JP4284465B2 - ウエブの裁断方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はウエブの裁断方法に係り、特に、コンピュータバックアップテープなどの磁気テープを製造する製造過程におけるウエブの裁断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータバックアップテープを始めとする磁気テープは、幅広のウエブ(磁気テープ原反)をスリッタで多数本のテープに裁断することによって製造される。スリッタで裁断された多数本の磁気テープは通常、隣接する磁気テープと異なる高さ方向に引き出される。そして、異なる高さ位置に配置された数本の巻取軸に巻き取られる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−314475号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の裁断方法で裁断すると、図14に示すように、上刃1によって下刃2側に押し込まれたテープ3の右端縁3Xが、隣接するテープ4の左端縁4Yの下側にもぐり込むため、テープ3とテープ4を上下に振り分けて引き出した際に、端縁3X、4Yが互いに擦れ合うという問題があった。このため、テープ3、4の端縁3X、4Yにエッジダメージが生じたり、擦れ合った際に塵埃が発生するという不具合があった。このような不具合は、近年の記録媒体の高密度化に伴って顕著に現れたものである。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、発塵やエッジダメージの問題を解消することのできるウエブの裁断方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、上刃と下刃から成るスリッタにウエブを連続的に通過させることによって、前記ウエブを多数本のテープに裁断するウエブの裁断方法において、前記スリッタから引き出されたテープが巻き取られる巻取軸に対して、前記スリッタを前記テープの幅方向に相対的にずらして配置し、該スリッタにより裁断されたテープが、前記巻取軸に設けられた規制板により前記上刃により下刃側に押し込まれた端縁の反対側に付勢されながら、隣接するテープと異なる高さ方向に引き出されることを特徴としている。請求項1に記載の発明によれば、テープの両端縁の張りが変化し、前記上刃により押し込まれた端縁の反対側の端縁のテンションが低下するので、端縁同士が擦れることを防止できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るウエブの裁断方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0014】
図1は本発明が適用される第1の実施形態の裁断装置を示す全体構成図である。
【0015】
同図に示すように、裁断装置10は主として、巻き戻しリール12、フィードローラ16、ガイドローラ18、18…、スリッタ22、パスローラ24A、24B、及び巻取ハブ28A、28Bで構成される。
【0016】
巻き戻しリール12には、ロール状に巻回された磁気テープ原反(ウエブに相当)14のバルクが装着される。磁気テープ原反14は、通常、非磁性支持体上に強磁性微粒子を含む磁性層を塗布法や真空蒸着法等により形成し、その磁性層に配向処理、乾燥処理、表面処理等を行うことによって製造される。
【0017】
巻き戻しリール12に装着された磁気テープ原反14は、フィードローラ16を駆動することによって巻き戻しリール12から連続的に引き出される。フィードローラ16は、磁気テープ原反14を走行させるためのローラであり、例えば、サクションドラムが使用される。サクションドラムは、磁気テープ原反14を表面に吸着しながら回転するドラムであり、ドラムの表面には、磁気テープ14の保持力を増加させるための溝が形成される。なお、フィードローラ16として、磁気テープ原反14を挟圧して搬送する一対のニップローラなど、他の公知フィード手段を用いてもよい。
【0018】
巻き戻しリール12から送り出された磁気テープ原反14は、複数のガイドローラ18、18…にガイドされながらスリッタ22に送られる。
【0019】
図2に示すように、スリッタ22は、円筒状の回転下刃30、30…と、薄い円盤状の回転上刃32、32…とを備えている。回転下刃30は、下側シャフト34にスペーサ36を介して嵌合固定され、回転上刃32は、下側シャフト34と平行な上側シャフト38にスペーサ40を介して嵌合固定される。また、回転上刃32は、不図示の弾性手段によって図2の軸方向右側に付勢されており、回転上刃32の刃先部分が、回転下刃30の刃先部分の側面に当接されて位置決めされる。上側シャフト38と下側シャフト34は、回転速度を自由に可変可能なモータ(不図示)に接続される。そして、図1のフィードローラ16の回転速度に応じて、回転上刃32と回転下刃30の回転速度が調節される。
【0020】
上記の如く構成されたスリッタ22に磁気テープ原反14が導入されると、磁気テープ原反14は、受け刃である回転下刃30、30、30…に巻きかけられながら、回転上刃32、32、32…によって回転下刃30側に押し込まれ、剪断力が付与される。これにより、磁気テープ原反14は、100〜500本に裁断され、規定の幅寸法(例えば12.65mm、25.4mm、3.81mm等)の磁気テープ26A、26Bが形成される。なお、図2の符号42は、磁性層のないクリアー部42であり、裁断した際に除去される。
【0021】
図1に示すように、磁気テープ26Aは、上段の規制ローラ20A、及びパスローラ24Aに巻き掛けられた後、巻取ハブ28Aに巻き取られ、磁気テープ26Bは、下段の規制ローラ20B、及びパスローラ24Bに巻き掛けられた後、巻取ハブ28Bに巻き取られる。パスローラ24A、24Bは回動自在に支持され、巻取ハブ28A、28Bは、フィードローラ16と同期して回転するようになっている。なお、パスローラ24A、24Bをフィードローラ16と同期して回転するようにしてもよい。
【0022】
図3及び図4に示すように、規制ローラ20A、20Bは、規制板付きのローラであり、磁気テープ26A、26Bをその幅方向に規制するための規制面21A、21Bを備える。また、規制ローラ20A、20Bは、図4に示す如く互いに逆向きに配置される。すなわち、規制ローラ20Aは規制面21Aが図4上で左側を向くように配置され、規制ローラ20Bは規制面21Bが図4上で右側を向くように配置される。また、規制ローラ20A、20Bは、規制面21Aと規制面21Bとの間に、テープ1m当りに対して0.001〜0.025mm程度の僅かな隙間sが形成されるように配置される。
【0023】
上記の如く構成された規制ローラ20Aの規制面21Aには、上段の磁気テープ26Aの右端縁Xが当接して規制され、規制ローラ20Bの規制面21Bには、下段の磁気テープ26Bの左端縁Yが当接して規制される。これにより、磁気テープ26Aと磁気テープ26Bは、互いに離れる方向に付勢されながらスリッタ22から引き出される。なお、本実施の形態において磁気テープ26Aの右端縁Xは、回転上刃32によって回転下刃30側に押し込まれて裁断される端縁に相当する。
【0024】
次に上記の如く構成された裁断装置10の作用について図4、図5に基づいて説明する。
【0025】
図5に示すように、磁気テープ26A、26Bはそれぞれ、右端縁Xが回転上刃32によって回転下刃30側に押し込まれて裁断される。したがって、裁断直後、右端縁Xは左端縁Yよりも下側に配置されている。この状態のまま、長手方向に真っ直ぐ磁気テープ26A、26Bを引き出すと、磁気テープ26Aの右端縁Xの軌道と、磁気テープ26Bの左端縁Yの軌道とが高さ方向に交差し、右端縁Xと左端縁Yとが擦れることになる。そして、これがエッジダメージを発生する原因となる。
【0026】
そこで、本実施の形態では、上記問題を解消するために、図4に示す如く規制ローラ20A、20Bを設けて磁気テープ26A、26Bを規制するようにした。すなわち、規制ローラ20Aによって磁気テープ26Aの右端縁Xを規制し、磁気テープ26Aを図4上で左方向に付勢するとともに、規制ローラ20Bによって磁気テープ26Bの左端縁Yを規制し、磁気テープ26Bを図4上で右方向に付勢するようにした。これにより、磁気テープ26A、26Bは、離れる方向に付勢されながらスリッタ22から引き出されるので、磁気テープ26Aの右端縁Xと磁気テープ26Bの左端縁Yとが擦れることを防止できる。
【0027】
このように本実施の形態の裁断装置10では、規制ローラ20A、20Bを設けて磁気テープ26A、26Bを規制するようにしたので、高さ方向において軌道が交差する右端縁Xと左端縁Yとが擦れることを防止できる。これにより、エッジダメージが発生することを防止できる。また、磁気テープ26A、26Bが擦れることによって生じていた塵埃の発生を防止できる。
【0028】
なお、上述した実施の形態は、規制ローラ20A、20Bを設けて磁気テープ26A、26Bを規制するようにしたが、規制手段はこれに限定するものではなく、例えば板状の規制手段によって規制するようにしてもよい。
【0029】
また、規制ローラ20A、20Bを設ける代わりに、パスローラ24A、24Bに規制手段を設けてもよい。例えば、規制ローラ20A、20Bのない裁断装置(図8参照)において、図6に示すパスローラ44A、44Bを用いるとよい。このパスローラ44A、44Bは、磁気テープ24A、24Bが巻き掛けられる溝46A、46Bが外周面に形成される。そして、溝46Aの側壁には、磁気テープ24Aの右端縁Xを規制する規制面47Aが形成され、溝46Bの側壁には磁気テープ24Aの左端縁Yを規制する規制面47Bが形成される。規制面47Aと規制面47Bとの間には、若干の隙間sが形成される。これにより、上述した規制ローラ20A、20Bと同様の効果が得られ、磁気テープ24A、24Bのエッジダメージ、及び塵埃の発生を防止できる。なお、パスローラ24A、24Bに溝46Aを設ける代わりに、規制板を設けてもよい。
【0030】
また、上述した実施の形態は、二段の巻取軸28A、28Bを設けたが、三段以上の巻取軸を設けてもよい。図7は、上下三段の巻取軸に巻き取る例であり、磁気テープ48Aは上段の巻取軸に巻き取られ、磁気テープ48Bは中段の巻取軸に巻き取られ、磁気テープ48Cは、下段の巻取軸に巻き取られる。この場合、エッジダメージが発生するおそれのある端縁は、上段の磁気テープ48Aの右端縁Xと、下段の磁気テープ48Cの左端縁Yなので、これらの端縁を規制する規制ローラ(不図示)を設ける。すなわち、磁気テープ48Aを図7上で左方向に規制する規制ローラと、磁気テープ48Cを図7上で右方向に規制する規制ローラを設ける。これにより、磁気テープ48Aと磁気テープ48Cが離れる方向に付勢されるので、磁気テープ48Aの右端縁Xと磁気テープ48Cの左端縁Yとが擦れることを防止できる。なお、三段以上の巻取軸を設ける場合には、図7上で左側の磁気テープから順に、徐々に高い位置の巻取軸に巻き取るようにするとよい。
【0031】
図8は第2の実施形態の裁断装置50を示す全体構成図であり、図9は、図8の9−9線に沿う断面図である。
【0032】
図8に示す第2の実施形態の裁断装置50は、図1に示した第1の実施形態の裁断装置10と比較して、規制ローラ20A、20Bがない点で異なるとともに、図9に示すように、パスローラ52A、52Bが傾斜している点で異なっている。パスローラ52A、52Bの傾斜の向きは、磁気テープ26A、26Bの右端縁(すなわち、上刃によって押し込まれて裁断された端縁)Xが下方となるようになっている。傾斜の程度は、水平線との角度θが1〜5°程度に設定される。
【0033】
次に上記の如く構成された第2の実施形態の裁断装置50の作用について図10に基づいて説明する。
【0034】
パスローラ52A、52Bを傾けたことによって、裁断直後の磁気テープ26A、26Bは、図10に二点鎖線で示すように傾斜した方向に引き出される。すなわち、磁気テープ26A、26Bはそれぞれ、右端縁Xが下方に付勢され、左端縁Yが上方に付勢されながら、引き出される。これによって、磁気テープ26Aの右端縁Xと、磁気テープ26Bの左端縁Yとが離れる方向に付勢されるため、磁気テープ26Aの右端縁Xの軌道と、磁気テープ26Bの左端縁Yの軌道が高さ方向に交差する際に、両端縁X、Yが擦れることを防止できる。
【0035】
なお、上述した第2の実施形態では、パスローラ52A、52Bの両方を傾斜させるようにしたが、パスローラ52A、52Bのどちらか一方を傾斜させても、同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、図11に示す形状のパスローラ54を用いることによっても、上述した第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。図11のパスローラ54には、テーパ55が形成され、このテーパ55に磁気テープ26A(或いは26B)が巻き掛けられる。
【0037】
図12は第3の実施形態の裁断装置におけるスリッタの平面図である。
【0038】
同図に示すスリッタの回転上刃56及び回転下刃(不図示)は、巻取軸28A(及び28B)に対して右方向にずれた位置に配置される。スリッタをずらす距離aとしては、テープ長1m当り、0.01〜0.25mm程度が好ましい。距離aがこの範囲よりも小さいと、後述する効果が得られなく、距離aがこの範囲よりも大きいと、裁断幅精度が悪化して幅精度不良を発生する。
【0039】
巻取軸28A、28Bにはそれぞれ、規制板58、58…が取り付けられており、磁気テープ26A、26Bは右端縁Xが規制板58に当接しながら巻き取られる。
【0040】
上記の如く構成された第3の実施形態によれば、スリッタにより裁断された磁気テープ26A、26Bは、左方向に付勢されながら引き出される。その結果、磁気テープ26A、26Bの張力が右端縁Xと左端縁Yとで変化し、左端縁Yにおける張力が若干小さくなる。このため、下段の磁気テープ26Bの左端縁Yが、上段の磁気テープ26Aの右端縁Xから離れる方向に付勢されながら引き出されるので、端縁X、Yが擦れることを防止できる。これにより、磁気テープ14にエッジダメージが発生することを防止できる。
【0041】
なお、上述した第3の実施形態では、スリッタを巻取軸28A、28Bに対して右方向にずらして配置したが、巻取軸28A、28Bをスリッタに対して左方向にずらして配置してもよい。これにより、上述した第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、巻取軸28Aのみをスリッタに対して左方向にずらして配置してもよい。この場合には、磁気テープ26Aの右端縁Xと磁気テープ26Bの左端縁Yとを離れる方向に付勢することができる。
【0042】
また、図13に示すパスローラ60を用いれば、スリッタや巻取軸28A、28Bの位置をずらさなくても、上述した第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。図13に示すパスローラ60は、外周面に多数の溝61、61……が形成されている。磁気テープ26Bは、左端縁Yが溝61に落ち込むようにして、パスローラ60に巻き掛けられる。これにより、磁気テープ26Bの左端縁Yの張りが弱くなるので、上述した第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、図13に示すパスローラ60の代わりに、磁気テープ26Bを吸引しながら回転するサクションドラムを設け、このサクションドラムにおいて、磁気テープ26Bの左端縁Yの吸引力が右端縁Xの吸引力よりも小さくなるように構成してもよい。
【0044】
なお、上述した第1〜3の実施の形態は、磁気テープ26A、26Bの右端縁Xを回転上刃32によって回転下刃30側に押し込んで裁断するようにしたが、スリッタ22を左右逆に構成し、磁気テープ26A、26Bの左端縁Yを回転上刃32で押し込んで裁断するようにしてもよい。その場合には、上記の説明において左右が全て逆になり、上段の磁気テープ26Aの左端縁Yと下段の磁気テープ26Bの右端縁Xとが擦れないように装置を構成する必要がある。
【0045】
また、上述した実施の形態は、磁気テープ26A、26Bを製造する製造過程における裁断装置の例であるが、幅広のウエブを多数の幅狭のテープに裁断する装置であれば、本発明を適用することができる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るウエブの裁断方法によれば、テープを幅方向に規制したり、パスローラを傾斜させたりすることによって、テープの端縁同士が離れて引き出されるようにしたので、テープの端縁同士が擦れることを防止できる。また、スリッタを巻取軸に対して相対的にずらして配置することによって、テープの端縁の張りを弱めるようにしたので、テープの端縁同士が擦れることを防止できる。これにより、テープにエッジダメージが発生したり、塵埃が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る裁断方法が適用される第1の実施形態の裁断装置を示す構成図
【図2】スリッタを示す正面図
【図3】規制ローラを示す斜視図
【図4】図1の4−4線に沿う断面図
【図5】図1の5−5線に沿う断面図
【図6】規制手段を備えたパスローラを示す正面図
【図7】巻取軸の数が多い裁断装置を説明する正断面図
【図8】第2の実施形態の裁断装置を示す構成図
【図9】第2の実施形態のパスローラを示す正面図
【図10】第2の実施形態の作用を説明するスリッタの正断面図
【図11】図9と異なるパスローラを示す正面図
【図12】第3の実施形態におけるスリッタを示す平面図
【図13】第3の実施形態と同様の効果が得られるパスローラを示す正面図
【図14】従来装置における裁断状況を示す断面図
【符号の説明】
10…裁断装置、12…巻き戻しリール、14…磁気テープ原反、16…フィードローラ、18…ガイドローラ、20…規制ローラ、22…スリッタ、24…パスローラ、26…磁気テープ、28…巻取ハブ、30…回転下刃、32…回転上刃、34…下側シャフト、36…スペーサ、38…上側シャフト、40…スペーサ、42…クリアー部、44…パスローラ、46…溝、47…規制面、50…裁断装置、52、54…パスローラ、55…テーパ、56…回転上刃、60…パスローラ、61…溝

Claims (1)

  1. 上刃と下刃から成るスリッタにウエブを連続的に通過させることによって、前記ウエブを多数本のテープに裁断するウエブの裁断方法において、
    前記スリッタから引き出されたテープが巻き取られる巻取軸に対して、前記スリッタを前記テープの幅方向に相対的にずらして配置し、該スリッタにより裁断されたテープが、前記巻取軸に設けられた規制板により前記上刃により下刃側に押し込まれた端縁の反対側に付勢されながら、隣接するテープと異なる高さ方向に引き出されることを特徴とするウエブの裁断方法。
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