JP4135137B2 - パンケーキ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパンケーキ(テープハブに磁気テープを巻回したテープ巻取体)に係り、特に、カセットテープやビデオテープを始めとして、コンピュータのデータバックアップ用のパンケーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
カセットテープやビデオテープを始めとして、コンピュータのデータバックアップ用にも使用されている各種のパンケーキ(テープハブに磁気テープを巻回したテープ巻取体)は、ロール状に巻回された幅広な帯状の磁気テープ原反を、送り出し側から引き出して搬送させながら裁断部で複数の幅狭な磁気テープに裁断して、巻き取り側のフランジレス型のテープハブに巻き取ることにより製造される。
【0003】
このようなテープハブに磁気テープを巻回したテープ巻取体は、業界内では一般に前記したようにパンケーキと称呼されている。このパンケーキは、種々の処理がなされるため、何回か巻き返しが行なわれ、最終出荷形態としてカセットに巻き込まれて出荷されることが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カセットに巻き込まれた形態での磁気テープの巻き姿が良くないと、輸送中に磁気テープのエッジが折れたり、磁気再生装置等で磁気テープを使用する際に磁気テープの走行性が悪くなったりするという問題がある。すなわち、カセットに巻き込まれた形態での磁気テープの巻き姿は、磁気テープ製造過程での巻き姿の影響を受ける。
【0005】
裁断部で裁断された磁気テープは巻取テープハブに高速で巻き取られ、しかも一度に複数本巻き取らなくてはならないことから巻き取りの機械精度を出しにくい。このため、裁断装置の巻き取り側のテープハブに巻き取られた磁気テープの巻き面がきれいに巻かれずに、微小にズレた状態で重ね巻きされ易いので、巻き癖がついていることが多い。
【0006】
また、裁断部で裁断される磁気テープ原反は、磁気テープ原反を製造する巻取工程での巻き品質を良くするために、ロール両端部の厚さよりもロール中央部の厚さが厚い中高ロール形状に巻回されており、裁断された磁気テープには、図6(a)、(b)に示されるように、長手方向に沿って湾曲癖がつき易い。
【0007】
図示のように、磁気テープを平坦面上に置いたときの所定直線長さLに対する湾曲幅Dで湾曲程度が表される。この湾曲は、最終出荷形態としてカセットに巻き込まれた状態で、磁気テープ巻回体が上に凸状を呈するものが+と、上に凹状を呈するものが−と称されている。
【0008】
中高ロール形状の磁気テープ原反から裁断された磁気テープ1は、採取する磁気テープ原反の幅方向部位により湾曲形状が異なる。そして、図6(a)に示される+方向への湾曲が、最終出荷形態としてカセットに巻き込まれた状態で巻姿が良いとされ、図6(b)に示される−方向への湾曲は巻姿が悪いとされている。
【0009】
湾曲癖のある磁気テープ1をテープハブ2に巻き取ってパンケーキ3を製造した場合、カセット4に巻き込まれた状態では、+方向への湾曲を有する磁気テープ1は図7(a)に示される形状となり、−方向への湾曲を有する磁気テープ1は図7(b)に示される形状となる。
【0010】
このように、磁気テープ原反の中高ロール形状等に起因して、+方向への湾曲、−方向への湾曲、及び磁気テープ原反の幅方向中央部近傍より採取された湾曲のないものが生じる。これらは中高ロール形状や磁気テープベースの厚さムラ等に起因してほぼ一定確率で生じ、好ましいとされる+方向への湾曲のものだけを製造する訳にはいかない。そのため、+方向への湾曲のものだけを製造するには、選別工程や巻き返し工程が必要となる。
【0011】
このような好ましい+方向への湾曲のものだけを製造する技術として、たとえば、特開平9−138945号公報に開示されているように、巻取軸(テープハブに相当する)の一端側から他端側へ軸径の異なるテーパ状の巻取面を形成して対処する手段が開示されている。
【0012】
しかし、この手段では、テーパ状の巻取面を使用するため、これに対応したガイドローラ等の調整が必要であり、セッティング等に手間を要し生産性が悪い。また、巻取軸が高価になるという問題もある。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、磁気テープ原反から裁断された全ての磁気テープを、テープハブに巻き姿良く巻き込むことができ、製品歩留りを顕著に向上させることができるパンケーキを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、テープハブに磁気テープがロール状に巻回されてなるパンケーキであって、前記テープハブは、軸心方向の荷重に対する該テープハブの撓み強度が一側面側と他側面側とで異なるように形成されており、前記磁気テープが湾曲癖を付けられて巻回されていることを特徴とするパンケーキを提供する。
【0015】
ここで「軸心方向の荷重に対する撓み強度」とは、テープハブ外周に軸心方向の荷重が加わった際にテープハブが軸心方向に変形する度合いをいい、変形が少ない場合を撓み強度が高いとし、変形が多い場合を撓み強度が低いとする。
【0016】
本発明によれば、テープハブの軸心方向の荷重に対する撓み強度を一側面側と他側面側とで異ならせているので、磁気テープがテープハブに巻き取られ、テープハブに軸心方向の荷重が加わった際に、テープハブの撓みが一側面側と他側面側とで異なる。これにより、磁気テープは湾曲を有するようにテンションが加えられながらテープハブに巻き取られる。
【0017】
したがって、磁気テープが+方向への湾曲を有するようにテープハブの向きをセットすれば、磁気テープが+方向への湾曲を有するもの、−方向への湾曲を有するもの、及び湾曲のないもののいずれであっても、強制的に+方向への湾曲を有するよう巻き込まれる。これにより、テープハブに巻き姿良く巻き取ることができ、パンケーキの製品歩留りを顕著に向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面にしたがって本発明に係るパンケーキの製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0019】
本発明のパンケーキに適用される製造装置は、主として、ロール状に巻回された幅広な帯状の磁気テープ原反を複数の幅狭な磁気テープに裁断する裁断装置10と、磁気テープをテープハブに巻き取る巻き取り装置50と、で構成される。
【0020】
図1は主に裁断装置10の一例を示す概略図であり、図2は裁断部14の側面図であり、図3は巻き取り装置50の一例を示す概略図である。図1に示されるように裁断装置10は、主として、送り出し部11、裁断部14で構成される。なお、図1において、巻き取り装置50の図示は省略されている。
【0021】
送り出し部11の巻芯12には、ロール状に巻回された磁気テープ原反20が装着される。磁気テープ原反20は、通常、非磁性支持体上に強磁性微粒子を含む磁性層が塗布法や真空蒸着法等により形成され、その磁性層に配向処理、乾燥処理、表面処理等が行われることによって製造される。
【0022】
裁断部14は、幅広で帯状の磁気テープ原反20を上下一対の回転刃30、32により複数本の磁気テープ1、1、…に裁断する装置であり、図2に示されるように、受け刃としてローラ状に形成された複数の回転下刃30、30…と、回転下刃30との間で磁気テープ原反20に剪断力を与えて裁断する薄円盤状の複数の回転上刃32、32…とで構成される。
【0023】
回転下刃30は、下側シャフト34にスペーサ36を介して嵌合固定され、回転上刃32は、下側シャフト34と平行な上側シャフト38にスペーサ40を介して嵌合固定され、回転上刃32と回転下刃30との刃先部分が互いに重なり合うように配置されている。そして、回転上刃32は図示しないバネにより図2の軸方向右側に付勢され、回転上刃32の刃先部分が回転下刃30の刃先部分に当接した状態で位置決めされる。
【0024】
上側シャフト38と下側シャフト34はそれぞれ回転速度を自由に可変可能なモータ41、43に接続され、回転上刃32と回転下刃30の周速度を個別に可変できるようになっている。
【0025】
送り出し部11と裁断部14との間には、磁気テープ原反20の搬送路を形成する複数のガイドローラ22、22、…と、磁気テープ原反20の搬送速度を規制するグランドサクションドラム24が設けられる。グランドサクションドラム24は、回転速度を自由に可変可能なモータ(図示せず)に接続され、グランドサクションドラム24の周面に磁気テープ原反20を吸着して回転することにより、磁気テープ原反20の搬送速度を任意に可変する。
【0026】
そして、テープハブ2のボス5の回転速度は、このグランドサクションドラム24の周速度を基準として制御される。磁気テープ原反20の搬送速度を規制する手段としてはグランドサクションドラム24に限定されず、磁気テープ原反20を挟持搬送するピンチローラを使用することもできる。
【0027】
裁断部14とそれぞれのテープハブ2との間にはテンションローラ28が設けられ、裁断時における磁気テープ原反20の搬送方向のテンションが任意に調整される。
【0028】
図3(a)は巻き取り装置50の正面図であり、(b)は側面図である。同図(b)において、説明の便宜のため、磁気テープ1の図示は省略してある。
【0029】
図3に示されるように、磁気テープ供給手段である巻き取り装置50は、装置の本体であるアーム52と、アーム52の一端に回動自在に設けられ、テープハブ2に磁気テープ1を供給するタッチローラ54と、アーム52の中央部に回動自在に設けられ、磁気テープ1をタッチローラ54に供給するガイドローラ56と、アーム52の他端に設けられ、図示しない躯体に固定されている軸60に回動自在に嵌着される軸受部58と、より構成される。
【0030】
テープハブ2は図示しない駆動手段によって図3(a)の矢示の方向に回転駆動される。アーム52は軸60を中心に図示しない付勢手段によって図3(a)のA方向に付勢されることにより、タッチローラ54が磁気テープ1を介してテープハブ2に押付けられている。テープハブ2に巻き取られる磁気テープ1の量が増えるにつれて、外径は増大していく。したがって、それに伴い、アーム52は軸60を中心に図3(a)のB方向に移動していく。
【0031】
タッチローラ54には独立の駆動手段は設けられておらず、タッチローラ54は磁気テープ1の搬送に伴い矢示の方向につれ回りする。なお、巻き取り装置50の構成は、本実施形態に拘束されるものではなく、各種の構成が採用できる。
【0032】
図4は、本発明に適用されるテープハブ2等の断面図である。このうち、(a)〜(c)が本発明に適用されるテープハブ2であり、(d)が従来例のテープハブである。なお、いずれの図も上半分のみ断面で表してある。
【0033】
同図(d)に示される従来例のテープハブのボス15は、左右対称の断面形状となっている。したがって、磁気テープ1がテープハブに巻き付き、ボス15に軸心方向の荷重が加わった際にも通常はボス15の変形はない。
【0034】
これに対し、本発明に適用されるテープハブ2においては、ボス5を縦弾性係数(ヤング率)の比較的小さい材料で形成するとともに、各種工夫をこらし、ボス5の軸心方向の荷重に対する撓み強度を一側面側と他側面側とで異ならせている。したがって、磁気テープ1がテープハブ2に巻き付き、ボス5に軸心方向の荷重が加わった際に、ボス5の撓みが一側面側と他側面側とで異なる。これにより、磁気テープ1は湾曲を有するようにテンションが加えられながらテープハブ2に巻き取られる。
【0035】
同図(a)のボス5は、断面を略コ字状としている。これにより、左側面側から右側面側に行くにしたがって、軸心方向の荷重に対する撓み強度が徐々に減少するような構成となっている。
【0036】
同図(b)のボス5は、円筒断面であり、左右方向に3分割されており、異なる材質で構成されている。そして、左側面側から右側面側に向かって段階的に縦弾性係数の低い材質が選択されている。これにより、左側面側から右側面側に行くにしたがって、軸心方向の荷重に対する撓み強度が段階的に減少するような構成となっている。なお、分割数は図示の構成に限定されるものではない。
【0037】
同図(c)のボス5は、円筒断面であり、同一材質の発泡性の材料、たとえば、ポリウレタン樹脂で構成されている。そして、左側面側から右側面側に向かって発泡割合が増加するように形成されている。これにより、左側面側から右側面側に行くにしたがって、軸心方向の荷重に対する撓み強度が徐々に減少するような構成となっている。なお、発泡割合のコントロールには、泡の数及び泡のサイズの両方が可能である。
【0038】
以上のように、テープハブ2におけるボス5の構成は任意に選択できるが、磁気テープ1がテープハブ2に巻き付き、テープハブ2のボス5に軸心方向の荷重が加わった際に、ボス5の撓みが一側面側と他側面側とで10〜300μm異なるような構成が好ましいことが実験により確認されている。
【0039】
次に、上記のように構成されたパンケーキ3の製造装置の作用を説明する。
【0040】
まず、送り出し部11において巻芯12に巻回されたロール状の磁気テープ原反20は、送り出し部11から連続的に引き出され、裁断部14に搬送される。そして、裁断部14で複数本の磁気テープ1に裁断されてテープハブ2のボス5に巻き取られる。これにより、例えば磁気テープ原反20が100〜500本に裁断され、規定の幅寸法(例えば12.65mm、25.4mm、3.81mm等)の磁気テープ1が製造される。
【0041】
図5は、パンケーキ3の断面形状を示し、(a)は製造直後の形状を示し、(b)は製造後、所定時間のエージングを経たときのパラボラ状となっている形状を示す。
【0042】
ここで、磁気テープ1の湾曲方向を巻き込み規制方向に一致させることで、湾曲癖のある磁気テープ1をカセット4にきれいに巻き込むことができる理由を説明する。
【0043】
湾曲癖が、図6(a)の+方向、(b)の−方向の一方向のみにあるような静的な湾曲癖の磁気テープ1を長手方向に伸ばすと、湾曲した+方向又は−方向の一方向のみに付勢力が働く。ちなみに、静的な湾曲の反対の動的な湾曲とは、磁気テープ1を走行させたときの湾曲であり、静的な湾曲より短波長のものをいう。
【0044】
一方、磁気テープ1を巻き取り装置50でテープハブ2に巻き取る場合には、テープハブ2側面に磁気テープ幅方向の一端側が当接して位置決めされることにより、磁気テープ1の巻き取り規制がなされる。
【0045】
したがって、磁気テープ1の湾曲方向、すなわち付勢力の方向が、巻き取り規制方向に一致するように磁気テープ1を巻き取れば、磁気テープ1がカセット4の面又はテープハブ2側面に位置決めされながら巻き取られるので、巻き姿を良くすることができる。
【0046】
逆に、磁気テープ1の湾曲方向が巻き取り規制方向とは反対になるように磁気テープ1を巻き取れば、磁気テープ1はカセット4の面又はテープハブ2側面から離れる方向に付勢されているので、磁気テープ1がカセット4の面又はテープハブ2側面に位置決めされにくくなり、巻き姿が悪くなる。
【0047】
以上、本発明に係るパンケーキの製造方法の実施形態の例について説明したが、本発明は上記実施形態の例に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0048】
たとえば、本実施形態では、磁気テープ原反20より裁断部14を経て巻き取り装置50により巻込まれる態様が採られているが、予めスリット処理され、所定幅の磁気テープ1の状態から送り出される態様であってもよい。
【0049】
また、本実施形態ではハブ2としてフランジレスのものが使用されているが、フランジ付きのハブを使用してもよい。
【0050】
更に、本発明に以下の付加工程を加えることも可能である。すなわち、磁気テープ1の材質によっては縦弾性係数(ヤング率)が高く通常の状態では湾曲癖をつけにくいものがある。このような磁気テープ1に対して、テープハブ2に巻き込む前に加熱処理を施せば、湾曲癖をつけやすくできる。
【0051】
【実施例】
上記構成のパンケーキの製造装置を使用して、パンケーキ3の製造を行い、3日(72時間)エージングした後に評価を行った。このとき使用したテープハブ2は、図4(a)に示される断面形状のものである。同時に、従来のテープハブ(図4(d)に示される断面形状のもの)を使用した比較例についても評価を行った。使用した磁気テープ1は、いずれもテープ幅が12.65mm(1/2インチ)のものである。
【0052】
本発明のテープハブ2、従来のテープハブ、のいずれについても、同一条件で30回テストを行い、図6に示される所定直線長さL(1m)に対する湾曲幅D(単位:mm)の平均値を求めた。その結果によれば、本発明のテープハブ2では湾曲幅Dは+3.0mmであり良好な結果であった。一方、従来のテープハブでは−0.5mmであり好ましくない結果であった。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、テープハブの軸心方向の荷重に対する撓み強度を一側面側と他側面側とで異ならせているので、磁気テープがテープハブに巻き取られ、テープハブに軸心方向の荷重が加わった際に、テープハブの撓みが一側面側と他側面側とで異なる。これにより、磁気テープは湾曲を有するようにテンションが加えられながらテープハブに巻き取られる。
【0054】
したがって、磁気テープが+方向への湾曲を有するようにテープハブの向きをセットすれば、磁気テープが+方向への湾曲を有するもの、−方向への湾曲を有するもの、及び湾曲のないもののいずれであっても、強制的に+方向への湾曲を有するよう巻き込まれる。これにより、テープハブに巻き姿良く巻き取ることができ、パンケーキの製品歩留りを顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パンケーキの製造装置のうちの裁断装置の構成図
【図2】裁断部の側面図
【図3】パンケーキの製造装置のうちの巻き取り装置の構成図
【図4】テープハブの断面図
【図5】パンケーキの断面図
【図6】磁気テープの湾曲方向を説明する説明図
【図7】パンケーキをカセットに収納した状態の断面図
【符号の説明】
1…磁気テープ、2…テープハブ、3…パンケーキ、4…カセット、5…ボス、10…裁断装置、11…送り出し部、14…裁断部、20…磁気テープ原反、50…巻き取り装置(磁気テープ供給手段)

Claims (1)

  1. テープハブに磁気テープがロール状に巻回されてなるパンケーキであって、
    前記テープハブは、軸心方向の荷重に対する該テープハブの撓み強度が一側面側と他側面側とで異なるように形成されており、前記磁気テープが湾曲癖を付けられて巻回されていることを特徴とするパンケーキ。
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