモリ素子の磁化状態をより詳細に示したものである。また図1(c)は図1(a)の構成のメモリ素子の磁化状態を第1磁性層側の上面から示したものである。
【0034】
図1に示すように、本発明に関わる磁気抵抗薄膜素子は、膜面内の一方向に磁化方向がある第1磁性層1および第2磁性層2が、非磁性層を介して積層されており、第1磁性層および第2磁性層の側面には第3磁性層3が設けられており、全体として第1磁性層および第2磁性層および第3磁性層が非磁性層を囲むように配置されている。
【0035】
外部磁界が0の保存状態では、第1磁性層の磁化と第2磁性層の磁化は反平行であって、第3磁性層を介して閉磁路構成となっている。
【0036】
図1(a)には、それぞれの層の磁化方向として主な向きを示したが、詳細には第3磁性層の磁化は図1(b)に示すように緩やかに曲がって環状のループを作っており、安定なエネルギー状態が実現されている。第1、2および3磁性層内部の至る所で磁束密度と断面積の積が一定であることが完全な閉磁路ができるために好ましい。図1(c)に示すように、第1磁性層の磁化は一方向に一様に配向している。また第2磁性層の磁化状態も磁化方向を逆向きにした以外は図1(c)と同じように一方向に一様に配向した状態となっており、安定な磁化状態が実現されている。
【0037】
第3磁性層は、環状ループのうち曲率の大きいところを担っているため、第3磁性層は、第1磁性層および第2磁性層に比べて磁気異方性、保磁力が小さく透磁率が高く、容易に任意の磁化方向をとれる材料が好ましい。また第3磁性層に磁壁エネルギーが小さい材料を選択することも、スピンがカーブする場合に起きる磁壁エネルギーの上昇を抑えるために好ましい。
【0038】
第3磁性層の材料としては、磁歪定数、磁気異方性が小さく、第1磁性層、第2磁性層より保磁力が小さい磁性材料が好ましい。このようなものとしてNiおよびFeを主要構成成分とする金属膜が挙げられ、具体的にはNiFeおよびNiFeCo等を挙げることができる。
また、第3磁性層の材料として垂直磁化膜を用いることも好ましく、GdFe、NdFeおよびTbFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の合金を含む金属膜等が用いられる。この合金としては、Gd Fe 100−x およびTbFe100−x等を挙げることができる。これらの垂直磁化膜については、xは元素組成で10以上35以下が好ましい。これらの合金はさらにCo等の添加元素を混入させて用いることができる。
【0039】
なお、図1では、第3磁性層は、第1磁性層および非磁性層および第2磁性層の側面に接するように配置されているが、図2(a)に示したように、第3磁性層3を第1磁性層1および第2磁性層2の中間に配置して、非磁性層4の一部を置き換える形で設けてもよい。図2(a)の構成を磁化状態を詳細に示すと図2(b)のように閉磁路を構成しており、この場合磁化の環状ループの曲率の大きいところは第1磁性層および第2磁性層中に存在している。第1磁性層を上から見ると図2(c)に示すようにこの構成の素子においても第1磁性層の磁化は一方向に一様に配向している。また第2磁性層の磁化状態も磁化方向を逆向き以外は図2(c)と同じように一方向に一様に配向した状態となっており、安定な磁化状態が実現されている。
【0040】
図2の構成の場合には、第3磁性層3の占有範囲を大きくしすぎると磁気抵抗効果が低下するので、第3磁性層の合計の長さは非磁性層の長さに対して3分の1以内にすることが好ましい。より好ましくは4分の1以下である。この構成の素子の場合は、第3磁性層は、閉磁路のうち主に垂直磁化領域を受け持つ部分なので垂直磁化成分が大きい材料を用いるのがより好ましい。
【0041】
また上述では図1および図2の構成のメモリ素子を示したが、これらを兼ね備えた構成でもよく、第1磁性層および第2磁性層が第3磁性層を介して、全体として環状の磁化ループが形成される形で形成されればよい。
【0042】
[第1の実施形態]
本発明の磁性薄膜メモリの第1の形態においては、スピン依存トンネリングによる磁気抵抗効果が生じる磁性薄膜メモリ素子を用いる。このスピントンネリングによる磁気抵抗効果は、例えば図1または図2に示す第1磁性層/非磁性層/第2磁性層の構造において、非磁性層には薄い絶縁層を用いる。そして、再生時に電流を膜面に対して垂直に流した際に第1磁性層から第2磁性層へ電子のトンネル現象が起きるようにする。
【0043】
本発明で用いるスピン依存トンネリングタイプの磁性薄膜メモリ素子は、強磁性体金属において伝導電子がスピン偏極を起こしているため、フェルミ面における上向きスピンと下向きスピンの電子状態が異なっており、このような強磁性体金属を用いて、強磁性体と絶縁体と強磁性体からなる強磁性トンネル接合を作ると、伝導電子はそのスピンを保ったままトンネルするため、両磁性層の磁化状態によってトンネル確率が変化し、それがトンネル抵抗の変化となって現れる。従って、第1磁性層と第2磁性層の磁化が平行の場合は抵抗が小さく第1磁性層と第2磁性層の磁化が反平行の場合は抵抗が大きくなる。
【0044】
上向きスピンと下向きスピンの状態密度の差が大きい方がこの抵抗値は大きくなりより大きな再生信号が得られるので、第1磁性層と第2磁性層はスピン分極率の高い磁性材料を用いることが好ましい。具体的にはNi、FeおよびCoからなる群より選ばれる少なくとも1種を構成成分とする金属膜からなることが好ましい。具体的にはFe、Co、FeCo、NiFe、NiFeCo等を挙げることができる。NiFeの元素組成は、NixFe100-xとした場合、xは0以上82以下が好ましい。より具体的には、Fe、Co、Ni72Fe28、Ni51Fe49、Ni42Fe58、Ni25Fe75、Ni9Fe91等が挙げられる。特にフェルミ面における上下スピンの偏極量が大きいFeを含むものが好ましく、さらにCoを第2成分として含むものが好ましい。
【0045】
第1磁性層は、第2磁性層と環状ループを形成するとともに、第2磁性層に保存された磁化情報をスピントンネルによる巨大磁気抵抗効果を利用して読み出すために設けられたものである。第1磁性層は第2磁性層よりも低い保磁力を有し、再生時には第1磁性層のみが反転し、保存時には第2磁性層と環状ループを形成しやすいような材料を選択する。
【0046】
従って、第1磁性膜を形成する材料としては、上述の組成のなかでもNiを含む軟磁性材料が好ましく、具体的にはNiFeまたはNiFeCoを含む合金膜を用いることがより好ましい。NiFeの元素組成は、NixFe100-xとした場合、xは30以上82以下が好ましい。またNiFeCoの元素組成は、Nix(Fe100-yCoy100-xとした場合、xは30以上82以下、yは0以上90以下が好ましい。
【0047】
第1磁性層の膜厚は、薄すぎるとセルの抵抗値が小さくなって再生信号出力が十分得られない場合があるので20オングストローム以上が好ましく、さらには80オングストローム以上が好ましい。再生時に電流を膜面に対して垂直に流すCPP(Current Perpendicular to the film Plane)−MR(Magneto−Resistance)効果を用いる場合では、スピンの向きを保存して動ける距離、即ちスピン拡散長が重要因子となる。そこで第1磁性層の膜厚は、スピン拡散長より薄くすることが好ましく、厚すぎるとセルの抵抗値が大きくなりすぎる等の問題があるので、5000オングストローム以下が好ましく、1000オングストローム以下がさらに好ましい。
【0048】
第2磁性層は、主に磁化情報を保存する目的で設けられたもので、”0”と”1”の情報に応じて磁化の向きが決まる。第2磁性層は、第1磁性層と同じく巨大磁気抵抗効果が効率的に発生すること、および、安定に磁化状態を保存できることが必要である。第2磁性層は第1磁性層よりも高い保磁力を有する。このため第2磁性層は上述の組成のうち、特にFeおよび/またはCoを主要構成成分とする金属膜からなるものが好ましい。例えばFe、FeCo、Co等の磁性膜をあげることができる。
【0049】
また第2磁性層に保磁力の制御、耐食性の向上などの目的でPt等の添加元素を加えてもよい。CoにFeを添加すると保磁力は小さくなり、Ptを添加すると保磁力は大きくなるので、第2磁性層を例えばCo100-x-yFexPtyとして元素組成xおよびyを調節して保磁力を制御すればよい。また成膜時の基板温度を高くすることによっても保磁力を高めることができるので、別の保磁力の制御方法として成膜時の基板温度を調節してもよい。この方法と前述した強磁性薄膜の組成を調節する方法とを組合せてもよい。
【0050】
また第1磁性層の保磁力の調節も上述と同様に、膜組成と成膜時の基板温度で調節することができる。
【0051】
第2磁性層の膜厚は、あまり薄すぎるとメモリ保持性能が劣化し、また再生信号出力が減少してしまうセルの抵抗値が小さくなり、また磁化を保持できなくなるので20オングストローム以上が好ましく、さらには80オングストローム以上が好ましい。CPP−MR効果を用いる場合では、スピンの向きを保存して動ける距離、即ちスピン拡散長が重要因子となる。そこで第2磁性層の膜厚は、スピン拡散長より薄くすることが好ましく、厚すぎるとセルの抵抗値が大きくなりすぎる、また、ワード電極からの距離が離れて磁化反転が起きにくくなるなどの問題があるので、5000オングストローム以下が好ましく、より好ましくは1000オングストローム以下がよい。
【0052】
非磁性層は電子がスピンを保持してトンネルするために非磁性でなければならない。この実施形態における非磁性層は、第1磁性層と第2磁性層の間を絶縁する層であり、層の全部が絶縁材料で形成されていても、多層構造としてその一部の層を絶縁層とすることもできる。特に一部を絶縁層にしてその厚みを極小にすることにより、磁気抵抗効果を更に高めることができる。
【0053】
非磁性層に用いる絶縁材料としては、AlOx、AlNx、SiOx、SiNx、およびNiOx等を挙げることができる。この中でもAl23が絶縁性が高く緻密であるため好ましい。絶縁材料が酸化膜である場合は、例えばAl膜を形成し、その一部を空気中で酸化させてAl23層を形成することができる。
【0054】
また、前記非磁性層は数10オングストローム程度の均一な層であって、その膜厚は4オングストローム以上25オングストローム以下であることが好ましい。より好ましくは6オングストローム以上18オングストロームがよい。
【0055】
[第2の実施形態]
本発明の磁性薄膜メモリの第2の実施形態は、スピン依存散乱により磁気抵抗効果が生じる磁性薄膜メモリ素子を用いる。このスピン依存散乱による磁気抵抗効果は、例えば図1または図2に示す様に第1磁性層/非磁性層/第2磁性層の構造において、非磁性層には良導体である金属層を用いる。このスピン依存散乱により磁気抵抗効果は、伝導電子の散乱がスピンによって大きく異なることに由来している。即ち磁化と同じ向きのスピンを持つ伝導電子はあまり散乱されないため抵抗が小さくなる。一方、前記の非磁性層を介した各磁性層が反強磁性配列となった場合、いずれのスピンを持つ伝導電子も反対方向のスピンを持った磁性原子によって同等に散乱されるために前記の場合の抵抗値よりも大きくなる。そして再生時に電流を膜面に対して垂直に流すCPP−MR効果を用いる。このCPP−MRは膜面に平行に電流を流すCIP(Current Inplaneto the film Plane)−MR効果よりも伝導電子が界面を横切る確率が増えるため大きな抵抗変化率が得られる信号検出感度を高くすることができる。
【0056】
この場合の第1磁性層と第2磁性層と非磁性層の特徴を示す。第1磁性層は、第2磁性層と環状ループを形成するとともに、第2磁性層に保存された磁化情報を巨大磁気抵抗効果を利用して読み出すために設けられたものである。
【0057】
第1磁性層は、Ni、FeおよびCoからなる群より選ばれる少なくとも1種を構成成分とする金属膜からなることが好ましい。この金属(合金)としては、例えばNiFe、NiFeCo、FeCoおよびCoFeB等を挙げることができる。NiFeの元素組成は、NixFe100-xとした場合、xは35以上86以下が好ましい。また、NiFeCoの元素組成は、Nix(Fe100-yCoy100-xとした場合、xは10以上70以下、yは30以上90以下が好ましく、さらにyは60以上85以下が好ましい。
【0058】
また、第1磁性層として、CoおよびFeを主要構成成分とするアモルファス合金からなることも好ましい。具体的には、Co84Fe97、Co72Fe820等の組成をもつCoFeB等のアモルファス磁性体が挙げられる。
【0059】
第2磁性層は、主に磁化情報を保存する目的で設けられたもので、“0”、“1”の情報に応じて磁化の向きが決定される。第2磁性層は、第1磁性層と同じく巨大磁気抵抗効果が効率的に発生すること、および安定に磁化状態を保存できることが必要である。
【0060】
第2磁性層は、Feおよび/またはCoを主要構成成分とする金属膜からなることが好ましい。例えばFe、FeCo、Co等の金属(合金)を挙げることができる。また、Pt等の添加元素を加えてもよい。CoにFeを添加すると保磁力は小さくなり、Ptを添加すると保磁力は大きくなるので、第2磁性層を例えばCo100-x-yFexPtyとして元素組成xおよびyを調節して保磁力を制御すればよい。
【0061】
第1磁性層の膜厚は、散乱型の巨大磁気抵抗効果が効率よく発生するように設定されることが必要である。具体的には、第1磁性層の膜厚が電子の平均自由行程より大幅に大きくなると、フォノン散乱を受けてその効果が薄れるため、少なくとも200オングストローム以下であることが好ましい。さらに好ましくは150オングストローム以下がよい。しかし、薄すぎるとセルの抵抗値が小さくなり再生信号出力が減少し、また磁化を保持できなくなる場合があるので、20オングストローム以上が好ましく、さらには80オングストローム以上が好ましい。
【0062】
第2磁性層の膜厚も第1磁性層の場合と同様に、散乱型の巨大磁気抵抗効果が効率よく発生するように設定されるため、少なくとも200オングストローム以下であることが好ましい。さらに好ましくは150オングストローム以下がよい。しかしあまり薄すぎるとメモリ保持性能が劣化し、またセルの抵抗値が小さくなり再生信号出力が減少してしまう場合があるので、20オングストローム以上が好ましく、さらには80オングストローム以上が好ましい。
【0063】
この実施形態においては、非磁性層は良導体からなり、好ましくは、Cuを主成分として用いることが、磁性層とフェルミエネルギー準位が近く、密着性もよいため、磁化方向が変わるときに界面で抵抗が生じ易く大きな磁気抵抗比を得るのに好都合である。また、非磁性層の膜厚は5オングストローム以上60オングストローム以下であることが好ましい。
【0064】
また、この実施形態では、第1磁性層と非磁性層の間もしくは第2磁性層と非磁性層の間またはその両方の間に、Coを主成分とする磁性層を設けると、磁気抵抗比が高くなるため、より高いS/N比が得られるため好ましい。この場合のCoを主成分とする層の厚みは20オングストローム以下が好ましい。
【0065】
また本発明ではS/Nを向上させるために、{第1磁性層/非磁性層/第2磁性層/非磁性層}を1つのユニットとして、このユニットを積層してもよい。積層する組数は多いほどMR比が大きくなり好ましいが、積層する組数を余り多くすると磁性層と非磁性層との界面に乱れが生じやすくなる等の問題が発生するので、積層の回数は40組以下、さらに好ましくは3〜20組程度とすることが好ましい。
【0066】
[メモリの構成]
次に上述した磁性薄膜メモリ素子を多数配列して固体メモリを作成する場合のメモリセルの配列構造について詳細に説明する。
【0067】
図6は、本発明の磁性薄膜メモリの例を上面から見た図である。メモリセル17は1個の磁性薄膜メモリ素子を有する1個の記憶単位である。この図では多数のメモリセル17のうち一部のみ図示し他の大部分は省略している。
【0068】
本発明の磁性薄膜メモリは、縦または横方向に並ぶ第1ワード線とこの第1ワード線と交差する方向に並ぶ第2ワード線とを有しており、その交差する部分に磁性薄膜メモリ素子が配列されている。磁性薄膜メモリ素子は上下から第1ワード線と第2ワード線によって挟まれて、それぞれがマトリックス状に並列に接続されている。
【0069】
第1ワード線および第2ワード線は、記録と同時に再生のために設けられているものである。各第1ワード線と各第2ワード線の両端には、駆動回路領域9、10、11が設けられ、この領域には、各ワード線および各センス線を選択駆動するためのデコーダー、ドライバ等の半導体素子が設けられている。
【0070】
本発明に用いられるワード線の材料としては、導電率が第1、2、3磁性層よりも大きな良導体を用いる。例えばアルミニウム、銅、タングステン、もしくはこれらの混合物、またはこれらとシリコンなどとの混合物などが挙げられる。
【0071】
図3は図1を一部分を拡大して立体的に示したものである。同図に示した様にメモリ素子101、102、103は並列に配列され各メモリ素子間は図示していないが絶縁体が設けられておりメモリ素子同士が電気的に導通することを防いでいる。第1ワード線51、52、53と第2ワード線6はメモリ素子を挟んで直交して設けられている。
【0072】
また、図4は本発明の磁性薄膜メモリの別の配列構造例を示したものである。この構成では第3磁性層がメモリセルの間を充填する形で設けられており、第3磁性層が他のメモリ素子との素子間を分離する目的も兼ねており構造が簡略になって好ましい。この場合、第3磁性層は絶縁性の磁性体で形成されることが必要である。たとえば、酸化物磁性材料を用いることが好ましい。具体的にはMFe24で表される化合物において、元素MとしてNi、Co、Mg、Mn等を用いると抵抗率が大きいため好ましい。特に、NiFe24が抵抗率が最も高いので好ましい。
【0073】
本発明の磁性薄膜メモリの別の配列構造例を図5に示した。この場合メモリ素子は図2に示した素子の構成となっている。この場合にはメモリ素子間は図3で示したと同じく、各メモリ素子間は図示していないが絶縁体が設けられておりメモリ素子同士が電気的に導通することを防いでいる。
【0074】
尚、図3、4、5には示していないが、メモリ素子間のクロストークを防ぐために、各磁性薄膜メモリ素子の片側もしくは両側にスイッチング素子を設けてもよい。スイッチング素子によって選択的に特定の1メモリセルを選ぶことができる場合には第1ワード線および第2ワード線は直交せずに平行に位置していてもよい。
【0075】
また、基板としてシリコン等の半導体基板を用いる場合には、第2ワード線を良導体等で別途設ける必要は必ずしもなく、半導体の基板中に不純物元素をパターン状に添加する等の公知の方法により電流の流れるチャンネルを形成し、これを第2ワード線として用いることもできる。
【0076】
本発明の磁性薄膜メモリは、従来の磁性薄膜メモリと異なり、セルサイズを小さくしても磁化情報の保存性を保つことが可能である。この本発明の効果を以下に従来例と比較しながら説明する。
【0077】
磁化情報の保存性が悪化する程度は磁性層の内部に生じる反磁界の大きさに依存し、反磁界が大きくなればなるほど磁化の保存性は悪化する。反磁界の大きさは、磁性膜を円盤形の楕円体と仮定すれば大まかな値を見積もることができる。
【0078】
図7は、磁性層の長さLと反磁界の大きさの関係をグラフに示したものである。
【0079】
図7(a)には、比較例として図9(a)に示したような記録層として単層磁性膜111を用いた場合に、反磁界Hdを磁性層の長さLに対して示した。ここで磁性層の幅は長さに等しいとし、飽和磁化は典型的なパーマロイ(Ni80Fe20)の値である800emu/ccとし、磁性層の膜厚は100オングストローム、200オングストローム、300オングストロームの3種類の膜厚で求めた。反磁界は、磁性層の膜厚が薄くなると小さくなるが100オングストロームの磁性層膜厚においても磁性層長さLが1μm以下で約100[Oe]以上の非常に大きな値になることがわかる。
【0080】
図7(b)には、別の比較例として図9(b)に示した2層膜について同様に求めた。この場合も磁性層の幅は長さに等しいとし、飽和磁化は、800emu/cc、磁性層121、磁性層122の膜厚は等しいとして100オングストローム、200オングストローム、300オングストロームの3種類の膜厚で求めた。非磁性層123の膜厚は10オングストロームとした。この2層膜の場合は、一方の磁性層121に生じる反磁界は他層122からの静磁界Hstで緩和されるので、実効的に磁性層内部にかかる磁界Hd−Hstを求めた。ここでHstは、磁荷がスピンカーリングすることなく端面に存在したと仮定した。実際にはスピンカーリングするためHstは求められた値より小さくなるが、それでもHd−Hstは磁性膜の長さLが短くなるにつれて急激に、大きくなることがわかる。
【0081】
第2磁性層の保磁力は、ワード電流の大きさの制約から5[Oe]以上50[Oe]以下にすることが好ましく、更に好ましくは10[Oe]から30[Oe]程度にするのがよい。Hd−Hstの大きさが2[Oe]以上では保磁力の10分の1程度より大きくなり安定な磁化保存は困難である。Hd−Hstが2[Oe]となる磁性層の長さLは、磁性層の膜厚が100オングストロームの時に0.3μm、200オングストロームの時に0.6μm、300オングストロームの時に0.9μmである。このため従来の技術である2層磁性膜の反平行磁化状態を用いた場合には、磁性層の膜厚が100オングストローム以上では磁性体長さ0.3μm以下のメモリセルで磁化の安定な保存が困難になり、さらに磁性層の膜厚が200オングストローム以上では磁性体長さ0.6μm以下のメモリセルで、磁性層の膜厚が300オングストローム以上では0.9μm以下のメモリセルで磁化の安定保存が困難になることがわかる。
【0082】
Hd−Hstが2[Oe]となる磁性層の長さL(μm)を磁性層の膜厚t(μm)に対してプロットすると図10となり、Lとtの関係は(式1)で表される。
【0083】
(式1) L(μm)=30×t(μm)
これに対して図7(c)には、図9(b)に図示した従来の2層磁性膜に第3磁性層を設けた本発明の閉磁路構成からなる磁性膜について、反磁界(磁性体内部で発生する磁界Hin)を示したが、磁性層の膜厚および磁性膜の長さLによらず反磁界は0であり、磁化の配向性を妨げる反磁界の大きさが、効果的に抑えられている。従って、本発明では、磁性層の膜厚t(μm)と磁性層の長さL(μm)との関係が(式2)の条件の時であっても磁化が安定に保存される。
【0084】
(式2) L(μm)<30×t(μm)
即ち、本発明の磁性薄膜メモリ素子は、メモリセルを微細化して高集積化した際も、安定に磁化情報の保存が可能である。
【0085】
また、比較例である従来の磁性薄膜では、形状が幅と長さが等しい形、たとえば上から見て正方形の形もしくは円形のような形にした場合には、面内方向に磁化配向させるのに十分な磁気異方性をだすのは困難であった。従って従来の磁性薄膜メモリでは長さと幅の比を2から3倍以上にして形状異方性により磁化配向させるようにしていた。しかしこの場合においても、上述の様にスピンが乱れが生じるため、室温付近でも磁性が消失する、いわゆる超常磁性(スーパーパラ磁性)現象がおきやすく、磁化の保存が不安定になるといった問題があった。
【0086】
これに対して、本発明の磁性薄膜メモリは、磁性薄膜の形状が正方形の場合でも環状ループにすることによって比較的大きな異方性が生じる。このためメモリセルを正方形にしても情報安定性を確保することができ結果として集積度を飛躍的に高めることができる。本発明の磁性薄膜メモリを比較的高温の条件下で使用する可能性がある場合などは、長さと幅の比を1より大きくして形状異方性を出してより高くしてより保存性高める様にしてもよい。この場合は形状異方性の効果は長さと幅の比が2以上でその効果が明確になる。このため磁性薄膜メモリ素子の長さと幅の比は2以上とするのがよい。この場合には第3磁性層は長さ方向に設けるのがよい。
【0087】
また別の磁気異方性を誘起する方法として、成膜中に磁界を印加する方法があり、この方法は容易であってかつ有効である。これを行うには、第1磁性層および第2磁性層の成膜中に永久磁石などを用いて基板に対して面内の一方向に磁界を印加すればよい。磁界の強度は10[Oe]以上の外部磁界を印加して行うことが好ましい。更に好ましくは50[Oe]以上の磁界を成膜中に一方向に印加するのがよい。この場合第3磁性層は、磁界を印加した方向に設けるのがよい。
【0088】
さらに本発明の磁性薄膜メモリ素子は外部に漏洩磁界が発生しないことが特徴である。このため、セルサイズを小さくしてもより安定に情報の記録再生を行うが可能である。
【0089】
この効果を比較例とともに図8に示す。図8(a)、(b)は図9(a)、(b)に示した従来の単層膜または2層膜のメモリ素子を直列に並べたときに、隣接するメモリ素子の側面に発生する面内方向の磁界の大きさHnを磁性膜間の距離dに対してプロットしたものである。図8(c)も同様に図3〜5に示したような本発明の磁性薄膜メモリ素子について、隣接するメモリ素子の側面に発生する面内方向の磁界の大きさHnを隣り合うメモリ素子の第1磁性層間もしくは第2磁性層間の距離dに対してプロットしたものである。磁性膜の長さは全て0.2μmとし、飽和磁化および磁性膜、非磁性膜の膜厚は前述の図7の場合と同じとした。
【0090】
図8(a)から比較例である単層磁性膜では、0.6μm以下のメモリ素子間距離dでは、100オングストローム以上の膜厚で5[Oe]以上の磁界が発生し、図8(b)から別の比較例である2層の磁性膜では、磁性層の膜厚に応じて急激に大きくなることがわかる。前述したように第2磁性層の保磁力は5[Oe]以上50[Oe]以下にすることが好ましく、更に好ましくは10[Oe]から30[Oe]程度にするのがよく、再生時には記録時の半分以下の磁界を印加するのが好ましいので、5[Oe]以上20[Oe]以下の発生磁界で磁化反転させることがより好ましい。
【0091】
このため隣接のメモリ素子から発生する磁界Hnが1[Oe]に達した場合、ワード線から発生させる磁界に対して記録時は10分の1程度、再生時は5分の1程度の大きさになりえるため録再生時、特には再生時に誤動作の大きな原因となりえる。隣接のメモリ素子から発生する磁界Hnが1[Oe]となる磁性膜間の距離dは、磁性層の膜厚tが100オングストロームの時に0.15μm、200オングストロームの時に0.25μm、300オングストロームの時に0.33μmである。さらに他の磁性層膜厚に対しても求めて、磁性膜間の距離d(μm)を磁性層の膜厚t(μm)に対してプロットすると図11となり、dとtの関係は(式3)で表される。
【0092】
(式3) d=3.38×t0.68
このため従来の技術である2層磁性膜の反平行磁化状態を用いた場合には、磁性層の膜厚が100オングストローム以上では磁性膜間の距離dを0.15μm以下にすると磁化の安定な保存が困難になり、さらに磁性層の膜厚が200オングストローム以上では磁性膜間の距離dが0.25μm以下で、磁性層の膜厚が300オングストローム以上では磁性膜間の距離dが0.33μm以下で安定な記録再生が困難になることがわかる。従って従来のセル構造では、集積度を上げるためにセル間の幅を小さくすることが困難となり高集積化が不可能である。
【0093】
これに対して、本発明の磁性薄膜メモリ素子では、図8(c)に示したように磁性層の膜厚によらず隣接セルに漏洩磁界が漏れ出さないため、より安定に情報の記録再生を行うことが可能となる。また、本発明の磁性薄膜メモリは、磁性層の膜厚t(μm)と磁性膜間の距離d(μm)との関係が(式4)の場合であっても隣接セルに漏洩磁界が漏れ出さないため、従来の技術比較してより大きな効果が得られる。
【0094】
(式4) d<3.38×t0.68
[記録方法]
次に本発明の磁性薄膜メモリ素子を用いた記録方法の例を示す。本発明のメモリ素子は、図6および図3から図5に示したように51、52、53等の第1ワード線5および第2ワード線7の2本の電極線が設けられており、この各線に電流を流せばアンペールの法則に従って磁界が発生する。これら2本の電極線は直交しているため発生する磁界も直交しており、メモリセルの磁性層にかかる磁界はこれらの直交する磁界のベクトル和となる。この状態でワード線電流により第2磁性層が反転出来る程度の大きさの磁界を印加すれば第2磁性層の磁化は所望の方向に配向して記録が行われる。従って、マトリックス上の多数のセルから特定のセルのみの記録を行うことが可能である。尚、磁化反転の可否は、磁性層のアステロイド曲線で記述される。
【0095】
尚、第1ワード線と第2ワード線はメモリ素子によって電気的に連結されている。しかし、例えばメモリ素子の抵抗を第1ワード線および第2ワード線の抵抗値にくらべて大きく設定すれば、記録時に第1ワード線の両端および第2ワード線の両端に電流を流してもメモリセルを通過する電流値は無視できるくらい小さいので、上述のような記録を行うことができる。
【0096】
あるいは、上述したようにスイッチング素子をメモリ素子の片側もしくは両側に設けて選択的に特定の1メモリセルを選ぶようにすれば、特定の1メモリ素子の情報を書き換えることが可能である。
【0097】
また、第1ワード線および第2ワード線以外に、これらと絶縁層を介してさらに別のワード線を同様に設けて記録を行ってもよい。
【0098】
第2磁性層は、安定に磁化状態を保存することが好ましいので、高い保磁力を有することが必要である。しかし、同時にワード線がエレクトロマイグレーションによって断線するのを防ぐため、および消費電力を抑えるためには、小さい電流によって発生する弱い磁界で第2磁性層の磁化を反転できることが好ましく、このためには、第2磁性層は低い保磁力を有することが必要である。この両方の要請を満たすように第2磁性層の保磁力は決定される。具体的には第2磁性層の保磁力は5[Oe]以上で50[Oe]以下が好ましい。さらに好ましくは10[Oe]以上で30[Oe]以下が好ましい。
【0099】
また、保磁力を制御する等の目的で基板の上に、バッファー層を設けてその上にメモリ素子を形成してもよい。これは、バッファー層を設けることにより、異なるメモリセル間の保磁力のばらつきを抑えることができたり、保磁力の絶対値を制御することが容易になるからである。前記バッファー層として、例えばSiN等の絶縁材料が好ましい。
【0100】
[再生方法]
次に本発明の磁性薄膜メモリを用いた再生方法の例を示す。
【0101】
本発明の磁性薄膜メモリの抵抗値は、第1磁性層と第2磁性層の磁化が平行の時は低く反平行の時は高くなる。本発明の磁性薄膜メモリは、保存時は反平行の磁化状態であるため高い抵抗状態にある。
【0102】
本発明の磁性薄膜メモリ素子を用いた再生方法の第1の例を、例えば図3のメモリセル102の情報を読み出す場合を例にとって説明する。
【0103】
まず第1ワード線の両瑞に電流を流して例えば図の右方向に磁界を発生させる。この磁界の大きさは、再生の際に保存した磁化情報が消えないようにするため、第1磁性層のみが反転し第2磁性層は反転しない大きさとする。この時、第2磁性層に記録された磁化が右向きの時は、第1磁性層は保存時の左向きから右方向に反転して第1磁性層と第2磁性層の磁化向きが同じ方向になり、メモリセルの抵抗値は小さくなる。一方第2磁性層に記録された磁化が左向きの時は、第1磁性層は保存時の右向きのままで、第1磁性層と第2磁性層の磁化向きは反平行であるので、抵抗値は大きい状態のままである。
【0104】
この状態で第1ワード線52の端部と第2ワード線6の端部に電圧をかけてメモリセル102に電流を流しメモリセル102の抵抗値の大ききを検出すれば、その抵抗の大きさによって第2記録層に保存された磁化情報を読み出すことができる。
【0105】
次に再生方法の第2の例を以下に説明する。
【0106】
初めに第1ワード線52の端部と第2ワード線6の端部に電圧をかけてメモリセル102に電流を流しメモリセル102の抵抗値の大きさを検出する。この抵抗は高い抵抗値である。この状態から第1ワード線52の両端にも電流を流して、上述と同じく第1磁性層の磁化が反転できる程度の磁界を発生させる。この際の抵抗の変化を第1ワード線52の端部と第2ワード線6の端部で測定すれば、抵抗の変化の有無によって第2記録層に保存された磁化情報を読み出すことができる。
【0107】
上述ではメモリセル102の情報を読み出す場合について記したが、他のセルを読み出す場合も同じである。
【0108】
尚、第3磁性層は、第1磁性層の磁化が第2磁性層と平行になった場合は、第1磁性層および第2磁性層が磁界印加中で最も安定な状態に磁化配向して安定化する。また、第1磁性層の保磁力は第2磁性層の保磁力よりも小さいことが必要である。十分な発生磁界のマージンを確保するためには、第1磁性層の保磁力は第2磁性層の保磁力の半分以下であることが好ましく、さらに好ましくは3分の1以下がよい。
【0109】
本発明の磁性薄膜メモリ素子は、磁界を印加していない状態では、第1磁性層と第2磁性層の磁化は常に逆向きとなっており、このためアクセスしない他のメモリセルの抵抗値は、常に一定となっている。従って、本発明の磁気抵抗素子を用いた再生方法は、メモリセルの磁化状態が定まっていない従来の磁性薄膜メモリを用いた再生方法と比較して、抵抗のばらつきが無くなるためよりノイズの少なく精度の良い検出が可能である。
【0110】
本発明の記録再生にはパルス電流を用いるが、このパルスの時間幅は、長すぎると、アクセス速度が遅くなったり、消費電力が大きくなる。短すぎると、適切な記録再生が行われなくなる。このため一回のパルスの時間幅は、1nsから500μsの間にするのが良く、さらに好ましくは4nsから100nsの間にするのがよい。また電流は多く流すと配線材料のエレクトロマイグレーションが発生して断線の危険が増し、少ない場合は良好な記録再生が実現しなくなる場合がある。電流値は、電線の断面積も考慮して定めることができるが、通常10μAから500mAの間にすることが好ましい。更に好ましくは、50μAから10mAの間にすることがよい。
【0111】
【実施例】
次に本発明の磁性薄膜メモリ素子を作製して動作を確認した。メモリ素子の成膜および加工はマグネトロンスパッタ装置およびフォーカスイオンビーム装置を用いて行った。スパッタ成膜は、スパッタチャンバーを5×10-5Paの高真空にしたのち、スパッタガスとしてArガスを導入して0.1Paとして、ガラス基板上に行った。
【0112】
第1磁性層および第2磁性層の成膜は、長手方向に磁化容易軸ができるように200[Oe]の磁界を印加しながら行った。
【0113】
はじめに1cm角のガラス基板上の全面に下部電極として膜厚10μmのAl膜を成膜した。
【0114】
次に、第1磁性層としてNi30(Fe70Co3070薄膜(膜厚500オングストローム)を成膜した。次いでこの第1磁性層上に厚さ30オングストロームのAl薄膜を成膜した。
【0115】
次いでスパッタチャンバー内に微量の酸素を導入して基板側に負の電位を印加して逆スパッタを行いながらこのAl膜の表面を酸化させ、絶縁層としてAl23層を約15オングストロームで形成した。更にこの上に第2磁性層としてFe30Co70薄膜(膜厚500オングストローム)を成膜した。
【0116】
さらに上部電極として、Al膜を5μm厚で成膜した。
【0117】
各層の膜厚の制御は、スパッタ電力を調整することで行った。磁性層の元素組成比は、Ni、FeおよびCoのターゲットの各々のスパッタ電力を調節することで行った。
【0118】
次に第1磁性層、絶縁層、第2磁性層および上部電極からなる積層部分のみを0.4μm×0.6μmの大きさに加工したのち、加工された第1磁性層、絶縁層および第2磁性層の長さ方向の側面に接するように第3磁性層としてNi50Fe50を成膜および加工して、図1の構成の磁性薄膜メモリ素子を作成した。第3磁性層は、幅は第1、2磁性層と同じ0.4μmで、長さは0.6μmとし膜厚は1030オングストロームとして側面両側に付け、図1と同じ構成となるようにした。
【0119】
次に、SiNを成膜し続いてイオンビームによるエッチングを行い、第1磁性層、絶縁層および第2磁性層の周囲に保護膜を形成した。その後、前記の上部電極と接するように上部端子電極として5mm角のAl膜を膜厚10μmで形成した。
【0120】
次いで、Inを用いて下部電極と上部端子電極の各々にCu線を接続して磁性薄膜メモリ素子を作成した。
【0121】
次にこの素子に磁界25[Oe]を左向きに印加して”0”の記録を行った。磁界は素子の長さ方向に沿った面内方向に印加した。次に電極線に10μAの電流を流しながら抵抗値を測定しながら同様に左向きの方向の磁界10[Oe]を発生させたところ、抵抗値が低くなり、磁界を印加するのをやめると抵抗値が元の大きな値に戻った。右向きに10[Oe]を発生させたところ、抵抗値に変化は見られなかった。また左向きの磁界25[Oe]を長さ方向の印加して”0”の記録を行ったのち同様の操作を行ったところ、左向きの弱い磁界では抵抗値の変化は見られなかったが、右向きの磁界では抵抗値が低くなるのが観測された。この時の磁気抵抗比は約7%であった。本実験例により本発明の磁性薄膜メモリ素子が良好に動作することが確認された。
【0122】
【発明の効果】
本発明によれば、ビットセルを微細化する際に問題となる磁性薄膜の反磁界をなくし、高集積化を可能にした磁性薄膜メモリを提供することができる。
【0123】
また、本発明によれば、さらに安定した記録再生を実現し、非磁性層の製造マージンが広く、再生時間が短く、ノイズの少ない再生を実現する磁性薄膜メモリの記録再生方法提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の一実施例である磁性薄膜メモリ素子の構造断面説明図である。矢印は磁化方向を示す。
(b)本発明の一実施例である磁性薄膜メモリ素子の磁化状態を詳細に示した断面図である。
(c)本発明の一実施例である磁性薄膜メモリ素子の磁化状態を上面から詳細に示した説明図である。
【図2】(a)本発明の一実施例である磁性薄膜メモリ素子の構造断面説明図である。(b)本発明の一実施例である磁性薄膜メモリ素子の磁化状態を詳細に示した断面説明図である。
(c)本発明の一実施例である磁性薄膜メモリの磁化状態を上面から詳細に示した説明図である。
【図3】本発明の一実施例である磁性薄膜メモリ素子の配列構造を示した立体説明図である。
【図4】本発明の一実施例である磁性薄膜メモリ素子の配列構造を示した立体説明図である。
【図5】本発明の一実施例である磁性薄膜メモリ素子の配列構造を示した立体説明図である。
【図6】本発明の一実施例である磁性薄膜メモリの全体図である。
【図7】正方形の形状の磁性体について内部磁界の磁性体長さLに対する依存性を示した図である。(a)比較例である単層膜について反磁界Hdを示した図。(b)比較例である2層膜について1つの層の反磁界Hdからもう一つの層からの静磁界Hstを差し引いたHd−Hstを示した図。(c)本発明の磁性薄膜メモリ素子について示した図。
【図8】面内方向の漏洩磁界Hnの磁性体側面からの距離dに対する依存性を示したものである。(a)比較例である単層膜について反磁界Hdを示した図。(b)比較例である2層膜について1つの層の反磁界Hdからもう一つの層からの静磁界Hstを差し引いたHd−Hstを示した図。(c)本発明の磁性薄膜メモリ素子について示した図。
【図9】比較例の磁性薄膜メモリ素子の構造断面説明図である。(a)単層磁性膜の磁化状態を示した図。(b)2層磁性膜の状態を示した図。
【図10】比較例の従来技術である反平行磁化状態の2層磁性膜について、キャンセルできない反磁界の大きさHd−Hstが2[Oe]となる磁性層の長さLを磁性層の膜厚tに対して示した図。
【図11】比較例の従来技術である反平行磁化状態の2層磁性膜について、隣接のメモリ素子から発生する磁界Hnが1[Oe]となる磁性膜間の距離dを磁性層の膜厚tに対して示した図。
【図12】巨大磁気抵抗効果を用いた従来の磁性薄膜メモリを示す磁性薄膜の断面説明図である。Wはワード線、Sはセンス線、Iは絶縁層、HMは硬質磁性膜、SMは軟磁性膜、NMは非磁性膜を示す。
【図13】巨大磁気抵抗効果を用いた従来の磁性薄膜メモリの記録動作を示す図である。(a)、(c)ワード電流Iの時間T応答を示す図。(b),(d)従来の磁性薄膜メモリの磁化状態を示す図、IDは電流の向き、Wはワード線、Sはセンス線、Iは絶縁層、HMは硬質磁性膜、SMは軟磁性膜、NMは非磁性膜を示す。
【図14】巨大磁気抵抗効果を用いた従来の磁性薄膜メモリの再生動作を示す図である。(a)、(c)ワード電流Iの時間T応答を示す図。(b),(d)従来の磁性薄膜メモリの磁化状態を示す図、IDは電流の向き、Wはワード線、Sはセンス線、Iは絶縁層、HMは硬質磁性膜、SMは軟磁性膜、NMは非磁性膜を示す。
【符号の説明】
1 第1磁性層
2 第2磁性層
3 第3磁性層
4 非磁性層
5、51、52、53 第1ワード線
6 第2ワード線
9、10、11 駆動回路領域
101、102、103 メモリ素子

Claims (10)

  1. 基板上に、膜面内の一方向に磁化配向し低い保磁力を有する第1磁性層と、前記第1磁性層の磁化配向と平行または反平行に磁化配向し前記第1磁性層よりも高い保磁力を有する第2磁性層と、該第1磁性層と第2磁性層との層間に設けられた非磁性層とを有し、前記第1磁性層から第2磁性層までの積層構造の層方向の電気抵抗が、前記第1磁性層の磁化方向と第2磁性層の磁化方向が平行のときは低い抵抗値を示し、反平行のときは前記平行状態に比較して高い抵抗値を示す磁気抵抗素子を用いた磁性薄膜メモリ素子であって、前記第1磁性層および第2磁性層と共に前記非磁性層を囲むように前記第1磁性層および第2磁性層に接して第3磁性層が設けられ、外部磁界が0のときには前記第1磁性層の磁化方向と前記第2磁性層の磁化方向が反平行状態を示して前記第1磁性層、第2磁性層および第3磁性層によりこの非磁性層を囲む閉磁路を構成し、前記第3磁性層が、絶縁性材料からなることを特徴とする磁性薄膜メモリ素子。
  2. 前記第1磁性層および第2磁性層の長さL(μm)(磁化方向)と第1磁性層および第2磁性層の膜厚t(μm)との関係が(式1)で表されることを特徴とする請求項1記載の磁性薄膜メモリ素子。
    (式1) L<30×t
  3. 請求項1記載の磁性薄膜メモリ素子を複数個配列したときに、隣接する磁性薄膜素子の第2磁性層間の距離d(μm)と第1磁性層および第2磁性層の膜厚t(μm)との関係が(式2)で表されることを特徴とする磁性薄膜メモリ。
    (式2) d<3.38×t0.68
  4. 前記絶縁性材料は、一般式MFe2 4(但し、MはNi、Co、MgまたはMnを表す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の磁性薄膜メモリ素子。
  5. 前記非磁性層が絶縁膜で形成され、第1磁性層と第2磁性層のスピン依存トンネリングにより磁気抵抗効果が生じることを特徴とする請求項1記載の磁性薄膜メモリ素子。
  6. 前記非磁性層は、AlOx、ANx、SiOx、SiNxおよびNiOxからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物からなることを特徴とする請求項5記載の磁性薄膜メモリ素子。
  7. 前記非磁性層の膜厚は4オングストローム以上25オングストローム以下である請求項6記載の磁性薄膜メモリ素子。
  8. マトリックス状に配列された請求項1、2及び4から7のいずれか1項に記載の複数の磁性薄膜メモリ素子と、縦または横方向に並ぶ複数の磁性薄膜メモリ素子の第2磁性層または第1磁性層に接続される第1ワード線と、この第1ワード線と交差する方向に並ぶ複数の磁性薄膜メモリ素子の第1磁性層または第2磁性層に接続される第2ワード線とを有し、各磁性薄膜メモリ素子が第1ワード線および第2ワード線により挟まれていることを特徴とする磁性薄膜メモリ。
  9. マトリックス状に配列された請求項1記載の複数の磁性薄膜メモリ素子と、縦または横方向に並ぶ複数の磁性薄膜メモリ素子の第2磁性層または第1磁性層に接続される第1ワード線と、この第1ワード線と交差する方向に並ぶ複数の磁性薄膜メモリ素子の第1磁性層または第2磁性層に接続される第2ワード線とを有し、各磁性薄膜メモリ素子が第1ワード線および第2ワード線により挟まれている磁性薄膜メモリの記録方法であって、
    前記第1ワード線と第2ワード線に電流を流し、この電流により生じる合成磁界により前記第2磁性層の磁化方向を定め、前記ワード線の電流を流す方向を変えることにより“0”と“1”の状態を記録することを特徴とする磁性薄膜メモリの記録方法。
  10. 請求項9記載の方法によって記録された磁性薄膜メモリの再生方法であって、再生時のワード電流により生じる磁界により、前記磁性薄膜メモリ素子の第1磁性層のみの磁化方向が反転することにより生じる抵抗変化を検出することを特徴とする磁性薄膜メモリの再生方法。
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