JP4135446B2 - 積層セラミックコンデンサの製造方法における脱脂工程の設計方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層セラミックコンデンサの製造方法における脱脂工程の設計方法に関するもので、特に、脱脂工程後の残留炭素量が適正化された積層セラミックコンデンサの製造方法を可能とする脱脂工程での条件を決定するための設計方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1は、この発明にとって興味ある積層セラミックコンデンサの部品本体をなす積層体チップ1を図解的に示す断面図である。
【0003】
積層セラミックコンデンサを製造するにあたっては、積層体チップ1が製造された後、図1において破線で示すように、積層体チップ1の両端部に外部電極2が形成され、それによって積層セラミックコンデンサが完成される。
【0004】
積層体チップ1は、複数の積層された誘電体セラミック層3と誘電体セラミック層3間の特定の界面に沿って形成される内部電極とを備えている。この発明にとって興味ある積層セラミックコンデンサにあっては、内部電極4は、ニッケルまたは銅のような卑金属を含んでいる。
【0005】
このような積層体チップ1を得るため、生の誘電体セラミック層3と内部電極4とを備える、生の積層体チップ1が用意され、この生の積層体チップ1を脱脂し、脱脂後の積層体チップ1を焼成することが行なわれている。
【0006】
上述した脱脂工程および焼成工程において、内部電極4に含まれる卑金属の酸化をコントロールすることが、得られた積層体チップ1におけるデラミネーションやクラックのような内部欠陥の防止にとって重要であることがわかっている。また、脱脂工程後の残留炭素量についても、内部欠陥の発生および取得静電容量の不足を防止するために重要であることがわかっている。したがって、これらのことを考慮しながら、脱脂工程および焼成工程での条件設定がなされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
通常、上述した脱脂工程および焼成工程での条件設定にあたっては、処理されるべき積層体チップ1の寸法が考慮される。すなわち、この寸法の大小によって、脱脂および焼成条件が予め分類されていて、処理すべき積層体チップ1の寸法に応じて、適正な条件が分類に基づいて決定される。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−106187号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、積層セラミックコンデンサにおいて、誘電体セラミック層3および内部電極4の薄層化および多層化が進む中、同じ寸法の積層体チップ1であっても、取得静電容量の範囲が広くなっている。言い換えると、積層体チップ1が同じ寸法であっても、誘電体セラミック層3および内部電極4の積層数が大きく異なることがある。そのため、積層体チップ1の寸法に基づいて、上述した分類に従って、たとえば脱脂工程での条件を決定すると、残留炭素量が不適正になることがある。
【0010】
脱脂工程後の残留炭素量が不適正であると、前述したように、焼成工程の結果、積層体チップ1に内部欠陥が生じたり、取得静電容量が不足したりするといった不都合として現れる。
【0011】
そこで、この発明の目的は、上述のような問題を解決することができる、積層セラミックコンデンサの製造方法における脱脂工程の設計方法を提供しようとすることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、複数の積層された生の誘電体セラミック層と誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成される卑金属を含む内部電極とを備える、生の積層体チップを用意する工程と、生の積層体チップを脱脂する工程と、脱脂後の積層体チップを焼成する工程とを備える、積層セラミックコンデンサの製造方法における上述の脱脂工程を設計する方法に向けられるものであって、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0013】
まず、製造しようとする積層セラミックコンデンサの設計が決められる。
【0014】
次に、脱脂工程を実施するための炉内に投入される複数の生の積層体チップの内部電極に含まれる卑金属の合計重量が求められる。
【0015】
そして、内部電極に含まれる卑金属の合計重量が50g以上かつ500g未満のときには、脱脂工程後の積層体チップ全体に対する残留炭素の重量比率が0.20重量%以上かつ0.35重量%未満となるように、卑金属の合計重量が500g以上かつ800g未満のときには、残留炭素の重量比率が0.35重量%以上かつ0.45重量%未満となるように、卑金属の合計重量が800g以上1500g未満のときには、残留炭素の重量比率が0.45重量%以上かつ1.05重量%未満となるように、および、卑金属の合計重量が1500g以上かつ3000g未満のときには、残留炭素の重量比率が1.05重量%以上かつ1.50重量%未満となるように、それぞれ、脱脂工程での条件が決定される。
【0016】
この発明において、脱脂工程の条件は、典型的には、脱脂工程において適用される温度条件および/または時間条件である。
【0017】
また、脱脂工程を実施するための炉の容積は、0.5〜1.0m3 の範囲にあることが好ましい。
【0018】
また、内部電極に含まれる卑金属は、ニッケルを含んでいることが好ましい。
【0019】
また、積層体チップに形成される内部電極の積層数は、10〜200の範囲にあることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
再び図1を参照しながら、この発明の一実施形態による脱脂工程の設計方法について説明する。
【0021】
この発明は、複数の積層された生の誘電体セラミック層3と誘電体セラミック層3間の特定の界面に沿って形成される卑金属を含む内部電極4とを備える、生の積層体チップ1を用意する工程と、生の積層体チップ1を脱脂する工程と、脱脂後の積層体チップ1を焼成する工程とを備える、積層セラミックコンデンサの製造方法を量産体制で実施する前段階において、上述した脱脂工程での温度条件や時間条件といった条件を決定するための脱脂工程の設計方法を提供しようとするものである。
【0022】
まず、量産体制で製造しようとする積層セラミックコンデンサの設計が決められる。より具体的には、積層セラミックコンデンサないしは積層体チップ1の寸法、内部電極4の積層数、各内部電極4の厚みおよび内部電極4間に位置する誘電体セラミック層3の厚み等が決定される。これによって、1個の積層体チップ1に備える内部電極4に含まれる卑金属の重量が決まってくる。
【0023】
次に、脱脂工程を実施するための炉内に投入される複数の生の積層体チップ1の個数または重量が決定される。その結果、炉内に投入される複数の生の積層体チップ1の内部電極4に含まれる卑金属の合計重量を求めることができる。
【0024】
この発明は、脱脂工程を実施するための炉内に投入される複数の生の積層体チップ1の内部電極4に含まれる卑金属の合計重量に応じて、脱脂工程後の適正な残留炭素量が異なること、およびこの卑金属の合計重量に応じて、焼成工程後の残留炭素量の適正範囲が決まることを、後述する実験結果から見出し、これをなすに至ったものである。
【0025】
より具体的には、内部電極に含まれる卑金属の合計重量について、50g以上かつ500g未満といった第1の範囲、500g以上かつ800g未満といった第2の範囲、800g以上1500g未満といった第3の範囲、および1500g以上かつ3000g未満といった第4の範囲に分類される。
【0026】
そして、内部電極4に含まれる卑金属の合計重量が第1の範囲にあるときには、脱脂工程後の積層体チップ1全体に対する残留炭素の重量比率が0.20重量%以上かつ0.35重量%未満となるように、第2の範囲にあるときには、0.35重量%以上かつ0.45重量%未満となるように、第3の範囲にあるときには、0.45重量%以上かつ1.05重量%未満となるように、および、第4の範囲にあるときには、1.05重量%以上かつ1.50重量%未満となるように、それぞれ、脱脂工程での条件が決定される。
【0027】
上述の各々適正な残留炭素量を得るため、脱脂工程において適用される温度条件および/または時間条件等が調整される。すなわち、脱脂工程において適用される温度が高くなるほど、残留炭素量が少なくなり、また、時間が長くなるほど、残留炭素量が少なくなる。一例として、脱脂工程を空気雰囲気中で30時間実施した場合において、温度を250℃にすれば、残留炭素の重量比率が1.75重量%以上かつ2.00重量%未満となり、他方、320℃の温度にすれば、0.10重量%以上かつ0. 20重量%未満の残留炭素の重量比率となることがわかっている。
【0028】
また、脱脂工程を実施するための炉の容積は、0.5〜1.0m3 の範囲にあることが好ましい。炉の容積が0.5m3 より小さいと、積層体チップ1に雰囲気ガス(たとえば空気)が当たり過ぎ、内部電極4が酸化されやすくなるという問題があり、また、炭素が燃焼しやすくなるので、残留炭素量が予定値より少なくなり、この点でも、内部電極4が酸化されやすくなる。他方、炉の容積が1.0m3 より大きいと、雰囲気ガスが行き渡らず、炭素が残留しやすくなり、しかも、炉内における雰囲気が均一になりにくく、積層体チップ1の残留炭素量に比較的大きなばらつきが生じてしまう。したがって、残留炭素量の制御を高い信頼性をもって容易に行なえるようにするには、炉の容積を0.5〜1.0m3 の範囲にすることが好ましい。
【0029】
前述したように、内部電極4に含まれる卑金属の合計重量に応じて残留炭素の適正な重量比率が決定されると、脱脂工程を設計するにあたって、その条件を決定するための方針が明確になるので、脱脂工程の設計を能率的に行なえるという利点がある。
【0030】
以上のようにして、脱脂工程の設計を終えた後、前述した設計に基づいて、積層セラミックコンデンサが量産される。
【0031】
次に、この発明の本質的特徴となる、内部電極に含まれる卑金属の合計重量に応じて変わる残留炭素量の適正範囲を求めるために実施した実験例について説明する。
【0032】
この実験例では、積層体チップに備える誘電体セラミック層を構成するセラミックとして、CaZrO3 系セラミックを用いた。また、内部電極は、ニッケルを含む導電性ペーストを用いて形成した。
【0033】
また、脱脂工程では、250〜320℃の範囲の温度を適用し、この温度を変えることによって、残留炭素量を制御するようにした。また、脱脂時間を30時間とし、脱脂雰囲気を空気雰囲気とした。また、脱脂炉としては、0.75m3 の容積を有するものを用いた。
【0034】
焼成工程は、還元性雰囲気中において、最高温度1350℃で60時間保持する条件で実施した。
【0035】
(1)ニッケルの合計重量が50g以上かつ500g未満のとき
評価のための試料として、内部電極の積層数が10であり、内部電極間の誘電体セラミック層の厚みが焼成後において9μmであり、内部電極の厚みが焼成後において0.6μmである、焼成後の寸法が1.6mm×0.8mm×0.8mmとなる生の積層体チップを用いた。
【0036】
次に、脱脂炉内に、内部電極に含まれるニッケルの合計重量が350gとなるように、生の積層体チップを投入し、脱脂工程での温度条件を変えることにより、表1の「残留炭素の重量比率」となるように、脱脂工程をそれぞれ実施した。なお、残留炭素量は、脱脂工程後の重量および後で実施される焼成工程において発生した炭酸ガス量を測定し、この重量と炭酸ガス量とから残留する炭素量の重量比率を算出したものである。
【0037】
次に、焼成工程を実施した。そして、焼成後の積層体チップについて、表1に示すように、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」および「取得誘電率ずれ」を求めた。
【0038】
なお、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」については、温度85℃および相対湿度85%の環境下で定格電圧50Vを500時間印加して、超音波探傷装置でクラックやデラミネーション等の内部欠陥を検出し、ランダムに100個抜き取った試料中、内部欠陥が検出された試料の比率を求めたものである。
【0039】
「取得誘電率ずれ」は、目的とする誘電率(ε)からのずれを示したもので、ランダムに30個抜き取った試料についての結果を平均したものである。
【0040】
【表1】
【0041】
表1からわかるように、残留炭素の重量比率が0.20重量%以上かつ0.35重量%未満のとき、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」および「取得誘電率ずれ」の双方について優れた結果が得られている。
【0042】
これに対して、残留炭素の重量比率が0. 20重量%未満の場合には、「取得誘電率ずれ」が比較的大きくなっている。
【0043】
これは、次の理由によるものと考えられる。すなわち、炭素が燃焼するとき、酸素を奪い、このことがニッケルの酸化を抑制する。しかしながら、残留炭素量が少ないと、ニッケルの酸化を抑制するには不十分であり、ニッケルが酸化し、この酸化した部分において、内部電極の導電性が低くなる。その結果、取得静電容量が低下し、積層セラミックコンデンサ全体の見かけ上の誘電率(ε)が低下することになる。また、炭素は、内部電極に含まれるニッケルの焼結による急激な収縮を抑制するようにも作用する。しかしながら、残留炭素量が少ないと、このような急激な収縮を十分に抑制し得ない。そのため、ニッケルが急激に収縮し、その結果、内部電極切れが生じ、これによっても、取得静電容量が低下し、積層セラミックコンデンサ全体の見かけ上の誘電率(ε)が低下することになる。このような理由から、前述したように、残留炭素の重量比率が0. 20重量%未満の場合には、「取得誘電率ずれ」が比較的大きくなってしまう。
【0044】
また、残留炭素の重量比率が0.35重量%以上の場合には、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」が急激に高くなっている。
【0045】
これは、次の理由によるものと考えられる。すなわち、耐湿負荷試験における内部欠陥はデラミネーションやクラックである。これらの欠陥は、焼成工程において、炭素が急激に燃焼するために生じ得るものであるが、残留炭素量が多くなるほど、焼成工程において急激に燃焼する炭素が増加するため、内部欠陥が生じやすい。このようなことから、残留炭素の重量比率が0.35重量%以上となると、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」が急激に高くなってしまう。
【0046】
以上、表1には、ニッケルの合計重量が350gの場合のみを示したが、ニッケルの合計重量が50g以上かつ500g未満の範囲においては、表1に示したのと同様の傾向が現れることが確認されている。
【0047】
(2)ニッケルの合計重量が500g以上かつ800g未満のとき
評価のための試料として、内部電極の積層数が15であり、内部電極間の誘電体セラミック層の厚みが焼成後において9μmであり、内部電極の厚みが焼成後において0.6μmである、焼成後の寸法が1.6mm×0.8mm×0.8mmとなる生の積層体チップを用いた。
【0048】
次に、脱脂炉内に、内部電極に含まれるニッケルの合計重量が500gとなるように、生の積層体チップを投入し、脱脂工程での温度条件を変えることにより、表2の「残留炭素の重量比率」となるように、脱脂工程をそれぞれ実施した。
【0049】
次に、焼成工程を実施した。そして、焼成後の積層体チップについて、表2に示すように、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」および「取得誘電率ずれ」を求めた。
【0050】
【表2】
【0051】
表2からわかるように、残留炭素の重量比率が0.35重量%以上かつ0.45重量%未満のとき、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」および「取得誘電率ずれ」の双方について優れた結果が得られている。
【0052】
これに対して、残留炭素の重量比率が0.35重量%未満の場合には、「取得誘電率ずれ」が比較的大きくなっている。
【0053】
また、残留炭素の重量比率が0.45重量%以上の場合には、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」が急激に高くなっている。
【0054】
以上、表2には、ニッケルの合計重量が500gの場合のみを示したが、ニッケルの合計重量が500g以上かつ800g未満の範囲においては、表2に示したのと同様の傾向が現れることが確認されている。
【0055】
(3)ニッケルの合計重量が800g以上かつ1500g未満のとき
評価のための試料として、内部電極の積層数が65であり、内部電極間の誘電体セラミック層の厚みが焼成後において7μmであり、内部電極の厚みが焼成後において0.6μmである、焼成後の寸法が1.6mm×0.8mm×0.8mmとなる生の積層体チップを用いた。
【0056】
次に、脱脂炉内に、内部電極に含まれるニッケルの合計重量が1100gとなるように、生の積層体チップを投入し、脱脂工程での温度条件を変えることにより、表3の「残留炭素の重量比率」となるように、脱脂工程をそれぞれ実施した。
【0057】
次に、焼成工程を実施した。そして、焼成後の積層体チップについて、表3に示すように、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」および「取得誘電率ずれ」を求めた。
【0058】
【表3】
【0059】
表3からわかるように、残留炭素重量比率が0.45重量%以上かつ1.05重量%未満のとき、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」および「取得誘電率ずれ」の双方について優れた結果が得られている。
【0060】
これに対して、残留炭素の重量比率が0.45重量%未満の場合には、「取得誘電率ずれ」が比較的大きくなっている。
【0061】
また、残留炭素の重量比率が1.05重量%以上の場合には、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」が急激に高くなっている。
【0062】
以上、表3には、ニッケルの合計重量が1100gの場合のみを示したが、ニッケルの合計重量が800g以上かつ1500g未満の範囲においては、表3に示したのと同様の傾向が現れることが確認されている。
【0063】
(4)ニッケルの合計重量が1500g以上かつ3000g未満のとき
評価のための試料として、内部電極の積層数が48であり、内部電極間の誘電体セラミック層の厚みが焼成後において7μmであり、内部電極の厚みが焼成後において0.6μmである、焼成後の寸法が3.2mm×1.6mm×0.85mmとなる生の積層体チップを用いた。
【0064】
次に、脱脂炉内に、内部電極に含まれるニッケルの合計重量が1500gとなるように、生の積層体チップを投入し、脱脂工程での温度条件を変えることにより、表4の「残留炭素の重量比率」となるように、脱脂工程をそれぞれ実施した。
【0065】
次に、焼成工程を実施した。そして、焼成後の積層体チップについて、表4に示すように、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」および「取得誘電率ずれ」を求めた。
【0066】
【表4】
【0067】
表4からわかるように、残留炭素重量比率が1.05重量%以上かつ1.50重量%未満のとき、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」および「取得誘電率ずれ」の双方について優れた結果が得られている。
【0068】
これに対して、残留炭素の重量比率が1.05重量%未満の場合には、「取得誘電率ずれ」が比較的大きくなっている。
【0069】
また、残留炭素の重量比率が1.50重量%以上の場合には、「耐湿負荷試験で検出される内部欠陥発生率」が急激に高くなっている。
【0070】
以上、表4には、ニッケルの合計重量が1500gの場合のみを示したが、ニッケルの合計重量が1500g以上かつ3000g未満の範囲においては、表4に示したのと同様の傾向が現れることが確認されている。
【0071】
このように、脱脂工程を設計するにあたって、内部電極に含まれるニッケルの合計重量に応じて、脱脂後の残留炭素量が上述した適正範囲に入るように脱脂工程での条件を決定するようにすれば、その後の量産体制での製造において、高い歩留まりをもって、積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0072】
なお、上述した実験例は、内部電極に含まれる卑金属として、ニッケルを用いた場合について実施したが、たとえば銅のような他の卑金属であっても、同様に酸化という問題に遭遇するので、たとえば銅のような他の卑金属についても、ニッケルの場合と同様の実験結果が得られている。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、脱脂工程を実施するための炉内に投入される複数の生の積層体チップの内部電極に含まれる卑金属の合計重量を求めて、この合計重量に応じて、脱脂工程後の残留炭素の適正な重量比率が得られるように、脱脂工程での条件を決定するようにしているので、脱脂工程を設計するにあたって、その条件を決定するための方針が明確となり、したがって、脱脂工程の設計を能率的に行なうことができる。このことから、上述のように脱脂工程の設計を終えた後、この設計に基づいて、積層セラミックコンデンサを量産するようにすれば、高い歩留まりをもって、積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0074】
この発明において、残留炭素の適正な重量比率を得るための脱脂工程での条件として、脱脂工程において適用される温度条件および/または時間条件を採用すれば、残留炭素の重量比率を調整することが容易である。
【0075】
また、この発明において、脱脂工程を実施するための炉として、0.5〜1.0m3 の範囲の容積のものを用いると、信頼性のより高い設計を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にとって興味ある積層セラミックコンデンサの部品本体をなす積層体チップ1を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層体チップ
3 誘電体セラミック層
4 内部電極
Claims (5)
- 複数の積層された生の誘電体セラミック層と前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成される卑金属を含む内部電極とを備える、生の積層体チップを用意する工程と、生の前記積層体チップを脱脂する工程と、脱脂後の前記積層体チップを焼成する工程とを備える、積層セラミックコンデンサの製造方法における前記脱脂工程を設計する方法であって、
製造しようとする積層セラミックコンデンサの設計を決める工程と、
前記脱脂工程を実施するための炉内に投入される複数の生の前記積層体チップの前記内部電極に含まれる卑金属の合計重量を求める工程と、
前記内部電極に含まれる卑金属の合計重量が50g以上かつ500g未満のときには、前記脱脂工程後の前記積層体チップ全体に対する残留炭素の重量比率が0.20重量%以上かつ0.35重量%未満となるように、前記卑金属の合計重量が500g以上かつ800g未満のときには、前記残留炭素の重量比率が0.35重量%以上かつ0.45重量%未満となるように、前記卑金属の合計重量が800g以上かつ1500g未満のときには、前記残留炭素の重量比率が0.45重量%以上かつ1.05重量%未満となるように、および、前記卑金属の合計重量が1500g以上かつ3000g未満のときには、前記残留炭素の重量比率が1.05重量%以上かつ1.50重量%未満となるように、それぞれ、前記脱脂工程での条件を決定する工程と
を備える、脱脂工程の設計方法。 - 前記脱脂工程での条件は、前記脱脂工程において適用される温度条件および/または時間条件である、請求項1に記載の脱脂工程の設計方法。
- 前記脱脂工程を実施するための前記炉の容積は、0.5〜1.0m3 の範囲にある、請求項1または2に記載の脱脂工程の設計方法。
- 前記内部電極に含まれる卑金属は、ニッケルを含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の脱脂工程の設計方法。
- 前記積層体チップに形成される前記内部電極の積層数は、10〜200の範囲にある、請求項1ないし4のいずれかに記載の脱脂工程の設計方法。
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