JP3891511B2 - 磁性薄膜メモリ及びその記録再生方法 - Google Patents

磁性薄膜メモリ及びその記録再生方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁化の向きによって情報を記録し、磁気抵抗効果によって再生する磁気抵抗素子(磁性薄膜メモリ素子)、並びにそれを用いた磁性薄膜メモリ及びその記録再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁性薄膜メモリは、半導体メモリと同じく稼働部のない固体メモリであるが、電源が断たれても情報を失わない、繰り返し書換回数が無限回である、放射線が入射すると記録内容が消失する危険性がない等、半導体メモリと比較して有利な点がある。特に近年、巨大磁気抵抗(GMR)効果を利用した磁性薄膜メモリは、従来提案されている異方性磁気抵抗効果を用いた磁性薄膜メモリと比較して大きな出力が得られるため注目されている。
【0003】
例えば、日本応用磁気学会誌Vol.20,p22(1996)には、図11に示すような硬質磁性膜101/非磁性膜102/軟磁性膜103なる構成要素を非磁性膜を介して複数回積層してメモリー素子とした固体メモリーが提案されている。このメモリー素子には、金属導体と接合されたセンス線104、および絶縁膜105によってこのセンス線と絶縁されたワード線106が各々設けられており、このワード線電流およびセンス線電流によって発生する磁界によって情報の書き込みを行う。
【0004】
具体的には、図12に示すように、ワード線106に電流Iを流し、電流の向きIDによって異なる方向の磁界を発生させて硬質磁性膜101の磁化反転を行い、メモリー状態「0」又は「1」の記録を行う。例えば、図12(a)に示すように正の電流を流して右向きの磁界を発生させて硬質磁性膜に「1」の記録を行い、図12(c)に示すように負の電流を流して左向きの磁界を発生させて硬質磁性膜に「0」の記録を行う。
【0005】
情報の読み出しは、図13に示すようにワード線に記録電流より小さい電流Iを流して軟磁性膜の磁化反転のみを起こし、その際の抵抗変化を測定する。巨大磁気抵抗効果を利用すれば軟磁性膜と硬質磁性膜の磁化が平行の場合と反平行の場合で抵抗値が異なるので、その時生ずる抵抗変化により「1」及び「0」のメモリー状態を判別することができる。図13(a)に示すような正から負のパルスを印加すると、軟磁性膜は右向きから左向きになり、メモリー状態「1」に対しては、図13(b)のように小さい抵抗値を示す状態から図13(c)のように大きい抵抗値を示す状態に変化し、メモリー状態「0」に対しては、図13(d)のように大きい抵抗値を示す状態から図13(e)のように小さい抵抗値を示す状態に変化する。このようにして抵抗の変化を読みとれば、記録後の軟磁性膜の磁化状態に関わらず硬質磁性膜に記録した情報の読み出しが可能であり、非破壊読み出しが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記構成の磁性薄膜メモリは、ビットセルの面積を小さくするに伴って、磁性層内部で生じる反磁界(自己減磁界)が無視できなくなり、記録保持する磁性層の磁化方向が一方向に定まらず不安定となってしまう。そのため、上記構成の磁性薄膜メモリは、ビットセルを微細化するにしたがい情報の保存が困難となり、高集積化が不可能であるといった欠点を有していた。
【0007】
従来の2層の磁性層からなるメモリでは、各磁性層の磁化の向きは平行、反平行のどちらの状態も存在し、特に非磁性層の厚さが40nmを超える場合には一様でなく定まらない。また、非磁性層を40nm以下に薄くした場合では、非磁性層の厚さによっては磁化が反平行状態または平行状態の一方を取り得る場合があるが、非磁性層の厚さを薄くするにしたがって2層の磁化が平行、反平行を繰り返すようになる。このため、磁化が反平行となる非磁性層の膜厚のマージンが狭いといった問題がある。すなわち、反平行の磁化状態を、1つのメモリ上にある数多くのメモリ素子で安定的に実現することは困難であった。
【0008】
また、2層の磁性層の磁化が保存状態で平行であると、メモリ素子外部へ、無視できない大きさの磁界が漏れ、隣接するセルに誤記録・誤再生する場合がある。このため、従来のものは記録・再生が不安定であった。
【0009】
そこで本発明は、これらの点に鑑み、ビットセルを微細化する際に問題となる磁性薄膜の反磁界をなくし、高集積化を可能にした磁性薄膜メモリ素子およびメモリの提供を目的とする。
【0010】
さらに、保存時においては磁化安定性が高く情報の保存性に優れ、記録時においては弱い磁界でも磁化反転し消費電力の小さい磁性薄膜メモリ素子およびメモリの提供を目的とする。
【0011】
また、安定して記録再生でき、再生時間が短く、ノイズの少ない記録再生方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するために種々の検討を重ねた結果、本発明を完成した。
【0013】
発明は、基板と、該基板上に、主に膜面内の一方向に磁化配向しており低い保磁力を有する第1磁性層と、主に膜面内の一方向に磁化配向しており前記第1磁性層よりも高い保磁力を有する第2磁性層が非磁性層を介して積層され、前記第1磁性層の磁化と第2磁性層の磁化が平行の時は低い抵抗値を示し、反平行の時は前記平行状態よりも高い抵抗値を示す磁気抵抗素子を有し、該磁気抵抗素子の抵抗値の違いによる情報を記録する磁性薄膜メモリであって、前記磁気抵抗素子は、外部磁界が0の時に前記第1磁性層の磁化と第2磁性層の磁化反平行状態を示し、前記第1磁性層、第2磁性層およびこれらに接して設けられた第3磁性層により非磁性層を囲むように閉磁路が構成され、前記第3磁性層のキュリー温度が前記第1磁性層および第2磁性層のキュリー温度より低く、前記磁性薄膜メモリは、前記情報の記録を行うためのワード線を有し、該ワード線に電流を流すことによりワード線から磁界を発生させ、更にワード線の発熱で前記第3の磁性層をキュリー温度以上に昇温させ磁性を消失させることにより、前記第2の磁性層を磁化反転させて情報の記録を行うことを特徴とする磁性薄膜メモリに関する。
【0014】
また本発明は、前記磁気抵抗素子がマトリックス状に配列され、縦または横方向に並ぶ該磁気抵抗素子を直列に接続するセンス線と、該センス線と交差する方向に並ぶ前記磁気抵抗素子列に電気的に絶縁された形で近接して設けられるワード線とを備えたことを特徴とする磁性薄膜メモリに関する。
【0015】
また本発明は、前記磁気抵抗素子がマトリックス状に配列され、縦または横方向に並ぶ第1ワード線と該第1ワード線と交差する方向に並ぶ第2ワード線とにより前記磁気抵抗素子が並列に接続されていることを特徴とする磁性薄膜メモリに関する。
【0016】
また本発明は、前記磁気抵抗素子がダイオード又はトランジスタからなる半導体素子と接続されたハイブリッド構造を有することを特徴とする磁性薄膜メモリに関する。
【0017】
また本発明は、前記磁性薄膜メモリの記録方法であって前記ワード線に電流を流し、該電流により生じる磁界により第2磁性層の磁化方向を定め、該ワード線の電流を流す方向を変えることにより「0」と「1」の状態を記録することを特徴とする磁性薄膜メモリの記録方法に関する。
【0018】
また本発明は、前記磁性薄膜メモリの再生方法であって、再生時のワード電流により生じる磁界により、前記磁気抵抗素子の第1磁性層のみの磁化方向が反転することにより生じる抵抗変化を利用することを特徴とする磁性薄膜メモリの再生方法に関する。
【0019】
本発明の磁性薄膜メモリは、保存時には記録に関わる磁性膜が閉磁路となっているため、反磁界による悪影響を無くすことが可能であり、安定に磁化情報を保存できる。このため1ビットのセル幅を小さくすることができ、集積度が高い磁性薄膜メモリを実現することができる。また、隣接セルに磁界が漏れ出さないため、より安定に情報の記録再生を行うことが可能となる。また、再生を1パルスで行うことができるためアクセス時間を短縮することができる。
【0020】
また、磁化が反平行となる非磁性層の膜厚のマージンが広くなるため、容易に、低コストで作製できる。
【0021】
本発明の磁性薄膜メモリ素子は、磁界を印加していない状態では、第1磁性層と第2磁性層の磁化は常に逆向きとなっており、このためアクセスしない他のメモリセルの抵抗値は常に一定になっている。従って、本発明のメモリ素子を用いた再生方法は、メモリ素子の磁化状態が定まっていない従来の方法と比較して、抵抗のバラツキが無くなるため、よりノイズの少ない精度のよい検出が可能である(S/Nが向上)。
【0022】
本発明の磁性薄膜メモリは、上記のように保存時には記録に関わる磁性膜が閉磁路となっているため、反磁界による悪影響を無くすことが可能であり、安定に磁化情報を保存できる。一方、記録時においては、閉磁路が切断されて容易に磁化反転するようになっている。このため、本発明によれば、消費電力が少なく、かつ集積度が高く、保存安定性が良好な磁性薄膜メモリを実現することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。図1及び図2は本発明の磁性薄膜メモリ素子の一例を示す構造断面図である。図1において、1は第1磁性層、2は第2磁性層、3は第3磁性層、4は非磁性層を示す。また矢印は各磁性層における主な磁化方向を示している。
【0024】
図1に示すように、本発明の薄膜状の磁気抵抗素子は、膜面内の一方向に磁化方向がある第1磁性層1及び第2磁性層2が、非磁性層4を介して積層されており、この第1磁性層および第2磁性層の側面には第3磁性層3が設けられており、全体として第1磁性層と第2磁性層と第3磁性層とで非磁性層を囲むように構成されている。外部磁界が0の保存状態では、第1磁性層の磁化と第2磁性層の磁化は反平行であって、第3磁性層を介して閉磁路構成となっている。
【0025】
図1では、第3磁性層は、第1磁性層、非磁性層および第2磁性層の側面に接するように配置されているが、図2に示すように第3磁性層を第1磁性層と第2磁性層との間に配置して、非磁性層の一部を置き換える形で設けてもよい。この場合には、第3磁性層の占有範囲を大きくしすぎると磁気抵抗効果が低下するので、第3磁性層の合計の長さは非磁性層の長さに対して3分の1以内にすることが望ましい。より望ましくは4分の1以下がよい。図2の構成の素子における第3磁性層は、閉磁路のうち主に垂直磁化領域を受け持つ部分なので垂直磁化成分が大きい材料を用いることが好ましい。
【0026】
図1及び図2には、それぞれの層の磁化の向きを簡略化して示したが、詳細には第3磁性層の磁化は緩やかに曲がって環状のループを形成しており、安定なエネルギー状態が実現されている。従来知られている第3磁性層を有しない磁性2層膜構造では、磁荷の密度が高い端面でスピンが曲がってしまい、磁化が安定に保持されないが、本発明の磁性薄膜メモリ素子においては安定に磁化情報を保存することができる。
【0027】
データの記録は、後述するように隣接するワード線から発生する磁界でおこなう。この際、ワード線からの発熱によりメモリセルは温度が上昇する。本発明の磁性薄膜メモリ素子は、第3磁性層のキュリー温度が第1及び第2磁性層のキュリー温度よリも低く設定されているため、記録しようとするメモリ素子の第3磁性層は、磁化の環状のループを形成するに十分な磁性を無くしてしまう。よって磁化情報を保存する第2磁性層は磁化反転しやすくなる。このため、安定に磁化情報を記録するとともに、記録を小さい電流で行うことができる。
【0028】
第3磁性層のキュリー温度は、低すぎると保存時において第2磁性層に記録された磁化情報を安定に保存するのが妨げられ、高すぎると記録時に磁化の環状ループを切れやすくする本発明の効果が薄れてしまう。
【0029】
第1磁性層の例として、磁歪が0であるNi66Fe16Co18及びNi14Fe13Co73が挙げられ、これらのキュリー温度はそれぞれ約700℃及び約1000℃である。また、第2磁性層の例としてFeCoが挙げられ、そのキュリー温度は図7に示すように約900℃である。
【0030】
第3磁性層は、第1及び第2磁性層のキュリー温度より低く設定する必要があるため500℃以下が望ましい。また、保存時の温度が50℃近くまで上昇することを考慮すると100℃以上が望ましい。このため第3磁性層のキュリー温度は100℃以上で500℃以下が望ましい。より望ましくは120℃以上で400℃以下がよい。さらに望ましくは150℃以上で300℃以下がよい。さらに望ましくは150℃以上で200℃以下がよい。
【0031】
第3磁性層の室温での保磁力は4 Oe以上で6 Oe以下がよい。
【0032】
図3に、(NixFe100-x100-yCoyの組成とキュリー温度の関係を示す。図3より、第3磁性層の組成は、(NixFe100-x100-yCoyとすると、キュリー温度を500℃以下にするためには25<x<50、0≦y<30の範囲内で適当な組成を選択することが望ましい。キュリー温度をより好ましい300℃以下にするためには20<×<40、0≦y<20の範囲内で適当な組成を選択することが望ましい。
【0033】
図4には、(NixFe100-x100-yCoyの組成と飽和磁化Msの関係を示す。図4に示すように飽和磁化Msは少なくとも500emu/cc以上あり、本発明の効果を示すことができる。
【0034】
図5には、Gdx(Fe100-yCoy100-xの組成とキュリー温度の関係を示す。図5より、第3磁性層の組成は、Gdx(Fe100-yCoy100-xとすると、例えばキュリー温度を200℃以下にするためには、43≦x、0≦y≦50、又はx≦18、y≦5などの組成を選択することが望ましい。また、例えばキュリー温度を100℃以上にするためにはx≦50とすることが望ましい。
【0035】
図6には、Gdx(Fe100-yCoy100-xの組成と飽和磁化Msの関係を示す。図6より、飽和磁化が±50 Oe以内となる組成では、第3磁性層における磁束密度が小さくなって、本発明の効果を大きく発揮できない。このためxは24%±2%の範囲内を避けることが望ましい。
【0036】
第3磁性層は、磁化の環状ループのうち曲率の大きいところを担っているため、第1磁性層および第2磁性層に比べて磁気異方性および保磁力が小さく、透磁率が高く、容易に任意の磁化方向を取れる材料が望ましい。また、第3磁性層に磁壁エネルギーが小さい材料を選択することも、スピンがカーブする場合におきる磁壁エネルギーの上昇を抑えるために好ましい。本発明の磁性薄膜メモリの磁化は環状のループを形成しており、磁路が閉磁路となっているため安定な磁化状態が実現できる。第1、第2及び第3磁性層内部の至る所で磁束密度と断面積の積が一定であることが完全な閉磁路ができるために望ましい。第3磁性層の材料としては、NiFe、NiFeCoが挙げられ、磁歪定数、磁気異方性が小さく、第1磁性層および第2磁性層より保磁力が小さい磁性材料が好ましい。また、Gd x Fe 100-x 、Tb x Fe 100- xなどの垂直磁化膜を主成分としてもよい。これらの垂直磁化膜については、xは元素組成で10〜35が望ましく、さらにCo等の元素を添加してもよい。垂直磁化膜の中ではGdFeが保磁力が小さいため最も望ましい。
【0037】
メモリセルの配列構造
次に、本発明の磁性薄膜メモリ素子を多数配列して固体メモリを作製する場合のメモリセルの配列構造の例(直列配列構造および並列配列構造)を説明する。
【0038】
直列配列構造
図8(a)は図1に示す本発明の磁性薄膜メモリ素子を直列に配列した構造例を立体的に示したものである。図8(a)に示すように、メモリ素子10は直列に配列され、各メモリ素子の上部にはワード線5が設けられている。また、メモリ素子の下部には別のワード線6が設けられている。ここで、センス線はメモリ素子10を直列に結んだものである。
【0039】
図8(a)では省略しているが各ワード線とメモリ素子との間には絶縁層が充填されており、ワード線とメモリ素子間が電気的に導通するのを防いでいる。また、センス線とワード線5で記録を行う場合には、ワード線6は設けなくともよい。また、メモリ素子間の抵抗を低減するために、メモリ素子間を良導体で接続したり、第3磁性層の上部に良導体を設けたりしてもよい。この良導体はAlなどの少なくとも第1磁性層および第2磁性層よりも抵抗率の低い材料を主成分とするものが望ましい。
【0040】
再生時にはセンス線に電流を流すため第3磁性層を電流が通過する。この際に第3磁性層の磁化状態が再生信号に影響を与えると好ましくないので、これを避けるために第3磁性層のセンス線方向の長さは500A以上とするのが望ましい。
【0041】
図9(a)は、本発明の磁性薄膜メモリ素子を直列に配列した場合のメモリの平面図である。メモリ素子10は直列に並んでセンス線7を構成している。同図では横方向にセンス線を配置したが、縦方向にセンス線を配置してもよい。ワード線5は、同図には示していない絶縁層を介して各メモリ素子の直上に置かれ、センス線と直交して配置されている。センス線7の下部には、ワード線5と直交するワード線6を設けてもよい。主に、ワード線は記録をするために、センス線は再生信号を取り出すために設けられる。各ワード線と各センス線の両端90、100、110には、これらを駆動するためのデコーダー、ドライバ等の半導体素子が設けられている。また、センス線の端部には、再生信号を増幅するセンスアンプが組み込まれている。本発明に用いられるワード線は、どれも導電率が第1、第2、第3磁性層よりも大きな良導体からなる。ワード線の例としては、アルミニウム、銅、タングステン若しくはこれらの合金、又はこれらとシリコン等との混合物などが挙げられる。本発明の磁性薄膜メモリ素子の基板は、Siを主成分とする基板であることが望ましい。これは、上述の半導体素子を本発明のメモリ素子と同一の基板上に作製することが可能になるためである。
【0042】
並列配列構造
図8(b)に、図1に示す本発明の磁性薄膜メモリ素子を並列に配列した構造を示す。メモリ素子10は、図8(b)に示すように並列に配列され、各メモリ素子の上部にはワード線5が、下部にはワード線6が設けられている。ここで、ワード線5とメモリ素子10とワード線6を結んだものがセンス線となる。
【0043】
図9(b)は、本発明の磁性薄膜メモリ素子を並列に配列したメモリの平面図である。メモリ素子10は、縦または横方向に並ぶワード線5及びこれと交差するワード線6により並列に接続されてなる。各ワード線の両端90、100、110には、これらを選択駆動するためのデコーダー、ドライバー等の半導体素子が設けられている。これらのワード線は、記録と同時に再生のために設けられている。ワード線5、6の端部には、再生信号を増幅するセンスアンプが組み込まれている。
【0044】
本発明のメモリセルの構造
次に、本発明のメモリセルの構造の別の例を図10を用いて説明する。
【0045】
図10(a-1)及び(a-2)には直列に接続した複数個の本発明のメモリ素子を一単位とした構造を並列に配列して、各構造のクロストーク解消のためにダイオードを設けたメモリセルの配列構造の一単位の回路図とデバイス構造の断面図を、図10(b-1)及び(b-2)にはトランジスタと本発明のメモリ素子を接続したアクティブマトリックス構造の一単位の回路図とデバイス構造の断面図を、図10(c-1)及び(c-2)には並列にメモリセルを配列した構造であって、クロストーク解消のためにダイオードと本発明のメモリ素子を接続した構造の一単位の回路図とデバイス構造の断面図を示す。図10に示すように、本発明のメモリ素子がダイオードやトランジスタからなる半導体素子と接続されたハイブリッド構造を形成すると、製造プロセスはやや複雑になるが、メモリ素子を前述の単純マトリックスで配列した場合に発生する浮遊容量等のインピーダンス成分を排除することができ、より安定な動作を行うことができる。
【0046】
本発明の磁性薄膜メモリ素子を用いた記録方法
次に、本発明の磁性薄膜メモリ素子を用いた記録方法の一例を説明する。この磁性薄膜メモリ素子には、ワード線およびセンス線が設けられており、この各線に電流を流せばアンペールの法則にしたがって磁界が発生する。これら2本の電極線は直交しているため発生する磁界も直交しており、メモリセルの磁性層にかかる磁界はこれらの直交する磁界のベクトル和となる。この状態でワード線電流によリ第2磁性層が反転できる程度の大きさの磁界を印加すれば第2磁性層の磁化は所望の方向に配向して記録が行われる。したがって、マトリックス上の多数のセルから特定のセルのみの記録を行うことが可能である。
【0047】
さらにこの際にワード線からの発熱で、セル部分、特に電流を流した直交するワード線の下のメモリセルの部分は、温度が高くなる。本発明の特徴として、第3磁性層のキュリー温度は低く設定されているため、記録しようとするメモリ素子の第3磁性層は磁化の環状のループを形成するに十分な磁性を無くしてしまう。したがって、第2磁性層は磁化反転しやすくなる。すなわち、記録しようとするメモリセルのみ磁化反転磁界が小さくなり、そのほかのメモリセルは高い磁化反転磁界を有することとなる。これにより、保存時には磁化が安定し保存性に優れ、記録時には小さい磁界で反転できるため記録電流が低減できる。
【0048】
なお、磁化反転の可否は、磁性層のアステロイド曲線で示される。第2磁性層は、安定に磁化状態を保存することが望ましいので、高い保磁力を有することが必要である。しかし、同時にワード線がエレクトロマイグレーションによって断線するのを防ぐため、および消費電力を抑えるためには、小さい電流によって発生する弱い磁界で第2磁性層の磁化を反転できることが望ましく、このためには、第2磁性層は低い保磁力を有することが必要である。この両方の要請を満たすように第2磁性層の保磁力が決定される。具体的には第2磁性層の保磁力は5〜50 Oeが望ましい。さらに好ましくは10〜30 Oeである。
【0049】
上述のようにワード線およびセンス線で本発明の基本的な記録および後述する再生を行うことができるので、図8中のワード線6は必ずしも設ける必要はないが、より大きな磁界を発生させるためにワード線5と直交するワード線6を用いて記録および後述する再生を行ってもよい。また、メモリ素子の上にあるワード線5を省いてメモリ素子の下にあるワード線6をセンス線7と直交する方向に配置してもよい。但し、半導体素子とメモリ素子を同一基板上に作り込む場合、ワード線はメモリ素子を成膜後に作製する方が製造が容易になる。このため、基板/第1磁性層/非磁性層/第2磁性層/絶縁層/ワード線の順序で構成するのが好ましい。
【0050】
また、保磁力を制御するなどの目的で基板とメモリ素子との間にバッファー層を設けてもよい。これは、主に絶縁体からなるバッファー層を設けることにより、異なるメモリセル間の保磁力のばらつきを抑えることができたり、保磁力の絶対値を制御することが容易になるからである。このようなバッファー層としては、例えばSiNからなる絶縁材料が挙げられる。
【0051】
本発明の磁性薄膜メモリ素子を用いた再生方法
次に、本発明の磁性薄膜メモリ素子を用いた再生方法の一例を説明する。本発明の磁性薄膜メモリは、スピン依存散乱による巨大磁気抵抗(GMR)効果を示し、その抵抗値は、第1磁性層と第2磁性層の磁化が平行の時は低く、反平行の時は高くなる。再生の際には、メモリ素子の上部または下部にあるワード線に記録時よりも弱い電流を流して小さい磁界を発生させる。この磁界は、再生の際に保存した磁化情報が消えないようにするため、第1磁性層のみが反転し第2磁性層は反転しない大きさとする。第1磁性層の保磁力は第2磁性層の保磁力よりも小さいことが必要である。十分な発生磁界のマージンを確保するためには、第1磁性層の保磁力は第2磁性層の保磁力の半分以下であることが望ましく、さらに望ましくは3分の1以下である。また、ワード線から発生する磁界が、第1磁性層の反転磁界よりも大きく、第2磁性層の反転磁界よりも小さくなるように電流値を設定する。
【0052】
さらに、記録時と同様に、この際にワード線電流からの発熱で、セル部分、特に電流を流した直交するワード線の下のメモリセルの部分は温度が高くなる。本発明の特徴として、第3磁性層のキュリー温度は低く設定されているため、記録しようとするメモリ素子の第3磁性層は、磁化の環状のループを形成するに十分な磁性を無くしてしまう。したがって第2磁性層は磁化反転しやすくなる。すなわち、記録しようとするメモリセルのみ磁化反転磁界が小さくなり、そのほかのメモリセルは高い磁化反転磁界を有することとなる。これにより、保存時には磁化が安定し保存性に優れ、記録時には小さい磁界で反転できるため記録時の電流を低減できる。
【0053】
なお、上述では1セルのみの再生について記したが、現実にはマトリックス上に多数のセルが配置されており、特定のセルの磁化情報のみを再生する必要がある。このためには記録と同じように、対象となるセルに接続されているセンス線に電流を流すと同時にセンス線と直交するワード線にも電流を流して磁界を発生させて、対象セルの第1磁性層のみが磁界のアステロイド曲線の外側の磁界がかかるようすることで達成される。または直交する2本のワード線を用いて特定のセルの第1磁性層のみを反転させる。前記抵抗変化は、縦または横方向に並ぶメモリ素子を直列に接続するセンス線の両端で測定される。具体的には、図9(a)及び(b)に示す90、100もしくは110の部分に抵抗変化を検出するための半導体素子が配置されており、一本のセンス線に並んだセルを順次再生することが可能である。
【0054】
本発明の磁性薄膜メモリ素子の第1の例
本発明の磁性薄膜メモリ素子の第1の例は、スピン依存散乱により磁気抵抗効果が生じることを特徴とする。このスピン依存散乱による磁気抵抗効果は、例えば図1に示すように第1磁性層/非磁性層/第2磁性層の構造において、非磁性層に良導体からなる金属層を用いることによって発生させることができる。このスピン依存散乱による磁気抵抗効果は、伝導電子の散乱がスピンによって大きく異なることに由来している。すなわち、磁化と同じ向きのスピンを持つ伝導電子はあまり散乱されないため抵抗が小さくなるが、磁化と反対向きのスピンを持つ伝導電子は散乱によって抵抗が大きくなる。そのため、第1磁性層と第2磁性層の磁化が反対向きである場合は、同じ向きである場合の抵抗値よりも大きくなる。
【0055】
再生電流は、膜面に平行または垂直に流す2つの方式のどちらでもよい。再生時には、電流を膜面に対して垂直に流すCPP(Current Perpendicular to the film Plane)−MR(Magneto-Resistance)効果を用いる。このCPP−MRは、膜面に平行に電流を流すCIP(Current Inplane to the filmm Plane)一MR効果よりも伝導電子が界面を横切る確率が増えるため、大きな抵抗変化率が得られ、信号検出感度を高くすることができる。
【0056】
この場合の第1磁性層と第2磁性層と非磁性層の特徴を示す。第1磁性層は、第2磁性層と環状ループを形成するとともに、第2磁性層に保存された磁化情報を巨大磁気抵抗効果を利用して読み出すために設けられたものである。第1磁性層はNi、Fe、Coを主成分として用いられるか、Co、Feを主成分とするアモルファス合金として用いられることが望ましい。例えばNiFe、NiFeCo、FeCo、CoFeBなどの磁性膜からなる。NiFeの元素組成は、NixFe100-xとした場合、xは35〜86が望ましい。また、NiFeCoの元素組成は、Nix(Fe100-yCoy100-xとした場合、xは10〜70、yは30〜90が望ましく、さらにyは60〜85が望ましい。また、Co84Fe97、Co72Fe820等の組成を持つCoFeB等のアモルファス磁性体を用いてもよい。
【0057】
第2磁性層は、主に磁化情報を保存する目的で設けられたもので、「0」、「1」の情報に応じて磁化の向きが決定される。第2磁性層は、第1磁性層と同じく巨大磁気抵抗効果が効率的に発生すること、及び安定に磁化状態を保存できることが必要である。第2磁性層は、Fe、Coを主成分とする磁性層からなっており、例えばFe、FeCo、Co等の磁性膜からなる。また、Pt等の元素を加えてもよい。CoにFeを添加すると保磁力は小さくなり、Ptを添加すると保磁力は大きくなるので、第2磁性層を例えばCo100-x-yFexPtyとして元素組成x及びyを調節して保磁力を制御すればよい。同様に第1磁性層の保磁力もFe、Coの組成比およびPt等の元素の量で調節することができる。
【0058】
第1磁性層の膜厚は、散乱型の巨大磁気抵抗効果が効率よく発生するように設定することが必要である。CPP−MRでは、スピンの向きを保存して動ける距離、すなわち、スピン拡散長が重要因子となる。具体的には、第1磁性層の膜厚が電子の平均自由行程より大幅に大きくなると、フォノン散乱を受けてその効果が薄れるため、少なくとも200A以下であることが望ましい。さらに好ましくは150A以下がよい。しかし、薄すぎるとセルの抵抗値が小さくなり再生信号出力が減少してしまい、また磁化を保持できなくなるので、20A以上が望ましく、さらには80A以上が望ましい。
【0059】
第2磁性層の膜厚も第1磁性層の場合と同様に、散乱型の巨大磁気抵抗効果が効率よく発生するように設定するためには、少なくとも200A以下であることが望ましい。さらに好ましくは150A以下がよい。しかし、あまり薄すぎるとメモリ保持性能が劣化したり、セルの抵抗値が小さくなり再生信号出力が減少したり、また磁化を保持できなくなるので20A以上が望ましく、さらには80A以上が望ましい。
【0060】
非磁性層は良導体、好ましくはCuを主成分とするものが用いられる。これは、磁性層とフェルミエネルギー準位が近く、密着性もよいため、磁化方向が変わるときに界面で抵抗が生じ易く、大きな磁気抵抗比を得るのに好都合であるからである。また、非磁性層の膜厚は5〜60Aであることが望ましい。
【0061】
第1磁性層と非磁性層の間もしくは第2磁性層と非磁性層の間、または第1磁性層と非磁性層の間および第2磁性層と前記非磁性層の間にCoを主成分とする磁性層が設けられると、磁気抵抗比が高くなるため、より高いS/N比が得られるため望ましい。この場合のCoを主成分とする層の厚みは20A以下が好ましい。またS/N比を向上させるために、第1磁性層/非磁性層/第2磁性層/非磁性層を1つのユニットとして、このユニットを積層してもよい。積層する組数は多い程MR比が大きくなり好ましいが、余り多くするとMR磁性層が厚くなり電流を多く必要とする。このため、積層の回数は40組以下が好ましく、3〜20組がより好ましい。
【0062】
本発明の磁性薄膜メモリ素子の第2の例
本発明の磁性薄膜メモリ素子の第2の例は、スピン依存トンネリングによリ磁気抵抗効果が生じることを特徴とする。このスピントンネリングによる磁気抵抗効果は、例えば図1に示すように第1磁性層/非磁性層/第2磁性層の構造において、非磁性層に薄い絶縁層を用いることによって発生させることができる。そして、再生時に電流を膜面に対して垂直に流した際に第1磁性層から第2磁性層へ電子のトンネル現象が起きるようにする。
【0063】
本発明のスピン依存トンネリングタイプの磁性薄膜メモリ素子は、強磁性体金属において伝導電子がスピン偏極を起こしているため、フェルミ面における上向きスピンと下向きスピンの電子状態が異なっており、このような強磁性体金属を用いて、強磁性体と絶縁体と強磁性体からなる強磁性トンネル接合を作ると、伝導電子はそのスピンを保ったままトンネルするため、両磁性層の磁化状態によってトンネル確率が変化し、それがトンネル抵抗の変化となって現れる。これにより、第1磁性層と第2磁性層の磁化が平行の場合は抵抗が小さく、第1磁性層と第2磁性層の磁化が反平行の場合は抵抗が大きくなる。上向きスピンと下向きスピンの状態密度の差が大きい方がこの抵抗値は大きくなりより大きな再生信号が得られるので、第1磁性層と第2磁性層はスピン分極率の高い磁性材料を用いることが望ましい。具体的には第1磁性層と第2磁性層は、フェルミ面における上下スピンの偏極量が大きいFeを選定し、Coを第2成分として選定してなる。具体的には、Fe、Co、Niを主成分とした材料から選択して用いることが望ましい。好ましくは、Fe、Co、FeCo、NiFe、NiFeCo等がよい。NiFeの元素組成は、NixFe100-xとした場合、xは0〜82が望ましい。よリ具体的には、Fe、Co、Ni72Fe28、Ni51Fe49、Ni42Fe58、Ni25Fe75、Ni9Fe91等が挙げられる。
【0064】
第1磁性層は、第2磁性層と環状ループを形成するとともに、第2磁性層に保存された磁化情報をスピントンネルによる巨大磁気抵抗効果を利用して読み出すために設けられたものである。第1磁性層は第2磁性層よりも低い保磁力を有し、再生時には第1磁性層のみが反転するようにする。また、第2磁性層と環状ループを形成しやすいようにする。このため上述の組成のうちNiを含む軟磁性材料が望ましく、具体的にはNiFe、NiFeCoを主成分として用いることが望ましい。NiFeの元素組成は、NixFe100-xとした場合、xは30〜82が望ましい。またNiFeCoの元素組成は、Nix(Fe100-yCoy100-xとした場合、xは30〜82、yは0〜90が望ましい。第1磁性層の膜厚は、薄すぎるとセルの抵抗値が小さくなって再生信号出力が減少してしまうので20A以上が望ましく、さらには80A以上が望ましい。また厚すぎるとセルの抵抗値が大きくなりすぎる等の問題があるので、5000A以下が望ましく、より望ましくは1000A以下がよい。
【0065】
第2磁性層は、主に磁化情報を保存する目的で設けられたもので、「0」、「1」の情報に応じて磁化の向きが決まる。第2磁性層は、第1磁性層と同じく巨大磁気抵抗効果が効率的に発生すること、及び安定に磁化状態を保存できることが必要である。第2磁性層は第1磁性層よりも高い保磁力を有する。このため第2磁性層は上述の組成のうち、Fe、Coを主成分として用いることが望ましい。例えばFe、FeCo、Co等の磁性膜からなる。また第2磁性層に保磁力の制御や耐食性の向上などの目的でPt等の元素を加えてもよい。CoにFeを添加すると保磁力は小さくなり、Ptを添加すると保磁力は大きくなるので、第2磁性層を例えばCo100-x-yFexPtyとして元素組成x及びyを調節して保磁力を制御すればよい。また成膜時の基板温度高くすることによっても保磁力を高めることができるので別の保磁力の制御方法として成膜時の基板温度を調節することもよい。この方法と前述した強磁性薄膜の組成を調節する方法とを組合せてもよい。また、第1磁性層の保磁力の調節も上述と同様に、膜組成と成膜時の基板温度で調節することができる。
【0066】
第2磁性層の膜厚は、あまり薄すぎるとメモリ保持性能が劣化したり、セルの抵抗値が小さくなり再生信号出力が減少したり、また磁化を保持できなくなるので20A以上が望ましく、さらには80A以上が望ましい。また厚すぎるとセルの抵抗値が大きくなりすぎたり、またワード電極からの距離が離れて磁化反転が起きにくくなるなどの問題があるので、5000A以下が望ましく、より望ましくは1000A以下がよい。
【0067】
非磁性層は、電子がスピンを保持してトンネルするために非磁性でなければならない。非磁性膜の全部が絶縁層であっても、その一部が絶縁層であってもよい。一部を絶縁層にしてその厚みを極小にすることにより、磁気抵抗効果をさらに高めることができる。非磁性金属膜を酸化させた酸化層にする例としては、Al膜の一部を空気中で酸化させてAl23層を形成する例が挙げられる。非磁性層は絶縁体からなり、好ましくは、AlOx、AlNx、SiOx、SiNx、NiOxを主成分として用いられてなる。このうちAl23層が絶縁性が高く緻密であるため好ましい。また、非磁性層は数10A程度の均一な層であって、その膜厚は4〜25Aであることが望ましい。より望ましくは6〜18Aである。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、磁化情報の保存性に優れ、高い集積度と高い信頼性を有し、消費電力の小さい磁性薄膜メモリ素子およびメモリを提供できる。
【0069】
また、非磁性層の製造マージンが広いため、容易に、低コストで磁性薄膜メモリ素子を作製できる。
【0070】
また、安定した記録再生ができ、再生時間が短く、ノイズの少ない記録再生方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁性薄膜メモリ素子の構造断面図である。
【図2】本発明の磁性薄膜メモリ素子の構造断面図である。
【図3】NiFeCoの組成とキュリー温度の関係を示すグラフである。
【図4】NiFeCoの組成と飽和磁化Msの関係を示すグラフである。
【図5】GdFeCoの組成とキュリー温度の関係を示すグラフである。
【図6】GdFeCoの組成と飽和磁化Msの関係を示す図である。
【図7】FeCoの組成とキュリー温度の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の磁性薄膜メモリ素子の配列構造の説明図である。
【図9】本発明の磁性薄膜メモリの平面図である。
【図10】本発明の磁性薄膜メモリ素子の配列構造の説明図である。
【図11】巨大磁気抵抗効果を用いた従来の磁性薄膜メモリの構造断面図である。
【図12】巨大磁気抵抗効果を用いた従来の磁性薄膜メモリの記録動作を示す図である。
【図13】巨大磁気抵抗効果を用いた従来の磁性薄膜メモリの再生動作を示す図である。
【符号の説明】
1 第1磁性層
2 第2磁性層
3 第3磁性層
4 非磁性層
5、6 ワード線
7 センス線
10 メモリ素子
91 メモリ素子
92 ワード線
93 コントロールゲート
94 トランジスタ
95 ダイオード
96 P基板
101 硬質磁性膜
102 軟磁性膜
103 非磁性膜
104 センス線
105 絶縁膜
106 ワード線
ID 電流の向き

Claims (5)

  1. 基板と、該基板上に、主に膜面内の一方向に磁化配向しており低い保磁力を有する第1磁性層と、主に膜面内の一方向に磁化配向しており前記第1磁性層よりも高い保磁力を有する第2磁性層が非磁性層を介して積層され、前記第1磁性層の磁化と第2磁性層の磁化が平行の時は低い抵抗値を示し、反平行の時は前記平行状態よりも高い抵抗値を示す磁気抵抗素子を有し、該磁気抵抗素子の抵抗値の違いによる情報を記録する磁性薄膜メモリであって、
    前記磁気抵抗素子は、外部磁界が0の時に前記第1磁性層の磁化と第2磁性層の磁化反平行状態を示し、前記第1磁性層、第2磁性層およびこれらに接して設けられた第3磁性層により非磁性層を囲むように閉磁路が構成され、前記第3磁性層のキュリー温度が前記第1磁性層および第2磁性層のキュリー温度より低く、
    前記磁性薄膜メモリは、前記情報の記録を行うためのワード線を有し、該ワード線に電流を流すことによりワード線から磁界を発生させ、更にワード線の発熱で前記第3の磁性層をキュリー温度以上に昇温させ磁性を消失させることにより、前記第2の磁性層を磁化反転させて情報の記録を行うことを特徴とする磁性薄膜メモリ
  2. 前記第3磁性層のキュリー温度が100〜500℃である請求項1記載の磁性薄膜メモリ
  3. 前記第3磁性層の保磁力が、第1磁性層および第2磁性層の保磁力より小さい請求項1又は2記載の磁性薄膜メモリ
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の磁性薄膜メモリの記録方法であって前記ワード線に電流を流し、該電流により生じる磁界により第2磁性層の磁化方向を定め、該ワード線の電流を流す方向を変えることにより「0」と「1」の状態を記録することを特徴とする磁性薄膜メモリの記録方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の磁性薄膜メモリの再生方法であって、再生時のワード電流により生じる磁界により、前記磁気抵抗素子の第1磁性層のみの磁化方向が反転することにより生じる抵抗変化を利用することを特徴とする磁性薄膜メモリの再生方法。
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