JP2004276146A - 裁断装置及びそれを用いた磁気テープの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スリッタ下流側における複数のテープに均一なテンションを付与することができ各テープの搬送を安定化できる。
【解決手段】個別ガイドローラ84の軸86をモータ92で磁気テープ26の搬送方向に回転駆動させると共に、制御装置94で軸回転数を制御してローラ胴体部88に磁気テープ26の搬送方向のトルクを発生させるようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】個別ガイドローラ84の軸86をモータ92で磁気テープ26の搬送方向に回転駆動させると共に、制御装置94で軸回転数を制御してローラ胴体部88に磁気テープ26の搬送方向のトルクを発生させるようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は裁断装置及びそれを用いた磁気テープの製造方法に係り、特に、幅寸法精度が良く、且つ低ノイズで高密度の磁気テープの製造に適した裁断装置及びそれを用いた磁気テープの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の各種の磁気テープは、その製造工程において、巻戻装置から巻き戻された幅広な磁気テープ原反をスリッタで所定幅の幅狭な複数本の磁気テープに裁断される。裁断された複数本の磁気テープは、相互に並列した状態でガイドローラを経由して連続的に巻取装置に巻き取られることにより製造される。
【0003】
スリッタにおいて裁断される複数本の磁気テープの幅寸法にバラツキがなく均一なものを得るには、各磁気テープの搬送方向に作用するテンションを均一化することが重要になる。これは、各磁気テープの搬送方向に作用するテンションにバラツキがある状態で裁断されると、スリッタ位置での裁断幅は各磁気テープで同じであっても、最終製品の磁気テープのようにテンションフリーになったときに各磁気テープの幅にバラツキが生じてしまうためである。
【0004】
ところで、磁気テープ原反は、裁断工程の前工程でロール状に巻き取られるが、その際に巻き取り時のエアを排除する目的で塗布厚みが幅方向中央部で厚くなっており、ロールにしたときにロール中央部が高い中高形状になっている。従って、巻戻装置からスリッタに向けて巻き戻された磁気テープ原反は幅方向中央部ほど長手方向に伸びた状態になっており、スリッタで裁断された複数本の磁気テープのうち、磁気テープ原反の中央部に対応する磁気テープのテンションは磁気テープ原反の両端部に対応する磁気テープのテンションよりも低くなっている。この結果、磁気テープ原反の中央部に対応する磁気テープは磁気テープ原反の両端部に対応する磁気テープよりも弛み易くなっている。
【0005】
図6に示すように、このような中高形状の磁気テープ原反をスリッタで裁断して得られた複数本の磁気テープ1を、円柱状の1本のガイドローラ2にラップさせてガイドして巻取装置に巻き取る場合、各磁気テープ1の巻き取りテンションを同じにしても、ガイドローラ2によるテンションカット作用により、ガイドローラ2の上流側に生じたテンションのバラツキはなくならない。即ち、ガイドローラ2の上流側において磁気テープ原反の中央部に対応する磁気テープの弛みが解消されないので、磁気テープ1の幅寸法にバラツキが生じたり、裁断面が不均一になる等の問題が生じ易かった。
【0006】
更には、近年、磁気テープの低ノイズ化や高密度化を目的として、磁気テープ面を研削したりクリーニングしたりするため、スリッタと巻取装置との間に、研削装置(例えばダイヤモンドホイール)やクリーニング装置(例えば不織布で擦る装置)を設けることがあるが、ガイドローラのテンションカット作用に加えて研磨装置やクリーニング装置によるテンションカット作用が加わるため、複数本の磁気テープのテンションを均一化することが一層難しくなってきている。
【0007】
このことから、出願人は特許文献1において、1本の軸に少なくともテープ本数分のローラ胴体部がそれぞれベアリングを介して回動自在に装着された個別ガイドローラを設けて各テープを個別にガイドすることを提案した。これにより、個別ガイドローラの各ローラ胴体部は、スリッタで裁断された各テープごとに個別に従動回転され、他の磁気テープの影響を受けないので、テンションカット作用を小さくできるという効果がある。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−187660号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の個別ガイドローラであっても、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の磁気テープのように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープの製造においては、まだ不十分であるという問題がある。即ち、このような厳しい品質が要求される磁気テープの製造においては、複数本の磁気テープのテンションを一層均一化し、各磁気テープの幅寸法精度、研削精度、クリーニング精度のバラツキを防止しないと、ロス発生率が高くなり高い生産性を得ることができない。
【0010】
本発明は、スリッタ下流側における複数のテープに均一なテンションを付与することができ各テープを弛みなく安定に搬送できるので、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の磁気テープのように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープの製造に好適な裁断装置及びそれを用いた磁気テープの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、巻戻装置から巻き戻し搬送された幅広のウエブ原反をスリッタで複数本の幅狭なテープに裁断して各テープごとに個別に巻取装置に巻き取ると共に、前記スリッタと前記巻取装置との間に、1本の軸に少なくともテープ本数分のローラ胴体部がそれぞれベアリングを介して回動自在に装着された個別ガイドローラを設けて各テープを個別にガイドするように構成した裁断装置において、前記個別ガイドローラは、前記軸を前記テープの搬送方向に回転駆動させる駆動手段と、前記駆動手段で前記軸の軸回転数を制御して前記ローラ胴体部にトルクを発生させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の裁断装置によれば、従来のように、スリッタで裁断された各テープを単に個別にガイドするだけではなく、個別ガイドローラの軸をテープ搬送方向と同方向に回転駆動させると共に、軸回転数を制御してローラ胴体部にテープ搬送方向のトルクを発生させるようにした。このトルクにより、スリッタ下流側における複数のテープに均一なテンションを付与することができ各テープを弛みなく安定に搬送できる。即ち、個別ガイドローラは、軸にベアリングを介してテープに接触する回転胴体部が保持されていると共に、駆動手段で軸の軸回転数を制御できる構成になっている。従って、個別ガイドローラにドローをかけることで、常時スリップした状態で回転する。また、回転胴体部をベアリングを介して保持することで、発生するトルクが小さく、回転数に対するトルクの傾きが非常に小さくなる。従って、個別ガイドローラにドローをかけることで、テープに対して微小トルクを安定付与させることができ、これにより、各テープに僅かなテンションが均一に付与される。これにより、各テープを弛みなく安定に搬送できる。
【0013】
本発明の請求項2は請求項1において、制御手段は、軸回転数をローラ胴体部の周速に換算した換算周速をスリッタ位置でのテープ搬送速度に対比したドロー比が、テープ搬送速度を100としたときに100よりも大きく120以下になるように駆動手段を制御することを特徴とする。これは、テープに対して適切な大きさのトルクを発生させるための具体的な方法であり、ドロー比が100よりも大きく120以下になるように個別ガイドローラの軸を回転駆動するようにした。これにより、テープの弛みをなくすことができると共に、上限を120以下にすることでテープを傷つけたり、ローラ胴体部と軸との間のベアリングが過度に磨耗したりすることもない。
【0014】
本発明の請求項3は請求項2において、個別ガイドローラを前記テープ搬送方向に沿って複数段設け、制御手段は、テープ搬送方向からみた最下流の個別ガイドローラのドロー比が最上流の個別ガイドローラのドロー比よりも大きくなるように各個別ガイドローラの駆動手段を制御することを特徴とする。これは、複数の個別ガイドローラを設けた場合、スリッタ側に位置する最上流の個別ガイドローラのドロー比を100よりも大きくしてもその後の個別ガイドローラのドロー比が同じでは、個別ガイドローラ同士の間にテープの弛みが発生し易くなり、結局、スリッタと巻取装置との間における各テープのテンションにバラツキが生じてしまう。しかし、本発明のように、最下流の個別ガイドローラのドロー比が最上流の個別ガイドローラのドロー比よりも大きくなるように制御することで、スリッタと巻取装置との間における各テープのテンションを均一化することができる。
【0015】
本発明の請求項4は請求項2又は3において、個別ガイドローラをスリッタから2m以内の近い位置に配置する場合には、制御手段は、該個別ガイドローラのドロー比が101以下になるように駆動手段を制御することを特徴とする。これは、スリッタに近い個別ガイドローラのドロー比を101を超えて大きくすると、スリッタでの裁断幅が不安定になり易く、各テープの裁断幅にバラツキが生じる場合があるためである。従って、個別ガイドローラがスリッタからテープ搬送距離において2m以内、好ましくは1.5m以内に配置される場合には、ドロー比を101以下にすることが好ましい。但し、個別ガイドローラを複数設け、複数の個別ガイドローラが2m以内に該当する場合には、最上流の個別ガイドローラのドロー比のみを101以下にすればよい。
【0016】
本発明の請求項5は請求項1〜4の何れか1において、スリッタと個別ガイドローラとの間に、テープに圧接してテープ面を研削する研削装置とテープに圧接してテープ面をクリーニングするクリーニング装置の少なくとも1つが設けられていることを特徴とする。このような構成の場合には、ガイドローラのテンションカット作用に加えて研磨装置やクリーニング装置によるテンションカット作用が加わるため、複数本の磁気テープのテンションを均一化することが一層難しく、本発明の裁断装置が有効だからである。
【0017】
本発明の請求項6は前記目的を達成するために、ロール状の幅広な磁気テープ原反を巻き戻し搬送して複数本の幅狭な磁気テープに裁断すると共に、裁断された各磁気テープを個別に巻き取る磁気テープの製造方法において、請求項1から5の何れか1の裁断装置を用いて磁気テープ原反から磁気テープを製造することを特徴とする。
【0018】
本発明の磁気テープの製造方法によれば、請求項1から5の何れか1の裁断装置を用いて磁気テープ原反から磁気テープを製造するようにしたので、スリッタ下流側における複数の磁気テープに均一なテンションを付与することができ各テープの搬送を安定化できる。これにより、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の磁気テープのように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープを製造することができる。
【0019】
本発明の請求項7は請求項6において、磁気テープ原反のロール形状が中高形状であることを特徴とする。このような中高形状の場合には、磁気テープ原反の中央部に対応する磁気テープの弛みが発生しやすく、本発明の裁断装置が特に有効だからである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る裁断装置及びそれを用いた磁気テープの製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】
図1は、本発明に係る磁気テープの製造方法に用いられる本発明の裁断装置10の一例を示した全体構成図である。図2は裁断装置10の概略斜視図である。尚、本実施の形態では、スリッタと巻取装置との間に研削装置を配置した例で説明する。
【0022】
図1及び図2に示される、裁断装置10は、主として、ロール状に巻回された幅広なウエブ状の磁気テープ原反20を巻き戻して送り出す巻戻装置13と、幅広な磁気テープ原反20を複数本の幅狭な磁気テープ26に裁断するスリッタ14と、磁気テープ26を巻き掛けて研削する研削装置80と、個別ガイドローラ84と、磁気テープ26を個別に巻取りリール17のハブ18(巻芯)に巻取る巻取装置50とで構成される。
【0023】
巻戻装置13における巻戻しリール11のハブ12(巻芯)には、ロール状に巻回された磁気テープ原反20が装着される。
【0024】
この磁気テープ原反20は、通常、非磁性の可撓性支持体上に強磁性微粒子を含む磁性塗料を塗布処理して磁性層を塗設し、その磁性層に配向処理、乾燥処理、カレンダー処理(磁性層の平滑化処理)や硬化処理等の表面処理等を行うことによって製造される。そして、巻戻装置13に巻回される磁気テープ原反20は、図2に示すように、ロール中央部が高い中高形状に形成される。
【0025】
非磁性の帯状可撓性支持体としては、一般に、所定幅の、長さが45〜20000m、厚さが2〜200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6 −ナフタレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等のプラスチックフィルム、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンブテン共重合体等の炭素数が2〜10のα−ポリオレフィン類を塗布又はラミネートした紙等からなる可撓性帯状物又は該帯状物を基材としてその表面に加工層を形成した帯状物が使用できる。
【0026】
磁性塗料に使用される強磁性粉末としては、各種の材料が使用できるが、強磁性粉末が六方晶フェライトである場合は、板径が35nm以下、板比が2以上のものが、強磁性粉末が強磁性金属粉末である場合は、長軸長が60nm以下、軸比が2以上のものが、好ましく使用できる。この強磁性粉末のパーティクルサイズとしては、平均一次粒子体積が10000nm3 以下のものが、好ましく使用できる。
【0027】
強磁性粉末を浸漬する溶剤は、シキロへキサノンを含む溶液が好ましい。シキロヘキサノンの含有率は全溶剤量の30〜100重量%であることが好ましい。シキロヘキサノン以外の溶液としては、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸ブチル等を使用することが好ましい。
【0028】
磁性塗料の塗布手段としては、アプリケーション系では、ローラ塗布方法、ディップ塗布方法、ファウンテン塗布方法等が、計量系では、エアーナイフ塗布方法、ブレード塗布方法、バー塗布方法等が採用できる。また、アプリケーション系と計量系とを同一の部分で担当するものとして、エクストルージョン塗布方法、スライドビード塗布方法、カーテン塗布方法等が採用できる。
【0029】
塗設される磁性層の厚さは、乾膜で0.02〜3μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。また、磁性層と非磁性支持体との間に非磁性粉末と結合剤を主体とした非磁性層を設けた層構成とするのが好ましい。特に、磁性層を薄層とする構成では、凝集した磁性体の解砕による塗布スジの低減が可能になるので、短波長領域でのC/N低下を抑制して媒体性能を向上させるだけでなく、生産性を向上できるというメリットもある。
【0030】
塗布された磁性塗料の磁性層は、強磁性粉末を配向させる処理、すなわち、磁場配向処理がなされた後、乾燥される。乾燥後の磁性層には、カレンダー処理及び硬化処理が施されて磁気テープ原反20が製造される。
【0031】
このように製造された磁気テープ原反20は、巻戻装置13から巻き戻されて搬送されながらスリッタ14で複数本の磁気テープ26に裁断される。裁断された複数本の磁気テープ26は、スリッタ14の直後で、約半数が一方の巻取り搬送路に導かれ、残りの半数が他方の巻取り搬送路に導かれる。それぞれの搬送路に導かれた磁気テープ26は、研削装置80で磁性層が研削加工された後に巻取装置50に巻き取られる。
【0032】
スリッタ14は、幅広で帯状の磁気テープ原反20を上下一対の回転刃30、32により複数本の磁気テープ26、26、…に裁断する装置であり、図3に示されるように、受け刃としてローラ状に形成された複数の回転下刃30、30…と、回転下刃30との間で磁気テープ原反20に剪断力を与えて裁断する薄円盤状の複数の回転上刃32、32…とで構成される。
【0033】
回転下刃30は、下側シャフト34にスペーサ36を介して嵌合固定され、回転上刃32は、下側シャフト34と平行な上側シャフト38にスペーサ40を介して嵌合固定され、回転上刃32と回転下刃30との刃先部分が互いに重なり合うように配置されている。そして、回転上刃32は図示しないバネにより図3の軸方向右側に付勢され、回転上刃32の刃先部分が回転下刃30の刃先部分に当接した状態で位置決めされる。上側シャフト38と下側シャフト34はそれぞれ回転速度を自由に可変可能なモータ41、43に接続され、回転上刃32と回転下刃30の周速度を個別に可変できるようになっている。
【0034】
図1に示すように、巻戻しリール11とスリッタ14との間の送り出し搬送路には、磁気テープ原反20の搬送路を形成する複数のガイドローラ22、22、…と、磁気テープ原反20の搬送速度を規制するサクションドラム24が設けられる。サクションドラム24は、回転速度を自由に可変可能なモータ(図示せず)に接続され、サクションドラム24の周面に磁気テープ原反20を吸着して回転することにより、磁気テープ原反20の搬送速度を任意に可変する。そして、巻取装置50における巻取リール17のハブ18(巻芯)の回転速度は、このサクションドラム24の周速度を基準として制御される。磁気テープ原反20の搬送速度を規制する手段としてはサクションドラム24に限定されず、磁気テープ原反20を挟持搬送するピンチローラを使用することもできる。
【0035】
一方、スリッタ14と巻取装置50との間の巻取り搬送路には、磁気テープ26の搬送路を形成する複数のガイドローラ22、22、…と、研削装置80と、各磁気テープ26の搬送方向のテンションを均一化するための個別ガイドローラ84とが設けられる。
【0036】
研削装置80は、磁気テープ26の磁性層に研削加工を行うものでダイヤモンドホイール82を好適に使用することができる。
【0037】
ダイヤモンドホイール82としては、メタルボンドタイプのダイヤモンドホイールが好ましく使用できる。また、条件によっては、ビトリファイドタイプのダイヤモンドホイール、レジンボンドタイプのダイヤモンドホイール、電着方式のダイヤモンドホイールも使用できる。このダイヤモンドホイール82に使用されるダイヤモンド砥粒の粒度としては、#325〜#2000が好ましく、#600〜#1200がより好ましい。ダイヤモンド砥粒の粒径が大き過ぎると磁性層の傷が問題となり好ましくなく、ダイヤモンド砥粒の粒径が小さ過ぎると研削能力が低く好ましくない。ダイヤモンドホイールのボンド材質、集中度(コンセントレーション)等は磁性層の組成等に応じて適宜のもの、値を選択すればよい。また、前記巻き掛け角度及び研削での相対速度も、ダイヤモンドホイール82の外径、磁性層の組成等に応じて適宜の値を選択すればよい。そして、研削加工は、回転する円柱状のダイヤモンドホイール82に、磁性層側を接するようにして磁気テープ26を所定巻き掛け角度で巻き掛けるとともに、所定のテンションを加えることにより行なう。ダイヤモンドホイール82への磁気テープ26の巻き掛け角αは、10〜150度の範囲であり、好ましくは60〜120度が採用できる。ダイヤモンドホイール82の回転方向は図示の例ではホイール表面が磁気テープ26の走行方向と逆方向に運動するようにCW(時計回り)が採用されている。このように構成することにより、ホイール表面と磁気テープ26表面との相対速度を大きくできる。
【0038】
個別ガイドローラ84は、ダイヤモンドホイール82と巻取装置50との間に複数本(本実施の形態では84A、84B、84Cの3本)設けられ、磁気テープ26に所定のラップ角度で接するように配置される。
【0039】
個別ガイドローラ84は、1本の軸に少なくとも磁気テープ26の本数分のローラ胴体部がそれぞれベアリングを介して回動自在に装着されて構成される構造のものが使用される。
【0040】
図4及び図5に示すように、個別ガイドローラ84は、両端が軸受85に回転自在に支持された1本の軸86に、少なくとも磁気テープ26の本数分のローラ胴体部88がそれぞれのベアリング90を介して回動自在に装着される。また、軸86は磁気テープ26の搬送方向に回転駆動させるモータ92に連結してもよく、或いはベルトプーリで駆動してもよい。そして、モータ92は、図1のように、モータ回転数、即ち個別ガイドローラ84の軸回転数を制御する制御装置94に信号ケーブル又は無線を介して接続される。このような個別ガイドローラ84としては、例えばテンデンシーローラに制御装置94を備えたものを使用することができる。
【0041】
制御装置94は、スリッタ14位置での磁気テープ26の搬送速度を基準にして、モータ92の回転数を制御することにより、各個別ガイドローラ84(A、B、C)の軸回転数を制御する。スリッタ14位置での磁気テープ26の搬送速度は、サクションドラム24の周速と同じなので、サクションドラム24を回転させるモータ回転数の信号を制御装置94に信号ケーブル又は無線を介して受信することにより、得ることができる。そして、制御装置94は、複数の個別ガイドローラ84のドロー比が、100を超えて120以下の範囲で、且つテープ搬送方向からみた最下流の個別ガイドローラ84Cのドロー比が最上流の個別ガイドローラ84Aのドロー比よりも大きくなるように制御する。また、複数の個別ガイドローラ(A、B、C)のうちスリッタ14に一番近い個別ガイドローラ84Aが、スリッタ14からのテープ搬送距離で2m以内、好ましくは1.5m以内の場合には、ドロー比が101以下になるように制御する。
【0042】
ここで、ドロー比とは、個別ガイドローラ84の軸回転数をローラ胴体部88の周速に換算した換算周速をスリッタ14位置でのテープ搬送速度に対比した速度比である。
【0043】
次に、上記のように構成された裁断装置10を用いて磁気テープ26を製造する方法を説明する。
【0044】
先ず、磁気テープの裁断装置10の巻戻しリール11に巻回されたロール状の磁気テープ原反20は、巻戻しリール11から連続的に引き出され、スリッタ14に搬送される。次に、スリッタ14で複数本の磁気テープ26に裁断されて研削装置80に搬送され、ダイヤモンドホイール82により磁気テープ26の磁性層が研削される。そして、研削された磁気テープ26は、巻取リール17のハブ18に巻取られる。これにより、例えば磁気テープ原反20が40〜250本に裁断され、規定の幅寸法(例えば12.65mm、25.4mm、3.81mm等)の磁気テープ26が製造される。
【0045】
かかる磁気テープ26の製造において、上述したドロー比が100よりも大きくなるように個別ガイドローラ84の軸86を回転駆動するようにしたので、ローラ胴体部88には磁気テープ26の搬送方向と同方向のトルクが発生する。即ち、個別ガイドローラ84は、軸86にベアリング90を介して磁気テープ26に接触する回転胴体部88が保持されていると共に、軸86の軸回転数を制御できる構成になっている。従って、個別ガイドローラ84にドローをかけることで、常時スリップした状態で回転する。また、回転胴体部88をベアリング90を介して保持することで、発生するトルクが小さく、回転数に対するトルクの傾きが非常に小さくなる。従って、個別ガイドローラ84にドローをかけることで、磁気テープ26に対して僅かなテンションを均一に付与することができ、これにより各磁気テープ26、26…を弛みなく安定に搬送できる。ちなにみ、軸86と回転胴体部88とが等速の場合には、スリップ状態とグリップ状態とが交互に入れ替わり、磁気テープ26の搬送が安定しなくなる。
【0046】
この場合、ドロー比の上限を120以下にすることで、磁気テープ26に無理な力が作用しないので、磁気テープ26に傷をつけることがないだけでなく、軸86とローラ胴体部88との間のベアリング90に負荷がかかり過ぎないので、ベアリング90の寿命が短くなることもない。
【0047】
また、制御装置94は、テープ搬送方向からみた最下流の個別ガイドローラ84Cのドロー比が最上流の個別ガイドローラ84Aのドロー比よりも大きくなるように制御するので、個別ガイドローラ同士84(A、B、C)の間での磁気テープ26の弛みを防止できる。この場合、個別ガイドローラ84Aのドロー比を100.3、個別ガイドローラB、Cのドロー比を100.5のように複数の個別ガイドローラ84を何本かまとめて段階的にドロー比を大きくしていってもよく、1本ずつドロー比を大きくしてもよい。要は、最下流の個別ガイドローラ84Cのドロー比が最上流の個別ガイドローラ84Aのドロー比よりも大きくなればよい。
【0048】
また、制御装置94は、複数の個別ガイドローラ84(A、B、C)のうちスリッタ14に一番近い個別ガイドローラ84Aが、スリッタ14からのテープ搬送距離で2m以内、好ましくは1.5m以内の場合には、ドロー比が101以下になるように制御するので、個別ガイドローラ84Aによるトルクがスリッタの裁断精度に悪影響を与えないようにできる。従って、スリッタ14での裁断幅が所望の裁断幅から変わることもない。
【0049】
これにより、スリッタ14で裁断された各磁気テープ26の個別ガイドローラ84Aの上流側でのテンションや各個別ガイドローラ同士84(A、B、C)の間のテンションを均一にすることができ、スリッタ14下流側における各磁気テープ26のテンションを均一化することができるので、各磁気テープ26を安定して搬送させることができる。従って、コンピュータのデータバックアップ用磁気テープ26のように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープを製造しても、品質規格から外れにくくなる。この結果、ロスがでにくくなるので、高精度な磁気テープ26を高い生産性で製造することができる。
【0050】
尚、本実施の形態では、裁断装置10として研削装置80を備えた例で説明したが、研削装置80がなくてもよい。また、研削装置80の代わりに磁気テープ26をクリーニングするクリーニング装置を設けてもよく、研削装置80とクリーニング装置の両方を設けてもよい。
【0051】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。本発明の実施例は、図1からダイヤモンドホイール82を除いた裁断装置10を使用して行った。
【0052】
磁気テープ26は、DDS4規格となるように、スリッタ14で3.8mm幅に裁断して加工した。この際の磁気テープ26の走行速度は、200m/分とした。磁気テープ26のテンションは30gfになるようにした。磁気テープ26の総厚さは5.6μmである。
【0053】
個別ガイドローラ84は、図4及び図5に示したものを使用し、スリッタ14に最も近い上流位置Aの個別ガイドローラ84Aがスリッタ14から2m以内になるようにした。また、磁気テープ26の個別ガイドローラ84へのラップ角度を30〜180度の範囲にはいるようにした。
【0054】
そして、3本の個別ガイドローラ84(A、B、C)のドロー比を表1の試験1〜試験6のように変えたときに、磁気テープ26の弛み及び磁気テープ26の裁断精度がどのように変わるかを評価した。
【0055】
試験1は、3本の個別ガイドローラ84(A、B、C)ともにドロー比を100とした場合で、本発明の『ドロー比を100よりも大きくする』との条件から外れる場合である。
【0056】
試験2は、3本の個別ガイドローラ84(A、B、C)ともにドロー比を100.3とした場合で、本発明の『複数の個別ガイドローラにおいては、最下流の個別ガイドローラのドロー比が最上流の個別ガイドローラのドロー比よりも大きくする』との条件から外れる場合である。
【0057】
試験3は、上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が100.3、中央位置と下流位置の個別ガイドローラ84B,84Cのドロー比が100.5であり、本発明の『ドロー比を100よりも大きくする』、『複数の個別ガイドローラにおいては、最下流の個別ガイドローラのドロー比が最上流の個別ガイドローラのドロー比よりも大きくする』、及び『スリッタに近い個別ガイドローラのドロー比は101以下になるようにする』との本発明の条件を全て満足する場合である。
【0058】
試験4は、上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が100.3、中央位置の個別ガイドローラ84Bのドロー比が100.5、下流位置の個別ガイドローラ84Cのドロー比が101であり、本発明の条件を全て満足する場合である。
【0059】
試験5は、上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が100.3、中央位置の個別ガイドローラ84Bのドロー比が100.5、下流位置の個別ガイドローラ84Cのドロー比が120であり、本発明の条件を全て満足する場合である。
【0060】
試験6は、上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が102、中央位置の個別ガイドローラ84Bのドロー比が105、下流位置の個別ガイドローラ84Cのドロー比が110であり、本発明の『スリッタに近い個別ガイドローラのドロー比は101以下になるようにする』との条件から外れる場合である。
【0061】
【表1】
表1の評価結果から分かるように、試験1の場合には、個別ガイドローラにトルクが発生しないので、従来と同様に上流位置A〜下流位置Cにかけて、磁気テープ26に弛みが発生した。特に磁気テープ原反20の中央部に対応する磁気テープ26に弛みが大きかった。
【0062】
試験2の場合には、スリッタ14と上流位置の個別ガイドローラ84Aとの間での磁気テープ26の弛みは従来よりも多少解消されたが、中央位置B〜下流位置Cにかけて磁気テープ26に弛みが見られた。
【0063】
試験3、4及び5の場合には、上流位置A〜下流位置Cにかけて、各磁気テープ26に弛みが認められず、特に試験1では弛みが大きかった磁気テープ原反20の中央部に対応する磁気テープ26にも弛みが認められなかった。
【0064】
試験6の場合には、スリッタ14に近い上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が大き過ぎるために、裁断幅が所望の裁断幅から変化する磁気テープ26が発生した。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の裁断装置及びそれを用いた磁気記録媒体の製造方法によれば、スリッタ下流側における複数のテープに均一なテンションを付与することができ各テープの搬送を安定化できる。
【0066】
これにより、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の磁気テープのように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープを生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気テープの製造方法に用いられる裁断装置の全体構成図
【図2】裁断装置の概略斜視図
【図3】スリッタの側面図
【図4】個別ガイドローラの概略外観図
【図5】個別ガイドローラの構造を説明する説明図
【図6】従来の1本のガイドローラによる磁気テープのガイドを説明する説明図
【符号の説明】
10…磁気テープの裁断装置、13…巻戻装置、14…スリッタ、20…磁気テープ原反、22…ガイドローラ、26…磁気テープ、50…巻取装置、82…ダイヤモンドホイール、84…個別ガイドローラ、92…モータ、94…制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は裁断装置及びそれを用いた磁気テープの製造方法に係り、特に、幅寸法精度が良く、且つ低ノイズで高密度の磁気テープの製造に適した裁断装置及びそれを用いた磁気テープの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の各種の磁気テープは、その製造工程において、巻戻装置から巻き戻された幅広な磁気テープ原反をスリッタで所定幅の幅狭な複数本の磁気テープに裁断される。裁断された複数本の磁気テープは、相互に並列した状態でガイドローラを経由して連続的に巻取装置に巻き取られることにより製造される。
【0003】
スリッタにおいて裁断される複数本の磁気テープの幅寸法にバラツキがなく均一なものを得るには、各磁気テープの搬送方向に作用するテンションを均一化することが重要になる。これは、各磁気テープの搬送方向に作用するテンションにバラツキがある状態で裁断されると、スリッタ位置での裁断幅は各磁気テープで同じであっても、最終製品の磁気テープのようにテンションフリーになったときに各磁気テープの幅にバラツキが生じてしまうためである。
【0004】
ところで、磁気テープ原反は、裁断工程の前工程でロール状に巻き取られるが、その際に巻き取り時のエアを排除する目的で塗布厚みが幅方向中央部で厚くなっており、ロールにしたときにロール中央部が高い中高形状になっている。従って、巻戻装置からスリッタに向けて巻き戻された磁気テープ原反は幅方向中央部ほど長手方向に伸びた状態になっており、スリッタで裁断された複数本の磁気テープのうち、磁気テープ原反の中央部に対応する磁気テープのテンションは磁気テープ原反の両端部に対応する磁気テープのテンションよりも低くなっている。この結果、磁気テープ原反の中央部に対応する磁気テープは磁気テープ原反の両端部に対応する磁気テープよりも弛み易くなっている。
【0005】
図6に示すように、このような中高形状の磁気テープ原反をスリッタで裁断して得られた複数本の磁気テープ1を、円柱状の1本のガイドローラ2にラップさせてガイドして巻取装置に巻き取る場合、各磁気テープ1の巻き取りテンションを同じにしても、ガイドローラ2によるテンションカット作用により、ガイドローラ2の上流側に生じたテンションのバラツキはなくならない。即ち、ガイドローラ2の上流側において磁気テープ原反の中央部に対応する磁気テープの弛みが解消されないので、磁気テープ1の幅寸法にバラツキが生じたり、裁断面が不均一になる等の問題が生じ易かった。
【0006】
更には、近年、磁気テープの低ノイズ化や高密度化を目的として、磁気テープ面を研削したりクリーニングしたりするため、スリッタと巻取装置との間に、研削装置(例えばダイヤモンドホイール)やクリーニング装置(例えば不織布で擦る装置)を設けることがあるが、ガイドローラのテンションカット作用に加えて研磨装置やクリーニング装置によるテンションカット作用が加わるため、複数本の磁気テープのテンションを均一化することが一層難しくなってきている。
【0007】
このことから、出願人は特許文献1において、1本の軸に少なくともテープ本数分のローラ胴体部がそれぞれベアリングを介して回動自在に装着された個別ガイドローラを設けて各テープを個別にガイドすることを提案した。これにより、個別ガイドローラの各ローラ胴体部は、スリッタで裁断された各テープごとに個別に従動回転され、他の磁気テープの影響を受けないので、テンションカット作用を小さくできるという効果がある。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−187660号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の個別ガイドローラであっても、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の磁気テープのように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープの製造においては、まだ不十分であるという問題がある。即ち、このような厳しい品質が要求される磁気テープの製造においては、複数本の磁気テープのテンションを一層均一化し、各磁気テープの幅寸法精度、研削精度、クリーニング精度のバラツキを防止しないと、ロス発生率が高くなり高い生産性を得ることができない。
【0010】
本発明は、スリッタ下流側における複数のテープに均一なテンションを付与することができ各テープを弛みなく安定に搬送できるので、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の磁気テープのように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープの製造に好適な裁断装置及びそれを用いた磁気テープの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、巻戻装置から巻き戻し搬送された幅広のウエブ原反をスリッタで複数本の幅狭なテープに裁断して各テープごとに個別に巻取装置に巻き取ると共に、前記スリッタと前記巻取装置との間に、1本の軸に少なくともテープ本数分のローラ胴体部がそれぞれベアリングを介して回動自在に装着された個別ガイドローラを設けて各テープを個別にガイドするように構成した裁断装置において、前記個別ガイドローラは、前記軸を前記テープの搬送方向に回転駆動させる駆動手段と、前記駆動手段で前記軸の軸回転数を制御して前記ローラ胴体部にトルクを発生させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の裁断装置によれば、従来のように、スリッタで裁断された各テープを単に個別にガイドするだけではなく、個別ガイドローラの軸をテープ搬送方向と同方向に回転駆動させると共に、軸回転数を制御してローラ胴体部にテープ搬送方向のトルクを発生させるようにした。このトルクにより、スリッタ下流側における複数のテープに均一なテンションを付与することができ各テープを弛みなく安定に搬送できる。即ち、個別ガイドローラは、軸にベアリングを介してテープに接触する回転胴体部が保持されていると共に、駆動手段で軸の軸回転数を制御できる構成になっている。従って、個別ガイドローラにドローをかけることで、常時スリップした状態で回転する。また、回転胴体部をベアリングを介して保持することで、発生するトルクが小さく、回転数に対するトルクの傾きが非常に小さくなる。従って、個別ガイドローラにドローをかけることで、テープに対して微小トルクを安定付与させることができ、これにより、各テープに僅かなテンションが均一に付与される。これにより、各テープを弛みなく安定に搬送できる。
【0013】
本発明の請求項2は請求項1において、制御手段は、軸回転数をローラ胴体部の周速に換算した換算周速をスリッタ位置でのテープ搬送速度に対比したドロー比が、テープ搬送速度を100としたときに100よりも大きく120以下になるように駆動手段を制御することを特徴とする。これは、テープに対して適切な大きさのトルクを発生させるための具体的な方法であり、ドロー比が100よりも大きく120以下になるように個別ガイドローラの軸を回転駆動するようにした。これにより、テープの弛みをなくすことができると共に、上限を120以下にすることでテープを傷つけたり、ローラ胴体部と軸との間のベアリングが過度に磨耗したりすることもない。
【0014】
本発明の請求項3は請求項2において、個別ガイドローラを前記テープ搬送方向に沿って複数段設け、制御手段は、テープ搬送方向からみた最下流の個別ガイドローラのドロー比が最上流の個別ガイドローラのドロー比よりも大きくなるように各個別ガイドローラの駆動手段を制御することを特徴とする。これは、複数の個別ガイドローラを設けた場合、スリッタ側に位置する最上流の個別ガイドローラのドロー比を100よりも大きくしてもその後の個別ガイドローラのドロー比が同じでは、個別ガイドローラ同士の間にテープの弛みが発生し易くなり、結局、スリッタと巻取装置との間における各テープのテンションにバラツキが生じてしまう。しかし、本発明のように、最下流の個別ガイドローラのドロー比が最上流の個別ガイドローラのドロー比よりも大きくなるように制御することで、スリッタと巻取装置との間における各テープのテンションを均一化することができる。
【0015】
本発明の請求項4は請求項2又は3において、個別ガイドローラをスリッタから2m以内の近い位置に配置する場合には、制御手段は、該個別ガイドローラのドロー比が101以下になるように駆動手段を制御することを特徴とする。これは、スリッタに近い個別ガイドローラのドロー比を101を超えて大きくすると、スリッタでの裁断幅が不安定になり易く、各テープの裁断幅にバラツキが生じる場合があるためである。従って、個別ガイドローラがスリッタからテープ搬送距離において2m以内、好ましくは1.5m以内に配置される場合には、ドロー比を101以下にすることが好ましい。但し、個別ガイドローラを複数設け、複数の個別ガイドローラが2m以内に該当する場合には、最上流の個別ガイドローラのドロー比のみを101以下にすればよい。
【0016】
本発明の請求項5は請求項1〜4の何れか1において、スリッタと個別ガイドローラとの間に、テープに圧接してテープ面を研削する研削装置とテープに圧接してテープ面をクリーニングするクリーニング装置の少なくとも1つが設けられていることを特徴とする。このような構成の場合には、ガイドローラのテンションカット作用に加えて研磨装置やクリーニング装置によるテンションカット作用が加わるため、複数本の磁気テープのテンションを均一化することが一層難しく、本発明の裁断装置が有効だからである。
【0017】
本発明の請求項6は前記目的を達成するために、ロール状の幅広な磁気テープ原反を巻き戻し搬送して複数本の幅狭な磁気テープに裁断すると共に、裁断された各磁気テープを個別に巻き取る磁気テープの製造方法において、請求項1から5の何れか1の裁断装置を用いて磁気テープ原反から磁気テープを製造することを特徴とする。
【0018】
本発明の磁気テープの製造方法によれば、請求項1から5の何れか1の裁断装置を用いて磁気テープ原反から磁気テープを製造するようにしたので、スリッタ下流側における複数の磁気テープに均一なテンションを付与することができ各テープの搬送を安定化できる。これにより、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の磁気テープのように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープを製造することができる。
【0019】
本発明の請求項7は請求項6において、磁気テープ原反のロール形状が中高形状であることを特徴とする。このような中高形状の場合には、磁気テープ原反の中央部に対応する磁気テープの弛みが発生しやすく、本発明の裁断装置が特に有効だからである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る裁断装置及びそれを用いた磁気テープの製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】
図1は、本発明に係る磁気テープの製造方法に用いられる本発明の裁断装置10の一例を示した全体構成図である。図2は裁断装置10の概略斜視図である。尚、本実施の形態では、スリッタと巻取装置との間に研削装置を配置した例で説明する。
【0022】
図1及び図2に示される、裁断装置10は、主として、ロール状に巻回された幅広なウエブ状の磁気テープ原反20を巻き戻して送り出す巻戻装置13と、幅広な磁気テープ原反20を複数本の幅狭な磁気テープ26に裁断するスリッタ14と、磁気テープ26を巻き掛けて研削する研削装置80と、個別ガイドローラ84と、磁気テープ26を個別に巻取りリール17のハブ18(巻芯)に巻取る巻取装置50とで構成される。
【0023】
巻戻装置13における巻戻しリール11のハブ12(巻芯)には、ロール状に巻回された磁気テープ原反20が装着される。
【0024】
この磁気テープ原反20は、通常、非磁性の可撓性支持体上に強磁性微粒子を含む磁性塗料を塗布処理して磁性層を塗設し、その磁性層に配向処理、乾燥処理、カレンダー処理(磁性層の平滑化処理)や硬化処理等の表面処理等を行うことによって製造される。そして、巻戻装置13に巻回される磁気テープ原反20は、図2に示すように、ロール中央部が高い中高形状に形成される。
【0025】
非磁性の帯状可撓性支持体としては、一般に、所定幅の、長さが45〜20000m、厚さが2〜200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6 −ナフタレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等のプラスチックフィルム、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンブテン共重合体等の炭素数が2〜10のα−ポリオレフィン類を塗布又はラミネートした紙等からなる可撓性帯状物又は該帯状物を基材としてその表面に加工層を形成した帯状物が使用できる。
【0026】
磁性塗料に使用される強磁性粉末としては、各種の材料が使用できるが、強磁性粉末が六方晶フェライトである場合は、板径が35nm以下、板比が2以上のものが、強磁性粉末が強磁性金属粉末である場合は、長軸長が60nm以下、軸比が2以上のものが、好ましく使用できる。この強磁性粉末のパーティクルサイズとしては、平均一次粒子体積が10000nm3 以下のものが、好ましく使用できる。
【0027】
強磁性粉末を浸漬する溶剤は、シキロへキサノンを含む溶液が好ましい。シキロヘキサノンの含有率は全溶剤量の30〜100重量%であることが好ましい。シキロヘキサノン以外の溶液としては、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸ブチル等を使用することが好ましい。
【0028】
磁性塗料の塗布手段としては、アプリケーション系では、ローラ塗布方法、ディップ塗布方法、ファウンテン塗布方法等が、計量系では、エアーナイフ塗布方法、ブレード塗布方法、バー塗布方法等が採用できる。また、アプリケーション系と計量系とを同一の部分で担当するものとして、エクストルージョン塗布方法、スライドビード塗布方法、カーテン塗布方法等が採用できる。
【0029】
塗設される磁性層の厚さは、乾膜で0.02〜3μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。また、磁性層と非磁性支持体との間に非磁性粉末と結合剤を主体とした非磁性層を設けた層構成とするのが好ましい。特に、磁性層を薄層とする構成では、凝集した磁性体の解砕による塗布スジの低減が可能になるので、短波長領域でのC/N低下を抑制して媒体性能を向上させるだけでなく、生産性を向上できるというメリットもある。
【0030】
塗布された磁性塗料の磁性層は、強磁性粉末を配向させる処理、すなわち、磁場配向処理がなされた後、乾燥される。乾燥後の磁性層には、カレンダー処理及び硬化処理が施されて磁気テープ原反20が製造される。
【0031】
このように製造された磁気テープ原反20は、巻戻装置13から巻き戻されて搬送されながらスリッタ14で複数本の磁気テープ26に裁断される。裁断された複数本の磁気テープ26は、スリッタ14の直後で、約半数が一方の巻取り搬送路に導かれ、残りの半数が他方の巻取り搬送路に導かれる。それぞれの搬送路に導かれた磁気テープ26は、研削装置80で磁性層が研削加工された後に巻取装置50に巻き取られる。
【0032】
スリッタ14は、幅広で帯状の磁気テープ原反20を上下一対の回転刃30、32により複数本の磁気テープ26、26、…に裁断する装置であり、図3に示されるように、受け刃としてローラ状に形成された複数の回転下刃30、30…と、回転下刃30との間で磁気テープ原反20に剪断力を与えて裁断する薄円盤状の複数の回転上刃32、32…とで構成される。
【0033】
回転下刃30は、下側シャフト34にスペーサ36を介して嵌合固定され、回転上刃32は、下側シャフト34と平行な上側シャフト38にスペーサ40を介して嵌合固定され、回転上刃32と回転下刃30との刃先部分が互いに重なり合うように配置されている。そして、回転上刃32は図示しないバネにより図3の軸方向右側に付勢され、回転上刃32の刃先部分が回転下刃30の刃先部分に当接した状態で位置決めされる。上側シャフト38と下側シャフト34はそれぞれ回転速度を自由に可変可能なモータ41、43に接続され、回転上刃32と回転下刃30の周速度を個別に可変できるようになっている。
【0034】
図1に示すように、巻戻しリール11とスリッタ14との間の送り出し搬送路には、磁気テープ原反20の搬送路を形成する複数のガイドローラ22、22、…と、磁気テープ原反20の搬送速度を規制するサクションドラム24が設けられる。サクションドラム24は、回転速度を自由に可変可能なモータ(図示せず)に接続され、サクションドラム24の周面に磁気テープ原反20を吸着して回転することにより、磁気テープ原反20の搬送速度を任意に可変する。そして、巻取装置50における巻取リール17のハブ18(巻芯)の回転速度は、このサクションドラム24の周速度を基準として制御される。磁気テープ原反20の搬送速度を規制する手段としてはサクションドラム24に限定されず、磁気テープ原反20を挟持搬送するピンチローラを使用することもできる。
【0035】
一方、スリッタ14と巻取装置50との間の巻取り搬送路には、磁気テープ26の搬送路を形成する複数のガイドローラ22、22、…と、研削装置80と、各磁気テープ26の搬送方向のテンションを均一化するための個別ガイドローラ84とが設けられる。
【0036】
研削装置80は、磁気テープ26の磁性層に研削加工を行うものでダイヤモンドホイール82を好適に使用することができる。
【0037】
ダイヤモンドホイール82としては、メタルボンドタイプのダイヤモンドホイールが好ましく使用できる。また、条件によっては、ビトリファイドタイプのダイヤモンドホイール、レジンボンドタイプのダイヤモンドホイール、電着方式のダイヤモンドホイールも使用できる。このダイヤモンドホイール82に使用されるダイヤモンド砥粒の粒度としては、#325〜#2000が好ましく、#600〜#1200がより好ましい。ダイヤモンド砥粒の粒径が大き過ぎると磁性層の傷が問題となり好ましくなく、ダイヤモンド砥粒の粒径が小さ過ぎると研削能力が低く好ましくない。ダイヤモンドホイールのボンド材質、集中度(コンセントレーション)等は磁性層の組成等に応じて適宜のもの、値を選択すればよい。また、前記巻き掛け角度及び研削での相対速度も、ダイヤモンドホイール82の外径、磁性層の組成等に応じて適宜の値を選択すればよい。そして、研削加工は、回転する円柱状のダイヤモンドホイール82に、磁性層側を接するようにして磁気テープ26を所定巻き掛け角度で巻き掛けるとともに、所定のテンションを加えることにより行なう。ダイヤモンドホイール82への磁気テープ26の巻き掛け角αは、10〜150度の範囲であり、好ましくは60〜120度が採用できる。ダイヤモンドホイール82の回転方向は図示の例ではホイール表面が磁気テープ26の走行方向と逆方向に運動するようにCW(時計回り)が採用されている。このように構成することにより、ホイール表面と磁気テープ26表面との相対速度を大きくできる。
【0038】
個別ガイドローラ84は、ダイヤモンドホイール82と巻取装置50との間に複数本(本実施の形態では84A、84B、84Cの3本)設けられ、磁気テープ26に所定のラップ角度で接するように配置される。
【0039】
個別ガイドローラ84は、1本の軸に少なくとも磁気テープ26の本数分のローラ胴体部がそれぞれベアリングを介して回動自在に装着されて構成される構造のものが使用される。
【0040】
図4及び図5に示すように、個別ガイドローラ84は、両端が軸受85に回転自在に支持された1本の軸86に、少なくとも磁気テープ26の本数分のローラ胴体部88がそれぞれのベアリング90を介して回動自在に装着される。また、軸86は磁気テープ26の搬送方向に回転駆動させるモータ92に連結してもよく、或いはベルトプーリで駆動してもよい。そして、モータ92は、図1のように、モータ回転数、即ち個別ガイドローラ84の軸回転数を制御する制御装置94に信号ケーブル又は無線を介して接続される。このような個別ガイドローラ84としては、例えばテンデンシーローラに制御装置94を備えたものを使用することができる。
【0041】
制御装置94は、スリッタ14位置での磁気テープ26の搬送速度を基準にして、モータ92の回転数を制御することにより、各個別ガイドローラ84(A、B、C)の軸回転数を制御する。スリッタ14位置での磁気テープ26の搬送速度は、サクションドラム24の周速と同じなので、サクションドラム24を回転させるモータ回転数の信号を制御装置94に信号ケーブル又は無線を介して受信することにより、得ることができる。そして、制御装置94は、複数の個別ガイドローラ84のドロー比が、100を超えて120以下の範囲で、且つテープ搬送方向からみた最下流の個別ガイドローラ84Cのドロー比が最上流の個別ガイドローラ84Aのドロー比よりも大きくなるように制御する。また、複数の個別ガイドローラ(A、B、C)のうちスリッタ14に一番近い個別ガイドローラ84Aが、スリッタ14からのテープ搬送距離で2m以内、好ましくは1.5m以内の場合には、ドロー比が101以下になるように制御する。
【0042】
ここで、ドロー比とは、個別ガイドローラ84の軸回転数をローラ胴体部88の周速に換算した換算周速をスリッタ14位置でのテープ搬送速度に対比した速度比である。
【0043】
次に、上記のように構成された裁断装置10を用いて磁気テープ26を製造する方法を説明する。
【0044】
先ず、磁気テープの裁断装置10の巻戻しリール11に巻回されたロール状の磁気テープ原反20は、巻戻しリール11から連続的に引き出され、スリッタ14に搬送される。次に、スリッタ14で複数本の磁気テープ26に裁断されて研削装置80に搬送され、ダイヤモンドホイール82により磁気テープ26の磁性層が研削される。そして、研削された磁気テープ26は、巻取リール17のハブ18に巻取られる。これにより、例えば磁気テープ原反20が40〜250本に裁断され、規定の幅寸法(例えば12.65mm、25.4mm、3.81mm等)の磁気テープ26が製造される。
【0045】
かかる磁気テープ26の製造において、上述したドロー比が100よりも大きくなるように個別ガイドローラ84の軸86を回転駆動するようにしたので、ローラ胴体部88には磁気テープ26の搬送方向と同方向のトルクが発生する。即ち、個別ガイドローラ84は、軸86にベアリング90を介して磁気テープ26に接触する回転胴体部88が保持されていると共に、軸86の軸回転数を制御できる構成になっている。従って、個別ガイドローラ84にドローをかけることで、常時スリップした状態で回転する。また、回転胴体部88をベアリング90を介して保持することで、発生するトルクが小さく、回転数に対するトルクの傾きが非常に小さくなる。従って、個別ガイドローラ84にドローをかけることで、磁気テープ26に対して僅かなテンションを均一に付与することができ、これにより各磁気テープ26、26…を弛みなく安定に搬送できる。ちなにみ、軸86と回転胴体部88とが等速の場合には、スリップ状態とグリップ状態とが交互に入れ替わり、磁気テープ26の搬送が安定しなくなる。
【0046】
この場合、ドロー比の上限を120以下にすることで、磁気テープ26に無理な力が作用しないので、磁気テープ26に傷をつけることがないだけでなく、軸86とローラ胴体部88との間のベアリング90に負荷がかかり過ぎないので、ベアリング90の寿命が短くなることもない。
【0047】
また、制御装置94は、テープ搬送方向からみた最下流の個別ガイドローラ84Cのドロー比が最上流の個別ガイドローラ84Aのドロー比よりも大きくなるように制御するので、個別ガイドローラ同士84(A、B、C)の間での磁気テープ26の弛みを防止できる。この場合、個別ガイドローラ84Aのドロー比を100.3、個別ガイドローラB、Cのドロー比を100.5のように複数の個別ガイドローラ84を何本かまとめて段階的にドロー比を大きくしていってもよく、1本ずつドロー比を大きくしてもよい。要は、最下流の個別ガイドローラ84Cのドロー比が最上流の個別ガイドローラ84Aのドロー比よりも大きくなればよい。
【0048】
また、制御装置94は、複数の個別ガイドローラ84(A、B、C)のうちスリッタ14に一番近い個別ガイドローラ84Aが、スリッタ14からのテープ搬送距離で2m以内、好ましくは1.5m以内の場合には、ドロー比が101以下になるように制御するので、個別ガイドローラ84Aによるトルクがスリッタの裁断精度に悪影響を与えないようにできる。従って、スリッタ14での裁断幅が所望の裁断幅から変わることもない。
【0049】
これにより、スリッタ14で裁断された各磁気テープ26の個別ガイドローラ84Aの上流側でのテンションや各個別ガイドローラ同士84(A、B、C)の間のテンションを均一にすることができ、スリッタ14下流側における各磁気テープ26のテンションを均一化することができるので、各磁気テープ26を安定して搬送させることができる。従って、コンピュータのデータバックアップ用磁気テープ26のように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープを製造しても、品質規格から外れにくくなる。この結果、ロスがでにくくなるので、高精度な磁気テープ26を高い生産性で製造することができる。
【0050】
尚、本実施の形態では、裁断装置10として研削装置80を備えた例で説明したが、研削装置80がなくてもよい。また、研削装置80の代わりに磁気テープ26をクリーニングするクリーニング装置を設けてもよく、研削装置80とクリーニング装置の両方を設けてもよい。
【0051】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。本発明の実施例は、図1からダイヤモンドホイール82を除いた裁断装置10を使用して行った。
【0052】
磁気テープ26は、DDS4規格となるように、スリッタ14で3.8mm幅に裁断して加工した。この際の磁気テープ26の走行速度は、200m/分とした。磁気テープ26のテンションは30gfになるようにした。磁気テープ26の総厚さは5.6μmである。
【0053】
個別ガイドローラ84は、図4及び図5に示したものを使用し、スリッタ14に最も近い上流位置Aの個別ガイドローラ84Aがスリッタ14から2m以内になるようにした。また、磁気テープ26の個別ガイドローラ84へのラップ角度を30〜180度の範囲にはいるようにした。
【0054】
そして、3本の個別ガイドローラ84(A、B、C)のドロー比を表1の試験1〜試験6のように変えたときに、磁気テープ26の弛み及び磁気テープ26の裁断精度がどのように変わるかを評価した。
【0055】
試験1は、3本の個別ガイドローラ84(A、B、C)ともにドロー比を100とした場合で、本発明の『ドロー比を100よりも大きくする』との条件から外れる場合である。
【0056】
試験2は、3本の個別ガイドローラ84(A、B、C)ともにドロー比を100.3とした場合で、本発明の『複数の個別ガイドローラにおいては、最下流の個別ガイドローラのドロー比が最上流の個別ガイドローラのドロー比よりも大きくする』との条件から外れる場合である。
【0057】
試験3は、上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が100.3、中央位置と下流位置の個別ガイドローラ84B,84Cのドロー比が100.5であり、本発明の『ドロー比を100よりも大きくする』、『複数の個別ガイドローラにおいては、最下流の個別ガイドローラのドロー比が最上流の個別ガイドローラのドロー比よりも大きくする』、及び『スリッタに近い個別ガイドローラのドロー比は101以下になるようにする』との本発明の条件を全て満足する場合である。
【0058】
試験4は、上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が100.3、中央位置の個別ガイドローラ84Bのドロー比が100.5、下流位置の個別ガイドローラ84Cのドロー比が101であり、本発明の条件を全て満足する場合である。
【0059】
試験5は、上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が100.3、中央位置の個別ガイドローラ84Bのドロー比が100.5、下流位置の個別ガイドローラ84Cのドロー比が120であり、本発明の条件を全て満足する場合である。
【0060】
試験6は、上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が102、中央位置の個別ガイドローラ84Bのドロー比が105、下流位置の個別ガイドローラ84Cのドロー比が110であり、本発明の『スリッタに近い個別ガイドローラのドロー比は101以下になるようにする』との条件から外れる場合である。
【0061】
【表1】
表1の評価結果から分かるように、試験1の場合には、個別ガイドローラにトルクが発生しないので、従来と同様に上流位置A〜下流位置Cにかけて、磁気テープ26に弛みが発生した。特に磁気テープ原反20の中央部に対応する磁気テープ26に弛みが大きかった。
【0062】
試験2の場合には、スリッタ14と上流位置の個別ガイドローラ84Aとの間での磁気テープ26の弛みは従来よりも多少解消されたが、中央位置B〜下流位置Cにかけて磁気テープ26に弛みが見られた。
【0063】
試験3、4及び5の場合には、上流位置A〜下流位置Cにかけて、各磁気テープ26に弛みが認められず、特に試験1では弛みが大きかった磁気テープ原反20の中央部に対応する磁気テープ26にも弛みが認められなかった。
【0064】
試験6の場合には、スリッタ14に近い上流位置の個別ガイドローラ84Aのドロー比が大き過ぎるために、裁断幅が所望の裁断幅から変化する磁気テープ26が発生した。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の裁断装置及びそれを用いた磁気記録媒体の製造方法によれば、スリッタ下流側における複数のテープに均一なテンションを付与することができ各テープの搬送を安定化できる。
【0066】
これにより、コンピュータのデータバックアップ用テープ等の磁気テープのように、高い幅寸法精度や一層厳しい低ノイズかつ高密度化が要求される磁気テープを生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気テープの製造方法に用いられる裁断装置の全体構成図
【図2】裁断装置の概略斜視図
【図3】スリッタの側面図
【図4】個別ガイドローラの概略外観図
【図5】個別ガイドローラの構造を説明する説明図
【図6】従来の1本のガイドローラによる磁気テープのガイドを説明する説明図
【符号の説明】
10…磁気テープの裁断装置、13…巻戻装置、14…スリッタ、20…磁気テープ原反、22…ガイドローラ、26…磁気テープ、50…巻取装置、82…ダイヤモンドホイール、84…個別ガイドローラ、92…モータ、94…制御装置
Claims (7)
- 巻戻装置から巻き戻し搬送された幅広のテープ原反をスリッタで複数本の幅狭なテープに裁断して各テープごとに個別に巻取装置に巻き取ると共に、前記スリッタと前記巻取装置との間に、1本の軸に少なくともテープ本数分のローラ胴体部がそれぞれベアリングを介して回動自在に装着された個別ガイドローラを設けて各テープを個別にガイドするように構成した裁断装置において、
前記個別ガイドローラは、
前記軸を前記テープの搬送方向に回転駆動させる駆動手段と、
前記駆動手段で前記軸の軸回転数を制御して前記ローラ胴体部にトルクを発生させる制御手段と、を備えたことを特徴とする裁断装置。 - 前記制御手段は、前記軸回転数をローラ胴体部の周速に換算した換算周速を前記スリッタ位置でのテープ搬送速度に対比したドロー比が、前記テープ搬送速度を100としたときに100よりも大きく120以下になるように前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1の裁断装置。
- 前記個別ガイドローラを前記テープの搬送方向に沿って複数段設け、
前記制御手段は、前記テープ搬送方向からみた最下流の個別ガイドローラのドロー比が最上流の個別ガイドローラのドロー比よりも大きくなるように各個別ガイドローラの駆動手段を制御することを特徴とする請求項2の裁断装置。 - 前記個別ガイドローラを前記スリッタから2m以内の近い位置に配置する場合には、
前記制御手段は、該個別ガイドローラのドロー比が101以下になるように駆動手段を制御することを特徴とする請求項2又は3の裁断装置。 - 前記スリッタと前記個別ガイドローラとの間には、前記テープに圧接してテープ面を研削する研削装置と前記テープに圧接してテープ面をクリーニングするクリーニング装置の少なくとも1つが設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1の裁断装置。
- ロール状の幅広な磁気テープ原反を巻き戻し搬送して複数本の幅狭な磁気テープに裁断すると共に、裁断された各磁気テープを個別に巻き取る磁気テープの製造方法において、
請求項1〜5の何れか1の裁断装置を用いて磁気テープ原反から磁気テープを製造することを特徴とする磁気テープの製造方法。 - 前記磁気テープ原反のロール形状は中高形状であることを特徴とする請求項6の磁気テープの製造方法。
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