JP4135211B2 - 硫黄原子含有環状化合物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫黄原子含有環状化合物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に透光性を有する物質は種々の光学部材の材料として有用である。現在、光学部材の材料としては無機ガラスあるいは有機重合体が用いられているが、特に、高い屈折率を有する透光性物質は、レンズ、光学フィルターなどの材料として有用である。また、或る光学特性を有する物質が膜形成能を有する場合には、基材の表面にコート層を形成するための塗布材料として、またフィルム形成材料として有用であり、更に高い屈折率を有する場合には、これを屈折率の小さいものと組合せて積層フィルムとすることにより、反射防止膜を形成することができる。
更に、当該物質が膜形成能を有しない場合であっても、これを適当なバインダーと組合せることによりフィルムを形成することができ、従って当該物質の有する光学特性を利用して、例えば高屈折率層の形成に利用することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情を背景に、比較的大きな分子量を有する硫黄原子含有環状化合物について種々の研究を行った結果として得られたものである。
本発明は、硫黄原子を含有することによって比較的高い屈折率を有し、従って光学部材の材料として有用な、新規な硫黄原子含有環状化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の硫黄原子含有環状化合物の第1のものは、下記式(1)で示される環状チオアリールエステルである。
【0005】
【化6】
上記の環状チオアリールエステルは、4,4′−チオビスベンゼンチオールとフェニレンジカルボン酸ハロゲン化物とを反応させる方法により、製造することができる。
【0006】
本発明の硫黄原子含有環状化合物の第2のものは、下記式(2)で示されるものである。
【0007】
【化7】
〔式中、Xは −CH2 −O−R(Rは炭素数1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を表す。)であってYは水素原子を表し、またはXとYは結合して炭素数2〜6のアルキレン基を形成する。〕
【0008】
式(2)の化合物は、上記の式(1)で示される環状チオアリールエステルと下記式(3)で示されるスルフィド化合物を反応させる方法により、製造することができる。
【0009】
【化8】
〔式中、Xは −CH2 −O−R(Rは炭素数1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を表す。)であってYは水素原子を表し、またはXとYは結合して炭素数2〜6のアルキレン基を形成する。〕
【0010】
本発明の硫黄原子含有環状化合物の第3のものは、下記式(4)で示されるものである。
【0011】
【化9】
〔式中、Xは −CH2 −O−R(Rは炭素数1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を表す。)であってYは水素原子を表し、またはXとYは結合して炭素数2〜6のアルキレン基を形成する。4つの繰り返し単位の数nは2以上の整数であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
【0012】
式(4)の化合物は、上記の式(1)で示される環状チオアリールエステルと、上記の式(3)で示されるスルフィド化合物を、環状チオアリールエステルに対してスルフィド化合物が大過剰となる割合で反応させる方法により、製造することができる。
【0013】
本発明の硫黄原子含有環状化合物の第4のものは、下記式(5)で示されるものである。
【0014】
【化10】
〔式中、X1 およびX2 は各々 −CH2 −O−R(Rは炭素数1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を表す。)であってY1 およびY2 は水素原子を表し、またはX1 とY1 およびX2 とY2 は結合して炭素数2〜6のアルキレン基を形成する。それぞれ4つの繰り返し単位の数nおよびmは2以上の整数であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
【0015】
式(5)の化合物は、上記の式(4)で示される、繰り返し単位構造を有する環状チオアリールエステルと、上記の式(3)で示されるスルフィド化合物を反応させる方法により、製造することができる。
【0016】
本発明によれば、新規な硫黄原子含有環状化合物が提供される。この硫黄原子含有環状化合物は、1分子中に比較的多数の硫黄原子が含有された比較的大きい分子量を有する安定な化合物であり、その屈折率が比較的高いのでこれを利用して光学部材の材料として有用であり、例えば反射防止膜を構成する高屈折率層の形成に用いることができる。
また、本発明の製造方法によれば、上述の硫黄原子含有環状化合物を製造することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の硫黄原子含有環状化合物およびその製造方法について、具体的に説明する。
本発明においては、下記の反応式(1)に示されるように、4,4′−チオビスベンゼンチオール(TBBT)と、適宜のフェニレンジカルボン酸ハロゲン化物、例えばフタル酸クロライド(PC)とを付加反応させる方法により、環状チオアリールエステル(CTE)が得られる。
【0018】
【化11】
【0019】
以上において、フェニレンジカルボン酸ハロゲン化物としては、フタル酸クロライドのほか、例えばイソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライド、フタル酸ブロミド、イソフタル酸ブロミド、テレフタル酸ブロミド、その他を挙げることができる。このフェニレンジカルボン酸ハロゲン化物は、そのベンゼン環に置換基を有するものであってもよい。
【0020】
この付加反応は、適宜の溶剤中において、第四オニウム塩を触媒として用いることにより、実行することができる。
ここに、溶剤の具体例としては、例えば塩化メチレン、トルエン、クロロベンゼン、アニソール、酢酸エチル、メチルセロソルブアセテート、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、o−ジクロロベンゼン、その他を挙げることができる。
【0021】
また、触媒とされる第四オニウム塩の具体例としては、例えばテトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、その他を挙げることができる。また、18−クラウン−6−エーテルと、塩化カリウム、臭化カリウム、沃化カリウム、塩化セシウム、カリウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、安息香酸カリウムなどの塩類とを組み合わせて触媒として用いることもできる。
【0022】
これらの触媒の使用量は、反応原料化合物の合計量に対して、通常、1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%である。
この付加反応の反応温度は、通常、60〜180℃、好ましくは80〜150℃、より好ましくは80〜120℃であり、反応時間は、通常、6〜96時間である。
上記の反応により、式(1)で示される環状チオアリールエステル(CTE)が得られる。
【0023】
この硫黄原子含有環状化合物は、2分子の4,4′−チオビスベンゼンチオール(TBBT)と2分子のフェニレンジカルボン酸ハロゲン化物とによる原子団が交互に結合された環状体構造を有するものであり、1分子中に6個の硫黄原子が含有された安定な化合物であり、構造的に嵩高いものでありながら硫黄原子の密度が高いために高い屈折率を有するものである。
【0024】
また、本発明においては、下記の反応式(2)に示されるように、上記の環状チオアリールエステル(CTE)と、特定のスルフィド化合物とを反応させる方法により、環状チオアリールエステルの構造骨格における、カルボニル基の炭素原子とこれに結合している硫黄原子との間に、スルフィド基におけるC−C結合が割り込んで挿入された状態の大環状構造体である硫黄原子含有環状化合物(MCTE)が得られる。
【0025】
【化12】
【0026】
以上において、スルフィド化合物に係る式のXおよびYは、上記の式(2)におけると同様に、Xは−CH2 −O−R(Rは炭素数1〜6のアルキル基または置換された若しくは未置換のフェニル基を表す。)であってYは水素原子を表し、またはXとYは結合して炭素数2〜6のアルキレン基を形成するものである。Yが水素原子である場合に、Xの具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、n−ペントキシメチル基、イソペントキシメチル基、n−ヘキソキシメチル基、イソヘキソキシメチル基、置換された若しくは未置換のフェノキシメチル基などを挙げることができる。
また、XおよびYは、スルフィド基に係る2つの炭素原子と共に環状構造を形成するもの、例えばシクロヘキシル環を構成するものであってもよい。
【0027】
好ましいスルフィド化合物の例としては、Xがフェノキシメチル基であってYが水素原子であるフェノキシプロピレンスルフィド(PPS)、Xがn−ブトキシメチル基であってYが水素原子であるn−ブトキシプロピレンスルフィド(BPS)、並びにXとYが互いに結合して炭素数2〜6のアルキレン基を形成し、スルフィド基に係る2つの炭素原子と共に例えばシクロヘキシル環を構成するシクロヘキセンスルフィド(CHS)など挙げることができる。
【0028】
ここに、フェノキシプロピレンスルフィド(PPS)は、例えば、チオ尿素の水溶液に濃硫酸を滴下したものにフェニルグリシジルエーテルを滴下して2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルチウロニウム硫酸塩を得、これを水中において炭酸ナトリウムと作用させる方法によって調製することができる。
また、n−ブトキシプロピレンスルフィド(BPS)およびシクロヘキセンスルフィド(CHS)は、それぞれ、上記の調製法において、フェニルグリシジルエーテルの代わりに、n−ブチルグリシジルエーテルおよびシクロヘキセンオキシドを用いることにより、調製することができる。
【0029】
また、上記の挿入反応は、適宜の溶剤中において、触媒の存在下において実行されるが、ここに、溶剤および触媒の具体例としては、既述の反応式(1)の不可反応におけると同様のものが用いられる。
この挿入反応において、触媒の使用量は、反応原料化合物の合計量に対して、通常、1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%である。
更に、この挿入反応の反応温度は、通常、60〜180℃、好ましくは80〜150℃、より好ましくは80〜120℃であり、反応時間は、通常、6〜96時間である。
上記の挿入反応により、式(2)で示される硫黄原子含有環状化合物(MCTE)が得られる。
【0030】
この硫黄原子含有環状化合物は、環状チオアリールエステル(CTE)の骨格における各カルボニル基の炭素原子とこれに結合する硫黄原子との間に、スルフィド化合物による原子団 −S−CHX−CHY− が挿入された状態のものである。
この硫黄原子含有環状化合物は、1分子中に10個の硫黄原子が含有された安定な化合物であり、嵩高いものでありながら硫黄原子の密度が高いために高い屈折率を有するものである。
【0031】
また、以上の挿入反応において、スルフィド化合物の反応割合を環状チオアリールエステルに対して大過剰とする場合には、挿入される原子団を、スルフィド化合物が重合された形態のブロック状原子団 −(S−CHX−CHY)n −
(nは2以上の整数である。)とすることができ、これにより、式(4)で示される4つのブロック構造を有する化合物を製造することができる。ここに、スルフィド化合物の環状チオアリールエステルに対する割合は、モル比で10倍以上であることが必要であり、に好ましくは30倍以上であり、特に好ましくは50倍以上である。
【0032】
この式(4)で示される硫黄原子含有環状化合物は、1分子中に多数の硫黄原子が含有されたブロックが4つも挿入された安定な化合物であり、更に嵩高いものでありながら硫黄原子の密度が相当に高く、従って高い屈折率を有するものである。
【0033】
また、このようにして得られる、式(4)で示されるブロック構造を有する環状チオアリールエステル化合物に、更に第2のスルフィド化合物を反応させることができる。この場合には、式(4)の化合物を得るために用いられた第1のスルフィド化合物のX,YをそれぞれX1 ,Y1 とし、第2のスルフィド化合物のX,YをそれぞれX2 ,Y2 とすると、下記に示されるように、第1のスルフィド化合物がホモポリマー的に重合して形成されたブロック構造に対し、第2のスルフィド化合物がホモポリマー的に重合して形成されたブロック構造が結合してなる形態のブロック構造が挿入され、これにより、式(5)で示される化合物が得られる。
【0034】
【化13】
−(S−CHX1 −CHY1)n −(S−CHX2 −CHY2)m −
(nおよびmは2以上の整数である。)
【0035】
この式(5)で示される硫黄原子含有環状化合物は、1分子中に多数の硫黄原子が含有されたブロックの4つと、別の同様のブロックの4つが挿入された安定な化合物であり、更に嵩高いものでありながら硫黄原子の密度が非常に高く、従って高い屈折率を有するものである。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
実施例1
容量1リットルの三つ口フラスコに、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTMAB)0.66ミリモルを採り、塩化メチレン300ミリリットルと蒸留水50ミリリットルを加えて攪拌して触媒溶液を調製した。
一方、フタル酸クロライド(PC)の9.9ミリモルを塩化メチレン66ミリリットルで希釈してフタル酸クロライド溶液を調製した。また、水酸化ナトリウム3.6ミリモルを蒸留水12ミリリットルに溶解させたものに4,4′−チオビスベンゼンチオール(TBBT)の1.8ミリモルを加えて得られた溶液を調製した。
そして、フタル酸クロライド溶液の9ミリモル相当分と、4,4′−チオビスベンゼンチオール溶液の9ミリモル相当分とを、触媒溶液に、約6時間をかけて室温で滴下し、その後1時間攪拌した。
その後、塩化メチレン層を蒸留水で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、塩化メチレンを減圧留去し、得られた固形物を脱水クロロホルムで再結晶法により精製して、無色固体2.40gを得た。収率は70%である。
【0037】
この反応生成物は、融点が266〜268℃であり、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴吸収、元素分析並びに質量分析により、式(1)で示される環状チオアリールエステルであることが確認された。
図1にこの化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。また、分析結果は次のとおりである。
元素分析(C40H24O4 S6 )
計算値(%) C:63.13、H:3.18
実測値(%) C:63.35、H:3.05
質量分析 計算値(MW )760.99、実測値(MW )761.70
【0038】
実施例2
アンプル管中に、触媒として第四オニウム塩であるテトラブチルアンモニウムクロライド(TBAC)0.05ミリモルを入れて乾燥した後、実施例1と同様にして得られた環状チオアリールエステル(CTE)の0.25ミリモルと、3−ブトキシプロピレンスルフィド(BPS)(式(3)でXがn−ブトキシメチル基でYが水素原子のもの)1ミリモルを、溶媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)1.25ミリリットルと共に加えた。そして、アンプル管に二方コックを接続して液体窒素中に入れて内容物を完全に凍結させ、減圧脱気した後解凍し、乾燥した高純度窒素ガスで内部を置換した。この操作を3回繰り返した後、凍結脱気した状態でアンプル管を封じ、室温で内容物を解凍した後、90℃のオイルバス中で24時間反応させた。
得られた反応生成物をクロロホルムで希釈し、水で3回洗浄し、クロロホルム層を濃縮した上でn−ヘキサン中に注いで反応生成物を沈殿させ、これを良溶媒であるクロロホルムと貧溶媒であるn−ヘキサンとを用いて再沈精製し、貧溶媒をデカンテーションして固形物を得、これを減圧乾燥して茶褐色の粘性のある固体0.31gを得た。収率は91%である。
【0039】
この反応生成物は、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴吸収、元素分析並びに質量分析により、上記の式(2)において、Xがn−ブトキシメチル基でYが水素原子である、下記式(6)で示される硫黄原子含有環状化合物であることが確認された。
【0040】
【化14】
式中、「n−Bu」はn−ブチル基を示す。
【0041】
図2にこの化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。また、分析結果は次のとおりである。
元素分析(C64H80O8 S10)
計算値(%) C:60.68、H:5.99
実測値(%) C:60.49、H:5.66
質量分析 計算値(MW )1354.98 実測値(MW )1346.22
そして、 1HNMRスペクトルより計算された3−ブトキシプロピレンスルフィド(BPS)の挿入率は100%であった。
【0042】
実施例3
スルフィド化合物として、式(3)においてXがフェノキシメチル基でYが水素原子の3−フェノキシプロピレンスルフィド(PPS)を用い、反応時間を72時間に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、白色粉末0.33gを得た。収率は92%である。
この反応生成物は、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴吸収、元素分析並びに質量分析により、式(2)においてXがフェノキシメチル基でYが水素原子である硫黄原子含有環状化合物であることが確認された。
図3にこの化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。また、分析結果は次のとおりである。
元素分析(C76H64O8 S10)
計算値(%) C:64.02、H:4.52
実測値(%) C:63.81、H:4.22
質量分析 計算値(MW )1425.95、実測値(MW )1424.36
そして、 1HNMRスペクトルにより計算された3−フェノキシプロピレンスルフィド(PPS)の挿入率は100%であった。
【0043】
実施例4
スルフィド化合物として、式(3)において、XおよびYがスルフィド基に係る2つの炭素原子と共にシクロヘキシル環を構成するシクロヘキセンスルフィド(CHS)を用い、反応時間を72時間に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、白色粉末0.30gを得た。収率は97%である。
この反応生成物は、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴吸収、元素分析並びに質量分析により、式(2)において、XおよびYがスルフィド基に係る2つの炭素原子と共にシクロヘキシル環を構成する硫黄原子含有環状化合物であることが確認された。
【0044】
図4にこの化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。また、分析結果は次のとおりである。
元素分析(C64H64O4 S10)
計算値(%) C:63.12、H:5.30
実測値(%) C:62.51、H:5.04
質量分析 計算値(MW )1217.83、実測値(MW )1240.33
そして、 1HNMRスペクトルにより計算されたシクロヘキセンスルフィド(CHS)の挿入率は100%であった。
【0045】
実施例5
触媒としてテトラブチルアンモニウムクロライド(TBAC)0.28ミリモルを用い、実施例1と同様にして得られた環状チオアリールエステル(CTE)の0.07ミリモルと、3−ブトキシプロピレンスルフィド(BPS)(式(3)でXがn−ブトキシメチル基でYが水素原子のもの)3.5ミリモルを、溶媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)0.75ミリリットル中において、90℃で24反応させた。得られた反応生成物をクロロホルムで希釈し、水で3回洗浄した。次にクロロホルム層を濃縮してメタノール中に注ぎ、ポリマーを沈殿させ、これを良溶媒であるクロロホルムと貧溶媒であるメタノールとを用いて再沈精製し、貧溶媒をデカンテーションして固形物を得、これを減圧乾燥して茶褐色の粘性のあるポリマー0.51gを得た。収率は89%である。
【0046】
このポリマーは、赤外線吸収スペクトルおよび核磁気共鳴吸収により、式(4)において、Xがn−ブトキシメチル基でYが水素原子である、下記式(7)で示される硫黄原子含有環状化合物であることが確認された。
また、 1HNMRスペクトルによる数平均分子量、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による数平均分子量および分子量分布を求めた。
【0047】
【化15】
式中、「n−Bu」はn−ブチル基を示す。
【0048】
図5にこの化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。また、測定結果は次のとおりである。
1HNMRスペクトルによる数平均分子量(Mn ):7500
GPCによる数平均分子量(Mn ):84000、分子量分布(Mw /Mn ):1.53
この実施例5は、実施例2に比して、スルフィド化合物である3−ブトキシプロピレンスルフィド(BPS)の使用割合が大きく、環状チオアリールエステル(CTE)の50倍(モル)とされている。このように、大過剰のスルフィド化合物を反応させることにより、スルフィド化合物の重合体よりなるブロックを環状チオアリールエステル(CTE)に挿入することができる。
【0049】
実施例6
実施例5において、3−ブトキシプロピレンスルフィド(BPS)の使用割合を環状チオアリールエステル(CTE)の75倍(モル)としたこと以外は同様にして反応させた。
このようにして得られた生成物は、式(7)で示される化合物であって、 1HNMRスペクトルによる数平均分子量(Mn )が11300、GPCによる数平均分子量(Mn )が102000、分子量分布(Mw /Mn )が1.54のものであった。
【0050】
実施例7
スルフィド化合物として、式(3)でXがフェノキシメチル基でYが水素原子の3−フェノキシプロピレンスルフィド(PPS)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、ポリマー0.56gを得た。収率は86%である。
このポリマーは、赤外線吸収スペクトルおよび核磁気共鳴吸収により、式(4)において、Xが3−フェノキシメチル基であり、Yが水素原子である硫黄原子含有環状化合物であることが確認された。
図6にこの化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。また、測定結果は次のとおりである。
1HNMRスペクトルによる数平均分子量(Mn ):8400
GPCによる数平均分子量(Mn ):72000、分子量分布(Mw /Mn ):2.48
【0051】
実施例8
スルフィド化合物として、式(3)でXおよびYがスルフィド基に係る2つの炭素原子と共にシクロヘキシル環を構成するシクロヘキセンスルフィド(CHS)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、ポリマー0.43gを得た。収率は96%である。
このポリマーは、赤外線吸収スペクトルおよび核磁気共鳴吸収により、式(4)において、XとYが結合してシクロヘキシル環が形成された硫黄原子含有環状化合物であることが確認された。
図7にこの化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。また、測定結果は次のとおりである。
1HNMRスペクトルによる数平均分子量(Mn ):5000
GPCによる数平均分子量(Mn ):6900、分子量分布(Mw /Mn ):1.42
【0052】
実施例9
触媒としてテトラブチルアンモニウムクロライド(TBAC)0.12ミリモルを用い、実施例5と同様にして得られた硫黄原子含有環状化合物(GPCによる数平均分子量(Mn )が63000、分子量分布(Mw /Mn )が1.53、 1HNMRスペクトルによる数平均分子量(Mn ):5200のもの)0.150gと、式(3)でXがフェノキシメチル基でYが水素原子の3−フェノキシプロピレンスルフィド(PPS)0.88ミリモルとを、溶媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)0.75ミリリットル中において、90℃で48時間反応させて粘性のある固体0.30gを得た。収率は98%である。
【0053】
この反応生成物は、赤外線吸収スペクトルおよび核磁気共鳴吸収により、式(5)において、X1 がn−ブトキシメチル基でY1 が水素原子であり、X2 がフェノキシメチル基でY2 が水素原子である、下記式(8)で示される硫黄原子含有環状化合物であることが確認された。また、GPCにより数平均分子量および分子量分布を求めた。
【0054】
【化16】
式中、「n−Bu」はn−ブチル基を、「Ph」はフェニル基を示す。
【0055】
図8にこの化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。また、測定結果は次のとおりである。
1HNMRスペクトルによる数平均分子量(Mn ):11300
GPCによる数平均分子量(Mn ):85000、分子量分布(Mw /Mn ):2.01
この実施例9によれば、スルフィド化合物を2種類用いて順次に反応させることにより、両スルフィド化合物の重合体がブロックとして連結した状態で環状チオアリールエステル(CTE)に挿入されることが理解される。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、硫黄原子を含有してなる新規な環状化合物を得ることができ、この硫黄原子含有環状化合物は高い密度で硫黄原子を含有するために高い屈折率を有するものであり、従って、光学部材の材料として有用である。
また、本発明によれば、上記の硫黄原子含有環状化合物を製造することのできる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による反応生成物の赤外線吸収スペクトル図である。
【図2】本発明の実施例2による反応生成物の赤外線吸収スペクトル図である。
【図3】本発明の実施例3による反応生成物の赤外線吸収スペクトル図である。
【図4】本発明の実施例4による反応生成物の赤外線吸収スペクトル図である。
【図5】実施例5による反応生成物の赤外線吸収スペクトル図である。
【図6】実施例7による反応生成物の赤外線吸収スペクトル図である。
【図7】実施例8による反応生成物の赤外線吸収スペクトル図である。
【図8】実施例9による反応生成物の赤外線吸収スペクトル図である。
Claims (8)
- 4,4′−チオビスベンゼンチオールとフェニレンジカルボン酸ハロゲン化物とを反応させることにより、請求項1に記載の環状チオアリールエステルを得ることを特徴とする硫黄原子含有環状化合物の製造方法。
- 請求項1に記載の式(1)で示される環状チオアリールエステルと、請求項4に記載の式(3)で示されるスルフィド化合物を、環状チオアリールエステルに対してスルフィド化合物が大過剰となる割合で反応させることにより、請求項5に記載の化合物を得ることを特徴とする硫黄原子含有環状化合物の製造方法。
- 請求項5に記載の式(4)で示される、繰り返し単位構造を有する環状チオアリールエステルと、請求項4に記載の式(3)で示されるスルフィド化合物を反応させることにより、請求項7に記載の化合物を得ることを特徴とする硫黄原子含有環状化合物の製造方法。
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