JP4937516B2 - 硫黄原子含有環状化合物の製造方法 - Google Patents
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更に、当該物質が膜形成能を有しない場合であっても、これを適当なバインダーと組合せることによりフィルムを形成することができ、従って当該物質の有する光学特性を利用して、例えば高屈折率層の形成に利用することができる。
従来、高い屈折率を有する物質としては、硫黄原子を含有する有機化合物が知られており、かかる硫黄原子含有化合物としては、例えば特許文献1に、4,4’−チオビスベンゼンチオールとフェニレンジカルボン酸ハロゲン化物との反応により得られる環状チオアリールエステルが開示され、特許文献2には、芳香族ジチオールと二官能性ハロフォルミルオキシ基を有する芳香族化合物との反応によって得られる環状アリールチオカーボネートが開示され、特許文献3には、上記環状チオアリールエステルを加熱重合して得られる硫黄原子含有重合体が開示され、特許文献4および特許文献5には、特定の環状チオカーボネート化合物を加熱重合して得られる硫黄原子含有重合体が開示されている。
本発明の目的は、高い密度で硫黄原子を含有し、従って光学材料として有用な、新規な硫黄原子含有環状化合物の製造方法を提供することにある。
本発明に係る硫黄原子含有環状化合物は、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物(以下、「特定の環状化合物」ともいう。)である。
また、nは2以上の整数であるが、好ましくは2〜10000である。
特に、原料環状化合物として、数平均分子量Mnが500〜3000であり、分子量分布Mw/Mnが1.1〜1.5であって、熱力学的に安定な構造を有するものを用いることにより、付加反応系において、原料環状化合物に係る分子間におけるエステル交換反応の進行を抑制することができることから、付加反応系における目的生成物である、特定の環状化合物を高い収率で得ることができる。
ここで、溶媒としては、特定の環状チオエステルを溶解し得る極性溶媒を用いることが好ましく、その具体例としては、N−メチルピロリドン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、モノクロロベンゼンなどが挙げられ、これらの中では、高い極性を有する点で、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドが好ましい。
極性の低い溶媒を用いる場合には、特定の環状チオエステルにおけるチオエステル部位が開裂しにくくなることがある。
また、溶媒中の特定の環状チオエステルの濃度は、0.05mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1mol/L、特に好ましくは1.0mol/Lである。この濃度が過小である場合には、特定の環状チオエステルの反応が十分に進行せず、また、得られる原料環状化合物は分子量が低いものとなりやすい。また、この濃度が高すぎる場合には、反応時間が一定の長さ以上となると、当該反応時間が長くなるに従って得られる原料環状化合物は分子量が低いものとなるおそれがある。
また、これらの第四オニウム塩と、18−クラウン−6−エーテル、塩化カリウム、臭化カリウム、沃化カリウム、塩化セシウム、カリウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、安息香酸カリウムなどの塩類と組み合わせて触媒として用いることもできる。
触媒の使用割合は、例えば反応原料に対して5〜200mol%である。
ここで、溶媒としては、原料環状化合物を溶解し得る極性溶媒を用いることが好ましく、その具体例としては、N−メチルピロリドン、ジクロロベンゼンなどが挙げられ、これらの中では、高い極性を有する点で、N−メチルピロリドンが好ましい。
極性の低い溶媒を用いる場合には、原料環状化合物におけるチオエステル部位が開裂しにくくなることがある。
また、溶媒中の原料環状化合物の濃度は、0.01mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.0mol/Lである。この濃度が過小である場合には、原料環状化合物の反応が十分に進行せず、また、得られる特定の環状化合物は分子量が低いものとなりやすい。
触媒の使用割合は、例えば反応原料に対して5〜100mol%である。
例えば原料環状化合物1molに対して2molの原料スルフィド化合物を用いることにより、一般式(1)におけるmが1である化合物を得ることができ、また、例えば原料環状化合物1molに対して10mol以上の原料スルフィド化合物を用いることにより、一般式(1)におけるmが5以上である分子量の高い化合物を得ることができる。
また、特定の環状化合物の製造方法においては、原料環状化合物として、熱力学的に安定な構造を有するものを用いることにより、目的生成物である特定の環状化合物を高い収率で得ることができる。
湿度10%以下のドライバック中において、アンプル管に、触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(以下、「TBAC」ともいう。)0.027g(0.10mmol)を入れ、更に回転子を入れ、40℃で5時間撹拌することによって減圧乾燥処理した。次いで、アンプル管に、数平均分子量Mnが2.1×103 、分子量分布がMw/Mnが1.5の原料環状化合物0.037g(0.1mmol)、フェノキシプロピレンスルフィド(以下、「PPS」ともいう。)をチオエステル当量で0.016g(0.1mmol)および溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ともいう。)0.05mL(1.0mol/L)を入れ、二方コックを取り付けた後、当該アンプル管をドライバックから取り出した。次いで、アンプル管内の試料に対して、液体窒素を用いて凍結・脱気を行い、その後、室温で解凍し、アンプル管内を高純度乾燥窒素により置換した。この操作を3回繰り返し、更に30分間凍結・脱気した後、アンプル管を封管した。次いで、アンプル管内の試料を室温で解凍し、反応温度が70℃、反応時間が24時間の条件で反応を行った。反応が終了した後、反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノール不溶物を回収してクロロホルムに溶解し、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈精製を行い、室温で24時間減圧乾燥処理することにより、収率95%で白色固体を得た。
得られた生成物について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、下記式(a)に示す特定の環状化合物であって、数平均分子量Mnが2.3×103 であり、分子量分布Mw/Mnが1.6であることが確認された。また、原料環状化合物に対するPPSの挿入反応率は99%以上であった。
図1においては、得られた生成物のIRスペクトル図を(b)として示す共に、原料環状化合物のIRスペクトル図を(a)として示した。
○ 1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
2.97〜3.15(m,6.0H,Hb ,Hd ),
4.16〜4.22(m,4.0H,Hc ),
5.16(s,4.0H,Ha ),
6.83〜7.93(m,34.0H,aromatic H)
(1)得られた生成物が環状構造を有するものである。
(2)原料環状化合物として安定な構造を有するものを用いることによって付加反応系においては、原料環状化合物に係る分子間におけるエステル交換反応が進行しない。
湿度10%以下のドライバック中において、アンプル管に、触媒としてTBAC0.027g(0.10mmol)を入れ、更に回転子を入れ、40℃で5時間撹拌することによって減圧乾燥処理した。次いで、アンプル管に、数平均分子量Mnが5.4×103 、分子量分布がMw/Mn1.6の原料環状化合物0.037g(0.1mmol)、PPS0.166g(1.0mmol)および溶媒としてNMP0.05mL(0.1mol/L)を入れ、二方コックを取り付けた後、当該アンプル管をドライバックから取り出した。次いで、アンプル管内の試料に対して、液体窒素を用いて凍結・脱気を行い、その後、室温で解凍し、アンプル管内を高純度乾燥窒素により置換した。この操作を3回繰り返し、更に30分間凍結・脱気した後、アンプル管を封管した。次いで、アンプル管内の試料を室温で解凍し、反応温度が70℃、反応時間が24時間の条件で反応を行った。反応が終了した後、反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノール不溶物を回収してクロロホルムに溶解し、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈精製を行い、室温で24時間減圧乾燥処理することにより、収率96%で白色固体を得た。
得られた生成物について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、下記式(b)に示す特定の環状化合物であって、数平均分子量Mnが2.5×103 であり、分子量分布Mw/Mnが1.6であることが確認された。また、原料環状化合物に対するPPSの挿入反応率は95%以上であった。
○IR(KRS film)(cm-1):
3068(νC−H aromatic),
2927(νC−H aliphatic ),
1669(νC=O thioester ),
1597(νC=C aromatic),
1298(νC−O−C ether ),
756(C−S−C sulfide )
○ 1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
2.97〜3.15(m,30.0H,Hb ,Hd ),
4.16〜4.22(m,20.0H,Hc ),
5.16(s,4.0H,Ha ),
6.83〜7.93(m,74.0H,aromatic H)
PPSの使用量を0.332g(2.0mmol)に変更し、反応に供した原料環状化合物に対するPPSのモル比を20としたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
得られた生成物について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、得られた生成物が一般式(1)においてR2 がメチレン基であってmが10を示す特定の環状化合物であって、数平均分子量Mnが5.4×103 、分子量分布Mw/Mnが1.9であることが確認された。また、収率は96%であってPPSの挿入反応率は99%以上であった。
PPSの使用量を下記表1に従って変更したこと以外は参考例1と同様の操作を行った。
得られた生成物の各々について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、各々、実施例3に係る生成物は一般式(1)においてR2 がメチレン基であってmが5を示す特定の環状化合物であり、実施例4に係る生成物は一般式(1)においてR2 がメチル基であってmが10を示す特定の環状化合物であり、実施例5に係る生成物は一般式(1)においてR2 がメチル基であってmが15を示す特定の環状化合物であり、実施例6に係る生成物は一般式(1)においてR2 がメチル基であってmが20を示す特定の環状化合物であり、実施例7に係る生成物は一般式(1)においてR2 がメチル基であってmが25を示す特定の環状化合物であることが確認された。
収率、PPSの挿入反応率、得られた特定の環状化合物における、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnを下記表1に示す。
表1において、「PPS使用量」とは、特定の環状化合物を得るために反応に供した、原料環状化合物に対するPPSのモル比を示す。
(1)得られた生成物が環状構造を有するものである。
(2)原料環状化合物として安定な構造を有するものを用いることによって付加反応系においては、原料環状化合物に係る分子間におけるエステル交換反応が進行しない。
(3)反応がPPSの使用量に対して定量的に進行する。
(4)PPSの使用量が多くなるに従って分子量分布が比較的低い値を保ちながら大きくなる傾向にある。
湿度10%以下のドライバック中において、アンプル管に、触媒としてTBAC0.027g(0.10mmol)を入れ、更に回転子を入れ、40℃で5時間撹拌することによって減圧乾燥処理した。次いで、アンプル管に、特定の環状チオエステル0.037g(0.05mmol)、NMP0.05mL(1.0mol/L)を入れ、二方コックを取り付けた後、当該アンプル管をドライバックから取り出した。次いで、アンプル管内の試料に対して、液体窒素を用いて凍結・脱気を行い、その後、室温で解凍し、アンプル管内を高純度乾燥窒素により置換した。この操作を3回繰り返し、更に30分間凍結・脱気した後、アンプル管を封管した。次いで、アンプル管内の試料を室温で解凍し、反応温度が、各々、50℃、70℃、90℃および120℃、反応時間が24時間の各条件で反応を行った。反応が終了した後、反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノール不溶物を回収してクロロホルムに溶解し、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈精製を行い、室温で24時間減圧乾燥処理することにより、白色固体を得た。
得られた生成物について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、各々、一般式(2)で示される原料環状化合物であることが確認された。
収率、特定の環状チオエステルの反応率、得られた原料環状化合物における、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnを下記表2に示すと共に、反応温度が90℃の条件の生成物、および反応温度が120℃の条件の生成物のIRスペクトル図を図2に示す。
図2においては、反応温度90℃の生成物のIRスペクトル図を(b)、反応温度120℃の生成物のIRスペクトル図を(c)として示す共に、環状チオエステルのIRスペクトルを(a)として示した。
(1)得られた生成物が環状構造を有するものである。
(2)反応温度50〜90℃の条件下においては、特定の環状エステルの反応が副反応を伴うことなく進行する。
(3)反応温度120℃の条件下においては、特定の環状エステルの反応に副反応が伴う。
(4)反応温度50〜90℃の範囲においては、反応温度の上昇に伴って、特定の環状チオエステルの反応率が上昇する。
(5)反応温度50〜90℃の範囲においては、反応温度の上昇に伴って、得られる環状化合物の分子量が増加する。
反応温度50℃、70℃および90℃の各々の条件下において、反応時間を変更したこと以外は実験例1と同様の操作を行った。
得られた生成物の各々において、SEC分析およびIR分析を行うことにより、一般式(2)で示される原料環状化合物であることを確認すると共に、特定の環状チオエステルの反応率、得られた原料環状生成物における、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnを確認した。結果を図4〜図6に示すと共に、反応温度90℃で反応時間24時間の条件において得られた生成物、および反応温度90℃で反応時間168時間の条件において得られた生成物のIRスペクトル図を図3に示す。
図3において、反応時間24時間の生成物のIRスペクトル図を(a)、反応時間168時間の生成物のIRスペクトル図を(b)として示す。
図4〜図6においては、反応温度50℃の条件下において得られた生成物の値を「■(黒四角)」、反応温度70℃の条件下において得られた生成物の値を「●(黒丸)」、反応温度90℃の条件下において得られた生成物の値を「▲(黒三角)」で示した。
(1)得られた生成物が環状構造を有するものである。
(2)反応温度50および70℃の条件下においては、反応時間を336時間にまで延ばしても特定の環状エステルの反応が副反応を伴うことなく進行する。
(3)反応温度90℃の条件下においては、反応温度を336時間とすると特定の環状エステルの反応が副反応を伴う。
(4)反応時間の増加に伴って、特定の環状チオエステルの反応率が上昇する傾向がある。
(5)反応温度70℃および90℃の条件下においては、得られる環状化合物の分子量は、一定の反応時間までは反応時間の増加に伴って増加し、それ以降は反応温度の増加に伴って減少し、更に反応時間336時間後においては22000に収束する。
(6)反応温度70℃および90℃の条件下においては、得られる環状化合物の分子量分布は、反応温度の増加に伴って減少し、反応時間336時間後においては1.5に収束する。
(7)反応温度50℃の条件下においては、反応時間の増加に伴って、得られる環状化合物の分子量および分子量分布が上昇する。
反応温度70℃、反応時間12〜336時間の各々の条件下において、NMP中の特定の環状チオエステルの濃度(以下、「原料濃度」ともいう。)を、0.25mol/L、0.5mol/Lおよび1.0mol/Lに各々変更したこと以外は実験例1と同様の操作を行った。
得られた生成物の各々において、SEC分析およびIR分析を行うことにより、一般式(2)で示される原料環状化合物であることを確認すると共に、特定の環状チオエステルの反応率、得られた原料環状化合物における、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnを確認した。結果を図7〜図9に示す。
図7〜図9においては、原料濃度0.25mol/Lの条件下において得られた生成物の値を「▲(黒三角)」、原料濃度0.5mol/Lの条件下において得られた生成物の値を「■(黒四角)」、原料濃度1.0mol/Lの条件下において得られた生成物の値を「●(黒丸)」で示した。
(1)原料濃度の低下に伴って、特定の環状チオエステルの反応率が低下する。
(2)得られる環状化合物の分子量は、一定の反応時間までは反応時間の増加に伴って増加し、それ以降は反応温度の増加に伴って減少し、更に反応時間336時間後においては2100に収束する。
(3)得られる環状化合物の分子量分布は、反応温度の増加に伴って減少し、反応時間336時間後においては1.4に収束する。
従って、上記の参考例1および実施例1〜実施例7においては、熱力学的に安定な構造を有する原料環状化合物を反応原料として用いることとし、付加反応系における、原料環状化合物に係る分子間におけるエステル交換反応の進行の抑制を試みた。
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