JP4132560B2 - 電動パワーステアリング用コアレスモータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電動パワーステアリング用コアレスモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング用コアレスモータとして、例えば実公平3−52606号公報「電気式倍力操舵装置」が知られている。
上記技術は、同公報の図によれば、ラック軸4(車軸)を、ロータとしての円筒状の電機子巻線12(巻線シリンダ)で囲い、この電機子巻線12をラックハウジング3(固定部材)で支えたステータとしての磁石16(永久磁石)で囲い、電機子巻線12の回転を動力伝達部材を介してラック軸4に伝える形式の電気式倍力操舵装置が示され、さらに、電機子巻線12を整流子13に結合するために、電機子巻線12をナット7側に取付けたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記電気式倍力操舵装置は、当然ながら電機子巻線12から引出線を延出し、この引出線を整流子13に結合しなくてはならない構造であるにもかかわらず、結合時に引出線を整流子13に合せる配慮がないので、引出線の位置決め作業が煩雑になる。
また、一般的に電機子巻線12をナット7側に取付ける手法は、接着によるものであり、機械的な強度を望むことが困難である。
【0004】
そこで、本発明の目的は、巻線シリンダの組付け性の向上、機械的強度の向上を図ることのできる電動パワーステアリング用コアレスモータを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1の電動パワーステアリング用コアレスモータは、車軸を、固定部材で支えたステータとしての永久磁石で囲い、この永久磁石を、ロータとしての円筒状の巻線シリンダで囲い、この巻線シリンダの回転を車軸に伝える形式の電動パワーステアリングにおいて、巻線シリンダの一端に保持ディスクを一体的に樹脂成形することで巻線シリンダを支持し、この巻線シリンダと共に回転する保持ディスクに収納溝を形成することで巻線シリンダの引出線を収納溝に収納することができるようにしてなり、収納溝が、保持ディスクの外周面並びにモータの整流子に近い方の保持ディスクの側面を直角を挟む2辺とした直角三角形の斜辺を、直角三角形に近似する扇形の弧を溝底としたものであることを特徴とする。
【0006】
巻線シリンダの一端に保持ディスクを一体的に樹脂成形するときに、保持ディスクに収納溝を形成し、この収納溝に巻線シリンダの引出線を収納するようにした。
巻線シリンダの一端に保持ディスクを一体的に形成することで、巻線シリンダと保持ディスクとの機械的結合強度の向上を図る。
保持ディスクに巻線シリンダの引出線を収納する収納溝を設けることで、引出線の処理を容易に行ない巻線シリンダの組付け性の向上を図る。
【0008】
また、収納溝を保持ディスクの外周面並びにモータの整流子に近い方の保持ディスクの側面を直角を挟む2辺とした直角三角形の斜辺を、直角三角形に近似する扇形の弧を溝底とすることで、引出線を整流子に導き易くする。
請求項は、収納溝が、巻線シリンダの軸方向端面の内側に形成されたことを特徴とする。これにより、引出線を整流子に接続する作業が容易である。
請求項は、巻線シリンダの引出線が、巻線シリンダの内側から引き出され、収納溝の溝底に沿わせて整流子に案内されることを特徴とする。これにより、引出線を位置決めして整流子まで案内できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータを搭載したステアリング装置の斜視図である。
電動パワーステアリングとしてのステアリング装置10は、ステアリングホイル11の操舵力をアシストする電動パワーステアリング用コアレスモータ30(以下、「コアレスモータ」と略記する)を備えた電動パワーステアリングの一例であり、ステアリングホイル11の操舵力をトルクセンサ12で検知し、このトルクセンサ12からの情報に基いてコアレスモータ30を制御するコントローラ13を備えたものである。
【0010】
図中、14はバッテリ、15はステアリングホイル11を支持するステアリングシャフト、16はステアリングシャフトの先端に取付けたユニバーサルジョイント、17はユニバーサルジョイント16を介してステアリングシャフト15に取付けた先端シャフト、18はギヤケース、19は車軸、21,21は車軸19に取付けたタイロッド、22,22は前輪を示す。
【0011】
図2は電動パワーステアリング用コアレスモータを搭載したステアリング装置の要部断面図である。
詳しくは、ステアリング装置10は、ギヤケース18内に先端シャフト17に形成したピニオン24及び車軸19に形成したラック25を収納し、ピニオン24の回転をラック25に伝えることで車軸19を図面の左右に移動できるようにしたものであり、このときに、車軸19に形成したボールねじ26に動力伝達部材としてのスラストボール群27を介してコアレスモータ30の回転トルクを伝達することで、ステアリングホイル11(図1参照)の操舵力をアシストするようにしたものである。なお、28,28は車軸19にタイロッド21,21を接続するためのボールジョイントである。
【0012】
図3は本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータの正面断面図である。
コアレスモータ30は、車軸19を、固定部材33で支えたステータ31の構成部品である永久磁石34で囲い、この永久磁石34を、ロータ41の構成部品である円筒状の巻線シリンダ42で囲い、この巻線シリンダ42の回転をスラストボール群27を介して車軸19に伝える形式のステアリング装置10(図2参照)において、巻線シリンダ42の一端42aに保持ディスク43を一体的に形成することで巻線シリンダ42を支持し、この巻線シリンダ42と共に回転する保持ディスク43に収納溝54(・・・は複数個を示す。以下同じ)を形成することで巻線シリンダ42の引出線49・・・を収納溝54・・・に収納することができるようにしたものである。
【0013】
図4は本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータのステータの分解斜視図であり、ステータ31は、モータハウジング32に固定部材33を取付け、この固定部材33に筒状の永久磁石34を取付け、ギヤケース18のフランジ部18aにボールベアリング35、ブラシ取付けベース36及びブラシ37,37をこの順で取付けたものである。なお、38,38はギヤケース18のフランジ部18aにモータハウジング32を取付ける取付けねじ、39,39はモータハウジング32に固定部材33を取付ける取付けねじを示す。
【0014】
また、永久磁石34は、フェライト磁石である。フェライト磁石を用いることで、生産コストの低減及び軽量化を図ることができる。なお、永久磁石34としては、他に希土類磁石を用いてもよい。
【0015】
図5は本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータのロータの分解斜視図であり、ロータ41は、巻線シリンダ42の一端42aに保持ディスク43を一体的に形成し、巻線シリンダ42の他端42bにスラストリング44を嵌合させ、保持ディスク43の中心に筒状部材45を嵌合させ、この筒状部材45の保持ディスク43側に整流子46を取付け、筒状部材45のスラストリング44側に、図3に示すスラストボール群27を介してボールねじ26に嵌合させるナット47を取付けたものである。
巻線シリンダ42は、コイル巻線部48から引出して整流子46に接続する引出線49・・・(・・・は複数個を示す。以下同じ)を備える。
【0016】
図6は本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータの保持ディスクの正面図である。図7は図6の7−7線断面図であり、保持ディスクの側面断面を示す。
保持ディスク43は、巻線シリンダ42に一体的に形成したディスク状の樹脂部材であって、巻線シリンダ42の内側に一体的に形成する外周面52と、筒状部材45を嵌合させる嵌合孔53と、巻線シリンダ42の引出線49・・・(図3参照)を整流子46に案内すると共に引出線49・・・を収納する収納溝54・・・とを形成したものである。55は保持ディスク43の側面を示す。
【0017】
収納溝54は、保持ディスク43の外周面52の2つのコーナ(角)のうち、整流子46に近い方のコーナに切込んだ略三角形の切欠き溝であって、保持ディスク43の外周面52並びに整流子46に近い方の保持ディスク43の側面55を直角を挟む2辺とした直角三角形の斜辺を、直角三角形に近似する扇形の弧を溝底54aとしたものである。
整流子46は、筒状部材45に嵌合させる支持ホルダ57に整流子片58・・・を取付けたものである。
【0018】
以上に述べたコアレスモータ30の作用を次に説明する。
図8(a),(b)は本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータの作用説明図である。なお、(a)は比較例を示し、(b)は実施例を示す。
(a)において、比較例のロータ101は、巻線シリンダ102の一端102aに保持ディスク103を嵌合させ、保持ディスク103に筒状部材105を嵌合させ、筒状部材105の保持ディスク103側に整流子106を取付けたものである。
【0019】
しかし、保持ディスク103は、巻線シリンダ102の引出線109・・・を整流子106に案内すると共に引出線109・・・を収納できる形状ではない。従って、引出線109・・・を位置決めして整流子106まで引出せないので、引出線109・・・を整流子106に接続する作業が困難である。
【0020】
(b)において、実施例のロータ41は、巻線シリンダ42の一端42aに保持ディスク43を嵌合させ、保持ディスク43に筒状部材45を嵌合させ、この筒状部材45の保持ディスク43側に整流子46を取付け、さらに、巻線シリンダ42の引出線49・・・を整流子46に案内すると共に、引出線49・・・を収納する収納溝54・・・を形成したものである。従って、引出線49・・・を位置決めして整流子46まで案内できるので、引出線49・・・を整流子46に接続する作業が容易である。この結果、コアレスモータ30(図3参照)の組付作業時間の短縮を図ることができると共にコアレスモータ30の品質の向上を図ることができる。
【0021】
また、巻線シリンダ42の一端42aに保持ディスク43を一体的に形成することで、巻線シリンダ42と保持ディスク43との機械的結合強度の向上を図ることができる。
さらに、収納溝54・・・に引出線49・・・を収納することで、巻線シリンダ42と保持ディスク43との機械的強度を補間することになり、巻線シリンダ42と保持ディスク43との機械的強度を向上させることができる。
【0022】
図9は本発明に係る別実施例の電動パワーステアリング用コアレスモータの正面断面図である。なお、図3に示すコアレスモータ30と同一部品は同一符号を付し詳細な説明を省略する。
電動パワーステアリング用コアレスモータ60(以下、「コアレスモータ60」と略記する)は、車軸19を、固定部材33で支えたステータ31としての永久磁石34で囲い、この永久磁石34を、ロータ41としての円筒状の巻線シリンダ42で囲い、この巻線シリンダ42の回転を車軸19に伝える形式のステアリング装置10(図1参照)において、巻線シリンダ62の一端62aに保持ディスク63を一体的に形成することで巻線シリンダ62を支持し、この巻線シリンダ62と共に回転する保持ディスク63に収納溝54・・・を形成することで巻線シリンダ62の引出線49・・・を収納溝54・・・に収納することができるようにしたものであり、巻線シリンダ62の一端62aに保持ディスク63を一体的に形成するときに、巻線シリンダ62の他端62bにスラストリング64を同時に成形すると共に、巻線シリンダ62のコイル巻線部68を同時にライニングしたものである。
すなわち、コアレスモータ60は、ロータ61の機械的強度を補強したモータである。この結果、コアレスモータ60の耐久性の向上を図ることができる。
【0023】
尚、実施例では図7に示すように、収納溝54は、保持ディスク43の外周面52並びに整流子46に近い方の保持ディスク43の側面55を直角を挟む2辺とした直角三角形の斜辺を直角三角形に近似する扇形の弧を溝底54aとしたが、これに限るものではなく、溝底54aは直線の溝であってもよい。
【0024】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、巻線シリンダの一端に保持ディスクを一体的に樹脂成形し、巻線シリンダを支持したので、巻線シリンダと保持ディスクとの機械的結合強度の向上を図ることができる。この結果、電動パワーステアリング用コアレスモータの耐久性の向上を図ることができる。
巻線シリンダと共に回転する保持ディスクに収納溝を形成することで巻線シリンダの引出線を収納溝に収納することができるようにしたので、引出線の処理を容易に行ない巻線シリンダの組付け性の向上を図る。この結果、組付作業時間の短縮を図ることができると共に電動パワーステアリング用コアレスモータの品質の向上を図ることができる。
【0025】
また、収納溝を保持ディスクの外周面並びにモータの整流子に近い方の保持ディスクの側面を直角を挟む2辺とした直角三角形の斜辺を、直角三角形に近似する扇形の弧を溝底としたので、引出線を容易に整流子に導くことができる。
請求項は、収納溝が、巻線シリンダの軸方向端面の内側に形成されたので、引出線を整流子に接続する作業が容易である。
請求項は、巻線シリンダの引出線が、巻線シリンダの内側から引き出され、収納溝の溝底に沿わせて整流子に案内されたので、引出線を位置決めして整流子まで案内できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータを搭載したステアリング装置の斜視図
【図2】電動パワーステアリング用コアレスモータを搭載したステアリング装置の要部断面図
【図3】本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータの正面断面図
【図4】本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータのステータの分解斜視図
【図5】本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータのロータの分解斜視図
【図6】本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータの保持ディスクの正面図
【図7】図6の7−7線断面図
【図8】本発明に係る電動パワーステアリング用コアレスモータの作用説明図
【図9】本発明に係る別実施例の電動パワーステアリング用コアレスモータの正面断面図
【符号の説明】
10…ステアリング装置(電動パワーステアリング)、19…車軸、27…動力伝達部材(スラストボール群)、30,60…コアレスモータ、31…ステータ、33…固定部材、34…永久磁石、41,61…ロータ、42,62…巻線シリンダ、42a,62a…一端、43,63…保持ディスク、49…引出線、52…外周面、54…収納溝。

Claims (3)

  1. 車軸を、固定部材で支えたステータとしての永久磁石で囲い、この永久磁石を、ロータとしての円筒状の巻線シリンダで囲い、この巻線シリンダの回転を車軸に伝える形式の電動パワーステアリングにおいて、
    前記巻線シリンダの一端に保持ディスクを一体的に樹脂成形することで巻線シリンダを支持し、この巻線シリンダと共に回転する前記保持ディスクに収納溝を形成することで前記巻線シリンダの引出線を前記収納溝に収納することができるようにしてなり、
    記収納溝は、前記保持ディスクの外周面並びにモータの整流子に近い方の保持ディスクの側面を直角を挟む2辺とした直角三角形の斜辺を、直角三角形に近似する扇形の弧を溝底としたものであることを特徴とする電動パワーステアリング用コアレスモータ。
  2. 前記収納溝は、前記巻線シリンダの軸方向端面の内側に形成されたことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング用コアレスモータ。
  3. 前記巻線シリンダの引出線は、巻線シリンダの内側から引き出され、前記収納溝の溝底に沿わせて前記整流子に案内されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動パワーステアリング用コアレスモータ。
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