JP4134447B2 - 空気通路切替装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気通路切替装置に関するものであって、特にフィルム式のドア部にて空気通路を切替えるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は先に、特開平9−188125号公報において、フィルム式のロータリドア部にて複数の吹出空気通路開口部を切替える空気通路切替装置を提案している。この従来装置では、図8に示すように、円弧状の外周面を有するロータリドア91を、複数の吹出空気通路開口部5、6、7と対向するようにして、ケース1内に回動可能に設け、このロータリドア91の外周部にフィルム部材92を配設している。そして、このフィルム部材92に風圧を加えるためのドア通風口91bをロータリドア91の外周部に開けることにより、フィルム部材92が風圧によって吹出空気通路開口部5、6、7に圧接されるようにしている。
【0003】
また、フィルム部材92の周方向両端のフィルム端部92b、92eをロータリドア91に固定してしまうと、フィルム部材92やケース1に寸法ばらつきがあった場合、フィルム部材92が風圧を受けてもフィルム部材92が吹出空気通路開口部5、6、7に圧接されず、シール不良を起こすことがある。そこで、フィルム端部92b、92eを、ロータリドア91に対して変位可能に係止することにより、上記のように寸法ばらつきがあった場合でも、フィルム部材92が風圧によって吹出空気通路開口部5、6、7に確実に圧接されるようにしている。
【0004】
そして、ロータリドア91を回動操作して、その回動位置を選択することにより、複数の吹出空気通路開口部5、6、7を選択的に開閉する。すなわち、フィルム部材92のうちフィルム開口部92aのない部分が、ケース1側の吹出空気通路開口部5、6、7の周縁部に風圧により圧接することにより、フィルム部材92にて吹出空気通路開口部5、6、7を閉塞する。一方、フィルム部材92の開口部92aと吹出空気通路開口部5、6、7とが重畳して、この両者が連通することにより、空気通路を開放するようにしている。あるいは、図8に示すロータリドア91の回動位置では、ロータリドア91のピン部材91c側端部が最も右側の吹出空気通路開口部7を開放するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来装置では、フィルム端部92b、92eがロータリドア91に対して変位可能であることと、フィルム部材92は可撓性のある樹脂材料で成形された薄膜状の部材であるので、比較的変形のしやすい部材であることから、フィルム端部92b、92eが送風空気の影響によって容易に振動して異音を発生することが分かった。
【0006】
すなわち、図8に示すように、一方のフィルム端部92bの表面(空気流F側)が空気流Fの向きと略平行になった場合、送風空気がフィルム端部92bに沿って流れることによりフィルム端部92bの表面の圧力が低下する。そのため、フィルム端部92bの表裏間に圧力差が発生して、フィルム端部92bが図9に二点鎖線で示すように変形する。そして、フィルム端部92bが二点鎖線で示す状態になると、フィルム端部92bの裏面側(図9の左側)に空気が流れてフィルム端部92bの裏面側の圧力も低下する。故に、フィルム端部92bの表裏の圧力差が小さくなり、フィルム端部92bは自身の復元力により図9に実線で示す状態に戻る。そして、上記の現象の繰り返し(フィルム端部92bの振動)により、異音(ビビリ音)が発生していた。
【0007】
また、フィルム式のドア部を空気通路の横断方向に直線的にスライドさせて、空気通路を切替える形式の空気通路切替装置においても、フィルム部材の端部をスライドドアに対して変位可能に係止した場合、同様に異音を発生することが分かった。
【0008】
そこで、本発明は上記点に鑑みて、フィルム式ドアを用いる空気通路切替装置において、フィルム部材の端部の振動による異音の発生を防止することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、ケース(1)内に形成された空気通路を開閉する空気通路切替装置であって、円弧状の円周壁(91a)にドア通風口(91b)が形成され、ケース(1)に回動自在に取り付けられたドア本体(91)と、円周壁(91a)の外周面側に配置され、ドア通風口(91b)を介して作用する風圧により空気通路の空気通路開口部(5、6、7)に圧着されて空気通路を閉塞する可撓性を有するフィルム部材(92)とを備える空気通路切替装置において、フィルム部材(92)のフィルム端部(92b)に取付用孔(92c)が形成され、ドア本体(91)において取付用孔(92c)に対向する位置に取付用突起部(91c)が設けられ、フィルム端部(92b)が内径側に折曲げられた状態で取付用孔(92c)が取付用突起部(91c)に嵌合されてフィルム端部(92b)がドア本体(91)に対して変位可能に係止され、フィルム端部(92b)の面が送風空気の流れの向きと略平行になる位置にドア本体(91)が回動された場合にフィルム端部(92b)の表裏間を連通させてフィルム端部(92b)の表裏の圧力差を小さくする連通孔(92d)が、取付用孔(92c)とは別に、フィルム端部(92b)に形成されていることを特徴としている。
【0010】
これによると、連通穴(92d)によってフィルム端部(92b)の表裏間の圧力差を小さくすることができるため、上記の圧力差に基づくフィルム端部(92b)の変形、振動を防止して、異音の発生を防止することができる。また、フィルム端部(92b)に連通孔(92d)を形成するだけでよいから、ほとんどコストアップなしで実施可能である。
【0011】
請求項3記載の発明では、空気通路開口部(5、6、7)に圧着して空気通路を閉塞する可撓性を有するフィルム部材(92)と、フィルム部材(92)に風圧を作用させるドア通風口(91b)を有するドア本体(91)と、フィルム部材(92)のフィルム端部(92b)をドア本体(91)に対して変位可能に係止する係止部(91c、92c)とを備える空気通路切替装置において、
空気通路を流れる空気をフィルム端部(92b)から遠ざかる方向に案内するガイド部(30、40、50)を有することを特徴としている。
【0012】
これによると、フィルム端部(92b)側に空気が流れないため、送風空気の流れ(F)によるフィルム端部(92b)の表面(空気流F側)の圧力低下は極めて小さくなる。従って、フィルム端部(92b)の表裏間の圧力差が生じにくくなり、フィルム端部(92b)の変形、振動を防止して、異音の発生を防止することができる。
【0013】
請求項2記載の発明のように、連通孔(92d)とガイド部(30、40、50)の両方を備えることにより、フィルム端部(92b)の変形、振動による異音の発生を一層確実に防止することができる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明を車両用空調装置(カーエアコン)に適用した実施形態における通風系の全体構成を示している。そして、ケース1は空調装置の空気通路を構成するものであって、このケース1は通常、車室内前部の計器盤(図示せず)内に設置される。このケース1内には、図1の右上部(車両前方側の上部)に、送風手段としての送風機2が配設されている。
【0018】
この送風機2はモータにより駆動される周知の遠心多翼ファンにて構成されており、このケース1に連結された図示しない吸気側ダクトを通してケース1内部に空気を吸入して矢印A方向に送風するようになっている。
【0019】
ここで、前記吸気側ダクトには、送風空気を冷却する冷却手段としてのエバポレータが配設されており、さらにこのエバポレータの空気上流側に内気取入口及び外気取入口が設けられているとともに、それら取入口のいずれかを開口させる内外気切替ドアが設けられている。前記エバポレータは、車両エンジンにより駆動される圧縮機を持つ冷凍サイクル中に設けられ、冷媒の蒸発潜熱により送風空気を冷却するようになっている。
【0020】
また、図1に示すように、前記ケース1内には、図1の右側下部(車両前方側の下部)に、加熱手段としてのヒータコア3が略水平方向に配設されている。このヒータコア3は車両エンジンの冷却水(温水)が図示しないポンプにより循環し、このエンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱するものである。
【0021】
そして、前記ヒータコア3の空気上流側部位には、エアミックスドア4が設けられている。このエアミックスドア4はその回転軸4aを中心として図1の矢印X方向に回動することにより車室内へ吹き出す空気温度を制御するものであって、温度制御手段を構成するものである。エアミックスドア4は、乗員の手動操作もしくは空調制御装置の自動温度制御信号により、空調条件に応じた開度に調整されるようになっている。
【0022】
このエアミックスドア4の開度に応じて、送風機2により矢印A方向に送風された空気のうち、ヒータコア3を通って温風通路100を矢印B方向に流れる温風と、ヒータコア3を通らずに冷風通路101を矢印C方向に流れる冷風の風量割合を調節するようになっている。そして、これら通路100、101を流れる冷風と温風は、ほとんどの場合、後述する円弧状のロータリドア(ドア本体)91内にて良好にエアミックスされる。
【0023】
一方、前記ケース1において、図1の左上部分(車両後方側の上部)には、複数個、本例では3個の吹出空気通路開口部5、6、7が、後述するロータリドア91の回動する領域内に、ロータリドア91の回動方向(円周方向)に沿って隣接し並ぶように設けられている。従って、ケース1側の吹出空気通路開口部5、6、7を形成する仕切り壁の先端部は円弧面上に位置するように成形されている。
【0024】
ロータリドア91の回動方向の中間に位置する吹出空気通路開口部5は、車室内計器盤の上方側に配設され乗員の上半身に向かって空気を吹き出すためのフェイス吹出口(図示しない)にフェイス吹出ダクト10によって連通されている。ロータリドア91の回動方向において、最も車両後方側に位置する吹出空気通路開口部6は車室内計器盤の下方側に配設され乗員の下半身に向けて空気を吹き出すためのフット吹出口(図示しない)にフット吹出ダクト11によって連通されている。
【0025】
ロータリドア91の回動方向において、最も車両前方側に位置する吹出空気通路開口部7は、車室内計器盤の上面で、車両のガラス面に近接して配設され、車両のフロントガラスやサイドガラスの内面に向かって空調風を吹き出すためのデフロスタ吹出口(図示しない)とデフロスタダクト12によって連通されている。上記した3個の吹出空気通路開口部5、6、7は、いずれも図1の紙面垂直方向をその長手方向とした略長方形状に形成されている。
【0026】
そして、送風機2が駆動されると、内気あるいは外気が吸気側ダクトから吸込まれてエバポレータを通ってケース1内に導かれ、さらにケース1内を矢印A、B、Cのように空気が流れて、冷風と温風の風量割合がエアミックスドア4の開度により調節されて、所望の吹出空気温度が得られる。そして、吹出空気はいずれかの吹出空気通路開口部5、6、7を介して車内の各吹出口から吹き出されるようになっている。なお、本実施形態では、3つの吹出空気通路開口部5、6、7によって後述する5つの吹出モードを選択することができるようになっている。
【0027】
さて、上記ケース1内には、前記3つの吹出空気通路開口部5、6、7の開閉およびその開口面積を調節する空気通路切替装置9が設けられている。以下、本実施形態に係る空気通路切替装置9について、図2、3を参照して詳述する。この空気通路切替装置9は、ロータリドア(ドア本体)91およびフィルム部材92を具備して構成されている。
【0028】
ロータリドア91は、略180°の円弧範囲を持つ半円筒状の円周壁91aを有し、円周壁91aには、軸方向に長細いドア通風口91bが形成されている。ロータリドア91の円周壁91aの円周方向の一端部(図1右側端部)には、フィルム部材92の円周方向の一端を取付けるための多数のピン部材(取付用突起部)91cが軸方向に一列に並んで一体成形されている。また、円周壁91aの円周方向の他端部(図1左側端部)には、フィルム部材92の円周方向の他端を取付けるための多数のピン部材(取付用突起部)91dが軸方向に一列に並んで一体成形されている。
【0029】
ロータリドア91の円周壁91aの外周面側にはフィルム部材92が配置されており、このフィルム部材92は、可撓性(柔軟性)があって、通気性がなく、しかも摩擦抵抗が小さい樹脂材料(例えばポリエチレンテレフタレート)で成形されている。図2(展開図)に示すように、フィルム部材92は全体として矩形状に形成され、このフィルム部材92の途中部位には、ドア通風口91bと常に連通している複数個のフィルム開口部92aが形成されている。
【0030】
フィルム部材92の両端部分(図2で左右の縁辺部)のうち、右側のフィルム端部92bには、複数個のスライド孔(取付用孔)92cと複数個の円形の連通孔92dが、図2に示すように1列に並んで形成されている。連通孔92dは、フィルム端部92bの表裏を連通して、使用時にその端部92bの表裏に圧力差が生じないようにするためのもので、充分な面積が確保されるように多数形成されている。従って、連通孔92dは、フィルム端部92bの表裏の圧力差を小さくするための圧力キャンセル手段を構成する。
【0031】
また、スライド孔92cは、具体的には、前記ピン部材91cに移動可能に嵌合する長孔で形成されている。そして、ピン部材91cとスライド孔92cとによって、フィルム端部92bをロータリドア91に対して変位可能に係止するための係止部を構成している。また、左側のフィルム端部92eには、複数個のスライド孔(取付用孔)92fが形成され、このスライド孔92fは前記ピン部材91dに移動可能に嵌合する長孔で形成されている。そして、ピン部材91dとスライド孔92fとによって、フィルム端部92eをロータリドア91に対して変位可能に係止するための係止部を構成している。
【0032】
フィルム部材92を、ロータリドア91の円周壁91aの外周側に取付けるにあたっては、まず、一方のフィルム端部92bを内径側に折曲げて曲げ部を形成し、この状態で、フィルム部材92をロータリドア91の円周壁91aの外周側に被せ、一方のフィルム端部92b側のスライド孔92cをピン部材91cに移動可能に嵌合させる。また、他方のフィルム端部92e側のスライド孔92fをピン部材91dに移動可能に嵌合させる。
【0033】
これにて、フィルム部材92は、自身の剛性および内周側から受ける風圧によって、ケース1側の吹出空気通路開口部5、6、7が形成されている円弧面に沿う円弧形状に保持される。
【0034】
以上のように構成されたロータリドア91は、ロータリドア91の回転軸91eがケース1の壁部に回転可能に支持されており、そして、この場合、図1に示すように回転軸91eにはレバー21が固着され、このレバー21の端部にコントロールケーブル22の一端が接続されている。このコントロールケーブル22の他端側は、車室内の空調制御パネル(図示せず)に設けられた吹出モード切替レバー(吹出モード切替操作手段)に連結されている。これにより、ロータリドア91は、吹出モード切替レバーの手動操作に基づいて回転方向(図1の矢印D及びE方向)に回転変位するようになっている。
【0035】
次に、上記構成において作動を説明する。送風機2を作動させると、ケース1内を図1の矢印A,B,Cのように空気が流れ、この送風空気は、ロータリドア91の内周側に至り、ここで冷風と温風が混合される。次いで、送風空気はロータリドア91の通風口91bおよびフィルム部材92の開口部92aを通って、このフィルム開口部92aとラップするケース1側の吹出空気通路開口部5、6、7のいずれか1つまたは複数から各吹出口に至り、車室内へ吹出す。
【0036】
そして、このとき、フィルム部材92は風圧によって外周側へ膨らむように張出し、閉塞すべき吹出空気通路開口部5、6、7の仕切り壁の先端部に圧接するので、この先端部をシールすることができる。従って、閉塞すべき開口部を、風洩れを生ずることなく、確実に閉塞できる。また、フィルム部材92の図1の左端側のフィルム端部92eを自由端としているから、フィルム部材92あるいはケース1の吹出空気通路開口部5、6、7に寸法ばらつきが発生しても、この寸法ばらつきを相殺する方向にフィルム端部92eが摺動することができる。
【0037】
また、フィルム部材92の円周方向の図1の右端側のフィルム端部92bを自由端としているから、フィルム部材92の外周面とケース1内壁面との間の摩擦力に応じて、フィルム端部92bを半径方向に移動させることができ、フィルム部材92の外周面をケース1内壁面の円弧形状に沿った円弧形状に維持できる。そのため、ロータリードア91の回動方向が変化しても、ロータリードア91操作力の変動を低減できる。
【0038】
ロータリドア91の回動に伴う吹出モードの切替作動については、特開平9−188125号公報等に詳述されているので、ここでは簡単に説明する。使用者が車内の吹出モード切替レバーを手動操作することにより、その操作力がコントロールケーブル22及びレバー21を介して直接的にロータリードア91に伝達され、ロータリードア91が矢印DあるいはE方向に回動する。そして、ロータリードア91の回動により、5つの吹出モードが選択される。
【0039】
先ず、フェイスモード時は、図1に示す位置に、ロータリドア91がフィルム部材92とともに回動しており、その結果、フィルム部材92のフィルム開口部92aがフェイス用の吹出空気通路開口部5に完全にラップする。これにより、ケース1内の空気は、ドア通風口91b、フィルム開口部92aを介してフェイス用の吹出空気通路開口部5よりフェイスダクト10に流入し、フェイス吹出口から車室内に吹き出される。そして、ロータリードア91が、図1の状態から反時計回りの方向に所定角度だけ順に回動することにより、バイレベルモード、フットモード、フットデフモード、デフロスタモードの順に、吹出モードが切り替えられる。
【0040】
ところで、図4に示すように、フィルム部材92のフィルム端部92bの面が、送風空気の流れFの向きと略平行になった場合、フィルム端部92bに沿って送風空気が流れることにより、フィルム端部92bの表面(空気流F側)では圧力が低下する。しかしながら、本実施形態では、フィルム端部92bの表裏間を連通する連通孔92dよってフィルム端部92bの表裏間の圧力差をなくすことができるため、圧力差に基づくフィルム端部92bの変形、振動は発生せず、その結果、フィルム端部92bの振動による異音も発生しなくなる。しかも、フィルム端部92bに連通孔92dを形成するだけでよいから、ほとんどコストアップなしで実施可能である。
(第2実施形態)
上記実施形態では、連通孔92dよってフィルム端部92bの表裏間の圧力差をなくすようにしているが、図5に示す第2実施形態では、ガイド部30によって送風空気がフィルム端部92b側に流れにくくすることにより、フィルム端部92bの表裏間の圧力差が生じにくいようにしている。
【0041】
図5において、ガイド部30は、ロータリドア91の円周壁91aの円周方向の一端部(ピン部材91c側)に、ロータリドア91と一体に形成されている。このガイド部30は空気の流れF側(図5において右側)に向かって延びていて、ガイド部30の先端はフィルム端部92bの面よりも所定の長さL(例えば1mm)だけ突出している。また、ガイド部30は断面が直角三角形で、図5において下方に斜面部30aが形成され、この斜面部30aによって空気の流れの向きを変えるようにしている。また、このガイド部30は、ロータリドア91の軸方向の全長にわたって設けられている。
【0042】
上記構成において、送風空気の流れFのうちロータリドア91の近傍の流れは、矢印F’で示すようにガイド部30の斜面部30aによって、フィルム端部92bから遠ざかる方に向きが変えられる。従って、フィルム端部92b側には空気がほとんど流れ込まなくなり、送風空気の流れFによるフィルム端部92bの表面(空気流F側)の圧力低下は極めて小さくなる。これにより、フィルム端部92bの表裏間の圧力差も極めて小さくなるため、圧力差に基づくフィルム端部92bの変形は発生せず、フィルム端部92bの振動による異音も発生しなくなる。しかも、斜面部30aによって空気の流れの向きをスムーズに変えることができるため、ガイド部30の設置に伴う圧損や騒音の増加を最小限に抑えることができる。
(第3実施形態)
図6に示す第3実施形態は、ガイド部40の断面形状が第2実施形態のガイド部30と異なり、その他の点は第2実施形態と共通している。本実施形態のガイド部40は、ロータリドア91の円周壁91aの円周方向の一端部から、空気の流れF側(図6において右側)に向かって突出する板状のものであって、第2実施形態のガイド部30の斜面部30aに相当する部分を備えていない。
【0043】
そして、このガイド部40によっても、ロータリドア91の近傍の空気流れを、矢印F’で示すようにフィルム端部92bから遠ざかる方に変えることができる。従って、第2実施形態と同様に、フィルム端部92bの変形は発生せず、フィルム端部92bの振動による異音も発生しなくなる。
(第4実施形態)
図7に示す第4実施形態は、ガイド部50の断面形状が第2実施形態のガイド部30と異なり、その他の点は第2実施形態と共通している。本実施形態のガイド部50は、ロータリドア91の円周壁91aの円周方向の一端部から、空気の流れF側(図7において右側)に向かって突出する第1板部50aと、この第1板部50aからフィルム端部92bと平行に、かつロータリドア91の径方向外方に向かって延びる外2板部50bとを有する。そして、フィルム端部92bは、送風空気の通路と隔離されるように、ガイド部50によって覆われている。
【0044】
上記構成において、送風空気の流れFのうちロータリドア91の近傍の流れは、矢印F’で示すようにガイド部50によって変えられ、フィルム端部92b側には空気が流れ込まなくなる。従って、フィルム端部92bの表面(空気流F側)の圧力低下がなくなり、フィルム端部92bの振動による異音も発生しなくなる。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態においては、連通孔92dは、隣接する2つのスライド孔92c間に3つずつ設けたが、隣接する2つのスライド孔92b間に1つ、あるいは2つ設けてもよいし、さらに4つ以上設けてもよい。また、連通孔92dは、円形以外の形状でもよく、例えば、スライド孔92cと同形状でかつ同一の大きさにしてもよい。また、連通孔92dとガイド部30、40、50の両方を設けて実施してもよい。
【0045】
また、本発明はフィルム式のドア部を空気通路の横断方向に直線的にスライドさせて、空気通路を切替える形式の空気通路切替装置にも適用可能であり、さらに、本発明は上記実施形態で説明した車両用の空調装置に限らず、空気通路を開閉するための各種装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示すもので、車両用空調装置の要部の概略断面図である。
【図2】図1に示すフィルム部材の展開平面図である。
【図3】図1に示すロータリドア部分の要部斜視図である。
【図4】図1に示すロータリドア部分の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるロータリドア部分の要部断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態におけるロータリドア部分の要部断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態におけるロータリドア部分の要部断面図である。
【図8】従来の車両用空調装置の要部の概略断面図である。
【図9】図8に示すロータリドア部分の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1…ケース、5、6、7…吹出空気通路開口部、9…空気通路切替装置、
91…ロータリドア(ドア本体)、91b…ドア通風口、92…フィルム部材、92b…フィルム端部、92d…連通孔。

Claims (4)

  1. ケース(1)内に形成された空気通路を開閉する空気通路切替装置であって、
    円弧状の円周壁(91a)にドア通風口(91b)が形成され、前記ケース(1)に回動自在に取り付けられたドア本体(91)と、前記円周壁(91a)の外周面側に配置され、前記ドア通風口(91b)を介して作用する風圧により前記空気通路の空気通路開口部(5、6、7)に圧着されて前記空気通路を閉塞する可撓性を有するフィルム部材(92)とを備える空気通路切替装置において、
    前記フィルム部材(92)のフィルム端部(92b)に取付用孔(92c)が形成され、前記ドア本体(91)において前記取付用孔(92c)に対向する位置に取付用突起部(91c)が設けられ、前記フィルム端部(92b)が内径側に折曲げられた状態で前記取付用孔(92c)が前記取付用突起部(91c)に嵌合されて前記フィルム端部(92b)が前記ドア本体(91)に対して変位可能に係止され、
    前記フィルム端部(92b)の面が送風空気の流れの向きと略平行になる位置に前記ドア本体(91)が回動された場合に前記フィルム端部(92b)の表裏間を連通させて前記フィルム端部(92b)の表裏の圧力差を小さくする連通孔(92d)が、前記取付用孔(92c)とは別に、前記フィルム端部(92b)に形成されていることを特徴とする空気通路切替装置。
  2. ケース(1)内に形成された空気通路を開閉する空気通路切替装置であって、前記空気通路の空気通路開口部(5、6、7)に圧着して前記空気通路を閉塞する可撓性を有するフィルム部材(92)と、前記フィルム部材(92)に風圧を作用させるドア通風口(91b)を有するドア本体(91)と、前記フィルム部材(92)のフィルム端部(92b)を前記ドア本体(91)に対して変位可能に係止する係止部(91c、92c)とを備える空気通路切替装置において、前記フィルム端部(92b)の表裏間を連通する連通孔(92d)を、前記係止部(91c、92c)とは別に、前記フィルム端部(92b)に形成し、さらに、前記空気通路を流れる空気を前記フィルム端部(92b)から遠ざかる方向に案内するガイド部(30、40、50)を有することを特徴とする気通路切替装置。
  3. ケース(1)内に形成された空気通路を開閉する空気通路切替装置であって、前記空気通路の空気通路開口部(5、6、7)に圧着して前記空気通路を閉塞する可撓性を有するフィルム部材(92)と、前記フィルム部材(92)に風圧を作用させるドア通風口(91b)を有するドア本体(91)と、前記フィルム部材(92)のフィルム端部(92b)を前記ドア本体(91)に対して変位可能に係止する係止部(91c、92c)とを備える空気通路切替装置において、前記空気通路を流れる空気を前記フィルム端部(92b)から遠ざかる方向に案内するガイド部(30、40、50)を有することを特徴とする空気通路切替装置。
  4. 前記係止部(91c、92c)は、前記フィルム端部(92b)に形成した取付用孔(92c)と、前記ドア本体(91)において前記取付用孔(92c)に対向する位置に設けた取付用突起部(91c)とからなり、前記取付用孔(92c)を前記取付用突起部(91c)に嵌合して前記フィルム端部(92b)を前記ドア本体(91)に係止したことを特徴とする請求項2または3に記載の空気通路切替装置。
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