JP4135291B2 - 車両制御装置及び記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば無段変速機を備えた車両が、加速状態から減速状態に移行した際に発生するショック等を防止する車両制御装置及び記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、運転者のアクセル操作によらず、自動的に車両の加減速度を制御する自動走行制御装置として、例えば、スロットル開度や変速機の変速比等により、車両の駆動力を制御して、自車速を運転者の設定した目標車速に一致させる定速制御装置が知られている。
【0003】
また、レーザレーダ等で自車両前方に存在する車両(先行車)との車間距離を計測し、その車間距離を安全な車間距離(設定車間距離)に保つ車間距離制御装置が開発されている。例えば、特願平10−281518号には、レーダが検知した前方状況に応じて目標加減速度を設定し、実の加減速度を目標加減速度に高精度に一致させるように、無段変速機の変速比制御する車間距離制御装置が記載されている。
【0004】
この技術は、目標加減速度と実加減速度を一致させるために、無段変速機の変速比を、目標加減速度と車両の走行抵抗に応じて設定するフィードフォワード項と、目標加減速度と実加減速度の偏差を低減するように調整するフィードバック項によって算出するものである。
【0005】
そして、上述した定速制御装置や車間距離制御装置を搭載する車両では、自動的に車両の走行状態が制御されている自動走行制御において、運転者がアクセルを操作した場合、運転者が自らの意思で車両の加減速度を制御したいと解釈し、スロットル開度を運転者のアクセル開度に応じて制御するようにしている。この様な状態を、オーバライド状態と称する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、例えば車間距離制御装置により、自車が先行車に追従している状態であっても、運転者がアクセル操作をすれば、運転者のアクセル開度に応じてスロットル開度を制御するオーバーライド状態となる。
【0007】
このオーバーライド状態にて、例えば、先行車との車間距離が設定車間距離より短くなった場合、車間距離制御装置は、先行車との車間距離を広げるために、減速側の目標減速度を設定する。
しかしながら、スロットルは、運転者のアクセル開度に一致するように制御されるため、自車速は加速し続ける。このため、車間距離が詰まり、車間距離制御装置は、より大きな目標減速度を設定することになる。
【0008】
もし、この状態から、運転者がアクセルを戻す操作をし、それにより自動制御状態に復帰した場合には、車間距離制御装置は、オーバライド状態中に設定された目標減速度に自車速を一致させようとするため、急激にスロットルを全閉に戻し、変速比を上げるように(ダウンシフト側に)急変させて、自車速を急減速させようとする。
【0009】
このように自車速を急減速させると、車両の減速による駆動軸のねじれが発生し、これにより、車両に大きな振動が生じ、運転者にショックを感じさせてしまう。
また、スロットルが全閉になった瞬間に、エンジン制御は燃料カット状態に変化するが、上記駆動軸のねじれと、燃料カットによるエンジンの振動が同期すると、車両に生じる振動及び運転者が感じるショックも、更に大きくなってしまう。
【0010】
特に、変速機が無段変速機である場合には、急激な減速度に一致させるため、変速変化が大きくなり、それに伴ったイナーシャトルクの変化も大きくなるので、振動的な減速度変化となる。そのため、運転者にショックや違和感を感じさせてしまう。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えばオーバライド状態から自動走行制御状態に復帰した場合の様に、大きな加速状態から減速状態に移行した際に発生するショックや違和感などを防止することができる車両制御装置及び記録媒体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明は、車両の駆動力を発生する駆動源(例えばエンジン)と、運転者のアクセル操作と独立に前記駆動源のトルクを制御するトルク制御機構(例えば電子スロットル)と、トルク伝達を調節するトルク伝達機構(例えばクラッチ)と、自動変速機(例えば無段変速機CVTやオートマチックトランスミッションAT等)の変速状態を制御する変速制御機構(例えば変速比制御装置)と、を備えた車両に対する制御を行う車両制御装置に関するものである。
【0013】
特に本発明では、例えば加速度を検出する手段により、実際に車両が加速状態から減速状態に移行したことを検出した場合や、例えばオーバライド状態からのアクセルの開放により、上述した状態の変化を検出した場合などには、トルク制御機構、トルク伝達機構、及び変速制御機構のうち少なくとも1種により、通常における減速状態よりも減速の程度を抑えた減速抑制制御を行う。
【0014】
また、実際の減速状態への移行を検出した場合に以外にも、将来的にその移行が実施されることが予測される場合、すなわち、自動走行制御時に減速指令なされたときにアクセルが操作された場合には、将来アクセルが開放されることを予測し、その場合にも、同様な減速抑制制御を行う。
【0015】
つまり、加速状態から例えばアクセルが開放されて減速状態に移行した場合(又は、それが予測される場合)には、急減速に伴う車軸のねじれによって、急激な減速度変化による車両振動や、運転者のショックや違和感等が発生する。また、燃料カットと同期すると、その影響は大きくなる。本発明では、このようなショックや違和感等が生じないように、減速の程度を抑制するのである。
【0016】
例えば減速度勾配を調整する機構により、減速度勾配を通常より小さく変更する(即ち目標減速度を小さく変更する)。これにより、車軸のねじれが小さくなる上、減速度が大きくなる時期と燃料カットのショックのタイミングをずらすことができるので、車両振動や大きなショック等の発生を防止することができる。
【0017】
尚、この目標減速度を小さめに調整する場合には、例えばアクセルが戻されてから初めて新たな目標減速度を算出するのではなく、速やかな制御のために、減速指令の元でアクセルが操作されている間には、緩やかな減速度勾配を設定し、この減速度勾配に基づいて小さめの目標減速度の演算を実施することが望ましい。
【0018】
また、例えば変速比を制御する機構により、変速比変化を通常より小さくすることにより、イナーシャトルクの急激な変化を抑制し、それによる振動的な減速度変化を抑えることができる。これにより、運転者のショックや違和感を防止することができる。
【0019】
、加速状態から減速状態への移行とは、例えばオーバライド状態からアクセルの開放によりオーバライド状態が解除されるときの様に、上述した車両振動やショックや違和感が生じるような移行により、大きな加速度差が生じる制御の移行状態を示している。
また、本発明は、スロットル弁が電子制御されるいわゆる電子スロットルの制御を示したものである。
ここでは、スロットル開度比較手段による比較の結果、スロットル開度が閾値以上であれば、スロットル開度の変化量を第1の変化量(変化量1)に制限し、スロットル開度が閾値より小であれば、スロットル開度の変化量を第2の変化量(変化量2)に制限する。 以下に、その原理を説明する。
車両が減速するエンジンブレーキ力は、必ずしもスロットルが0になった場合に発生する訳でなく、スロットルが若干開いている状態でも、エンジンの発生トルクにより、ポンプロス等のロストルクが大きいため、エンジンブレーキ力が発生する条件が存在する。
そのような条件のエンジン回転数では、スロットルを全閉にすると、エンジン発生トルクは0となり、且つロストルクも大きくなるため、大きなエンジンブレーキ力が発生する。よって、このようなエンジン動作域で、例えばオーバライド状態が解除され、減速制御が実行される場合、スロットル開度をいきなり全閉に戻すと、過大なエンジンブレーキ力が発生する。
従って、エンジン出力トルク(発生トルクよりロストルクを引いたもの)が、マイナス側に変化する近傍のスロットル開度を閾値に設定し、スロットル開度の変化量を閾値を境に変更することにより、(即ち第1の変化量により)車両が減速を開始するまでの挙動を制御し、(第2の変化量により)減速直後の挙動を制御することができる。
この様に、本発明では、スロットル開度に応じてスロットル開度の変化量を、例えば下記請求項6の発明の様に切り換えることができるので、車両の減速タイミングに応じた適切な制御が可能である。
【0020】
(2)請求項2の発明は、車両の駆動力を発生する駆動源と、運転者のアクセル操作と独立に前記駆動源のトルクを制御するトルク制御機構と、トルク伝達を調節するトルク伝達機構と、自動変速機の変速状態を制御する変速制御機構と、を備えた車両に対する制御を行う車両制御装置において、前記自動変速機は無段変速機であり、車両が加速状態から減速状態に移行したこと、又は自動走行制御時に減速指令されたときにアクセル操作がされたことを検知することにより、加速状態から減速状態に将来的に移行することを検知する減速状態検知手段と、前記減速状態検知手段によって、前記減速状態への移行を検知した場合には、前記トルク制御機構、トルク伝達機構、及び変速制御機構のうち少なくとも 1 種により、前記減速状態を抑制するように制御する減速抑制制御手段と、を備えるとともに、前記減速抑制制御手段は、前記無段変速機の変速比変化を制限する変速比制限手段と、前記スロットル開度の全閉指令を検知する全閉検知手段と、前記無段変速機の変速比を目標変速比に制御する変速制御を実行するまでの実行待機時間を指令する実行待機時間指令手段と、を備え、前記全閉検知手段により前記全閉指令を検知した場合には、前記実行待機時間指令手段により指令する時間を変更することにより、前記減速状態を抑制するように制御することを特徴とする。
特に本発明では、無段変速機の変速比変化を制限する変速比制限手段により、例えばオーバライド解除後の減速制御開始時の制御を行うことができる。
つまり、変速比変化を制限することにより、変速の程度を調節できるので、例えばオーバライド解除後の減速制御開始時には、通常の減速制御時より、変速比変化を低減することにより、減速の程度を抑制することができる。
これにより、急減速に伴う車両振動やショック等の発生を防止できる。
また、本発明では、全閉検知手段により全閉指令を検知した場合には、実行待機時間指令手段により指令する時間を変更することにより、減速状態を抑制するように制御する。 例えばオーバライド解除後の減速制御開始時には、実行待機時間が通常の減速制御時より長くなるように変更する。
本発明では、実行待機時間を長くすることによって、減速開始時に急激な変速比変化による急減速を防止できる。また、この制御により、減速開始時は、スロットルの全閉時のエンジンのロストルク分のエンジンブレーキ力のみで減速するため、減速開始時の減速度を小さくすることができる上、燃料カットと、変速比変化による大きな減速のタイミングをずらすことができる。この結果、減速開始時の急減速によるショックや違和感を抑えることができる。
)請求項の発明は、減速度抑制制御手段を例示したものである。ここでは、例えば自動走行制御の減速指令により設定される通常の減速度勾配より、緩やかな減速度勾配を設定する。これにより、前記請求項1又は2と同様な効果を奏する。
【0021】
)請求項の発明は、減速度抑制制御手段を例示したものである。
ここでは、例えば自動走行制御の減速指令により設定される通常の目標減速度より、小さめの目標減速度を設定する。これにより、前記請求項1又は2と同様な効果を奏する。
【0022】
)請求項の発明は、スロットル弁が電子制御されるいわゆる電子スロットルの制御を例示したものである。
ここでは、スロットル開度比較手段による比較の結果、スロットル開度が閾値以上であれば、スロットル開度の変化量を第1の変化量(変化量1)に制限し、スロットル開度が閾値より小であれば、スロットル開度の変化量を第2の変化量(変化量2)に制限する。
【0026】
なお、本発明の原理については、前記請求項2の発明の説明の際に説明したが、本発明では、スロットル開度に応じてスロットル開度の変化量を、例えば下記請求項の発明の様に切り換えることができるので、車両の減速タイミングに応じた適切な制御が可能である。
)請求項の発明では、第1の変化量と第2の変化量の関係を例示している。
【0027】
上述した様に、第1の変化量により、車両が減速状態に移行する挙動を制御し、第2の変化量により、減速開始直後の車両挙動を制御する。
第1の変化量を大きく設定すると、車両がすばやく減速状態に移行し、運転者がアクセルを放したにもかかわらず車両が減速しない空走間を防止できる。
【0028】
また、第2の変化量を小さく設定することにより、車両の減速度の変化を小さくすることができ、急減速やそれに伴うショックを防止できる。
従って、第1の変化量>第2の変化量が成り立つように設定することにより、空走感がなく、且つ車軸のねじれを小さくでき、更にエンジンの燃料カットとのタイミングをずらし、振動的な減速度変化やショック等の発生を抑えることができる。
【0029】
)請求項の発明では、閾値をエンジン回転数に応じて変更する。
上述した様に、(エンジン発生トルクよりロストルクが上回って)エンジンブレーキ力が発生するスロットル開度は、エンジン回転数により異なる。
従って、本発明では、エンジン回転数に応じて前記閾値を変更することにより、すばやい減速状態への移行を実現するとともに、車軸のねじれを小さくでき、更にエンジンの燃料カットとのタイミングをずらし、振動的な減速度変化やショック等の発生を抑えることができる。
【0030】
)請求項の発明では、閾値を変速比に応じて変更する。
通常、車両は、エンジンと直列に変速機を配置しており、この変速機の変速比は車速が高いほどHi側(変速比が小さい側)に変速される。
エンジンブレーキ力は、エンジン単体のブレーキ力を変速機で増幅した値で決まるため、変速比が小さい側では、エンジン単体でのブレーキ力が同じでも、車両としてのエンジンブレーキ力が小さくなる。
【0031】
従って、前記閾値が同じであっても、変速比がHi側に存在すると、変化量(第1の変化量)を大きくしてすばやくスロットル開度を戻しても、車両のエンジンブレーキ力が弱く、すばやい減速状態ができずに、空走感等の問題が発生する。
【0032】
そこで、本発明では、変速比に応じて閾値を変更することにより、変速比が小さくエンジンブレーキ力が弱い場合でも、すばやい減速状態への移行を実現することができ、しかも、車軸のねじれを小さくでき、更にエンジンの燃料カットとのタイミングをずらし、振動的な減速度変化やショック等の発生を抑えることができる。
【0033】
)請求項の発明では、閾値を車速に応じて変更する。
上述した様に、通常、車両はエンジンと直列に変速機を配置しており、この変速機の変速比は車速が大きいほどHi側に変速される。また、エンジンブレーキ力は、エンジン単体のブレーキ力を変速機で増幅した値で決まるため、変速比が小さい側では、エンジン単体でのブレーキ力が同じでも、車両としてのエンジンブレーキ力が小さくなる。
【0034】
しかしながら、例えばアダプティブクルーズコントロールやナビ協調制御のような自動走行制御では、安全のために、決められたポイントまでに減速を終了させなければならない場合がある。
このような制御の場合には、自車速が高いほど決められたポイントに近づく時間が短く、すばやい減速状態への移行が望まれる。
【0035】
そこで、本発明では、車速に応じて閾値を変更することにより、車速に応じて、すばやい減速状態への移行を実現することと、車軸のねじれを小さくし、更に燃料カットのタイミングとをずらし、振動的な減速度変化やショック等の発生を抑えることの両立ができる。
【0036】
10)請求項10の発明は、無段変速機における制御を示している。
上述した様に、無段変速機の変速比変化を制限する変速比制限手段により、例えばオーバライド解除後の減速制御開始時の制御を行うことができる。
つまり、変速比変化を制限することにより、変速の程度を調節できるので、例えばオーバライド解除後の減速制御開始時には、通常の減速制御時より、変速比変化を低減することにより、減速の程度を抑制することができる。
【0037】
これにより、急減速に伴う車両振動やショック等の発生を防止できる。
11)請求項11の発明は、カットオフ周波数(フィルタのゲインが減衰し始める周波数)が低いほど、高周波(急激な)のフィルタ入力値変化に対する出力値変化が小さくなる周波数フィルタの特徴を利用したものである。
【0038】
本発明では、例えばオーバライド解除後の減速制御開始時に、フィルタのカットオフ周波数を通常の減速制御時より低くするように、周波数フィルタのカットオフ周波数を変更する。
これにより、例えばオーバライド解除後の減速開始時には、変速比変化を小さくすることができるので、車両が急減速することを防止でき、ショックや違和感を抑えることができる。
【0039】
12)請求項12の発明では、例えばオーバライド解除後の減速開始時には、目標変速比の変化量を通常の減速制御時より小さくするように、変化量リミッタのリミッタ値を変更する。
これにより、例えばオーバライド解除後の減速開始時には、変速比変化を小さくすることができ、車両の急減速を防止でき、ショックや違和感を抑えることができる。
【0040】
13)請求項13の発明では、例えばオーバライド解除後の減速制御開始時には、実変速比の応答が遅くなるように、通常の減速制御時より制御パラメータを変更する。
本発明では、減速開始時に実の変速比変化を遅くできるため、急減速を防止でき、ショックや違和感を抑えることができる。
【0041】
14)請求項14の発明では、全閉検知手段により全閉指令を検知した場合には、実行待機時間指令手段により指令する時間を変更することにより、減速状態を抑制するように制御する。
例えばオーバライド解除後の減速制御開始時には、実行待機時間が通常の減速制御時より長くなるように変更する。
【0042】
上述した様に、本発明では、実行待機時間を長くすることによって、減速開始時に急激な変速比変化による急減速を防止できる。また、この制御により、減速開始時は、スロットルの全閉時のエンジンのロストルク分のエンジンブレーキ力のみで減速するため、減速開始時の減速度を小さくすることができる上、燃料カットと、変速比変化による大きな減速のタイミングをずらすことができる。この結果、減速開始時の急減速によるショックや違和感を抑えることができる。
【0043】
15)請求項15の発明では、例えばオーバライド解除後の減速制御開始時は、クラッチの滑り量を通常の減速制御時よりも大きくなる様に制御する。
つまり、減速時にクラッチを滑らせると、減速トルクの一部がクラッチ部分で消費されるため、タイヤに伝わる減速トルクを減らすことができる。それにより、急減速を防止することができ、ショックや違和感を抑えることができる。
【0044】
16)請求項16の発明は、いわゆる車両の自動走行制御を行う自動走行装置を備えている。従って、自動走行において、オーバライド解除後の減速制御開始時には、急減速を防止でき、ショックや違和感を抑えることができる。
【0045】
17)請求項17の発明は、自動走行の制御にて減速指令がなされている場合に、運転者によるアクセル操作が開放されたとき、即ち、オーバライド解除後の減速制御時の制御を示している。
この様なオーバライド解除後には、減速指令による減速を、通常の減速制御時よりも抑制する。これにより、急減速を防止し、ショックを違和感を抑えることができる。
【0046】
18)請求項18の発明は、自車の車速を所定の設定値に制御するクルーズコントロール、いわゆる定速走行制御を示している。
19)請求項19の発明は、レーダレーダ等を利用して先行車との車間距離を制御するアダプティブクルーズコントロール、いわゆる車間距離制御を示している。
【0047】
このアダプティブクルーズコントロールとしては、例えば先行車と所定の車間距離をあけて追従する追従制御が挙げられる。
20)請求項20の発明は、自動走行の制御として、ナビゲーションデータに基づいた制御を行うナビ協調制御を示している。
【0048】
このナビゲーションデータとしては、例えばCD−ROM等の記憶装置に記憶された道路情報などや、車両とは別の道路側の装置から送信される各種の情報が挙げられる。
これにより、例えば道路のカーブや高低変化に応じて自動的に減速を行う場合において、オーバライド解除後の減速制御開始時に、急減速を防止でき、ショックや違和感を抑えることができる。
【0049】
21)請求項21の発明は、前記車両制御装置による制御を実行させるプログラムを記憶しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
この記録媒体としては、マイクロコンピュータとして構成される電子制御装置、マイクロチップ、フロッピィディスク(登録商標)、ハードディスク、光ディスク等の各種の記録媒体が挙げられる。
【0050】
つまり、上述した車両制御装置の制御を実行させることができるプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば、特に限定はない。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両制御装置及び記録媒体の好適な実施の形態を、例(実施例)を挙げて図面に基づいて詳細に説明する。
(実施例1)
a)まず、本実施例の車両制御装置の構成を説明する。
【0052】
本実施例の車両制御装置は、オーバーライド状態から減速状態に移行する際に、その減速の程度を抑制する減速抑制制御を行うものである。
図1に示す様に、車両には、動力源であるエンジンEと、エンジンEで発生した駆動力を調節して車輪側に伝達する無段変速機(CVT)1と、駆動軸トルクなどを制御する車両制御装置3等を備えている。
【0053】
前記エンジンEは、アクセルペダル4の操作と独立して制御可能な電子スロットル5を備え、この電子スロットル5の弁開度(スロットル開度)に応じた駆動力を出力する。
前記無段変速機1は、可動円錐盤7及び固定円錐盤9からなる駆動側のプライマリプーリ11(駆動プーリ)と、可動円錐盤13及び固定円錐盤15からなる従動側のセカンダリプーリ17(従動プーリ)と、駆動側のプライマリプーリシリンダ19と、従動側のセカンダリプーリシリンダ21と、プライマリプーリ11とセカンダリプーリ17の間に掛け渡された金属ベルト23と、エンジンEにより駆動されるオイルポンプ25と、プライマリ油圧制御アクチュエータ27(PA)と、セカンダリ油圧制御アクチュエータ29(SA)と、トルク伝達機構31を備えている。
【0054】
前記トルク伝達機構31は、エンジンEと無段変速機1との間にて、図示しないが、トルクコンバータとロックアップクラッチが並列に接続された構造を有するロックアップクラッチ付きトルクコンバータを有する。
このうち、ロックアップクラッチは、クラッチ油圧制御装置34の油圧(クラッチリリース圧)により、その締結力(従ってスリップの程度)が調節される。
【0055】
尚、前記トルク伝達機構31としては、油圧で制御されるもの以外に、電磁粉を利用した電磁クラッチ等を採用することができる。
前記車両制御装置3は、電子制御回路からなるコントロールユニット(以下CUとも記す)として、スロットル開度を制御する電子スロットルCU33と、変速比及びクラッチ32bのスリップを制御する駆動力CU35を備え、更に、車両制御装置3には、自動走行を制御(クルーズコントロール)するクルーズCU37が接続されている。尚、電子スロットルCU33と駆動力CU35の間は通信ライン39により接続され、駆動力CU35とクルーズCU37の間は通信ライン41により接続されている。
【0056】
前記電子スロットルCU33には、実際のスロットル開度θを検出するスロットル開度センサ43と、アクセルペダルの踏込量(アクセル開度)を検出するアクセルペダル開度センサ45が接続されている。
また、駆動力CU35には、プライマリプーリ11の回転数(プライマリ回転数NP)を検出するプライマリ回転センサ47と、セカンダリプーリ17の回転数(セカンダリ回転数NS)を検出するセカンダリ回転センサ49と、エンジンEの回転数NEを検出するエンジン回転センサ51と、トルク伝達機構31の入力軸回転数を検出する入力軸回転数センサ52と、トルク伝達機構31の出力軸回転数を検出する出力軸回転数センサ54が接続されている。
【0057】
更に、クルーズCU37には、自車両の速度を検出する車速センサ56と、先行車との車間距離や先行車の速度を検出するFMCWレーダ53と、道路マップを記憶するとともに自車両の位置を示して走行の案内を行うナビゲーション装置55が接続されている。
【0058】
そして、前記各CU33,35,37は、主として下記(1) (3)の制御を行う。
(1)前記電子スロットルCU33は、CPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成され、通信ライン39から得る駆動力CU35からの情報と、アクセルペダル開度センサ45の出力と、スロットル開度センサ43の出力を用いて、電子スロットル5の弁開度を制御する。
【0059】
具体的には、通信ライン39から得られるクルーズコントロール作動信号が、クルーズコントロールの非作動中を示す場合には、アクセルペダル開度センサ45の検出データであるアクセルペダル開度に一致するスロットル開度を電子スロットル5に指令する。また、クルーズコントロール作動信号が、クルーズコントロールの作動中を示す場合には、通信ライン39から得られるクルーズコントロール作動時電子スロットル開度に一致するスロットル開度を電子スロットル5に指令する。
【0060】
(2)前記駆動力CU35は、CPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成され、前記プライマリ回転センサ47と、セカンダリ回転センサ49と、エンジン回転センサ51の検出データと、(スロットル開度センサ43により検出され通信ライン39から得られる)スロットル開度θの検出データと、(通信ライン41から得られる)クルーズコントロール作動信号と、目標加減速度等に基づいて、目標変速比を設定し、この目標変速比となるように、プライマリ油圧制御アクチュエータ27を調整して、オイルポンプ25にて発生しプライマリプーリシリンダ19に供給される油圧を制御する。
【0061】
それとともに、クルーズコントロール中の電子スロットル5の弁開度(クルーズコントロール作動時電子スロットル開度)を設定し、その弁開度を電子スロットルCU33に指令する。
また、この駆動力CU35は、金属ベルト23がスリップを生じないように、セカンダリ油圧制御アクチュエータ29を調整して、オイルポンプ25にて発生しセカンダリプーリシリンダ21に供給される油圧を制御する。
【0062】
更に、駆動力CU35は、加速状態から減速状態に移行する際に、クラッチ油圧制御装置34にクラッチ制御信号を出力し、クラッチ32bの締結力(従ってスリップの状態)を調節して、駆動軸トルクを制限する制御を行う。
尚、駆動力Cu35では、前記スリップの調節による駆動軸トルク制限制御以外に、例えば燃料カットや点火時期の遅角等を行うことにより、駆動軸トルクを制限する制御などの各種の制御を行うことができる。
【0063】
(3)前記クルーズCU37は、CPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成され、車速センサ56やレーダ53やナビゲーション装置55からの情報により、先行車との車間距離や先行車と自車両との相対速度を求め、先行車に追従する追従制御や、先行車との車間距離を所定値に保つ車間制御や、定速走行を行う定速制御等のクルーズコントロールを行う。
【0064】
従って、例えば先行車との車間距離が所定以上に小さくなるような場合には、駆動力CU35に対して、(クルーズコントロールを実施していることを示す)クルーズコントロール作動信号、(車両の目標とする加減速度である)目標加減速度、クルーズ加速時スロットル開度指令値等を出力する。
【0065】
b)次に、上述した構成による本実施例の制御処理を説明する。
(1)本実施例では、車両制御装置3は、車体振動を誘発するトルク変化、運転者にショックや違和感を起こす急減速を防止するため、下記図2のブロック図に示す制御系を有する。
【0066】
図2に示す様に、クルーズCU37から、走行状態に応じた信号(例えば減速を指令する信号)が、車両制御装置3に入力するとともに、各種の車両センサから、車速、エンジン回転数、油温、水温等のセンサ信号が、車両制御装置3に入力する。
【0067】
また、アクセルペダル開度センサ45からのアクセル開度を示す信号は、オーバライド判定部3aに入力し、このオーバライド判定部により、(クルーズCU37からの減速指令時において)アクセルペダル4が操作されたオーバライド状態であるか否かや、オーバライド状態からアクセルペダル4が戻されたオーバライド解除状態であるか否かが判定される。
【0068】
そして、車両制御装置3では、クルーズCU37からの減速指令時や、オーバライド判定部3aによる判定結果に基づいて、各種のアクチュエータに対して制御信号を出力する。
例えば減速指令を満たす駆動軸トルクを実現するように、スロットル5等のエンジン制御器61に制御信号を出力する。また、所望の変速比を実現するように、セカンダリ油圧制御アクチュエータ29等の変速制御器63に制御信号を出力する。更に、ロックアップクラッチのスリップ量を調節するように、クラッチ油圧制御装置34等の伝達装置制御器65等に制御信号を出力する。
【0069】
(2)次に、上述した制御系による制御処理を説明する。図3のフローチャートに示す様に、ステップ100では、クルーズCU37からの減速指令があるか否かを判定する。
例えばアクティブクルーズコントロールの実施中に、車間距離が設定値より小さくなった場合には、車両制御装置(詳しくは駆動力CU35)3に対して減速指令を出力するので、この様な減速指令があるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ110に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0070】
ステップ110では、運転者によりアクセルペダル4が戻されたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ120に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
つまり、クルーズCU37からの減速指令がある場合であっても、運転者によるアクセルペダル4が踏まれている場合には、運転者の操作の方が優先した状態(オーバライド状態)となっているが、ここでは、その様なオーバライドによる加速状態からアクセルペダル4が戻されたオーバライド解除状態に変化したか否かを判定するのである。
【0071】
ステップ120では、オーバライド解除後で、しかも、クルーズCU37からの減速指令があるので、ここでは、通常の減速状態よりも減速の程度を抑制する減速抑制制御を行う。
具体的には、オーバライド状態において設定された目標減速度、即ちアクセル操作とは別にクルーズCU37により設定された大きめの目標減速度を、より小さな目標減速度に変更する。そして、この小さな目標減速度を達成するために、例えばエンジン制御器61によってスロットル開度をより小さくしたり、変速制御器63によって変速比をより小さくするなどの制御を行う。
【0072】
c)次に、本実施例の効果を確認するために行った実験例について説明する。
(1)図4(a)は、運転者がオーバライド状態からアクセルを戻す操作をした後に減速した場合において、目標減速度の調節を行って減速抑制制御を実施した実施例と、そうしない場合の比較例を記載したものである。
【0073】
ここでは、アクセル開度をa1、目標減速度をb1、調整した目標減速度をc1、目標減速度b1に基づいて制御した場合の実減速度をd1、調整した目標減速度c1に基づいて制御した場合の実減速度をe1で示している。
図4(a)から明らかな様に、比較例(実線b1、破線d1参照)では、目標加減速度が減速を指令しているにもかかわらず、アクセル操作により加速するため、目標減速度b1がより大きくなり、オーバライド解除後には急減速を指令していることが分かる。
【0074】
従って、アクセル操作が解除されると、その大きな目標減速度b1に基づいて急減速することで、上述した大きなトルク変化が発生し、図の破線円内の実減速度d1に示すような大きなショックが発生する。
しかし、本実施例(実線c1、破線e1参照)では、(アクセル操作中から)目標減速度c1を調整しているので、アクセル操作が解除された場合でも、実減速度e1に示す様にそれほど急減速しない。そのため、減速ショックが発生しない。
【0075】
(2)図4(b)は、運転者がオーバライド状態からアクセルを戻す操作をした後に減速した場合において、無段変速機1の変速比の調整を行って減速抑制制御を実施した実施例と、そうしない場合の比較例を記載したものである。
ここでは、アクセル開度をa2、目標減速度をb2、目標減速度b2に一致する様に変速比を動かした場合の変速比をc2、その場合の実減速度をd2、調整した変速比をe2、その場合の実減速度をf2で示している。
【0076】
図4(b)から明らかな様に、比較例(実線b2、c2、破線d2参照)では、アクセル開度a2が戻され車両が加速するまでは、目標減速度b2は大きな減速度を示す。
従って、アクセル操作が解除された場合に、目標減速度b2に一致する様に無段変速機1の変速比を制御すると、図の破線円内の実減速度d2に示すように大きなショックが発生する。
【0077】
しかし、本実施例(実線e2、破線f2参照)では、変速比を急激に上げないように調整するので、実減速度f2に示す様に急減速をしない。そのため、減速ショックが発生しない。
この様に、本実施例では、オーバライド解除後の減速制御開始時には、例えば目標減速度を通常より低減するようにして、通常の減速制御より減速の程度を抑制するので、車両振動を防止するとともに、急減速を防止し、運転者のショックや違和感を防止することができる。
【0078】
尚、本実施例では、クルーズCU37による減速指令がある場合に、アクセルペダル4が戻された時に、減速抑制制御を実施するようにしたが、クルーズCU37による減速指令がある場合に、アクセルペダル4が踏まれている場合には、その後アクセルペダル4が戻されることを予測して、予め減速抑制制御に使用する目標減速度などの制御値を求めておいてもよい。
【0079】
これにより、アクセルペダル4が戻された時に、より速やかに減速抑制制御を開始できるという利点がある。
(実施例2)
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
【0080】
ここでは、目標スロットル開度を変更して減速抑制制御を行う場合について説明する。
(1)まず、本実施例の車両制御装置における制御系を、図5のブロック図に基づいて説明する。
【0081】
本実施例では、図5に機能的に示す様に、車両制御装置3は、クルーズCU37からの減速指令を実現できる目標減速度を計算する目標減速度演算部3bと、計算された目標減速度を実現する目標スロットル開度を計算する目標スロットル開度演算部3cと、運転者のアクセル開度を検知し、オーバライド状態及びオーバライド状態の終了を判定するオーバライド判定部3aと、オーバライド状態の判定結果に応じて、スロットル開度の変化量を調節してスロットル開度を制御するスロットル開度調整部3dとを備えている。
【0082】
(2)次に、上述した構成により制御処理を説明する。
図6のフローチャートに示す様に、ステップ200では、オーバライド終了後か否か、即ち、クルーズCU37からの減速指令がある場合に、アクセルペダル4が戻されたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ210に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0083】
ステップ210では、目標スロットル開度演算部3cにより指令された(目標スロットル開度である)スロットル開度指令値TTHBと、1サイクル前のスロットル開度指令値TTHn-1との差をdTHとして設定する。
続くステップ220では、スロットル開度指令値TTHBが(予め設定された固定の)閾値より大であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ240に進み、一方否定判断されるとステップ230に進む。
【0084】
ステップ240では、スロットル開度指令値TTHBが大きいので、スロットル開度の変化量を制限するために、変化量1をスロットル開度の変化量として設定する。つまり、この変化量1とは、スロットル開度の変化量が過大にならないように設定されるリミッタである。
【0085】
一方、ステップ230では、スロットル開度指令値TTHBがそれほど大きくないので、同様に、スロットル開度の変化量を制限するために、変化量2をスロットル開度の変化量として設定する。ここでは、変化量1>変化量2に設定されている。
【0086】
続くステップ250では、前記スロットル開度指令値の偏差dTHが、前記ステップ230又は240にて設定された変化量以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ270に進み、一方否定判断されるとステップ260に進む。
【0087】
ステップ270では、偏差dTHは、設定された変化量(変化量リミッタ)以上と大きいので、あまり大きな減速度とならないように、1サイクル前のスロットル開度指令値TTHn-1に変化量リミッタを加えた値を、新たなスロットル開度指令値TTHとして設定し、一旦本処理を終了する。
【0088】
一方、ステップ260では、偏差dTHは変化量リミッタより小さいので、即ちあまり大きな減速度とならないので、目標スロットル開度演算部3cにより指令されたスロットル開度指令値TTHBを、そのまま新たなスロットル開度指令値TTHとして設定し、一旦本処理を終了する。
【0089】
この様に、本実施例では、スロットル開度指令値TTHBを固定の閾値と比較して、スロットル開度の変化量を制限するとともに、スロットル開度指令値の偏差dTHに応じて、あまり大きな減速度とならない様に、新たなスロットル開度指令値TTHを設定している。
【0090】
よって、運転者のアクセルペダル4を戻す操作後(オーバライド解除後)は、すばやく減速状態に移行できるとともに、減速状態になると、通常時より減速度が小さくなり、急激な加減速変化による車両振動や、運転者のショックや違和感を防止できる。
(実施例3)
次に、実施例3について説明するが、前記実施例2と同様な内容の説明は省略する。
【0091】
ここでは、エンジン回転数に基づいて目標スロットル開度を変更して、減速抑制制御を行う実施例について説明する。
尚、本制御系は、前記実施例2の図3と同様であるので、その説明は省略し、制御処理について説明する。
【0092】
図7のフローチャートに示す様に、ステップ300では、オーバライド終了後か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ310に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
ステップ310では、目標スロットル開度演算部3cにより指令された(目標スロットル開度である)スロットル開度指令値TTHBと、1サイクル前のスロットル開度指令値TTHn-1との差をdTHとして設定する。
【0093】
続くステップ320では、図8のマップに基づいて、エンジン回数数から閾値を設定する。このマップとは、エンジン回転数が大きいほど閾値が大きくなるマップである。
続くステップ330では、スロットル開度指令値TTHBが閾値より大であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ350に進み、一方否定判断されるとステップ340に進む。
【0094】
ステップ350では、スロットル開度指令値TTHBが大きいので、スロットル開度の変化量を制限するために、変化量1をスロットル開度の変化量として設定する。
一方、ステップ340では、スロットル開度指令値TTHBがそれほど大きくないので、同様に、スロットル開度の変化量を制限するために、変化量2をスロットル開度の変化量として設定する。ここでは、変化量1>変化量2に設定されている。
【0095】
続くステップ360では、前記スロットル開度指令値の偏差dTHが、前記ステップ340又は350にて設定された変化量以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ380に進み、一方否定判断されるとステップ370に進む。
【0096】
ステップ380では、偏差dTHは、設定された変化量(変化量リミッタ)以上と大きいので、あまり大きな減速度とならないように、1サイクル前のスロットル開度指令値TTHn-1に変化量リミッタを加えた値を、新たなスロットル開度指令値TTHとして設定し、一旦本処理を終了する。
【0097】
一方、ステップ370では、偏差dTHは変化量リミッタより小さいので、即ちあまり大きな減速度とならないので、目標スロットル開度演算部3cにより指令されたスロットル開度指令値TTHBを、そのまま新たなスロットル開度指令値TTHとして設定し、一旦本処理を終了する。
【0098】
この様に、本実施例では、エンジン回数数に応じて閾値を設定するとともに、スロットル開度指令値TTHBをその閾値と比べて、スロットル開度の変化量を制限し、更に、スロットル開度指令値の偏差dTHに応じて、あまり大きな減速度とならない様に、新たなスロットル開度指令値TTHを設定している。
【0099】
特に本実施例では、エンジン回転数が高いほど閾値を高くすることによって変化量を小さめに設定して、スロットル開度指令値TTHを大きく設定している。尚、エンジン回転数が低い場合はその逆である。
よって、エンジン回転数が高く、エンジンブレーキが弱い場合でも、運転者のアクセルペダル4を戻す操作後(オーバライド解除後)は、すばやく減速状態に移行できる。それとともに、減速状態になると、通常時より減速度が小さくなり、急激な加減速変化による車両振動や、運転者の違和感を防止できる。
(実施例4)
次に、実施例4について説明するが、前記実施例2と同様な内容の説明は省略する。
【0100】
ここでは、変速比に基づいて目標スロットル開度を変更して、減速抑制制御を行う実施例について説明する。
尚、本制御系は、前記実施例2の図3と同様であるので、その説明は省略し、制御処理について説明する。
【0101】
図9のフローチャートに示す様に、ステップ400では、オーバライド終了後か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ410に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
ステップ410では、目標スロットル開度演算部3cにより指令された(目標スロットル開度である)スロットル開度指令値TTHBと、1サイクル前のスロットル開度指令値TTHn-1との差をdTHとして設定する。
【0102】
続くステップ420では、図10のマップに基づいて、変速比から閾値を設定する。このマップは、変速比がHi側ほど閾値が小さくなるマップである。
続くステップ430では、スロットル開度指令値TTHBが閾値より大であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ450に進み、一方否定判断されるとステップ440に進む。
【0103】
ステップ450では、スロットル開度指令値TTHBが大きいので、スロットル開度の変化量を制限するために、変化量1をスロットル開度の変化量として設定する。
一方、ステップ440では、スロットル開度指令値TTHBがそれほど大きくないので、同様に、スロットル開度の変化量を制限するために、変化量2をスロットル開度の変化量として設定する。ここでは、変化量1>変化量2に設定されている。
【0104】
続くステップ460では、前記スロットル開度指令値の偏差dTHが、前記ステップ440又は350にて設定された変化量以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ480に進み、一方否定判断されるとステップ470に進む。
【0105】
ステップ480では、偏差dTHは、設定された変化量(変化量リミッタ)以上と大きいので、あまり大きな減速度とならないように、1サイクル前のスロットル開度指令値TTHn-1に変化量リミッタを加えた値を、新たなスロットル開度指令値TTHとして設定し、一旦本処理を終了する。
【0106】
一方、ステップ470では、偏差dTHは変化量リミッタより小さいので、即ちあまり大きな減速度とならないので、目標スロットル開度演算部3cにより指令されたスロットル開度指令値TTHBを、そのまま新たなスロットル開度指令値TTHとして設定し、一旦本処理を終了する。
【0107】
この様に、本実施例では、変速比に応じて閾値を設定するとともに、スロットル開度指令値TTHBをその閾値と比べて、スロットル開度の変化量を制限し、更に、スロットル開度指令値の偏差dTHに応じて、あまり大きな減速度とならない様に、新たな目標スロットル開度TTHを設定している。
【0108】
特に本実施例では、変速比が小さい(Hi側)ほど閾値を大きくすることによって変化量を小さめに設定して、スロットル開度指令値TTHを大きく設定している。尚、変速比がLow側の場合はその逆である。
この制御によって、変速比がHi側にあり、エンジンブレーキが弱い場合でも、運転者のアクセルペダル4を戻す操作後(オーバライド解除後)は、すばやく減速状態に移行できる。それとともに、減速状態になると、通常時より減速度が小さくなり、急激な加減速変化による車両振動や、運転者の違和感を防止できる。
(実施例5)
次に、実施例5について説明するが、前記実施例2と同様な内容の説明は省略する。
【0109】
ここでは、車速に基づいて目標スロットル開度を変更して、減速抑制制御を行う実施例について説明する。
尚、本制御系は、前記実施例2の図3と同様であるので、その説明は省略し、制御処理について説明する。
【0110】
図11のフローチャートに示す様に、ステップ500では、オーバライド終了後か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ510に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
ステップ510では、目標スロットル開度演算部3cにより指令された(目標スロットル開度である)スロットル開度指令値TTHBと、1サイクル前のスロットル開度指令値TTHn-1との差をdTHとして設定する。
【0111】
続くステップ520では、図12のマップに基づいて、車速から閾値を設定する。このマップは、車速が大きくなるほど閾値が小さくなるマップである。
続くステップ530では、スロットル開度指令値TTHBが閾値より大であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ550に進み、一方否定判断されるとステップ540に進む。
【0112】
ステップ550では、スロットル開度指令値TTHBが大きいので、スロットル開度の変化量を制限するために、変化量1をスロットル開度の変化量として設定する。
一方、ステップ540では、スロットル開度指令値TTHBがそれほど大きくないので、同様に、スロットル開度の変化量を制限するために、変化量2をスロットル開度の変化量として設定する。ここでは、変化量1>変化量2に設定されている。
【0113】
続くステップ560では、前記スロットル開度指令値の偏差dTHが、前記ステップ540又は350にて設定された変化量以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ580に進み、一方否定判断されるとステップ570に進む。
【0114】
ステップ580では、偏差dTHは、設定された変化量(変化量リミッタ)以上と大きいので、あまり大きな減速度とならないように、1サイクル前のスロットル開度指令値TTHn-1に変化量リミッタを加えた値を、新たなスロットル開度指令値TTHとして設定し、一旦本処理を終了する。
【0115】
一方、ステップ570では、偏差dTHは変化量リミッタより小さいので、即ちあまり大きな減速度とならないので、目標スロットル開度演算部3cにより指令されたスロットル開度指令値TTHBを、そのまま新たなスロットル開度指令値TTHとして設定し、一旦本処理を終了する。
【0116】
この様に、本実施例では、車速に応じて閾値を設定するとともに、スロットル開度指令値TTHBをその閾値と比べてスロットル開度の変化量を制限し、更に、スロットル開度指令値の偏差dTHに応じて、あまり大きな減速度とならない様に、新たな目標スロットル開度TTHを設定している。
【0117】
特に本実施例では、車速が高い場合には閾値を小さくすることによって変化量を大きめに設定して、スロットル開度指令値TTHを大きく設定している。尚、車速が低い場合にはその逆である。
この制御によって、車速が大きくすばやい減速への移行が要求される場合に、運転者のアクセルペダル4を戻す操作後(オーバライド解除後)の、すばやい減速状態への移行ととともに、減速状態になると、通常時より減速度が小さくなり、急激な加減速変化による車両振動及び運転者の違和感の防止の両立ができる。(実施例6)
次に、実施例6について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
【0118】
ここでは、変速比の変化を小さくして減速抑制制御を行う実施例について説明する。
(1)まず、本実施例の車両制御装置における制御系を、図13のブロック図に基づいて説明する。
【0119】
本実施例では、図13に機能的に示す様に、車両制御装置3は、クルーズCU37からの減速指令を実現できる目標減速度を計算する目標減速度演算部3bと、計算された目標減速度を実現するために目標変速比を演算する目標変速比演算部3eと、運転者のアクセル開度を検知し、オーバライド状態及びオーバライド状態の終了を判定するオーバライド判定部3aとを備えている。
【0120】
ここで、目標減速比演算部3eは、オーバライド解除後には減速度が小さくなるように、目標変速比を小さく設定する。
(2)次に、上述した構成による制御処理を説明する。図14のフローチャートに示す様に、ステップ600では、クルーズCU37からの減速指令があるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ610に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0121】
ステップ610では、クルーズCU37からの減速要求を、目標値(駆動軸トルク又は減速度)に変換する。
続くステップ620では、目標値から目標変速比を算出する。
続くステップ630では、運転者によりアクセルペダル4が戻されたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ640に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0122】
ステップ640では、オーバライド解除後で、しかも、クルーズCU37からの減速指令があるので、ここでは、通常の減速状態よりも減速の程度を抑制する減速抑制制御を行う。
具体的には、オーバライド状態において設定された大きめの目標変速比を、より小さな目標変速比に変更する。そして、この小さいな目標変速比を達成するために、変速制御器63によって変速比をより小さくするなどの制御を行う。
【0123】
この様に、本実施例では、オーバライド解除後の減速制御開始時には、通常の減速制御より目標減速比を小さめに設定するので、イナーシャトルク及び急激な加速度変化による車両振動を防止し、運転者のショックや違和感を低減することができる。
(実施例7)
次に、実施例7について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
【0124】
ここでは、変速比制御に用いる周波数フィルタのカットオフ周波数を変更することにより、減速抑制制御を行う実施例について説明する。
(1)まず、本実施例の車両制御装置における制御系を、図15のブロック図に基づいて説明する。
【0125】
本実施例では、図15に機能的に示す様に、車両制御装置3は、クルーズCU37からの減速指令を実現できる目標減速度を計算する目標減速度演算部3bと、計算された目標減速度を実現するために目標変速比を演算する目標変速比演算部3eと、運転者のアクセル開度を検知し、オーバライド状態及びオーバライド状態の終了を判定するオーバライド判定部3aとを備えている。
【0126】
また、前記目標減速比演算部3eは、目標変速比マップ3e1と周波数フィルタ3e2とを備えている。
(2)次に、上述した構成による制御処理を説明する。
図16のフローチャートに示す様に、ステップ700では、クルーズCU37からの減速指令があるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ710に進み、一方否定判断されるとステップ750に進む。
【0127】
ステップ710では、クルーズCU37からの減速要求を、目標値(駆動軸トルク又は減速度)に変換する。
続くステップ720では、目標値から目標変速比を算出する。
続くステップ730では、運転者によりアクセルペダル4が戻されたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ740に進み、一方否定判断されるとステップ750に進む。
【0128】
ステップ740では、オーバライド解除後で、しかも、クルーズCU37からの減速指令があるので、ここでは、通常の減速状態よりも減速の程度を抑制する減速抑制制御を行う。
具体的には、周波数フィルタのカットオフ周波数を低周波側に変更する処理を行う。これにより、周波数フィルタの高周波の利得(出力/入力)が小さくなるため、変速比の急激な変化を防止できる。
【0129】
続くステップ750では、実際に目標変速比の周波数フィルタ処理を実施し、一旦本処理を終了する。
この様に、本実施例では、オーバライド解除後は、そうでない場合と比べて、カットオフ周波数を低くして高周波の利得を小さくすることにより、変速比の急変を防止できる。これにより、減速度が低減するので、急激な加速度変化による車両振動を防止し、運転者のショックや違和感を低減することができる。
(実施例8)
次に、実施例8について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
【0130】
ここでは、目標変速比の変化量を制限することにより、減速抑制制御を行う実施例について説明する。
(1)まず、本実施例の車両制御装置における制御系を、図17のブロック図に基づいて説明する。
【0131】
本実施例では、図17に機能的に示す様に、車両制御装置3は、クルーズCU37からの減速指令を実現できる目標減速度を計算する目標減速度演算部3bと、計算された目標減速度を実現するために目標変速比を演算する目標変速比演算部3eと、運転者のアクセル開度を検知し、オーバライド状態及びオーバライド状態の終了を判定するオーバライド判定部3aとを備えている。
【0132】
また、前記目標減速比演算部3eは、目標変速比マップ3e1と変化量リミッタ3e3とを備えている。
(2)次に、上述した構成による制御処理を説明する。図18のフローチャートに示す様に、ステップ800では、クルーズCU37からの減速指令があるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ810に進み、一方否定判断されるとステップ850に進む。
【0133】
ステップ810では、クルーズCU37からの減速要求を、目標値(駆動軸トルク又は減速度)に変換する。
続くステップ820では、目標値から目標変速比を算出する。
続くステップ830では、運転者によりアクセルペダル4が戻されたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ840に進み、一方否定判断されるとステップ850に進む。
【0134】
ステップ840では、オーバライド解除後で、しかも、クルーズCU37からの減速指令があるので、ここでは、通常の減速状態よりも減速の程度を抑制する減速抑制制御を行う。
具体的には、変化量リミッタ3e3により、減速度が小さくなる様に、変速比の変化量を小さい値に変更する。
【0135】
続くステップ850では、実際の小さく設定した変化量を用いて、目標変速比を設定する変化量リミッタ処理を実施し、一旦本処理を終了する。
この様に、本実施例では、オーバライド解除後は、目標変速比の変化量を小さく制限しているので、減速度が低減する。これにより、急激な加速度変化による車両振動を防止し、運転者のショックや違和感を低減することができる。
(実施例9)
次に、実施例9について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
【0136】
ここでは、変速制御器の制御パラメータを変更して、減速抑制制御を行う実施例について説明する。
(1)まず、本実施例の車両制御装置における制御系を、図19のブロック図に基づいて説明する。
【0137】
本実施例では、図18に機能的に示す様に、車両制御装置3は、クルーズCU37からの減速指令を実現できる目標減速度を計算する目標減速度演算部3bと、計算された目標減速度を実現するために目標変速比を演算する目標変速比演算部3eと、運転者のアクセル開度を検知し、オーバライド状態及びオーバライド状態の終了を判定するオーバライド判定部3aとを備えている。
【0138】
また、変速制御部63は、減速度が小さくなる様に、即ち、目標減速比に対する実変速比の応答が遅くなる様に、変速制御器(例えばスライディングモード制御器)63の制御パラメータを調整する。
尚、この制御パラメータとは、例えば非線形項の境界層幅である。
【0139】
(2)次に、上述した構成により制御処理を説明する。図20のフローチャートに示す様に、ステップ900では、クルーズCU37からの減速指令があるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ910に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0140】
ステップ910では、クルーズCU37からの減速要求を、目標値(駆動軸トルク又は減速度)に変換する。
続くステップ920では、目標値から目標変速比を算出する。
続くステップ930では、運転者によりアクセルペダル4が戻されたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ940に進み、一方否定判断されるとステップ950に進む。
【0141】
ステップ940では、オーバライド解除後で、しかも、クルーズCU37からの減速指令があるので、ここでは、通常の減速状態よりも減速の程度を抑制する減速抑制制御を行う。
具体的には、変速制御器63の制御パラメータを、変速応答が遅くなるように変更し、一旦本処理を終了する。
【0142】
この様に、本実施例では、オーバライド解除後は、変速制御器63の制御パラメータを、変速応答が遅くなるように変更しているので、減速度が低減する。これにより、急激な加速度変化による車両振動を防止し、運転者のショックや違和感を低減することができる。
(実施例10)
次に、実施例10について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
【0143】
ここでは、スロットル全閉指令を検知してから変速制御を切り換えるまでの実行待機時間を変更して、減速抑制制御を行う実施例について説明する。
(1)まず、本実施例の車両制御装置における制御系を、図21のブロック図に基づいて説明する。
【0144】
本実施例では、図21に機能的に示す様に、車両制御装置3は、クルーズCU37からの減速指令を実現できる目標減速度を計算する目標減速度演算部3bと、計算された目標減速度を実現できる目標変速比を演算する減速目標変速比演算部3fと、通常走行時の目標変速比を演算する通常目標変速比演算部3gと、スロットル全閉指令を検知してから変速制御を切り換えるまでの実行待機時間を変更する切換部3hと、オーバライド状態及びオーバライド状態の終了を判定するオーバライド判定部3aとを備えている。
【0145】
(2)次に、上述した構成による制御処理を説明する。図22のフローチャートに示す様に、ステップ1000では、クルーズCU37からの減速指令があるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ1010に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0146】
ステップ1010では、クルーズCU37からの減速要求を、目標値(駆動軸トルク又は減速度)に変換する。
続くステップ1020では、目標値から目標変速比を算出する。
続くステップ1030では、運転者によりアクセルペダル4が戻されたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ1040に進み、一方否定判断されるとステップ1050に進む。
【0147】
ステップ1040では、オーバライド解除後で、しかも、クルーズCU37からの減速指令があるので、ここでは、通常の減速状態よりも減速の程度を抑制する減速抑制制御を行う。
具体的には、(エンジン制御器61への)スロットル全閉指令を検知してから変速制御を切り換えるまでの実行待機時間を通常より長くして、一旦本処理を終了する。
【0148】
この様に、本実施例では、オーバライド解除後は実行待機時間を長くするので、減速度が低減する。これにより、急激な加速度変化による車両振動を防止し、運転者のショックや違和感を低減することができる。
(実施例11)
次に、実施例11について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
【0149】
ここでは、クラッチのスリップ量を変更することにより、減速抑制制御を行う実施例について説明する。
(1)まず、本実施例の車両制御装置における制御系を、図23のブロック図に基づいて説明する。
【0150】
本実施例では、図23に機能的に示す様に、車両制御装置3は、クルーズCU37からの減速指令を実現できる目標減速度を計算する目標減速度演算部3bと、計算された目標減速度を実現するために目標スリップ量を演算する目標スリップ量演算部3fと、運転者のアクセル開度を検知し、オーバライド状態及びオーバライド状態の終了を判定するオーバライド判定部3aとを備えている。
【0151】
また、前記目標スリップ量演算部3iは、オーバライド解除後には、減速度が小さくなる様に、目標スリップ量を大きくなる様に設定する。
(2)次に、上述した構成による制御処理を説明する。図24のフローチャートに示す様に、ステップ1100では、クルーズCU37からの減速指令があるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ1110に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0152】
ステップ1110では、クルーズCU37からの減速要求を、目標値(駆動軸トルク又は減速度)に変換する。
続くステップ1120では、目標値から目標変速比を算出する。
続くステップ1130では、運転者によりアクセルペダル4が戻されたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ1140に進み、一方否定判断されるとステップ1150に進む。
【0153】
ステップ1140では、オーバライド解除後で、しかも、クルーズCU37からの減速指令があるので、ここでは、通常の減速状態よりも減速の程度を抑制する減速抑制制御を行う。
具体的には、目標スリップ量演算部3iにより、伝達装置制御器65(詳しくはロックアップクラッチの)目標スリップ量を拡大し、一旦本処理を終了する。
【0154】
この様に、本実施例では、オーバライド解除後は、目標スリップ量を拡大しているので、減速度が低減する。これにより、急激な加速度変化による車両振動を防止し、運転者のショックや違和感を低減することができる。
尚、本発明は上記実施例に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない限り、種々の態様で実施できることはいうまでもない。
【0155】
(1)前記実施例の自動走行制御としては、例えばアダプティブクルーズコントロールが挙げられるが、本発明は、それ以外にも、例えばマニュアルにて設定された速度を保つ定速走行制御などの各種の制御にも適用できる。
(2)また、前記実施例では、自動変速機として無段変速機を例に挙げたが、本発明は、例えばオートマチックトランスミッションAT等の自動変速機を備えた車両にも適用できる。
【0156】
(3)更に、前記実施例では、オーバライド解除後の減速状態の抑制を例に挙げたが、本発明は、それ以外にも、大きな加速状態から減速状態に移行する際に、車両振動、ショック、違和感が発生する場合にも適用できる。
つまり、その様な問題が生じるようなような大きな加速状態から減速状態に移行する際に、通常の減速指令に基づく減速状態よりも減速状態を抑制する様に、トルクや変速比やスリップ量を調節すれば、前記問題の発生を防止することができる。
【0157】
(4)その上、本発明は、いわゆるナビ協調制御にも適用できる。
これにより、例えば道路のカーブや高低変化に応じて自動的に減速を行う場合において、オーバライド解除後の減速制御開始時に、急減速を防止でき、ショックや違和感を抑えることができる。
【0158】
(5)また、前記実施例では、車両制御装置について述べたが、この装置による制御を実行させる手段を記憶している記録媒体も、本発明の範囲である。
例えば記録媒体としては、マイクロコンピュータとして構成される電子制御装置、マイクロチップ、フロッピィディスク、ハードディスク、光ディスク等の各種の記録媒体が挙げられる。
【0159】
つまり、上述した車両制御装置の制御を実行させることができる例えばプログラム等の手段を記憶したものであれば、特に限定はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の車両制御装置等の構成を例示するブロック図である。
【図2】 実施例1の制御系を示すブロック図である。
【図3】 実施例1の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図4】 実施例1の減速抑制制御処理の効果を確認するために行った実験例のグラフである。
【図5】 実施例2の制御系を示すブロック図である。
【図6】 実施例2の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図7】 実施例3の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図8】 実施例3における閾値とエンジン回転数との関係を示すマップである。
【図9】 実施例4の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図10】 実施例4における閾値とエンジン回転数との関係を示すマップである。
【図11】 実施例5の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図12】 実施例5における閾値とエンジン回転数との関係を示すマップである。
【図13】 実施例6の制御系を示すブロック図である。
【図14】 実施例6の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図15】 実施例7の制御系を示すブロック図である。
【図16】 実施例7の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図17】 実施例8の制御系を示すブロック図である。
【図18】 実施例8の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図19】 実施例9の制御系を示すブロック図である。
【図20】 実施例9の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図21】 実施例10の制御系を示すブロック図である。
【図22】 実施例10の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【図23】 実施例11の制御系を示すブロック図である。
【図24】 実施例11の減速抑制制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
E…エンジン
1…無段変速機
3…車両制御装置
5…電子スロットル
31…トルク伝達機構
33…電子スロットルコントロールユニット(電子スロットルCU)
35…駆動力コントロールユニット(駆動力CU)
37…クルーズコントロールユニット(クルーズCU)
43…スロットル開度センサ
45…アクセルペダル開度センサ
51…エンジン回転センサ

Claims (21)

  1. 車両の駆動力を発生する駆動源と、運転者のアクセル操作と独立に前記駆動源のトルクを制御するトルク制御機構と、トルク伝達を調節するトルク伝達機構と、自動変速機の変速状態を制御する変速制御機構と、を備えた車両に対する制御を行う車両制御装置において、
    車両が加速状態から減速状態に移行したこと、又は自動走行制御時に減速指令されたときにアクセル操作がされたことを検知することにより、加速状態から減速状態に将来的に移行することを検知する減速状態検知手段と、
    前記減速状態検知手段によって、前記減速状態への移行を検知した場合には、前記トルク制御機構、トルク伝達機構、及び変速制御機構のうち少なくとも1種により、前記減速状態を抑制するように制御する減速抑制制御手段と、
    を備えるとともに、
    前記トルク制御機構は、運転者のアクセル開度とは独立に制御できるスロットルであり、
    前記減速抑制制御手段は、
    前記スロットルの開度を所定閾値と比較するスロットル開度比較手段と、
    前記スロットル開度の変化量を制限する変化量制限手段と、
    前記スロットル開度比較手段による比較の結果、前記スロットル開度が前記閾値以上であれば、前記変化量制限手段により、前記スロットル開度の変化量を第1の変化量に制限し、前記スロットル開度が前記閾値より小であれば、前記変化量制限手段により、前記スロットル開度の変化量を第2の変化量に制限する変化量制御手段と、
    を備えたことを特徴とする車両制御装置。
  2. 車両の駆動力を発生する駆動源と、運転者のアクセル操作と独立に前記駆動源のトルクを制御するトルク制御機構と、トルク伝達を調節するトルク伝達機構と、自動変速機の変速状態を制御する変速制御機構と、を備えた車両に対する制御を行う車両制御装置において、
    前記自動変速機は無段変速機であり、
    車両が加速状態から減速状態に移行したこと、又は自動走行制御時に減速指令されたときにアクセル操作がされたことを検知することにより、加速状態から減速状態に将来的に移行することを検知する減速状態検知手段と、
    前記減速状態検知手段によって、前記減速状態への移行を検知した場合には、前記トルク制御機構、トルク伝達機構、及び変速制御機構のうち少なくとも 1 種により、前記減速状態を抑制するように制御する減速抑制制御手段と、
    を備えるとともに、
    前記減速抑制制御手段は、
    前記無段変速機の変速比変化を制限する変速比制限手段と、
    前記スロットル開度の全閉指令を検知する全閉検知手段と、
    前記無段変速機の変速比を目標変速比に制御する変速制御を実行するまでの実行待機時間を指令する実行待機時間指令手段と、
    を備え、
    前記全閉検知手段により前記全閉指令を検知した場合には、前記実行待機時間指令手段により指令する時間を変更することにより、前記減速状態を抑制するように制御することを特徴とする車両制御装置。
  3. 前記減速度抑制制御手段は、通常より減速度勾配を緩やかに設定する手段であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の車両制御装置。
  4. 前記減速度抑制制御手段は、通常より目標減速度を小さく設定する手段であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の車両制御装置。
  5. 前記トルク制御機構が、運転者のアクセル開度とは独立に制御できるスロットルであり、
    前記減速抑制制御手段は、
    前記スロットルの開度を所定閾値と比較するスロットル開度比較手段と、
    前記スロットル開度の変化量を制限する変化量制限手段と、
    前記スロットル開度比較手段による比較の結果、前記スロットル開度が前記閾値以上であれば、前記変化量制限手段により、前記スロットル開度の変化量を第1の変化量に制限し、前記スロットル開度が前記閾値より小であれば、前記変化量制限手段により、前記スロットル開度の変化量を第2の変化量に制限する変化量制御手段と、
    を備えたことを特徴とする前記請求項に記載の車両制御装置。
  6. 前記第1の変化量が、第2の変化量より大であることを特徴とする前記請求項1又は5に記載の車両制御装置。
  7. 前記閾値を、エンジン回転数に応じて変更する閾値変更手段を備えたことを特徴とすることする前記請求項1、5、6のいずれかに記載の車両制御装置。
  8. 前記閾値を、前記自動変速機の変速比に応じて変更する閾値変更手段を備えたことを特徴とすることする前記請求項1、5〜7のいずれかに記載の車両制御装置。
  9. 前記閾値を、車速に応じて変更する閾値変更手段を備えたことを特徴とすることする前記請求項1、5〜8のいずれかに記載の車両制御装置。
  10. 前記自動変速機が無段変速機であり、
    前記減速抑制制御手段は、前記無段変速機の変速比変化を制限する変速比制限手段を備えたことを特徴とする前記請求項1に記載の車両制御装置。
  11. 前記変速比制限手段が、目標変速比の周波数フィルタで構成され、
    前記変速比の制限を、前記周波数フィルタのカットオフ周波数を変更することで行うことを特徴とする前記請求項2又は10に記載の車両制御装置。
  12. 前記変速比制限手段が、前記無段変速機の目標変速比の変化量リミッタで構成され、
    前記変速比の制限を、前記変化量リミッタのリミッタ値を変更することで行うことを特徴とする前記請求項2、10、11のいずれかに記載の車両制御装置。
  13. 前記変速比制限手段が、前記無段変速機の目標変速比に実変速比を一致させる制御器の制御パラメータ調整手段で構成され、
    前記変速比の制限を、前記制御パラメータを変更することで行うことを特徴とする前記請求項2、10〜12のいずれかに記載の車両制御装置。
  14. 前記減速抑制制御手段が、
    前記スロットル開度の全閉指令を検知する全閉検知手段と、
    前記無段変速機の変速比を目標変速比に制御する変速制御を実行するまでの実行待機時間を指令する実行待機時間指令手段と、
    を備え、
    前記全閉検知手段により前記全閉指令を検知した場合には、前記実行待機時間指令手段により指令する時間を変更することにより、前記減速状態を抑制するように制御することを特徴とする前記請求項2、10〜13のいずれかに記載の車両制御装置。
  15. 前記トルク伝達機構が、エンジンと無段変速機との間、又は無段変速機の出力軸側に配置されたクラッチであり、
    前記クラッチのスリップ量を制御することにより、前記減速状態を抑制するように制御するスリップ量制御手段を備えたことを特徴とする前記請求項1〜14のいずれかに記載の車両制御装置。
  16. 前記運転者のアクセル操作とは独立に、車両の加減速度を自動的に制御して、前記車両を自動走行させる自動走行装置を備えたことを特徴とする前記請求項1〜15のいずれかに記載の車両制御装置。
  17. 前記自動走行の制御にて減速指令がなされている場合に、運転者によるアクセル操作が開放されたときには、前記減速指令による減速を抑制することを特徴とする前記請求項16に記載の車両制御装置。
  18. 前記自動走行の制御が、自車の車速を所定値に制御するクルーズコントロールであることを特徴とする請求項16又は17に記載の車両制御装置。
  19. 前記自動走行の制御が、先行車との車間距離を制御するアダプティブクルーズコントロールであることを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の車両制御装置。
  20. 前記自動走行の制御が、ナビゲーションデータに基づいた制御を行うナビ協調制御であることを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の車両制御装置。
  21. 前記請求項1〜20のいずれかに記載の車両制御装置による制御を実行させるプログラムを記憶しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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