JP4132853B2 - ハチ用食毒剤およびそれを用いたハチの駆除方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハチ用食毒剤およびそれを用いたハチの駆除方法に関する。更に詳しくは、ハチの生活習性を利用して効果的にハチを致死させうるハチ用食毒剤およびそれを用いたハチの駆除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スズメバチやアシナガバチを駆除する製剤として、殺虫成分を使用したエアゾール製剤が使われている。しかしながら、巣に適用しても駆除効果は得られず、ハチ自体に適用することによってのみ駆除する効果が得られるものであるため、駆除対象のハチ個々に対し直接的に適用せざるを得なかった。従って、駆除対象のハチが多い場合、例えば、巣ごと駆除しようとする場合、当該ハチの駆除は非常に困難であった。しかも、該製剤の適用に際しハチが興奮することから刺される危険性があり、特にスズメバチのように攻撃的なハチの場合、その危険性は極めて高く、ハチの駆除はよりいっそう困難をきわめた。最近、スズメバチは軒下(室外)だけでなく、天井裏、床下などに営巣することがあり、その駆除は安全性の面からも非常に難しい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、ハチを興奮させることなく適用でき、ハチの生活習性を利用して効果的にハチを致死させうるハチ用食毒剤およびそれを用いたハチの駆除方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
〔1〕 殺虫成分と、糖類および/または動物性タンパク質とを含有してなる、巣上に付着させるハチ用食毒剤、
〔2〕 殺虫成分と、発酵臭成分とを含有してなる、巣上に付着させるハチ用食毒剤、ならびに
〔3〕 前記〔1〕または〔2〕記載のハチ用食毒剤を少なくともハチの巣上に付着させて用いることを特徴とするハチの駆除方法、
に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のハチ用食毒剤は、〔1〕殺虫成分と、糖類および/または動物性タンパク質とを含有してなるもの、〔2〕殺虫成分と、発酵臭成分とを含有してなるものが挙げられる。
【0006】
ハチは、植物の繊維と体内に含まれる唾液物質(タンパク質)と混合して得られる巣材を用いて、釣り鐘状の巣を形成し、その巣上に付着したものは、必ずハタラキバチが調査除去するという生態的特徴を有している。また、スズメバチにおいては、巣を拡張する場合、巣の外皮内面側をけずりとり巣内部のコロニー(六角形部屋)をつくるという生態的特徴を有している。したがって、ハチの巣上に本発明のハチ用食毒剤を付着させると、ハタラキバチは餌と認識し、それを舐めると共に巣内の他のハチに与える行動から、巣内のハチ全体に殺虫成分を行きわたらせ、巣内のハチを致死させることにより、ハチの巣を駆除することが可能である。また、ハタラキバチが巣の内部を再建する際、食毒剤が付着した巣の外皮を噛み砕き、それを巣の内部の巣材として利用することから、巣全体に食毒剤をいきわたらせることが可能である。なお本発明の食毒剤のハチの巣への付着は、(イ)人為的にハチの巣に施用することによる付着、(ロ)食毒剤が体表等に付着したハチからの付着、などが挙げられる。このように、本発明のハチ用食毒剤を用いると、駆除対象のハチ個々に対し直接的に適用することなく、巣内の他のハチを駆除できるという効果を有する。
【0007】
殺虫成分としては、アレスリン、テトラメスリン、レスメトリン、フェノトリン、フラメトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、トラロメスリン、エンペントリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェンなどのピレスロイド系殺虫剤、フェニチオン、フェニトロチオン、テメホス、ホキシム、アセフェート、ピリダフェンチオン、ダイアジノン、マラチオン、プロチオホス、プロペタンホス、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、DDVPなどの有機リン系殺虫剤、NAC、ペンチオカルブ、プロポクスルなどのカーバメイト系殺虫剤、その他イミダクロブリド、メトキサジアゾン、フィプロニル及びその類縁化合物、ホウ酸、ヒドラメチルノン、リチウムスルホネート、リチウムパーフルオロオクタスルホネート、スルフルアミド、1−メチル−2−ニトロ−3,3−テトラハイドロフリルメチルグアニジンなどが挙げられる。これらは単独で、または混合して用いることができる。
【0008】
前記殺虫成分においては、忌避性が少なく、高い致死効果を有する観点から、レスメトリン、トラロメスリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェンなどのピレスロイド系殺虫剤、フィプロニル、イミダクロプリド、ホウ酸、ヒドラメチルノン、リチウムスルホネート、リチウムパーフルオロオクタンスルホネート、1−メチル−2−ニトロ−3,3−テトラハイドロフリルメチルグアニジン(MTI446)が好ましく、なかでも微量で殺虫力に優れる観点から、フィプロニル(化学名/5−アミノ−1−〔2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−4−〔(トリフルオロメチル)スルフィニル〕−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル)、1−メチル−2−ニトロ−3,3−テトラハイドロフリルメチルグアニジン(開発番号/MTI446)がより好ましい。
【0009】
糖類は、ハチのエネルギー源として使用できるものが好ましい。糖類としては、例えば、デンプンを原料として生成されるブドウ糖、マルトース、トレハロース、水あめ、還元水あめ、還元麦芽糖水あめ、直鎖オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、異性化糖、ソルビトール、エリスリトール、甘蔗、甜菜から得られる砂糖を原料として得られるパラチノース、フラクトオリゴ糖、乳糖を原料として得られる還元乳糖、異性化乳糖、ガラクトオリゴ糖、乳糖果糖オリゴその他、キシロール、キシリトール、果糖、マンニトール、カップリングシュガー、パラチニット、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖などが挙げられる。無論、一般的なショ糖、グラニュー糖、三温糖、蜂蜜、黒砂糖、黒蜜なども糖類として挙げられる。なかでも、入手のしやすさ、溶解性、甘味度、誘引性の観点から、ブドウ糖、マルトース、トレハロース、水あめ、オリゴ糖、乳糖、キシリトール、カップリングシュガー、ショ糖、グラニュー糖、三温糖、蜂蜜、黒砂糖、黒蜜が好ましい。
【0010】
動物性タンパク質は、ハチが幼虫の餌(タンパク源)として使用できるものが好ましい。ハチが幼虫の餌(タンパク源)として使用できる植物性タンパク質を併用してもよい。前記動物性タンパク質または植物性タンパク質としては、例えばアクチン、アルブミン、カゼイン、フィブリン、フィブリノーゲン、ケラチン、グロブリン(α、β、γ)、ヘモグロビン、ラクトグロブリン、ミオジン、ペプシン、ホスホリラーゼ、リボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼグロブリン(α、β、γ)、ゼラチン、コラーゲン、ラクトグロブリンなど多くのものを挙げることができる。なかでも、ハチの誘引物として有効である観点から、例えば、ハエ、セミ、バッタ、カマキリ、コオロギ、ゴキブリ、ドウガネブイブイ、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチ、チョウ、ガ、蚊、アリ、カメムシ、クモ、オキアミなどの昆虫類などの成虫、サナギまたは幼虫、牛、馬、ウサギ、鶏、カエル、魚類、貝殻類、卵などが好ましく、その中でも、ハチの誘引性が非常に高い観点から、ハエ、セミ、バッタ、カマキリ、コオロギ、ゴキブリ、ドウガネブイブイ、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチ、チョウ、ガ、蚊、アリ、カメムシ、クモなどの昆虫類などの成虫、サナギ、幼虫、およびその体液がより好ましい。また、それらの成分は、ハチが幼虫の餌として、肉団子状に噛みほぐしたものを与えることが多いので、ゴキブリやアリ用の餌として用いられるような乾燥粉末ではなく、液状もしくはペースト状に加工されたものであることが望ましい。
【0011】
さらに、スズメバチなどハチが好んで捕食する、例えば、キノコ類であるシラタマタケなどの含有粘液のタンパク質、イチジク、ブドウなどの果樹の熟成果実や、クヌギ、コナラなどの樹液の糖類を用いることも好ましい。
【0012】
食毒剤における殺虫成分の含有量は、ハチの致死効果を確実にし、速効性よりも幾分遅効性よりの効果を有してハチが巣に食毒剤を持ち帰り巣内の他のハチに与える時間を有し、人畜や益虫への安全面やユーザーへの経済面を充分に考慮する観点から、食毒剤中に0.0001〜40重量%が好ましく、0.001〜15重量%がより好ましい。また、フィプロニル、1−メチル−2−ニトロ−3,3−テトラハイドロフリルメチルグアニジンは0.0001〜5重量%が好ましい。
【0013】
食毒剤における糖類の含有量は、その甘味度や対象とするハチによっても変わるが、5〜80重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましい。食毒剤が液剤もしくは粘性剤であって、誘引剤として使用する場合は、10〜60重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。
【0014】
食毒剤における動物性タンパク質の含有量は、液剤や粘性剤などの製剤化の観点から5〜80重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましい。
【0015】
本明細書において発酵臭成分とは、発酵したときに発酵臭を構成する成分のことをいう。発酵臭とは、例えば、酵母や細菌などの微生物によって有機物が分解される時に発せられる臭気である。
【0016】
発酵臭成分としては、例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸、エステル、炭化水素、ラクトン、硫黄化合物、フランなどが挙げられる。さらに、具体的には、エタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、ベンジルアルコール、2,4−ヘキサジエノールなどアルコール類、アセトアルデヒド、ジメチルプロパナール、メチルブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、ジオクテナール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセトイン、2,3−ブタネジオン、2−ペンタノン、3−ペンテン−2−オン、3−ヒドロキシ−3−ペンタノン、2,3−ペンタネジオン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−ノナノン、2−ウンデカノンなどケトン類、ぎ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、ピルビン酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、安息香酸など酸類、ペンタン、メチルシクロペンタンなど炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、安息香酸メチル、カプロン酸エチル、酢酸イソアミル、ヘプチルブチレート、2,4−ヘキサジニルブチレート、オクチルブチレート、クロトン酸−2,4−ヘキサジエニル、2−メチル酪酸−2,4−ヘキサジエニル、酪酸−(Z)−3−ヘキセニル、酪酸−2,4−ヘキサジエニル、酪酸ノニル、酪酸ヘプチル、酪酸オクチル、2−ヘプチン酸−3−ブチニル、2−ヘプチン酸イソペンチル、ピバリン酸オクチル、クロノン酸−2−メチルペンチル、2−ヘプチン酸ペンチル、また、プロピオン酸エステル、イソ酪酸エステルなどエステル類、γ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、δ−オクタラクトン、δ−トリデカラクトンなどラクトン類、メチルチオメタン、メチルジチオメタン、メチルスルフォニルメタンなど硫黄化合物、2−プロピルフラン、2−ペンチルフラン、2−ヘキシルフラン、フルフラン、2,5−ジメチルフランフルフラン、5−メチルフルフラル、2−アセチルフラン、2−フランプロパノール、2−プロパノイルフラン、フルフリルアルコールなどフラン類などが例示できる。
【0017】
発酵の例としては、アルコール発酵、アセトン−ブタノール発酵、乳酸発酵、酪酸発酵、メタン発酵、水素発酵などの酸素を必要としない発酵と、酢酸発酵、グルコン酸発酵、クエン酸発酵、フマル酸発酵およびコハク酸発酵、コウジ酸発酵などの酸化発酵があげられる。その中でも特にアルコール発酵、乳酸発酵、酢酸発酵による発酵臭が好ましい。
【0018】
発酵臭成分は、ハチの誘引性を高める観点から、食毒剤の適用時および/または使用期間中に、発酵して発酵臭を有するものが好ましい。
【0019】
なお、発酵臭に含まれる各成分は、ヘッドスペース法(吉沢:醸協、68(1)59(1973))によりガスクロマトグラフィ分析によって測定することができる。従って、食毒剤における発酵臭成分の含有量は、発酵臭中の任意の成分を標準物質とし、その量を指標として確認および測定することができる。
【0020】
食毒剤における発酵臭成分の含有量は、ヘッドスペース法で得られる含有物質中にアルコール類が1〜10,000ppm、エステル類が1〜1,000ppm、有機酸類が1〜1,000ppmの範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明の食毒剤には、付着性を向上させるために、補助剤として粘着成分を配合しても良い。補助剤としては、例えば、カラギーナン、寒天、ゼラチン、ジュランガム、ローカストビンガム、キサンタンガム、でんぷん粉、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、アラビアゴムなどが挙げられる。
【0022】
また、本発明の食毒剤には、その他の補助成分として、安定化剤、防腐剤、色素、共力剤、香料などを効果に支障がない範囲で配合することができる。例えば、安定化剤としては、乳酸カルシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。また、防腐剤としては、ソルビン酸、ソルビン酸塩、パラオキシ安息香酸エステルなどが挙げられる。共力剤としてはS−421、サイネピリンなどが挙げられる。
【0023】
本発明の食毒剤は、前記各成分を混合することにより調製することができる。なお、発酵臭成分は、食毒剤の調製時に添加してもよく、食毒剤を使用する直前に添加してもよい。また、発酵臭成分を食毒剤を使用する直前に添加した場合、添加後すぐに使用してもよく、放置して発酵させた後に用いてもよい。また、発酵臭成分の添加が難しい場合、例えば、糖、アルコール、酢、乳酸、スキムミルク、ヨーグルト等を配合した後、自然発酵させたものを密閉容器に封入するか、設置後発酵が進むように調整したものを用いることもできる。
【0024】
本発明の食毒剤の性状としては、液剤、粘性剤、固形製剤、エアゾール製剤が挙げられる。
【0025】
食毒剤が液剤または粘性剤である場合、それを巣に直接噴霧または塗りつけたときに巣についた液体が垂れない観点から、食毒剤の粘性は50〜30000cpが好ましい。特にこの液体を噴射剤にて飛ばす場合は粘性と飛距離との関係から、食毒剤の粘性は50〜10000cpが好ましい。
【0026】
食毒剤が固形製剤である場合、それをハチが削り取れる観点から、食毒剤の固さ、弾性は、1mm押し下げるのに2000g/cm2 以下が好ましい。
【0027】
食毒剤をエアゾール製剤として用いる場合、該エアゾール製剤は原液と噴射剤からなる内容物を主とするが、必要に応じて界面活性剤、効力増強剤、防錆剤などを配合してもよい。なお、前記原液とは、本発明の食毒剤の成分と、溶剤とを含むものである。
【0028】
前記噴射剤としては、ジメチルエーテルなどの液化ガス、プロパン、ブタン、イソブタンなどの液化石油ガス、窒素ガス、圧縮空気、炭酸ガスなどの圧縮ガスなどを単独で、または混合して用いることができる。エアゾール製剤内のガス圧力は、噴射剤の種類、飛距離、食毒剤の性状によって多少変わるが、通常、(20℃ゲージ圧0.2〜0.6MPa)である。
【0029】
前記溶剤としては、水、低級アルコール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール、アセトン、メチルエチルアセトンなのケトン類などを単独で、または混合して用いることができる。
【0030】
さらに、エアゾール製剤における原液と噴射剤との容量比(原液/噴射剤)は、ハチ営巣などの対象物への付着性増大および噴霧粒子の粗大化などの観点から、80/20〜30/70の範囲において、食毒剤の粘性に応じて決めることが好ましい。
【0031】
本発明が対象とするハチは、例えば、フタモンアシナガバチ、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、コアシナガバチ、キボシアシナガバチ、ヤマトアシナガバチなどのアシナガバチやキイロスズメバチ、コガタスズメバチ、モンススズメバチ、ヒメスズメバチ、オオスズメバチ、チャイロスズメバチ、クロスズメバチなどのスズメバチ上科、ミツバチ、マルハナバチなどのハナバチ上科、その他アナバチ上科、ベッコウバチ上科、ツチバチ上科にも有効である。
【0032】
本発明の食毒剤を用いることにより、ハチを駆除することができる。本発明の食毒剤は、ハチに直接的におよび/または間接的に接触させるように用いることができる。例えば、本発明の食毒剤を、ハチ、ハチの巣、ハチの巣の周辺およびハチの喫食対象物に適用することができる。本発明の食毒剤は、ハチ、ハチの巣、ハチが出入りする周辺、ハチの巣の下、ハチが喫食している果物、飲料ゴミ、昆虫、ハチが襲っている昆虫の巣などに適用するのが好ましい。ハチが出入りする周辺としては、軒下、屋根瓦の下、屋根裏、床下、壁間、空箱内部、木の枝、樹木の空洞、土中等が挙げられる。ハチやその巣を駆除する際の危険性を減少し、簡便に駆除できる観点から、ハチが出入りする周辺に食毒剤を適用するのが好ましい。上記のように、ハチに食毒剤を用いると、ハチが該食毒剤を喫食することにより、またはハチに該食毒剤が付着することなどにより、ハチに食毒剤が接触しうる。
【0033】
本発明の食毒剤の適用形態としては、液剤、粘性剤、エアゾール製剤などの食毒剤を、噴霧器、スプレー、エアゾールなどの既存手段を用いて、適用箇所に吐出し付着させる形態が挙げられる。その他、液体をベイト容器に充填したものを施用する形態や、吸水性を有する紙、不織布、綿などに染み込ませたものを施用する形態などが挙げられる。これらの中では、ハチが非常に危険な害虫であることから簡単に使用できるエアゾール製剤を用いるのが、噴霧器などの準備や食毒剤を収容する手間もなく、また小型なので取り扱い易く、押すだけで操作が簡単である等から好ましい。また、殺虫成分の経時安定性を確保できることからもエアゾール製剤が好ましい。
【0034】
食毒剤の適用形態として更に、ファン送風や熱源加熱などの補助手段を用い、食毒剤における発酵臭などの誘引成分を広範囲に拡散したり、巣入口など目的地に放散することもできる。
【0035】
本発明の食毒剤の使用量としては、巣の大きさや成虫数などによって異なるが、早期に駆除する必要があり成虫との接触機会を増やす観点から、1巣当たり1〜400gが好ましく、10〜200gがさらに好ましい。
【0036】
本発明のハチの駆除方法は、適用時に巣内のハチを興奮させることが少ないものである。危険性が低く安全であるという観点から、ハチの活動が休止している夜間に食毒剤を適用するのが好ましい。また、本発明の方法は、ハチの生活習性により自然に発生源が撲滅できるという効果的なものである。
【0037】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0038】
試験例1〜7
表1の組成となるように、各成分を混合して試験例1〜7の粘性を有する液状物を得た。
【0039】
〔糖類の喫食性の基礎評価〕
キアシナガバチ、セグロアシナガバチを試験室網室内で強制営巣させたものを供試虫(約180匹)として用いた。網室内にはツバキ、バラ、杉の幼木をはじめとする植物が植えられ、その中央付近に餌場が設けてある。網室内で3日間供試虫を絶食させた後、試験例1〜7の液状物各20gを綿に染み込ませたものを餌場に配置した。その後2時間にわたり、各液状物に誘引され喫食したハチの数を調査した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1より、試験例1〜4で得られた糖類を配合した液状物の場合、糖類の種類によって差はあるものの、試験例5〜7で得られた液状物と比べて十分なハチの喫食性が得られた。したがって、試験例1〜4の糖類が、ハチの喫食に有効であることがわかる。
【0042】
試験例8〜20
表2に示されるように、試験例8〜20の動物性タンパク質または植物性タンパク質を調製した。
【0043】
〔タンパク質:基礎評価1〕
アシナガバチを試験室網室内で強制営巣させたものを供試虫(約180匹)として用いた。網室内にはツバキ、バラ、杉の幼木をはじめとする植物が植えられ、その中央付近に餌場が設けてある。網室内で3日間供試虫を絶食させた後、試験例8〜20の動物性タンパク質または植物性タンパク質各2.0gを餌場に配置した。各タンパク質において、その後2時間にわたりハチがタンパク質に誘引され、それを肉塊として巣に持ち帰るかどうかを調査して、アシナガバチにおけるタンパク質摂取の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0044】
〔タンパク質:基礎評価2〕
試験例8〜20の動物性タンパク質または植物性タンパク質各2.0gを、屋外で営巣しているスズメバチの巣の入口に近づけた。各タンパク質について、ハタラキバチがタンパク質に誘引され、それを肉塊として巣に持ち帰るかどうかを調査して、スズメバチにおけるタンパク質摂取の特性を調べた。結果を表2に示す。
【0045】
尚、表中の*および**は、以下のものを意味する。
* 何れも一部分を傷つけ、動けなくしたもの(セミは、腹部を分解)。
** いずれもすり潰した後、水を加えてペースト状にしたもの。
【0046】
【表2】
【0047】
表2の結果より、ハチの種類によって有効なタンパク質の種類は変わるものの、試験例17〜20のようにタンパク質が植物性のものである場合、肉塊として巣に持ち帰ることはなく、タンパク質は植物性よりも動物性のものが効果があることがわかる。また、試験例11のミツバチの蛹は巣に持ち帰ったが、試験例10の蛹粉は誘引するものの巣に持ち帰らないことから、動物性タンパク質は粉末状でない方が効果があることがわかる。
【0048】
試験例21〜29
表3の組成となるように、各成分を混合して試験例21〜29の液状物を得た。尚、試験例21〜23の液状物においては、7日間放置することにより発酵させた。
【0049】
【表3】
【0050】
〔発酵臭の誘引性の基礎評価〕
ペットボトルラップ内に試験例21〜29の液状物各100gを入れた。そのサンプルを3日間スズメバチの往来が見られる周辺の樹木に吊るす状態でに設置し、捕獲されたスズメバチの数を調査した。なお、サンプルは500m以上離れた異なる場所3ヶ所に設置した。結果は3ヶ所の合計数を表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
以上の結果より、試験例28および試験例29のように日本酒、米酢、ヨーグルト等の発酵臭成分を配合していない液状物は、他の液状物と比較して誘引されるスズメバチはほとんどなく、日本酒、米酢、ヨーグルト等の発酵臭成分を含有してなる液状物がスズメバチの誘引に効果があることがわかる。また、試験例21〜23と試験例24〜27を比べると、発酵臭成分を含有してなる液状物を7日間放置し発酵させることにより、更にスズメバチの誘引性が増大することがわかる。
【0053】
実施例1〜2および比較例1
表5の組成となるように、各成分を混合して実施例1〜2の液状物を得た。
【0054】
【表5】
【0055】
一定時間、スズメバチの巣へ出入り(出数と入数)を確認した後、実施例1または実施例2の液状物を圧縮空気によって飛ばす装置(圧縮空気を利用した蓄圧式水鉄砲)に充填し、スズメバチの巣に向かって約5m離れた地点から約5秒間で35g噴射した。その後、経時的にスズメバチの巣への出入りを調査した。また、比較例1として市販のスズメバチ用エアゾール(主成分:プラレトリン)を使用し、5m離れた地点から5秒間巣に向かって65g噴霧して、経時的にスズメバチの巣への出入りを調査した。無処理の場合のスズメバチの巣への出入りも同様に調査した。結果を表6に示す。
【0056】
【表6】
【0057】
表6より、実施例1および実施例2の液状物のスズメバチの巣への噴射により、約1週間でほぼ完全に巣を駆除することができることがわかった。一方、比較例1では、スズメバチは駆除できなかった。また、実施例1および実施例2の液状物のスズメバチの巣への適用は、比較例1のスズメバチ用製剤の使用に比べて、安全に処理が可能であった。
【0058】
実施例3
家屋内の天井に作られ、食毒剤を直接塗布することが困難な巣の駆除において、スズメバチが巣への出入りの際によく通過する巣から離れた場所に向かって、実施例1で使用したものと同様の組成の液状物を実施例1と同様の方法で35g噴霧した。その後、経時的にスズメバチの出入りを調査した。また、比較例2として市販のスズメバチ用エアゾール(主成分:プラレトリン)を使用し、スズメバチが出入りする場所に向かって、5秒間65g噴霧して、経時的にスズメバチの出入りを調査した。無処理の場合のスズメバチの出入りも同様に調査した。結果を表7に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
表7より、実施例3の液状物の使用により、スズメバチの出入りがほとんどなくなり、スズメバチを駆除することができることがわかった。なお、比較例2のスズメバチ用製剤では、スズメバチを駆除することができなかった。
【0061】
実施例4
自然営巣していたセイヨウミツバチの巣に飛来し、その内部の蜜を吸って巣に戻ろうとするオオスズメバチ10匹を捕獲した。捕獲したオオスズメバチの体表に、実施例1で使用したものと同様の組成の液状物を綿に染み込ませ、その上を強制的に歩かせた後、再び放した。その後毎日、決まった時間にセイヨウミツバチの巣に飛来するオオスズメバチの数を30分間調査した。
【0062】
【表8】
【0063】
表8より、実施例4の液状物をハタラキバチの体表に付着させることで、その飛来数を減少させることができることがわかる。したがって、実施例4の液状物をハタラキバチの体表に付着させることにより、そのハチだけでなく巣内の他のハチをも致死させることが可能であると推測される。
【0064】
実施例5
表9の組成となるように各成分を混合して、液状物を得た。原液として、得られた液状物250mlをエアゾール缶に充填した後、バルブを装着し、密閉した。次いで、噴射剤としてLPG(ゲージ圧力4.8kg/cm2 、20℃)200mlをエアゾール缶に充填し、実施例5のエアゾール製剤を調製した。
【0065】
【表9】
【0066】
得られたエアゾール製剤を、屋外で自然営巣しているセグロアシナガバチまたはフタモンアシナガバチの巣表面に向かって約2m離れた地点から約4秒間(60g)噴霧した。その後、経時的に巣表面に見られる成虫の数を調査した。結果を表10に示す。
【0067】
【表10】
【0068】
表10より、実施例5のエアゾール製剤を用いることによって、簡易的に約2日で巣内のハチを駆除することができたことがわかる。
【0069】
【発明の効果】
本発明のハチ用食毒剤は、ハチを興奮させることなく安全に適用することが可能なものである。また、本発明のハチ用食毒剤を用いたハチの駆除方法は、ハチの生活習性を利用したものであり、自然に巣内の全ハチを致死させることができるという非常に効果的なものである。
Claims (9)
- 殺虫成分と、糖類および/または動物性タンパク質とを含有してなる、巣上に付着させるハチ用食毒剤。
- さらに発酵臭成分を含有してなる請求項1記載のハチ用食毒剤。
- 殺虫成分と、発酵臭成分とを含有してなる、巣上に付着させるハチ用食毒剤。
- さらに粘着成分を含有してなる請求項1〜3いずれか記載のハチ用食毒剤。
- 粘着成分が、カラギーナン、寒天、ゼラチン、ジュランガム、ローカストビンガム、キサンタンガム、でんぷん粉、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム及びアラビアゴムからなる群より選ばれた1種以上である、請求項4記載のハチ用食毒剤。
- 粘性が50〜10000cpである、請求項1〜5いずれか記載のハチ用食毒剤。
- 殺虫成分が、フィプロニルおよび/または1−メチル−2−ニトロ−3,3−テトラハイドロフリルメチルグアニジンである請求項1〜6いずれか記載のハチ用食毒剤。
- 吐出又は噴射させて使用する液剤、粘性剤又はエアゾール製剤である、請求項1〜7いずれか記載のハチ用食毒剤。
- 請求項1〜8いずれか記載のハチ用食毒剤を少なくともハチの巣上に付着させて用いることを特徴とするハチの駆除方法。
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