以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両制御装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両制御装置1は、ブレーキペダルセンサ11、アクセルペダルセンサ12、操舵角センサ13、Gセンサ14、ヨーレートセンサ15、車輪速センサ16、白線検知センサ17、およびナビゲーションシステム18を備えている。また、車両制御装置1は、操舵アクチュエータ21、スロットルアクチュエータ22、ブレーキアクチュエータ23、モータ24およびECU[Electronic Control Unit]30を備えている。さらに、車両制御装置1では、ナビゲーションシステム18からの情報を利用する。ECU30には、ブレーキペダルセンサ11、アクセルペダルセンサ12、操舵角センサ13、Gセンサ14、ヨーレートセンサ15、車輪速センサ16、白線検知センサ17、およびナビゲーションシステム18が接続されている。さらに、ECU30には、操舵アクチュエータ21、スロットルアクチュエータ22、ブレーキアクチュエータ23、およびモータ24が接続されている。車両制御装置1は、動力として図示しないエンジンのほかにモータ24を備えるいわゆるハイブリッド式の車両に設けられている。
ブレーキペダルセンサ11は、たとえばブレーキペダルに設けられており、ドライバにより踏み込まれたブレーキペダルの踏み込み量を検出する。ブレーキペダルセンサ11が検出する踏み込み量としては、たとえばブレーキペダルストロークや踏力を検出する。ブレーキペダルセンサ11は、検出したブレーキペダルの踏み込み量をブレーキペダル信号としてECU30に送信する。
アクセルペダルセンサ12は、たとえばアクセルペダルに設けられており、ドライバにより踏み込まれたアクセルペダルの踏み込み量を検出する。アクセルペダルセンサ12が検出する踏み込み量としては、たとえばアクセルペダルストロークや踏力を検出する。アクセルペダルセンサ12は、検出したアクセルペダルの踏み込み量をアクセルペダル信号としてECU30に送信する。
操舵角センサ13は、たとえばステアリングシャフトに取り付けられており、ドライバにより操舵されたハンドルの操舵角を検出する。操舵角センサ13は、検出したハンドルの操舵角を操舵角信号としてECU30に送信する。
Gセンサ14は、自車両に作用している横加速度や前後加速度を検出するセンサである。Gセンサ14では、自車両に作用している加速度を検出し、その加速度をG信号としてECU30に送信する。なお、検出する加速度毎に、横Gセンサ、前後Gセンサがそれぞれ構成される。
ヨーレートセンサ15は、自車両で発生しているヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサ15では、自車両で発生しているヨーレートを検出し、そのヨーレートをヨーレート信号としてECU30に送信する。
車輪速センサ16は、車両の4輪にそれぞれ設けられ、車輪の回転速度(車輪の回転に応じたパルス数)を検出するセンサである。車輪速センサ16では、所定時間毎の車輪の回転パルス数を検出し、その検出した車輪回転パルス数を車輪速信号としてECU30に送信する。ECU30では、各車輪の回転速度から車輪速をそれぞれ演算し、各輪の車輪速から車体速(車速)を演算する。
白線検知センサ17は、カメラや画像処理装置を備えており、一対の白線(車線)を検知するセンサである。白線検知センサ17では、カメラで自車両の前方の道路を撮像する。そして、白線検知センサ17では、画像処理装置で撮像画像から車両が走行している車線を示す一対の白線を認識する。白線検知センサ17では、これらの認識した一対の白線の情報を白線検知信号としてECU30に送信する。
ナビゲーションシステム18は、自車両の現在位置の検出および目的地までの経路案内などを行うシステムである。特に、ナビゲーションシステム18では、地図データベースから現在走行中の道路の形状情報を読み出し、その道路形状情報をナビ信号としてECU30に送信する。なお、ナビゲーションシステムを備えない車両の場合、少なくとも道路形状情報を少なくとも格納した地図データベースを備える構成としてもよいし、あるいは、路車間通信などを利用して道路形状情報を取得する構成としてもよい。
操舵アクチュエータ21は、モータによる回転駆動力を減速機構を介してステアリング機構(ラック、ピニオン、コラムなど)に伝達し、ステアリング機構に操舵トルクを付与するためのアクチュエータである。操舵アクチュエータ21では、ECU30から操舵制御信号を受信すると、操舵制御信号に応じてモータが回転駆動して操舵トルクを発生させる。
スロットルアクチュエータ22は、駆動源の1つであるエンジンのスロットルバルブの開度を調整するアクチュエータである。スロットルアクチュエータ22では、ECU30からのエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。
ブレーキアクチュエータ23は、各車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ23では、ECU30からのブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
モータ24は、駆動源の1つである電気モータである。また、モータ24は、ジェネレータとしての機能を有しており、車輪の回転エネルギ(運動エネルギ)を電気エネルギーに変換し、回生発電を行う。モータ24では、モータ制御信号を受信すると、モータ制御信号に応じて回転駆動して駆動力を発生する。また、モータ24は、回生制御信号を受信すると、回生制御信号に応じて発電し、その発電した電力をバッテリに充電する。
ECU30は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random AccessMemory]などからなり、車両制御装置1を統括制御する電子制御ユニットである。ECU30では、一定時間毎に、各センサ11〜17およびナビゲーションシステム18からの各信号を受信する。そして、ECU30では、走行軌跡最適化処理、初期条件生成処理、連続カーブ対応処理などを行って最適な走行軌跡を生成する。さらに、ECU30では、生成した最適な走行軌跡に基づいて車両制御処理を行い、操舵アクチュエータ21、スロットルアクチュエータ22、ブレーキアクチュエータ23、モータ24を制御する。ECU30は、本発明の加速度制御装置として機能する。
次に、本実施形態に係る車両制御装置における処理手順について説明する。図2は、本実施形態に係る車両制御装置における処理手順を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係る車両制御装置において、ECU30は、車両が走行する道路の道路形状を取得する(S1)。ECU30では、白線検知センサ17から送信される白線検知信号やナビゲーションシステム18から送信されるナビ情報等に基づいて、車両が走行する道路の道路形状、たとえばカーブRや路面μ情報を取得する。
次に、ECU30は、ドライバ操作を取得する(S2)。ECU30は、ブレーキペダルセンサ11、アクセルペダルセンサ12、および操舵角センサ13から送信されるブレーキペダル信号、アクセルペダル信号、および操舵角信号に基づいて、ドライバの操作を取得する。
ECU30は、道路形状およびドライバ操作を取得したら、取得した道路形状に基づいて、車両の目標速度を算出する(S3)。車両の目標速度を算出するにあたり、取得した道路形状から車両の加速度パターンを生成し、この車両の加速度パターンに基づいて車両の速度パターンを生成する。車両の加速度パターンの生成手順は適宜の方法を用いることができる。
たとえば、道路形状に基づいて、所定のゴール地点およびそのゴール地点に対する到達時間を設定する。さらには、ステップS2で取得したドライバの操作に基づいて、ドライバの希望する走行条件を検出する。それから、ドライバの希望する走行条件を加味して、ゴール地点に到達時間までに到達する際の最も燃費がよいと評価される加速度パターンを生成する。このとき、ドライバの希望する走行条件のほか、車両の摩擦円使用率などの安全面を考慮することもできる。
加速度パターンを生成したら、生成した加速度パターンを時間積分処理することによって速度パターンを生成する。さらには、速度パターンを形成してから経過した時間を計測する。そして、生成した速度パターンと、速度パターンを生成してから経過した時間とによって、車両の目標速度を算出する。
速度パターンを生成したら、車両の走行経路を所定の走行区間に区間分けする(S4)。車両の走行経路を走行区間に区間分けするにあたり、たとえば図4に示すように、走行軌跡Cが生成された道路Rにおいて、走行経路を所定の幅で略等間隔に分割して走行区間Mに区分けする。
こうして走行経路を走行区間に区分けしたら、速度パターンに基づいて、走行区間の種類を種類ごとに分類する(S5)。本実施形態では、車両の燃費向上を目的として、走行区間の種類を加速区間と惰性走行区間に分類している。走行区間の種類を分類する際の基準としては、加速区間と惰性走行区間のほか、回生による減速区間と、定常走行が必要な定常走行区間とに区間分けする場合、これらの区間を組み合わせる場合など、適宜の基準とすることができる。
走行区間を加速区間と惰性走行区間に分類したら、各走行区間の種類に応じた加速支援制御を行う(S5)。加速支援制御においては、車両の走行区間が加速区間である場合には、燃費の無駄となる加速である無駄加速を制限する無駄加速制限を行ったり、目標速度に到達するまで加速を促進する加速アシストを行ったりする。一方、車両の走行区間が惰性走行区間である場合には、燃費の無駄を無くすための加速制限や惰性走行支援を行ったりする。
また、走行区間に対する加速支援として、アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)に対する要求加速度の調整を行う。本実施形態では、要求加速度がそのまま本発明の制御加速度となる。アクセル開度に対する要求加速度の調整を行うにあたり、惰性走行区間では図5(a)に示す惰性走行区間用マップを用い、加速区間では図5(b)に示す加速区間用マップを用いる。図5(a)に示すように、惰性走行区間用マップでは、アクセル開度が低い領域で所定の加速制限が付されている。
この加速支援制御を行うにあたり、走行区間が切り替わるときでは、切替前の走行区間と切替後の走行区間とで加速区間から惰性走行区間に変わったり、逆に惰性走行区間から加速区間に変わったりすることがある。走行区間が切り替わる際には、要求加速度が急変し、要求加速度の急変に伴ってドライバに対して違和感を与える可能性がある。本実施形態では、走行区間が惰性走行区間から加速区間に切り替わる際に、要求加速度が急変する急変要求加速度となるとみなす制御を行っている。本実施形態に係る車両制御装置では、要求加速度が急変する際にドライバに与える違和感を小さくするための加速支援制御を行う。以下に、加速支援制御の手順について説明する。図3は、加速支援制御の処理手順を示すフローチャートである。
図3に示すように、加速支援制御では、車両が現在走行している走行区間が惰性走行区間であるか否かを判断する(S11)。その結果、車両が現在走行している走行区間が惰性走行区間であると判断した場合には、車両が加速区間を出てから経過した時間を判断し、この時間がT秒、たとえば1秒以内であるか否かを判断する(S12)。ここでのT秒は、任意の時間を設定することができ、たとえば、1秒から10秒のいずれかの時間とすることができる。
ここで、車両が加速区間を出てから経過した時間がT秒以内であると判断した場合には、惰性走行区間加速度b1および加速区間加速度b2を算出する(S13)。惰性走行区間加速度b1および加速区間加速度b2は、車輪速センサ16から出力された車輪速信号に基づいて算出された現在の車速と、アクセルペダルセンサ12から出力されたアクセルペダル信号に基づいて求められるアクセル開度を用いて算出される。
惰性走行区間加速度b1および加速区間加速度b2を算出したら、車両に対する要求加速度を、加速区間加速度b2から惰性走行区間加速度b1に移行させる(S14)。加速区間加速度b2から惰性走行区間加速度b1への移行の際に、要求加速度を徐々に移行させるように徐変させる。要求加速度を徐変させる際には、たとえばアクセルペダルの踏み込み量に対して線形としたり、走行区間の切り替わり区間(遷移区間)でマップを用いたりすることができる。また、乗り心地や燃費を考慮して要求加速度を徐変させることができる。
いま、走行区間が惰性走行区間から加速区間に切り替わるとき、アクセル開度aであったとする。このとき、図6(a)に示すように、惰性走行区間では、惰性走行区間用マップM1を用いて惰性走行区間加速度b1を求め、加速区間では、加速区間用マップM2を用いて加速区間加速度b2を求めるとする。この場合には、図6(b)に実線で示すように、要求加速度が惰性走行区間加速度b1から加速区間加速度b2に大きく変化してしまい、惰性走行区間における要求加速度が急変要求加速度となってしまう。要求加速度が急変要求加速度となることにより、ドライバに違和感を与える可能性がある。
この点、本実施形態では、惰性走行区間から加速区間に切り替わる際、切り替わりの直後では、要求加速度を加速区間加速度b2のままとする。その後、図6(b)に破線で示すように、時間の経過とともに要求加速度を加速区間加速度b2から惰性走行区間加速度b1に滑らかに徐変させるようにしている。このように、要求加速度を加速区間加速度b2から惰性走行区間加速度b1に滑らかに徐変させることにより、車両の加速度をドライバの操作に応じた加速度に近づけることができる。したがって、ドライバに与える違和感を小さくすることができる。
要求加速度を加速区間加速度b2から惰性走行区間加速度b1に徐変させる割合としては、惰性走行区間に入ってからT秒、本実施形態では1秒が経過した後に要求加速度が惰性走行区間加速度b1となる割合で要求加速度を移行させる。この1秒間で加速区間加速度b2は変化するが、逐次加速区間加速度b2の変化に応じた割合で要求加速度を変化させる。こうして、加速支援制御を終了する。
また、ステップS12において車両が加速区間を出てから経過した時間がT秒以内でない(T秒を超えている)と判断した場合には、図5(a)に示すマップを用いた惰性走行区間における支援制御を行う(S15)。車両が加速区間を出てからT秒が経過していると、惰性走行区間における走行が進んでおり、惰性走行区間加速度b1を用いた支援制御を行っても、急加速等によってドライバに違和感を与えることを防止することができる。こうして、加速支援制御を終了する。
一方、ステップS11において、車両が現在走行している走行区間が惰性走行区間でなく、加速区間であると判断した場合には、車両が惰性走行区間を出てから経過した時間を判断し、この時間がT秒以内であるか否かを判断する(S16)。その結果、車両が惰性走行区間を出てから経過した時間がT秒以内であると判断した場合には、車輪速センサ16から出力された車輪速信号に基づいて算出された現在の車速と、アクセルペダルセンサ12から出力されたアクセルペダル信号に基づいて、惰性走行区間加速度b1および加速区間加速度b2を算出する(S17)。それから、車両に対する要求加速度を、惰性走行区間加速度b1から加速区間加速度b2に移行させる(S18)。惰性走行区間加速度b1から加速区間加速度b2への移行の際に、要求加速度を徐変させる。このように、要求加速度を惰性走行区間加速度b1から加速区間加速度b2に徐変させることにより、ドライバに与える違和感を軽減することができる。こうして、加速支援制御を終了する。
また、ステップS16において、車両が惰性走行区間を出てから経過した時間がT秒以内でない(T秒を超えている)と判断した場合には、図5(b)に示すマップを用いた加速走行区間における支援制御を行う(S19)。車両が惰性走行区間を出てからT秒が経過していると、加速区間における走行が進んでおり、加速区間加速度b2を用いた支援制御を行っても、急加速等によってドライバに違和感を与えることを防止することができる。こうして、加速支援制御を終了する。
このように、本実施形態に係る車両制御装置1においては、車両の走行区間が惰性走行区間と加速区間を跨ぎ、惰性走行区間から加速区間に切り替わる場合には、要求加速度を惰性走行区間加速度から加速区間加速度に滑らかに徐変させる。さらには、車両の走行区間が加速区間から惰性走行区間に切り替わる場合には、要求加速度を加速区間加速度から惰性走行区間加速度の滑らかに徐変させる。こうして、要求加速度が急激に変化することを防止することができる。したがって、ドライバに与える違和感を小さくすることができる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第1の実施形態と同様の装置によって実現することができ、加速支援制御の内容が異なる。以下、その加速支援制御手順を中心として説明する。図7は、第2の実施形態に係る車両制御装置における加速支援制御の処理手順を示すフローチャートである。第2の実施形態においても、図2に示す手順と同様の処理が行われた後、加速支援制御が行われる。
図7に示すように、本実施形態に係る車両制御装置における加速支援制御では、車両が現在走行している走行区間が惰性走行区間であるか否かを判断する(S21)。その結果、車両が現在走行している走行区間が惰性走行区間であると判断した場合には、走行区間が切り替わる前に、アクセルペダルがONとなっていたか否かを判断する(S22)。アクセルペダルがONとなっているか否かは、アクセルペダルが踏み込まれているか否かによって判断する。アクセルペダルが踏み込まれている場合にアクセルペダルがONとなり、アクセルペダルが踏み込まれていない場合にアクセルペダルがOFFとなる。その結果、アクセルペダルがONとなっていなかったと判断した場合には、図5(a)に示す惰性走行区間用マップを用いた支援制御を実行する(S23)。こうして、加速支援制御を終了する。
一方、走行区間が切り替わる前に、アクセルペダルがONとなっていたと判断した場合には、現在のアクセルペダルがOFFとなっているか否かを判断する(S24)。現在のアクセルペダルがOFFとなっていないと判断した場合には、図5(b)に示す加速区間用マップを用いた支援制御を保持する(S25)。一方、現在のアクセルペダルがOFFとなっている場合には、車両の要求加速度を惰性走行区間における特性に滑らかに繋げる(S26)。
走行区間における特性とは、ここでは、走行区間に対応する要求加速度を意味する。具体的には、上記第1の実施形態におけるステップS13,S14と同様に、惰性走行区間加速度および加速区間加速度を求め、要求加速度を加速区間加速度から惰性走行区間加速度に徐変させる。
ドライバがアクセルペダルをONとしている場合には、ドライバには加速意思があると推定される。この状態で加速区間から惰性走行区間に切り替わる際に、惰性走行区間における支援制御を行うと、ドライバの加速意思に背くこととなると考えられる。また、その後、アクセルペダルをOFFとしたときには、ドライバの加速意思が無くなったと考えられる。
したがって、図8(b)に示すように、加速区間から惰性走行区間に切り替わる際にアクセルペダルがONであり、その後アクセルペダルがOFFとなってない場合には、図8(a)に示すように、加速区間における支援制御を保持している。このため、ドライバの意思に沿った制御を行うことができる。そして、アクセルペダルがOFFとなり、ドライバに加速意思がなくなってから惰性走行区間における支援制御を行うことにより、やはりドライバの意思に沿った制御を行うことができる。さらに、惰性走行区間における支援制御に移行する際に、車両の要求加速度を惰性走行区間における特性に滑らかに繋げることにより、ドライバに与える違和感を小さくすることができる。こうして、加速支援制御を終了する。
また、ステップS21において、車両が現在走行している走行区間が惰性走行区間でないと判断した場合には、走行区間が切り替わる前に、アクセルペダルがONとなっていたか否かを判断する(S27)。その結果、アクセルペダルがONとなっていなかったと判断した場合には、図5(b)に示す加速区間用マップを用いた支援制御を実行する(S28)。こうして、加速支援制御を終了する。
一方、走行区間が切り替わる前に、アクセルペダルがONとなっていたと判断した場合には、走行区間が切り替わる前のアクセル開度が所定のしきい値を超えていたか否かを判断する(S29)。ここでのしきい値は適宜決定することができ、たとえば30%〜70%の間の適宜の値とすることができる。
その結果、アクセル開度がしきい値を超えていない(しきい値以下である)と判断した場合には、図5(a)に示す惰性走行区間用マップを用いた支援制御を保持する(S30)。一方、アクセル開度がしきい値を超えていると判断した場合には、車両の要求加速度を加速区間における特性に滑らかに繋げる(S31)。具体的には、上記第1の実施形態におけるステップS13,S14と同様に、惰性走行区間加速度および加速区間加速度を求め、要求加速度を惰性走行区間加速度から加速区間加速度に徐変させる。
惰性走行区間から加速区間に切り替わる際に、アクセルペダルが踏み込まれていなければ、ドライバには加速意思はないと推定される。この場合には、そのまま加速区間における支援制御に移行する。また、図9(b)に示すように、惰性走行区間から加速区間に切り替わる際に、アクセルペダルが踏み込まれていれば、加速区間に切り替わった後、アクセル開度をそのまま維持する。その後、アクセルペダルが所定のしきい値を超えるまで踏み込まれたら、ドライバに加速意思が生じたと考えられる。この場合に、加速区間における支援制御に移行する。ここで、加速区間における支援制御に移行するにあたり、図9(a)に示すように、車両の要求加速度を加速区間における特性に滑らかに繋げている。このため、ドライバの加速意思に応じた制御を行うことができ、ドライバに与える違和感を小さくすることができる。こうして、加速支援制御を終了する。
このように、本実施形態に係る車両制御装置では、走行区間が加速区間から惰性走行区間に切り替わる際、または惰性走行区間から加速区間に切り替わる際に、ドライバの加速意思を反映した制御を行っている。このため、ドライバの加速意思に応じた制御を行うことができるので、ドライバに与える違和感をより小さくすることができる。
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第1の実施形態と同様の装置によって実現することができ、加速支援制御の内容が異なる。以下、その加速支援制御手順を中心として説明する。図10は、第3の実施形態に係る車両制御装置における加速支援制御の処理手順を示すフローチャートである。第3の実施形態においても、図2に示す手順と同様の処理が行われた後、加速支援制御が行われる。
図10に示すように、本実施形態に係る車両制御装置における加速支援制御では、車両が現在走行している走行区間の次の走行区間(以下「次区間」という)が重要区間であるか否かを判断する(S41)。本実施形態において、車両が現在走行している区間が本発明の加速度急変予測前区間となり、次区間が加速度急変予測区間となる。また、本実施形態では、走行区間が惰性走行区間から回生による減速区間である回生減速区間に切り替わる際に、要求加速度が急変する急変要求加速度となるとみなす制御を行っている。
ここで、重要区間について説明する。たとえば、惰性走行区間から回生減速区間に入った場合、その先でカーブに進入したり停止したりする必要がある場合、減速の反応が遅れ、回生では十分に減速されずに油圧ブレーキをかけてしまう可能性がある。このため、回生減速区間では、早期に要求加速度となっていることが求められる。このように、早期に要求加速度となっていることが求められる区間が、重要区間の例として挙げられる。
その他、走行区間の切り替わり後に急なカーブがある場合は、加速が大きすぎると、急なカーブでの減速が遅れることが考えられる。逆に、走行区間の切り替わり後に勾配があると、無駄な加速が生じたり、加速が十分にできなかったりすることが考えられる。したがって、重要区間としては、走行区間の切り替わり後に急なカーブがある走行区間や勾配がある走行区間などを挙げることもできる。
また、次区間が重要区間であると判断した場合には、車両が次区間に進入する際には、次区間における要求加速度となることが求められる。このため、車両の現在位置が、一定時間手前位置よりも次区間に近い位置にあるか否かを判断する(S42)。ここで、一定時間手前位置とは、車両の現在位置から次区間に到達するまでの予想時間が所定の一定時間となる一定時間手前の位置を意味する。
その結果、車両の現在位置が一定時間手前位置であると判断した場合には、重要区間における特性に滑らかに繋げる(S43)。具体的に、たとえば現在の走行区間が惰性走行区間であり、次区間が重要区間である回生減速区間である場合を想定する。この場合、惰性走行区間要求加速度b3および回生減速区間要求加速度b4を求める。その後、図11に示すように、惰性走行区間を走行中に、要求加速度を惰性走行区間要求加速度b3から次区間の回生減速区間要求加速度b4に徐変させる。こうして、重要区間である回生減速区間に進入する際には、回生減速区間要求加速度b4に近づけるように要求加速度を調整する。ここでの惰性走行区間要求加速度b3は、ほぼ0であるのに対して、回生減速区間要求加速度b4はエンジンブレーキ回生相当の要求加速度とされている。
一方、車両の現在位置が一定時間手前位置でないと判断した場合には、現在車両が走行中である走行区間における特性を用いた支援制御を行う(S44)。また、ステップS41において次区間が重要区間でないと判断した場合には、現在の走行区間である惰性走行区間における特性を用いた支援制御を行う(S45)。こうして、加速支援制御を終了する。
このように、本実施形態に係る車両制御装置では、次区間に入る前から次区間の要求加速度となるように要求加速度を徐変させている。このため、次区間における要求加速度を早期に達成することができるので、目標速度パターンに対する追従性の悪化を防止することができる。特に、次区間が重要区間である場合には、重要区間における要求加速度に早期に到達することができる。したがって、重要区間の要求加速度を適切なものとすることができる。
また、重要区間の他の例として、加速区間から惰性走行区間に進入し、その先で急なカーブに進入する場合がある。この場合、加速区間から惰性走行区間に進入しても、ドライバの反応が遅れ、加速が付きすぎて速度超過で急なカーブに進入してしまう可能性がある。このような場合には、図12(a)に示す惰性走行区間用マップM1および加速区間用マップM2を用いて、図12(b)に示すように、惰性走行区間を走行中に、要求加速度を加速区間加速度b2から惰性走行区間加速度b1に徐変させる。このような態様とすることもできる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、走行区間が惰性走行区間から加速区間や回生減速区間に変化するなど、走行区間の種別が変化する際に、急変要求加速度となるとみなす制御を行っている。これに対して、他の手段によって急変要求加速度となると判定する制御を行う態様とすることもできる。
また、上記実施形態では、車両の制御加速度を徐変させるにあたり、要求加速度を徐変させているが、他の態様で車両の制御加速度を徐変させることもできる。たとえば、要求加速度は変更することなく、加速度制御装置として機能するECU30において算出するスロットルアクチュエータ22やブレーキアクチュエータ23に対する制御量を徐変させることにより、車両の制御加速度を徐変させることもできる。
さらに、上記第3の実施形態では、重要区間の前の走行区間で要求加速度を徐変させるようにしているが、重要区間でない走行区間の前の走行区間から要求加速度を徐変させる態様とすることもできる。前の走行区間から要求加速度を徐変させることにより、目標走行パターンに対する追従性の悪化を防止することができる。